‘点眼補助具’ タグのついている投稿

緑内障患者に対する点眼補助具(Just in)の使用感アンケート 調査

2022年6月30日 木曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(6):808.813,2022c緑内障患者に対する点眼補助具(Justin)の使用感アンケート調査江本美佐*1坂本麻里*1曽谷尭之*1高野史生*1村井祐輔*1西庄龍東*1盛崇太朗*1大塚尚美*2髙木泰孝*2堀清貴*2中村誠*1*1神戸大学医学部附属病院眼科*2参天製薬株式会社CAQuestionnaireSurveyontheUsabilityoftheEyeDropAid‘Justin’inPatientswithGlaucomaMisaEmoto1),MariSakamoto1),NoriyukiSotani1),FumioTakano1),YusukeMurai1),RyutoNishisho1),SotaroMori1),NaomiOtsuka2),YasutakaTakagi2),KiyotakaHori2)andMakotoNakamura1)1)DepartmentofOphthalmology,KobeUniversityHospital,2)SantenPharmaceuticalCo.,Ltd.C目的:緑内障患者における点眼補助具CJustinの使用意義の検討.対象および方法:神戸大学医学部附属病院眼科を受診した緑内障患者のうちディンプルボトル製品を使用し自己点眼しているC20歳以上の者が対象.Justin使用後に点眼操作や使用感に関するアンケート調査を行った.結果:登録C74例中C72名を解析.JustinなしでC1滴で点眼できる者(A群)がC53例,2滴以上を要する者(B群)はC19例だった.点眼操作の評価スコアはCJustin使用により全体(p=0.03)およびCA群(p<0.01)で有意に低下し,B群では有意差はないものの増加した.また,Justin使用によりCB群で点眼に必要な滴下数が有意に減少した(p=0.03).結論:Justinは点眼操作に問題がない患者においては点眼操作性を低下させ,点眼困難な患者では点眼操作を向上させる可能性がある.CPurpose:Toinvestigatetheusabilityoftheeyedropaid‘Justin’inpatientswithglaucoma.Methods:Thisstudyinvolvedglaucomapatients(age:≧20years)seenattheGlaucomaClinicoftheDepartmentofOphthalmol-ogy,KobeUniversityHospital,Kobe,Japanwhoself-administereyedropsandwhoansweredaquestionnaireafterusingCJustCin.CResults:OfCtheC72CpatientsCanalyzed,C53CreportedCthatCtheyCcouldCsuccessfullyCself-administerCeyeCdropswiththe.rstdropwithoutusingJustin(GroupA),while19neededmorethantwodropsinordertoprop-erlyapplythemontotheireyes(GroupB).ThescoreevaluatingtheperformanceofeyedropinstillationwithandwithoutJustinwassigni.cantlyhigherwithoutJustininallsubjects(p=0.03)andinGroupA(p<0.01),whileitwasChigher,CalthoughCnotCstatisticallyCsigni.cant,CwithCJustCinCinCGroupCB.CJustCinCdecreasedCtheCnumberCofCeyeCdropswastedinGroupB.Conclusions:Justinmayworseneyedropdeliveryinpatientswhohavenoinstillationproblems,yetmayimproveitinthosewithinstillationdi.culties.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(6):808.813,C2022〕Keywords:点眼補助具,Justin,緑内障.eyedropaid,Justin,glaucoma.はじめに緑内障の唯一エビデンスのある治療は眼圧下降であり,緑内障患者の多くは,複数の点眼薬による長期の薬物治療が必要となる.しかし,緑内障患者のなかには点眼操作が困難な者が存在し,とくに高齢者でその割合が多いことが報告されている1.8).点眼のしづらさは治療のアドヒアランスを阻害する要因となり,正確に点眼することができなければ,治療効果が得られず緑内障の進行と視機能低下を招く.また,点眼時に容器が眼球周囲に接触している患者や高齢者では,点眼瓶の汚染が高率であることも報告されている9).点眼操作性向上アタッチメントCJustin(参天製薬)(図1)は,ディンプルボトル専用の点眼補助具であり,高齢者や手の震え・手指の障害などで点眼がうまくできない患者が,①点眼容器を睫毛や眼に触れさせることなく点眼できる,②手〔別刷請求先〕坂本麻里:〒650-0017兵庫県神戸市中央区楠町C7-5-2神戸大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:MariSakamoto,DepartmentofOphthalmology,KobeUniversityHospital,7-5-2Kusunoki-cho,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0017,JAPANC808(112)が震えても点眼できる,③点眼位置がわかりやすくなることを目指して開発された.本研究では,点眼治療中の緑内障患者において,JustCinにより点眼操作性が向上するかどうかを検討した.CI対象および方法本研究は前向き調査研究,神戸大学と参天製薬の共同研究で,神戸大学倫理委員会の承認の下(承認番号CB200119),大学病院医療情報ネットワーク(UMIN000040646)に登録し「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」およびその他関連規制を遵守して行われた.すべての対象者から文書による同意を取得した.2020年C8月.2020年C11月に神戸大学医学部附属病院眼科を受診した緑内障患者(病型不問)のうち,ディンプルボトル製品をC1種類以上使用し自己点眼をしているC20歳以上の者を対象とした.両眼ともに矯正視力が小数視力C0.1未満の者および,内眼手術後C1カ月未満の者(濾過手術についてはC3カ月未満)は除外した.対象者には通常の緑内障診療時にCJustinとアンケートを配布しCJustinの使用方法を説明,60.120日後の再診日にアンケートを回収した.年齢,性別,1年以内のCHumphrey視野検査の平均偏差(meanCdevia-tion:MD),矯正視力,屈折値,眼圧値,点眼動作に影響を及ぼす既往歴・合併症,使用中の緑内障点眼薬について診療録より情報を取得した.アンケートの集計および統計解析は神戸大学が行った.本研究に使用したCJustinは参天製薬から無償提供を受けた.Justinの形状と使用方法を図1に示す.既存の他の点眼補助具と異なり,Justinには,眼に当てる部分に切り込みがある.点眼時にこの切り込み部から指を挿入し下眼瞼を下に引くことで,確実に結膜.内に点眼することができる.CJustinの使用法は,まずディンプルボトルの蓋をはずしCJustinにセットし(図1a),Justinを眼の周囲に密着させるように押し当て,切り抜き部分から指を入れ(図1b),指で下眼瞼を下に引き点眼する.アンケートの質問項目を表1に示す.本研究の主要評価項目はCJustin装着の有無による点眼操作の評価スコア(質問5)である.評価スコアは,Justin使用の有無で点眼液の眼への入りやすさをC0(点眼しにくい)からC10(点眼しやすい)のC11段階とした.CJustCin使用前・後の評価スコアおよび使用前後の変化量の中央値を算出し,使用前後の評価スコア値に対しCWilcox-on符号付順位検定を行った.統計はCGraphPadPrismver-sion9.0.1(128)(GraphPadCSoftware,USA)およびCMed-CalcCversion20.105(MedCalcSoftware,CBelgium)を用い,両側検定,有意水準C5%とした.目標症例数は,Justin未使用時における点眼操作の評価スコア(0.10)の平均値をC4.0,Justin使用時の平均値を6.0と推定し,Justin使用前後の差をC2.0,標準偏差C5.5と仮定した場合,有意水準C5%,検出力C80%ではC62例が必要図1Justinの形状および使用法a:Justinに点眼容器をセットした状態,Cb:実際に使用している様子..:下眼瞼を指で下に引くための切り抜き部分.表1アンケートの質問事項質問C1Justinを使用する前と後で,何滴目で点眼液がきちんと眼に入ったか質問C2Justinにより点眼容器の先が睫毛や眼に触れる回数が減ったか質問C3Justinにより手が震えて点眼できない回数が減ったか質問C4Justinにより点眼の位置がわかりやすくなったか質問C5Justin使用前後での点眼操作の評価スコア(1C1段階評価)(0:点眼しにくい.10:点眼しやすい)質問C6-1Justinを現在も使用しているか質問C6-2Justinを現在も使用するおもな理由質問C6-3Justinを使用しない理由質問C7Justinを今後も使用したいか質問C8Justinの改善点*実際のアンケートでは患者が理解可能な文言を使用した.表2患者背景年齢(歳)C66.4±11.5性別(男,%)30(C42%)MD(dB)右眼C.10.96±7.58左眼C.10.74±7.28logMAR視力*右眼0.00(C.0.18.C0.22)左眼C.0.08(C.0.18.C0.15)眼圧*(mmHg)右眼12.50(C10.00.C15.00)左眼13.00(C11.00.C15.00)使用点眼数*(本)2.0(C2.00.C3.00)MD:meandeviation,logMAR:theClogarithmCofCtheminimalangleofresolution.平均±標準偏差,*中央値(四分位範囲)*Fisher’sexacttest質問1)Justinなしで点眼に必要な滴下数質問2)Justinで点眼容器が睫毛や眼に触れる回数が減ったか質問3)Justinで手が震えて点眼できない回数が減ったか質問4)Justinで点眼の位置がわかりやすくなったか質問6)現在もJustinを使用しているか質問7)今後もJustinを使用したいかYes改善すればYesNoYes改善NoすればYes図2アンケート(Q1.4,6,7)の回答結果(人)質問C1でCJustinの使用なしでC1滴で点眼できると回答した者をCA群,2滴以上要する者をCB群とした.質問C2.4ではCJustinにより点眼操作が向上した者の割合はCA群に比べCB群に多く,質問C4でその差は有意であった(Fisher正確検定,p=0.03).現在もCJustinを継続使用する者の割合はCB群で有意に多かった(質問6,p=0.03).今後もCJustinを使用したい・改善すれば使用したいと回答した者の割合は両群間で差を認めなかった(質問7).となることから,アンケート未回収を約C10%見込み,70例と設定した.CII結果74例を登録し,同意撤回したC1例とアンケート未回収の1例を除くC72例を解析した.患者背景を表2に示す.72例中C70歳以上の者はC32人(44%)で,点眼操作に影響する既往症・合併症を有する者はいなかった.アンケート結果を図2および表3に示す.質問C1では補助具なしで点眼液がC1滴で眼に入ると答えた者がC53人(74%)と多く,2滴以上を要する者はC19人(26%)だった.1滴で点眼できる群をCA群,2滴以上を要する群をCB群とし,その後の解析を行った.両群間で患者背景に差はなかった(表4).また,質問C1のCJustin使用前後の点眼に必要な滴下数は,中央値(四分位範囲)で全体では使用前C1(1.1.8)滴から使用後C1(1.2)滴に増加し(Wilcoxon符号付順位検定,p=0.02),A群で使用前C1滴から使用後はC1(1.2)滴と増加(p=0.0001),B群ではC2(2.3)滴からC1.5(1.2)滴に減少した(p=0.03)(図3).質問C2のCJustinにより点眼容器の先が睫毛や眼に触れる回数が減った者,質問C3の手が震えて点眼できない回数が減った者は全体では少なかったが,質問C4の点眼の位置がわかりやすくなった者は全体の半数を占めた.群別では,点眼容器の接触が減った者,手が震えて点眼できない回数が減った者,点眼の位置がわかりやすくなった者の割合はいずれもCB群で多く(Fisher正確検定,質問C2:p=0.05,質問3:p=0.06,質問4:p=0.03),B群でより点眼操作が向上していることがわかった.質問C6ではCJustinを現在も使用継続している者の割合はCB群で有意に高かった(p=0.03).質問C7で今後もCJustinを使用したい・改善されれば使用したいと答えた者の割合に両群間で差はなかった.質問C6-2,6-3および質問C8の回答を表3に示す.点眼操作の評価スコア(質問5)の結果を表5に示す.全体ではCJustin使用前後で評価スコアは有意に低下した(p=0.03).群別では,A群で有意に低下し,B群では統計学的に有意ではないものの増加した.また,点眼容器の接触が減った者,手が震えて点眼できない回数が減った者,および点眼の位置がわかりやすくなった者では,評価スコアがCJustin使用で増加した.CIII考按本研究では,対象のC74%がC1滴で正確に点眼できると回答した.Stoneらは緑内障患者C139人の点眼操作を調査し93%の患者が点眼操作に問題ないと回答したものの,ビデオ判定で正確に点眼できた者はC22.31%だったと報告した1).Guptaらの報告では,70人の緑内障患者のうち正確に点眼できたのはわずかC8.5%だった2).また,Naitoらは,本研究と年齢やCMD値が同等の緑内障患者C78例の点眼操作をビデオ判定し,62%が点眼不成功であったと報告している4).本研究でも既報のようにビデオ判定を行えばさらに多くの患者が正確に点眼できていない可能性がある.CJustCinは,前述のように①点眼容器を睫毛や眼に触れさせることなく,②手が震えても点眼でき,③点眼位置がわかりやすくなることをめざして開発された.点眼容器と眼および眼付属器との接触は,既報では対象のC30.76%と高率に報告されている1,2,4).本研究ではCB群で半数以上の患者で接触が減り,一定の効果があると考えられた.また,A群でもC30%が接触が減ったことから,点眼容器の接触は「1滴で点眼できると」回答した患者においても相当数起きていると考えられた.次に,手が震えて点眼できない回数が減ったとの回答は全体としては少なかった.本研究では,点眼操作に影響する全身合併症や手指の異常を有する者はおらず,また,半数以上(54%)がもともと手の震えはないと回答して表3アンケート回答<質問C6-2Justinを現在も使用するおもな理由>うまく点眼液が眼に入るから6人点眼容器が眼の周囲に触れないから5人点眼する位置がわかりやすくなったから5人手が震えていても点眼ができるから1人その他2人<質問C6-3Justinを使用しないおもな理由>点眼容器に取り付けるのが面倒26人使いにくい・持ちにくかった7人補助具を使ってもうまく点眼ができない4人点眼容器に取り付けるのがむずかしい2人その他13人<質問8Justinに期待される改善点>着脱不要にしてほしい大きさを小型化してほしいすべての点眼薬に使用できるようにしてほしい首を垂直に曲げなくても使えるようにしてほしい表4患者背景(A群vsB群)A群B群p値年齢(歳C±標準偏差)C65.3±11.2C69.6±11.9C0.161)性別(男,%)22(C41%)8(C42%)C1.002)MD値(dBC±標準偏差)右眼C.9.36±7.40C.13.67±8.74C0.061)左眼C.9.86±6.46C.13.71±8.28C0.071)logMAR視力(四分位範囲)右眼0.00(C.0.18.C0.10)0.10(C0.00.C0.40)C0.073)左眼C.0.08(C.0.18.C0.08)0.00(C.0.08.C0.82)C0.133)眼圧(mmHg,四分位範囲)右眼13.00(C10.25.C15.00)12.00(C9.75.C15.25)C0.363)左眼13.00(C11.00.C16.00)12.50(C10.75.C15.00)C0.833)使用点眼数(本,四分位範囲)2.0(C2.00.C3.00)2.0(C1.00.C3.00)C0.193)MD:meandeviation,logMAR:thelogarithmoftheminimalangleofresolution.中央値(四分位範囲),1)Unpairedttest,2)Fischer’sexacttest,3)Mann-WhitneyU検定.(115)あたらしい眼科Vol.39,No.6,2022C811全体A群B群555444滴下数滴下数333p=0.03*2221110使用前0使用後使用前使用後0図3Justin使用前後での滴下数の変化質問C1でCJustin使用なしでC1滴で点眼できると回答した者をCA群,2滴以上要する者をCB群とした.Justin使用前後の点眼に必要な滴下数は,全体で使用前後に有意に増加した(Wilcoxon符号付順位検定,p=0.02).A群でも使用後に有意に増加したが(p=0.0001),B群では有意に低下した(p=0.03).表5Justin使用前後の点眼操作の評価スコアp値1)質問別群使用前スコア使用後スコア(前後)スコア変化量全例8(7.C10)8(5.9)C0.030(.3.1)評価スコア(0:点眼しにくい.10:点眼しやすい)A群(Cn=53)B群(Cn=19)p値2)(AvsB群)9(8.C10)6(4C.3.8)<C0.01C8(5.9)8(5C.3.9)C0.86<C0.01C0.16.1(.4.3.1)1(.1.C2.8)<C0.01点眼容器が睫毛や減った(n=27)8(6.9)9(8.10)C0.081(0.2)減らない(n=45)9(7.5.10)6(2.5.9)<0.01C.2(.5.5.1)眼に触れる回数p値2)(減Cvs減らない)C0.02<0.01<0.01手が震えて点眼減った(n=11)8(7.8)9(8.10)C0.362(.2.3)減らない(n=61)9(7.10)7(3.5.9)<0.01C.1(.4.5.1)できない回数p値2)(減Cvs減らない)C0.07C0.04C0.02C点眼の位置がわかりYes(n=36)8(6.3.9)9(8.10)C0.021(0.2)No(n=36)9(8.10)5(1.3.8)<0.01C.3(.6.C.0.2)やすくなったかp値2)(YesvsNo)C0.02<0.01<0.01中央値(四分位範囲),1)Wilcoxon符号付順位和検定,2)Mann-WhitneyU検定.いることが影響したと考えられる.最後に,Justinで点眼の位置がわかりやすくなった者は,B群でC74%,全体でも半数を占めた.このことから,Justinの三つの開発目的のうち,点眼の位置がわかりやすくなるという点がもっとも効果的であったと考えられた.CJustCin使用前後の点眼操作の評価スコアは,対象全体およびCA群で有意に低下した.本研究ではCA群が全体の約3/4を占め,A群の結果が全体の結果に影響したと考えられる.JustCinを使用しない理由として「点眼容器に取り付けるのが面倒」という回答がもっとも多く,もともと上手に点眼できる者にとってはむしろ点眼操作が増え評価が低下したと考えられた.一方CB群では,評価スコアはCA群に比べ有意に増加し,点眼に必要な滴下数も使用前より有意に減少した.また,点眼容器の接触が減った,手が震えて点眼できない回数が減った,点眼の位置がわかりやすくなったと回答した者で評価スコアの有意な増加がみられたことから,補助具なしで点眼操作が困難な患者においてCJustinは有用であると考えられた.Newman-Caseyらは,190人の緑内障患者の点眼アドヒアランスを調査し,約C1/5の患者が補助具の使用に興味を示したと報告している3).本研究においても,Justinを今後も使用したい者,改善されれば使用したい者を合わせると半数近い患者が点眼補助具の使用に前向きであり,患者が点眼操作の向上を望んでいることがわかった.Sanchezらは,点眼操作が困難なC50人の緑内障患者に対し点眼補助具の使用意義を検討した.補助具により点眼操作が向上し,対象の94%が補助具使用を好んだと報告している6).Justinについても,点眼操作が困難な患者のみを対象としてさらに検討が必要と考えられた.本研究のClimitationとして,Justinはディンプルボトル製品専用であり,本研究の対象は同製品を使用している者に限られた.そのため,本研究の結果は,神戸大学附属病院眼科で診療中の全緑内障患者の結果を反映しているとはいえない.また,両眼の視力がC0.1より低下した者は除外しており,ロービジョン患者における点眼補助具の有用性についてはさらに検討が必要である.結論として,Justinは点眼操作に問題がない患者においては点眼操作性を低下させるが,点眼にC2滴以上要する患者においては,Justin使用により滴下数の減少と点眼操作の向上がみられ,Justinは有用であると考えられた.利益相反開示:本研究は,参天製薬株式会社からの資金提供により実施された.筆者である大塚尚美,髙木泰孝,堀清貴は参天製薬株式会社の社員である.文献1)StoneJL,RobinAL,NovackGDetal:Anobjectiveeval-uationCofCeyedropCinstillationCinCpatientsCwithCglaucoma.CArchOphthalmolC127:732-736,C20092)GuptaCR,CPatilCB,CShahCBMCetal:EvaluatingCeyeCdropCinstillationCtechniqueCinCglaucomaCpatients.CJCGlaucomaC21:189-192,C20123)Newman-CaseyCPA,CRobinCAL,CBlachleyCTCetal:MostCcommonCbarriersCtoCglaucomaCmedicationadherence:aCcross-sectionalCsurvey.COphthalmologyC122:1308-1316,C20154)NaitoCT,CNamiguchiCK,CYoshikawaCKCetal:FactorsCa.ectingCeyeCdropCinstillationCinCglaucomaCpatientsCwithCvisual.elddefect.PLoSOneC12:e0185874,C20175)NaitoT,YoshikawaK,NamiguchiKetal:Comparisonofsuccessratesineyedropinstillationbetweensittingposi-tionandsupineposition.PLoSOneC13:e0204363,C20186)SanchezCFG,CMansbergerCSL,CKungCYCetal:NovelCeyeCdropCdeliveryCaidCimprovesCoutcomesCandCsatisfaction.COphthalmolGlaucomaC12:4:440-446,C20217)McClellandJF,BodleL,LittleJ-A:Investigationofmedi-cationCadherenceCandCreasonsCforCpoorCadherenceCinCpatientsConClong-termCglaucomaCtreatmentCregimes.CPatientPreferAdherenceC13:431-439,C20198)小長谷百絵,林みつる,いとうたけひこほか:高齢者にとっての点眼容器の使いやすさに関する研究.人間工学C51:441-448,C20159)細田源浩,塚原重雄,岡部忠志:緑内障患者使用中の点眼薬の微生物汚染.あたらしい眼科C11:755-757,C1994***