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涙囊鼻腔吻合術鼻内法における画像支援型磁場式ナビゲーションシステムの有用性

2016年11月30日 水曜日

《第4回日本涙道・涙液学会原著》あたらしい眼科33(11):1633?1639,2016c涙?鼻腔吻合術鼻内法における画像支援型磁場式ナビゲーションシステムの有用性高橋辰*1高橋佳奈*2*1高橋耳鼻咽喉科眼科クリニック*2条里コスモス眼科UtilityofImage-guidedElectromagneticNavigationSysteminEndoscopicEndonasalDacryocystorhinostomyShinTakahashi1)andKanaTakahashi2)1)TakahashiENT&EyeClinic,2)JhoriKosumosuEyeClinic目的:画像支援型磁場式ナビゲーションシステム(以下,ナビシステム)は,危険部位を回避して病変に確実にアプローチするための手術支援機器の一つである.涙?鼻腔吻合術鼻内法(endoscopicendonasaldacryocystorhinostomy:en-DCR)におけるナビシステムの有用性を検討した.対象:対象は,筆者らの施設でナビシステムを併用してen-DCRを行った19例(以下,ナビ併用群)と,ナビシステムを使わずにen-DCRを行った21例(以下,ナビ非併用群)である.手術記録とビデオ画像を評価し,手術時間と合併症の有無を比較した.結果:骨壁削除時間の平均値は,ナビ併用群36.8±5.2分,ナビ非併用群45.4±8.4分で,ナビ併用で骨壁削除時間は有意に短縮した.ナビ非併用群では2例に手術合併症を認めたが,ナビ併用群では合併症はなかった.限界域の判断がむずかしい骨壁の厚い例,再手術例,総涙小管閉塞例では,ナビシステムを併用することで涙?の位置を正確に評価できた.結論:ナビシステムは,en-DCRの手術支援器機として有用である.Purpose:Inthispaper,wereportourclinicalexperiencesandevaluatetheutilityoftheimage-guidedelectromagneticnavigationsystem(IGS)inendoscopicendonasaldacryocystorhinostomy(en-DCR).Subjects:Weexaminedthesurgicalrecordsof19patientswhohadundergoneen-DCRwithIGS(IGSgroup);21patientswhohadundergoneen-DCRwithoutIGS(non-IGSgroup)werealsoexaminedretrospectively.Weevaluatedtheoperatingtimeandsurgicalcomplicationsinthesetwogroups.Result:Theaveragedrillingtimeforexposingthelacrimalsacwas36.8±5.2minutesinIGSgroupand45.4±8.4minutesinnon-IGSgroup.DrillingtimesinIGSgroupwerestatisticallyshorterthaninnon-IGSprocedures.TherewerenosurgicalcomplicationsinIGSgroup.IGSmayprovideusefulanatomicalinformationforassistingwideexposureofthelacrimalsac,particularlyincaseswiththickmaxillarybone,revisionproceduresandcommoncanaliculiobstruction.Conclusion:Theimage-guidedelectromagneticnavigationsystemmightbeausefultoolinen-DCR.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(11):1633?1639,2016〕Keywords:涙?鼻腔吻合術鼻内法,画像支援型磁場式ナビゲーションシステム,鼻涙管閉塞,総涙小管閉塞,内視鏡下副鼻腔手術.endoscopicendonasaldacryocystorhinostomy,image-guidedelectromagneticnavigationsystem,lacrimalductobstruction,commoncanaliculiobstruction,endoscopicendonasalsinussurgery.はじめに涙?鼻腔吻合術鼻内法(endoscopicendonasaldacryocystorhinostomy:en-DCR)は,近年の鼻内手術用の内視鏡の開発により,眼科・耳鼻科の両科で普及してきている.手術では外切開を行わずに鼻内視鏡下に涙?窩骨壁を削除し,涙?を鼻内に大きく開窓する.涙?全体を広く露出するためには,CT画像やライトガイド光をもとに,涙?の位置をできるだけ正確に把握して手術を行う必要がある.一方で,画像支援型ナビゲーションシステムが耳鼻咽喉科領域にも応用され,内視鏡下副鼻腔手術(endoscopicendonasalsinussurgery:ESS)の手術支援機器として広く普及してきている.これは,鼻内視鏡下の手術操作部位をリアルタイムにCT画像上に表示し,手術を安全確実に支援するシステムである.今回筆者らは,耳鼻科手術用画像支援型磁場式ナビゲーションシステム(以下,ナビシステム)を併用してen-DCRを行ったので,その実際と有用性について報告する.I対象および方法ナビシステムはMedtronic社製FUSIONRENTを使用した.対象は,筆者らの施設でナビシステムを併用してen-DCRを行った19例(以下,ナビ併用群)とナビシステムを併用せずにen-DCRを行った21例(以下,ナビ非併用群)である.ナビ併用群は,鼻涙管閉塞13例・総涙小管閉塞6例,男性2例・女性17例,年齢は56?86歳(平均74.2±8.8歳)で,2014年10月?2015年5月に手術を施行した症例である.ナビ非併用群は,鼻涙管閉塞17例・総涙小管閉塞4例,男性2例・女性19例,年齢は58?90歳(平均76.9±9.1歳)で,2012年10月?2014年10月に手術を施行した症例である.必要な場合は鼻中隔矯正手術や副鼻腔手術を同日併施した.全症例で術前にナビシステム用のCT検査を施行した.各症例のCT所見および手術記録とビデオ画像を評価し,手術時間,合併症の有無を比較検討した.手術は全例局所麻酔下で施行し,Wormald1)やYoshidaら2)の方法に準じて行った.ナビ併用群では手術開始前にレジストレーションを行い,骨壁削除の際に併用した.【粘膜弁作製】ラジオ波高周波メスで中鼻甲介基部に茎をもつU字型粘骨膜弁を作製して,上顎骨前頭突起と涙骨を露出した.【骨壁削除】ナビ併用群では,ナビシステムの探索子を用いて骨面上で涙?上縁(涙?円蓋の高さ)・前縁・後縁(篩骨眼窩板との境界)に相当する位置を確認して骨壁削除の範囲を決定した.DCR骨削開用バーを用いて上顎骨前頭突起と涙骨を削開した.削開中も必要に応じて探索子で涙?の位置を確認し,涙?を広く鼻腔内に開放した.ナビ非併用群では,鼻内の解剖学的指標と涙?内のライトガイド光を参考にして涙?の位置を推定して骨壁削除を行った.【涙?開窓】ラジオ波高周波メスを用いて涙?を花弁状に開窓した.さらに総涙小管閉塞例では,涙?内腔を開放後,総涙小管内のライトガイド光を指標にしてラジオ波高周波メスで閉塞部位を明視下に切開した.全例にて涙管チューブを1本留置した.今回使用したナビシステムは操作性・安定性に優れた磁場式である.この方式では,患者頭部横に設置した磁場発生装置で,頭部顔面領域に限局した低エネルギー磁場を生成する.この磁場内で術野に挿入した探索子などの磁場センサー付手術器機を操作すると,器機先端部分の位置がナビ用モニターのCT画像にリアルタイムで表示される(図1).術者は内視鏡下の手術操作部位を,内視鏡用モニター画像とナビ用モニターのCT画像とで同時に確認しながら手術を進めることができる.事前に症例ごとの実解剖の位置(顔面表面)とCT画像データとを適合する登録作業(レジストレーション)が必要になるが,この作業は手術直前に短時間で施行可能である.〔別刷請求先〕高橋辰:〒013-0037秋田県横手市前郷二番町4-25高橋耳鼻咽喉科眼科クリニックReprintrequests:ShinTakahashi,M.D.,TakahashiENT&EyeClinic,2-4-25MaegoYokote-shi,Akita013-0037,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(95)1633図1磁場発生装置と磁場領域提供:日本メドトロニック(株)1634あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(96)