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3%ジクアホソルナトリウム点眼液の副作用の発現状況と継続治療効果に関する検討

2014年10月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科31(10):1513.1518,2014c3%ジクアホソルナトリウム点眼液の副作用の発現状況と継続治療効果に関する検討田川博田川眼科StudyofAdverseDrugReactionstoDiquafosolSodiumOphthalmicSolutionandEffectsofitsUseinContinuedTreatmentHiroshiTagawaTagawaGanka製剤改良後3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%;以下,現DQS)は2012年4月から多くのドライアイ患者に処方されている.そこで,DQSによる眼刺激を含めた副作用の有無と継続治療効果(自覚症状,他覚所見)について検討した.DQS使用歴がないドライアイ確定例と疑い例100例(男性11例,女性89例,平均年齢65歳;15.90歳)にドライアイ検査直後に製剤改良前のDQS(以下,旧DQS)を点眼投与して眼刺激症状がみられた場合,15分後に現DQSを点眼投与した.旧DQSで1例に軽い違和感がみられたが,現DQSでは違和感は生じなかった.全例に現DQSを処方したところ,点眼処方1カ月時の眼刺激症状発現率は2.4%であり,自覚症状・他覚所見は7.8割で改善がみられた(解析対象:85例).点眼処方3カ月時の眼刺激症状発現率は0%であり自覚症状・他覚所見は9割で改善がみられた(解析対象:58例).現DQSでは眼刺激の原因による点眼中止例は認められず,継続治療の効果が示唆された.Manypatientshavereceivedimproved3%diquafosolsodiumformulation(DIQUASRophthalmicsolution3%)(presentDQS)sinceApril2012.Westudiedtheoccurrenceofadversedrugreactionsandcontinueduse.TheoldDQSformulation(oldDQS)wasadministeredto100confirmedorsuspecteddry-eyepatientswithnohistoryofDQSuse(males:11,females:89;meanage:65years;agerange:15.90years).Ifeyeirritationdeveloped,presentDQSwasadministeredafter15min.OnesubjectexperiencedmilddiscomfortwitholdDQS,butnonedidwithpresentDQS.PresentDQSwasthenprescribedforallsubjects.After1month(analysispopulation:85)and3months(analysispopulation:58),eyeirritationdevelopedin2.4%and0%,respectively;subjectivesymptoms/objectivefindingsimprovedin70%.80%and90%,respectively.PresentDQSformulationcausesalmostnoirritation,andremainseffectivewithcontinueduse.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(10):1513.1518,2014〕Keywords:ドライアイ,ジクアホソルナトリウム点眼液,眼刺激,継続治療.dryeye,diquafosolsodiumophthalmicsolution,eyeirritation,continuedtreatment.はじめにドライアイ治療薬の一つである3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%;以下,DQS)は,水分とムチン両方の分泌促進作用を併せ持つ作用メカニズム1)で,ドライアイ患者でみられる涙液層の不安定化を改善する点眼剤として多くのドライアイ患者に処方されている.ドライアイは「さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」2)と定義される眼疾患で,長期の治療が必要である.しかし一方で,一般的には重症,また治療が長期にわたるほどドライアイ治療用点眼剤に使用されている防腐剤の角膜への影響が懸念されている.ベンザルコニウム塩化物は,その溶解性および幅広い抗〔別刷請求先〕田川博:〒003-0023札幌市白石区南郷通1丁目北1-1白石メディカル2階田川眼科Reprintrequests:HiroshiTagawa,M.D.,Ph.D.TagawaGanka.ShiroishiMedicalBldg.2F,Nango-dori1kita,Shiroisi-ku,Sapporo001-0023,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(91)1513 菌作用から点眼剤の防腐剤として最も多く用いられている3)が,その抗菌作用の強さゆえ,高濃度では眼刺激性などの眼障害を引き起こす可能性も報告されている4).日本でのDQS発売は2010年12月であり(以下,旧DQS),ドライアイ治療の新しい選択肢となった.旧DQSでの継続治療による自覚症状および他覚所見(涙液の異常と角結膜上皮障害)の改善は,既存薬との比較試験5)ならびに長期試験6)の結果からも明らかであったが,他方,一部の患者において,眼刺激の発現が点眼処方時および点眼の継続時における課題となっていた.その後の製剤改良により,旧DQSの有効性および保存効力は維持したまま防腐剤であるベンザルコニウム塩化物の濃度が低減された.2012年4月出荷分からは細胞毒性が低下したDQS(以下,現DQS)に切り替えられて現在広く流通しており,治療効果などに着目した臨床報告が期待されている.そこで本研究では,ドライアイ患者に旧DQSと現DQSを点眼して眼刺激症状の有無を確認後に現DQSを処方し,眼刺激を含めた副作用発現の有無ならびに慢性疾患であるドライアイに対する継続治療率を含めた治療効果(自覚症状,他覚所見)について検討した.I対象および方法1.対象2012年5月以降に田川眼科を受診し,「ドライアイ診断基準」(ドライアイ研究会,2006年)2)に準じたドライアイの自覚症状があるドライアイ確定例または疑い例で,これまでにドライアイの治療を受けたことのない患者とDQS以外の精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(以下,HA)などで治療中であるが改善傾向の認められない患者を対象とした.なお,試験対象者の選定時に背景因子(性別,年齢など)およびドライアイの自覚症状について調査した.2.方法および評価項目1)ドライアイの自覚症状は患者から訴えのあった症状のうちで,ドライアイQOL質問票「DEQS」7)の項目に一致する訴えをドライアイの自覚症状として,その変化を判定した.なお,新しいドライアイ症状が出現した場合は悪化と判定した.「ドライアイ診断基準」(ドライアイ研究会,2006年)2)に準じ,他覚所見の検査として,涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)の測定(角膜のフルオレセイン染色3回測定の平均値を採用),角膜の染色試験(フルオレセイン染色によるスコア判定;最小0.最大3点)および結膜の染色試験(フルオレセイン染色によるスコア判定,ブルーフリーフィルター使用;最小0.最大6点)を実施した.角結膜上皮障害判定の染色スコアは1以上の変化を,BUTは1秒以上の変化を有意な変化として判定した.この2項目が改善と悪化で異なった結果の場合は不変とした.1514あたらしい眼科Vol.31,No.10,20142)現DQSを処方することを前提として,点眼による眼刺激症状を確認するためと説明後,フルオレセインを洗い流した15分後に全試験対象者に旧DQSを点眼投与し眼刺激症状などを確認した.眼刺激症状が生じた場合,さらにその15分後に現DQSを点眼投与して再度眼刺激症状の有無を確認した.3)旧DQSまたは現DQSの点眼で眼刺激症状が生じなかった試験対象者に現DQSを1日6回の点眼で処方した.なお,旧DQSおよび新DQSの区別は製造番号に基づいて,直接,製造メーカーに確認した.また,これまでHAなどで治療中であった症例では,これまでの治療を継続してDQSを追加してもらった.処方1カ月および3カ月時での眼刺激症状などの副作用発現の有無,点眼継続の状況,自覚症状と他覚所見の変化をレトロスペクティブに検討した.副作用が発現した場合は,処置の有無と内容,転帰,試験薬剤との因果関係を検討した.有害事象のうち試験薬剤との因果関係を否定できないものを副作用とした.自覚症状と他覚所見はそれぞれ,「改善」,「不変」,「悪化」の3段階で評価した.3.統計解析有意水準は両側5%(p<0.05)とし,記述統計量は平均値±標準偏差で示した.角結膜上皮障害判定の染色スコアおよびBUTの統計解析は対応のあるt検定を用いて検定した.II結果1.対象および背景因子対象は男性11例,女性89例の計100例で,平均年齢は65歳(15.90歳)であった.100例中ドライアイの治療を受けたことのない患者は31例,DQS以外のHAなどでドライアイ治療中であるが改善傾向の認められない患者は69例であった.2.眼刺激を含む副作用,継続治療の効果に対する評価a.点眼直後の眼刺激を含む副作用の評価外来での旧DQS点眼投与直後に明らかな眼刺激症状を訴えた患者はいなかったが,1例が軽度の違和感を訴えた.15分後,この1例に現DQSを点眼投与したところ違和感は生じなかった.その結果,100例全例が現DQSの点眼処方対象となり,1日6回の点眼を全例に処方した.b.現DQS点眼処方1カ月時の副作用の有無,点眼継続の状況,および自覚症状と他覚所見の評価副作用の発現と自覚症状の評価は,点眼処方1カ月時に再診した65例,および1カ月以降の再診時に1カ月時点での症状の聞き取りが可能であった20例の合計85例を解析対象とした.他覚所見の評価は,点眼処方後1カ月時に再診した65例のみを解析対象とした.1)副作用の発現(表1)(92) 表1現DQS点眼処方1カ月,3カ月時の副作用発現と治療継続1カ月(n=85)*13カ月(n=58)*2副作用発現(率)治療継続(率)副作用発現(率)治療継続(率)なし64例(75.3%)54例(93.1%)あり21例(24.7%)80例(94.1%)4例(6.9%)58例(100.0%)(副作用ありの内訳)分泌物14例(16.5%)13例(92.9%)4例(6.9%)4例(100.0%)かゆみ4例(4.7%)0例(0.0%)..眼刺激2例(2.4%)2例(100.0%)..流涙1例(1.2%)1例(100.0%)..*11カ月時再診65例+1カ月以降の再診時聞き取り20例.*23カ月時再診58例.1カ月時の自覚症状3カ月時の自覚症状改善61例(71.8%)悪化悪化4例1例(4.7%)(1.7%)不変不変4例20例(23.5%)(6.9%)改善53例(91.4%)n=85(1カ月時再診65例+1カ月以降の再診時聞き取り20例)中断・中止:6例(7.1%;受診後1例が中止、「改善」「不変」のうち5例が1カ月以降に自己中断)悪化不変11例(16.9%)1カ月時の他覚所見改善53例(81.6%)1例(1.5%)n=65(1カ月時再診65例)中断・中止:0例(0.0%)n=58(3ヵ月時再診58例)中断・中止:1例(1.7%;分泌物の増加により再診後中止)3カ月時の他覚所見悪化0例(0.0%)不変6例(10.3%)改善52例(89.7%)n=58(3カ月時再診58例)中断・中止:1例(1.7%;分泌物の増加により再診後中止)図1現DQS点眼処方1カ月,3カ月時の自覚症状・他覚所見85例中64例(75.3%)では特に副作用の発現がなく,全例で点眼が継続されていた.「眼刺激症状」は2例(2.4%)に,また「流涙」は1例(1.2%)にみられたが,3例とも点眼継続に支障はなかった.「分泌物」は14例(16.5%)にみられたが,そのうち1例(7.1%)は分泌物が生じた数日後に自己判断で点眼を中断していた.「眼のかゆみ」は4例(4.7%)で,点眼処方後数日以内に発症し,全例で発症後すぐに中断していた.2)点眼継続の状況処方1カ月の時点で,85例中80例(94.1%)が点眼を継続していた.処方1カ月以降も点眼を継続したのは72例(84.7%)で,8例が点眼を中断した.中断した原因は,2例(93)あたらしい眼科Vol.31,No.10,20141515 3.84±1.13*3.92±0.91*432.62±0.713フルオレセイン染色スコア(点)2.62±1.231.41±1.35*1.16±1.05*,**00点眼前点眼1カ月時点眼3カ月時点眼前点眼1カ月時点眼3カ月時図3現DQS点眼処方によるBUTの変化BUT(秒)221図2現DQS点眼処方による角結膜上皮障害の変化平均値±標準偏差(n=25)*点眼前と比べて有意に延長(p<0.001,対応のあるt検定)平均値±標準偏差(n=34)*点眼前と比べて有意に低下(p<0.001,対応のあるt検定)**点眼1カ月時と比べて有意に低下(p<0.05,対応のあるt検定)が分泌物の増加,2例が自覚症状に変化のなかったこと,4例が自覚症状の改善したことであった.3)自覚症状および他覚所見(図1)自覚症状は85例中61例(71.8%)が「改善」を示し,「不変」は20例(23.5%)「悪化」は4例(4.7%)であった.他覚所見は65例中53例((,)81.6%)が「改善」を示し,「不変」は11例(16.9%),「悪化」は1例(1.5%)であった.c.現DQS点眼処方3カ月時の副作用の有無,点眼継続の状況,および自覚症状と他覚所見の評価副作用,自覚症状,他覚所見いずれの評価も,点眼処方3カ月時に再診した58例を解析対象とした.1)副作用の発現(表1)58例中54例(93.1%)で副作用の発現はなかった.「分泌物」は4例(6.9%)にみられ,「眼刺激症状」,「流涙」,「眼のかゆみ」はまったくみられなかった.2)点眼継続の状況処方3カ月の時点で再診した58例全例が点眼を継続していた.処方3カ月以降も点眼を継続したのは57例(98.3%)であった.1例は分泌物の継続が不快なため中断を希望した.3)自覚症状および他覚所見(図1)自覚症状は58例中53例(91.4%)が「改善」を示し,「不変」は4例(6.9%)「悪化」は1例(1.7%)であった.他覚所見は58例中52例((,)89.7%)が「改善」を示し,「不変」は6例(10.3%),「悪化」した例はなかった.d.角結膜上皮障害判定の染色スコアおよびBUTフルオレセインによる角結膜上皮障害判定の染色スコアは現DQS点眼処方前2.62±1.23点であったが,点眼処方1カ月時に1.41±1.35点(p<0.001,vs点眼前),点眼処方3カ月時では1.16±1.05(p<0.001,vs点眼前;p<0.05,vs点眼1カ月時)と有意に低下した(図2).BUTは現DQS点眼処方前2.62±0.71秒であったが,点眼処方1カ月時に3.84±1.13秒(p<0.001,vs点眼前),点眼処方3カ月時では平均3.92±0.91秒(p<0.001,vs点眼1516あたらしい眼科Vol.31,No.10,2014前)と有意に延長した(図3).III考按近年,日本におけるPCならびに携帯電話などのVDT(visualdisplayterminal)ユーザーの急増に伴い,ドライアイ患者数も増加している8).ドライアイは眼不快感や視機能異常を伴う眼疾患と定義2)され,慢性疾患であるために治療の継続性が重要となる.すなわち,ドライアイ治療用点眼剤に使用されている防腐剤の角膜への影響も配慮しつつ,ドライアイ患者の症状の軽減および改善を図るためには,患者に対していかに治療の継続を促していくかがわれわれの課題であろう.防腐剤であるベンザルコニウム塩化物は組成が単一ではなく,アルキル基がC8H17からC18H37である.濃度が低下するほど角膜毒性が低下するが,防腐剤としての効果も低下する.さらに,組成におけるアルキル基の違いによって防腐剤としての効果などに違いがある9).そのため,防腐剤として有効でありながら角膜障害を生じないベンザルコニウム塩化物の組成とその濃度の組み合わせの選択が重要と考えられるが,組成に関しては各製薬メーカーから情報公開されていない.DQSはドライアイのコアメカニズムである涙液層の安定性を改善させる特徴を有し,2010年12月の発売(旧DQS)以降ドライアイ治療に広く用いられている.HAを対照薬として検討した旧DQSの国内第III相比較試験3)では,旧DQSがHAに比べて角結膜上皮障害を有意に改善させた.また,52週間に及ぶ長期投与試験4)においても,旧DQSはドライアイ患者の自覚症状および他覚所見を点眼4週後までに有意に改善し,その効果は点眼52週後まで維持されていた.旧DQSの継続治療効果は明らかであったが,まれに生じる「眼刺激症状」が課題であった.その後,2012年4月出荷分からは防腐剤による眼刺激の低減を図った現DQSに切り替わっており,点眼処方への抵抗感が減弱したのと同時に,患者に継続治療を促しやすくな(94) ったといえる.しかしながら,現DQSの点眼処方による副作用発現の有無や継続治療の効果などについての臨床試験報告などがまだないことから,今回の検討に至った.旧DQSで課題とされていた「眼刺激症状」については,旧DQS治験時の発現率は6.7%(44/655例)1)であった.しかし,今回の研究では試験開始時に全例に旧DQSを外来で点眼したが「眼刺激症状」は1例もみられなかった.ただし,この点眼試験の前にフルオレセインを用いた検査を行い,その後に染色液を洗い流している.15分空けてから点眼試験を実施したが,3時間ごとに点眼する治療時に比べ,「眼刺激症状」が出にくかった可能性はある.しかしながら,現DQS点眼処方後1カ月間での「眼刺激症状」発現率は2.4%(2/85例)であり,旧DQSの治験時とは単純な比較はできないものの比較的低率で,2例とも症状は一時的かつ軽度であったため点眼継続に支障がなかった.本研究はレトロスペクティブに検討したものであり,対象は一般外来の中で通常の診療行為を行った症例である.そのため,これらの症例は,点眼剤の副作用を十分に説明したうえで点眼の継続に主眼をおいて治療を進めており,多施設の治療効果などを検討したプロスペクティブ研究との比較には慎重を要すると考えられる.今回の検討で「分泌物」は16.5%(14/85例)と高率に観察されたが,これについては患者に薬効を説明するなどの工夫により8割近くの患者(11/14例)で1カ月以降も点眼継続が可能であった.「流涙」が認められた1例は症状も軽度であり問題なく点眼を継続した.しかし,「眼のかゆみ」を訴えた4例(4.7%,4/85例)では全例が来院することなく点眼開始数日後に自己中断していたため,当初憂慮していた「眼刺激症状」よりむしろ「眼のかゆみ」の発現が点眼を継続するうえで支障になる可能性が考えられた.治療の継続率に関しては,現DQS処方後1カ月の時点では再診した患者の94%が点眼を継続していた.また,処方した全100例中でも80%以上の患者が点眼を継続していた.処方後3カ月の時点で点眼を継続していた患者の98%がそれ以降も点眼の継続を希望しており,継続率がきわめて高いと考えられた.今回の検討では,処方前に点眼による「眼刺激症状」の有無を確認し,そのときに他の副作用などについても十分に説明したことが継続率に寄与していると思われる.患者の訴えをよく聞いて,1日6回の点眼にこだわらず,点眼回数を調整することも治療の継続率に寄与していた.一方,1カ月以降点眼を継続した72例中,3カ月の時点で14例が再診していなかった.再診しなかった14例と継続した58例で副作用の発現率に差があったかについては不明である.内野らは涙液減少型およびBUT短縮型ドライアイ患者を対象にDQS点眼治療した場合の初診以降再診なし率が約33%であることを報告しており10),この報告と比較しても本研究の治療継続率は非常に高いと考えられた.内野らの研究が旧DQSを用いたものかは定かではないため,本研究の高い治療継続率が現DQSの効果に起因するものか比較することはできないが,現DQSのドライアイ治療における継続率は副作用の発現および効果の両方を合わせた患者満足度に起因することは間違いないと思われる.現DQS点眼処方後の自覚症状および他覚所見は7.8割の患者で「改善」がみられ,角結膜上皮障害を判定するフルオレセイン染色スコアは1カ月または3カ月の継続点眼後に有意に低下し,BUTも有意な延長が認められた.以上の結果は,添加物を変更して眼刺激発現率の低減をめざした現DQSにおいても,旧DQSの自覚症状および他覚所見の改善効果をそのまま維持していることを示している.さらに最近の研究では,DQSの涙液層への安定性改善作用により実用視力や波面収差など視機能の改善が認められた,との結果も報告されている11).視機能の改善はドライアイ特有の見えにくさの解消にもつながり,治療満足度がより高まることが示唆される.今回の検討から,現DQSは旧DQSと同様に自覚症状および他覚所見を有意に改善し,ドライアイ治療に有用な薬剤と考えられた.また,製剤改良により眼刺激症状などの副作用が軽減することで,現DQSの治療継続率がより良好になる可能性が考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)NakamuraM,ImanakaT,SakamotoA:Diquafosolophthalmicsolutionfordryeyetreatment.AdvTher29:579-589,20122)島﨑潤(ドライアイ研究会):2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,20073)島﨑潤:点眼薬の防腐剤とその副作用.眼科33:533538,19914)福井成行,池本文彦:点眼の刺激性に関する研究(第1報)各種物質の即時刺激性と連用による眼障害について.現代の臨床4:277-289,19705)TakamuraE,TsubotaK,WatanabeHetal:Arandomised,double-maskedcomparisonstudyofdiquafosolversussodiumhyaluronateophthalmicsolutionsindryeyepatients.BrJOphthalmol96:1310-1315,20126)山口昌彦,坪田一男,渡辺仁ほか:3%ジクアホソルナトリウム点眼液のドライアイを対象としたオープンラベルによる長期投与試験.あたらしい眼科29:527-535,20127)SakaneY,YamaguchiM,YokoiNetal:DevelopmentandvalidationoftheDryEye-RelatedQuality-of-LifeScorequestionnaire.JAMAOphthalmol.131:1331-1338,20138)内野美樹,内野裕一:疫学から知り得たドライアイの本質.(95)あたらしい眼科Vol.31,No.10,20141517 あたらしい眼科29:305-308,2012ジクアホソルナトリウム点眼治療後の患者満足度.臨眼9)UematsuM,KumagamiT,ShimodaKetal:Influenceof68:1403-1411,2013alkylchainlengthofbenzalkoniumchlorideonacutecor-11)KaidoM,UchinoM,KojimaTetal:Effectsofdiquafosolnealepithelialtoxicity.Cornea29:1296-1301,2010tetrasodiumadministrationonvisualfunctioninshort10)内野美樹,内野裕一,深川和己ほか:涙液層破壊時間(BUT)break-uptimedryeye.JOculPharmacolTher29:595短縮型ドライアイ患者に対するヒアルロン酸ナトリウムと603,2013***1518あたらしい眼科Vol.31,No.10,2014(96)