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正常眼圧緑内障患者に対するオミデネパグイソプロピルと 他の点眼薬の眼圧下降効果の比較

2026年1月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科43(1):108.113,2026c正常眼圧緑内障患者に対するオミデネパグイソプロピルと他の点眼薬の眼圧下降効果の比較東條直貴*1,2大塚光哉*1新田康人*1林篤志*1*1富山大学学術研究部医学系眼科学講座*2雄山アイクリニックCComparisonoftheIntraocularPressureLoweringE.ectsbetweenOmidenepagIsopropylandOtherGlaucomaMedicationsforNormalTensionGlaucomaPatientsNaokiTojo1,2),MitsuyaOtsuka1),YasuhitoNitta1)andAtsushiHayashi1)1)DepartmentofOphthalmologyGraduatteSchoolofMedicineandPharmaceuticalSciencesUniversityofToyama,2)OyamaEyeClinicC目的:正常眼圧緑内障未治療患者に対する,オミデネパグイソプロピル(OMDI)と他の緑内障点眼薬の眼圧下降効果を比較する.対象および方法:多施設後ろ向き研究である.点眼治療を開始してC3カ月経過を追うことができた未治療の正常眼圧緑内障(NTG)患者C175名を対象とした.初回点眼薬として,OMDIと比較対象にした点眼は,ラタノプロスト,タフルプロスト,チモロール,カルテオロールのC4種類とし,眼圧下降効果を比較検討した.結果:3カ月後のそれぞれの眼圧下降率は,OMDI9.2%,ラタノプロストC14.4%,タフルプロストC18.5%,チモロールC13.9%,カルテオロールC14.1%であった.OMDIは,ラタノプロストとタフルプロストと比較して,有意に眼圧下降効果が小さかった.結論:OMDIは,他のプロスタグランジン点眼と比較してCNTGに対する眼圧下降効果が小さい.CPurpose:ToCcompareCofCtheCintraocularpressure(IOP)loweringCe.ectsCbetweenComidenepagCisopropyl(OMDI)andotherglaucomamedicationsfornormaltensionglaucomapatients.SubjectsandMethods:Thisretro-spectiveCmulticenterCstudyCinvolvedC175CpatientsCwithCnormalCtensionCglaucomaCwhoCwereCpreviouslyCuntreatedCandwhowerefollowedformorethan3monthsaftertopicaltreatment.ThefourmedicationsusedforcomparisonwithCOMDICwereClatanoprost,Cta.uprost,Ctimolol,CandCcarteolol,CandCtheirCIOPCloweringCe.ectsCwereCcompared.CResults:TheIOPreductionrateat3monthsafterinitiationoftreatmentwas9.2%forOMDI,14.4%forlatano-prost,18.5%forta.uprost,13.9%fortimolol,and14.1%forcarteolol.OMDIhadthesmallestIOPreductione.ect,andwassigni.cantlysmallerthanlatanoprostandta.uprost.Conclusion:TheIOPreductione.ectofOMDIwassmallerthanthatoftheotherprostaglandinmedicationstested.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(1):108.113,C2026〕Keywords:オミデネパグイソプロピル,正常眼圧緑内障,緑内障点眼治療,EP受容体.omidenepagCisopropyl,Cnormaltensionglaucoma,glaucomamedicationtreatment,EPreceptor.Cはじめにオミデネパグイソプロピル(omidenepagCisopropyl:OMDI)(エイベリス)はC2018年C11月に日本で発売された緑内障点眼薬である.FP受容体ではなくCEP受容体に作用することで,従来のプロスタグランジン点眼の副作用である,眼瞼への色素沈着,睫毛伸長,眼瞼陥凹などの副作用を抑えることができる点眼薬である1,2).これまでにCOMDIの眼圧下降効果に関する研究はいくつかあるが,その多くは高眼圧の症例を含んでいる.そのため,眼圧下降率は高く表示される傾向にある3).実際に多治見スタディの結果から,日本の原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG)のC92%は正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)とされ,緑内障治療前の平均眼圧はC15.4CmmHgと報告されている4).NTG患者に対するCOMDIの効果の報告もあるが,他の点眼と比較している報告は少ない5,6).〔別刷請求先〕東條直貴:〒930-0229富山県立山町前沢新町C472雄山アイクリニックReprintrequests:NaokiTojo,M.D.,OyamaEyeClinic,472Maezawashinmati,Tateyamatown,Toyama930-0229,JAPANC108(108)今回筆者らは,NTG患者に対するCOMDIの眼圧下降効果を他の点眼薬と比較した.比較対象は,緑内障のガイドラインでも第一選択薬に推奨されているCFP受容体作動薬のラタノプロストとタフルプロスト(タプロス),また,Cb遮断薬点眼であるチモロール,カルテオロールのC4剤とした.CI対象および方法この研究はC2施設による後ろ向き研究であり,富山大学附属病院の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号R2024037).2020年C5月.2023年C12月に,富山大学附属病院,または雄山アイクリニックでCNTGと診断され,緑内障に対する治療をまったく行ったことがない患者,または以前緑内障の治療を行っていたが,中断してC3カ月以上点眼治療を行っていない患者を対象とした.すでに緑内障の外科的治療をしている患者は除外した.緑内障の診断には,細隙灯顕微鏡検査,隅角検査,眼底検査,光干渉断層法(opticalCcoherencetomography:OCT),Humphrey視野検査を施行し,緑内障を専門とする医師により診断された.隅角検査でCShe.er分類CGrade2以上は閉塞隅角緑内障の可能性があるため,本研究から除外した.また,落屑緑内障や他の続発性緑内障の患者は除外した.ベースライン眼圧の定義は,未治療の状態でC2回別の日に受診してもらい,そのつど測定したC2回の平均眼圧とした.POAGの患者でベースライン眼圧がC21CmmHg以下の患者をCNTGと定義し,これらの患者を対象とした.眼圧は全例でCGoldmann圧平式眼圧計によって測定された値を用いた.眼圧測定時間は日内変動などを考慮していない.緑内障の治療プロトコールとしては緑内障の点眼治療を行っていない状態で,2回のベースライン眼圧測定後に緑内障の点眼治療を開始した.緑内障点眼薬は担当医の判断にて選択された.点眼治療は眼圧下降効果の確認に加えて副作用の確認の意味も含め,両眼に緑内障がある患者に対しても全例で片眼緑内障点眼薬トライアルを行った.両眼同時に点眼治療を開始した患者は本研究から除外した.基本的に緑内障性神経障害が強いほうの眼を片眼緑内障点眼薬トライアルの対象とした.点眼開始後約C1カ月後に受診して眼圧測定を行い,この点眼で継続可能か確認した.眼圧下降が不十分でないかどうかや結膜充血などの副作用の有無を確認し,患者の希望も聞いて,点眼変更が望ましいと担当医が判断した場合は変更した.1カ月後に点眼変更なしで問題ないと判断された患者は,次回(約C3カ月後)の眼圧を測定した.本研究では,OMDI,ラタノプロスト,タフルプロスト,チモロール,カルテオロールのC5剤のC1カ月後とC3カ月後の眼圧値と眼圧下降率を比較検討した.眼圧下降率は,ベースライン眼圧を基準にして点眼治療後の眼圧値から算出した.OMDIを中心に他の点眼治療をCpaired-t検定でC2群間比較を行った.本研究では,2群間の年齢が有意に異なるというケースを認めたため,年齢因子を排除してC2群間を統計比較する共分散分析(analysisofcovariance:ANCOVA)も行った.統計ソフトはCJMPPro14を使用した.初回から上記C5種類の点眼の単剤治療以外の点眼を処方された患者,初回から配合剤を使用した患者およびC3カ月以内に追加点眼治療や手術治療を行った患者データは除外した.1カ月目で点眼を変更した症例においては,1カ月目までのデータを用いることにした.CII結果本研究の包括基準を満たしたC175名・175眼を解析した.表1に患者データを示す.未治療時の平均眼圧はC14.9mmHgであった.表2にC5種類の点眼別のデータを示す.タフルプロストの処方例がもっとも多かった.年齢分布は図1に示した.年齢に関しては,OMDIとチモロールは若年者に多く処方されていた傾向にあった.OMDIを中心に,他のC4剤との比較を表3~6に示す.表3のラタノプロストとCOMDIの比較では,有意にOMDIは若年者に処方された.OMDIはC15例中C14眼で女性に処方されていた.点眼治療後に両薬剤とも有意な眼圧下降を認めた.点眼C1カ月後の眼圧下降率を比較すると,ラタノプロストはC18.2%,OMDIはC9.9%と,paired-t検定ではラタノプロストのほうが有意に高いという結果であった.また,ANCOVAにおいても,3カ月後の眼圧下降率に有意差を認めた.OMDI群では,1カ月後に眼圧下降が不十分と判断された患者はC6眼であったため,その患者は別の点眼に変更した.眼圧は下降していたが,充血のため点眼継続困難と判断された患者がC1名であった.3カ月後にはC1カ月後に眼圧がよく下がっていると判断された患者が含まれるが,眼圧値も眼圧下降率も大きくは変化しなかった.表4のタフルプロストとCOMDIの比較でもCOMDIのほうが有意に若年者に処方されていた.点眼C3カ月後の眼圧下降率は,paired-t検定ではタフルプロストのほうが有意に高いという結果であった.また,ANCOVA検定においても,3カ月後の眼圧値に有意差を認めた.表5のチモロールとCOMDIの比較では年齢にも差はなく,両方とも若年者に使用されていた.両群で眼圧値,眼圧下降率に有意差はなかった.表6のカルテオロールとCOMDIの比較では年齢のみ有意差が出たが,ほかに有意差はなかった.1カ月後に点眼を変更した理由を眼圧下降が不十分と判断されたためと点眼の副作用のための二つに分類した.結果を表7に示した.眼圧下降が不十分という明確な定義はなく,担当医が術前眼圧と比較して眼圧下降効果が不十分と判断して変更したものとした.副作用についても,患者が副作用が表1患者背景パラメータ年齢中心角膜厚ベースライン眼圧ベースラインCMD平均±標準偏差65.9C±13.1歳534C±32Cmm14.9C±3.1CmmHgC.4.48±4.08CdBC表2点眼別眼圧と眼圧下降率OMDI(1C5眼)ラタノプロスト(1C7眼)タフルプロスト(1C10眼)チモロール(1C7眼)カルテオロール(1C6眼)年齢C47.5±10.4歳C65.2±13.2歳C67.8±11.6歳C52.6±14.8歳C69.3±9.8歳年齢の範囲31.C67歳41.C85歳34.C91歳31.C74歳44.C83歳ベースライン眼圧C14.2±1.6CmmHgC15.1±2.8CmmHgC14.5±2.7CmmHgC14.6±2.5CmmHgC14.8±2.3CmmHg点眼C1カ月後眼圧C12.9±2.5CmmHgC12.4±2.1CmmHgC12.0±2.4CmmHgC12.7±2.3CmmHgC12.6±2.4CmmHg1カ月後の眼圧下降率C9.9±13.4%C18.2±9.0%C16.6±11.5%C12.6±10.3%C14.4±10.8%点眼C3カ月後眼圧C12.9±1.2CmmHgC12.8±2.5CmmHgC11.7±2.6CmmHgC12.6±2.4CmmHgC12.7±1.9CmmHg3カ月後の眼圧下降率C9.2±6.2%C14.4±12.1%C18.5±11.0%C13.9±10.0%C14.1±9.8%(歳)1009080706050403020100図1年齢分布あっても問題ないという場合は継続するケースもあり,担当医が点眼変更が望ましいと判断した症例とした.初回点眼から変更が必要と判断された割合は,OMDI46.7%,ラタノプロストC5.9%,タフルプロストC10.9%,チモロールC5.9%,カルテオロールC18.8%であり,OMDIが眼圧下降不良や充血が多いという結果であった.III考按緑内障の診断後第一選択の治療は点眼が主流である.なかでも第一選択薬として推奨されているものとして,FP受容体作動薬のプロスタグランジン製剤,EP受容体作動薬のプロスタグランジン製剤,Cb遮断薬があげられる.冒頭でも触れたように,FP受容体作動薬のプロスタグランジンは,眼瞼への色素沈着,睫毛伸長,眼瞼陥凹などの副作用が生じる可能性がある.今回は,とくに副作用の頻度の高いトラボプロストやビマトプロストは処方を控えた研究となった7).実臨床では,若い女性など容姿を気にする患者に対して,このような副作用の可能性がある点眼は避ける傾向にあると予想される.本研究でもCOMDIはCFP受容体作動薬と比較し,有意に若年者に処方されていた.そのため,今回は二つの方法で統計学的に比較を行った.リアルワールドでは,OMDIは白内障術後にも使用できないことから,他の点眼薬と比べて若い患者に多く処方されやすいのではないかと推測する.その点を考慮すると,年齢因子を除去した検定が正しいとは限らないとも考えられる.本研究では,タフルプロストの処方が多かった.とくに眼圧の低いCNTG患者に対しては,ラタノプロストよりタフルプロストのほうが眼圧下降率が高かったという報告がある8).OMDIはラタノプロストに対して非劣性であると報告されているが,本研究では,NTG患者に対して有意に眼圧下降率が低いという結果であった.1カ月後に眼圧下降が不十分であった患者を除外したC3カ月後の眼圧下降率も低いという結果であった.また,Cb遮断薬と比較しても有意差はない表3ラタノプロスト対OMDIラタノプロストCOMDIp値※p値†年齢C65.2±13.2歳(C17眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C15.1±2.8CmmHg(1C7眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.275C0.445点眼C1カ月後C12.4±2.1CmmHg(1C7眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.429C1.0001カ月後の眼圧下降率C18.2±9.0%(1C7眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.0166C0.716点眼C3カ月後C12.8±2.5CmmHg(1C6眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.948C0.4653カ月後の眼圧下降率C14.4±12.1%(C16眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.252C0.037※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表4タフルプロスト対OMDIタフルプロストCOMDIp値※p値†年齢C67.8±11.6歳(C110眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C14.5±2.7CmmHg(1C10眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.7572C0.473点眼C1カ月後C12.0±2.4CmmHg(1C10眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.154C0.1881カ月後の眼圧下降率C16.6±11.5%(C110眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.257C0.365点眼C3カ月後C11.7±2.6CmmHg(9C8眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.221C0.0393カ月後の眼圧下降率C18.5±11.0%(C98眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.0212C0.074※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表5チモロール対OMDIチモロールCOMDIp値※p値†年齢C52.6±14.8歳(C17眼)C47.5±10.4歳(C15眼)C0.279ベースライン眼圧C14.6±2.5CmmHg(1C7眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.64C0.872点眼C1カ月後C12.7±2.3CmmHg(1C7眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.793C0.4261カ月後の眼圧下降率C12.6±10.3%(C17眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.438C0.365点眼C3カ月後C12.6±2.4CmmHg(1C6眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.789C0.3343カ月後の眼圧下降率C13.9±10.0%(C16眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.241C0.157※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表6カルテオロール対OMDIカルテオロールCOMDIp値※p値†年齢C69.3±9.8歳(C16眼)C47.5±10.4歳(C15眼)<C0.0001ベースライン眼圧C14.8±2.3CmmHg(1C6眼)C14.2±1.6CmmHg(1C5眼)C0.457C0.511点眼C1カ月後C12.6±2.4CmmHg(1C6眼)C12.9±2.5CmmHg(1C5眼)C0.683C0.3151カ月後の眼圧下降率C14.4±10.8%(C16眼)C9.9±13.4%(C15眼)C0.227C0.482点眼C3カ月後C12.7±1.9CmmHg(1C3眼)C12.9±1.2CmmHg(8眼)C0.815C0.6653カ月後の眼圧下降率C14.1±9.8%(1C3眼)C9.2±6.2%(8眼)C0.196C0.265※:Paired-t検定.†:ANOVA検定.表7点眼変更理由OMDI(15)ラタノプロスト(17)タフルプロスト(1C10)チモロール(17)カルテオロール(16)眼圧下降不十分6(4C0.0%)1(2C.6%)8(7C.2%)1(5C.9%)3(1C8.8%)点眼アレルギー1(6C.7%)C04(3C.6%)C0C0Cものの,眼圧下降率は低かったという結果であった.充血の割合も多く,充血でCOMDI点眼治療を中止となった患者以外でも充血する患者は散見された.井上らは,NTG患者に対するCOMDI点眼治療により,ベースライン眼圧C15.5C±2.7CmmHgからC12カ月後にC13.7C±2.3mmHg(平均眼圧下降率はC9.3%)に下降したと報告している6).中澤らの報告では,NTGに対してはC1.5CmmHgの眼圧下降を認めたと報告している9).本研究でCOMDIを使用した患者データでは,ベースライン眼圧がC14.2C±1.6CmmHgとさらに低く,3カ月後の眼圧はC12.9C±1.2CmmHg(平均眼圧下降率C9.2%,C.1.3CmmHgの下降)であった.眼圧下降率においては既存の報告と同等の結果であり,NTG患者においては,FP受容体作動薬と比較しても非劣性であるとはいえない結果となった.一方で尾崎らは,新規にCOMDI点眼治療で,ベースライン眼圧C14.1C±3.9CmmHgからC6カ月後にC11.6C±2.2CmmHg(平均眼圧下降率はC17.7%)に下降したと報告しており10),金森らもベースライン眼圧C17.1C±2.2CmmHgからC6カ月後にC13.9C±2.4CmmHg(平均眼圧下降率はC18.7%)に下降したと報告している11).このように,FP受容体作動薬と同等の眼圧下降効果が得られたとの報告もある.井上らは,副作用である充血はC11.0%であると報告している5).中澤らは,20%の患者が眼圧下降不十分や結膜充血のためにCOMDI点眼を中止したと報告している12).尾崎らは,OMDIのノンレスポンダーの割合はC34.7%であったと報告しており,筆者らの研究でもC40%と,FP受容体作動薬と比較して高いという結果であった10).また,ノンレスポンダーと判断された患者C6眼のベースライン眼圧はC14.9C±1.5mmHgで,点眼治療C1カ月後の平均眼圧はC15.5C±1.0CmmHgであった.OMDIはCFP受容体作動薬と比較し,ノンレスポンダーの割合が多く,結膜充血も生じることは念頭におく必要がある.またCBacharachらはCOMDIとチモロールの眼圧下降効果の比較を行ったが,同等であったと報告している13).しかし,チモロールの治療法が眼圧下降効果にばらつきが大きいと述べている.本研究でもC3カ月後のチモロールとCOMDIの眼圧下降効果は同等であり,平均眼圧下降率の標準偏差はOMDIよりチモロールのほうが大きいという結果であった.Cb遮断薬点眼は自律神経に作用するため,効果は個人差が大きいと予想される.本研究で,OMDIのノンレスポンダーに対して,Cb遮断薬に変更した症例は,5例であったが,眼圧C13.6C±2.2mmHgからC3カ月後にC12.0C±2.7CmmHg(平均眼圧下降率はC12.1C±13.3%)に下降した.この研究は,後ろ向き研究であり,初回の点眼選択や,点眼変更も担当医の判断であり,明確に定義されていない.またCOMDI群で明らかに若年者が多い.チモロール群でも若年者が多いが,これは眼瞼への色素沈着などの副作用を配慮した結果であり,バイアスがかかっている.しかしCOMDIは,白内障術後に使用できない点から,実臨床では高齢者に使用しにくい点もある.OMDIの点眼治療患者数も非常に少ないため,信頼度は低いデータである.また,3カ月という短期間のため,FP受容体作動薬の点眼に特有の副作用が評価できていない.CIV結論OMDIのCNTG患者に対する眼圧下降効果は,従来のCFP受容体に作用する点眼薬よりも低いという結果であった.またCb遮断薬点眼と比べ眼圧下降効果は有意差を認めなかった.FP受容体作動薬の副作用を懸念するCNTG患者に対してはCOMDIを選択する場合もあるが,OMDIに対してノンレスポンダーや副作用が生じる患者にはCb遮断薬点眼も選択肢になりうると考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatsuoCM,CMatsuokaCY,CTanitoM:E.cacyCandCpatientCtolerabilityCofComidenepagCisopropylCinCtheCtreatmentCofCglaucomaCandCocularChypertension.CClinCOphthalmolC26:C1261-1279,C20222)InoueCK,CShiokawaCM,CKatakuraCSCetal:PeriocularCadversereactionstoomidenepagisopropyl.AmJOphthal-molC237:114-121,C20223)AiharaCM,CLuCF,CKawataCHCetal:OmidenepagCisopropylCversusClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCocularhypertension:theCphaseC3CAYAMECStudy.CAmJOphthalmolC220:53-63,C20204)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapanese:theCTajimiCStudy.OphthalmologyC111:1641-1648,C20045)InoueK,ShiokawaM,Kunimatsu-SanukiSetal:Three-yearCe.cacyCandCsafetyCofComidenepagCisopropylCinCpatientsCwithCnormalCtensionCglaucoma.CJpnCJCOphthalmolC68:206-210,C20246)InoueCK,CShiokawaCM,CKunimatsu-SanukiCSCetal:One-yearCe.cacyCandCsafetyCofComidenepagCisopropylCinCpatientswithnormal-tensionglaucoma.JOculPharmacolTherC38:354-358,C20227)InoueCK,CShiokawaCM,CWakakuraCMCetal:DeepeningCofCtheCupperCeyelidCsulcusCcausedCbyC5CtypesCofCprostaglan-dinanalogs.JGlaucomaC22:626-631,C20138)田邉祐資,菅野誠,山下英俊:正常眼圧緑内障に対するトラボプロスト,タフルプロスト,ビマトプロストの眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科29:1131-1135,C20129)NakazawaCT,CTakahashiCK,CKuwayamaCYCetal:InterimCresultsCofCpost-marketingCobservationalCstudyCofComide-nepagCisopropylCforCglaucomaCandCocularChypertensionCinCJapan.AdvTherC39:1359-1374,C202210)尾崎弘明,小林彩加,横尾葉子ほか:オミデネパグイソプロピル点眼液の1年後治療成績.臨眼76:1380-1386,C202211)金森章泰,金森敬子,若林星太:オミデネパグイソプロピル点眼液の効果と安全性の検討:平均C10カ月成績.臨眼C75:767-774,C202112)NakakuraCS,CKanamoriCA,CFukumaCetal:EvaluationCofCearlymedicationpersistencewithomidenepagisopropyl,atopicalCselectiveCprostaglandinCEP2Cagonist,CinCpatientsCwithglaucoma:aCretrospectiveCtwo-instituteCstudy.CBMJCOpenC11:e040301,C202113)BacharachCJ,CBrubakerCJW,CEvansCDGetal:OmidenepagCisopropylCversusCtimololCinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularhypertension:twoCrandomizedCphase3CTrials(SPECTRUM4and3)C.AmJOphthalmolC263:23-34,C2024***

ラタノプロスト単独投与への点眼治療薬変更による眼圧下降効果の多施設検討

2011年3月31日 木曜日

444(13あ6)たらしい眼科Vol.28,No.3,20110910-1810/11/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科28(3):444.447,2011cはじめにラタノプロストは1999年に日本で発売されて以来,その優れた眼圧下降効果の臨床試験は多数報告され1),b遮断薬を上回る眼圧下降効果が期待できる薬剤と考えられている2,3).2003年に発表された緑内障診療ガイドラインでは,「薬剤の効果が不十分な場合,あるいは薬剤耐性が生じた場合は,薬剤の追加ではなく薬剤の変更をまず考える.また,その場合,視神経障害の進行を阻止しうると考えられる眼圧レベル〔別刷請求先〕高井保幸:〒693-8501出雲市塩冶町89-1島根大学医学部眼科学講座Reprintrequests:YasuyukiTakai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShimaneUniversitySchoolofMedicine,89-1Enya,Izumo,Shimane693-8501,JAPANラタノプロスト単独投与への点眼治療薬変更による眼圧下降効果の多施設検討高井保幸*1谷戸正樹*1市岡博*2高梨泰至*3舩田雅之*4八田史郎*5河合公子*6小松直樹*7大平明弘*1*1島根大学医学部眼科学講座*2市岡眼科クリニック*3松江赤十字病院眼科*4魚谷眼科医院*5前嶋眼科*6山陰労災病院眼科*7鳥取大学医学部視覚病態学EffectofSwitchtoLatanoprostMonotherapyonIntraocularPressureReduction:MulticenterStudyYasuyukiTakai1),MasakiTanito1),HiroshiIchioka2),TaijiTakanashi3),MasayukiFunada4),ShirouHatta5),KimikoKawai6),NaokiKomatsu7)andAkihiroOhira1)1)DepartmentofOphthalmology,ShimaneUniversitySchoolofMedicine,2)IchiokaEyeClinic,3)DepartmentofOphthalmology,MatsueRedCrossHospital,4)UotaniEyeClinic,5)MaejimaEyeClinic,6)DepartmentofOphthalmology,SaninRosaiHospital,7)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity多施設において,他剤点眼にて目標眼圧(初期~中期:15mmHg,後期:15mmHg,末期:12mmHg)以下に達していない原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障症例52例99眼をラタノプロスト単独投与に変更した後の眼圧下降率および目標眼圧到達度を検討した.点眼変更前平均眼圧は17.5±4.0mmHgで,点眼変更2週後14.6±2.5mmHg,4週後14.2±2.8mmHg,8週後14.2±2.9mmHg,12週後13.9±2.6mmHgであり,変更前と比較して有意(p<0.01,pairedt-test)に下降し,12週後の平均眼圧下降率は20.9%であった.目標眼圧到達度は,点眼変更12週後において71.4%であった.単剤および多剤からラタノプロスト単独投与への変更は,視神経障害の進行を阻止しうると考えられる眼圧レベルに到達させるうえで有用な治療法と考えられる.Westudiedtheeffectofswitchingtolatanoprostmonotherapyonintraocularpressurereductionandtargetintraocularpressure(IOP)achievement.Subjectscomprised99eyesof52glaucomapatients,includingcasesofprimaryopen-angleandnormal-tensionglaucoma,whohadnotachievedtargetIOP(earlytomoderatestage:15mmHg,latestage:15mmHg,advancedstage:12mmHg)usingotheranti-glaucomaagents.TheIOPat2,4,8and12weeksaftertheswitchtolatanoprost(14.6±2.5mmHg,14.2±2.8mmHg,14.2±2.9mmHgand13.9±2.6mmHg,mean±SD,respectively)wassignificantlylowerthanthebaselineIOPof17.5±4.0mmHg(p<0.01forallcomparisons,pairedt-test).At12weeksafterswitching,themeanreductionofIOPwas20.9%andthetargetIOPachievementratewas71.4%.SwitchingtolatanoprostmonotherapycouldbeusefulforcontrollingIOPinpatientswhohavenotachievedthetargetIOPwithotheranti-glaucomaagents.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(3):444.447,2011〕Keywords:緑内障点眼治療,ラタノプロスト単独治療,目標眼圧,眼圧下降,多施設検討.anti-glaucomaagents,latanoprostmonotherapy,targetintraocularpressure(IOP),IOPreduction,multicenterstudy.(137)あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011445(目標眼圧)を設定することは合理的な方法である.」と記載されている4).これまで,ラタノプロスト単独投与への変更による眼圧下降効果について報告がなされている5~7)が,多施設において,個々の患者に対し目標眼圧を設定し,目標眼圧到達度を検討した報告は見当たらない.これらの観点から,ラタノプロスト単独への薬剤変更により十分な眼圧下降を得られるか,また,どの程度目標眼圧に到達できるか,他剤点眼において目標眼圧に達していない患者を対象に,薬剤変更試験によって検討したので報告する.I対象および方法多施設(7施設),前向き研究.平成2004年4月から平成2008年3月までの間に,各施設においてラタノプロスト以外の他剤点眼にて目標眼圧(初期~中期:15mmHg,後期:15mmHg,末期:12mmHg,病期分類はHumphrey視野における平均偏差が,.10dB≦平均偏差を早期~中期,.20dB≦平均偏差<.10dBを後期,平均偏差<.20dBを末期とした)以下に達していない原発開放隅角緑内障(POAG),正常眼圧緑内障(NTG)症例52例99眼(男性22例,女性30例,年齢74.2±9.2歳)について,washout期間を設けずにラタノプロスト単独投与に変更し,変更前・2週・4週・8週・12週・24週後の眼圧値を,症例単位で時刻を統一してGoldmann圧平式眼圧計で測定し,眼圧下降率および目標眼圧到達度を検討した.目標眼圧については,CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyによる30%眼圧下降(治療前21mmHgで目標眼圧15mmHg)の有効性8),あるいはShirakashiらによる15mmHg未満の眼圧下降の有効性についての報告9)を参考に,初期~中期,後期両者において15mmHgを目標眼圧と設定した.末期緑内障については,岩田の分類10)を参考として,12mmHgと設定した.変更前との眼圧は統計手法paired-t検定を用いて比較した.前治療薬の影響を除外するためには4週間前後のwash-out期間が必要であるが,その間の眼圧上昇によって視機能障害が進行する可能性を考慮し,今回はwash-out期間を設けなかった.表1に変更前の薬剤の組み合わせ,眼数を示す.単剤からの切り替えが85眼,2剤からの切り替えが14眼であった.ただし,本剤に対して過敏症である,レーザー照射術の既往がある,6カ月以内の内眼手術歴,眼感染症・ぶどう膜炎・眼症状を伴う全身疾患(糖尿病,自己免疫疾患)合併症例,妊婦または妊娠している可能性がある,その他主治医が不適当と判断した患者は除外した.ラタノプロスト点眼開始時に本研究の趣旨,点眼薬の効果・副作用を説明し,患者の同意を得た.II結果全症例の平均眼圧の経過(図1)は,投与前17.5±4.0mmHg(平均±標準偏差),点眼変更2週後14.6±2.5mmHg,4週後14.2±2.8mmHg,8週後14.2±2.9mmHg,12週後13.9±2.6mmHgであり,眼圧下降値は3.6±1.4mmHg,眼圧下降率20.8%であった.投与24週後には,14.6±2.7mmHg,眼圧下降値は2.9±1.3mmHg,眼圧下降率は16.8%であった(12週後および24週後p<0.01).個々の症例の眼圧下降率については図2に示す.単剤からの切り替え群では,平均眼圧は,投与前17.7±4.2mmHg,切り替え12週後13.9±2.7mmHg,眼圧下降値は3.8±1.5mmHg,眼圧下降率は21.5%であった.投与24週後には,平均眼圧は15.0±2.8mmHg,眼圧下降値は2.7±1.4mmHg,眼圧下降率は15.3%であった(12週後および24週後p<0.01).2剤からの切り替え群では,平均眼圧は,投与前16.3±2.9mmHg,切り替え12週後13.9±2.1mmHg,眼圧下降値は2.4±0.8mmHg,眼圧下降率は14.7%であった.投与24週後には,平均眼圧は12.3±0.9mmHg,眼圧下降値は4.0±2.0mmHg,眼圧下降率は24.5%であった(12週後および24週後p<0.01).目標眼圧到達度は,12週後は71.4%,24週後は56.3%であった.さらに今回は,病期別目標眼圧到達度を検討しており,特に後期緑内障患者での目標眼圧到達度が良好であった(表表1ラタノプロスト単独投与に変更前の点眼薬剤変更前の薬剤眼数ウノプロストンチモロールベタキソロールカルテオロールニプラジロールドルゾラミドブナゾシンウノプロストン+ブナゾシンチモロール+ブナゾシンウノプロストン+レボブノロール38眼30眼5眼4眼4眼2眼2眼6眼4眼4眼20.0018.0016.0014.0012.0010.008.006.00投与前2週後4週後6週後8週後12週後16週後20週後24週後(99)(49)(24)(62)(75)(83)(50)(45)(51)*pairedt-test:p<0.01眼圧(mmHg)********図1ラタノプロスト単独投与に変更後24週までの平均眼圧の経過446あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011(138)2).III考按一般に緑内障視野障害の進行は非常に緩徐で,眼圧下降治療による視野障害進行の抑制効果を検出するには,治療開始から数年間の経過観察が必要とされる.可能な限りの低眼圧を達成するために,治療開始時から最大許容薬物量を投与すれば,少なくない症例で過剰治療となり,また薬物の副作用,生涯にわたる薬物治療のコストの点においても適切ではない.そこで,治療開始時において患者のqualityoflifeの十分な維持が期待できる眼圧レベル(目標眼圧)を設定するという考え方が推奨されている.薬物の単剤療法と多剤併用療法を比較した場合,眼局所・全身性副作用,あるいは,コンプライアンス・アドヒアランスの観点において単剤療法が優れていると予想されるため,初期治療で目標眼圧に到達しない症例,あるいは薬物耐性により眼圧上昇をきたした症例では,薬物の追加ではなく,薬物の変更をまず考慮すべきであると推奨されている4).これまで,いくつかの報告により,ラタノプロストが単剤あるいは多剤からの切り替え薬としての有効性が示されている5~7).今回筆者らは,比較的多数例を対象とした多施設前向き検討により,目標眼圧に達していないPOAG,NTG症例において,単剤および2剤からラタノプロスト単剤への変更の眼圧下降効果,目標眼圧到達度について検討した.高田らの報告5)では,単剤からの変更群では12週後に3.4±2.2mmHg,24週後に3.8±2.6mmHgの眼圧下降が得られ,2剤からの変更群では12週後に3.3±1.7mmHg,24週後に4.2±2.9mmHgの眼圧下降が得られている.今回の検討においても,単剤からの変更群において同様の眼圧下降率を認め,2剤併用療法よりもラタノプロスト単独投与のほうが眼圧下降値が大きいという結果を得た.単剤からの切り替え群が多数占めていたため12週後には20.8%の良好な眼圧下降効果を得られたと考えられるが,2剤併用からの切替え群でも,眼圧下降率は高くはないが,1眼を除き全眼で眼圧下降し,12週後には約15%のさらなる眼圧下降を得ることができた.個々の症例で眼圧下降率を検討すると,12週後に10%以上の眼圧下降率を得たのが51眼,逆に10%以上の眼圧上昇をきたしたのは2眼であった.2003年に発表された緑内障診療ガイドラインでは,緑内障管理において,個々の症例における目標眼圧の設定が推奨された.目標眼圧を設定する利点として,眼圧管理がより計画的で厳密になることや,患者と医師が共通の目に見える目標をもつことによって治療意欲が向上することなどがあげられる.1999年のラタノプロスト発売以降,その優れた眼圧下降効果についての報告がなされている5~7)が,多施設において,個々の患者に対し目標眼圧を設定し,目標眼圧到達度を検討した報告は見当たらない.目標眼圧の設定方法には,緑内障の病期によりある特定表2病期別の目標眼圧到達度目標眼圧への到達度目標眼圧への到達度目標眼圧への到達度初期~中期後期末期眼数12週目標眼圧到達眼数眼数24週目標眼圧到達眼数眼数12週目標眼圧到達眼数眼数24週目標眼圧到達眼数眼数12週目標眼圧到達眼数眼数24週目標眼圧到達眼数533638191312884220率67.9%率50.0%率92.3%率100.0%率50.0%率0.0%図2各症例の眼圧下降率(12・24週後)6050403020100-10-2016111621263136414651566166717681眼圧下降率(%)眼圧下降率(%)161116212631364146514035302520151050-5-1012週後24週後(139)あたらしい眼科Vol.28,No.3,2011447の眼圧値まで下降させる方法と,ベースライン眼圧の一定割合に下降させる方法がある.今回,筆者らはwash-out期間を設けておらず,ベースライン眼圧の把握が困難であったため,病期により目標眼圧を設定した.設定した目標眼圧(初期~中期:15mmHg,後期:15mmHg,末期:12mmHg)は岩田分類10)よりも若干厳しいものとなっているが,それでも,12週後には約70%の目標眼圧到達度を得ることができた.平均年齢が74歳と比較的高齢者を対象とした研究であり,ラタノプロストそのものの眼圧下降効果に加えて,1日1回点眼によるコンプライアンス・アドヒアランスの改善効果が本研究の結果に影響した可能性が高いと推測される.本研究開始当時(2004年),ラタノプロストの強力な眼圧下降効果に関する報告5~7)に加えて,緑内障診療ガイドラインの発表(2003年)により,“最少の薬剤”による“目標眼圧の達成”が重要であるという認識が一般臨床にも拡大しつつあった.しかし,治療効果の判定に長期間を要する,視野変化が軽度で視野の悪化が許容できる範囲である,副作用・コンプライアンスなどの認容性に明らかな問題がなかった,他院からの紹介患者であったなどの理由で以前からの治療が継続され,治療薬変更までにはある程度の時間が経過してしまうことはしばしばであり,2004年の時点において“目標眼圧の設定”と“最少の薬剤”による治療がすべての患者において実践されていたわけではなかった.本研究において,初期~中期症例が相対的に多く含まれていることも,視野変化が軽度で悪化が許容できる範囲であったなどの理由からと考えられる.また,末期の4症例についても,従来の点眼で眼圧下降は得られていたものの,本研究により設定した目標眼圧には達していなかった症例であり,単剤でより強力な薬剤への変更でさらなる眼圧下降が期待される症例であった.今回の検討では,変更前薬物としてウノプロストン以外のプロスタグランジン(PG)製剤を含んでいない.近年,ラタノプロストとほぼ同等の眼圧下降効果を有するPG製剤が,臨床において使用可能となっており,これらのPG製剤を変更前薬物として含んだ場合には,本研究の結果は異なったものとなる可能性がある.症例ごとに,それぞれのPG製剤に対する反応性が異なる可能性も指摘されているため,PG製剤から他のPG製剤への切り替えも,今後,目標眼圧到達のための重要な選択肢となるかもしれない.慢性疾患である緑内障の治療は,しばしば長期間に及ぶため,眼圧下降薬は,その安全性と強力な眼圧下降効果を維持し,さらにコンプライアンスの良いものが望まれる.ラタノプロストは1日1回点眼で,眼圧下降効果が強力であり,単独療法は安全かつ24時間を通した良好な眼圧コントロールが期待されるため,漠然と多剤併用療法で眼圧コントロールされていた症例や,多剤併用療法によるコンプライアンス低下が疑われる症例には,試みる価値がある治療方法と考えられる.本論文の要旨は第20回日本緑内障学会(2009年11月,沖縄県)において発表した.文献1)植木麻里,川上剛,奥田隆章ほか:ラタノプロストの短期使用経験.あたらしい眼科17:415-418,20002)CamrasCB,WaxMB,RitchR:Latanoprosttreatmentforglaucoma:effectsoftreatingfor1yearandofswitchingfromtimolol.AmJOphthalmol126:390-399,19983)湯川英一,新田進人,竹谷太ほか:開放隅角緑内障におけるb遮断薬からラタノプロストへの切り替えによる眼圧下降効果.眼紀57:195-198,20064)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:778-814,20065)高田園子,橋本茂樹,有村英子ほか:ラタノプロスト単独への変更投与の検討.あたらしい眼科19:353-357,20026)斎藤昌晃,八子恵子:複数点眼使用例におけるラタノプロスト単独治療への切り替え.眼臨97:1965-1068,20037)小川美幸,庄司信行,林良子ほか:複数点眼症例におけるラタノプロスト単剤への変更の有用性.あたらしい眼科20:1011-1014,20038)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Theeffectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,19989)ShirakashiM,IwataK,SawaguchiSetal:Intraocularpressure-dependentprogressionofvisualfieldlossinadvancedprimaryopen-angleglaucoma:a15-yearfollow-up.Ophthalmologica207:1-5,199310)岩田和雄:低眼圧緑内障および原発開放隅角緑内障の病態と視神経障害機構.日眼会誌96:1501-1531,1992***