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新しくなった認定基準下での視覚障害者認定に関する 後ろ向き実態調査

2023年9月30日 土曜日

《第11回日本視野画像学会原著》あたらしい眼科40(9):1222.1227,2023c新しくなった認定基準下での視覚障害者認定に関する後ろ向き実態調査鈴村弘隆*1,6平澤一法*2,6坂本麻里*3,6萱澤朋泰*4,6山下高明*5,6新視覚障害認定実態調査研究グループ*6*1すずむら眼科*2北里大学医学部眼科学教室*3神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野*4近畿大学医学部・大学院医学研究科眼科学教室*5鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻感覚器病学講座眼科学分野*6松本長太(近畿大学医学部・大学院医学研究科眼科学教室)萱澤朋泰(近畿大学医学部・大学院医学研究科眼科学教室)杉山和久(金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学教室)宇田川さち子(金,沢大学医薬保健研究域医学系眼科学教室)池田康博(宮崎大,学医学部眼科学教室)山下高明(鹿児島大学大学院医,歯学総合研究科先進治療科学専攻感覚器病学講座眼科学分野),,生杉謙吾(三重大学大学院医学系研究,科臨床医学系講座眼科学),近藤峰生(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学),坂本麻里(神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野)中村誠(神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野)結城賢弥(慶應義塾大学医学部眼科学教室)庄司拓平(埼玉医科大学,眼科学教室)篠田啓(埼玉医科大学眼科学教室)大久保真司(,おおくぼ眼科クリニック),山崎芳夫(山崎眼,科),庄司信行(北里大学医学部眼科学,教室),平澤一法(北里大学医学部眼科,学教室),鈴村弘隆(すずむら眼科)CRetrospectiveSurveyontheRevisedCerti.cationforVisualFieldImpairmentHirotakaSuzumura1),KazunoriHirasawa2),MariSakamoto3),TomoyasuKayazawa4),TakehiroYamashita5)andResearchgrouponactualconditionsfortherevisedcerti.cationforthevisualimpairment6)1)SuzumuraEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalScience,KitasatoUniversity,3)DivisionofOphthalmology,DepartmentofSurgery,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,4)DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicine,5)DepartmentofOphthalmology,KagoshimaUniversityGraduateSchoolofMedicalandDentalSciences,6)ChotaMatsumoto(DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicine),TomoyasuKayazawa(DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicine),KazuhisaSugiyama(DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences),SachikoUdagawa(DepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences),YasuhiroIkeda(DepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicine,UniversityofMiyazaki),TakahiroYamashita(DepartmentofOphthalmology,KagoshimaUniversityGraduateSchoolofMedicalandDentalSciences),KengoIkesugi(DepartmentofOphthalmology,MieUniversityGraduateSchoolofMedicine),MineoKondo(DepartmentofOphthalmology,MieUniversityGraduateSchoolofMedicine),MariSakamoto(DivisionofOphthalmology,DepartmentofSurgery,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine),MakotoNakamura(DivisionofOphthalmology,DepartmentofSurgery,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine),KenyaYuki(DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine),TakuheiShoji(DepartmentofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversityFacultyofMedicine),KeiShinoda(DepartmentofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversityFacultyofMedicine),ShinjiOhkubo(OhkuboEyeClinic),YoshioYamazaki(YamazakiEyeClinic),NobuyukiShoji(DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalScience,KitasatoUniversity),KazunoriHirasawa(DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalScience,KitasatoUniversity),HirotakaSuzumura(SuzumuraEyeClinic)目的:2018年に改正された新視覚障害認定基準下での身体障害者手帳(手帳)の申請状況と視野障害の原因,等級分布を知ること.対象:2018年C7月.2020年C6月に視野障害を障害名として含む身体障害者診断書・意見書を発行された患者.方法:診断書・意見書から年齢,性別,判定用視野計,視野障害の原因・等級,手帳更新者では視野障害の前等級を調べた.結果:対象はC488例,年齢はC65.8±18.3歳(8.99歳).判定用視野計は自動視野計(AP)107例,Goldmann視野計(GP)381例だった.視野障害の原因は疾病が全体のC99.2%で,緑内障がC50.4%,網膜疾患C28.9%,視路疾患C10.9%などだった.視野障害等級は,2級C332例,3級C13例,4級C3例,5級C140例で,手帳更新者では,更新後の等級変動なしがC27例,等級上昇がC28例,等級下降がC1例みられ,3等級の上昇がC17例みられた.結論:原因の半数が緑内障だった.認定にはCGPがおもに使われていたが,APもC20%みられた.視野障害等級はC2級とC5級が多〔別刷請求先〕鈴村弘隆:〒164-0062東京都中野区本町C4-48-l7新中野駅上プラザC904すずむら眼科Reprintrequests:HirotakaSuzumura,M.D.SuzumuraEyeClinic,4-48-17-904Honcho,Nakano-ku,Tokyo164-0062,JAPANC1222(100)(100)C1222く,改正前と同様の傾向だった.CPurpose:Toinvestigatetheamendedvisualimpairmentcerti.cationinsubjectswithvisual.eldimpairment(VFI)C.SubjectsandMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,CweCinvestigatedCsubjectsCcerti.edCwithCVFICbetweenCJuly2018andJune2020,andevaluatedthedatasubmittedforthevisualimpairmentcerti.cation.Results:Thisstudyinvolved488cases(meanage:65.8C±18.3years,range:8-99years)C.Ofthose488cases,thestaticautomat-edperimetry(AP)wasCusedCforC107CandCtheCGoldmannCperimetryCwasCusedCforC381,CandCtheCcausativeCdiseasesCwereglaucoma(50.4%)C,CretinalCandCneurologicalCdiseases,CandCother.CTheCVFICgradeCwasCmainlyCGradeC2CinC332CcasesandGrade5in140cases.In28of56casesthatreceivedrecerti.cation,thegradeincreased.Conclusion:COur.ndingsrevealedthathalfofthecausativediseaseswereglaucoma,thatAPwasusedforcerti.cationin20%ofthecases,andthatthemajorityofthecaseswereVFIGrade2andGrade5,atrendthatissimilartothatinthepreviouscerti.cationcriteria.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(9):1222.1227,C2023〕Keywords:身体障害者,視覚障害,視野障害,視覚障害者認定基準,自動視野計,Goldmann視野計.personsCwithphysicaldisabilities,visualimpairment,visual.elddisturbance,visualimpairmentcerti.cationcriteria,auto-matedperimeter,Goldmannperimeter.Cはじめに平成C30(2018)年C7月より,身体障害者福祉法の視覚障害認定施行規則(以下,認定基準)が改正になり,視力・視野障害ともに認定基準が大きく変わった1).その概要は,視力障害は左右眼のうち矯正視力の良いほうの眼の視力で等級を判定すること,視野障害の判定に自動視野計(automatedperimeter:AP)による静的測定結果での認定基準が新たに明記されたことである.これに伴い,従来のCGoldmann視野計(Goldmannperimeter:GP)での動的測定結果による認定基準も見直された.この改正により,従来は視力障害でしか機能障害を評価できなかった黄斑領域の障害や,中心暗点や傍中心暗点といった視野障害についても,機能障害を評価できるようになった.そこで,本研究では新しい認定基準下での視野障害による身体障害者手帳申請状況および視野障害の原因と等級分布などを調査した.CI対象および方法研究デザイン:多施設共同,後ろ向き観察研究である.調査施設:日本視野画像学会の評議員所属施設のうち,本調査研究に参加を表明した近畿大学(松本長太,萱澤朋泰),金沢大学(杉山和久,宇田川さち子),宮崎大学(池田康博),鹿児島大学(山下高明),三重大学(生杉謙吾,近藤峰生),神戸大学(坂本麻里,中村誠),慶応大学(結城賢弥),埼玉医科大学(庄司拓平,篠田啓),おおくぼ眼科(大久保真司),山崎眼科(山崎芳夫),北里大学(庄司信行,平澤一法),すずむら眼科(鈴村弘隆)のC12施設C18名を新視覚障害認定実態調査研究グループとし,新視覚障害認定の実態調査を行った.対象者:選択基準は,調査施設にてC2018年C7月C1日.2020年C6月C30日のC2年間に,新規・更新申請者を問わず視野障害を障害名として含む身体障害者診断書・意見書(視覚障害用)を発行した症例とした.除外基準は,医師の判断により対象として不適当と判断された患者および研究へのデータ提供を拒否した患者とした.方法:参加施設で身体障害者手帳申請の診断書・意見書が発行された患者の診療録から診断書・意見書発行時の1)年齢,2)性別,3)視野障害の判定に用いられた視野計の種別(判定用視野計),4)視野障害をきたした原因,5)視野障害の等級,6)手帳更新者にあっては視野障害の前等級のC6項目について調べた.原因については,診断書・意見書の原因欄に複数の疾病などが記載されている場合は,その第一順位のものとした.疾病の分類では,原発先天緑内障は緑内障に,先天性疾患による続発先天緑内障は先天性に分類した.判定用視野計においてCGP,AP両者による判定結果の記載のあるものは,等級が上位の視野計を申請用とした.GP,APの等級が同じ場合の判定用視野計はCAPとして算定した.また,副次的項目として,両眼の矯正視力と視力障害基準該当者数および視覚障害の総合等級も調べた.倫理的事項:本研究は世界医師会「ヘルシンキ宣言」および厚生労働省・文部科学省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し,各施設の研究倫理委員会と研究機関の長の承認を得たうえで行った.インフォームド・コンセントについては,本研究が後ろ向きの観察研究であり,匿名化された情報のみを取り扱ったため,個人情報保護法に定める定義の個人情報には該当しない.このため,研究対象者から文書または口頭による同意取得は行わなかった.ただし,オプトアウトについてのポスターを各施設の外来または各倫理委員会ホームページに掲示した.例数806040200図1年齢分布対象の平均年齢はC65.8C±18.3歳(8.99歳,中央値C70歳)で,50歳以上のものがC402例(82.4%)を占め,ことにC70.85歳が195例で全体のC40.0%を占めた.表1視野障害の原因疾病例数(%)AP例数GP例数交通事故2(C0.4)C1C1その他の事故2(C0.4)C1C1緑内障246(C50.4)C73C173強度近視10(C2.0)C3C7網膜疾患141(C28.9)C22C119視路疾患53(C10.9)C4C49ぶどう膜炎16(C3.3)C1C15角膜疾患8(C1.6)C0C8先天疾患5(C1.0)C0C5その他の疾患5(C1.0)C2C3計C488C表3視野障害等級分布等級例数(%)自動視野計Goldmann視野計2332(C68.0)C40C292C313(2.7)C7C6C43(0.6)C3C0C5140(C28.7)C57C83II結果解析対象はC488例であった.内訳は,新規申請者がC432例,再申請者はC56例で,研究対象者となることへの拒否の申し出はなかった.手帳申請時の平均年齢はC65.8C±18.3歳で,最年少はC8歳,最高齢はC99歳だった.年代はC70.80歳代前半がもっとも多く,50歳以上の症例がC82.4%を占めた(図1).男女比は,295:193で,男性の平均年齢はC65.2C±17.7歳,女性の平均年齢はC66.7C±19.1歳で,男女の年齢分布に差はなかった(C|2=1.7665,p=0.1838).使用された視野計はCAPがC111件,GPがC395件であった.8例4例6例■AP■GP■AP<GP■AP=GP■AP>GP図2判定用視野計の種別APとCGPの両者による判定結果の記載のあったものがC18例あり,等級が上位の視野計を申請用とした.また,両者の等級が同じ場合は判定用視野計をCAPとし,判定用視野計はCAPがC107件,GPがC381件だった.G:Goldmann型視野計,G>A:自動視野計での等級よりCGoldmann型視野計での等級が上位のもの,CG=A:Goldmann型視野計での等級と自動視野計での等級が同位のもの,G<A:Goldmann型視野計での等級より自動視野計での等級が上位のもの,A:自動視野計.表2視野障害の原因疾病─網膜疾患・視路疾患の内訳網膜疾患視路疾患疾病例数(%)疾病例数(%)糖尿病網膜症C38(C7.8)黄斑変性C23(C4.7)網膜.離C7(C1.4)未熟児網膜症C3(C0.6)網膜色素変性症C61(C12.5)網膜血管障害などC9(C1.8)虚血性視神経症CLeber病C視神経萎縮C視神経腫瘍C脳卒中C脳腫瘍などC4(C0.8)12(C2.5)19(C3.9)3(C0.6)7(C1.4)8(C1.6)計C141計C53CこのうちCAP,GP両方による判定結果の記載のあったものがC18例あり,APでの等級が上位のものがC6例,GP,APでの等級が同一のものがC8例,GPでの等級が上位のものが4例あり,前2者14例はAPに,後者4例はGPに含め,判定用視野計はCAP107件(21.9%),GP381件(78.1%)だった(図2).申請原因は,484例(99.2%)が疾病で,その他は交通事故C2例(0.4%)とその他の事故C2例(0.4%)だった.疾病の内訳は,緑内障C246例(50.4%),網膜疾患C141例(28.9%),視路疾患C53例(10.9%)の順だった(表1).このうち,網膜疾患には,糖尿病網膜症C38例(7.8%),網膜色素変性症C61例(12.5%),黄斑変性C23例(4.7%)などがみられ,視路疾患には,視神経萎縮C19例(3.9%),Leber病C12例(2.5%),脳卒中C7例(1.4%)などがみられた(表2).判定用視野計別に疾病頻度をみると,APでは緑内障(69.5表45級視野障害の程度比較自動視野計(1C07例)Goldmann視野計(3C81例)両眼中心視野視認点数両眼中心視野角度1C/2≦20点≦40点41点≦記載なしC≦28°C≦56°C57°≦記載なし両眼開放CEstermanテスト視認≦100点C22(C20.6%)C10(9C.4%)C3(2C.8%)C4(3C.7%)周辺視野C重ね合わせ≦1/2かつ少なくとも1眼が>8C0°C38(1C0.0%)C12(3C.2%)C4(1C.1%)C20(5C.3%)点数101点C≦C9(8C.4%)C5(8C.4%)C0(0C.0%)C0(0C.0%)1/4重ね合わせ>C1/2C6(1C.6%)C3(0C.8%)C0(0C.0%)C0(0C.0%)表5手帳更新例(56例)の更新前後の視野障害等級更新前等級更新後等級C2C3C4C5非該当C2C21(3C7.5%)C4(7C.1%)C5(8C.9%)C14(2C5.0%)C3(5C.4%)C3C0C0C0C1(1C.8%)C0C4C0C0C0C0C0C5C0C0C1(1C.8%)C6(1C0.7%)C1(1C.8%)%)など各種疾患が広くみられ,両視野計の原因疾病の傾向には違いがみられた(Cochran-ArmitageCtrendtest:Z=.4.1301,p<0.0001).視野障害の等級分布は,2級(68.0%)とC5級(28.7%)で大半を占め,3級(2.7%),4級(0.6%)はわずかしかみられなかった(表3).視野計別の等級分布は,APでC2級C40例(37.4%),3級7例(6.5%),4級3例(2.8%),5級57例(53.3%)だったが,GPではC2級C292例(76.6%),3級C6例(1.6%),4級該当なし,5級C83例(21.8%)だった.両視野計ともC3,4級はほとんどみられなかったが,等級分布の傾向には差がみられた(Cochran-ArmitageCtrendtest:Z=7.1083,p<0.0001).このなかで,5級該当例をみると,中心視野障害のみでC5級に該当した例はCAPでC18例(30.5%),GPではC9例(10.8%)だった.一方,周辺視野障害のみでC5級に該当した例はAPでC7例(11.9%),GPでC24例(28.9%)と比率が逆転していたが,APとCGPの間でC5級該当数をみると,中心視野障害のみでの該当数と周辺視野障害のみでの該当数の傾向に有意な差はなかった(Cochran-ArmitageCtrendtest:Z=1.8274,p=0.0676)(表4).手帳更新者C56例での等級をみると,更新後の等級変動なしがC27例,等級上昇がC28例,等級下降が1例みられた.等級上昇では,1等級上昇がC5例,2等級上昇がC6例,3等級上昇がC17例みられた(表5).3等級上昇したものの原因は,緑内障(10件;35.7%)だった.視野障害を有する症例の視力障害等級への該当の有無をみると,285例(58.4%)が視力障害等級に該当し,複合障害を有することがわかった.各視力障害の等級の頻度はC1級:34例,2級:42例,3級:54例,4級C82例,5級:28例,6級:45例だった.また,少なくとも片眼の視力がC0.7以上のものはC125例で,このうち他眼の視力がC0.3以上のものが82例(16.8%)みられた(図3).総合等級は,視力・視野障害の合算で等級が上がったものはC84例(17.2%)で,すべてC1等級のみの上昇だった(図4).CIII考按平成C30年の認定基準改正後に,全国C12施設で発行された視野障害を原因とした視覚障害用の身体障害者診断書・意見書の記載内容についてアンケート調査を行った.本調査の対象者C488例の年齢構成は,平均年齢がC65.8歳で,50歳以降の症例が全体のC82.4%(402例)を占めていた.旧認定基準下での厚労省統計2)でも,視覚障害者数はC50歳以降に急増し,全視覚障害者のC86%で,男女比はほぼC1:1と報告されていたが,本調査の男女比はC3:2と男性がやや多かったものの,男女の年齢構成に統計的に差がなかったことから,本調査の対象者の年齢構成は旧基準下での視覚障害者の年齢構成とほぼ同じであると考えられた.判定用視野計は,新認定基準での最大の改正点の一つであるCAPでの申請が手帳申請例の約C20%にみられた.この数字が高いか低いかは,初めての調査であり,明確な判断はできないが,今回の調査対象が法改正直後の患者であったにもかかわらず,約C20%の症例がCAPでの申請であったことは,視野障害重症例ではCGPのほうが,被検者への負担が少ないとの報告3)はあるものの,緑内障を中心とする日常診療でのAPによる中心C10°内の検査の増加を考えれば,視野障害等視力の悪いほうの眼の視力1.521.2100161010.932210.8215000.73410110.605202000.5124021300.46220101200.311121210000.2143301011000.17751122100000.0911010100000100.08123201100011000.070015101100000000.0603012000001001000.05100015030310000000.043202118112330010000.0312331205401111000000.02342311017121110100000.01543212011274130101010FZ2131010000231200001010HB32312210140742012222002SL210112010101140021122110SL(-)40415762242511197365121140SL(-)SLMMND0.010.020.030.040.050.060.070.080.090.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.21.5視力の良いほうの眼の視力SL(-):光覚なし,SL:光覚弁,MM:手動弁,ND:指数弁図3視力分布級該当者の発見や申請例は徐々に増加するものと推測され視力障害る.視野障害の原因の第C1位は緑内障で全体のC50.4%を占め,視野障害1位を占め,2015年度の調査ではC28.6%となり,1988年の調査4)の約C2倍に増加していた.今回は視野障害に絞った調査ではあるものの,緑内障がC50%以上を占めたことは,APでの認定が可能になったこと,中心視野障害だけでも障害認定ができるようになったことが一因と考えられる.今後,APの使用が増えれば,さらに緑内障などでの視野障害等級該当者の頻度は増加するものと推測される.一方,網膜疾患のうち糖尿病網膜症や黄斑変性の頻度は減少しており,疾患の早期発見や治療法の進歩により視機能の温存が可能になってきているためと思われた.また,網膜色素変性症や視神経萎縮には現在有効な治療法がなく,障害者数も従来と変わらなかったものと思われた.平成C18年度身体障害者・児実態調査(2018年の厚生労働省資料)によれば,全国で視覚障害者の手帳保有者は約C31万人あり,1年間の新規手帳取得者は約C15,000人とされている5).一方,視覚障害認定基準に該当する障害を有する眼科受診者においても手帳申請者や取得者は約C30.50%といわれており6.8),本調査に参加した施設でもおよそC1,000名の視野障害該当者がいたものと推測される.これらのことから,視野障害に該当すると思われる患者には視野検査と視覚障害に対する種々の情報提供を積極的に行う必要があるとと総合等級:1級:2級:3級:4級:5級太枠内は等級上昇例図4視野障害等級と視力障害等級および総合等級もに,視野障害の進行がみられたら等級変動の可能性についても考慮して視野を評価する必要がある.視野障害等級の分布は,2級,5級が大多数で,3,4級が少なく,この傾向はCAP.GPともに同じだった.この理由として考えられることは,旧認定基準では,中心・周辺分離視野も周辺が残存しているためC5級にしか該当しなかったが,新認定基準では中心視野の状態のみで障害の評価が可能となったこと,APでの判定採用により中心視野障害が検出,明確化されやすくなったこと,GPでの周辺視野評価でCI/4の合計視野角度がC80°以下になれば,10°内狭窄と同等に扱えるようになったこと,緑内障のように主として中心C30°内のCAPでの視野検査で経過観察を行う疾病では,周辺視野障害の程度が十分把握されていなかったものが,APでも周辺視野の感度低下の状況を把握するようになったこと,が考えられる.さらに,緑内障が今回の調査対象のC50%を占めていたことは,認定基準改正前後の報告9,10)をみてもC2級とC5級が多数を占めたことに影響していると思われた.一方,3級,4級が少なかった理由は,GPでの中心視野障害の評価時に,I/2が視認できなければ視野角度をC0として取り扱うことになったこと,APでは,周辺視野がC71点以上あれば,中心視野障害の程度にかかわらずC5級とされること,緑内障では,周辺視野は後期まで比較的保たれていることも多く11,12),両眼開放CEstermantestでC70点以下になることが比較的少ないと考えられること,手帳更新例をみても,新認定基準になり等級が上がったもののうちC2段階以上上がったものがC80%にのぼることからも,5級からC4,3級と等級が上がる例より,5級からC2級に上がる例が多かったためとも考えられる.このような視野障害等級の偏りは,等級の境界値を将来改正する余地があることを示していると考えられる.視力障害についてみると,症例の約半数が視力障害にも該当するが,その程度はさまざまで,等級も比較的均等になっていた.これは,視力障害の基準1)が視力の良いほうの眼の視力とされたためと思われた.総合等級では,視野障害等級との合算でC1級となるものがC77例みられたが,3級,4級が少なく,視野障害等級分布が影響しているものと思われた.また,視力のみでの運転免許取得可能者がC82例(16.8%)もみられたことは,今後の運転免許取得基準を考えるうえでの問題点となるかもしれない.本調査にはいくつかの限界があった.まず,本調査が認定基準改正後の視野障害に対する多施設での初めての調査であったため,日本視野画像学会の評議員施設の一部からの症例収集であり,データ収集に限界があった可能性があった.また,障害該当者全員が手帳を申請していないとの報告もあり,本調査は視野障害者の全容を十分に知るには限界があった.認定基準改正直後のためCAPでの判定・申請がおよそ20%で,APとCGPの視野計間の判定や等級比較にも限界があった可能性があった.さらに,手帳申請時の視覚障害の原因としての疾病名や区分に統一された基準がなく,疾病名が多岐にわたったため原因疾病を正確に分類するには限界があった.今後,調査の地域,施設を増やしてより正確な視野障害の実態を知ることが必要と考えた.以上,平成C30年C7月に改正された視覚障害認定基準下での視野障害者の申請状況についてアンケート調査を行った.その結果,視野障害の原因の半数は緑内障であり,等級は68%がC2級だった.一方,視野障害等級該当者でも運転免許を取得できる視力を有するケースが約C17%みられたことから,視覚障害の自覚のない患者も多く存在することが示唆され,日常診療でも潜在視覚障害者の存在を意識し視野障害の把握に努める必要があると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)厚生労働省:「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」の一部改正について.障発C00427第C2号平成C30年C4月C27日厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知2)厚生労働省:厚労省統計情報・白書厚生統計要覧(令和C3年度)第3編社会福祉第3章障害者福祉第3-28表身体障害児・者(在宅)の全国推計数,障害の種類C×年齢階級別3)山口亜矢,蕪城俊克,平戸岬ほか:視覚障害認定における自動視野計とCGoldmann型視野計の比較.眼臨紀C14:C483-489,C20214)的場亮,森實祐基:視覚障害の原因疾患の推移.日本の眼科C91:1386-1390,C20205)厚生労働省:平成C18年身体障害児・者実態調査結果.厚生労働省報道発表資料統計調査結果,平成C20年C3月C24日6)守本典子,大月洋:岡山大学眼科におけるロービジョンサービス.あたらしい眼科C16:587-593,C19997)谷戸正樹,三宅智恵,大平明弘:視覚障害者における身体障害者手帳の取得状況.あたらしい眼科C17:1315-1318,C20008)藤田明子,斉藤久美子,安藤伸朗ほか:新潟県における病院眼科通院患者の身体障害者手帳(視覚)取得状況.臨眼C53:725-728,C19999)瀬戸川章,井上賢治,添田尚一ほか:身体障害者手帳申請を行った緑内障患者の検討(2012年版).あたらしい眼科C31:1029-1032,C201410)大久保沙彩,生杉謙吾,一尾多佳子ほか:2018年に行われた視覚障害認定基準改正後の視野障害認定状況─三重県における調査報告─.日眼会誌C126:703-709,C202211)布田龍佑:緑内障の長期予後と管理.日本視能訓練士協会誌C19:19-24,C199112)植木麻里,中島正之,杉山哲也ほか:開放隅角緑内障C20年の視野変化.あたらしい眼科C19:1513-1516,C2002***

2つの視野計による新しい視野障害等級判定─緑内障による検討─

2021年1月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(1):97.101,2021c2つの視野計による新しい視野障害等級判定─緑内障による検討─石井雅子*1,2間聡美*2末武亜紀*2福地健郎*2*1新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科*2新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻感覚統合医学講座視覚病態学分野NewVisualFieldImpairmentClassDeterminationUsingTwoPerimeters:ConsiderationDuetoGlaucomaMasakoIshii1,2)C,SatomiAida2),AkiSuetake2)andTakeoFukuchi2)1)DepartmentofOrthopticsandVisualSciences,FacultyofMedicalTechnology,NiigataUniversityofHealthandWelfare,2)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,GraduatedSchoolofMedicalandDentalSciences,NiigataUniversityC緑内障患者C65例のCGoldmann型視野計と自動視野計による視野障害等級について検討した.Goldmann型視野計での周辺視野角度,両眼中心視野角度と,自動視野計での両眼開放CEstermanテスト視認点数,10-2プログラム両眼視認点数を求めて視野障害等級判定を実施した.Goldmann型視野計での周辺視野角度が両眼ともにC80°以下の群では,6例全例(100.00%)が異級となった.一眼のみがC80°以下の群では,同級がC14例(46.67%),異級がC16例(53.33%),両眼ともに81°以上の群では,同級が19例(65.52%),異級が10例(34.48%)であった.二つの視野計での視野障害等級は,視野の残存状態,視覚特性,測定原理や検査条件の違いから乖離が生じる.このことに医療者は留意する必要がある.CPurpose:Toinvestigatethevisual.eldimpairmentgradeof65glaucomapatientsusingaGoldmannperime-terCandCautomaticCperimeter.CPatientsandmethods:ThisCstudyCinvolvedC65CglaucomaCpatientsCinCwhomCtheCperipheralvisual.eldangleandbinocularcentralvisual.eldangleweremeasuredusingtheGoldmannperimeter,andinwhomthebinocularopenEstermantestvisualrecognitionscoreand10-2programbinocularvisualrecogni-tionscorewithautomaticperimeterwerecalculatedtodeterminethevisual.eldimpairmentgrade.All65patients(100%)CweregradedwhentheGoldmannperimeterperipheralvisualanglewas80°Corlessinbotheyes.Whentheperipheralvisualanglewas80°Corlessinonlyoneeye,therewere14casesthatshowedthesamegrade(46.67%)CandC16CcasesCthatCshowedCdi.erentgrades(53.33%)C.CWhenCtheCperipheralCvisualCangleCwasC81°CorCmoreCinCbothCeyes,therewere19casesthatshowedthesamegrade(65.52%)and10casesthatshoweddi.erentgrades(34.48%).Conclusion:Ophthalmologyspecialistsshouldkeepawareofthefactthatthevisual.eldimpairmentgradesofCtheCtwoCperimetersCcanCdi.erCdueCtoCtheCresidualCstateCofCtheCvisualC.eld,CvisualCcharacteristics,CmeasurementCprinciples,andtheconditionsthatexistwhentheexaminationsareperformed.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(1):97.101,2021〕Keywords:視覚障害認定基準,視野障害等級,緑内障性視野障害,ゴールドマン型視野計,自動視野計.visualCimpairmentcerti.cationstandards,visual.eldimpairmentgrade,glaucomatousvisual.elddisorder,Goldmannpe-rimeter,automaticperimeter.Cはじめにしく低下し,その結果としてCactivityCofdailyCliving(ADL)緑内障は慢性進行性の視野障害をきたす代表的な疾患であも低下する.視野障害が進行した緑内障患者では読書,運る.視野障害の進行に伴い患者のCqualityoflife(QOL)は著転,移動の障害,認知能力の低下やうつを発症することも報〔別刷請求先〕石井雅子:〒950-3198新潟市北区島見町C1398新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科Reprintrequests:MasakoIshii,CPh.D.,DepartmentofOrthopticsandVisualSciences,FacultyofMedicalTechnology,NiigataUniversityofHealthandWelfare,1398Shimami-cho,Kita-ku,Niigata950-3198,JAPANC表1新しい身体障害者認定基準(視野障害)(文献C5より一部改変)Goldmann型視野計自動視野計I-4視標I-2視標両眼開放CEsterman視認点数プログラムC10-2両眼中心視野視認点数2級両眼中心視野角度C28°以下70点以下20点以下3級周辺視野角度が両眼ともにC80°以下両眼中心視野角度C56°以下40点以下4級5級両眼による視野が2分のC1以上欠損100点以下両眼中心視野角度C56°以下40点以下告されている1.3).わが国では,超高齢化に伴い緑内障患者が増加している4).視覚機能の低下した緑内障患者のCQOLを守るためには,社会資源を活用してCQOLの低下を防ぐことが重要である.視機能障害を対象とした補装具などの購入費用の補助やヘルパー派遣などのサービスを利用するには,身体障害者手帳の取得が条件となる.そのため,患者の視機能を身体障害者手帳の基準に照らして判定することが必要である.2018年C7月より新しい身体障害者手帳(視覚障害)の障害認定基準が施行された5).視野障害については,従来はCGold-mann型視野計での基準で認定されていたが,新基準では,Goldmann型視野計に加えて自動視野計による認定基準も設けられた.緑内障診療では古くからCGoldmann型視野計が用いられてきたが,Goldmann型視野計は視野全体を把握できるという利点をもつ一方で,検者の技量に左右され客観性に欠くことから,視野の定量には不向きである.近年では視野の定量性に優れ,検者の技量の影響を受けにくいコンピューター制御された自動視野計が広く普及している.しかし日常診療において,二つの視野計で視野障害等級判定の結果に違いがでることをしばしば経験する.今回筆者らは,Goldmann型視野計および自動視野計における視野障害等級判定を比較し,若干の知見を得たので報告する.CI対象および方法本研究は,視力および視野測定の結果を診療録から調査した後ろ向き研究である.ヘルシンキ宣言に従い,新潟大学倫理審査委員会の承認(承認番号:2019-0273)を得て実施された.対象は,2008年C11月.2019年C10月のC11年間に新潟大学医歯学総合病院を受診した緑内障患者のうち,Goldmann視野計(タカギセイコー)(以下,GP)での動的視野検査およびCHumphrey視野計(CarlCZeissMeditec)(以下,HFA)での両眼開放CEstermanテスト(以下,両眼CES)とプログラムC10-2(以下,10-2)を施行したC65例である.GPとCHFAの施行間隔はC6カ月以内とし,その間に病状の変化がみられた者および緑内障以外の視力および視野に影響する眼疾患を重複している者は除外した.C1.患者背景男性C33例,女性C32例,平均年齢C63.7C±12.3歳である.緑内障の病型は原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleglaucoma:POAG)がC41例,正常眼圧緑内障(normal-ten-sionglaucoma:NTG)がC21例,原発閉塞隅角緑内障(pri-maryangleclosureglaucoma:PACG)がC1例,落屑緑内障(exfoliationglaucoma:XFG)がC2例である.C2.方法視覚障害等級判定のパラメータである視力,GPでのCI-4周辺視野角度および両眼中心視野角度,HFAでの両眼CES視認点数およびC10-2両眼視認点数の平均,標準偏差,95%信頼区間を求めた.GPによる視野障害判定では,GPのCI-4周辺視野角度が両眼ともにC80°以下,一眼のみC80°以下,両眼ともにC81°以上のC3群に分類した.両眼CI-2中心視野角度からCGPでの視野障害等級C2級,3級,4級,5級,非該当の判定を行った.次にCHFAによる視野障害判定では,両眼CESの視認点数およびC10-2の両眼視認点数からCHFAでの視野障害等級C2級,3級,4級,5級,非該当の判定を行った(表1).二つの視野計での視野障害等級を同級と異級に分類して比較した.CII結果視力値の平均は,bettereyeがC0.03C±0.18(平均C±標準偏差)logMAR,worseeyeがC0.29C±0.51ClogMARであった.小数視力はCbettereyeがC0.2.1.2,worseeyeがC0.04.1.2であった.視力での視覚障害等級は全例が非該当であった.GPではCI-4周辺視野角度の平均は,bettereyeがC219.98C±96.20°,worseeyeがC99.60C±87.42°であった.両眼CI-2中心視野角度はC46.78C±38.41°であった.HFAでは両眼CES視認点数がC95.02C±20.47点,10-2中心視野視認点数はC26.44C±15.57点であった(表2).GPでは,I-4周辺視野角度が両眼ともにC80°以下がC6例(9.23%),一眼のみが80°以下がC30例(46.15%),両眼ともにC81°以上が29例(44.62%)であった.GPのCI-4周辺視野角度が,両眼ともにC80°以下のC6例の視野障害判定は,GPではC2級がC5例,3級がC1例であった.HFAではC5級がC6例であった(表3).GPのCI-4周辺視野角度が,一眼のみがC80°以下のC30例の視野障害判定は,GPではC5級がC23例,非該当がC7例であった.HFAでは2級が6例,3級が2例,4級が1例,5級がC19例,非該当がC2例であった(表4).GPのCI-4周辺視野角度が,両眼ともにC81°以上のC29例の視野障害判定は,GPではC5級がC18例,非該当がC11例であった.HFAではC2級がC1例,5級がC24例,非該当がC4例であった(表5).GPのCI-4周辺視野角度が両眼ともにC80°以下のC6例は,全例(100.00%)が異級でCGPの視野障害判定がCHFAよりも上級であった.GPのI-4周辺視野角度が,一眼のみが80°以下のC30例では,同級がC14例(46.67%),異級がC16例(53.33%)であった.異級のC16例はCGPが上級C1例(3.33%),HFAが上級C15例(50.00%)であった.GPのCI-4周辺視野角度表2視野障害等級認定のパラメータ平均標準偏差95%信頼区間上限下限Goldmann型視野計周辺視野角度CbettereyeCworseeyeC219.98C99.60C96.20C87.42C243.82C121.26C123.79C12.18両眼中心視野角度C46.78C38.41C56.30C8.37自動視野計両眼開放CEstermanテスト視認点数CプログラムC10-2両眼中心視野視認点数C95.02C26.44C20.47C15.57C100.09C30.30C74.5510.86表3周辺視野角度:両眼ともに80°以下の6例両眼開放CEstermanテスト視認点数70点以下100点以下101点以上自動視野計プログラムC10-2両眼プログラムC10-2両眼中心視野視認点数中心視野視認点数20点以下40点以下41点以上40点以下41点以上Goldmann型視野計(2級)(3級)(4級)(5級)(5級)(非該当)Cn=0n=0n=0n=4n=2n=028°以下(2級)Cn=5C───3C2─両眼中心視野角度56°以下(3級)Cn=1C───C1C──C表4周辺視野角度:一眼が80°以下の30例両眼開放CEstermanテスト視認点数70点以下100点以下101点以上自動視野計プログラムC10-2両眼プログラムC10-2両眼中心視野視認点数中心視野視認点数Goldmann型視野計20点以下(2級)C40点以下(3級)C41点以上(4級)C(5級)C40点以下(5級)C41点以上(非該当)Cn=6n=2n=1n=9n=10n=256°以下(5級)Cn=23C6C2C1C6C※C7C※C1両眼中心視野角度57°以上(非該当)Cn=7C─C─C─C3C3C1C※※Goldmann型視野計と自動視野計の等級が一致.表5周辺視野角度:両眼ともに81°以上の29例両眼開放CEstermanテスト視認点数70点以下100点以下101点以上自動視野計プログラムC10-2両眼プログラムC10-2両眼中心視野視認点数中心視野視認点数20点以下40点以下41点以上40点以下41点以上Goldmann型視野計(2級)(3級)(4級)(5級)(5級)(非該当)Cn=1n=0n=0n=6n=18Cn=456°以下(5級)Cn=18C1C─C─C4※12※1両眼中心視野角度3※57°以上(非該当)Cn=11C───2C6C※Goldmann型視野計と自動視野計の等級が一致.a:周辺視野角度b:周辺視野角度c:周辺視野角度両眼ともに80°以下の6例一眼のみが80°以下の30例両眼ともに81°以上の29例Goldmann型視野計が上級13.33%Goldmann型視野計が上級13.45%図1視野障害等級:同級と異級が,両眼ともにC81°以上のC29例では,同級がC19例(65.52%),異級がC10例(34.48%)であった.異級のC10例はCGPが上級C1例(3.45%),HFAが上級C9例(31.03%)であった(図1).CIII考按GPおよび自動視野計における視野障害等級判定を比較した.左右眼それぞれのCI-4イソプターによる周辺視野角度の大きさにより,二つの視野計での障害等級判定に差があった.GPによる旧視野障害等級判定には,求心性視野障害の偏心に対する対応,輪状暗点の定義,視能率・損失率の算出方法などのいくつかの問題があった6).さらに近年,視野検査の主流がコンピューター制御された自動視野計へと移行したことで,公益財団法人日本眼科学会および公益社団法人日本眼科医会の合同委員会(以下,合同委員会)が,慎重な審議を重ねて改定案をまとめた6).その結果,GPでの視能率・損失率の用語を廃止,視野角度を採用した.高齢者,視野検査に対する理解不良者など自動視野計による検査が困難な場合を考慮し,これまでのCGPによる判定も残し,自動視野計での等級判定も可能とした.この改訂では,新旧の判定において不必要な等級変動が生じないよう,またとくに等級低下に伴う不利益が生じないよう考慮してある.旧認定基準では視野障害の該当はCI-4イソプターが両眼ともにC80°内に狭窄している,または両眼の視野が2分の1以上欠けていることが条件であった.その基準によれば今回の対象のうちC6例を除くC59例は,身体障害者手帳に非該当となる.新認定基準では,GPでC18例,自動視野計でC6例が非該当であった.このたびの改正では中心視野障害が強い場合には,周辺視野が等級に該当しなくとも中心視野のみで視野障害等級に該当することとなった.緑内障の中心視野障害の程度とCQOLは相関を示すことがいわれている7,8).新しい視野障害認定基準は,患者のCQOLを反映するように改訂されたものである6).周辺視野角度が両眼ともにC80°以上のC6例全例がCGPで上級となった理由として,GPで中心視野のCI-4イソプターと周辺視野のCI-4イソプターの連続性がなく,孤立した中心部の視野角度のみが計測の対象となったことがもっとも考えられる.この場合,自動視野計の周辺視野評価である両眼CESでは耳側に残存する視野も測定範囲(左右それぞれ約C80°,上方約C40°,下方約C60°)に入るため,視認点数が高スコアとなる.GPの「I-4イソプターの連続性」については,検者の手技に左右され客観性に問題があることを合同委員会が指摘している6).GPの測定では,視標を動かす速度は,視野中心部ほど視標スピードを遅くする必要がある9).しかし,熟練していない検者では,中心部の視野と耳側に残存する視野とのわずかなつながりを検出できない可能がある.そのほかにCGPが上級となる理由として,GPは片眼ずつ測定するが,両眼CESは両眼での測定である,という計測方法の違いも判定に影響すると考える.視覚機能には両眼加重という働きがある.Pirenne10)は両眼加重とは,両眼の網膜対応点からの視覚情報が大脳視覚野で収斂することによって起こる現象である,と述べている.単眼で計測するCGPでは視認されなくとも,「両眼加重の効果」から両眼CESでは視認点となり,その結果としてCGPでの等級判定が上級となる可能性がある.周辺視野角度が一眼のみC80°以下,周辺視野角度が両眼ともにC81°以上では,自動視野計で上級となる例が多かった.自動視野計が上級となる理由としては,動的計測と静的計測という測定原理の違いが考えられる.GPの計測では,視標が視細胞をなぞりながら動的に動くことで,空間加重効果11)が生じ,多数の刺激が神経節細胞に集まり,その結果として,動的刺激が静的刺激よりも閾値が低下し視認しやすくなる.これは「静的閾値と動的閾値の乖離」(stato-kineticdis-sociation:SKD)といわれ12),その乖離はC4.5CdBと報告されている13).これが,動的検査では検出されない緑内障性視野異常が,静的検査で検出される理由であるが,自動視野計での等級判定が上級となる一因と考える.さらに,両検査の測定点の違いも判定に影響する可能性がある.GPでの視野角度は,視野全体を等分にC8方向,45°間隔に区切って,計測しているのに対し,ESはさまざまなCqualityCofCvision(QOV)の評価に用いられているスクリーニングプログラム14,15)であり,日常生活に重要である下方視野におよそC2倍の加重をおいている.したがって計測ポイントは下方視野に多い.下方の視野障害が強い場合は,GPでの視野角度に比べて,ESの視認点数は低スコアとなり,自動視野計での等級判定が上級となるであろう.GPと自動視野計との視野障害等級認定の差は,上記に述べた「1-4のイソプターの連続性」「両眼加重の効果」「静的閾値と動的閾値の乖離」「Estermanテストにおける下方視野への重みづけ」が要因と考えられた.その他にも,GPのI-4視標とCESの視標輝度は,どちらもC1,000Casbであるが,GPのCI-4,I-2の計測視標が,視標サイズCI(1/4CmmC2)であるのに対し,自動視野計は視標サイズCIII(4CmmC2)を用いている.視標輝度は等しいが面積が異なるため,検査条件の違いも要因としてあげられる.これらが複合的に影響しあい等級認定の差となることが示唆された.このことをよく理解したうえで,等級判定をすべきである.文献1)AspinallPA,JohnsonZK,Azuara-BlancoAetal:Evalua-tionofqualityoflifeandprioritiesofpatientswithglauco-ma.InvestOphthalmolVisSciC49:1907-1915,C20082)GutierrezPR,WilsonMR,JohnsonCAetal:In.urnceofglaucomatousvisual.eldlossonhealth-relatedqualityoflife.ArchOphthalmolC115:777-784,C19973)ParrishRK2nd,GeddeSJ,ScottIUetal:VisualfunctionandCqualityCofClifeCamongCpatientsCwithCglaucoma.CArchCOphthalmolC115:1447-1455,C19974)日本眼科医会研究班:日本における視覚障害の社会的コスト.日本の眼科80:付録,20095)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部:障企発C0427第C5号「身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について」の一部改正について.20186)日本眼科学会視覚障害者との共生委員会,日本眼科医会身体障害認定基準に関する委員会:視覚障害認定基準の改定に関する取りまとめ報告書.厚生労働省社会・援護局障害保健衛生部「第C1回視覚障害の認定基準に関する検討会」(2017年C1月C23日)資料C3.2017.https://www.mhlw.go.jp/C.le/05-Shingikai-12201000-ShakaiengokyokushougaihokenCfukushibu-Kikakuka/0000149289.pdf7)SawadaH,FukuchiT,AbeH:Evaluationoftherelation-shipCbetweenCqualityCofCvisionCandCthevisualCfunctionCindexinJapaneseglaucomapatients.GraefesArchClinExpOph-thalmolC249:1721-1727,C20118)SawadaH,YoshinoT,FukuchiTetal:Assessmentofthevisionspeci.cCqualityCofClifeCusingCclusteredCvisualC.eldCinCglaucomapatients.JGlaucomaC23:81-87,C20149)DouglasCR,CAndersonMD:3CGoldmannCperimeter.CTest-ingthe.eldofvision,Mosby,StLouis,p22-32,198210)PirenneMH:Binocularanduniocularthresholdofvision.NatureC152:698-699,C194311)GoldmannH:EinCselbstregistrierendesCProjektionskugel-perimetersCsamtCtheoretischenCundCklinischenCBemerkun-genuberPerimeterie.OphthalmologicaC109:71-79,C194512)FankhauserCF,CSchmidtT:DieCoptimalenCBedingungenCfurdieUntersuchungderraumlichensummationmitste-henderCReizmarkeCnachCderCMethodeCderCquantitativenCLichtsinnperimetie.OpthalmologicaC139:409-423,C196013)HudsonCC,CWildJM:AssessmentCofCphysiologicalCstatoCkineticCdissociationCbyCautomatedCpermetry.CInvestCOph-thalmolVisSciC33:3162-3168,C199214)MillsRP,DranceSM:Estermandisabilityratinginsevereglaucoma.OphthlmologyC93:371-378,C198615)NoeG,FerraroJ,LamoureuxEetal:Associationbetweenglaucomatousvisual.eldlossandparticipationinactivi-tiesofdailyliving.ClinExpOphthalmolC31:482-486,C2003C