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術前分離コリネバクテリウムの質量分析法による菌種同定および薬剤感受性の検討

2024年4月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(4):433.438,2024c術前分離コリネバクテリウムの質量分析法による菌種同定および薬剤感受性の検討神山幸浩*1北川和子*1河上帆乃佳*1生駒透*1萩原健太*1,2佐々木洋*1*1金沢医科大学眼科学講座*2公立宇出津総合病院CBacterialIdenti.cationforPreoperativeIsolatesofCorynebacteriumUsingMassSpectrometryandtheAntimicrobialSusceptibilityoftheIdenti.edCorynebacteriumYukihiroKoyama1),KazukoKitagawa1),HonokaKawakami1),ToruIkoma1),KentaHagihara1,2)CandHiroshiSasaki1)1)DepartmentofOphthalmology,KanazawaMedicalUniversity,2)UshitsuGeneralHospitalCコリネバクテリウムは結膜.常在菌として術前に分離される頻度が高く,ときに感染症を惹起することが知られているが,その詳細についてはまだ広く知られていない.今回,質量分析法による菌種同定,微量液体希釈法による薬剤感受性試験について検討を行ったので報告する.対象はC2019年C1月.2020年C5月に眼術前検査として結膜擦過培養物より分離同定されたC146株のコリネバクテリウムである.菌種としてもっとも多く分離されたものは,C.macginleyi(91.7%)であり,他にCC.accolens,C.striatum各C3株(2.1%),C.Ctuberculostearicum2株(1.4%),C.kroppenst-edtii,C.propinquumおよびCC.simulansが各C1株(0.6%)みられた.薬剤感受性試験では,CPFXでC61.5%,EMで40.6%と高頻度に耐性であったが,bラクタム系薬剤,GMでは耐性率は低く,TC,VCMはすべて感受性であった.CCorynebacteriumCisfrequentlyisolatedpreoperativelyasanormalinhabitantofconjunctivalsacsandisknowntoCoccasionallyCevokeCinfections.CHowever,CtheCdetailsCofCthisCbacteriumCareCnotCwidelyCknown.CInCthisCstudy,CweCreportCtheCidenti.cationCofCbacteriaCbyCmassCspectrometryCandCantimicrobialCsusceptibilityCtestingCbyCtraceC.uidCaerationCinC146CCorynebacteriumCstrainsCisolatedCandCidenti.edCfromCconjunctivalCabrasionCculturesCasCaCpreopera-tiveoculartest.ThedatawerecollectedbetweenJanuary2019andMay2020.Themostfrequentlyisolatedbacte-riumwasC.macginleyi(91.7%)C,followedbyC.accolensCandC.striatum(3isolateseach,2.1%)C,C.tuberculosteari-cum(2Cisolates,1.4%)C,CC.Ckroppenstedtii,C.Cpropinquum,andC.Csimulans.C.CpropinquumCandCC.CsimulansCwereCfoundinonestraineach(0.6%)C.Inthedrugsusceptibilitytest,61.5%oftheisolateswereresistanttocipro.oxacinand40.6%toerythromycin,butresistancerateswerelowforb-lactamsandgentamicin,andallisolatesweresus-ceptibletotetracyclineandvancomycin.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(4):433.438,C2024〕Keywords:コリネバクテリウム,Corynebacteriummacginleyi,菌種同定,質量分析法,薬剤感受性試験,微量液体希釈法,フルオロキノロン.CorynebacteriumCsp.,Corynebacteriummacginleyi,bacterialidenti.cation,massspec-trometry,antimicrobialsusceptibility,brothmicrodilutionmethod,.uoroquinolone.Cはじめにコリネバクテリウムはグラム陽性桿菌であり,結膜.常在菌としても高頻度に分離されるとともに,眼感染症の起炎菌としても知られている1).コリネバクテリウムは術前分離菌としてもっとも多く,結膜.常在菌と思われてきた.しかしその後,結膜炎2),感染性角膜炎3.5),移植後の縫合糸感染6)などの感染症を起こすことが判明し,そのフルオロキノロン系抗菌薬に対する耐性化も問題となっている2).これまで,コリネバクテリウム菌種同定は,グラム染色による染色性,形態確認とカタラーゼ試験陽性の有無などの化学的性状による方法が行われてきたが,その診断精度については限界が存在していた7).検査キットとしてCAPICoryne(アピコリネ,〔別刷請求先〕神山幸浩:〒920-0293石川県河北郡内灘町大学C1C-1金沢医科大学眼科学講座Reprintrequests:YukihiroKoyama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KanazawaMedicalUniversity,1-1Daigaku,Uchinada,Kahoku,Ishikawa920-0293,JAPANC33C2111CC.macginleyiCC.striatumCC.kroppenstedtiiCC.simulans図1コリネバクテリウム分離菌種の内訳146株のコリネバクテリウムが分離され,計C133株の菌種同定が可能であった.133株の内訳では,C.macginleyがC122株(91.7%)と大部分を占めた.残りのC11株の内訳は,C.Cacco-lensおよびCC.striatumが各C3株(2.3%),C.tuberculosteari-cumがC2株(1.5%),C.kroppenstedtii,C.propinquumおよびCC.simulansが各C1株(0.8%)となった.シスメックス日本,ビオメリュー・ジャパン)が市販されている.これは酵素反応試験などを応用して同定を行うキットであるが,そのデータベースは,臨床材料からもっとも高い頻度で分離されたCCoryneformbacteriaに制限され,同定される菌種もC42種類と限られていた(添付文書より).一般病院で広く使用するには限界があり,金沢医科大学病院(以下,当院)でも,本キットを使用してもコリネバクテリウムの菌種名の決まらないことが多かった.2019年になり,当院において質量分析装置による菌種同定が可能となり,コリネバクテリウムの薬剤感受性試験についても微量液体希釈法が採用された.今回,眼科手術前の結膜.より分離されたコリネバクテリウムの質量分析法による同定ならびに微量液体希釈法による薬剤感受性試験結果についての検討を行ったので報告する.CI対象および方法1.対象本研究は後方視的観察研究である.2019年C1月.2020年5月に当院眼科外来において,白内障などの内眼手術,斜視などの外眼部手術の術前結膜.擦過培養でコリネバクテリウムが分離されたC118例C139眼を対象とした.患者の平均年齢はC75.4歳C±10.0歳(21.91歳)で,男性C59名,女性C59名であった.男性C7名(そのうちC1名はC1眼よりC2株分離)と女性C14名(すべてC1眼よりC1株分離)からは両眼より分離された.なお,男性C1人(前述)と女性C6人においてC1眼よりC2株が分離され,研究期間中に分離されたコリネバクテリウムの総数は,合計C146株であった.C.accolensCC.tuberculostearicumCC.propinquumC2.方法当院での検査法に従い,滅菌生理食塩水にて湿らせたスワブにて結膜.を擦過し,輸送培地(改良アミューズ半流動培地)に塗布後,当院中央検査室の基準に従って培養した.菌種同定を,MALDI-TOFMS(MatrixCAssistedCLaserCDesorp-tion/Ionization-TimeCofCFlightCMassSpectrometer,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)にて行い,装置としてCMALDICBiotyperVer4.1(Burker,米国)を使用した.分離されたすべての株の薬剤感受性試験はCCLSI(ClinicalandCLaboratoryCStandardsInstitute)M45シリーズの判定基準に従い,微量液体希釈法を用いて行った.MIC値(mini-mumCinhibitoryconcentration:最小発育阻止濃度)により,感受性CSusceptible(S),中間感受性CIntermediate(I),耐性Resistant(R)を判定した.本検討においてCSusceptibleを感受性,IntermediateおよびCResistantを耐性とした.本研究で測定を行った抗菌薬は以下のC10種類である.シプロフロキサシン(CPFX),セフォタキシム(CTX),セフトリアキソン(CTRX),エリスロマイシン(EM),ペニシリンCG(PCG),テトラサイクリン(TC),ゲンタマイシン(GM),ST合剤(ST),メロペネム(MEPM),バンコマイシン(VCM).本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,金沢医科大学医学研究倫理審査委員会審査の承認を受けて行った(迅速審査整理番号CNo.I510).CII結果1.菌種同定今回C146株のコリネバクテリウムが分離されたが,同定不可能な株も含まれたことより,計C133株の菌種同定が可能であった.133株の内訳では,C.macginleyがC122株(91.7%)と大部分を占めた.残りのC11株の内訳は,C.accolensおよびCC.striatumが各C3株(2.3%),C.tuberculo-stearicumがC2株(1.5%),C.kroppenstedtii,C.Cpropinqu-umおよびCC.simulansが各C1株(0.8%)となった(図1).C2.薬剤感受性試験全C146株のうちC143株が薬剤感受性試験の判定が可能であった.すべての種を含めた耐性化率を薬剤ごとに示す(図2上段).フルオロキノロンであるCCPFXでC88株(61.5%)ともっとも高く,ついでCEMでC58株(40.6%),PCGでC14株(9.8%),GMでC11株(7.7%),STでC11株(7.7%),CTRXでC6株(4.2%),CTXで1株(0.7%),MEPMで1株(0.7%)であった.TC,CVCMでは耐性株はみられなかった.CC.macginleyi(122株)の薬剤ごとの耐性化率を示す(図2下段)が,1株が測定不能でありC121株の結果となった.分離されたコリネバクテリウムの大部分を占めていることよ全体143株100%50%0%CCPFXCCTXCCTRXCEMCPCGCTCCGMCSTCMEPMCVCMC.macginleyi121株100%50%0%CCPFXCCTXCCTRXCEMCPCGCTCCGMCSTCMEPMCVCM耐性(R)中間感受性(I)感受性(S)図2薬剤感受性(全体およびC.macginleyi)上段:全C146株のうちC143株が薬剤感受性試験の判定が可能であった.耐性は,フルオロキノロンであるCCPFXでC88株(61.5%),EMでC58株(40.6%),PCGでC14株(9.8%),GMでC11株(7.7%),STで11株(7.7%),CTRXでC6株(4.2%),CTXでC1株(0.7%),MEPMでC1株(0.7%)であった.TC,VCMでは耐性株はみられなかった.下段:C.macginleyi(122株)の薬剤ごとの耐性化率を示す.1株が測定不能でありC121株の結果である.その耐性化率は上段の結果とほぼ一致している.フルオロキノロンであるCCPFXでC80株(67.5%),EMでC48株(40.2%),GMでC11株(8.6%),STでC9株(7.7%),PCGでC8株(6.8%),CTRXでC1株(0.8%)と算出された.CTXで0株(0%),TCで0株(0%),MEPMで0株(0%),VCMで0株(0%)であった.表1C.accolens3株の薬剤感受性表2C.Striatum3株の薬剤感受性C.accolens1CC.accolens2CC.accolens3CC.striatum1CC.striatum2CC.striatum3CCPFXSSSCCPFXCCTXSSSCCTXCCTRXSCSCSCCTRXCEMCRSSCEMCPCGCSSSCPCGTCCSSSCGMCSSSCTCCSSSCSTCSSSCGMCSSSCMEPMSSSCSTCSSSCVCMSSSCMEPMSSSC.accolens(3株)では,1株がCEM耐性である以外すべての薬CVCMCSCSCS剤に感受性であった.C.striatum(3株)は,すべてCCPFX,CTRX,EMおよびCPCGに耐性または中間感受性を示した.りその耐性化率は図2上段の結果とほぼ一致している.フル感受性を示した(表2).C.kroppenstedtii(1株)は,CPFX,オロキノロンであるCCPFXでC80株(67.5%),EMでC48株CTRX,EM,PCG,MEPMとCbラクタム系抗菌薬すべて(40.2%),GMで11株(8.6%),STで9株(7.7%),PCGに耐性または中間感受性を示した.C.simulans(1株)は,でC8株(6.8%),CTRXでC1株(0.8%)と算出された.CTXCPFX,CTRX,EM,PCGに耐性または中間感受性を示しで0株(0%),TCで0株(0%),MEPMで0株(0%),た.C.propinquum(1株)は,EM,STに耐性を示した.C.VCMでC0株(0%)であった.tuberculostearicum(1株のみ薬剤感受性測定可能であった)少数分離された菌種の薬剤感受性試験の結果を示す(表1はCEMにのみ耐性を示した(表3).~3).C.accolens(3株)ではC1株がCEM耐性である以外すCIII考按べての薬剤に感受性であった(表1).C.striatum(3株)は,すべてCCPFX,CTRX,EMおよびCPCGに耐性または中間これまでコリネバクテリウムの菌種同定は,グラム染色に表3C.kroppenstedtii,C.simulans,C.propinquum,およびC.tubercu-lostearicumの薬剤感受性C.kroppenstedtiiCC.simulansCC.propinquumCC.tuberculostearicum1CCPFXCSCSCCTXCSCSCSCSCCTRXCICRCSCSCEMCRCRCRCRCPCGCRCICSCSCTCCSCSCSCSCGMCSCSCSCSCSTCSCSCRCSCMEPMCRCSCSCSCVCMCSCSCSCSC.kroppenstedtii(1株)は,CPFX,CTRX,EM,PCG,MEPMとCbラクタム系抗菌薬すべてに耐性または中間感受性を示した.C.simulans(1株)は,CPFX,CTRX,EM,PCGに耐性または中間感受性を示した.C.propinquum(1株)は,EM,STに耐性を示した.C.tuberculostearicum(1株のみ薬剤感受性測定可能であった)はCEMにのみ耐性を示した.よる染色性や形態確認と,カタラーゼ試験陽性の有無などの生化学的性状にて行われてきた.しかし,従来の生化学的性状による方法では術前コリネバクテリウム分離菌種の同定が困難で,眼科領域で分離されるコリネバクテリウム属菌種の詳細が不明であった.筆者らの今回の質量分析法では,16SrRNAシーケンス解析と高い一致率を示し8),日常遭遇するほとんどの菌を網羅するC3,000菌種以上のライブラリー(コリネバクテリウムはC72菌種)を有している(2021年C4月現在).今回の当科での術前分離菌について質量分析法による菌種同定を行ったところ,同定できたのはC133株であり,C.macginleyiがその大部分(91.7%)を占めていた.結膜.常在菌としてのコリネバクテリウムの優位菌種がCC.Cmacgin-leyiであると考えられ既報と同様であった9,10).一方,鼻腔における主要なC2菌種は,C.accolens(44%),C.propinqu-um(31%)であり11),C.macginleyiは3%にすぎない11).C.macginleyiは脂質好性であり眼瞼の皮脂腺と近接する結膜.において優位菌種となると考えられる.眼における病原性は不明であるが9),濾過胞炎を発症した報告が海外にあり12,13),注意が必要である.コリネバクテリウムにはCgyrA遺伝子はあるがCparC遺伝子がないために,gyrA遺伝子のCquinoloneCresistance-determiningregion(QRDR)の変異のみで容易に薬剤耐性を生じることが知られている10).C.macginleyiの薬剤感受性についてはコリネバクテリウムの大部分を占めていることより,本菌種の動向が種別でないこれまでの報告でのコリネバクテリウム全体の薬剤感受性を示しているものと推測される.フルオロキノロン耐性はCC.macginleyi間でおそらく増加している11).これは日本においては,フルオロキノロン点眼薬の過剰な使用によって促進されているとされている10,14).C.macginleyi以外の菌種について述べる.C.accolens(本例でC3株)は第C2番目に優位な結膜の菌種である11).眼科領域での病原菌としては筆者らの検索した範囲ではなかったが.上気道の常在菌と考えられ喀痰,咽頭ぬぐい液,また心弁膜から検体としてしばしば供される.今回の検討において分離されたCC.Caccolens3株は,C.macginleyiと異なりCPFXにすべて感受性であり,他の抗菌薬全般でもCEM以外に感受性であった.C.striatum(3株)は皮膚常在菌であり,敗血症の原因菌となる15)ことから眼科以外の分野での注意が必要である.また,粘膜の常在菌であり,免疫不全状態での肺炎の原因となる16).本結果ではペニシリン,セフェムとフルオロキノロンに耐性を示した.C.kroppenstedtii(1株)は肉芽腫性乳腺炎の膿汁から分離されたとの報告がある17).脂質好性であることから乳腺においての感染が発症と病態にかかわっている17)とされる.C.simulans(1株)は,おもに皮膚から分離されるとの報告がある18).C.Cpropinqu-um(1株)は,健常成人の市中肺炎のみならず病院内や高齢者施設内での呼吸器感染症の起炎菌となる19).C.Ctuberculo-stearicum(2株)はまれな菌種であるが乳腺炎症例が報告されている20,21).当科では以前に多剤耐性を示したコリネバクテリウムの検討を行った7).同定法がグラム染色による染色性,形態確認とカタラーゼ試験陽性の有無などの化学的性状による従来法であることより,その形状よりCCoryneformbacteriaと記載した7).感受性試験についてもディスク法での感受性試験は,阻止円直径を用いた判定基準は日本において確定されておらず,測定の限界を感じた7,22).しかし,今回の質量分析法による菌種同定と微量液体希釈法の採用により,より正確にコリネバクテリウムの検討ができたものと考えている.今回のCLSIのCM45シリーズの判定基準に従った微量液体希釈法を用いた薬剤感受性試験で,C.macginleyi(121株)のフルオロキノロンに対する耐性率はC67.5%であった.一方,筆者らのC2018年の検討23)では,微量液体希釈放法ではなくディスク法であり,またフルオロキノロン系に属する使用薬剤が異なっていてレボフロキサシン(LVFX)であり,従来の生化学的性状による方法で同定されたコリネバクテリウムが対象であるが,LVFXに対する耐性化率がC57%であった23).その結果とは一概に比較できないが,フルオロキノロン系抗菌薬に対してC60%台といまだに高い耐性化率を示していることが示された.C.macginleyi以外のコリネバクテリウムでもキノロン耐性化がみられたことより,キノロン耐性が常在菌の大多数を占めるCC.macginleyiの種を越えて拡大している危険が示唆された.他の抗菌薬に対してであるが,EMに対してもC40.6%と高頻度の耐性がみられたが,他の抗菌薬におおむね感受性良好であり,TC,VCMでは耐性株はみられなかった.全体の143株中のCCPFX耐性コリネバクテリウムC88株は,CTRXに対しC82株(93.2%)が感受性であった.これは,フルオロキノロン耐性であってもセフェムに対してほとんど感受性であることを示しているが,一方,88株のうちCEMに対してはC44株(50%)と高い割合で耐性であった.今回,質量分析法による菌種同定,微量液体希釈法による薬剤感受性試験について行った検討を報告した.菌種同定を行ったところCC.macginleyiがその大部分(91.7%)を占めていたのは既報どおりであり,フルオロキノロン系抗菌薬に対してC60%台といまだに高い耐性化率を示していることが示された.すべての菌種に感受性を示した薬剤は,TCとVCMであり,このC2薬剤が難治性コリネバクテリウム感染症での使用が推奨された.また,C.macginleyi以外のC6種のコリネバクテリウムも分離された.本研究は,当院のC1施設での限られた期間の研究であり,その限界はあるが,コリネバクテリウムは菌種によって病原性が異なっており,結膜.内でのコリネバクテリウムの分布状況をある程度示すことができたと考える.本研究の意義として,術前の健常人における結膜.内から分離されるコリネバクテリウムの菌種の内訳,抗菌薬耐性化率を示すことができたと考える.本論文の要旨はC2021年第C57回日本眼感染症学会で発表した.文献1)井上幸次,大橋裕一,秦野寛ほか:前眼部・外眼部感染症における起炎菌判定─日本眼感染症学会による眼感染症起炎菌・薬剤感受性多施設調査(第一報)─.日眼会誌115:801-813,C20112)長谷川麻里子,江口洋:コリネバクテリウム感染症「キノロン耐性との関係」.医学と薬学C71:2243-2247,C20143)SuzukiT,IiharaH,UnoTetal:Suture-relatedkeratitiscausedCbyCCorynebacteriumCmacginleyi.JCClinCMicrobio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