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医療用抗アレルギー点眼薬の処方解析

2018年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科35(12):1683.1687,2018c医療用抗アレルギー点眼薬の処方解析中田雄一郎葛.城.秀大阪大谷大学薬学部医薬品開発学講座CAnalysisofMedicalAntiallergicEyeDropFormulationsYuichiroNakadaandShuKatsuragiCLaboratoryofDrugDevelopment,FacultyofPharmacy,OsakaOhtaniUniversityC目的:抗アレルギー点眼薬(59品目)の原薬・製剤特性および処方内容を解析することで,今後の抗アレルギー点眼薬の処方設計の傾向を知ることを目的とした.対象および方法:医薬品医療機器総合機構(PMDA)で公開されている添付文書,インタビューフォームならびに審査報告書を資料としてデータを集め解析した.結果:点眼薬のCpHは一定範囲(pH4.0.8.5)にコントロールされていたが,浸透圧は一般的な点眼薬の範囲(生理食塩水に対する浸透圧比C0.5.2.0)を超えるものもあった.可溶化剤はC3種で全製品C59品目中C24品目に,防腐剤はC4種でC59品目中C55品目に使用されており,それぞれポリソルベートC80とベンザルコニウム塩化物(BAK)がおもに用いられていた.また防腐剤フリー容器を使用した製品はC4品目であった.安全性に影響するCBAKの使用割合はC2000年以降の上市製品でC80%程度であった.結論:可溶化剤,防腐剤とも使用される品目は限定され,緑内障点眼薬と同様に長期に使用される可能性の高い抗アレルギー点眼薬もCBAKの使用割合は低減していた.CPurpose:Tobetterunderstandtheformulationdevelopmenttrendofmedicalantiallergiceyedrops,weana-lyzedtheirformulations.Subjectsandmethod:Thecharacteristicsofactivepharmaceuticalingredients,pharma-ceuticalproductsandformulationsof59medicalantiallergiceyedropswereanalyzed,referringtodescriptionsontheCpackageCinserts,CinterviewCformsCandCreviewCreports.CResults:TheCpHCwasCwellCcontrolledCwithinCaC.xedrange(pH4.0-8.5)C.TheCosmoticCpressureCwasCgenerallyCaroundC1.0,CbutCsomeCproductsCwereCoutsideCtheCnormalCrange.CTheClimitedCthreeCkindsCofsolubilizers(mainlyCTween80)andCfourCkindsCofpreservatives(mainlyBAK)CwereCused.CTheCproductsCusingCpreservative-freeCcontainersCcomprisedCfourCitems.CTheCuseCratioCofCBAK,CwhichCa.ectssafetyinmarketingproducts,wasaround80%from2000toC2016.CConclusion:Ingredientsusedassolubi-lizersandpreservativeswerelimited,andtheuseratioofBAKinantiallergiceyedropswasreducedasinmedicalglaucomaeyedrops.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(12):1683.1687,C2018〕Keywords:抗アレルギー点眼薬,処方内容,製剤開発,可溶加剤,防腐剤.antiallergiceyedrop,formulation,productdevelopment,solubilizer,preservative.Cはじめに点眼薬は結膜.などの眼組織に適用する無菌製剤であり1),浸透圧,pH,薬物の水溶液中での安定性確保などが重要となる.また,ユニットドーズ製剤を除き,開封後も数週間にわたり使用を繰り返す製剤であることから,防腐剤の添加や処方の組み合わせも重要となる2).筆者らは長期にわたって使用される緑内障点眼薬の開発変遷を原薬特性,製剤特性,処方内容から調査し,各社の製剤設計の考え方・工夫について報告した3).アレルギー性結膜疾患はアレルギー性結膜炎,アトピー性角結膜炎,春季カタル,巨大乳頭結膜炎にC4分類され,そのなかでアレルギー性結膜炎は季節性と通年性に分類される.調査対象とした抗アレルギー点眼薬はアレルギー性結膜炎(通年性,季節性)と春季カタルに使用され,ケミカルメディエーター阻害薬,ヒスタミンCHC1受容体遮断薬,免疫抑制薬が主薬として使用されている4).〔別刷請求先〕中田雄一郎:〒584-8540大阪府富田林市錦織北C3-11-1大阪大谷大学薬学部医薬品開発学講座Reprintrequests:YuichiroNakada,Ph.D.,LaboratoryofDrugDevelopment,FacultyofPharmacy,OsakaOhtaniUniversity,3-11-1Nishikiori-kita,Tondabayashi,Osaka584-840,JAPANC12108642る主薬の種類はC12種類であった.ケミカルメディエーター阻害薬(クロモグリク酸ナトリウムやペミロラストカリウムなど)は全体的に副作用が軽く眠気も出ないといわれているが,ケミカルメディエーター遊離抑制発現に数週間を要するため,毎日規則正しく用いる必要がある6).ヒスタミンCHC1受容体遮断薬は第C1世代と第C2世代に分けられ,第C1世代のジフェンヒドラミン塩酸塩などは即効性があるが,眠気など製品数の副作用がある6).第C2世代のケトチフェンフマル酸塩,エピナスチン塩酸塩,オロパタジン塩酸塩はケミカルメディエーター阻害薬より即効性があり,HC1受容体遮断作用のほかにケミカルメディエーター遊離抑制作用ももち,それに加えエピナスチン塩酸塩とオロパタジン塩酸塩は眠気の副作用が起こりにくい特徴をもっている6).1990年代に入ってヒスタ1984~19891990~19992000~20092010~2016図1各種抗アレルギー点眼薬の上市時期の年代別推移今回,緑内障点眼薬と同様に長期にわたり使用される可能性の高い抗アレルギー点眼薬の原薬特性,製剤特性ならびに処方内容を調査解析し,製剤的な特徴を知り,今後の製剤開発に役立てることを目的とした.CI対象および方法医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページ上で公開されている医療用医薬品の添付文書情報の検索機能5)を用いて,薬効分類「眼科用剤」,項目内検索C1「効能又は効果/用法及び用量」「アレルギー」を入力し,ヒットした計C59品目の添付文書とインタビューフォーム,一部は審査資料から主薬や製剤の特性,処方内容の各種情報を得た.調査は2016年C3月までに上市され,現在日本国内で販売されている製品を対象とした.得られた情報をマイクロソフト社のエクセルC2010に入力しデータベース化し,解析を行った.CII結果と考察1.製品数と上市時期現在も使用されている抗アレルギー性点眼薬の製品の薬効群と先発/後発品別の上市時期の年代別推移を図1に示す.1984年に主薬がケミカルメディエーター阻害薬であるクロモグリク酸ナトリウムのインタールR点眼液C2%が発売された.1980年代はケミカルメディエーター阻害薬のみだったが,1991年にヒスタミンCHC1受容体遮断薬を主薬とするザジデンR点眼液C0.05%(主薬:ケトチフェンフマル酸塩)が発売された.その後,2000年代に入るとC2006年に免疫抑制薬を用いたパピロックRミニ点眼液C0.1%(主薬:シクロスポリン)が,2008年にタリムスCR点眼液C0.1%(主薬:タクロリムス)が春季カタルを効能として上市された.対象となった抗アレルギー性点眼薬C59製品で使われていミンCHC1受容体遮断薬が上市された理由の一つは,ケミカルメディエーター阻害薬は効果の発現が遅いためと考えられる.先発品と後発品に分けて比較すると,ケミカルメディエーター阻害薬のクロモグリク酸ナトリウム配合の(先発品)インタールR点眼液C2%がC1984年に上市されてからC1990年代にC6製品,2000年代にC10製品の後発品が上市されている.ヒスタミンCHC1受容体遮断薬はケトチフェンフマル酸塩を配合する(先発品)ザジテンCR点眼液C0.05%がC1991年に上市されてから,1990年代にC10製品,2000年代にC7製品の後発品が上市されている(図1).防腐剤フリー容器を用いる製品は,ユニットドーズタイプのインタールR点眼液CUD2%(1995年上市)とパピロックCRミニ点眼液C0.1%(2006年上市),多回投与可能な防腐剤フリー容器を用いたクモロールRPF点眼液C2%(2003年上市)とトラメラスRPF点眼液C0.5%(2006年上市)の計C4品目である.10品目以上の防腐剤フリー容器の使用実績のある緑内障点眼薬と比較すると,防腐剤フリー容器の使用製品数は抗アレルギー点眼薬のほうが少ない.C2.主薬濃度・pH・浸透圧ケミカルメディエーター阻害薬の濃度は,クロモグリク酸ナトリウムなどを配合するC2%の点眼薬とトラニラストほかを配合するC0.5%以下のものに分かれた.そのなかで最低濃度の製品は,イブジラストを配合するケタスCR点眼液C0.01%である.一方,ヒスタミンCHC1受容体遮断薬はC0.1%のオロパタジン塩酸塩を配合するパタノール点眼液を除き,0.025%のレボカバスチン塩酸塩を配合するリボスチンCR点眼液など,主薬濃度はC0.025.0.05%の範囲であった(図2).免疫抑制薬はタリムスCR点眼液C0.1%,パピロックCRミニ点眼液0.1%とも主薬濃度はC0.1%であった.各製品のCpH規格はCpH4.0.8.5のレンジ内であった.各製品の緩衝能については入手できる資料からは判別できないが,涙液には緩衝能があり7),しかも点眼液に対して涙液による希釈が急速に行われるので,点眼薬は必ずしも涙液のa:ケミカルメディエーター阻害薬のb:ヒスタミンH1受容体遮断薬の薬物濃度薬物濃度0.120.12.52薬物濃度(%)1.51薬物濃度(%)0.080.060.040.50.0201980019902000201020201980199020002010上市時期(年)上市時期(年)図2各種抗アレルギー点眼薬の上市時期と薬物濃度2020表1一般的な浸透圧の範囲を超える抗アレルギー点眼薬浸透圧(生理食塩液に対する比)製品名0.15.C0.35クロモクリークCR点眼液2%0.2.C0.3クロモグリク酸ナトリウム点眼液2%約C0.3トーワタールCR点眼液2%2.3.C3.3レボカバスチン塩酸塩点眼液C0.025%「FFP」「JG」「KOG」「サワイ」「ファイザー」2.8.C3.8レボカバスチン塩酸塩点眼液C0.025%「イセイ」pH7.4に一致させる必要はない.しかし,正常の.に近づけることにより,適用時の不快感や刺激を軽減することができ,また,刺激による涙液増加によって主薬が希釈されることを防ぐことができる.生理食塩水に対する浸透圧比はC1.0前後のものがほとんどあるが,クロモグリク酸ナトリウムを主薬とする点眼薬のなかには低浸透圧(0.15.0.35やC0.2.0.3)のものや,逆にレボカバスチン塩酸塩を主薬する点眼薬のなかには高浸透圧のもの(2.3.3.3やC2.8.3.8)があった(表1).浸透圧は一般に塩化ナトリウムに換算してC0.5.2.0%の範囲で浸透圧の差に基づく不快感をあまり感じないとされおり8),表1に示す各製品は使用時の眼刺激性が懸念されるが,刺激による掻痒感の一時的な解消の可能性も否定できない.C3.主薬の溶解度と製品に使用されている可溶化剤調査対象のC59品目の製品で使用されている主薬はC12種類で,主薬の水に対する溶解度は「ほとんど溶けない」がアンレキサノクス,トラニラスト,レボカバスチン塩酸塩,シクロスポリン,タクロリムスのC5種,「きわめて溶けにくい」がアシタザノラスト,イブジラストのC2種,「溶けにくい」がケトチフェンフマル酸塩,「やや溶けにくい」がオロパタジン塩酸塩の各C1種,「溶けやすい」がクロモグリク酸ナトリウム,エピナスチン塩酸塩,ペミロラストカリウムのC3種であった.59製品中,可溶化剤を用いているC24製品のほとんどは主薬に「ほとんど溶けない」に分類される原薬を用いていた.使用されている可溶化剤はポリソルベートC80(Tween80),ポリオオキシエチレンヒマシ油,ステアリン酸ポリオキシルC40のC3種に限定されていた(表2).しかし,このなかで「溶けやすい」に分類されるペミロラストカリウムを含有するアラジオフR点眼液C0.1%とクロモグリク酸ナトリウムを含有するノスランCR点眼液C2%にCTween80が使用されていた.両製剤とも主薬濃度から可溶化剤は不要と考えられるが,アラジオフCR点眼液には濃グリセリンやトロメタモールが処方成分に含まれることから,Tween80配合は差し心地を意識した処方設計の可能性もある.一方,ノスランR点眼液はCTween80,ベンザルコニウム塩化物(BAK),pH調整剤だけの単純な処方のため,差し心地を意識した処方というよりは主薬濃度がC2%と高く,冬季などの低温保管時の主薬析出を考慮した処方設計になっているのではないかと考えられる.C4.防腐剤抗アレルギー点眼薬に使用されている防腐剤の年代別推移を表3に示す.59製品中,BAK含有製剤はC50品目,パラ表2抗アレルギー点眼薬に使用されている可溶化剤の種類と上市時期可溶化剤可溶化剤を使用した製品数ポリソルベートC80ポリオキシエチレンヒマシ油ステアリン酸ポリオキシルC401984.C1989C0C0C0C01990.C19994(3)1(1)C05(4)2000.C200913(10)C01(0)14(10)2010.C20165(5)C0C05(5)合計22(18)1(1)1(0)24(19)()内は後発品数.表3抗アレルギー点眼薬に使用されている防腐剤の種類ならびに防腐剤フリー製品の上市時期上市時期(年)防腐剤防腐剤を使用した製品数防腐剤フリー製品数総製品数ベンザルコニウム塩化物パラベン類ホウ酸クロロブタノC.ルCUD*CMD**1984.C19891(0)1(0)1(0)C02(0)C0C0C21990.C199922(18)C03(2)C022(18)1(0)C0C232000.C200920(15)1(0)9(7)1(0)22(16)1(0)2(2)C252010.C20167(7)1(1)7(6)C09(8)C0C0C9合計50(40)3(1)20(15)1((0)55(42)4(2)C59()内は後発品数.*ユニットドーズタイプ,**マルチドーズタイプ.上市製品に対するBAKの使用割合(%)10090807060504030201001958~1970~1980~1990~2000~2010~196919791989199920092016:抗アレルギー点眼薬:緑内障点眼薬図3抗アレルギー点眼薬と緑内障点眼薬の上市時期別BAK使用率オキシ安息香酸エステル(パラベン類)含有製剤はC3品目,ホウ酸・ホウ砂含有製剤はC20品目,クロロブタノール含有製剤はC1品目,防腐剤フリー容器を使用した製剤はC4品目であった.1製剤に複数の防腐剤を配合する例もあった.一方,BAK以外でアレジオンCR点眼液C0.05%のようにホウ酸だけが配合される製品もあった.1990年代は上市製品C23品目に対してC22品目にCBAKが多用されてきたが,2000年代以降,BAKの使用頻度が低下している.これはCBAKが角膜の細胞膜に作用して角膜上皮障害,あるいは薬剤アレルギーを起こすことが報告されるようになり9,10),角膜障害が低いと考えられているホウ酸やパラベン類が防腐剤として選択されたためと考えられる.BAKの使用率3)を緑内障点眼薬と比較した結果を図3に示す.1990年代,2000年代とも緑内障点眼薬のほうが抗アレルギー点眼薬よりもCBAKの使用割合が低いが,2010年代に入ると両者とも約C80%の使用率を示している.ただ,依然多くの抗アレルギー点眼薬でCBAKが使用されているのは,BAKは保存効力作用とともに界面活性作用もあり製剤の品質を保つために他の防腐剤への変更がむずかしい,防腐剤の変更による生物学的同等性の確保が必要,あるいはCBAK以外では欧州の厳しい防腐効力試験11)に合格できないなどの理由が想定される.CIII考按抗アレルギー点眼薬C59品目の処方について年代別の解析を行い,長期にわたって使用される緑内障点眼薬の処方との差異について考察した.点眼薬にとって重要な差し心地(使用感)に影響する浸透圧やCpHは,特殊な例を除き,生理食塩水に対する浸透圧比は約C1に,pHはC4.8.5の一定範囲にコントロールされていることが確認できた.また,使用されている可溶化剤あるいは防腐剤の種類は限定されており,防腐剤としてCBAKを使用するケースが多かった.しかし,2000年以降,緑内障点眼薬と同様に,BAKの使用割合は低下傾向にあった.文献1)製剤総則6.目に投与する製剤6.1点眼剤.第十七改正日本薬局方解説書(田中久,柴崎正勝,江島昭ほか監修),A-108-A-113,廣川書店,20162)本瀬賢治:第C3章点眼剤の調製C14.保存剤.点眼剤,p76,南山堂,19843)中田雄一郎:医療用緑内障点眼剤の開発変遷の分析.薬剤学75:65-71,C20154)岩城正佳:8.抗アレルギー薬.眼科薬物治療ガイド(眼科診療プラクティス編集委員編),p314-317,文光堂,20045)http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch6)永井博弌:58.2抗アレルギー薬.スタンダード薬学シリーズ6薬と疾病I.薬の効くプロセス(日本薬学会編),p245-250,東京化学同人,20057)本瀬賢治:第C3章点眼剤の調製C8.緩衝剤.点眼剤,p64,南山堂,19848)植村攻:4.点眼剤と添加物.製剤設計と添加剤..医薬ジャーナル36:2791-2798,C20009)BaudouinC,deLunardoC:Short-termcomparativestudyofCtopical2%CcarteololCwithCandCwithoutCbenzalkoniumCchlorideinhealthyvolunteers.BrJOphthalmolC82:39-42,C199810)葛西浩:点眼薬の副作用.臨眼53:217-221,C199911)河合充生:食品・医薬品・環境分野等の微生物試験法および微生物汚染の制御に関する最近の話題[2]「第C17改正日本薬局方」保存効力試験法.日本防菌防黴学会誌C44:689-693,C2016C***