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スペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼における黄斑部の視細胞内節外節接合部―網膜色素上皮間距離の定量

2015年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科32(10):1493.1498,2015cスペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼における黄斑部の視細胞内節外節接合部―網膜色素上皮間距離の定量今井俊裕*1後藤克聡*2,3水川憲一*2瀧澤剛*2荒木俊介*2,3桐生純一*2*1川崎医科大学眼科学2教室*2川崎医科大学眼科学1教室*3川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科感覚矯正専攻QuantifyingDistancebetweenInnerandOuterSegmentsofPhotoreceptor-RetinalPigmentEpitheliumatMacularRegioninNormalEyesUsingSpectralDomainOpticalCoherenceTomographyToshihiroImai1)KatsutoshiGoto2,3)KenichiMizukawa2),GoTakizawa2)SyunsukeAraki2,3)andJunichiKiryu2),,,1)DepartmentofOphthalmology2,KawasakiMedicalSchool,2)DepartmentofOphthalmology1,KawasakiMedicalSchool,3)DoctoralPrograminSensoryScience,GraduateSchoolofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)を用いて視細胞外節を含めた視細胞内節外節接合部(IS/OS)から網膜色素上皮までの厚み(TotalOS&RPE/BM)を測定し,正常眼における黄斑部領域での定量および検討を行った.対象および方法:正常眼57眼に対し,中心窩から1mm部位と3mm部位の各12点(合計24点)のTotalOS&RPE/BMを内蔵ソフトにより計測し,黄斑部領域での定量および年齢,屈折度数との相関,性差について検討した.結果:TotalOS&RPE/BMは中心窩で平均80.6±5.5μmであった.また,全象限で1mm部位(上方70.3μm,耳側70.9μm,下方68.9μm,鼻側71.3μm)より3mm部位(上方68.0μm,耳側67.0μm,下方66.0μm,鼻側66.8μm)が有意に薄く,下方が他象限に比較し薄い傾向にあった.男性における中心窩のTotalOS&RPE/BMは年齢と負の相関を認めた(r=.0.4936,p=0.0104)が,屈折度数との相関はなかった.結論:TotalOS&RPE/BMは中心窩がもっとも厚く,全象限で1mm部位より3mm部位が有意に薄かった.男性における中心窩のTotalOS&RPE/BMは加齢に伴い減少する.Purpose:Toquantifythedistancebetweeninnerandoutersegmentsofphotoreceptor-retinalpigmentepithelium(TotalOS&RPE)atthemacularregioninnormaleyes,usingspectraldomainopticalcoherencetomogra-phy(SD-OCT).SubjectsandMethods:Each12pointsofTotalOS&RPE/BMat1mmand3mmareas(total24points)fromthefoveawereexaminedbySD-OCTin57normaleyes.Wealsoinvestigatedtherelationshipofage,refractionandgender,andcomparedthethicknessinfourquadrants.Results:TotalOS&RPE/BMwassignificantlythinatthe3mmareasite(superior70.3μm,temporal70.9μm,inferior68.9μm,nasal71.3μm)thanatthe1mmareasite(superior68.0μm,temporal67.0μm,inferior66.0μm,nasal66.8μm)inallquadrants.Inferiorquadrantswerethincomparedtotheotherquadrants.TotalOS&RPE/BMatthefoveainmalesshowedsignificantnegativecorrelationwithage.Therewasnocorrelationwithrefraction.Conclusion:TotalOS&RPE/BMwasthickestinthefovea,the3mmareabeingsignificantlythinnerthanthe1mmareainallquadrants.TotalOS&RPE/BMofthefoveainmalesdecreasedwithage.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(10):1493.1498,2015〕Keywords:光干渉断層計,視細胞外節,網膜色素上皮,年齢.opticalcoherencetomography,photoreceptorofoutersegment,retinalpigmentepithelium,age.〔別刷請求先〕今井俊裕:〒700-8505岡山市北区中山下2丁目1番80号川崎医科大学眼科学2教室Reprintrequests:ToshihiroImai,DepartmentofOphthalmology2,KawasakiMedicalSchool,2-1-80Nakasange,Okayama7008505,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(121)1493 はじめにスペクトラルドメイン光干渉断層計(spectraldomainopticalcoherencetomography:SD-OCT)の普及により視細胞内節外節接合部(junctionbetweenphotoreceptorinnerandoutersegment:IS/OS)を指標に視力の根源とされている視細胞外節の状態を評価できるようになった.しかし,視細胞外節の評価はOCTの解像度や自動セグメンテーションの問題により,厚みによる定量的評価を行った報告は少なく1,2),おもにIS/OSの有無による定性的評価が行われてきた3,4).近年では,IS/OSとされていた高反射ラインは視細胞内節のミトコンドリアを反映しているellipsoidzoneであると報告されている5)が,本研究では筆者らの既報6,7)に合わせてIS/OSと表記する.以前に筆者らは,視細胞外節の代謝に重要である網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)を含めたIS/OS内縁からRPE外縁までの距離(totaloutersegmentandRPE/bruchmembrane:TotalOS&RPE/BM)2)の定量を行い,中心窩下のTotalOS&RPE/BMは平均81.3μmで年齢との相関がないことを報告した6).さらに,裂孔原性網膜.離術後における中心窩下のTotalOS&RPE/BMは正常眼よりも減少しおてり,経過とともに増加し,術後6カ月で正常眼と同等の値になったことから,視細胞外節の再生過程を二次的に定量することが可能であったことを報告した7).今回,筆者らは黄斑部領域における視細胞外節の厚みと視機能との上方耳側鼻側下方関連を検討する前段階として,層境界検出アルゴリズムによりTotalOS&RPE/BMの測定が可能なSD-OCTを用いて,正常眼における黄斑部領域での定量および年齢,屈折度数との相関,性差について検討した.I対象および方法対象は研究に対してインフォームド・コンセントを行い同意が得られ,眼科疾患の既往はなく,検眼鏡や眼底写真,OCT所見が正常であり,屈折異常以外の眼科的疾患を有さない健常者57例57眼(男性26例,女性31例)で,右眼のデータを採用した.矯正視力は1.0以上で中心固視が可能であったものとした.全体の平均年齢は49.7±18.4(20.79)歳で,平均屈折度数は.1.75±3.12(+3.75..9.50)Dであった.男性の平均年齢は48.7±18.8(20.79)歳,年齢の内訳は20代5例,30代5例,40代3例,50代5例,60代4例,70代4例,女性の平均年齢は50.5±18.3(20.79)歳,年齢の内訳は20代4例,30代5例,40代5例,50代5例,60代6例,70代6例である.平均屈折度数は男性.2.60±3.20(+2.75..9.50)Dで,女性.1.00±2.90(+3.75..8.50)Dであった.使用機器はSD-OCT(RS-3000R:NIDEK)を用い,スキャンモードとして6.0mmの黄斑ラジアルスキャンで測定した.黄斑ラジアルスキャンは黄斑部を15°間隔に12本スキャンし,加算枚数は5枚とした.中心窩から1mm部位と3mm部位の各12点(合計24点)のTotalOS&視細胞内節外節接合部内縁網膜色素上皮外縁図1TotalOS&RPE/BMのセグメンテーション上段:SD-OCTにより黄斑部を15°間隔に12本ラジアルスキャンし,中心窩から1mmと3mm部位の各12点(合計24点)のTotalOS&RPE/BMを内蔵ソフトより抽出した.1mm,3mm部位の耳側(135°.225°),上方(45°.135°),鼻側(45°.315°),下方(225°.315°)の平均を算出し,4象限のTotalOS&RPE/BMとした.下段:TotalOS&RPE/BMは視細胞内節外節接合部内縁.網膜色素上皮外縁とした.1494あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(122) RPE/BMを計測し,上方(45°.135°),耳側(135°.225°),下方(225°.315°),鼻側(45°.315°)の平均値を算出し,4象限のTotalOS&RPE/BMとした(図1).TotalOS&RPE/BMはIS/OS内縁からRPE外縁までとし,そのセグメンテーションは内蔵ソフトの層境界検出アルゴリズムにより自動で行われた.層境界の検出が不正確な場合は再測定を行い,画質を示すsignalstrengthindex(SSI)は7以上の信頼性のある結果を採用した(図1).検討項目はTotalOS&RPE/BMの4象限での比較,TotalOS&RPE/BMの年齢,屈折度数との相関および性差である.統計学的検討はTotalOS&RPE/BMの4象限での比較に対して,分散分析(ANOVA)法を用いて有意差が得られた場合はScheffe多重比較法を行った.また,年齢や屈折度数との相関に対して,4象限ではSpearman順位相関係数,性差に対してはMann-WhitneyUtestを用いて危険率5%未満を統計学的に有意とした.なお,本研究は川崎医科大学倫理委員会の承認を得て行った.II結果1.TotalOS&RPE/BMの中心窩および4象限での比較TotalOS&RPE/BMは,中心窩では80.6±5.5μmと他象限と比較し有意に厚く(p<0.01),1mm部位は上方70.3±3.4μm,耳側70.9±3.4μm,下方68.9±3.6μm,鼻側71.3±3.6μmで,鼻側,耳側,上方,下方の順に厚く,下方は鼻側,耳側と比較し有意に薄かった(p<0.01,0.05).3mm部位は上方68.0±3.0μm,耳側67.0±3.3μm,下方66.0±3.6μm,鼻側66.8±3.8μmで,上方,耳側,鼻側,下方の順に厚く,下方は上方と比較し有意に薄かった(p<0.05).全象限1mm部位より3mm部位が有意に薄かった(p<0.01)(図2,3).性差では,男性は中心窩80.3±6.4μmと他象限と比較し有意に厚く(p<0.01),1mm部位は上方69.8±3.5μm,耳側70.0±3.4μm,下方68.0±4.1μm,鼻側70.2±3.6μmで,鼻側,耳側,上方,下方の順に厚かった.3mm部位は上方67.9±2.4μm,耳側66.7±3.2μm,下方65.8±4.0μm,鼻側69.2±3.9μmで,鼻側,上方,耳側,下方の順に厚かった(図2,3).女性は中心窩80.8±4.8μmと他象限と比較し有意に厚く(p<0.01),1mm部位は上方70.6±3.2μm,耳側71.7±3.3μm,下方69.7±3.0μm,鼻側72.0±3.4μmで,鼻側,耳側,上方,下方の順に厚かった.下方は耳側と比較し有意に薄かった(p<0.05).3mm部位は上方68.2±3.5μm,耳側67.1±3.3μm,下方66.2±3.3μm,鼻側66.5±3.7μmで上方,耳側,鼻側,下方の順に厚かった(図2,3).男女ともに中心窩は他象限と比較して有意に厚く,全象限(123)図2TotalOS&RPE/BMマップ内円:1mm部位TotalOS&RPE/BM.外円:3mm部位TotalOS&RPE/BM.1mm部位より3mm部位が有意に薄かった(p<0.01)(図2,3).また,各象限における性差では,1mm部位の鼻側のみ女性と比較して男性が有意に薄かった(p<0.05)(図4).あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151495 901mm部位8090全体***TotalOS&RPE/BM(μm)TotalOS&RPE/BM(μm)TotalOS&RPE/BM(μm)TotalOS&RPE/BM(μm)TotalOS&RPE/BM(μm)*男性701mm**70****女性**◆3mm6050上方耳側下方鼻側903mm部位80*上方耳側下方鼻側90男性80男性701mm**70**女性****◆3mm60605050上方耳側下方鼻側上方耳側下方鼻側90女性*801mm****70****◆3mm6050上方耳側下方鼻側図31mm,3mm部位における各象限の比較全体,男性,女性:4象限ともに1mm部位より3mm部位が図41mm,3mm部位における各象限の性差男性1mm部位の鼻側のみ,女性よりも有意に薄かった(p<0.05).*:p<0.05.RPE/BMは中心小窩から周辺になるに従い薄くなると報告している2).この理由として,中心窩では錐体外節の先端がRPEまで達しているのに対して,周辺では錐体外節が杆体外節の半分の長さでRPEから伸びた微絨毛に包まれていることが関与していると述べている.また,Ootoらの3DOCTを用いた検討では,視細胞外節の厚みは中心部網膜から周辺有意に薄かった(p<0.01).全体:1mm部位において下方は鼻側,耳側と比較し有意に薄かった(p<0.01,0.05).3mm部位において下方は上方と比較し有意に薄かった(p<0.05).女性:1mm部位において下方は鼻側と比較し有意に薄かった(p<0.05).**:p<0.01,*:p<0.05.2.TotalOS&RPE/BMと年齢および屈折度数との相関年齢との相関では,男性の中心窩のみ加齢に伴いTotalOS&RPE/BMが減少する負の相関が認められた.屈折度数との相関では男性,女性ともに全象限において屈折度数との相関はなかった(表1).性別による各パラメータでの比較では,男女間で年齢(p=0.7075),屈折度数(p=0.1044)に有意差はなかった.III考按1.TotalOS&RPE/BMの黄斑部領域での定量今回のSD-OCTを用いたTotalOS&RPE/BMの黄斑部領域における定量により,TotalOS&RPE/BMは中心窩でもっとも厚く,全象限で1mm部位より3mm部位が有意に薄いことが明らかとなった.Srinivasanらのultrahigh-resolutionOCT(UHR-OCT)を用いた検討では,TotalOS&1496あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015になるにつれ薄くなると報告している1).Hoganら8)のヒト網膜の組織学的検討では,視細胞内節の付け根からRPEの距離は後極部より周辺部のほうが短いと報告している.本研究の結果は,これらのUHR-OCTを用いたSrinivasanら2)や3DOCTを用いたOotoら1)の報告,Hoganら8)の組織学的所見とも一致する結果であった.よって,TotalOS&RPE/BMを測定することでRPEを含めた視細胞外節厚を二次的に定量することが可能であると考えられた.今回の検討により,日本人における黄斑部領域のTotalOS&RPE/BMを定量することができた.2.TotalOS&RPE/BMの4象限での比較および年齢,屈折度数との関連4象限における比較検討では,有意差はみられなかったが,1mm部位および3mm部位において下方が他象限と比較して薄い傾向があった.また,各象限で性差をみたところ1mm部位の鼻側のみ女性と比較して男性が有意に薄く,その他の象限も男性が薄い傾向にあったが有意差はなかった.Curcioら9)の組織学的検討では,44.58歳頃から杆体細胞密度は下方網膜から減少しはじめ,その減少は加齢とともに全体へ広がると報告している.しかし,本研究では男性の中心窩以外はTotalOS&RPE/BMと年齢に負の相関はみら(124) 表1TotalOS&RPE/BMと年齢および屈折度数との相関年齢屈折度数相関係数p値相関係数p値中心窩.0.10940.41800.09720.4721全体1mm上方耳側下方鼻側.0.1673.0.0203.0.13350.01920.21360.88090.32210.8871.0.05370.05590.03940.12530.69140.67950.77110.35303mm上方耳側下方鼻側.0.04250.1458.0.1535.0.09520.75330.27910.25440.4813.0.14670.0927.0.00080.03940.27610.49270.99500.7712中心窩.0.49360.0104*.0.11050.5909男性1mm上方耳側下方鼻側.0.15760.0496.0.3019.0.03800.44200.81000.13390.85380.04130.0921.0.07650.05720.84120.65440.71020.78133mm上方耳側下方鼻側.0.03060.1149.0.2326.0.15860.88190.57620.25280.43890.07940.0965.0.09710.10960.69970.63920.63700.5941中心窩0.19480.29360.25700.1628女性1mm上方耳側下方鼻側.0.1814.0.0820.0.03110.00280.32880.66100.86800.9880.0.2337.0.11510.0172.0.02340.20580.53750.92680.90043mm上方耳側下方鼻側.0.04200.1511.0.0469.0.01270.82250.41720.80240.9457.0.30080.05720.0416.0.01370.10020.75990.82400.9418れなかったため,下方が他象限よりも薄かった理由や1mm部位の鼻側のみ男性が有意に薄かった理由は不明であり,今後もさらなる検討が必要である.年齢や屈折度数との関連については,男性の中心窩のみ加齢に伴い薄くなる負の相関がみられたが,全象限で屈折度数との相関はなかった.これは,以前に筆者らが報告した中心窩下のTotalOS&RPE/BMは加齢による変化がなく,女性のみ屈折度数の近視化に伴い厚みが減少し,遠視化に伴い増加する正の相関がみられた結果6)と異なるものであった.TotalOS&RPE/BMと年齢,屈折度数との関連を検討した報告は少なく,Srinivasanらの加齢に伴いTotalOS&RPE/BMが減少するという本研究と同様の報告2)もあるが,一定の見解は得られなかった.本研究と筆者らの既報との結果が異なる要因としては,対象者における屈折異常の程度差による影響も考えられるため,屈折異常の程度を揃えたうえで,TotalOS&RPE/BMと年齢,屈折度数との関連を詳細(125)(*:p<0.05)に検討する必要がある.おわりに今回,筆者らはSD-OCT(RS-3000R)を用いて日本人の正常眼におけるTotalOS&RPE/BMの黄斑部領域での定量を行った.TotalOS&RPE/BMは男性の中心窩のみ年齢との相関があり,耳側,上方,鼻側と比較して下方が薄い傾向にあった.しかし,本研究の問題点としては,対象者に中等度以上の近視眼が含まれていること,黄斑部ラジアルスキャンにおける測定ポイントの少なさ,症例数の少なさがあげられる.そのため,今後は症例数を増加し,対象の屈折異常の程度を限定したうえでのさらなる検討が必要である.そして,視細胞外節病をはじめとする網膜疾患における黄斑部領域のTotalOS&RPE/BMを定量し,臨床的意義や視機能との関連を検討する予定である.あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151497 文献1)OotoS,HangaiM,TomidokoroAetal:Effectsofage,sex,andaxiallengthonthethree-dimensionalprofileofnormalmacularlayerstructures.InvestOphthalmolVisSci52:8769-8779,20112)SrinivasanVJ,MonsonBK,WojtkowskiMetal:Characterizationofouterretinalmorphologywithhigh-speed,ultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci49:1571-1579,20083)OokaE,MitamuraY,BabaTetal:Fovealmicrostructureonspectral-domainopticalcoherencetomographicimagesandvisualfunctionaftermacularholesurgery.AmJOphthalmol152:283-290,20114)OtaM,TsujikawaA,MurakamiTetal:Fovealphotoreceptorlayerineyeswithpersistentcystoidmacularedemaassociatedwithbranchretinalveinocclusion.AmJOphthalmol145:273-280,20085)StaurenghiG,SaddaS,ChakravarthyUetal:Proposedlexiconforanatomiclandmarksinnormalposteriorsegmentspectral-domainopticalcoherencetomography:theIN・OCTconsensus.Ophthalmology121:1572-1578,20146)後藤克聡,水川憲一,山下力ほか:スペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼での視細胞内節外節接合部-網膜色素上皮間距離の定量.あたらしい眼科30:1767-1771,20137)後藤克聡,水川憲一,今井俊裕ほか:スペクトラルドメイン光干渉断層計による裂孔原性網膜.離術後の視細胞内節外節接合部-網膜色素上皮距離の経時的変化.あたらしい眼科31:1070-1074,20148)HoganMJ,AlvaradoJA,WeddellJE:RETINA.HISTOLOGYoftheHUMANEYE─anatlasandtextbook.W.B.Sanuderscompany,Philadelphia,19719)CurcioCA,MillicanCL,AllenKAetal:Agingofthehumanphotoreceptormosaic:evidenceforselectivevulnerabilityofrodsincentralretina.InvestOphthalmolVisSci34:3278-3296,1993***1498あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(126)

スペクトラルドメイン光干渉断層計による裂孔原性網膜.離術後の視細胞内節外節接合部-網膜色素上皮間距離の経時的変化

2014年7月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科31(7):1070.1074,2014cスペクトラルドメイン光干渉断層計による裂孔原性網膜.離術後の視細胞内節外節接合部-網膜色素上皮間距離の経時的変化後藤克聡*1,2水川憲一*1今井俊裕*1山下力*1,3渡邊一郎*1三木淳司*1,3桐生純一*1*1川崎医科大学眼科学教室*2川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科感覚矯正学専攻*3川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科TimeCourseofDistancebetweenPhotoreceptorInner/OuterSegmentJunctionandRetinalPigmentEpitheliumafterRhegmatogenousRetinalDetachmentSurgeryUsingSpectral-DomainOpticalCoherenceTomographyKatsutoshiGoto1,2),KenichiMizukawa1),ToshihiroImai1),TsutomuYamashita1,3),IchiroWatanabe1),AtsushiMiki1,3)andJunichiKiryu1)1)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,2)DoctoralPrograminSensoryScience,GraduateSchoolofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,3)DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare目的:中心窩.離を伴う裂孔原性網膜.離(macula-offRRD)術後における視細胞外節の厚みを二次的に定量するために視細胞内節外節接合部(IS/OS)から網膜色素上皮までの厚み(TotalOS&RPE/BM)を定量し,経時的変化を検討した.対象および方法:対象はmacula-offRRD術後の30例30眼.方法は術前と術後1,3,6カ月のlogMARとスペクトラルドメイン(spectral-domain)光干渉断層計で中心窩下のTotalOS&RPE/BMを測定した.結果:IS/OSを連続的あるいは部分的に確認できた群の平均logMARは,術前0.77,術後1カ月0.14,3カ月0.02,6カ月.0.03と術後から有意な改善が得られた(p<0.000001).平均TotalOS&RPE/BMは術後1カ月65.2μm,3カ月77.1μm,6カ月81.8μmと術後1カ月(p<0.0001)と比べて術後3,6カ月(p<0.00001)で有意差があった.術後6カ月でのTotalOS&RPE/BMは,以前に筆者らが正常人で定量した値と同等であった.結論:TotalOS&RPE/BMは術後3カ月から有意な増加を認め,視細胞外節の再生による可能性が示唆された.Purpose:Toquantifythedistancebetweenphotoreceptorinner/outersegmentjunction(IS/OS)andretinalpigmentepithelium(TotalOS&RPE/BM)aftersurgeryformacula-offrhegmatogenousretinaldetachment(RRD).CasesandMethod:Examinedwere30eyesof30patientswithmacula-offRRD;logMARwasexaminedpreoperativelyandat1,3and6monthspostoperatively.TotalOS&RPE/BMunderthefoveawasalsoexaminedusingspectral-domainopticalcoherencetomography.Results:ThemeanlogMARinthecontinuousorirregularIS/OSlinegroupwas0.77preoperatively,0.14at1monthpostoperatively,0.02at3monthspostoperativelyand.0.03at6monthspostoperatively,asignificantimprovementfrompostoperatively(p<0.000001).ThemeanTotalOS&RPE/BMwas65.2μmat1monthpostoperatively,77.1μmat3monthspostoperativelyand81.8μmat6monthspostoperatively.TotalOS&RPE/BMat1monthpostoperativelyshowedsignificantdifferenceascomparedwith3and6monthspostoperatively(p<0.0001,p<0.00001,respectively).TotalOS&RPE/BMat6monthspostoperativelywasequaltothenormalvaluewepreviouslyreported.Conclusion:TotalOS&RPE/BMshowedsignificantincreaseafter3monthspostoperatively,possiblyduetorestorationofthephotoreceptoroutersegment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(7):1070.1074,2014〕Keywords:裂孔原性網膜.離,視細胞外節,光干渉断層計,中心窩網膜厚,視力予後.rhegmatogenousretinaldetachment,photoreceptoroutersegment,opticalcoherencetomography,centralretinalthickness,visualacuityoutcome.〔別刷請求先〕後藤克聡:〒701-0192倉敷市松島577川崎医科大学眼科学教室Reprintrequests:KatsutoshiGoto,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki701-0192,JAPAN107010701070あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(144)(00)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY はじめに中心窩.離を含む裂孔原性網膜.離(macula-offrhegmatogenousretinaldetachment:RRD)では,手術により網膜が復位しても視力回復に時間を要す場合や改善が不良な症例をたびたび経験する.網膜復位後,視力不良例の多くに視細胞内節外節接合部(photoreceptorinner/outersegmentjunction:IS/OS)ラインの断裂が認められ,断裂部位に一致してマイクロペリメトリーによる網膜感度が低下することが報告されている1,2).また,macula-offRRD復位後の視力は修復したIS/OSラインの状態と相関し3),近年では外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)も術後視力の予測因子となることが示唆されている4,5).しかし,過去の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による報告では,術後視力と網膜外層の関連はIS/OSやELMの有無による定性的評価が主であり,定量的評価を行った検討は少ない6).視力の根源とされている視細胞外節の厚みを測定することは網膜層の自動セグメンテーションや解像度の問題から困難であり,定量するためにはhigh-speedultrahigh-resolutionOCT(UHR-OCT)7)が必要となる.そのため以前に筆者らは,視細胞外節の厚みを二次的に定量するために,spectral-domainOCT(SD-OCT)を用いてIS/OSから視細胞外節の代謝に重要である網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)までの厚み(TotalOS&RPE/BM7))を正常眼で定量した8).そこで今回,続発性の視細胞外節病であるmacula-offRRDに対して術後のTotalOS&RPE/BMを定量し,経時的変化および視力との関連を検討した.I対象および方法対象は2008年8月.2010年10月までに川崎医科大学附属病院眼科を受診し,RRDと診断された179例のうち,本研究に対してインフォームド・コンセントが得られ,macula-offRRDに対して初回手術を施行した30例30眼であった.男性21例,女性9例.平均年齢は56.3±15.5歳(15.86歳),術前平均屈折度数は.2.63±2.60D(+2.50..6.75D),術前平均眼軸長は25.07±1.43mm(22.76.28.13mm),平均黄斑部.離期間は6.4±4.2日(1.16日),平均経過観察期間は4.5±1.5カ月であった.術後にOCTが未施行であった症例,再.離例,残存中心窩.離や黄斑浮腫をきたした症例,増殖硝子体網膜症は除外した.術式の内訳は硝子体手術27眼(白内障手術併用19眼),強膜内陥術3眼であった.方法は術前と術後1,3,6カ月に視力を測定し,logMAR(logarithmicminimumangleofresolution)にて評価を行った.また,SD-OCT(RTVue-100R;Optovue社,Fremont,CA,USA)を用い,スキャンパターンとして6.0mmlinescanで測定した.本機の仕様は,解像度5.0μm,26,000A-scan/second,256.4,096A-scan/Frameである.中心窩を通る水平断面をスキャンし,術後1,3,6カ月における中心窩下のTotalOS&RPE/BMおよび中心窩網膜厚(centralretinalthickness:CRT)を測定した.TotalOS&RPE/BMはIS/OS内縁からRPE外縁,CRTは内境界膜からRPE外縁と定義し,同一検者がRTVue-100Rに内蔵されているソフトを用いてキャリパー計測を行った(図1).また,術後1カ月のOCT所見からIS/OSラインが連続して確認できるものをIS/OS(+),確認できるが一部断裂や不整なものをIS/OS(±),確認できないものをIS/OS(.)と定義した.OCTデータは,signalstrengthindexが50以上得られたデータとし,固視不良の場合は複数回の測定を行い,最も信頼性のあるデータを採用した.検討項目は,IS/OS(+)(±)群とIS/OS(.)群におけるlogMARの経過とCRTの推移,TotalOS&RPE/BMの推移,TotalOS&RPE/BMおよびCRTの変化量,視力とTotalOS&RPE/BMおよびCRTとの相関である.TotalOS&RPE/BMの検討については,術後1カ月のOCT所見からELMを認め,さらにIS/OS(+)(±)群のみを対象とした.TotalOS&RPE/BMおよびCRTの変化量は,術後1カ月から3カ月,術後3カ月から6カ月,それぞれの厚みの増減を変化量とし,増加をプラス,減少をマイナスとして算出した.統計学的検討は,logMARの経過,TotalOS&RPE/BMおよびCRTの推移については一元配置分散分析を行い,Scheffeによる多重比較で検定した.IS/OS(+)(±)群と図1TotalOS&RPE.BMおよびCRTのセグメンテーション上段:TotalOS&RPE/BMはIS/OS内縁.RPE外縁とした.下段:CRTは内境界膜.網膜色素上皮外縁とした.TotalOS&RPE/BMおよびCRTのセグメンテーションは,内蔵ソフトで計測した.TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み,CRT:centralretinalthickness,OS:outersegment,RPE:retinalpigmentepithelium,BM:Burchmembrane.(145)あたらしい眼科Vol.31,No.7,20141071 IS/OS(.)群における各項目,TotalOS&RPE/BMおよびCRTの変化量についてはMann-WhitneyUtestを用い,有意水準は5%未満とした.なお,本研究は川崎医科大学倫理委員会の承認を得て行った.II結果1.IS/OS(+)(±)群とIS.OS(-)群におけるlogMARの経過とCRTの推移IS/OS(+)(±)群とIS/OS(.)群の患者背景は,両群で年齢と術前屈折度数に有意差がみられた(表1).平均logMARは,IS/OS(+)(±)群で術前:0.77,術後1カ月:0.14,術後3カ月:0.02,術後6カ月:.0.03,IS/OS(.)群で術前:1.20,術後1カ月:0.56,術後3カ月:0.54,術後6カ月:0.40であった.両群とも術後1カ月の早期から有意な改善が得られ,術後6カ月が最も良好であった〔IS/OS(+)(±)群:p<0.000001,IS/OS(.)群:p<0.01〕.また,両群間において,経過を通して有意差がみられた(術前:p=0.0366,術後1カ月:p=0.0003,術後3カ月:p=0.0002,術後6カ月:p=0.0273,図2).CRTは,IS/OS(+)(±)群で術後1カ月:243.0μm,術後3カ月:255.5μm,術後6カ月:264.0μm,IS/OS(.)群で術後1カ月:206.3μm,術後3カ月:219.4μm,術後6カ月:220.4μmで両群とも経過を通して有意な変化はなかった.両群間においては,経過を通して有意差がみられた(術後1カ月:p=0.0081,術後3カ月:p=0.0436,術後6カ月:p=0.0149,図3).2.IS.OS(+)(±)群におけるTotalOS&RPE.BMの推移TotalOS&RPE/BMは術後1カ月:65.2μm,術後3カ月:77.1μm,術後6カ月:81.8μmと経時的に増加し,術後1カ月と比べて術後3,6カ月で有意差を認め,術後6カ月で最も厚かった(術後3カ月:p<0.0001,術後6カ月:p<0.00001)(図4).3.IS/OS(+)(±)群におけるTotalOS&RPE.BMおよびCRTの変化量TotalOS&RPE/BMの変化量は術後1カ月から3カ月で表1IS/OS(+)(±)群とIS.OS(-)群の患者背景IS/OS(+)(±)群(n=21)IS/OS(.)群(n=9)p値年齢(歳)50.5±13.769.9±10.20.0017黄斑部.離期間(日)6.5±3.86.4±5.20.7121術前屈折度数(D).3.35±2.49.0.57±1.610.0137術前眼軸長(mm)25.39±1.3224.30±1.400.1021IS/OS:photoreceptorinner/outersegmentjunction.11.7μm,術後3カ月から術後6カ月で2.76μm,CRTの変化量は術後1カ月から3カ月で10.8μm,術後3カ月から術後6カ月で2.47μmであった.術後1カ月から3カ月,術後3カ月から6カ月ともに両者の変化量に有意差はなかった(p=0.7146,p=0.5882)(図5).4.IS.OS(+)(±)群における視力とTotalOS&RPE.BMおよびCRTとの相関TotalOS&RPE/BMは,術後1カ月において視力と正の相関があった(r=0.5179,p=0.0162,図6).しかし,術後3,6カ月ではいずれも相関はなかった(術後3カ月:r=0.1335,p=0.5857,術後6カ月:r=0.2094,p=0.5136).CRTは,術後の経過を通して視力との相関はなかった(術後1カ月:r=0.1193,p=0.6065,術後3カ月:r=0.2662,p=0.2706,術後6カ月:r=0.4454,p=0.1105).III考按本研究では,SD-OCTを用いて術後のTotalOS&RPE/BMの測定を行うことで,網膜外層の回復過程を経時的に捉えることができた.そして,術後1カ月の早期のみ視力とTotalOS&RPE/BMが相関していたこと,ELMを認めたIS/OS(+)(±)群の視力はIS/OS(.)群よりも有意に良好な経過であったことから,IS/OSの修復後,術後早期ではTotalOS&RPE/BMの増加によりさらに視力が改善して(logMAR)-0.200.000.200.400.600.801.001.201.40******:IS/OS(+)(±)群:IS/OS(-)群術後1カ月3カ月6カ月***術前図2IS.OS(+)(±)群とIS.OS(-)群におけるlogMARの経過IS/OS(+)(±)群は術前:0.77,術後1カ月:0.14,術後3カ月:0.02,術後6カ月:.0.03で,IS/OS(.)群は術前:1.20,術後1カ月:0.56,術後3カ月:0.54,術後6カ月:0.40で両群とも術後1カ月の早期から有意な改善が得られ,術後6カ月が最も良好であった.また,経過を通して両群間で有意差がみられた(術前:p=0.0366,術後1カ月:p=0.0003,術後3カ月:p=0.0002,術後6カ月:p=0.0273,Mann-WhitneyUtest).**:有意差あり(p<0.000001),*:有意差あり(p<0.01),one-wayANOVA.IS/OS:photoreceptorinner/outersegmentjunction,logMAR:logarithmicminimumangleofresolution.1072あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(146) (μm)280260240220200(μm)14121086420図3IS/OS(+)(±)群とIS.OS(-)群におけるCRTの推移IS/OS(+)(±)群は術後1カ月:243.0μm,術後3カ月:255.5μm,術後6カ月:264.0μm,IS/OS(.)群は術後1カ月:206.3μm,術後3カ月:219.4μm,術後6カ月:220.4μmで,両群とも経過を通して有意な変化はなかった.また,経過を通して両群間で有意差がみられた(術後1カ月:p=0.0081,術後3カ月:p=0.0436,術後6カ月:p=0.0149,Mann-WhitneyUtest).IS/OS:photoreceptorinner/outersegmentjunction,CRT:centralretinalthickness.:IS/OS(+)(±)群:IS/OS(-)群■3カ月6カ月術後1カ月p=0.7146:TotalOS&RPE:CRTp=0.5882術後1カ月→3カ月術後3カ月→6カ月図5IS/OS(+)(±)群におけるTotalOS&RPE.BMおよびCRTの変化量術後1カ月から3カ月の変化量はTotalOS&RPE/BM:11.7μm,CRT:10.8μm,術後3カ月から術後6カ月の変化量はTotalOS&RPE/BM:2.76μm,CRT:2.47μmであった.両群の変化量に有意差はなかった(p=0.7146,p=0.5882,MannWhitneyUtest).くると考えられた.SD-OCT所見と術後視力との検討については,Shimodaら3)は網膜復位後にIS/OSが徐々に回復し,IS/OSの状態が視力と相関したと報告している.Wakabayashiら4)は,術後のIS/OSとELMシグナルの完全性は術後最高視力と相関し,術後ELMの状態から視細胞層の回復を予測できる可能性があるとしている.川島ら5)は,視力改善はIS/OS断裂の減少と強く相関し,ELM断裂の消失がIS/OS改善の前提であると述べている.また,Gharbiyaら6)はIS/OSやELMに加えて,外顆粒層厚やCOSTの状態が視力予後に最(147)(μm)9080706050***術後1カ月3カ月6カ月図4IS.OS(+)(±)群におけるTotalOS&RPE.BMの推移TotalOS&RPE/BMは術後1カ月:65.2μm,術後3カ月:77.1μm,術後6カ月:81.8μmで,術後1カ月と比べて術後3,6カ月で有意差を認め,術後6カ月で最も厚かった.**:有意差あり(p<0.00001),*:有意差あり(p<0.0001),one-wayANOVA.TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み,OS:outersegment,RPE:retinalpigmentepithelium,BM:Burchmembrane.(μm)30405060708090100-0.200.000.100.200.300.400.500.60(logMAR)y=-23.247x+68.434r=0.5179,p=0.0162-0.10図6IS/OS(+)(±)群における視力とTotalOS&RPE/BMの相関(術後1カ月)術後1カ月において,TotalOS&RPE/BMは視力と正の相関があった(r=0.5179,p=0.0162,Spearman順位相関係数).も重要であると報告している.このように,IS/OSやELMの状態は術後視力と相関し,視力予後を予測できる重要な因子であるため,網膜復位後における術後視力の改善にはELMおよびIS/OSの修復が必須であり,さらなる術後早期の視力改善にはTotalOS&RPE/BMの増加が関連していると考えられた.しかしながら,術後3カ月以降でTotalOS&RPE/BMと視力に相関がなかった理由として,今回の検討ではELM(+)およびIS/OS(+)(±)の網膜外層の形態が比較的良好な症例を対象としたため,視力は術後1カ月の早期から有意に改善し,視力の改善は頭打ちの状態に近づいていたことが影響したと考えられる.TotalOS&RPE/BMは,術後3カ月から有意な増加を認め,術後6カ月で最も厚かった.一方,CRTは経過を通しあたらしい眼科Vol.31,No.7,20141073 て有意な変化はみられなかった.術後1カ月のTotalOS&RPE/BMは平均65.2μmと筆者らが正常人で報告した平均値81.3μm8)よりも薄く,術後6カ月では81.8μmとほぼ同じであった.よって,今回の結果は復位後に残存している視細胞内節から外節が徐々に再生されたことを意味していると考えられる.つまり,網膜復位後におけるTotalOS&RPE/BMの増加は,視細胞外節の再生過程を捉えている可能性がある.動物モデルやヒトの眼における実験的研究では,網膜.離後,急速に視細胞のアポトーシスを起こすことがわかっている9,10).Lewisら11)は,実験的網膜.離の復位直後において視細胞外節長が減少することを報告している.また,組織学的研究における視細胞外節の再生については,復位後3カ月で視細胞外節の長さはほぼ回復したという報告や正常な外節長の約70%まで達したという報告がある12,13).Guerinら14)の検討では,復位後5カ月での視細胞外節長は正常値と比べて統計的に差はみられなかった.今回の結果は,これらの組織学的な報告と同様の結果であり,TotalOS&RPE/BMを測定することで視細胞外節の再生過程を二次的に定量することができたと考えられる.また,SD-OCTを用いた本研究では,視細胞外節長の増加は復位後6カ月まで続いていることも明らかとなった.本研究の問題点としては,症例数の少なさ,復位後にIS/OSが確認できない症例や術後に網膜下液が残存している場合には,TotalOS&RPE/BMを定量することがむずかしいため症例が限定されることが挙げられる.今後は,症例数を増やしてさらに詳細な検討が必要であり,純粋な視細胞外節厚の定量方法が課題である.続発性の視細胞外節病であるmacula-offRRDに対して,術後の視細胞外節を含めたTotalOS&RPE/BMを定量し,視力との関連を検討した.その結果,経時的に網膜外層の回復過程を捉えることができ,TotalOS&RPE/BMは術後1カ月の早期のみ視力と相関した.また,ELMを認めたIS/OS(+)(±)群の視力はIS/OS(.)群よりも良好な経過であった.よって,術後早期においてはELMおよびIS/OSの修復を前提として,TotalOS&RPE/BMの増加によりさらに視力が改善してくると考えられた.また,TotalOS&RPE/BMは術後3カ月から有意な増加を認め,視細胞外節の再生が示唆された.今後は,TotalOS&RPE/BMの機能評価を併せての検討や侵達性の高いswept-sourceOCTを用いて検討する予定である.文献1)SchocketLS,WitkinAJ,FujimotoJGetal:Ultrahighresolutionopticalcoherencetomographyinpatientswithdecreasedvisualacuityafterretinaldetachmentrepair.Ophthalmology113:666-672,20062)SmithAJ,TelanderDG,ZawadzkiRJetal:High-resolutionFourier-domainopticalcoherencetomographyandmicroperimetricfindingsaftermacula-offretinaldetachmentrepair.Ophthalmology115:1923-1929,20083)ShimodaY,SanoM,HashimotoHetal:Restorationofphotoreceptoroutersegmentaftervitrectomyforretinaldetachment.AmJOphthalmol149:284-290,20104)WakabayashiT,OshimaY,FujimotoHetal:Fovealmicrostructureandvisualacuityafterretinaldetachmentrepair:imaginganalysisbyFourier-domainopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:519-528,20095)川島裕子,水川憲一,渡邊一郎ほか:裂孔原性網膜.離復位後における視細胞外節の回復過程の検討.日眼会誌115:374-381,20116)GharbiyaM,GrandinettiF,ScavellaVetal:Correlationbetweenspectral-domainopticalcoherencetomographyfindingsandvisualoutcomeafterprimaryrhegmatogenousretinaldetachmentrepair.Retina32:43-53,20127)SrinivasanVJ,MonsonBK,WojtkowskiMetal:Characterizationofouterretinalmorphologywithhigh-speed,ultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci49:1571-1579,20088)後藤克聡,水川憲一,山下力ほか:スペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼での視細胞内節外節接合部網膜色素上皮間距離の定量.あたらしい眼科30:17671771,20139)CookB,LewisGP,FisherSKetal:Apoptoticphotoreceptordegenerationinexperimentalretinaldetachment.InvestOphthalmolVisSci36:990-996,199510)ArroyoJG,YangL,BulaDetal:Photoreceptorapoptosisinhumanretinaldetachment.AmJOphthalmol139:605-610,200511)LewisGP,CharterisDG,SethiCSetal:Theabilityofrapidretinalreattachmenttostoporreversethecellularandmoleculareventsinitiatedbydetachment.InvestOphthalmolVisSci43:2412-2420,200212)今井和行,林篤志,deJuanEJr:網膜.離─復位モデルの作製と評価.日眼会誌102:161-166,199813)SakaiT,CalderoneJB,LewisGPetal:Conephotoreceptorrecoveryafterexperimentaldetachmentandreattach-ment:animmunocytochemical,morphological,andelectrophysiologicalstudy.InvestOphthalmolVisSci44:416425,200314)GuerinCJ,LewisGP,FisherSKetal:Recoveryofphotoreceptoroutersegmentlengthandanalysisofmembraneassemblyratesinregeneratingprimatephotoreceptoroutersegments.InvestOphthalmolVisSci34:175-183,1993***1074あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(148)

スペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼での視細胞内節外節接合部-網膜色素上皮間距離の定量

2013年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科30(12):1767.1771,2013cスペクトラルドメイン光干渉断層計による正常眼での視細胞内節外節接合部.網膜色素上皮間距離の定量後藤克聡*1,2水川憲一*1山下力*1,3今井俊裕*1渡邊一郎*1三木淳司*1,3桐生純一*1*1川崎医科大学眼科学教室*2川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科感覚矯正学専攻*3川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科QuantifyingDistanceJunctionbetweenInnerandOuterSegmentsofPhotoreceptor-RetinalPigmentEpitheliuminNormalEyesUsingSpectralDomainOpticalCoherenceTomographyKatsutoshiGoto1,2),KenichiMizukawa1),TsutomuYamashita1,3),ToshihiroImai1),AtsushiMiki1,3),IchiroWatanabe1)andJunichiKiryu1)1)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,2)DoctoralPrograminSensoryScience,GraduateSchoolofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,3)DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare目的:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の自動セグメンテーション機能を用いて視細胞外節を含めた視細胞内節外節接合部(IS/OS)から網膜色素上皮までの厚み(TotalOS&RPE/BM)を測定し,正常眼における定量および検討を行った.対象および方法:正常眼160眼に対し,SD-OCTで中心窩網膜厚(CRT)および中心窩下のTotalOS&RPE/BMを測定し,年齢や屈折度数との相関,性差について検討した.結果:CRTは平均228.7±16.6μm,TotalOS&RPE/BMは平均81.3±4.1μmであった.TotalOS&RPE/BMは,屈折度数と正の相関を認め(r=0.2160,p=0.0061),CRTは男性が女性よりも有意に厚かった.他のパラメータに関して相関はみられなかった.結論:TotalOS&RPE/BMは屈折度数の近視化に伴い減少し,CRTは性別が関与していることがわかった.Purpose:Toquantifythedistancejunctionbetweeninnerandoutersegmentsofphotoreceptor-retinalpigmentepithelium(TotalOS&RPE/BM)innormaleyes,usingspectraldomainopticalcoherencetomography(SDOCT).CasesandMethods:Centralretinalthickness(CRT)andTotalOS&RPE/BMunderthefoveawereexaminedbySD-OCTin160normaleyes.Wealsoinvestigatedtherelationshipofage,refractionandgenderwithCRTandTotalOS&RPE/BM.Results:MeanCRTwas228.7±16.6μm;meanTotalOS&RPE/BMwas81.3±4.1μm.TotalOS&RPE/BMshowedsignificantpositivecorrelationwithrefraction(r=0.2160,p=0.0061).CRTwassignificantlygreaterinmalesthaninfemales.Therewasnocorrelationwithotherparameters.Conclusion:TotalOS&RPE/BMdecreasedwithmyopia,andCRTwasassociatedwithgender.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(12):1767.1771,2013〕Keywords:光干渉断層計,視細胞外節,網膜色素上皮,中心窩網膜厚,屈折.opticalcoherencetomography,photoreceptorofoutersegment,retinalpigmentepithelium,centralretinalthickness,refraction.はじめに視細胞外節は光を電気信号に転換する働きを持ち視力の根源をなしているため,外節の障害は視機能に鋭敏に反映される.スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectraldomainopticalcoherencetomography:SD-OCT)の出現により視細胞内節外節接合部(junctionbetweenphotoreceptorinnerandoutersegment:IS/OS)を明瞭な高反射ラインとして観察が可能となり,IS/OSを指標に外節障害を評価できるようになった.現在,網膜疾患においてIS/OSの有無と視力の関連が数〔別刷請求先〕後藤克聡:〒701-0192倉敷市松島577川崎医科大学眼科学教室Reprintrequests:KatsutoshiGoto,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki701-0192,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(119)1767 多く報告されている1.3).しかし,それらはIS/OSの有無による定性的な評価のみで,視細胞外節の厚みによる定量的評価の報告は少ない4,5).これまでSD-OCTで視細胞外節の厚みを定量することは,網膜層の自動セグメンテーションや解像度の問題から困難であり,正確にセグメンテーションが可能な解析ソフトを有するhigh-speedultrahigh-resolutionOCT(UHR-OCT)5)や特別な境界セグメンテーションアルゴリズム6)が必要であったが,より高性能なSD-OCTの登場により自動セグメンテーションが可能となってきた.そこで今回筆者らは,自動セグメンテーション可能なSD-OCTを用いて,IS/OSから視細胞外節の代謝に重要である網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)までの厚み(totaloutersegmentandRPE/Bruchmembrane:TotalOS&RPE/BM)5)を定量し,正常眼において検討を行ったので報告する.I対象および方法対象は研究に対してインフォームド・コンセントを行い同意が得られ,眼科疾患の既往はなく,検眼鏡や眼底写真,光干渉断層計による所見が正常で,屈折異常以外に眼科的疾患を有さない160例160眼(男性78例,女性82例),矯正視力は1.0以上で中心固視が可能であったものとした.平均年齢は50.2±20.6歳(12.89歳)で,年齢の内訳は10代3例,20代35例,30代18例,40代15例,50代30例,60代28例,70代21例,80代10例であった.平均屈折度数は.1.79D±3.13D(+3.50D..10.25D)で,白内障手術の既往のある症例は除外した.使用器機はSD-OCT(RS-3000R,NIDEK)を用い,スキャンパターンとして6.0mmの黄斑ラインスキャンで測定した.本機の仕様は,解像度7.0μm,53,000A-scan/secondの高速スキャン,highspeedaveragingによる最大50枚加算が可能である.方法はSD-OCTを用いて中心窩を通る水平断面をスキャンし,中心窩網膜厚(centralretinalthickness:CRT)および中心窩下のTotalOS&RPE/BMを測定した.検討項目は屈折度数との相関,年齢との相関および性差である.CRTは内境界膜(internallimitingmembrane:ILM)からRPE外縁とし,TotalOS&RPE/BMはIS/OS内縁からRPE外縁とした.CRTとTotalOS&RPE/BMのセグメンテーションは,内蔵ソフトの層境界検出アルゴリズムにより自動で行われた(図1).層境界の検出が不正確な場合は再測定を行い,画質を示すsignalstrengthindex(SSI)は7以上の信頼性のある結果を採用した.統計学的検討は,屈折度数や年齢との相関に対してSpearman順位相関係数,男女比に対してMann-WhitneyUtestを用いて危険率5%未満を有意とした.1768あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013図1CRTおよびTotalOS&RPE.BMのセグメンテーション上段:CRTはILM(矢印).RPE外縁(矢頭)とした.下段:TotalOS&RPE/BMはIS/OS内縁(矢印).RPE外縁(矢頭)とした.セグメンテーションは,内蔵ソフトにより自動で行われた.CRT:centralretinalthickness,ILM:internallimitingmembrane,RPE:retinalpigmentepithelium,BM:Bruchmembrane,IS/OS:junctionbetweenphotoreceptorinnerandoutersegment.なお,本研究は川崎医科大学倫理委員会の承認を得て行った.II結果CRTは平均228.7±16.6μm(195.271μm),TotalOS&RPE/BMは平均81.3±4.1μm(70.91μm)であった.屈折度数との相関では,TotalOS&RPE/BMは屈折度数の近視化に伴い減少し,遠視化に伴い増加する正の相関を認めた(r=0.2160,p=0.0061).CRTは屈折度数との相関がなかった(r=.0.0007,p=0.9930)(図2).年齢との相関では,CRTおよびTotalOS&RPE/BMともに相関はなかった(図3).性別による各パラメータでの比較では,男女間で年齢,屈折度数,TotalOS&RPE/BMに有意差はなかったが,CRTでは男性が平均231.1μm,女性が226.3μmと男性が有意に厚かった(p=0.0309)(表1).屈折度数と相関のあったTotalOS&RPE/BMに関して,さらに性別で相関をみたところ,男性では相関はなかったが(r=0.1178,p=0.3074),女性では屈折度数の近視化に伴い厚みが減少し,遠視化に伴い増加する正の相関が認められた(120) (121)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131769(r=0.3023,p=0.0058)(図4).III考按1.CRTおよびTotalOS&RPE.BM今回のSD-OCTによる検討では,CRTはILMからRPE外縁までの厚みを測定し,平均228.7±16.6μmであった.Ootoら7)は,3DOCT-1000を用いて248眼を対象に日本人の正常黄斑部網膜厚を検討し,1mm直径のCRTは221.9±18.8μm(178.3.288.0μm)であったと報告している.今回の結果は,既報と比べても大差なく,異なったSD-OCT間でも数値の比較が可能であり,日本人における正常中心窩網膜厚を定量することができたと考えられた.TotalOS&RPE/BMは,IS/OS内縁からRPE外縁までの厚みを測定し,平均81.0±4.1μm(70.91μm)であった.CRT年齢(歳)160180200220240260280300y=0.0765x+224.84r=0.0864,p=0.2772厚み(μm)102030405060708090TotalOS&RPE/BM60708090100y=-0.0038x+81.47r=-0.0476,p=0.5503年齢(歳)厚み(μm)100102030405060708090図3年齢との相関CRTおよびTotalOS&RPE/BMともに年齢との相関はなかった(r=0.0864,p=0.2772)(r=-0.0476,p=0.5503).CRT:centralretinalthickness,TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み.CRT160180200220240260280300y=-0.0127x+228.66r=-0.0007,p=0.9930屈折度数(D)厚み(μm)-12-10-8-6-4-2024厚み(μm)TotalOS&RPE/BM屈折度数(D)60708090100y=0.3388x+81.888r=0.2160,p=0.0061-12-10-8-6-4-2024図2屈折度数との相関CRTは屈折度数との相関がなかったが(r=-0.0007,p=0.9930),TotalOS&RPE/BMは正の相関を認めた(r=0.2160,p=0.0061).CRT:centralretinalthickness,TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み. 表1性別による検討男性(n=78)女性(n=82)p値年齢(歳)51.1±21.449.2±19.80.5497屈折度数(D).2.08±3.17.1.50±3.070.2455CRT(μm)231.1±15.4226.3±17.30.0309TotalOS&RPE/BM(μm)80.7±3.881.8±4.30.1957CRT:centralretinalthickness.TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み.男性女性1001009090y=0.171x+81.096r=0.1178,p=0.3074厚み(μm)y=0.4864x+82.498r=0.3023,p=0.0058厚み(μm)80807070-6012-10-8-6-4-2024-6012-10-8-6-4-2024屈折度数(D)屈折度数(D)図4性別における屈折度数とTotalOS&RPE.BMとの相関男性では相関はなかったが(r=0.1178,p=0.3074),女性では屈折度数と正の相関を認めた(r=0.3023,p=0.0058).TotalOS&RPE/BM:視細胞内節外節接合部から網膜色素上皮外縁までの厚み.Srinivasanら5)は,UHR-OCTを用いて網膜外層の形態を検討し,TotalOS&RPE/BMは平均72.7±1.8μmであったと報告している.Srinivasanら5)よりも厚い結果となった理由としては,OCTによる解像度やセグメンテーションの精度,人種による違いが影響していると考えられた.2.屈折度数および年齢との相関CRTは屈折度数との相関がなかったが,TotalOS&RPE/BMは屈折度数の近視化に伴い減少し,遠視化に伴い増加した.また,CRTおよびTotalOS&RPE/BMともに年齢による影響はなかった.屈折度数との関連について,timedomainOCTを用いた検討では,CRTは屈折の近視化に伴いfovealminimumは厚くなるとの報告8,9)や屈折度数と相関がなかったとの報告10,11)もあり,一定の見解はなかった.しかし,解像度やセグメンテーションの精度がより高いSD-OCTを用いた本研究では,CRTは屈折度数と相関がなく,他のSD-OCTによる報告7,12)でも同様の結果であった.一方,TotalOS&RPE/BMと屈折度数との関連についての報告はなく,今回の検討によりTotalOS&RPE/BMは屈折度数と相関することが明らかとなった.病理組織学的に強度近視の初期には,RPEが菲薄化することが報告されている13).つまり,TotalOS&RPE/BMではRPEの占める割合が大きいため近視化によるRPEの菲薄化の影響が大きく,一方,CRTではRPEの占める割合が少なくRPEの菲薄化の影響を受けにくいため,屈折度数との相関がなかったと考えられた.年齢との関連については,CRTとの相関はみられず,既報と同様の結果であった7,8,11,12,14).網膜厚減少の約80%は網膜神経線維層の減少によるものとされており15),CRTはほぼ外顆粒層で構成されているため加齢による影響を受けないと考えられる.また,TotalOS&RPE/BMについても,年齢との相関はみられなかった.Srinivasanら5)は,加齢に伴いTotalOS&RPE/BMが減少する負の相関があったと報告しているが,この検討では43例70眼という対象眼の少なさや同一被検者で両眼測定している症例も含まれていることが結果に影響している可能性がある.そのため,より多数例で片眼データのみを用いた本研究は,Srinivasanら5)よりも年齢によるTotalOS&RPE/BMの詳細な変化を捉えており,信頼性も高いと思われる.1770あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(122) 3.性差による検討CRTは男性が女性よりも有意に厚く,性差は平均4.8μmであった.CRTの性差については多数の報告7,8,10,12)があり,本研究も既報と同様の結果であった.Ootoら4)は,外網状層+外顆粒層厚は男性が女性よりも厚いことが,CRTにおける性差の理由かもしれないと報告しているが,性差の原因については今後もさらなる検討が必要と思われる.また,TotalOS&RPE/BMについては性差の報告がなされていない.今回の検討では,TotalOS&RPE/BMの性差は認められなかったが,女性で屈折度数と正の相関があったことは興味深い結果であり,今後さらなる検討を重ねていく予定である.今回筆者らは,SD-OCT(RS-3000R)を用いて日本人の正常眼におけるCRTおよびTotalOS&RPE/BMの定量を行った.CRTは男性が女性よりも厚く,性別が関与しており,TotalOS&RPE/BMは屈折度数の近視化に伴い減少し,加齢による変化はなかった.しかし,本研究では各年齢層の症例数にばらつきがあったため,さらに対象を増やして各年齢において詳細な検討が必要である.今後は視細胞外節病におけるTotalOS&RPE/BMを定量し,臨床的意義や視機能との関連を検討する予定である.文献1)MatsumotoH,SatoT,KishiS:Outernuclearlayerthicknessatthefoveadeterminesvisualoutcomesinresolvedcentralserouschorioretinopathy.AmJOphthalmol148:105-110,20092)WakabayashiT,FujiwaraM,SakaguchiHetal:Fovealmicrostructureandvisualacuityinsurgicallyclosedmacularholes:spectral-domainopticalcoherencetomographicanalysis.Ophthalmology117:1815-1824,20103)ShimodaY,SanoM,HashimotoHetal:Restorationofphotoreceptoroutersegmentaftervitrectomyforretinaldetachment.AmJOphthalmol149:284-290,20104)OotoS,HangaiM,TomidokoroAetal:Effectsofage,sex,andaxiallengthonthethree-dimensionalprofileofnormalmacularlayerstructures.InvestOphthalmolVisSci52:8769-8779,20115)SrinivasanVJ,MonsonBK,WojtkowskiMetal:Characterizationofouterretinalmorphologywithhigh-speed,ultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci49:1571-1579,20086)YangQ,ReismanCA,WangZetal:AutomatedlayersegmentationofmacularOCTimagesusingdual-scalegradientinformation.OptExpress18:21293-21307,20107)OotoS,HangaiM,SakamotoAetal:Three-dimensionalprofileofmacularretinalthicknessinnormalJapaneseeyes.InvestOphthalmolVisSci51:465-473,20108)LamDS,LeungKS,MohamedSetal:Regionalvariationsintherelationshipbetweenmacularthicknessmeasurementsandmyopia.InvestOphthalmolVisSci48:376382,20079)髙橋慶子,清水公也,柳田智彦ほか:光干渉断層計による黄斑部網膜厚─屈折,眼軸長の影響─.あたらしい眼科27:270-273,201010)WakitaniY,SasohM,SugimotoMetal:Macularthicknessmeasurementsinhealthysubjectswithdifferentaxiallengthsusingopticalcoherencetomography.Retina23:177-182,200311)金井要,阿部友厚,村山耕一郎ほか:正常眼における黄斑部網膜厚と加齢性変化.日眼会誌106:162-165,200212)SongWK,LeeSC,LeeESetal:Macularthicknessvariationswithsex,age,andaxiallengthinhealthysubjects:aspectraldomain-opticalcoherencetomographystudy.InvestOphthalmolVisSci51:3913-3918,201013)BlachRK,JayB,KolbH:Electricalactivityoftheeyeinhighmyopia.BrJOphthalmol50:629-641,196614)KakinokiM,SawadaO,SawadaTetal:ComparisonofmacularthicknessbetweenCirrusHD-OCTandStratusOCT.OphthalmicSurgLasersImaging40:135-140,200915)AlamoutiB,FunkJ:Retinalthicknessdecreaseswithage:anOCTstudy.BrJOphthalmol87:899-901,2003***(123)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131771