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潜在的にロービジョンケアのニーズを抱えていた緑内障患者

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):695.699,2026c潜在的にロービジョンケアのニーズを抱えていた緑内障患者田保和也*1,2山﨑舞*1,2横田聡*1,2武田佳代*1,2木場みゆき*1,2山本庄吾*1,2平見恭彦*1,2栗本康夫*1,2,3仲泊聡*1,3,4,5*1神戸市立神戸アイセンター病院*2神戸市立医療センター中央市民病院眼科*3公益社団法人NEXTVISION*4立命館大学・総合科学技術研究機構*5東京慈恵会医科大学眼科学講座CGlaucomaPatientswithUnrecognizedNeedsforLowVisionCareKazuyaTayasu1,2)C,MaiYamazaki1,2)C,SatoshiYokota1,2)C,KayoTakeda1,2)C,MiyukiKoba1,2)C,ShogoYamamoto1,2)C,YasuhikoHirami1,2)C,YasuoKurimoto1,2,3)CandSatoshiNakadomari1,3,4,5)1)KobeCityEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KobeCityMedicalCenterGeneralHospital,3)NEXTVISIONPublicInterestIncorporatedAssociation,4)RitsumeikanUniversityResearchOrganizationforScienceandTechnology,5)DepartmentCofOphthalmology,TheJikeiUniversitySchoolofMedicineC緑内障は慢性進行性疾患であり,視野障害が進行しても患者自身が生活上の困難を自覚しにくい,あるいは自覚しても医療従事者へ訴えない場合が少なくない.本報告では,眼科通院中でありながら適切なロービジョン(LV)ケアの介入がなかった緑内障患者C3例を提示し,視能訓練士が患者の行動や反応から潜在的な支援ニーズを把握し,介入へとつなげた経過を検討した.視力が比較的良好な症例では,視野障害が身体障害者手帳の交付基準に相当していても,その該当性が認識されず結果として支援に結びつかない例が認められた.また,身体障害者手帳取得後でも活用方法に関する理解が不十分のため,適切な視覚支援が加入できていない症例も存在した.これらの症例から,検査所見のみならず検査中や移動時の様子,患者との対話を通じて生活上の困難を把握し,医療機関が適切な支援機関へつなぐ役割を担うことが円滑なCLVケア導入において重要であると考えられた.CGlaucomaisachronic,progressivedisease,andpatientsoftenfailtorecognizeorreportfunctionaldi.cultiesindailylifedespiteadvancingvisual.eldloss.Thisreportdescribes3glaucomapatientswhowereunderregularophthalmicCfollow-upCbutChadCnotCreceivedCappropriateClowCvisionCcare.CCerti.edCorthoptistsCidenti.edClatentCsup-portCneedsCthroughCsystematicCobservationCofCpatientCbehavior,CresponsesCduringCexaminations,CandCstructuredCcommunicationaboutdailyactivities,enablingtimelyintervention.Inpatientswithrelativelypreservedvisualacu-ity,Csigni.cantCvisualC.eldCimpairmentCmeetingCcriteriaCforCaCPhysicalCDisabilityCCerti.cateCwasCsometimesCover-looked,CrestrictingCaccessCtoCvisualCsupport.CEvenCafterCcerti.cation,CsomeCpatientsCreceivedCinsu.cientCassistanceCbecauseCofClimitedCinformationCofCavailableCservices.CTheseC3CcasesCindicateCthatCrelianceConCclinicalCtestCresultsCaloneisinadequate.Carefulassessmentofmobility,examinationbehavior,andpatient-reporteddailychallengesisessential.Furthermore,medicalinstitutionsplayacriticalroleinproactivelylinkingpatientstoappropriatesocialresources.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(6):695.699,C2026〕Keywords:緑内障,ロービジョンケア,視覚障害,身体障害者手帳,視能訓練士.glaucoma,lowvisioncare,vi-sualimpairment,physicaldisabilitycerti.cate,certi.edorthoptist.Cはじめにanalyzer:HFA)における平均偏差(meandeviation:MD)緑内障は日本における中途視覚障害の主因である.山岸らと生活の質(qualityoflife:QOL)が有意に関連することをは緑内障患者においてCHumphrey視野計(HumphreyC.eld報告している1,2).また,田中らは緑内障患者では疾患初期〔別刷請求先〕田保和也:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C2-1-8神戸市立神戸アイセンター病院Reprintrequests:KazuyaTayasu,KobeCityEyeHospital,2-1-8Minatojima-minamimachi,Chuo-ku,Kobe650-0047,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(101)C695図1症例1の視野a:Humphrey視野計(HFA)10-2では,26CdB以上の視認点数は右眼C19点,左眼C6点(C○:実測閾値)で周辺視野のデータがなくとも視野障害C5級相当と考えられた.Cb:本人から身体障害者手帳取得の希望があったため,両眼開放CEstermanテストを実施したところ,見えた点はC114点であり,視野等級はC5級となった.からCQOLの低下がみられ,視野障害の進行とともにその低下が加速することを示した3).しかし,緑内障は慢性進行性疾患であり,視野障害が緩徐に進行するため,患者自身が視機能の低下に順応し,不自由さを自覚しにくい,あるいは自覚しても主治医へ訴えない場合が少なくない4).このため,患者からの訴えの有無にかかわらず,医療従事者が積極的に患者の生活上の困難に着目し,必要に応じて早期にロービジョン(LV)ケアの介入・支援を行うことが重要であると考える.当院では支援が必要な患者を発見する方法として,視能訓練士が以下のC2点を中心に支援ニーズの抽出を行う取り組みを行っている.①視力検査,視野検査の結果から身体障害者手帳交付基準に相当すると判断される場合に,主治医へ情報共有する.②検査中の患者の行動や質問への応答などから支援の必要性が示唆される場合には,LVケアの必要性について確認する.本稿では,患者の行動・反応から視能訓練士がCLVケアの潜在的ニーズを把握し実際に支援介入につながった症例を報告する.I症例170歳代,女性.両眼開放隅角緑内障.右眼視力(1.0C×sph-8.00DCcyl-0.75DCAx145°).左眼視力(0.7C×sph-8.00DCcyl-1.00DCAx180°).右眼眼圧C16mmHg,左眼眼圧C16mmHg.身体障害者手帳:未取得.視野:図1に示す.C1.介入を検討する契機となった所見視力検査時に,矯正視力が良好にもかかわらず回答に時間を要し,視標を探す動作が繰り返し観察された.C2.現状確認視野C10°内に認めた暗点が視標探索の困難さに影響していると推察された.日常生活で感じる困難について質問したところ本人からの訴えはなかったが,視能訓練士が読字や顔の識別など具体例を提示し質問したところ実は多数該当することが判明し,視機能の低下により日常生活に支障をきたしている状況が明らかとなった.支援のニーズが潜在的に存在するものの,患者自身が具体的に自覚・把握しにくい可能性が示唆された.C3.施行したLVケアHFA10-2の結果から身体障害者手帳に該当することを主治医に報告し,後日両眼開放CEstermanテストを実施して視認点数C114点,視野障害C5級相当であることを確認し身体障害者手帳申請の手続きを行った.後日改めてニーズ確認を行い,特に読字困難と,歩行時に下方の段差や傾斜に対して不安を感じていることを確認した.LVケアを進めるにあたり,具体的な視覚支援機器や地域福祉サービスの選択も重要であることから,当院と同一施設内に併設されたビジョンパークに情報提供を依頼した.同施設は,公益社団法人CNEXTVISIONが運営する情報提供拠点であり,福祉施設担当者や支援学校教職員など多様な専門職が関与し,各種補助具の体験や福祉相談が可能となっている.本症例では強度近視のため短文は裸眼での至近読が有効であり,長文は拡大読書器による拡大と音声読み上げ機能の併用が有用であることが確認された.ビジョンパークで読み上げ機能付き拡大読書器を体験することでその有効性を本人が実感し,身体障害者手帳取得後に導入へ至った.また,移動に関する困難に対しては地域の支援施設を紹介し,白杖の購入および歩行訓練の実施が検討された.CII症例280歳代,女性.右眼網膜.離に対する硝子体手術後続発緑内障,左眼開放隅角緑内障.右眼光覚弁.左眼視力(0.1C×sph-5.5DCcyl-2.25DCAx90°).右眼眼圧C16mmHg,左眼眼圧C14mmHg.身体障害者手帳:2級(視力障害C4級・視野障害C2級)所持.視野:図2に示すC.C1.介入を検討する契機となった所見検査室への移動時,家族にしがみつくように歩行していた.C2.現状確認身体障害者手帳は所持しているものの,読字困難,移動困難のニーズに対してCLVケアが未介入の状況であった.図2症例2の視野Goldmann視野計で右眼はCV/4eに対する反応を認めなかった.左眼は中心視野および耳上側に島状に視野が残存していたが,移動に重要とされる下方視野は欠如していた.3.施行したLVケア主治医にニーズへの対応が必要な現状を報告し,LV外来へ紹介した.同外来にてニーズの詳細確認を行い,カタログの字が読めず買い物に支障があること,署名ができないこと,信号の色がわからないこと,店頭で商品が識別できないことが明確となった.視機能の活用方法について評価するなかで,読字の際は文字の拡大が必要であることを確認し,ビジョンパークにて拡大読書器を試したところ,有効であることが判明した.また,スマートフォンを所持していたため音声での入力や読み上げ機能の活用と,信号識別や文字認識などが可能な視覚支援アプリがあることを紹介し,操作のサポートなど具体的な対応はビジョンパークへ依頼した.さらに,移動支援として白杖を使用した安全な歩行についての説明と同行援護サービスの活用を提案し,サービス内容の説明および地域支援施設への登録手続きに関する情報提供を行った.CIII症例350歳代,女性.両眼開放隅角緑内障.右眼視力(0.05C×sph-7.00DCcyl-2.00DCAx30°).左眼視力(0.4C×sph-7.00DCcyl-1.75DCAx140°).右眼眼圧C12mmHg,左眼眼圧C12mmHg.身体障害者手帳:2級(視野障害C2級)所持.視野:図3に示すC.C1.介入を検討する契機となった所見視力検査時に,患者から「身体障害者手帳を取得したがメリットがわからない」との報告を受けた.図3症例3の視野右眼は中心視野を欠き,耳下側に島状の視野残存を認めた.左眼は全体として視野の広がりはあるものの輪状暗点を呈し,中心視野はC3°以内であった.2.現状確認身体障害者手帳は所持しているものの,取得によりどのような福祉支援が受けられるか理解できていないこと,読字困難のニーズを確認した.C3.施行したLVケア身体障害者手帳取得後に受けられる福祉サービスとして補装具や日常生活用具等の視覚補助具の購入支援,税金の減免など経済的なメリットがあることを説明した.また,障害年金受給の可能性があるため年金事務所や社会保険労務士に相談するよう助言した.読字支援については拡大読書器,スマートフォンの視覚支援アプリについて紹介し,ビジョンパークにて実際に体験しながら説明を依頼した.CIV考按本報告のC3症例はいずれも,緑内障の治療目的で眼科通院中であったにもかかわらずCLVケアへの適切な導入に至っていなかった.とくに症例C1では,緑内障が慢性進行性であるという疾患特性から患者本人がCQOLの低下を自覚しにくいこと,自発的な訴えが乏しかったことでニーズの発掘がむずかしかったと考えられることが既報4)と一致していた.また,視覚支援において重要な役割を担う身体障害者手帳に関しては,横田らが身体障害者手帳未取得のリスク因子として「視力非該当」をあげており5),症例C1のように視力が比較的良好である場合には,視野障害が身体障害者手帳の交付基準に相当する程度まで進行していてもその該当性が認識されず,結果として身体障害者手帳取得に関する情報提供が行われないまま視覚支援介入に至らない場合もある.視力が良好に保たれている場合でも,視野障害が中心C10°内に及ぶと読字困難や羞明など日常生活への影響が顕著となることが報告されている6)ことから,視力によらず中心視野障害を認める場合には視覚支援のニーズが高まる.緑内障における視野評価ではC30°以内の視野測定が標準とされており,必要に応じて中心C10°以内の測定を追加することが推奨されている7).なお,中心C10°のみの視野データが得られていない場合であっても,24-2およびC30-2では測定点間隔がC6°であるため,中心部からC2点以内に暗点が存在するかを確認することは可能であり,このような中心暗点が認められる場合には読字困難や羞明などの視覚的な困難の有無について確認するとともに,身体障害者手帳の交付基準に相当するか確認することが重要と考える.さらに,湖崎分類Ⅲ期以降に相当する中期緑内障では,30°を超える周辺視野にも欠損が出現し始める.周辺視野欠損は移動のしづらさ以外に夜盲や羞明が起りやすい8).このため,両眼開放CEstermanテスト,FF120,Goldmann視野計などを用いて周辺視野を含めた評価を適宜行うことが望ましく,周辺視野の評価から身体障害者手帳の交付基準に相当すると判断できる場合も少なくない.また,症例C2やC3のように身体障害者手帳を所持していながら,本来はより早期の介入が必要であったにもかかわらず,十分なCLVケアを受けられていない患者は当院においても散見される.さらに筆者らは当院のCLV外来受診歴のある患者への聞き取り調査で,約半数にあたるC47%の患者がCLV外来受診後に新たな課題が生じていたものの,そのうち主治医に伝えられていたのはC41%にとどまっていたことを,第23回日本CLV学会学術総会で報告した.これらからCLVケアの対象となる視機能障害を有する患者に対しては,身体障害者手帳の取得や専門外来,専門機関への紹介のみにとどまるのではなく,生活上の困難や支援ニーズについても定期的に把握し継続的な支援につなげていくことが重要と考える.LVケアの重要性が認識される一方で,すべての支援を医療機関内で完結させることは現実的でない場合も少なくない.そのため,医療機関には患者の視覚的ニーズを適切に把握したうえで,必要な支援を提供可能な医療・福祉資源へ的確につなぐ役割が求められる.本報告ではいずれの症例も,LVケアへの導入およびニーズの把握は院内で行い,具体的な助言や補助具の体験についてはビジョンパークや地域の支援機関へつなぎ,継続的な介入が可能になるよう連携を行った.福祉機関の利用に心理的抵抗を示す患者も少なくないことから,医療機関において視機能評価とあわせてCLVケアに関する情報提供を行い地域の支援機関と段階的に連携することは,患者の不安を軽減し円滑な支援導入に重要であると考える.治療に対する関心は患者・医療従事者ともに高い一方で,生活上の「見えにくさ」への対応は十分ではなく,視覚支援の必要性を適切に把握できないまま支援介入に至っていない緑内障患者の存在が示唆された.検査所見に加え,患者の行動や対話を通じて潜在的な支援ニーズを把握し,LVケアにつなげることが重要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)山岸和矢,吉川啓司,木村泰朗ほか:日本語版CVFQ-25による高齢者正常眼圧緑内障患者のCqualityoflife評価C.日眼会誌C113:964-971,C20092)山岸和矢,吉川啓司,木村泰朗ほか:高齢者正常眼圧緑内障患者の視野障害とCQOL.臨眼C63:1467-1473,C20093)田中健司,岩瀬愛子,水野恵ほか:緑内障患者のCQOLとソーシャル・サポートの関連.日視能訓練士協誌C48:C35-45,C20194)国松志保:緑内障患者のロービジョンケア.あたらしい眼科C26:1077-1078,C20095)横田聡,金森章泰,藤本雅大ほか:神経眼科・斜視弱視外来における視覚障害者手帳取得状況.神経眼科C34:C61-64,C20176)張替涼子:緑内障のビジョンケア.眼科C66:125-138,C20247)木内良明,井上俊洋,庄司信行ほか:緑内障ガイドライン(第C5版)C.日眼会誌C126:85-177,C20228)陳進志:第C4章ロービジョンケアの視機能と行動.視能学エキスパートロービジョンケア(新井千賀子,田中恵津子,阿曽沼早苗,石井祐子編),p93-97,医学書院C,2024C***

視能訓練士の関与が乳幼児健康診査視覚検査(三歳児眼科健診)の結果に及ぼす影響

2018年10月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(10):1440.1443,2018c視能訓練士の関与が乳幼児健康診査視覚検査(三歳児眼科健診)の結果に及ぼす影響蕪龍大*1,2竹下哲二*2盧渓*1加藤貴彦*1*1熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学分野*2上天草市立上天草総合病院眼科CIn.uenceofOrthoptistonOphthalmologicalExaminationinInfantHealthCheckupRyotaKabura1,2),TetsujiTakeshita2),XiLu1)andTakahikoKatoh1)1)DepartmentofPublicHealth,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalC目的:三歳児を対象に行われる乳幼児健康診査の視覚検査(以下,三歳児眼科健診)は,検査項目や検査実施者などに関する規定がなく,自治体間で統一が図られていない.視能訓練士(orthoptist:ORT)が三歳児眼科健診に従事した場合の健診内容や結果について検討した.対象および方法:2012年C4月.2017年C3月に,ORTが三歳児眼科健診に従事しているCA市としていないCB市で三歳児眼科健診を受診したそれぞれC955名とC3,091名を対象とした.両市の健診結果および精密検査としての医療機関の受診結果を比較検討した.結果:要精密検査と判定された児の割合はA市が有意に高かった.斜視疑いとされた割合はCA市が有意に高く,精密検診を受診した割合もCA市が有意に高かった(すべてp<0.05).結論:精密検診を受診した児の割合がCA市のほうが高かったのはCORTが保護者に説明を行い,受診を促したためと考えられた.ORTが従事する三歳児眼科健診は精度が上がることが示唆された.CPurpose:AlthoughJapan’sinfanthealthcheckupfor3-year-oldchildrenincludestheophthalmologicalexami-nation,thereisnochecklistandnoclearrulesforinspectionoperators,norisuni.cationachievedbetweenlocalgovernments.Ourpurposeistocomparethedi.erente.ectsofcheckupwithandwithoutorthoptist(ORT)ineyescreeningfor3-year-oldchildren.SubjectsandMethods:Atotalof9553-year-oldchildreninA-city(ORTpar-ticipation)andC3,091C3-year-oldCchildrenCinB-city(ORTnonparticipation)duringC.scalCyears2012-2016(AprilC1.MarchC31CinJapan)wereCinvestigated.CTheC.rstCandCsecondCpartsCofCtheCeyeCscreeningCcheckupCresultsCwereCcompared.CResults:InCtheCeyeCscreeningCforC3-year-oldCchildren,CACcityCshowedCaChigherCpercentageCofCchildrenCwhoCrequiredCpreciseCexamination.CSimilarCresultsCwereCobservedCinCtheCrateCofCsuspectedCstrabismusCandCofCdetailedexaminationinAcity(allp<0.05).Conclusion:AstothehigherrateofdetailedexaminationinAcity,weCbelieveCthisCisCbecauseCinCACcityCtheCORTCgaveCanCexplanationCtoCtheCguardianCandCurgedCconsultation.CThisCresultsuggeststhatophthalmologicexaminationof3-year-olds’eyesbyORTcanimproveexaminationaccuracy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(10):1440.1443,C2018〕Keywords:三歳児眼科健診,視能訓練士,三歳児眼科健診マニュアル.eyescreeningcheckupfor3-year-oldchildren,orthoptist,eyescreeningcheckupfor3-year-oldchildrenmanualCはじめに1992年,母子保健法の規定により三歳児を対象とした乳幼児健康診査視覚検査(以下,三歳児眼科健診)が全国導入され,1997年には事業主体が都道府県から各市町村に移管された1).問診票に各家庭で事前に測定した視力の結果を記入する欄があり,児と保護者は健診当日までに家庭で視力検査を行ってから健診に臨む必要がある.これを一次健診としているが,視力検査に不慣れなため苦慮したという保護者が多い2).健診会場で行われるスクリーニング検査が二次健診となり,一般にはこの二次健診のことを三歳児眼科健診とよぶ.ORTが従事する場合は『三歳児眼科健診マニュアル』(第一版)3)に則って,視力検査,屈折検査,両眼視機能検査,〔別刷請求先〕蕪龍大:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸C1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:RyotaKabura,CO.,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa-shi,Kumamoto866-0293,JAPANC1440(128)眼位検査,眼球運動検査のC5項目の検査を行い,視機能の発育を妨げる要因の有無を総合的に評価している4).ORTが従事していない場合は保健師が視力検査を行っている場合が大半を占めるが,5項目すべての検査を行っている自治体は少なく,一次健診で視力良好だったと保護者から申告があれば二次健診では再検査を行わない自治体や,検査に不慣れな検査員が二次健診で視力検査を行っている自治体も存在する.そのため自治体間で健診の精度に差が生じている.筆者らの以前の調査5)によれば,一次健診で視力検査を行ってこなかった保護者がC4割を超えており,自治体によっては異常を検出されずに見逃されている児が多数存在する可能性がある.三歳児眼科健診にCORTが従事することによって,異常検出率や異常検出の正確さが上がるかについて検討した.また,要精査とされた児の精密検診の受診率が上がるかについても検討した.なお,「健診」と「検診」の使い分けについて明確に定義した文献は存在しない.本報告においては日本視能訓練士協会の慣習に従い,乳幼児健康診査については「健診」,眼科検査を指す場合については「検診」と使い分けることにした.CI対象および方法2012年4月.2017年3月の5年間にORTが三歳児眼科健診に従事したCA市C955名とCORTが従事していないCB市3,091名のC3歳児を対象とした.A市では対象児全員に視力検査,屈折検査,両眼視機能検査,眼位検査,眼球運動検査を行い,いずれか一つでも三歳児眼科健診マニュアルに記載されている基準を満たしていない場合は要精査と判断している.要精査とされた児についてはCORTから保護者に対して検査結果についての説明を行い,精密検査の受診の重要性を伝えた.視力検査はC2.5Cmの距離にて最初に字一つCLandolt環を用い,検査理解不十分の場合は絵視標を用いた.屈折検査は手持ちオートレフ(WelchCAllynR社CShureSightCTMVisionScreener)および検影法を用いて行った.両眼視機能検査にはCLANGstereotestIを用い,眼位検査にはCHirsch-berg法と遠見および近見の定性的眼位検査を行った.B市は一次健診に視力検査未施行もしくは検査不十分児に対してのみ,担当保健師がC2.5Cmの距離での絵視標による視力検査を行っている.Landolt環は用いていなかった.また,精密検診受診の指導なども行っていなかった.本調査で用いたデータは各市役所より,特定の個人を識別することができないよう匿名化されたもの(特定の個人を識別することができないものであって,対応表が作成されていないもの)を提供してもらい,要精査者数,精密検査受診者数,精密検査結果の情報を得た.統計解析にはCSPSSCVer.22を用いた.PearsonC’sCChi-squaredtestとCFisher’sexacttest(すべてのセルがC10未満である場合)を用い,p<0.05を統計学的に有意とした.本調査は熊本大学大学院生命科学研究部の倫理委員会の承認(2017年C10月C12日,倫理第C1461号)を得ている.CII結果要精査と判定された児の割合は,A市がC9.2%(88名),B市がC1.3%(39名)で,要精査と判定され精密検査として医療機関を受診した児のうち,要経過観察・治療とされた割合はCA市C68.0%(60名),B市C25.7%(10名)でCA市が有意に高かった(p<0.05).二次健診で要精査となったが医療機関では異常なしと判断された割合は,A市C16.0%(14名),B市C41.0%(16名)でCB市が有意に高かった.要精査とされながら精密検診を受診しなかった児は,A市C16.0%(14名),B市C33.3%(13名)でCB市が多かった(すべてCp<0.05)(表1).要精査と判断された検査項目は,A市では屈折異常がもっとも多くC75.0%(66名),続いて視力不良C10.2%(9名),斜視C11.4%(10名)の順だった.B市では屈折検査を行っていないため屈折異常はC0.0%(0名)と該当児がなく,視力不良のC74.4%(29名)がもっとも多く,続いて斜視がC23.1%(9名)だった(図1).このうち斜視について内訳をみると,A市では間欠性外斜視疑いC8名,内斜視疑いC2名だった.一方CB市では内斜視疑いC6名,不明な眼位異常がC3名だった.精密検査の受診結果はCA市ではC10名中C8名が受診し,間欠性外斜視C5名,内斜視C1名,異常なしC2名という結果だった.B市ではC9名中C8名が受診し,全員が異常なしとされた.二次健診と精密検査の結果の一致率はCA市が有意に高かった(p<0.05)(表2).表1二次健診結果と精密検査結果A市(ORT有)B市(ORT無)p値健診結果Cn=955Cn=3,091異常なし867(C90.8%)C3,052(C98.7%)要精査88(9C.2%)39(1C.3%)<C0.0001*精密検査結果Cn=88Cn=39異常なし14(C16.0%)16(C41.0%)C0.0032*要経過観察・治療60(C68.0%)10(C25.7%)<C0.0001*未受診14(C16.0%)13(C33.3%)C0.0348**Pearson’sChi-squaredtest(<0.05).ORT:視能訓練士(orthoptist)3.4%(3)2.6%(1)0.0%(0)■屈折異常■視力不良■斜視■その他図1要精査と判断した検査項目の割合左:A市,右:B市の割合を示す.括弧内は実数.CIII考察三歳児眼科健診に従事しているCORTは全国的に数が少なく6),保健師が視力検査のみを行っている自治体が多い.全国の三歳児眼科健診の要精査者の割合はC7.0%となっている1).ORTが三歳児眼科健診に従事しているCA市では要精査者の割合はC9.2%と,この報告より高かったが,ORTが従事していないCB市ではC1.3%ときわめて低かった.B市における三歳児眼科健診では異常がありながら見逃されている児が多い,つまり健診の感度が低いことが考えられる.B市には健診会場となっている保健センターがC3カ所あり,視力検査を行う保健師が当番制になっている会場と固定となっている会場が存在した.いずれにおいても不適切な方法での視力検査を行っている様子はなかった.しかし,検査実施者である保健師が三歳児眼科健診マニュアルに記載されている視力検査以外の検査を行えないため,総合的に要精査と判断できないことが多かったのではないかと思われる.また視力検査は自覚的検査であるため,被検者の検査への理解と協力が不可欠である.さまざまな小児に対応するための知識や経験が浅いことによる評価判断のむずかしさも課題として指摘されている7).医療機関での日常業務のなかで小児の検査に慣れているCORTのほうが異常を引き出しやすかったのかもしれない.一方,二次健診で要精査とされ精密検査を受診した児のうちCA市では要経過観察・治療が68.0%で異常なしは16.0%しかいなかったのに対し,B市では要経過観察・治療はC25.7%と少なく異常なしがC41.0%と多かった.つまりCB市の二次健診は異常のない児を要精査とする傾向があり,健診の特異度も低いということがいえる.しかしこれに関しては後述するように,見逃しを少なくするという観点からは問題があるとはいえない.要精査と判断された検査項目は,A市では屈折検査がも表2斜視における二次健診結果と精密検査結果A市(ORT有)B市(ORT無)健診結果Cn=10Cn=9間欠性外斜視C8C0内斜視C2C6不明C0C3精密検査結果異常なしC2C8*斜視C6C0間欠性外斜視C5C0内斜視C1C0未受診C2C1精密検査にて斜視(間欠性外斜視および内斜視)と診断された数(A市:6,B市:0)と異常なし数(A市:2,B市:8)を用いて検定を行った.*Fisher’sexacttest(<0.05).っとも多かったのに対し,B市は屈折測定機器を所有していないため要精査数がC0名という結果だった.三歳児眼科健診の視力値の基準はC0.5であるが,0.5の視標が見えたからといって弱視ではないとは判断できない.A市で屈折異常と判断された児の大半は,視力検査は基準値を満たしていたものの屈折値が基準値を超えていた場合だった.視力検査による弱視の検出率はC1.5%程度とされており8),視力検査のみでは十分なスクリーニングが困難である.2017年C4月C7日付で,厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課から各都道府県保健所設置市母子保健主管部宛に「三歳児眼科健診における視力検査の実施について」の協力依頼に関する事務連絡が発出されたが,その内容は視力検査を適切に実施することという趣旨であった.視力検査しか行っていない自治体ではCLandolt環による視力検査を行えば少しは異常を発見しやすくなるかもしれない.しかし屈折検査を含むその他の検査を行わない限り異常検出率の向上は見込めず,現在の三歳児眼科健診の方法では限界があると筆者らは考える.斜視は特別な道具を用いずに検査を行うことができるが,訓練を受けていない保健師には検査は困難である.3歳児の斜視有病率は約C0.20.0.34%で高くはないとされる9).しかしCA市で要精査とされた斜視疑いC10名のうちC6名が精密検査で斜視と診断されたのに対し,より人口が多いCB市の精密検査で斜視と診断された児がいなかったというのは不自然である.その反面CB市の二次健診で内斜視疑いとされた児がC6名いたが,精密検査を受診した児のなかに内斜視と診断された児はいなかった.未受診者がC1名いるものの,多くは偽内斜視を内斜視疑いとした可能性が高い.保健師による二次健診では外斜視を検出することが困難であると同時に,偽内斜視を内斜視と判断するケースが多いことが判明した.ORTがいなくても屈折異常や眼位異常を検出する方法として,近年発売になったCSpotCTMCVisonScreener(WelchAllynR社)を利用する方法がある.この装置は筆者らが使用しているCShureSightCTMCVisionScreenerの後継機種であり,より簡易的にかつ短時間で屈折異常や眼位ずれを検出することが可能である.ORTのいない自治体ではこの装置を活用することで健診の精度を上げることが可能となるかもしれない.しかしCSpotCTMCVisonScreenerは自治体にとっては決して安い器械とはいえない.どこの自治体も財政はひっ迫しており,費用対効果を理解してもらえないと導入はむずかしいだろう.二次健診で要精査とされた児のうち,精密検査の未受診者が全国ではC38.0%である1)のに対しCA市ではC16.0%と比較的良好な結果だった.その理由としてCA市では,要精査と判断された児の保護者に対して,ORTがなぜ要精査と判断したのかを測定値や結果に基づき説明を行い,斜視や弱視を未治療のまま放置した場合のリスクや,早期発見できた利点について伝えるようにしていることから,それが保護者の理解と健診結果に対する戸惑いの解消につながり,未受診率を減らしたのではないかと考えられた.しかし,A市はC16.0%の児が,B市はC33.3%の児が精密検査を受診していないことに対しては,両市とも今後受診をうながす案内文を配布するなどの対策をとる必要があると考える.本調査の限界点として,個人情報保護の観点から対象児の月齢,性別,他診断結果などといった個人を識別できる可能性のある情報を得ることができなかった.A市,B市ともに乳幼児健康診査の受診喚起はC3歳C0.2カ月であり,受診する児もおおむねそれに従っていた.小児の発育は月齢単位で大きく変化するためC3歳C0.2カ月の早い段階では検査を十分に理解できない場合も少なくない.かといって筆者らの以前の調査5)で月齢が増すごとにCLandolt環による視力検査の成功例が多くなったと報告したが,健診の時期を遅くすれば視覚障害や斜視の発見が遅れる場合もあるであろう.視力が出にくい場合は安易に検査時期を遅らせて再検査をするのではなく,積極的に要精査と判定することも重要である.CIV結論ORTが三歳児眼科健診に従事している場合は複数の検査結果から総合的に判断して異常を検出しているのに対し,ORTがいない場合は視力検査の結果のみで判断しており健診の感度と特異度に地域差が生じていた.ORTが三歳児眼科健診に従事できる地域は限られていると思われるため,今後何らかの方法で検査項目を追加できないか検討すべきと思われた.謝辞:最後に今回の調査に協力いただいたC2市の市役所関係者各位に謝意を表したい.文献1)日本眼科医会公衆衛生部(福田敏雅):三歳児眼科健康診査調査報告(V)―平成C24年度―.日本の眼科C85:296-300,C20142)古賀聖典,南慶子,戸高奈津美ほか:山口県柳井市での3歳児集団検診における視能訓練士介入効果に関する検討.日農医誌59:518-523,C20103)社団法人日本視能訓練士協会健診業務委員会:三歳児眼科健診マニュアル(第一版).4)永田規子:三歳児健康診査―主に視力スクリーニングについて―.日視会誌21:16-35,C19935)蕪龍大,小野晶嗣,竹下哲二:三歳児眼科健診における一次検診の重要性.日視会誌41:137-141,C20126)山田昌和:弱視スクリーニングのエビデンス.あたらしい眼科27:1635-1639,C20107)宇部雅子,渋谷政子,工藤利子ほか:3歳児健診で視力異常を指摘されなかった弱視症例.日視会誌C35:189-194,C20068)川瀬芳克:「三歳児健診を見直そう.」3歳児健康診査視覚検査における視力検査の基準,方法と効果について.日視会誌39:61-65,C20109)MatsuoT,MatsuoC,MatsuokaHetal:Detectionofstra-bismusandamblyopiain1.5-and3-year-oldchildrenbyapreschoolvision-screeningprograminJapan.ActaMed-icaOkayamaC61:9-16,C2007***

糖尿病に関する視能訓練士の意識,知識調査

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1784.1789,2017c糖尿病に関する視能訓練士の意識,知識調査齊藤瑞希*1上野恵美*1黒田有里*1荒井佳子*1吉崎美香*1山下英俊*3堀貞夫*1井上賢治*2*1西葛西・井上眼科病院*2井上眼科病院*3山下内科/糖尿病クリニックCSurveysofOrthoptistsinanEyeHospitalRegardingAwarenessandKnowledgeofDiabetesMellitusMizukiSaitou1),EmiUeno1),YuriKuroda1),KeikoArai1),MikaYoshizaki1),HidetoshiYamashita3),SadaoHori1)andKenjiInoue2)1)NishikasaiInouyeEyeHospital,2)InouyeEyeHospital,3)YamashitaInternalDiabetesMedicalClinic目的:視能訓練士の糖尿病に関する意識をアンケートにより,知識を試験により調査した.対象および方法:対象は井上眼科グループ視能訓練士C49名で,経験年数C5年未満をC1群,5年以上をC2群とし,糖尿病に対する意識調査をアンケートにより,また知識調査を試験により実施した.結果:意識調査アンケートの結果を点数化したところ,1群はC7.9±1.3点(平均±標準偏差),2群はC8.5±1.3点で有意差はなかった(p=0.15).知識調査の正答率はC1群でC66.6%,2群でC67.0%と差はみられなかった.試験問題の分野別正答率はC1群,2群とも糖尿病の合併症の分野がもっとも高く,日常生活の分野がもっとも低い結果であった.2群では意識と知識に中等度の相関がみられた.結論:視能訓練士に対する糖尿病教育が必要な分野は日常生活であることが明らかとなった.CPurpose:Tosurveyorthoptistsinaneyehospitalregardingtheirpresentawarenessandknowledgeofdiabe-tesCmellitus.CSubjectsandMethods:ACtotalCofC49CorthoptistsCworkingCatCourCfacilityCwereCdividedCintoCtwogroups:Group1:27individualswithlessthan5years’experience,andGroup2:22with5years’ormoreexperi-ence.CTheCsubjectsCwereCaskedCtoCanswerCtheCquestionnaireConCawarenessCregardingCdiabetesCmellitus,CandCthenCundergoCaCbriefCexaminationConCknowledgeCofCdiabetes.CTheCresultsCofCeachCquestionnaireCwereCscoredCintoC3Cgrades.CTheCexaminationCconsistedCofC50Cquestions,CwithC2CpointsCgivenCforCeachCcorrectCanswer.CResults:TheawarenessscoresinGroup1were7.9±1.3(mean±SD)andthoseinGroup2were8.5±1.3.Therewasnostatisti-callysigni.cantdi.erencebetweenthegroups(p=0.15).Prevalenceofcorrectexaminationanswerswas66.6%CinGroup1and67.0%inGroup2;thedi.erencewasnotstatisticallysigni.cant.Inbothgroups,prevalenceofcor-rectanswerswashighestforquestionsondiabeticcomplicationsandlowestforquestionsondailylifecare.Moder-atecorrelationwasobservedbetweenawarenessandknowledgeinGroup2(Pearson,r=0.51).CConclusion:Thepresentstudysuggeststhatorthoptistsdeepentheirknowledgeregardingdailylifecareofdiabeticpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(12):1784.1789,C2017〕Keywords:糖尿病,視能訓練士,知識調査,意識調査.diabetesmellitus,orthoptists,knowledgeinvestigation,awarenessinvestigation.Cはじめに眼科には全身疾患に起因し,眼症状が発症する疾患が多く存在する.それらの疾患の代表的なものの一つに糖尿病があげられる.厚生労働省の国民健康・栄養調査によると,日本における糖尿病患者はC950万人と急激に増加しており1),西葛西・井上眼科病院(以下,当院)にも糖尿病を有する患者が多数来院する.当院では診察の前に検査を行うことが多く,来院した患者の大半がはじめに視能訓練士と接する.糖尿病は病状により,眼症状の変化,体調の急変が起こる病気であるため,視能訓練士は患者の様子に気を配り,状態に合わせた正しい判断をする必要がある.また,糖尿病療養指導士の役割・機能〔別刷請求先〕齊藤瑞希:〒134-0088東京都江戸川区西葛西C3-12-14西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:MizukiSaito,M.D.,Ph.D.,NishikasaiInouyeEyeHospital,3-12-14,Nishikasai,Edogawa,Tokyo134-0088,CJAPAN1784(146)によると,初診時にできる限り多くの患者情報を得ることが,治療方針の決定や療養指導計画に大きな影響力をもつとあることから2),来院後,患者にはじめに接する視能訓練士は糖尿病についての正しい知識が必要であると考えられる.これまでの看護師を対象にした富永らの研究では,質問表を用いて糖尿病看護に関する意識調査を行った結果,経験年数C10年以上とC10年未満では,いずれのカテゴリーにおいても平均点に有意差を認めなかったと報告されているが3),これまで視能訓練士を対象にした糖尿病に対する意識調査や知識調査を考察した報告はない.そこで当院の視能訓練士が糖尿病についてどの程度の意識を有しているかを知るためにアンケートを,また糖尿病の知識についての試験を実施し,当院視能訓練士の糖尿病についての意識・知識の実情を知り,糖尿病に対する意識の向上ならびに知識の習得と今後の教育に役立てることを目的とした.CI対象および方法1.対象対象は井上眼科グループの視能訓練士C49名(男性C8名,女性C41名)であった.49名を業務の大部分が自立してでき,教育にも携わっているかどうかを基準とし,経験年数C5年未満とC5年以上に分けた.経験年数C5年未満(平均経験年数C2.3±1.3年)のC27名をC1群,5年以上(平均経験年数C14.0C±6.2年)のC22名をC2群とした.C2.方法はじめに自らの糖尿病についての意識を調査するため,①意識調査アンケートを実施した(図1).意識調査アンケートは計C5問で分野ごとに分類した.分野CA:病態生理,分野B:診断,分野CC:合併症,分野CD:治療法,分野CE:日常生活とし,よく知っている・知っている・あまり知らないの3段階で回答してもらった.結果では,よく知っているをC3点,知っているをC2点,あまり知らないをC1点に点数化し集計した.②糖尿病の知識について簡潔な試験(図2)を実施した.当院の看護師に協力を依頼し,日本糖尿病学会専門医監修のもとに作成したC1問C2点,計C25問,50点満点の試験問題を使用した.実際の試験用紙に分野と解答,および各問題に対するC1群とC2群の正答率を追記したものが図2である.試験問題はアンケートと同様の分野A.Eに分類した.③意識と知識の相関を知るため,Pearsonの積率相関係数を施行した.CII結果①意識調査アンケートによる合計点数はC1群でC7.9C±1.3点(平均C±標準偏差),2群でC8.5C±1.3点であった(t検定p=0.15)(図3).意識調査アンケートを分野別に比較したところ,各分野でC1群とC2群に有意差はみられなかった(図4).②糖尿病の試験はC1群でC33.3C±4.8点(平均C±標準偏差),2群でC33.5C±4.6点で,正答率はC1群C66.6%でC2群C67.0%と経験年数による有意差はみられなかった(t検定p=0.3)(図5).分野別正答率は,分野CAはC1群C81.9%,2群C81.3%;分意識調査アンケート入職年名前①糖尿病の原因について(分野A:病態生理)よく知っている・知っている・あまり知らない②CHbA1c,血糖値それぞれいくつ位から糖尿病かについて(分野CB:診断)よく知っている・知っている・あまり知らない③糖尿病の合併症について(分野C:合併症)よく知っている・知っている・あまり知らない④糖尿病の治療について(分野D:治療法)よく知っている・知っている・あまり知らない⑤低血糖発作が起きた時の対応について(分野E:日常生活)よく知っている・知っている・あまり知らない図1意識調査アンケートの設問「よく知っている」をC3点,「知っている」をC2点,「あまり知らない」をC1点に点数化し集計した.(147)あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1785視能訓練士の糖尿病に関する基礎知識の設問月日氏名経験年目正しいものには○,間違っているものには×を記入せよ.(1問C2点)(○)C1.糖尿病は,慢性の高血糖を主徴とする代表疾患である.(×)C2.血糖を下げるホルモンは,グルカゴンである.(×)C3.糖尿病の診断基準として,HbA1c6.5%以上空腹時血糖値140以上などがある.(×)C4.HbA1c(NGSP)は日本の基準値である.(○)C5.1型糖尿病は自己免疫により膵臓が破壊されインスリンが分泌されなくなる病気である.(×)C6.II型糖尿病には遺伝要素はない.(○)C7.糖尿病のC3大合併症は糖尿病網膜症,糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害である.(○)C8.糖尿病の慢性合併症は,血管の動脈硬化による狭窄,閉塞によって引き起こされる.(×)C9.多発する軟性白斑の存在は,増殖糖尿病網膜症である.(×)10.網膜症CA2(P)と記載されているのは増殖前糖尿病網膜症である.(×)11.現在,失明の原因疾患の第C1位は糖尿病である.(○)12.血糖のコントロールを良くすると単純網膜症は改善する.(○)13.糖尿病による腎障害が進行すると尿から蛋白が出る.(○)14.糖尿病神経障害を発症すると,足の裏に違和感を感じる.(○)15.神経障害によるしびれは,手足の末端から出現する.(×)16.糖尿病は血糖値が下がり,検査値が正常範囲になれば完治したという.(×)17.血糖値が高い場合は,意識障害は起こらない.(○)18.血糖値が高いと,血圧,悪玉コレステロールなども上がりやすい.(×)19.手術などの大きなストレスがかかると,一般的に血糖値は低下する.(○)20.運動療法は,食後すぐに行うのが良い.(○)21.低血糖症状を疑った場合は,速やかに糖質を摂取する.(×)22.2型糖尿病の場合,インスリン治療は行わない.(×)23.進行性の網膜症がある場合は,急激に血糖を下げる必要がある.(×)24.糖尿病患者には,運転免許取得・継続に関する条件はない.(×)25.糖尿病患者は職業に制限や条件をかけられることはない.分野A:病態生理,分野B:診断,分野C:合併症,分野D:治療法,分野E:日常生活設問分野正答率(%)1群正答率(%)2群C1CAC80.0C75.0C2CAC95.0C80.0C3CBC25.0C35.0C4CBC80.0C65.0C5CAC80.0C95.0C6CAC65.0C75.0C7CCC95.0C95.0C8CCC75.0C75.0C9CBC45.0C30.0C10CBC40.0C35.0C11CAC90.0C75.0C12CCC70.0C75.0C13CCC75.0C75.0C14CCC70.0C70.0C15CCC95.0C100.0C16CAC100.0C90.0C17CCC65.0C65.0C18CAC85.0C85.0C19CAC65.0C75.0C20CDC5.0C0.0C21CDC80.0C100.0C22CDC80.0C80.0C23CDC80.0C95.0C24CEC20.0C5.0C25CEC10.0C25.0図2試験1問C2点,計C25問,50点満点にて採点し,さらにC25問を分野A,B,C,D,Eに分類した.全問題の正答率は1群66.6%,2群67.0%であった.分野Aは1群81.9%,2群81.3%;分野Bは1群48.8%,2群42.5%;分野Cは1群C77.8%,2群C78.6%;分野CDはC1群C61.1%,2群C69.3%;分野CEはC1群C14.8%,2群C13.6%であった.野Bは1群4C8.8%,2群4C2.5%;分野Cは1群7C7.8%,C2群がC1群に比べ点数が高く,有意差がみられた(Ct検定p=群7C8.6%;分野Dは1群6C1.1%,2群6C9.3%;分野Eは10.04).群C14.8%,C2群C13.6%であった(図6).分野CAの正答率がC1その他の分野では有意差はみられなかった.群C2群ともに高く,分野CEの正答率はC5つの分野のなかで③意識と知識の相関:C1群では意識と知識に相関はみられもっとも低い結果となった.分野CDについての設問ではC2なかったが,C2群では意識,知識に中等度の相関がみられた平均点7.9±1.3点8.5±1.3点図3意識調査アンケート結果(点)1群C27名,2群C22名の意識調査アンケートの結果を点数化し,平均点を比較した.2群間に有意差はなかった.(t検定p=0.15).C平均点正答率33.3±4.8点66.6%33.5±4.6点67.0%18.24図5試験結果(点)1群C27名,2群C22名の試験結果の合計点の平均点を比較した.2群間に有意差はなかった(t検定p=0.42).(Pearsonの積率相関係数Cr=0.48)(図7a,b).CIII考察①意識調査:1群は意識調査アンケートによる自己評価にて糖尿病についてC1.5のすべての項目に対し,あまり知らないと評価する職員が多くみられた.これは経験の浅さによる自信不足が原因と考えられる.とくに,低血糖発作時の対応についてC1群は意識調査アンケートにてあまり知らないと答える職員が多い傾向にあった.1群には,今後,自信不足を補う教育が必要と考えられるが,とくに低血糖発作時の対応についての教育が必要であることが意識調査アンケートから読み取ることができた.②知識調査:1群とC2群に共通していた事項として,分野(149)分野A1.6点1.7点分野B分野E1.1点1.3点1.4点1.7点1.8点2.0点1.8点分野D分野C2.0点図4意識調査アンケート分野別比較(平均点)意識調査アンケートの結果を分野別に分け平均点をC1群とC2群で比較した.すべての分野においてC2群間に有意差はなかった(t検定各p>0.05).C81.9%分野A81.3%分野E分野B14.8%48.8%13.6%42.5%61.1%分野D分野C77.8%69.3%78.6%t検定(p<0.05)図6試験分野別正答率(%)試験の結果を分野別に分け平均点をC1群とC2群で比較した.分野CDのみC2群間に有意差がみられた(t検定p=0.04).Aの正答率がもっとも高く,分野CEの正答率がもっとも低かった.また,設問別では設問C20の正答率がもっとも低かった.分野CAは糖尿病の病態生理にかかわる内容である.分野CAの正答率が高かったことは,コメディカルも知っておきたいガイドラインにおおむね準じており4),好ましい結果となった.正答率がもっとも低かった分野CEは患者の日常生活にかかわる内容である.視能訓練士は検査を行うだけではなく,患者への情報提供,ロービジョンケアも行う.また,当院では患者と接する機会が多い視能訓練士が運転免許取得・継続にかかわる問い合わせを患者から受けることがある.そのため,病気に関する知識だけではなく,患者の日常生活にかかわる事項についての知識を有することも重要である5).分野CEの設問C25は糖尿病と職業についての設問で,Cあたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C17875050454540403535303025201525201510r2=0.019105Pearson’sr=0.145000123456789101112131415意識調査(点)図7a意識・知識の相関(1群)1群の意識と知識の相関をCPeasonの積率相関係数にて調べた結果を示す.1群では意識と知識に相関はみられなかった(r=0.14).C低血糖が起きたときに危険な職業などでは制限や条件がかけられることがあるということを知っているかを問う目的で作成したが,WHO(世界保健機構)が「糖尿病であることを理由に職業が制限されるべきではない」としているなか,必ず制限や条件をかけられるような印象の文章となっているため正答率に影響を及ぼした可能性があった.また,全C25の設問のなかでもっとも正答率が低かった設問C20に関しても,運動療法を行うのは食間や空腹時ではないことを知っているか問う目的で『糖尿病治療のてびき改訂第C56版』を参考にして作成したが5),具体的な時間はなく「食後」とのみ記されていたため,「運動療法は,食後すぐ行う方が良い」を正解としている.しかし「すぐ」は「直後」とも解釈可能であり,設問として適切な表現ではなかったことと,『糖尿病治療ガイドC2014-2015』では「食後C1時間頃が望ましい」と時間が記されており6),それを読んだことがある職員がいた場合は試験結果に影響を及ぼした可能性があった.1群とC2群に有意差がみられたのは,分野CDの正答率であった.分野CDは治療法にかかわる内容である.治療法には低血糖発作時の対応を問う問題もあり,2群はC1群よりも経験を有しているため,臨床の現場で実際に低血糖発作を起こした患者をC1群よりも多くの職員が経験したことがあるためと推測でき,①の意識調査とも関連していると考えられた.③相関の考察:2群は意識と知識に中等度の相関がみられ,自己の意識を正当に評価する職員が多くみられたが,1群に比べ経験があるにもかかわらず全試験問題の正答率はC2群と大差なかった.このことはC1群は経験の浅さから「あまり知らない」と自己評価した職員が多かったためと思われた.1群のなかでC1年目,2年目,3年目のアンケートと試験の平均点を比較したところ,1年目:アンケートC7.4点・試験0123456789101112131415意識調査(点)図7b意識・知識の相関(2群)2群の意識と知識の相関をCPeasonの積率相関係数にて調べた結果を示す.2群では意識と知識に中等度の相関がみられた(r=0.48).35.3点,2年目:アンケートC8.3点・試験C31.3点,3年目:アンケートC8.0点・試験C33点と,1年目は試験の平均点が一番高いにもかかわらずアンケート平均点が一番低かったことからも実情を反映できているのではないかと推測した.ただし,自己申告制であるため謙遜して答えた場合は意識・知識調査の相関に影響が出ることは否めず,アンケート方法には今後検討が必要である.今回の調査により,視能訓練士の知識が糖尿病患者の日常生活に関する分野で不足していることが明らかとなり,その分野に重点を置いて視能訓練士の教育を行う必要があることがわかった.また,意識と知識の相関を調べた結果,1群は2群と同程度の知識を有しているが知識を有しているという意識が低いことがわかり,意識を向上させることが重要であることがわかった.今後は視能訓練士に試験結果にて点数が低かった分野に重点を置き教育を行うことで知識が向上し,それに伴い糖尿病について知識を有しているという意識も向上することが期待される.今回の意識調査と知識調査の設問に関して不適切と思われる部分があったため詳細に再検討したが,結果が多少変動したものの,結論の変更に至らないことを確認した.今後調査を行う際には十分配慮して行う方針である.CIV結論糖尿病患者に安全な診療を行うためには,視能訓練士が糖尿病について正しい知識を習得する必要があり,今後は知識が保たれているかどうかと,知識に相関し,意識の向上が認められるかどうかを調査するため,試験と意識調査アンケートを期間をあけて繰り返し定期的に行い,視能訓練士の教育に資する必要があると考える.C文献1)中江公裕,増田寛治郎,妹尾正ほか:わが国における視覚障害の現状.厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業網脈絡膜・視神経萎縮障害に関する研究平成C17年度統括・分担研究報告書(主任研究者:石橋達朗),p263-267,20062)日本糖尿病療養指導士認定機構編:糖尿病療養指導士の役割・機能.日本糖尿病療養指導士受験ガイドブックC2000,p9-14,20003)富永玲子,松本千佳,松山典子ほか:質問表を用いた糖尿病看護に関する意識調査.糖尿病53:713-718,C20104)石井純:コメディカルも知っておきたいガイドラインC1,2.糖尿病ケア7:225-269,C20105)雨宮伸,石塚達夫,犬飼敏彦ほか:糖尿病と日常生活.糖尿病治療の手びき,改訂第C56版(日本糖尿病学会編・著),p195-200,南江堂,20146)日本糖尿病学会:運動療法.糖尿病治療ガイドC2014-2015.p44-45,文光堂,2014***