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角膜形状データと光線追跡に基づいた度数計算法OKULIX®とSRK/T 法の比較

2011年1月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(131)131《原著》あたらしい眼科28(1):131.134,2011cはじめに近年,球面収差を低減する非球面眼内レンズ(IOL)1),遠近視力が得られる多焦点IOL2),術後乱視を減らすトーリックIOL3)といった高機能IOLが広く使用されている.これらの高機能IOLの効果を得るには,術後裸眼視力が良好であることが必要である.そのため,高い精度のIOL度数計算が求められている.IOL度数計算の誤差を生じるおもな要因は,術後前房深度の予想(35%)と術前眼軸長測定(17%)と考えられている4).眼軸長に関しては,光干渉法を用いた測定が開発され,簡便に高精度を得られるようになってい〔別刷請求先〕宮田和典:〒885-0051都城市蔵原町6-3宮田眼科病院Reprintrequests:KazunoriMiyata,M.D.,MiyataEyeHospital,6-3Kurahara-cho,Miyakonojo,Miyazaki885-0051,JAPAN角膜形状データと光線追跡に基づいた度数計算法OKULIXRとSRK/T法の比較三根慶子大谷伸一郎森洋斉加賀谷文絵本坊正人南慶一郎宮田和典宮田眼科病院ComparisonofIntraocularLensPowerCalculationbyOKULIXR,UsingTopographicDataandRayTracingMethod,withSRK/TFormulaKeikoMine,ShinichiroOtani,YosaiMori,FumieKagaya,NaotoHonbou,KeiichiroMinamiandKazunoriMiyataMiyataEyeHospital目的:角膜形状データと光線追跡に基づいた眼内レンズ(IOL)の度数計算法OKULIXRとSRK/T式を前向きに比較検討した.対象および方法:対象は,白内障手術でIOLFY-60AD(HOYA)を挿入した65例108眼(年齢:71.3±8.2歳).挿入IOLの度数はSRK/T式で求め,同時に,角膜形状解析装置TMS-4A(TOMEY)で角膜形状データを測定し,OKULIXRで挿入IOL度数における予想術後屈折値を計算した.術後1カ月の自覚等価球面度数と両方法で得られた予想屈折値との誤差を比較した.また,眼軸長および角膜形状の離心率の影響も検討した.結果:屈折誤差では,OKULIXRは.0.002±0.46DとSRK/T式の.0.11±0.50Dに比べ有意に小さかった(p=0.014).SRK/T式は離心率により屈折誤差が有意に変化した(p=0.0075)が,OKULIXRは変化しなかった.結論:OKULIXRによる度数計算は,角膜の非球面性に依存せず,より高精度の度数計算が可能であると考えられた.Purpose:Toprospectivelycompareintraocularlens(IOL)powercalculationbyOKULIXR,usingtopographicdataandraytracingmethod,withtheSRK/Tformula.Subjectandmethod:Subjectscomprised108eyesof65patientswhounderwentcataractsurgerywithimplantationofIOLFY-60AD(HOYA).Subjectmeanagewas71.3±8.2(SD)years.ThepoweroftheIOLforimplantationwascalculatedusingtheSRK/Tformula.Simultaneously,topographicdatawasmeasuredwiththeTMS-4A(TOMEY);predictedpostoperativerefractionfortheimplantedIOLpowerwasthencalculatedusingOKULIXR.Errorsbetweenmanifestrefractionat1monthpostoperativelyandtherefractionpredictionsobtainedbybothmethodswerecompared.Effectsofaxiallengthandcornealsurfaceeccentricitywerealsoevaluated.Results:RefractionerrorofOKULIXRwas.0.002±0.46D,significantlysmallerthanthe.0.11±0.05DofSRK/T(p=0.014).WiththeSRK/Tformula,refractionerrorvariedwitheccentricity(p=0.0075),althoughwithOKULIXRitdidnotchange.Conclusion:IOLpowerascalculatedwithOKULIXRwasinvariantwithcornealasphericity;OKULIXRcouldprovidemoreaccurateIOLpowercalculation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(1):131.134,2011〕Keywords:眼内レンズ度数計算,光線追跡,離心率.intraocularlenspowercalculation,raytracing,eccentricity.132あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(132)る.また,術後屈折値をもとにA定数も修正することで,SRK/T式5)でも単焦点IOLに十分な精度は得ることが可能になった.しかし,長眼軸あるいは短眼軸の症例では屈折誤差が大きくなる6,7).また,これまでのIOL度数計算法では,角膜形状のデータは十分に加味されず,円錐角膜やレーザー屈折矯正術後の症例8)では良好な裸眼視力を得ることはむずかしい.正確なIOL度数を求めるには,症例ごとに光線追跡を行い計算する9)のが理想的である.しかし,光線追跡を行うには特別なソフト処理が必要なうえに,IOLの形状および特性のデータの入手が必要であるためほとんど普及しなかった.Preussnerは,角膜形状データと光線追跡に基づいた度数計算を行うソフトOKULIXRを開発した10).度数計算ソフトOKULIXRは,角膜形状解析装置で測定した角膜形状データと眼軸長のデータから,IOLの特性データを用いて,光線追跡を行う.このため,屈折誤差がより小さい度数計算が可能と考えられる.筆者らは,通常の白内障手術に対しても光線追跡を用いたIOL度数計算法の効果を評価するために,手術歴のない白内障症例に挿入したIOLに対して,光線追跡を用いた度数計算ソフトOKULIXRとSRK/T式とを前向きに比較検討した.I対象および方法対象は,2008年11月から2009年2月に宮田眼科病院にて,同一術者(KM)により超音波白内障手術を行い,IOLFY-60AD(HOYA)を挿入した65例108眼(男性27名,女性38名)である.本研究は,宮田眼科病院倫理審査委員会にて承認され,患者からインフォームド・コンセントを得て実施した.手術歴がある症例,および白内障以外に眼疾患をもっている症例は除外した.平均年齢は71.3±8.2(SD)歳,眼軸長は23.46±1.29mm,角膜曲率半径はK1が44.80±1.54diopter(D),K2が44.08±1.53Dであった.術前に,角膜曲率半径をオートケラトメータ(ARK-730A,NIDEK)にて,眼軸長を超音波法(AL-2000,TOMEY)および光干渉法(IOLMaster,Zeiss)にて測定し,IOL度数をSRK/T式を用いて計算した.さらに,角膜形状解析装置(TMS-4A,TOMEY)で角膜形状データを測定し,同機に組み込まれている度数計算ソフトOKULIXRで挿入度数に対する術後屈折値を計算した.度数計算ソフトOKULIXRは,角膜前面屈折力,眼軸長の測定データから,IOLの特性(前後面の曲率,厚さ,屈折率)データを用いて,IOL度数を求める10).図1に示したように,屈折面は角膜の前後面,IOLの前後面の4面とし,網膜中心窩から角膜方向へ,角膜中心から,(瞳孔半径/2)1/2離れた位置をベストフォーカスとして1本の光線追跡を行う.角膜前面からの射出角qよりIOL挿入眼の眼屈折力を求め,IOL度数を決定する.角膜前面の曲率半径は,角膜形状データの直径6mm内の前面曲率を円錐曲線に近似し,角膜中心部の値を算出する.予想前房深度(ACD)は,SRK/T式では角膜曲率半径より算出するが,OKULIXRでは眼軸長(mm)より下式から求める11).予想ACD(mm)=4.6×(眼軸長/23.6)0.7術後1カ月時の自覚屈折値を測定し,屈折誤差を比較した.屈折誤差は,術後等価球面度数から予想屈折度数への差とした.さらに,屈折誤差と眼軸長,あるいは角膜前面の離心率との関係も検討した.離心率は非球面性の指標で,球面では0,楕円面では0から1の間の値になる.視軸が楕円面の長軸か短軸かで正負の符号をつけ,角膜前面形状がoblateの場合は.1<離心率<0,prolateの場合は0<離心率<1となる(図2).非球面性の指標Q値とは,Q=.(離心率)2で変換できる10,12).健常人の角膜形状は,平均離心率が約0.5(Q値で.0.26)のprolateである13).離心率は,OKULIXRt:角膜厚,ACD:予想前房深度,AXL:眼軸長,d:IOL厚.n,Rは各境界面での屈折値と曲率半径.角膜IOL網膜tqn1R1R2R3R4n2n3n4n5ACDAXLd図1光線追跡による眼内レンズの度数計算の原理球面形状(離心率=0)非球面:prolate(0<離心率<1)非球面:oblate(-1<離心率<0)図2角膜の前面形状の非球面性と離心率(133)あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011133内で計算された値を用いた.屈折誤差の比較は対応のあるt検定で検定し,眼軸長と離心率の影響は回帰分析を行った.p値が0.05以下を統計学的に有意差ありとした.II結果SRK/T式,OKURIXRにおける屈折誤差を図3に示す.屈折誤差はSRK/T式では.0.11±0.50D,OKULIXRで.0.002±0.46Dとなり,OKURIXRは有意に屈折誤差が小さかった(p=0.014).屈折誤差が1D以下の症例数は,SRK/Tで94.4%,OKULIXRで97.2%,屈折誤差が0.5D以下は,それぞれ74.1%,73.2%で,計算方法による有意差はなかった(c2検定).眼軸長の屈折誤差への影響を図4に示す.両方法において有意な相関はなかった.角膜前面形状の非球面性を示す離心率の分布を図5に示す.平均は0.32±0.28で,0.5を超える高度なprolate形状と,oblate形状が24%,14%存在した.離心率による屈折誤差への影響を図6に示す.SRK/T式では,離心率により屈折誤差は変化し,有意な相関を認めた(p=0.0075).回帰曲線の傾きは.0.45で,oblateであると遠視化し,高度にprolateな場合は近視化する傾向を示した.OKULIXRでは,屈折誤差は離心率によって変化しなかった.III考按角膜形状データと光線追跡を用いた度数計算OKULIXRと,従来のSRK/T式を比較すると,術後の屈折誤差および眼軸長の影響は同等であったが,SRK/T式では角膜の非球面性が強くなると度数の精度が低下した.角膜の非球面性がSRK/T式へ影響した要因として,角膜曲率の測定位置,予想ACDの算出が考えられる.角膜曲率の測定位置では,SRK/T式で用いる角膜曲率は,通常,オートケラトメータで測定された値を用いる.この曲率半径は,角膜中心から約3mm径の傍中心で測定されたもので,角膜中心の値ではない14).角膜前面が球面であれば,角膜中心と傍中心との曲率半径は変化しないが,非球面性がある場合は,離心率の絶対値が大きくなると角膜中心と傍中心との差が大きくなる.SRK/T式では,角膜曲率は予想ACDの算出に用いられるため,角膜曲率の誤差の影響は大きいと考えられる.一方,OKULIXRでは,角膜形状データより角膜中心の曲率半径が得られるので,非球面性に影響されにくいと考えられる.予想ACDの算出には,SRK/T式を含め,Holladay-I式,Hoffer-Q式などの第3世代の度数計算では,角膜形状が球面であると想定し,角膜曲率半径からACDを算出する5~7).角膜矯正手術を受けていない眼にも高度なprolate形状が14SRK/TOKULIXR眼軸長1.51.00.50-0.5-1.0-1.5202530(D)(mm)眼軸長1.51.00.50-0.5-1.0-1.5202530(D)(mm)屈折誤差図4術後1カ月時のSRK/T式とOKULIXRによる屈折誤差への眼軸長の影響-3.0-2.0-1.001.02.03.0(D)-0.11±0.50SRK/T屈折誤差-3.0-2.0-1.001.02.03.0-0.002±0.46OKULIXR(D)50403020100p=0.014pairedt-test50403020100眼数眼数図3術後1カ月時のSRK/T式とOKULIXRによる屈折誤差の比較0510152025-0.6-0.4-0.20.00.20.40.60.8離心率眼数(眼)図5対象眼の離心率分布離心率y=0.05x-0.011.51.00.5-0.5-1.0-1.5-2.0-0.50.5(D)離心率1.01.51.00.5-0.5-1.0-1.5-2.0-0.50.5(D)1.0y=-0.45x+0.04p=0.0075SRK/TOKULIXR屈折誤差図6術後1カ月時のSRK/T式とOKULIXRによる屈折誤差への離心率の影響134あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(134)%含まれていた.このような角膜に対しては,曲率半径から求めた予想ACDは,本来の値より大きく見積もられてしまい,度数誤差(近視化)の原因となると考えられる.OKULIXRでは,予想ACDを眼軸長より経験的な式から求めるため,角膜形状の非球面性の影響を受けない.このことは,非球面性が強い,軽度な円錐角膜症例や,角膜屈折矯正術後15)に対しても有効であると示唆される.今回の検討から,角膜手術歴がない白内障症例でも,角膜の非球面性が高度なprolate,あるいはoblateであるものが38%含まれていることが確認された.これらの症例では,角膜形状のデータが十分に加味されないため,SRK/T式では度数誤差が大きくなるという問題が示唆された.角膜形状データと光線追跡に基づいた度数計算法OKULIXRでは,角膜の非球面性に影響を受けにくく,より高精度の度数計算が可能であり,通常の白内障症例に対しても一般的に使用する意義があると考えられた.文献1)OhtaniS,MiyataK,SamejimaTetal:Intraindividualcomparisonofasphericalandsphericalintraocularlensesofsamematerialandplatform.Ophthalmology116:896-901,20092)片岡康志,大谷伸一郎,加賀谷文絵ほか:回折型多焦点非球面眼内レンズ挿入眼の視機能に対する検討.眼科手術23:277-181,20103)BauerNJ,deVriesNE,WebersCAetal:AstigmatismmanagementincataractsurgerywiththeAcrySoftoricintraocularlens.JCataractRefractSurg34:1483-1488,20084)NorrbyS:Sourcesoferrorinintraocularlenspowercalculation.JCataractRefractSurg34:368-376,20085)RetzlaffJA,SandersDR,KraffMC:DevelopmentoftheSRK/Tintraocularlensimplantpowercalculationformula.JCataractRefractSurg16:333-340,19906)ShammasH:IntraocularLensPowerCalculations.p15-24,SLACK,Thorofare,NJ,20047)禰津直久:眼内レンズの術後屈折誤差予測.あたらしい眼科15:1651-1656,19988)GimbelHV,SunR:Accuracyandpredictabilityofintraocularlenspowercalculationafterlaserinsitukeratomileusis.JCataractRefractSurg27:571-576,20019)石川隆,平野東,村井恵子ほか:光線追跡法による光学的角膜表層切除術術後眼の眼内レンズパワー決定法の考案.日眼会誌104:165-169,200010)PreussnerP,WahlJ,WeitzelD:Topography-basedintraocularlenspowerselection.JCataractRefractSurg31:525-533,200511)PreussnerP,OlsenT,HoffmannPetal:Intraocularlenscalculationaccuracylimitsinnormaleyes.JCataractRefractSurg34:802-808,200812)大鹿哲郎:LASIKにおける眼光学.あたらしい眼科17:1507-1513,200013)EdmundC,SjentoltE:Thecentral-peripheralradiusofthenormalcornealcurvature.Aphotokeratoscopicstudy.ActaOphthalmol(Copenh)63:670-677,198514)橋本行弘:オートレフラクトメータとフォトケラトスコープ機種の比較.前田直之,大鹿哲郎,不二門尚編:角膜トポグラファーと波面センサー,メジカルビュー,200215)RabsilberTM,ReulandAJ,HolzerMPetal:Intraocularlenspowercalculationusingraytracingfollowingexcimerlasersurgery.Eye21:697-701,2006***

エキシマレーザー角膜手術後眼の眼内レンズ度数計算における光線追跡法の有用性

2010年12月31日 金曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(85)1717《原著》あたらしい眼科27(12):1717.1720,2010c〔別刷請求先〕大谷伸一郎:〒885-0051都城市蔵原町6-3宮田眼科病院Reprintrequests:ShinichiroOhtani,M.D.,MiyataEyeHospital,6-3Kurahara-cho,Miyakonojo-city,Miyazaki885-0051,JAPANエキシマレーザー角膜手術後眼の眼内レンズ度数計算における光線追跡法の有用性大谷伸一郎南慶一郎本坊正人尾方美由紀宮田和典宮田眼科病院UseofRay-tracingIntraocularLensPowerCalculationforCataractSurgeryafterExcimerLaserCorneaSurgeriesShinichiroOhtani,KeiichiroMinami,MasatoHonbou,MiyukiOgataandKazunoriMiyataMiyataEyeHospital目的:エキシマレーザー角膜手術後眼の白内障手術において,光線追跡法を用いた眼内レンズ度数計算ソフトOKULIXRとSRK/T式とを比較した.方法:宮田眼科病院にて,LASIK(laserinsitukeratomileusis),PTK(phototherapeutickeratectomy)後に白内障手術を行った患者7例8眼を対象とし,SRK/T式,OKULIXRの術後屈折誤差を白内障術後1カ月の時点で比較した.さらに角膜前面形状の指標である離心率と術後屈折誤差との関係を検討した.SRK/T式で用いる角膜曲率半径K値は,ケラトメータの測定値,PentacamR(OCULUS)で得たTrueNetPower,TMS-4A(TOMEY)で得たring3法の3種類を用いた.結果:LASIK症例におけるSRK/T式の術後屈折誤差は,ケラトメータの場合2.03±1.42D(0.61~3.77D),TrueNetPowerの場合.1.75±0.79D(.2.83~.0.91D),TMSring3の場合1.34±1.16D(.0.19~2.83D)であった.OKULIXRは.0.27±0.45D(.0.77~0.28D)であり,他と比較し有意に少なかった(p<0.05,pairedt-test).全症例での離心率の範囲は.0.88~0.45であり,SRK/T式(ケラトメータ)の術後屈折誤差と離心率との間に相関関係を認めた(r2=0.88,p<0.01).一方,OKULIXRでは離心率との間に相関関係はなかった.結論:OKULIXRはSRK/T式よりも角膜前面形状の違いによる影響が少なく,エキシマレーザー角膜手術後眼の眼内レンズ度数計算において有用であるWecomparedtheray-tracingintraocularlenscalculationprogramOKULIXRwiththeSRK/Tformulaforcataractsurgeryafterexcimerlasercornealsurgery.In6eyesof5patientswhounderwentcataractsurgeryafterlaserinsitukeratomileusis(LASIK)and2eyesof2patientsafterphototherapeutickeratectomy(PTK),wecomparedpostoperativerefractionerrorbetweenOKULIXRandSRK/Tat1monthpostoperatively.Inaddition,theeffectofanteriorcornealasphericitytopostoperativerefractionerrorwasexaminedwithanindexofeccentricity.Threekeratometricdataobtainedwithakeratometer(ARK-730A,NIDEK),TrueNetPowerobtainedwithaPentacamR(OCULUS)andring3obtainedwithaTMS-4A(TOMEY)wereusedascornealradiiintheSRK/Tformula.PostoperativerefractionerrorsinSRK/Twere2.03±1.42D(range:0.61~3.77D)withcornealradiimeasuredviakeratometer,.1.75±0.79D(range:.2.83~.0.91D)withTrueNetPowerdata,and1.34±1.16D(range:.0.91~2.83D)withring3results.RefractionerrorofOKULIXRwas.0.27±0.45D(range:.0.77~0.28D),significantlylowerthanforanySRK/Tresults(p<0.05,paired-ttest).Eccentricitywas.0.88~0.45.RefractionerrorsinSRK/Tshowedsignificantcorrelationwitheccentricity(r2=0.88,p<0.01),whereastherewasnocorrelationinOKULIXR.Theray-tracingpowercalculationprogramOKULIXR,wasnotaffectedbycornealasphericity,soisconsideredaneffectivepowercalculationprogramforcataractsurgeryafterexcimerlasersurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(12):1717.1720,2010〕Keywords:光線追跡法,OKULIXR,SRK/T,LASIK(laserinsitukeratomileusis),PTK(phototherapeutickeratectomy),離心率.ray-tracing,OKULIXR,SRK/T,LASIK(laserinsitukeratomileusis),PTK(phototherapeutickeratectomy),eccentricity.1718あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(86)はじめに国内のエキシマレーザー角膜手術は,厚生省の認可以後すでに10年が経過しており,その症例総数は100万例以上に達している.それに伴い,エキシマレーザー角膜手術後眼の白内障手術症例が増加しているが,その際の眼内レンズ(intraocularlens:IOL)度数計算において誤差が生ずることが報告されている1,2).その原因としてエキシマレーザー角膜手術による角膜前面形状の変化による影響が指摘されている3,4).近年の視機能に対する要求水準は高く,IOL度数計算の誤差を減らすことは急務とされ,多くの対策が提唱されてきた5~11)が,まだ十分といえる手段はない.そのような状況のなか,光線追跡法を用いた新しいIOL度数計算ソフトOKULIXRが開発され12),臨床において使用可能となった.筆者らはエキシマレーザー角膜手術後眼の白内障手術において同法と,現在広く用いられているIOL度数計算法であるSRK/T式とを比較し,その有用性を検討した.Ⅰ対象および方法対象は,2008年5月から2009年12月に宮田眼科病院において,LASIK(laserinsitukeratomileusis),PTK(phototherapeutickeratectomy)後に白内障により超音波白内障手術ならびに眼内レンズ挿入術を行った患者7例8眼(LASIK症例5例6眼,PTK症例2例2眼)である(表1).平均年齢は57.4±13.0歳,エキシマレーザー角膜手術前の平均等価球面度数はLASIK症例.8.65±4.03D,PTK症例.8.00±5.66D,角膜切除量はLASIK症例86.5±26.5μm(47~103μm),PTK症例34.0±21.2μm(19~49μm)であった.LASIK症例うち1例は,他院にて近視矯正手術後に遠視矯正手術を受けていた.他のLASIK症例は全例が近視矯正手術であった.PTK症例の原疾患は2例とも角膜白斑であった.方法は,白内障術後1カ月の自覚屈折度数から術後等価球面を算出し,SRK/T式,OKULIXRそれぞれの術後屈折誤差を比較した.なお,術後屈折誤差は術後等価球面度数から予想屈折度数を引いた値と定義した.さらに角膜前面形状の指標として離心率を用い,術後屈折誤差との関係を検討した.離心率とは幾何学上,円錐曲線の形を決める定数であり,0の場合は円形,0<離心率<1の場合は楕円形を意味する.眼光学においては楕円形の長軸または短軸のどちらを視軸とみなしたかを区別するために正負の符号をつけている.すなわち,角膜前面形状の中心が平坦で周辺部が急峻なoblateの場合は.1<離心率<0,球面の場合は0,周辺部にいくほど平坦になるprolateの場合は0<離心率<1となる.SRK/T式で使用する角膜曲率半径K値には,ケラトメータARK-730A(NIDEK)の測定値,PentacamR(OCULUS)で得たTrueNetPower,TMS-4A(TOMEY)で得たring3法8)の3種類を用い,眼軸長測定は光学的眼軸長測定装置AL-2000(TOMEY)を用いた.OKULIXRとは,光線追跡法を用いたIOL度数計算ソフトであり,角膜トポグラフィより得られた角膜中央部の前面曲率,眼軸長,IOLの光学的情報をもとに,中心窩より角膜方向への光線の軌道計算を行い,挿入予定のIOLにおいて度数ごとの眼屈折力が算出される.眼軸長はSRK/T式と同じ値を用い,度数計算はTMS-4A(TOMEY)で行った.また,離心率もOKULIXRにて算出した.II結果ケラトメータによるK値を用いたSRK/T式〔以下,表1症例の内訳症例年齢(歳)性別エキシマレーザー手術の種類矯正量(D)角膜切除量(μm)ABCDEF515453555542男性男性女性女性女性男性LASIKLASIKLASIKLASIKLASIKLASIK不明11.54.2512.011.254.25不明1004710396不明GH6483女性女性PTKPTK──49190-1123-24症例術後屈折誤差(D)ABCDEFGH□:SRK/T式■:OKULIXRLASIKPTK図1各症例の術後屈折誤差術後屈折誤差(D)-3-2-101234ABCDEFGH□:SRK/T式(TMSring3)■:SRK/T式(TrueNetPower)■:OKULIXRLASIK症例PTK図2各症例の術後屈折誤差(87)あたらしい眼科Vol.27,No.12,20101719SRK/T式(ケラトメータ)〕とOKULIXRの術後屈折誤差の比較を図1に,PentacamRのTrueNetPower〔以下,SRK/T式(TrueNetPower)〕ならびにTMSring3法によるK値を用いたSRK/T式〔以下,SRK/T式(TMSring3)〕とOKULIXRの術後屈折誤差の比較を図2に,離心率と術後屈折誤差の関係を図3に示す.LASIK症例の術後屈折誤差の範囲は,SRK/T式(ケラトメータ)0.61~3.77D,SRK/T式(TrueNetPower).2.83~.0.91D,SRK/T式(TMSring3).0.19~2.83D,OKULIXR.0.77~0.28D,平均値はSRK/T式(ケラトメータ)2.03±1.42D,SRK/T式(TrueNetPower).1.75±0.79D,SRK/T式(TMSring3)1.34±1.16D,OKULIXR.0.27±0.45Dであった.LASIK症例の術後屈折誤差は,OKULIXRが他と比べ有意に少なかった(p<0.05,pairedt-test).また,LASIK症例のSRK/T式(ケラトメータ)は全例が術後に遠視化,SRK/T式(TrueNetPower)は全例が術後に近視化した.全症例での離心率の範囲は.0.88~0.45であり,SRK/T式(ケラトメータ)の術後屈折誤差と離心率との間に相関関係を認め,回帰直線y=.3.6x.0.24(r2=0.88,p<0.01)で示された.一方,OKULIXRでは術後屈折誤差と離心率との間に相関関係はなかった.III考按IOL度数計算式は,より正確な術後屈折度数を得るために進化してきた.第3世代の理論式であるSRK/T式の正常眼における計算精度は高い水準に達しており,広く用いられている.しかし,LASIKやPTKなど,エキシマレーザー角膜手術後のIOL度数計算では,誤差が生ずることが知られており問題となっている1,2).その理由として,エキシマレーザー角膜手術後の角膜前面形状の変化が角膜屈折力の測定誤差,前房深度の予測誤差を生ずることがあげられる3,4).具体的には,①角膜中心と傍中心の屈折力の違いによるもの,②角膜前面曲率半径と後面曲率半径比の変化によるもの,③前房深度の予測の際に,角膜前面曲率を利用することによるもの,がある.①については,ケラトメータは,原理上,角膜中心ではなく,傍中心を測定している.正常眼ではその差が小さく問題とならない場合が多いが,エキシマレーザー角膜手術によって,角膜中央がフラット化した場合,角膜中心と傍中心の屈折力の差が大きくなるため,測定値への影響が無視できなくなる.近視矯正のLASIK後の場合,中央部がフラット化しているため,角膜屈折力が実際よりも過大評価され,挿入するIOL度数は小さくなり,結果として術後の遠視化をきたす.②については,ケラトメータは角膜前面曲率から角膜全屈折力を換算屈折率により算出しているが,適切な換算屈折率は角膜前面曲率半径と後面曲率半径の比により変化する.エキシマレーザー角膜手術によって,角膜前面曲率が変化した場合,適切な換算屈折率は変化するが,ケラトメータでは同一の換算屈折率を用いている.このため測定値と実際の値との間に誤差が生じる.近視矯正のLASIK後の場合,角膜前面曲率半径が大きくなるため,角膜前面曲率半径と後面曲率半径比が大きくなり,適切な換算屈折率は減少する.これも角膜屈折力の過大評価をきたし,挿入するIOL度数は小さくなり,結果として術後の遠視化をきたす.③については,SRK/T式では前房深度の予測の際に角膜曲率を用いている.エキシマレーザー角膜手術によって,角膜曲率が変化した場合,実際の前房深度は変化がないにもかかわらず,前房深度の予測値が変化し,計算結果に誤差が生ずる.近視矯正のLASIK後の場合,前房深度の予測値は実際よりも浅くなるため,挿入するIOL度数は小さくなり,結果として術後の遠視化をきたす.これらのIOL度数計算誤差の対策として,いくつかの方法が提唱されている.角膜屈折力の測定誤差に対しては,エキシマレーザー角膜手術前の角膜屈折力を利用するClinicalHistory法5),既知のベースカーブをもつハードコンタクトレンズ(HCL)装着前後の屈折度数の変化を利用するHCL法5,6),経験式による角膜屈折力の補正7),ビデオケラトスコープにおける中心から3本目のMeyerリング上の平均角膜屈折力を用いるTMSring3法8),角膜前面曲率と後面曲率の実測値から算出するOrbscanRのTotalOpticalPower,PentacamRのTrueNetPowerがある9).一方,前房深度の予測誤差に対しては,エキシマレーザー角膜手術前の角膜屈折力で前房深度の予測を行うDouble-K法10),前房深度の予測に角膜前面曲率を用いないHaigis式がある11).これらを用いた報告によると,IOL度数計算の誤差が少なかったものの,一部の症例では依然として誤差があり,さらに精度の高いIOL度数計算法が求められている.近年,光線追跡法を用いたIOL度数計算ソフトOKULIXRが開発された.これはトーメー社製TMS-4以上のバージョンにおいて利用可能であるソフトであり,中心窩より角膜方向へ光線の軌道計算を行い,角膜前面からの光線出射角によ離心率屈折誤差(D)○:SRK/T式●:OKULIXR43210-1-2-1.0-0.500.5y=-3.6x-0.24r2=0.88p<0.01図3離心率と術後屈折誤差の関係1720あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(88)り眼屈折力を算出している.IOLの度数計算は,瞳孔面において光軸から瞳孔半径/2離れた位置を通る光線を用いている.現在,160種類以上のIOLにおける前面曲率,後面曲率,屈折率が各度数別に組み込まれており,軌道計算に利用されている.角膜前面曲率は角膜トポグラフィにより直径6mm内の角膜形状の経線を円錐曲線で近似し,中心部の角膜曲率を算出している.角膜後面曲率は,今回用いたTMS-4Aの場合,角膜厚を500μmと仮定して算出している.前房深度の予測は角膜前面曲率を用いず,眼軸長をもとに行っている.このため同法は角膜前面形状の変化による影響を受けにくいと考えられる.今回の検討において,OKULIXRの術後屈折誤差は,SRK/T式よりも有意に少なかったこと,さらに離心率の変化にOKULIXRはSRK/T式より影響されなかったことから,OKULIXRは角膜前面形状の変化による影響を受けにくい手段であり,エキシマレーザー角膜手術後の白内障手術において優位であることが臨床において確認できた.OKULIXRのように光線追跡により度数計算する場合とSRK/T式などの第3世代の理論式により度数計算する場合との間に,原理上2つの大きな違いがある.1つめは,後者は角膜,IOLともに1つの面として捉えているのに対して,前者は角膜前面,角膜後面,IOL前面,IOL後面に分け,Snellの法則に基づき各面を屈折面として計算している点である.IOLは各製品,各度数により,前面曲率と後面曲率の比率が異なり,IOLごとに主点の位置が異なる.第3世代の理論式ではこの点が考慮されていない.2つめは,後者は近軸光学に基づき,近似がなされている点である.具体的には光軸にきわめて近い光線の場合,sinq=qとして扱っている.この2つの点により生じうる誤差に対して,後者は最終的にA定数などで経験的に補正を行っている.そのため後者の場合,生体測定の精度の進歩,前房深度の予測精度の向上のたびに,再補正や計算式の構造を作り替える必要がある.一方,前者の場合は,それらが直接的にIOL度数計算精度の向上に寄与すると考えられる.生体測定の精度の進歩例としては,角膜後面曲率の測定ができるようになったことがあげられる.今回用いたOKULIXRはTMS-4Aによるものであり,角膜後面曲率は仮定により算出したものであるが,次バージョンであるTMS-5では,Scheimpflugの原理により,角膜後面曲率の測定が可能となり,当データをOKULIXRで用いることができるようになった.筆者らは前述の理由により,IOL度数計算の精度はさらに向上するものと考えているが,今後の検討が必要である.今回,エキシマレーザー角膜手術後の白内障手術症例7例8眼において,光線追跡法を用いたIOL度数計算ソフトOKULIXRと第3世代の理論式であるSRK/T式を比較した.OKULIXRはSRK/T式よりも有意に術後屈折誤差が少なかった.また,OKULIXRはSRK/T式よりも角膜前面形状の違いによる影響が少なく,エキシマレーザー角膜手術後のように角膜形状が変化した症例において有用であることが示唆された.エキシマレーザー角膜手術の症例数増加と高齢化により,今後も当手術後眼の白内障手術の機会が増加していくことが予想され,本法の臨床的価値がますます高まると思われる.文献1)KalskiR,DanjouxJ,FraenkelGetal:Intraocularlenspowercalculationforcataractsurgeryafterphotorefractivekeratectomyforhighmyopia.JRefractSurg13:362-366,19972)GimbelH,SunR,FurlongMetal:Accuracyandpredictabilityofintraocularlenspowercalculationafterphotorefractivekeratectomy.JCataractRefractSurg26:1147-1151,20003)魚里博,舛田浩三:屈折矯正手術後の眼内レンズパワー計算の問題点.眼臨94:354-356,20004)飯田嘉彦:屈折矯正手術後の白内障手術.IOL&RS22:39-44,20085)HofferK:Intraocularlenspowercalculationforeyesafterrefractivekeratotomy.JRefractSurg11:490-493,19956)SeitzB,LangenbucherA:Intraocularlenspowercalculationineyesaftercornealrefractivesurgery.JRefractSurg16:349-361,20007)ShammasH,ShammasM:No-historymethodofintraocularlenspowercalculationforcataractsurgeryaftermyopiclaserinsitekeratomileusis.JCataractRefractSurg33:31-36,20078)CelikkolL,PavlopoulosG,WeinsteinBetal:Calculationofintraocularlenspowerafterradicalkeratotomywithcomputerizedvideokeratography.AmJOphthalmol120:739-750,19959)臼井審一,前田直之,池田欣史ほか:Orbscanによる角膜全屈折力を用いたエキシマレーザー後の眼内レンズ度数計算.眼紀56:488-493,200510)AramberriJ:Intraocularlenspowercalculationaftercornealrefractivesurgery:double-Kmethod.JCataractRefractSurg29:2063-2068,200311)HaigisW:TheHaigisFormula.IntraocularLensPowerCalculation,edbyShammasHJ,p41-57,SLACK,Thorofare,NJ,200412)PreussnerPR,WahlJ,LahdoHetal:Raytracingforintraocularlenscalculation.JCataractRefractSurg28:1412-1419,2002***