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回折型多焦点非球面眼内レンズ挿入眼の薄暮でのコントラスト感度

2012年7月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科29(7):1019.1021,2012c回折型多焦点非球面眼内レンズ挿入眼の薄暮でのコントラスト感度清水恒輔*1河原温*1吉田晃敏*2*1札幌徳洲会病院眼科*2旭川医科大学ContrastSensitivityunderMesopicConditionsafterDiffractiveMultifocalAsphericIntraocularLensImplantationKosukeShimizu1),AtsushiKawahara1)andAkitoshiYoshida2)1)DepartmentofOphthalmology,SapporoTokusyukaiHospital,2)AsahikawaMedicalUniversity目的:回折型非球面多焦点眼内レンズ(IOL)であるZMA00(AMO社)の薄暮でのコントラスト感度を検討した.方法:屈折異常と白内障以外に眼疾患を有せず術中術後合併症がない症例,ZMA00挿入眼12例12眼とZA9003(AMO社)挿入眼(20例20眼)を比較した.術後6カ月でCGT1000(タカギセイコー社)を用いて薄暮(照度10lx)でのコントラスト感度,グレア付加コントラスト感度を測定した.結果:コントラスト感度は各視標サイズで有意差を認めなかったが,グレア付加コントラスト感度は,視角1.6°の視標のみ多焦点群が有意に低値であった(p<0.05).結論:ZMA00挿入眼のコントラスト感度は悪条件下のみわずかに低下がみられるが,単焦点IOLとほぼ同等である可能性がある.Purpose:Toevaluatecontrastsensitivityineyeswithadiffractivemultifocalasphericintraocularlens(IOL)undermesopicconditions.Methods:AdiffractivemultifocalasphericIOL,theZMA00(AMO),wasimplantedin12patients(12eyes).Servingascontrolswere20eyesof20patientswithamonofocalIOL,theZA9003(AMO),ofthesamematerialandasphericdesign.Nopatientshadoculardiseaseexceptingametropiaandcataract.At6monthsafterimplantation,thecontrastsensitivitywasmeasuredundermesopicconditionswithandwithoutglare.Results:Thetwogroupsshowednosignificantdifferenceincontrastsensitivitywithoutglare,atanytargetsize.MeasurementofcontrastsensitivitywithglareshowedthatthemultifocalIOLgrouphadsignificantly(p<0.05)lowercontrastsensitivityonlyatthetargetsizeof1.6degreesofarc.Conclusion:ThediffractivemultifocalasphericIOLcanprovidecontrastsensitivitysimilartothatprovidedbythemonofocalasphericIOL,exceptunderadverseconditions.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(7):1019.1021,2012〕Keywords:回折型多焦点眼内レンズ,非球面眼内レンズ,コントラスト感度,薄暮視.diffractivemultifocalintraocularlens,asphericintraocularlens,contrastsensitivitymesopicvision.はじめに白内障手術の進歩に伴い視力以外の視機能の向上のために付加価値眼内レンズ(IOL)が注目されている.近年登場した新世代の多焦点IOLは術後良好な視力が得られている1.6).しかし,日常生活では明所から暗所まで変化し,目標物のコントラストもさまざまであることから,高コントラスト視標で得られる視力だけではQOV(qualityofvision)を評価することはできず,コントラスト感度測定の重要性が高まっている.回折型多焦点IOLは良好な遠方,近方視力を得られる1.6)が,入射光を遠方と近方に分配するために構造上コントラスト感度の低下が懸念される7).特に低照度下ではコントラスト感度が低下するため8),回折型多焦点IOL眼では薄暮条件下でさらにコントラスト感度が低下する可能性がある.非球面IOLは角膜の球面収差を補正するため,瞳孔径の拡大に伴い球面収差が増大する低照度下でのコントラスト感度が良〔別刷請求先〕清水恒輔:〒004-0041札幌市厚別区大谷地東一丁目1番1号札幌徳洲会病院眼科Reprintrequests:KosukeShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoTokusyukaiHospital,1-1-1Ooyachihigashi,Atsubetsu-ku,Sapporo-shi004-0041,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(143)1019 好である9,10).今回筆者らは,球面収差を低減するために非球面構造を用いた回折型多焦点IOLと,同形状,素材である単焦点IOLの薄暮での視機能を評価するために両者のコントラスト感度を比較検討した.I対象および方法1.対象対象は白内障と屈折異常以外に眼疾患がなく,術中術後合併症がない患者とした.症例の内訳は多焦点群(ZMA00,AMO社)12例12眼(平均年齢64.1±9.6歳,47.79歳)と,単焦点群(ZA9003,AMO社)20例20眼(平均年齢70.8±7.2歳,57.83歳)である.2.術式手術はすべて同一術者が施行した.術式は2.8mm強角膜切開にて超音波乳化吸引術を施行し,両群とも同インジェクター(アンフォルダーエメラルドAR,AMO社),同カートリッジ(エメラルドカートリッジ,AMO社)を使用しIOLを水晶体.内に挿入した.3.IOLII結果1.患者背景年齢,IOL度数に両群間で有意差を認めなかった(表1).2.視力術後の遠方裸眼視力はlogMAR(小数視力)で多焦点群.0.03±0.07(1.09),単焦点群.0.05±0.07(1.13)でどちらも良好で有意差を認めなかった.遠方矯正視力も各.0.10±0.07(1.26),.0.09±0.08(1.24)と同様に有意差を認めなかった.多焦点群の近方視力も裸眼,遠方矯正下でいずれも良好であった(表2).3.コントラスト感度コントラスト感度はいずれの視標サイズでも単焦点群のほうが高い傾向にあったが,両群間に有意差は認めなかった.グレア付加コントラスト感度は視標サイズ1.6°のみで多焦点群が単焦点群と比べ有意に低値であったが,その他は有意差を認めなかった(図1,2).表1年齢,眼内レンズの比較今回使用したZMA00とZA9003は両者ともスリーピース構造で,光学部は非球面構造を採用しており直径6.0mm,全長13.0mmである.素材はアクリル製である.多焦点IOLのZMA00は光学部後面に32の回折構造を有しており,多焦点群単焦点群p値年齢64.1±9.670.8±7.20.0761IOL度数18.8±5.120.6±0.50.1977年齢や挿入IOL度数に有意差は認めなかった(Mann-Whitney回折現象を利用することで入射光を遠方と近方に41%ずつU検定).分配する.さらに散乱光として18%が失われてしまうため,単焦点IOLと比較し理論上コントラスト感度の低下が懸念表2術後視力(logMAR)される.また,回折構造が全面に配置されていることにより入射光は瞳孔径にかかわらず遠方と近方に均等に分配される.4.検査項目術後6カ月目に両群の遠方裸眼,矯正視力,多焦点群では,近方視力(裸眼,矯正,遠方矯正下),および両群のコ多焦点群単焦点群p値遠方裸眼視力.0.03±0.07.0.05±0.070.0628遠方矯正視力.0.10±0.07.0.09±0.080.7107近方裸眼視力0.15±0.22遠方矯正下近方視力0.11±0.13近方矯正視力0.06±0.08遠方裸眼,矯正視力は両群間で有意差を認めなかった(Mannントラスト感度を測定した.コントラスト感度測定には,WhitneyU検定).多焦点群の近方視力も良好であった.CGT1000(タカギセイコー社)を用いた.本装置はボックス100型コントラストグレアテスターの一つで,薄暮(照度10lx)でのコントラスト感度と,グレア付加コントラスト感度の測定が可能である11).視標のサイズとコントラストが自動的に:多焦点群:単焦点群80コントラスト感度変化して表示され,被検者は認識した時点でスイッチを押し測定される.視標はダブルリング視標でサイズは視角6.3°から0.7°の6種類ある.5.統計解析604020各群間の比較はMann-WhitneyU検定を用いp<0.05を統計学的有意差ありとした.16.34.02.51.61.00.7視標サイズ(degofarc)図1コントラスト感度全視標サイズで有意差は認めなかった(Mann-WhitneyU検定).1020あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(144) グレア付加コントラスト感度100806040201:多焦点群:単焦点群*6.34.02.51.61.00.7視標サイズ(degofarc)図2グレア付加コントラスト感度視標サイズ1.6degofarc(視角1.6°)のみで有意差を認めた(Mann-WhitneyU検定,*p<0.05).III考察多焦点IOLと単焦点IOLのコントラスト感度を比較した報告は多数ある.今回筆者らが用いたIOLと同形状のものの報告ではシリコーン製多焦点非球面IOLのZM900と単焦点IOLのZ9000を比較したものがあり,どの照度でも両者に差はないとする報告1,2)や,薄暮視,暗所視で低周波,高周波数領域で低下していたとの報告3),明所視で中間から高周波数領域で低下していたとの報告4)など結果はさまざまである.今回使用したZMA00については,他の多焦点IOLと比較し薄暮視での中間周波数領域でのコントラスト感度が良い傾向にあったという報告がある5).本研究での薄暮視のコントラスト感度は,多焦点群が低い傾向を認めるものの,有意差を認めたのはグレア付加時の一部の視標サイズのみであった.今回単焦点と比較し,コントラスト感度低下が少なかった原因の一つとして,非球面構造が球面収差を低減している可能性がある.単焦点IOLでは薄暮条件下では非球面のものが球面のものよりコントラスト感度が良好であるとする報告9,10)もあり,多焦点IOLにおいても同様の効果が得られた可能性がある.その他の原因としてCGT1000で測定する周波数領域の範囲があげられる.CGT1000の視標は視角6.3.0.7°の範囲であるが,これは他のコントラスト感度測定機器の6.12cpdの中間周波数の範囲である11).高周波数領域でのコントラスト感度低下の報告と比較し中間周波数でのコントラスト感度低下の報告は多くはない.視覚系全体における空間周波数特性は中間周波数で最も高いことが知られており,それによる影響も考えられる12).さらに,本研究で両群間のコントラスト感度の差が小さかったことや,統計学的有意差は出なかったが年齢が多焦点IOL群で低い傾向にあったことについては,サンプル数が少なかったことが要因の一つとなった可能性がある.今後症例数を重ね検討していきたい.今回筆者らは,多焦点IOLであるZMA00と同形状・同素材の単焦点IOLの薄暮でのコントラスト感度を比較検討した.ZMA00は大きなコントラスト感度の低下もなく,コントラスト感度を低下させる他の疾患を考慮すれば有効なIOLであると考えられた.文献1)片岡康志,大谷伸一郎,加賀谷文絵ほか:回折型多焦点非球面眼内レンズ挿入眼の視機能に対する検討.眼科手術23:277-281,20102)CillinoS,CasuccioA,DiPaceFetal:One-yearoutcomeswithnew-generationmultifocalintraocularlenses.Ophthalmology115:1508-1516,20083)MartinezPalmerA,GomezFainaP,EspanaAlbeldaAetal:Visualfunctionwithbilateralimplantationofmonofocalandmultifocalintraocularlenses:aprospective,randomized,controlledclinicaltrial.JRefractSurg24:257264,20084)MesciC,ErbilHH,OlgunAetal:Differencesincontrastsensitivitybetweenmonofocal,multifocalandaccommodatingintraocularlenses:long-termresults.ClinExperimentOphthalmol38:768-777,20105)GilMA,VaronC,RoselloNetal:Visualacuity,contrastsensitivity,subjectivequalityofvision,andqualityoflifewith4differentmultifocalIOLs.EurJOphthalmol22:175-187,20116)YoshinoM,Bissen-MiyajimaH,OkiSetal:Two-yearfollow-upafterimplantationofdiffractiveasphericsiliconemultifocalintraocularlenses.ActaOphthalmol89:617621,20117)大沼一彦:回折型多焦点眼内レンズの光学特性.あたらしい眼科24:137-146,20078)PuellMC,PalomoC,Sanchez-RamosCetal:Normalvaluesforphotopicandmesopiclettercontrastsensitivity.JRefractSurg20:484-488,20049)森洋斉,森文彦,昌原英隆ほか:非球面眼内レンズ(TECNISZA9003)挿入眼の収差とコントラスト感度.あたらしい眼科25:561-565,200810)OhtaniS,MiyataK,SamejimaTetal:Intraindividualcomparisonofasphericalandsphericalintraocularlensesofsamematerialandplatform.Ophthalmology116:896901,200911)高橋洋子:コントラストグレアテスター.IOL&RS15:192-199,200112)魚里博,中山奈々美:視力検査とコントラスト感度.あたらしい眼科26:1483-1487,2009***(145)あたらしい眼科Vol.29,No.7,20121021

非球面眼内レンズ(Nex-Acri AA Aktis N4-18YG)挿入眼の視機能

2011年1月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(135)135《原著》あたらしい眼科28(1):135.138,2011cはじめに現在,水晶体再建術は視力の改善のみでなく,より優れた視機能を得られることが望まれている.そのためにより安全で迅速な手術実績とともに,従来の眼内レンズ(IOL)から付加価値を有したIOLも開発されている.近年,他覚的評価方法として波面解析が導入されたことにより,屈折異常を波面収差という概念で捉えることが可能になった.すなわち,波面収差成分が視機能へ与える影響が着目されるようになり,特に高次収差の補正に関する重要性が認識されるようになった.諸家の報告によれば,正常な若年者の角膜は正の球面収差を有し,水晶体は負の球面収差をもつ.加齢により角膜の球面収差はほとんど変わらないが,水晶体の球面収差は正方向へ増加するため眼球全体の球面収差は増加し,その結果,視機能は低下していくことが示唆されている1,2).従来の球面IOLではその形状から加齢した水晶体同様,正の球面収差を有するため,埋植により眼球全体の球面収差を増加させる.このように従来の球面IOLでは高次収差を補正することは不十分であったが,波面収差を考慮して開発され〔別刷請求先〕太田一郎:〒462-0825名古屋市北区大曽根三丁目15-68眼科三宅病院Reprintrequests:IchiroOta,M.D.,MiyakeEyeHospital,3-15-68Ozone,Kita-ku,Nagoya-shi462-0825,JAPAN非球面眼内レンズ(Nex-AcriAAAktisN4-18YG)挿入眼の視機能太田一郎三宅謙作三宅三平武田純子眼科三宅病院VisualFunctionafterImplantationofNex-AcriAAAktisN4-18YGAsphericalIntraocularLensIchiroOta,KensakuMiyake,SampeiMiyakeandJunkoTakedaMiyakeEyeHospital目的:非球面眼内レンズ(IOL)挿入眼と球面IOL挿入眼の視機能について比較した.方法:白内障手術に続き片眼に非球面IOL(N4-18YG),僚眼に球面IOL(N4-11YB)を無作為に挿入した.術後6カ月で裸眼視力,矯正視力,高次収差〔解析領域5mmf,ゼルニケ(Zernike)6次〕,コントラスト感度,後発白内障,IOLの位置異常(偏位,傾斜)について観察した.結果:対象とした21名42眼では,非球面IOLにおける球面収差は球面IOLに比較して有意に少なかった(p<0.05).暗所でのコントラスト感度は非球面IOLが高かった(p<0.05).結語:非球面IOL(N4-18YG)は球面IOLに比較し,より高い光学性能および視機能を供する.Purpose:Tocomparethevisualfunctionofeyesthatunderwentasphericalorsphericalintraocularlens(IOL)implantation.Methods:Inthisprospective,randomizedstudy,patientsscheduledtoundergocataractsurgeryreceivedtheNex-AcriAAAktis(N4-18YG)asphericalIOLinoneeyeandtheN4-11YBsphericalIOLinthefelloweye.At6monthspostoperatively,uncorrectedvision,best-correctedvisualacuity,higherorderaberration(5mmzone,6thZernikeorder),contrastsensitivity,posteriorlenscapsuleopacity,IOLtiltanddecentrationwerecompared.Results:Enrolledinthisstudywere42eyesof21subjects.Postoperativery,sphericalaberrationwassignificantlylowerineyeswithasphericalIOLthanineyeswithsphericalIOL(p<0.05).TheeyeswithasphericalIOLhadsignificantlyhighercontrastsensitivityunderlow-mesopicconditions(p<0.05).Conclusion:TheNex-AcriAAAktisasphericalIOLprovidesbetteropticalandvisualqualitythandoesthesphericalIOL.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(1):135.138,2011〕Keywords:非球面眼内レンズ,視機能,収差,コントラスト感度,偏位.asphericalintraocularlens,visualfunction,aberration,contrastsensitivity,tiltanddecentration.136あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(136)た非球面IOLNex-AcriAAAktisN4-18YG(NIDEK社)(以下,Aktis)は角膜の球面収差を補正し,眼球全体での球面収差を減少させるように設計されている.また,Aktisは従来の非球面IOLの光軸上での球面収差補正ではなく視軸上での補正という新しいコンセプトで開発され,従来の非球面IOLで危惧されていた偏位した場合の結像力の低下をより軽減するように設計されている.今回筆者らは,Aktisを使用し,非球面IOLによる波面収差とコントラスト感度,および偏位と視機能の関係について検討した.I対象および方法対象は2008年12月から2009年3月の間に眼科三宅病院にて白内障以外に視力低下の原因がない症例で,超音波乳化吸引術(PEA)および眼内レンズ挿入術を施行し,術後6カ月以上の経過観察が行いえた21名42眼である.性別は男性7名14眼,女性14名28眼で平均年齢は71.5±5.6歳であった.対象患者には術前に十分なインフォームド・コンセントを行い,同一患者の片眼に非球面IOLAktis(以下,非球面群),僚眼に球面IOLNex-AcriAAN4-11YB(NIDEK社)(以下,球面群)を左右ランダムに振り分けて挿入した.手術は全例CCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)を完成させ,2.8mmの上方強角膜切開創よりPEAを施行後,専用インジェクターによりIOLを.内固定した.術中にIOLの中心固定性,前.によるcompletecoverを確認した.術後6カ月における裸眼視力,矯正視力,術後屈折度数誤差量(術後等価球面度数.目標等価球面度数),波面収差,コントラスト感度,後.混濁濃度および術後偏位量を測定し両群を比較した.波面収差の測定,解析は波面センサーOPD-Scan(NIDEK社)を用いて行った.解析領域は3mm,5mmとし,角膜成分,全眼球成分についてそれぞれ4次の球面収差(C04)を測定した.コントラスト感度はVCTS6500(Vistech社)を用いて測定した.測定時の照度条件を150lux(明室),50lux(中間),10lux(暗室)となるように調整し,完全矯正下で測定した.コントラスト感度の比較は,各空間周波数におけるコントラスト感度の対数値と,AULCSF(areaunderthelogcontrastsensitivityfunction)の値を算出して用いた3).後.混濁濃度および術後偏位の測定は,前眼部画像解析装置EAS-1000(NIDEK社)を用いて行った.後.混濁濃度は撮影条件をスリット長10mm,光源を200Wとし,散瞳下でスリットモードを使い,0°,45°,90°,135°の4方向のScheimpflug像を撮影した.解析は3×0.25mmのエリアの後.混濁値(単位CCT:computercompatibletaps)を定量し,4方向の平均値を後.混濁濃度とした.術後偏位の測定は,IOLモードを使い解析した.統計解析にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準(p)は0.05未満とした.II結果術後,非球面群と球面群間で裸眼視力,矯正視力で有意差を認めなかった.屈折誤差は等価球面度数で表すと,非球面群が.0.21±0.52D,球面群が.0.92±0.55Dで非球面群が有意に少なかった(表1).収差は,角膜成分における球面収差において非球面群と球面群間で有意差を認めなかった.全眼球成分では解析領域3mmにおいて球面収差で非球面群が0.01±0.01μm,球面群が0.02±0.01μmで非球面群のほうが有意に少なかった(p表1術後視力および術後屈折度数誤差量の比較非球面群(n=21)球面群(n=21)p値裸眼視力0.65(0.40,1.05)*0.54(0.27,1.07)*p=0.090矯正視力1.09(0.85,1.39)*1.03(0.79,1.33)*p=0.074屈折誤差量(D).0.21±0.52.0.92±0.55p<0.001*:()は散布度を表す.非球面群と球面群間で術後の裸眼視力,矯正視力,屈折誤差を比較した.屈折誤差において非球面群が球面群に対して有意に少なかった.*角膜収差(μm)全眼球*3.0mm(n=10)5.0mm(n=8)3.0mm(n=10)5.0mm(n=10)□:球面群■:非球面群*p<0.010.40.30.20.10図1術後球面収差量非球面群と球面群の術後の球面収差を比較した.角膜成分は球面群,非球面群に有意差はないが,全眼球成分においては非球面群が球面群に対して有意に少ない.高照度(150lux)(n=21)中照度(50lux)(n=21)低照度(10lux)(n=21)2.001.501.000.500.001.53612181.536空間周波数(c/d)対数コントラスト感度**12181.5361218*p<0.05:球面群:非球面群図2術後のコントラスト感度の比較照度別に非球面群と球面群のコントラスト感度を比較した.低照度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.(137)あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011137<0.01).解析領域5mmにおいて非球面群が0.01±0.07μm,球面群が0.17±0.17μmで非球面群が有意に少なかった(p<0.01)(図1).コントラスト感度は,明室(150lux),中間(50lux)においてすべての空間周波数帯で非球面群,球面群間の有意差を認めなかったが,暗室(10lux)では,3,12cycles/degreeにて非球面群が有意に高値を示した(p<0.05)(図2).AULCSF値を比較すると,明所,中間では非球面群と球面群間で有意差を認めなかったが,暗所では非球面群が有意に高い値を示した(p<0.01)(図3).後.混濁濃度,術後偏位量は非球面群と球面群間に有意差を認められなかった(表2).III考按今回の結果では,球面収差において角膜成分では非球面群と球面群間で有意差を認めなかったのに対し,全眼球成分では非球面群のほうが球面群に比べて有意に少ない結果となった.その傾向は解析領域が3mmの場合よりも5mmで顕著にみられた.また,暗所におけるコントラスト感度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.非球面IOLの収差補正効果は瞳孔径に依存し,瞳孔径が大きいほど非球面IOLの効果が大きくなることがいわれている4)が,今回の結果においても同様の結果が得られ,Aktisのもつ非球面性によるものと考えられた.偏位(decentration)や傾斜(tilt)を起こした場合,IOLの空間周波数特性(modulationtransferfunction:MTF)は低下するが,非球面IOLはその影響を大きく受け,偏位や傾斜の値が一定以上になれば球面IOLよりもMTFが低下するといわれ5),HolladayはTecnisRZ9000(AMO社)を用いたシミュレーションの結果として,0.4mm以上の偏位,もしくは7°以上の傾斜で非球面IOLのMTFは球面IOLよりも低下すると報告している6).今回偏位量については,平均で非球面群が0.25±0.19mm,球面群が0.24±0.15mmであったが,対象のなかに非球面IOLと球面IOLのMTFが逆転するとされる0.4mm以上のIOL偏位を認めた症例を3例経験したので別に検討を行った.当該例の平均偏位量は,非球面群が0.58±0.18mm,球面群が0.48±0.09mmであったが,視力,コントラスト感度とも非球面群が球面群に比べて明らかに低下するようなことはなく(表3),視軸上での球面収差補正というAktisの設計によりMTFの低下が抑えられた可能性がある.前眼部画像解析装置を用いた調査によると,.内固定されたIOLは一般的に0.2~0.4mmの偏位が生じるといわれており7~9),これら偏位が種々の術後不定愁訴の原因となっている可能性がある10).Aktisは,0.5mm以上の偏位を示した症例においても視力,コントラスト感度の低下はみられなかった.当該症例において観察期間中,特筆すべき不定愁訴もなかった.以上を総括し,Aktisは臨床上有用性があると考えられた.文献1)AmanoS,AmanoY,YamagamiS:Age-relatedchanges高照度(150lux)(n=21)中照度(50lux)(n=21)低照度(10lux)(n=21)*p<0.01*□:球面群■:非球面群2.001.501.000.500.00AULCSF図3AULCSF(areaunderthelogcontrastsensitivityfunction)照度別に非球面群と球面群のコントラスト感度のAULCSFを比較した.低照度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.表3偏位を認めた症例の視力およびAULCSFの比較非球面群(n=3)球面群(n=3)視力裸眼0.77(0.71,0.83)*0.80(0.80,0.80)*矯正1.20(1.20,1.20)*1.13(1.02,1.25)*AULCSF高照度1.81±0.261.73±0.20中照度1.82±0.241.61±0.16低照度1.56±0.261.52±0.21*:()は散布度を表す.非球面群と球面群について術後0.4mm以上偏位を認めた症例の視力およびAULCSFを比較した.両群間に有意差はみられなかった.表2後.混濁濃度および偏位量の比較非球面群球面群p値後.混濁濃度(CCT)17.24±7.8(n=20)16.80±4.8(n=19)p=0.728Tilt量(°)2.70±1.70(n=19)2.08±1.51(n=20)p=0.244Decentration量(mm)0.25±0.19(n=19)0.24±0.15(n=20)p=0.989非球面群と球面群について術後の後.混濁および偏位量を比較した.両群間に有意差はみられなかった.138あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(138)incornealandocularhigher-orderwavefrontaberrations.AmJOphthalmol137:988-992,20042)FujikadoT,KurodaT,NinomiyaSetal:Aged-relatedchangesinocularandcornealaberrations.AmJOphthalmol138:143-146,20043)ApplegateRA,HowlandHCetal:Cornealaberrationsandvisualperformanceafterradialkeratotomy.JRefractSurg14:397-407,19984)大谷伸一郎,宮田和典:非球面眼内レンズ.眼科手術21:303-307,20085)大谷伸一郎,宮田和典:非球面眼内レンズ.IOL&RS22:460-466,20086)HolladayJT,PiersPA,KoranyiGetal:Anewintraocularlensdesigntoreducesphericalaberrationofpseudophakiceyes.JRefractSurg18:683-691,20027)HayashiK,HaradaM,HayashiH:Decentrationandtiltofpolymethylmethacrylate,silicone,andacrylicsoftintraocularlenses.Ophthalmology104:793-798,19978)吉田伸一郎,西尾正哉,小原喜隆ほか:Foldable眼内レンズの術後成績.臨眼50:831-835,19969)麻生宏樹,林研,林英之:同一デザインのアクリルレンズとシリコーン眼内レンズの固定状態の比較.臨眼61:237-242,200710)佐藤昭一:foldable眼内レンズの術後合併症と対策─偏位.眼科診療プラクティス40,foldable眼内レンズを用いる白内障手術(臼井正彦編),p68-71,文光堂,1998***