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非球面眼内レンズ(Nex-Acri AA Aktis N4-18YG)挿入眼の視機能

2011年1月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(135)135《原著》あたらしい眼科28(1):135.138,2011cはじめに現在,水晶体再建術は視力の改善のみでなく,より優れた視機能を得られることが望まれている.そのためにより安全で迅速な手術実績とともに,従来の眼内レンズ(IOL)から付加価値を有したIOLも開発されている.近年,他覚的評価方法として波面解析が導入されたことにより,屈折異常を波面収差という概念で捉えることが可能になった.すなわち,波面収差成分が視機能へ与える影響が着目されるようになり,特に高次収差の補正に関する重要性が認識されるようになった.諸家の報告によれば,正常な若年者の角膜は正の球面収差を有し,水晶体は負の球面収差をもつ.加齢により角膜の球面収差はほとんど変わらないが,水晶体の球面収差は正方向へ増加するため眼球全体の球面収差は増加し,その結果,視機能は低下していくことが示唆されている1,2).従来の球面IOLではその形状から加齢した水晶体同様,正の球面収差を有するため,埋植により眼球全体の球面収差を増加させる.このように従来の球面IOLでは高次収差を補正することは不十分であったが,波面収差を考慮して開発され〔別刷請求先〕太田一郎:〒462-0825名古屋市北区大曽根三丁目15-68眼科三宅病院Reprintrequests:IchiroOta,M.D.,MiyakeEyeHospital,3-15-68Ozone,Kita-ku,Nagoya-shi462-0825,JAPAN非球面眼内レンズ(Nex-AcriAAAktisN4-18YG)挿入眼の視機能太田一郎三宅謙作三宅三平武田純子眼科三宅病院VisualFunctionafterImplantationofNex-AcriAAAktisN4-18YGAsphericalIntraocularLensIchiroOta,KensakuMiyake,SampeiMiyakeandJunkoTakedaMiyakeEyeHospital目的:非球面眼内レンズ(IOL)挿入眼と球面IOL挿入眼の視機能について比較した.方法:白内障手術に続き片眼に非球面IOL(N4-18YG),僚眼に球面IOL(N4-11YB)を無作為に挿入した.術後6カ月で裸眼視力,矯正視力,高次収差〔解析領域5mmf,ゼルニケ(Zernike)6次〕,コントラスト感度,後発白内障,IOLの位置異常(偏位,傾斜)について観察した.結果:対象とした21名42眼では,非球面IOLにおける球面収差は球面IOLに比較して有意に少なかった(p<0.05).暗所でのコントラスト感度は非球面IOLが高かった(p<0.05).結語:非球面IOL(N4-18YG)は球面IOLに比較し,より高い光学性能および視機能を供する.Purpose:Tocomparethevisualfunctionofeyesthatunderwentasphericalorsphericalintraocularlens(IOL)implantation.Methods:Inthisprospective,randomizedstudy,patientsscheduledtoundergocataractsurgeryreceivedtheNex-AcriAAAktis(N4-18YG)asphericalIOLinoneeyeandtheN4-11YBsphericalIOLinthefelloweye.At6monthspostoperatively,uncorrectedvision,best-correctedvisualacuity,higherorderaberration(5mmzone,6thZernikeorder),contrastsensitivity,posteriorlenscapsuleopacity,IOLtiltanddecentrationwerecompared.Results:Enrolledinthisstudywere42eyesof21subjects.Postoperativery,sphericalaberrationwassignificantlylowerineyeswithasphericalIOLthanineyeswithsphericalIOL(p<0.05).TheeyeswithasphericalIOLhadsignificantlyhighercontrastsensitivityunderlow-mesopicconditions(p<0.05).Conclusion:TheNex-AcriAAAktisasphericalIOLprovidesbetteropticalandvisualqualitythandoesthesphericalIOL.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(1):135.138,2011〕Keywords:非球面眼内レンズ,視機能,収差,コントラスト感度,偏位.asphericalintraocularlens,visualfunction,aberration,contrastsensitivity,tiltanddecentration.136あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(136)た非球面IOLNex-AcriAAAktisN4-18YG(NIDEK社)(以下,Aktis)は角膜の球面収差を補正し,眼球全体での球面収差を減少させるように設計されている.また,Aktisは従来の非球面IOLの光軸上での球面収差補正ではなく視軸上での補正という新しいコンセプトで開発され,従来の非球面IOLで危惧されていた偏位した場合の結像力の低下をより軽減するように設計されている.今回筆者らは,Aktisを使用し,非球面IOLによる波面収差とコントラスト感度,および偏位と視機能の関係について検討した.I対象および方法対象は2008年12月から2009年3月の間に眼科三宅病院にて白内障以外に視力低下の原因がない症例で,超音波乳化吸引術(PEA)および眼内レンズ挿入術を施行し,術後6カ月以上の経過観察が行いえた21名42眼である.性別は男性7名14眼,女性14名28眼で平均年齢は71.5±5.6歳であった.対象患者には術前に十分なインフォームド・コンセントを行い,同一患者の片眼に非球面IOLAktis(以下,非球面群),僚眼に球面IOLNex-AcriAAN4-11YB(NIDEK社)(以下,球面群)を左右ランダムに振り分けて挿入した.手術は全例CCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)を完成させ,2.8mmの上方強角膜切開創よりPEAを施行後,専用インジェクターによりIOLを.内固定した.術中にIOLの中心固定性,前.によるcompletecoverを確認した.術後6カ月における裸眼視力,矯正視力,術後屈折度数誤差量(術後等価球面度数.目標等価球面度数),波面収差,コントラスト感度,後.混濁濃度および術後偏位量を測定し両群を比較した.波面収差の測定,解析は波面センサーOPD-Scan(NIDEK社)を用いて行った.解析領域は3mm,5mmとし,角膜成分,全眼球成分についてそれぞれ4次の球面収差(C04)を測定した.コントラスト感度はVCTS6500(Vistech社)を用いて測定した.測定時の照度条件を150lux(明室),50lux(中間),10lux(暗室)となるように調整し,完全矯正下で測定した.コントラスト感度の比較は,各空間周波数におけるコントラスト感度の対数値と,AULCSF(areaunderthelogcontrastsensitivityfunction)の値を算出して用いた3).後.混濁濃度および術後偏位の測定は,前眼部画像解析装置EAS-1000(NIDEK社)を用いて行った.後.混濁濃度は撮影条件をスリット長10mm,光源を200Wとし,散瞳下でスリットモードを使い,0°,45°,90°,135°の4方向のScheimpflug像を撮影した.解析は3×0.25mmのエリアの後.混濁値(単位CCT:computercompatibletaps)を定量し,4方向の平均値を後.混濁濃度とした.術後偏位の測定は,IOLモードを使い解析した.統計解析にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準(p)は0.05未満とした.II結果術後,非球面群と球面群間で裸眼視力,矯正視力で有意差を認めなかった.屈折誤差は等価球面度数で表すと,非球面群が.0.21±0.52D,球面群が.0.92±0.55Dで非球面群が有意に少なかった(表1).収差は,角膜成分における球面収差において非球面群と球面群間で有意差を認めなかった.全眼球成分では解析領域3mmにおいて球面収差で非球面群が0.01±0.01μm,球面群が0.02±0.01μmで非球面群のほうが有意に少なかった(p表1術後視力および術後屈折度数誤差量の比較非球面群(n=21)球面群(n=21)p値裸眼視力0.65(0.40,1.05)*0.54(0.27,1.07)*p=0.090矯正視力1.09(0.85,1.39)*1.03(0.79,1.33)*p=0.074屈折誤差量(D).0.21±0.52.0.92±0.55p<0.001*:()は散布度を表す.非球面群と球面群間で術後の裸眼視力,矯正視力,屈折誤差を比較した.屈折誤差において非球面群が球面群に対して有意に少なかった.*角膜収差(μm)全眼球*3.0mm(n=10)5.0mm(n=8)3.0mm(n=10)5.0mm(n=10)□:球面群■:非球面群*p<0.010.40.30.20.10図1術後球面収差量非球面群と球面群の術後の球面収差を比較した.角膜成分は球面群,非球面群に有意差はないが,全眼球成分においては非球面群が球面群に対して有意に少ない.高照度(150lux)(n=21)中照度(50lux)(n=21)低照度(10lux)(n=21)2.001.501.000.500.001.53612181.536空間周波数(c/d)対数コントラスト感度**12181.5361218*p<0.05:球面群:非球面群図2術後のコントラスト感度の比較照度別に非球面群と球面群のコントラスト感度を比較した.低照度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.(137)あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011137<0.01).解析領域5mmにおいて非球面群が0.01±0.07μm,球面群が0.17±0.17μmで非球面群が有意に少なかった(p<0.01)(図1).コントラスト感度は,明室(150lux),中間(50lux)においてすべての空間周波数帯で非球面群,球面群間の有意差を認めなかったが,暗室(10lux)では,3,12cycles/degreeにて非球面群が有意に高値を示した(p<0.05)(図2).AULCSF値を比較すると,明所,中間では非球面群と球面群間で有意差を認めなかったが,暗所では非球面群が有意に高い値を示した(p<0.01)(図3).後.混濁濃度,術後偏位量は非球面群と球面群間に有意差を認められなかった(表2).III考按今回の結果では,球面収差において角膜成分では非球面群と球面群間で有意差を認めなかったのに対し,全眼球成分では非球面群のほうが球面群に比べて有意に少ない結果となった.その傾向は解析領域が3mmの場合よりも5mmで顕著にみられた.また,暗所におけるコントラスト感度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.非球面IOLの収差補正効果は瞳孔径に依存し,瞳孔径が大きいほど非球面IOLの効果が大きくなることがいわれている4)が,今回の結果においても同様の結果が得られ,Aktisのもつ非球面性によるものと考えられた.偏位(decentration)や傾斜(tilt)を起こした場合,IOLの空間周波数特性(modulationtransferfunction:MTF)は低下するが,非球面IOLはその影響を大きく受け,偏位や傾斜の値が一定以上になれば球面IOLよりもMTFが低下するといわれ5),HolladayはTecnisRZ9000(AMO社)を用いたシミュレーションの結果として,0.4mm以上の偏位,もしくは7°以上の傾斜で非球面IOLのMTFは球面IOLよりも低下すると報告している6).今回偏位量については,平均で非球面群が0.25±0.19mm,球面群が0.24±0.15mmであったが,対象のなかに非球面IOLと球面IOLのMTFが逆転するとされる0.4mm以上のIOL偏位を認めた症例を3例経験したので別に検討を行った.当該例の平均偏位量は,非球面群が0.58±0.18mm,球面群が0.48±0.09mmであったが,視力,コントラスト感度とも非球面群が球面群に比べて明らかに低下するようなことはなく(表3),視軸上での球面収差補正というAktisの設計によりMTFの低下が抑えられた可能性がある.前眼部画像解析装置を用いた調査によると,.内固定されたIOLは一般的に0.2~0.4mmの偏位が生じるといわれており7~9),これら偏位が種々の術後不定愁訴の原因となっている可能性がある10).Aktisは,0.5mm以上の偏位を示した症例においても視力,コントラスト感度の低下はみられなかった.当該症例において観察期間中,特筆すべき不定愁訴もなかった.以上を総括し,Aktisは臨床上有用性があると考えられた.文献1)AmanoS,AmanoY,YamagamiS:Age-relatedchanges高照度(150lux)(n=21)中照度(50lux)(n=21)低照度(10lux)(n=21)*p<0.01*□:球面群■:非球面群2.001.501.000.500.00AULCSF図3AULCSF(areaunderthelogcontrastsensitivityfunction)照度別に非球面群と球面群のコントラスト感度のAULCSFを比較した.低照度において非球面群が球面群に対して有意に良好な値を示した.表3偏位を認めた症例の視力およびAULCSFの比較非球面群(n=3)球面群(n=3)視力裸眼0.77(0.71,0.83)*0.80(0.80,0.80)*矯正1.20(1.20,1.20)*1.13(1.02,1.25)*AULCSF高照度1.81±0.261.73±0.20中照度1.82±0.241.61±0.16低照度1.56±0.261.52±0.21*:()は散布度を表す.非球面群と球面群について術後0.4mm以上偏位を認めた症例の視力およびAULCSFを比較した.両群間に有意差はみられなかった.表2後.混濁濃度および偏位量の比較非球面群球面群p値後.混濁濃度(CCT)17.24±7.8(n=20)16.80±4.8(n=19)p=0.728Tilt量(°)2.70±1.70(n=19)2.08±1.51(n=20)p=0.244Decentration量(mm)0.25±0.19(n=19)0.24±0.15(n=20)p=0.989非球面群と球面群について術後の後.混濁および偏位量を比較した.両群間に有意差はみられなかった.138あたらしい眼科Vol.28,No.1,2011(138)incornealandocularhigher-orderwavefrontaberrations.AmJOphthalmol137:988-992,20042)FujikadoT,KurodaT,NinomiyaSetal:Aged-relatedchangesinocularandcornealaberrations.AmJOphthalmol138:143-146,20043)ApplegateRA,HowlandHCetal:Cornealaberrationsandvisualperformanceafterradialkeratotomy.JRefractSurg14:397-407,19984)大谷伸一郎,宮田和典:非球面眼内レンズ.眼科手術21:303-307,20085)大谷伸一郎,宮田和典:非球面眼内レンズ.IOL&RS22:460-466,20086)HolladayJT,PiersPA,KoranyiGetal:Anewintraocularlensdesigntoreducesphericalaberrationofpseudophakiceyes.JRefractSurg18:683-691,20027)HayashiK,HaradaM,HayashiH:Decentrationandtiltofpolymethylmethacrylate,silicone,andacrylicsoftintraocularlenses.Ophthalmology104:793-798,19978)吉田伸一郎,西尾正哉,小原喜隆ほか:Foldable眼内レンズの術後成績.臨眼50:831-835,19969)麻生宏樹,林研,林英之:同一デザインのアクリルレンズとシリコーン眼内レンズの固定状態の比較.臨眼61:237-242,200710)佐藤昭一:foldable眼内レンズの術後合併症と対策─偏位.眼科診療プラクティス40,foldable眼内レンズを用いる白内障手術(臼井正彦編),p68-71,文光堂,1998***

非球面眼内レンズ(TECNISR ZA9003)挿入眼の収差とコントラスト感度

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page1(139)???0910-181008\100頁JCLS《原著》あたらしい眼科25(4):561~565,2008?はじめに現在,白内障手術は視力の改善だけではなく,より優れた視機能が得られることが望まれている.そのために,より安全で迅速な手術術式とともに,良質な眼内レンズ(IOL)も開発されている.近年,視機能の他覚的評価方法として波面収差の概念が導入された1,2).正常な若年者の水晶体は,角膜の球面収差を補正するため,非球面形状となっている3).しかし,加齢によって,角膜の球面収差はほとんど変わらないが,水晶体の球面収差は正方向に増加するため,眼球全体の球面収差も増加し,視機能は低下する2,4).従来の球面IOLでは,角膜の球面収差を補正するには不十分であったが,波面収差を考慮して開発された非球面IOLTECNIS?(AMO社)は,角膜の球面収差を補正し,眼球全体での球面収差を減少させるよう〔別刷請求先〕森洋斉:〒040-0053函館市末広町7-13江口眼科病院Reprintrequests:????????????????????????????????????????-??????????-?????????????-???????-???????????非球面眼内レンズ(TECNIS?ZA9003)挿入眼の収差とコントラスト感度森洋斉森文彦昌原英隆亀田裕介鈴木理郎山内遵秀江口まゆみ江口秀一郎江口眼科病院AberrationandContrastSensitivityafterImplantationofTECNIS?ZA9003AsphericalIntraocularLensesYosaiMori,FumihikoMori,HidetakaMasahara,YusukeKameda,MichiroSuzuki,YukihideYamauchi,MayumiEguchiandShuichiroEguchi???????????????????非球面眼内レンズ(IOL)と球面IOLの収差,コントラスト感度について検討した.対象は,片眼に非球面IOL(TECNIS?ZA9003,AMO社),他眼に球面IOL(AcrySof?SA30AT,Alcon社)を挿入した30例60眼である.術後1カ月で,解析領域3mm,5mmで収差を,低照度,中照度条件でコントラスト感度を測定した.全眼球収差は解析領域3mmでは全高次収差,コマ様収差において有意に非球面群が少なかった(p<0.05).解析領域5mmでは全高次収差,球面様収差,コマ様収差において有意に非球面群が少なかった(p<0.01).コントラスト感度は低照度で有意に非球面群が良好であった(p<0.01).TECNIS?ZA9003は従来の球面IOLに比べ,自覚的にも他覚的にも視機能をより改善できる可能性が示唆された.Weevaluatedaberrationandcontrastsensitivityafterimplantingasphericalandsphericalintraocularlenses(IOL).Weperformedphacoemulsi?cationin30patients(60eyes),implantingtheasphericalIOLTECNIS?ZA9003(AMO)inoneeyeandthesphericalIOLAcrySof?SA30AT(Alcon)inthefelloweye.Onemonthaftersurgery,aberrationwasmeasuredforthe3mmand5mmopticalzones,andcontrastsensitivitywasmeasuredunderhigh-mesopicandlow-mesopicconditions.Forthe3mmzone,totalhigherorderandcoma-likeaberrationsweresigni?cantlylower(p<0.05),andforthe5mmzonetotalhigherorder,spherical-likeandcoma-likeaberra-tionsweresigni?cantlylowerineyeswiththeasphericalIOL(p<0.01).EyeswiththeasphericalIOLhadsigni?cantlyhighercontrastsensitivityunderlow-mesopicconditions(p<0.01).TheTECNIS?ZA9003asphericalIOLledtobettersubjectiveandobjectivequalityofvisionthanthesphericalIOL.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(4):561~565,2008〕Keywords:収差,非球面,眼内レンズ,コントラスト感度.aberration,aspheric,intraocularlens,contrastsensi-tivity.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(140)コントラスト感度の比較は,各空間周波数におけるコントラスト感度の対数値と,AULCSF(areaunderthelogcon-trastsensitivityfunction)の値を計算し,検討した.AULCSFとは,プロットして得られたコントラスト感度の対数値を通る近似曲線の関数を求め,空間周波数の範囲で積分して求められた面積であり(図1),コントラスト感度の定量解析に有用であると,Applegateらにより報告されている14).統計解析にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い,p値が0.05未満を有意とした.II結果術前の背景として,球面群と非球面群間で眼軸長(非球面群:23.21±1.27mm,球面群:23.14±1.29mm),角膜屈折力(非球面群:44.91±1.63D,球面群:44.91±1.67D)に有意な差を認めなかった.術後,球面群と非球面群間で矯正視力,明所視,薄暮視瞳孔径に有意差を認めなかった.IOL度数は,非球面群が21.8±2.95D,球面群が21.0±2.77Dと有意差を認めた(pに,非球面形状にデザインされている.TECNIS?は,自覚的な視機能としては矯正視力やコントラスト感度,他覚的な視機能としては,波面収差において従来の球面IOLに比べて優れていると報告されている5~10)が,その間の見解はまだ一致していない.その理由として,波面センサーが規格統一されていないこと,収差測定値の解析方法が一致していないこと,視機能における収差の重要性が不確かであることなどがあげられる10).過去の報告で使用されているTECNIS?は,光学部がsili-cone素材のTECNIS?Z9000であり,筆者らが知る限り,acryl素材のTECNIS?ZA9003を検討した報告はない.今回筆者らは,TECNIS?ZA9003を使用し,非球面レンズによる波面収差とコントラスト感度について検討した.I対象および方法対象は,2006年11月から2007年3月の間に江口眼科病院にて超音波乳化吸引術およびIOL挿入術を施行し,術後3カ月以上経過観察を行えた30例60眼である.性別は男性9例18眼,女性11例22眼で,年齢は48~84歳で,平均70.5±8.0(平均±標準偏差)歳であった.白内障以外に視力低下の原因がある症例,術中,術後に合併症があった症例は除外した.対象患者には,事前に十分なインフォームド・コンセントを行い,同一患者の片眼に非球面IOLTECNIS?ZA9003(AMO社)(以下,非球面群),僚眼に球面IOLAcrySof?SA30AT(Alcon社)を左右ランダムに振り分けて挿入した(以下,球面群).手術は全例,CCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)を完成させ,2.8mmの上方強角膜創より,超音波乳化吸引術を施行し,IOLを?内固定した.術中にIOLのcentration,前?によるIOLのcompletecoverを確認した.術後1カ月で,矯正視力,等価球面度数,等価球面度数誤差量(術後等価球面度数-目標等価球面度数),波面収差,薄暮視・明所視瞳孔径,コントラスト感度を測定し,両群を比較した.瞳孔径の測定,波面収差解析は,波面センサーOPD-Scan?(NIDEK社)を用いて行った.解析領域は3mm,5mmとし,Zernikeの多項式で得られた4,6次成分の二乗和の平方根を球面様収差(S4+S6),3,5次成分の二乗和の平方根をコマ様収差(S3+S5),それらの総和を全高次収差(S3+S4+S5+S6)として,角膜,全眼球についてそれぞれ測定した.コントラスト感度は,VCTS6500?(Vistech社)を用いて測定した.非球面IOLは,より広瞳孔の際に非球面の効果が得られ,コントラスト感度が上昇するとされている.そこで,照度条件が10lux(低照度),200lux(中照度)となるように,照度計IM-5?(TOPCON社)にて調整して測定した.図1コントラスト感度の定量化(AULCSF)300.003.01.0320/10020/40220/50.1.31003010336121.518①②③④⑤⑥⑦⑧①②③④⑤⑥⑦⑧AULCSF=曲線下面積コントラスト感度コントラスト①②③④⑤⑥⑦⑧①②③④⑤⑥⑦⑧①②③④⑤⑥⑦⑧ABCDE空間周波数(cycles/degree)20/3020/2520/2020/15———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(141)ての空間周波数で有意差がなかったが,低照度条件(約10lux)では,低周波領域(1.5,3cycles/degree)にて有意に非球面群のほうが良好であった(p<0.05)(図4).AULCSF値を比較すると,中照度条件では有意差を認めなかったが,低照度条件では有意に非球面群のほうが高値を示した(p<0.01)(図5).<0.01).等価球面度数は,非球面群が-0.88±0.68D,球面群が-0.32±0.62Dと有意差を認め(p<0.01),等価球面度数誤差量においても,非球面群が-0.30±0.70D,球面群が0.23±0.57Dであり,有意差を認めた(p<0.01)(表1).各成分の収差解析の結果を図2に示す.角膜における球面様収差,コマ様収差,全高次収差,すべての成分で球面群と非球面群の間に有意差を認めなかった.全眼球では,解析領域3mmでは,コマ様収差(非球面群:0.09±0.04?m,球面群:0.12±0.06?m),全高次収差(非球面群:0.10±0.04?m,球面群:0.14±0.07?m)において,有意に非球面群のほうが少なかった(p<0.05).球面様収差(非球面群:0.04±0.01?m,球面群:0.05±0.03?m)では有意差を認めなかった.解析領域5mmでは,球面様収差(非球面群:0.13±0.04?m,球面群:0.25±0.09?m),コマ様収差(非球面群:0.28±0.14?m,球面群:0.41±0.18?m),全高次収差(非球面群:0.32±0.13?m,球面群:0.49±0.18?m)すべての成分で有意に非球面群のほうが少なかった(p<0.01).また,非球面群のほうが,全眼球の球面様収差が多い症例も数例認めた(図3).コントラスト感度は,中照度条件(約200lux)では,すべ3mm解析領域:非球面群球面様収差コマ様収差全高次収差球面様収差コマ様収差全高次収差5mm00.511.522.5収差(?m):球面群3mm解析領域:非球面群球面様収差コマ様収差全高次収差球面様収差コマ様収差全高次収差5mm00.10.20.30.40.5*******0.60.7収差(?m):球面群*p<0.01**p<0.05図2角膜成分の各収差(上)と全眼球成分の各収差(下)非球面群球面群球面収差00.050.10.150.20.250.30.35収差(?m)図3各症例における全眼球の球面収差の比較31.5121800.40.81.21.622.4中照度(200lux):非球面群空間周波数の対数値(cycles/degree)コントラスト感度の対数値6:球面群31.5121800.40.81.21.622.4低照度(10lux):非球面群空間周波数の対数値(cycles/degree)コントラスト感度の対数値6:球面群*p<0.05**———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(142)に少なかった一つの要因であると考えられる.以上より,非球面群は球面群に比べて,球面様収差,コマ様収差が少なく,他覚的な視機能において優れていることが示唆された.非球面IOL眼と球面IOL眼でのコントラスト感度を比較した報告は数多くある9~11,15).今回の結果では,非球面群が薄暮視下にてのみ,コントラスト感度が球面群に比べて有意に上昇した.Packerら6),Bellucciら8)は,いずれも薄暮視下にてTECNIS?Z9000が球面IOLに比べてコントラスト感度が良好だと報告している.また,Denoyerら7)は,TECNIS?Z9000は球面IOLであるCeeOn?Edge911に比較し,薄暮視下において高周波領域にてコントラスト感度が良好であることを示し,さらに球面収差はコントラスト感度に相関しないことを報告している.一方,Mu?ozら12)はTECNIS?Z9000と球面IOL間でコントラスト感度に統計学的な有意差は認めなかったと報告している.過去の報告において,結果が異なっている理由として,第1に,コントラスト感度は,自覚的なデータであるため,個人の主観によるバイアスがかかる可能性が高いことがあげられる.今回の検討は同一患者で比較しているため,この点は問題ないと考えられた.第2に,非球面IOL眼と球面IOL眼でのコントラスト感度の違いは,非常にわずかであり,従来の測定法では捉えることができないことがある.これはApplegateらにより報告されているAULCSFを用いることで,コントラスト感度全体を定量したものを比較することができ,より鋭敏に有意差を引き出すことが可能であった.第3に,色収差の違いがあげられる.色収差を表す指標としてアッベ数が使われており,レンズの素材・組成に特有の値となっている.一般的にsiliconeIOLはacrylIOLに比べて,アッベ数は低いため,色収差が大きくなる16).従来の報告で使用されているTECNIS?Z9000の光学部の材質はsiliconeであり,acrylの球面IOLと比較しているものが多いため,材質の違いもコントラスト感度に影響が出てしまっていると考えられる.また,同じacryl素材であっても,屈折率が変わればアッベ数も変わってくる.低屈折率ほどアッベ数は高値を示すといわれており,筆者らが使用したTECNIS?ZA9003(n=1.47)はAcrySof?SA30AT(n=1.55)に比べると屈折率は低いため,アッベ数は高値である.つまり,非球面群のほうがコントラスト感度が良好な理由として,色収差において優れているということも考えられる.したがって,非球面群は球面群に比べて,コントラスト感度などの自覚的な視機能においても優れていることが推察された.以上より,TECNIS?ZA9003は従来の球面IOLに比べて,他覚的にも自覚的にも視機能の向上を図ることが可能であることと考えられた.しかし,TECNIS?は角膜の球面収差を補正し,眼球全体での球面収差をゼロにするように設計されているため,角膜の球面収差が少ない症例では,かえってIII考察今回の結果では,球面様収差は,眼球全体で非球面群が球面群に比べて有意に少なかった.これは,TECNIS?の非球面性が角膜の球面収差を補正していることを示しており,過去のsilicone素材のTECNIS?Z9000を検討した報告に合致している7~9,12).眼球全体のコマ様収差が非球面群で,球面群に比べて有意に少なかった.一般に,非球面IOLは球面収差のみを考慮した設計になっており,眼光学的にはコマ収差を変化させるデザインにはなっていない.過去の報告では,他の球面IOLと比べても,眼球全体のコマ収差は有意差を認めなかったというものが多い7,9,12,13).コマ様収差の結果が過去の報告と異なる理由として,IOLのdecentrationとtiltが考えられる.非球面IOLはdecentrationとtiltに弱く,その値が一定以上になれば,球面IOLよりも収差が有意に増加し,さらにコントラスト感度が落ちるといわれており14),Holladayによれば,非球面IOLは,>0.4mmのdecentra-tion,>7?のtiltがあれば,非球面性による利点が失われるとされている5).非球面群が球面群に比べてコマ様収差が少なかったのは,よりdecentrationとtiltが少なかったと推察できる.球面群のAcrySof?SA30ATはシングルピースIOLで,支持部が太くて軟らかく,接合部の角度が0?であり,?との接触面積が大きくなり均等に力が加わるために,安定して固定されるとされており,以前の報告でもスリーピースIOLとシングルピースIOL間で,decentrationとtiltは同等であるといわれている15).しかし,TECNIS?ZA9003が光学部径6.0mmであるのに対し,AcrySof?SA30ATは5.5mmである.光学部径が小さければ,術後,前?によるIOL光学部のcoverが不完全になる可能性が高くなると推測されるため,AcrySof?SA30ATのほうがdecentrationとtiltが大きかったのではないかと考えられる.シングルピースIOLは,支持部,光学部の柔軟性,接合部の連続性が原因となり,スリーピースIOLに比べると,光学部自体の歪みが生じる可能性がある.つまり,TECNIS?ZA9003は光学部自体の歪みがより少ないというのも,コマ様収差が有意———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(143)8)BellucciR,ScialdoneA,BurattoLetal:VisualacuityandcontrastsensitivitycomparisonbetweenTecnisandAcrysofSA60ATintraocularlenses:amulticenterran-domizedstudy.???????????????????????31:712-717,20059)KasperT,B?hrenJ,KohnenTetal:Visualperformanceofasphericalandsphericalintraocularlenses:intraindi-vidualcomparisonofvisualacuity,contrastsensitivity,andhigher-orderaberrations.???????????????????????32:2022-2029,200610)BellucciR,MorselliS,PucciV:Sphericalaberrationandcomawithanasphericalandasphericalintraocularlensinnormalage-matchedeyes.???????????????????????33:203-209,200711)ApplegateRA,HowlandHC,SharpRPetal:Cornealaberrationsandvisualperformanceafterradialkeratoto-my.??????????????14:397-407,199812)Mu?ozG,Albarr?n-DiegoC,Mont?s-Mic?Retal:Sphe-ricalaberrationandcontrastsensitivityaftercataractsur-gerywiththeTecnisZ9000intraocularlens.??????????????32:1320-1327,200613)RochaKM,SorianoES,ChalitaMRetal:Wavefrontanal-ysisandcontrastsensitivityofasphericandsphericalintraocularlenses:arandomizedprospectivestudy.???????????????142:750-756,200414)AltmannGE,NichaminLD,LaneSSetal:Opticalperfor-manceof3intraocularlensdesignsinthepresenceofdecentration.???????????????????????31:574-585,200515)HayashiK,HayashiH:Comparisonofthestabilityof1-pieceand3-pieceacrylicintraocularlensesinthelenscapsule.???????????????????????31:337-342,200516)ZhaoH,MainsterMA:Thee?ectofchromaticdispersiononpseudophakicopticalperformance.????????????????91:1225-1229,2007IOLの非球面性が逆効果になってしまう可能性が示唆される.さらに,補正するべき角膜の球面収差のデータは白人のものであり,日本人に当てはまるかどうか評価が必要である.したがって今後,術前に角膜収差を測定し,IOLの選択をすることが必要になってくると考えられる.非球面IOLTECNIS?ZA9003は,症例を選び,問題なく手術が施行されれば,より優れた視機能の向上が期待できると考えられた.文献1)LiangJ,WilliamsDR:Aberrationsandretinalimagequalityofthenormalhumaneye.???????????