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CGT-2000を用いたコントラスト感度測定の再現性

2015年1月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科32(1):159.162,2015cCGT-2000を用いたコントラスト感度測定の再現性金澤正継*1,2魚里博*1,3,4川守田拓志*1,3浅川賢*1,3中山奈々美*5*1北里大学大学院医療系研究科視覚情報科学*2専門学校日本医科学大学校視能訓練士科*3北里大学医療衛生学部視覚機能療法学専攻*4新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科*5東北文化学園大学医療福祉学部視覚機能学専攻ReliabilityofContrastGlareTesterCGT-2000MeasurementMasatsuguKanazawa1,2),HiroshiUozato1,3,4),TakushiKawamorita1,3),KenAsakawa1,3)andNanamiNakayama5)1)DepartmentofVisualScience,KitasatoUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,2)DepartmentofOrthoptics,NihonIkagakuCollege,3)DepartmentofOrthopticsandVisualSciences,KitasatoUniversitySchoolofAlliedHealthSciences,4)DepartmentofOrthopticsandVisualSciences,NiigataUniversityofHealthandWelfare,5)DepartmentofRehabilitation,TohokuBunkaGakuenUniversityFacultyofMedicalScienceandWelfare健常被験者22名を対象に,コントラストグレアテスターCGT-2000(タカギセイコー)を用いてコントラスト感度を測定した.背景輝度は明所および薄暮の2条件とし,明所では100,000cd/m2,薄暮では40,000cd/m2のグレアを負荷した.測定は完全屈折矯正下,自然瞳孔のまま両眼開放にて行った.再現性の解析は,Bland-Altman解析から得られた2回測定の95%一致限界(95%limitsofagreement:LoA)により評価した.その結果,LoAは低空間周波数と高空間周波数との間に差を認めたが,良好な再現性を示した.ThepurposeofthisstudywastoevaluatethereliabilityofmeasurementwiththecontrastglaretesterCGT2000(TAKAGISEIKO,Co.,Ltd.Nagano,Japan).Thesubjectswere22healthyvolunteers.Contrastsensitivity(CS)wasmeasuredunderphotopicvisionandmesopicvision,withorwithoutglare.Glareintensitywas100,000cd/m2inphotopicvisionand40,000cd/m2inmesopicvision.BinocularCSwasmeasuredwithspectaclecorrectioninnon-cycloplegiceyeswithnaturalpupils.Thestatisticalanalysisconsistedof95%limitsofagreement(LoA),usingtheBland-Altmanmethod.CGT-2000measurementwasquitereliable,butthereweredifferencesinLoAbetweenlowspatialfrequencyandhighspatialfrequency.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(1):159.162,2015〕Keywords:コントラスト感度,再現性,Bland-Altman解析.contrastsensitivity,repeatability,Bland-Altmanmethods.はじめにコントラスト感度およびグレアテストは,視力に比べてより広い範囲の形態覚を定量的に測定することにより,qualityofvision(QOV)や散乱光が生じやすい視機能の変化を評価するための指標となっている1,2).その一方で,外部視標を用いた場合,印刷面の劣化や環境照度の影響を受けやすく3),多施設でのデータ収集時には測定環境が統一しきれないという制限があった.特にグレア下におけるコントラスト感度の測定機器は外部視標に代表されるため,再現性についての問題が指摘されていた4).近年,内部視標を用いたグレアテストが可能なコントラストグレアテスターCGT-2000が登場した.そこで,本研究ではCGT-2000の再現性について検討を行ったので報告する.I対象および方法1.対象対象は屈折異常以外に眼疾患のない年齢18.32歳(24.4±4.2歳,平均±標準偏差,以下,同様)の男性11名,女性11名,計22名とした.自覚的屈折度数(等価球面値)は.2.20±2.43Dであった.被験者は片眼の小数視力が左右眼それぞれ1.0以上を有する者を対象とした.また,被験者にはヘルシンキ宣言の理念を踏まえ,事前に実験の目的を説明し,本人から自由意思による同意を得たうえで行った.〔別刷請求先〕魚里博:〒950-3198新潟市北区島見町1398番地新潟医療福祉大学医療技術学部視機能科学科Reprintrequests:HiroshiUozato,DepartmentofOrthopticsandVisualSciences,NiigataUniversityofHealthandWelfare,1398Shimami-chou,Kita-ku,Niigata-shi,950-3198,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(159)159 表1グレアなしの条件におけるBland-Altman解析の結果明所グレアなし薄暮グレアなし空間周波数(cpd)平均2標準偏差(LoA)平均2標準偏差(LoA)1.10.007±0.06(.0.06.0.07)0.007±0.06(.0.05.0.07)1.8.0.007±0.06(.0.07.0.06)0.020±0.14(.0.12.0.16)2.9.0.007±0.06(.0.07.0.06)0.030±0.18(.0.15.0.21)4.50.014±0.25(.0.24.0.26)0.000±0.36(.0.36.0.36)7.10.002±0.36(.0.36.0.36).0.042±0.45(.0.49.0.41)10.2.0.026±0.38(.0.40.0.35).0.022±0.46(.0.48.0.44)表2グレアありの条件におけるBland-Altman解析の結果明所グレアあり薄暮グレアあり空間周波数(cpd)平均2標準偏差(LoA)平均2標準偏差(LoA)1.10.000±0.00(0.00)0.000±0.00(0.00)1.80.000±0.00(0.00)0.007±0.14(.0.13.0.15)2.90.000±0.00(0.00)0.020±0.34(.0.32.0.36)4.50.034±0.23(.0.20.0.27)0.021±0.43(.0.41.0.45)7.1.0.003±0.47(.0.47.0.46)0.037±0.34(.0.30.0.37)10.2.0.034±0.44(.0.47.0.40)0.031±0.29(.0.26.0.32)2.方法測定機器には,タカギセイコー社製コントラストグレアテスターCGT-2000(図1A,以下,CGT-2000)を用いた.CGT-2000はBadal光学系で設計されており,視標は内蔵されている二重輪視標を用いる(図1B).視標サイズは6.3,4.0,2.5,1.6,1.0および0.6°の6種類からなり,空間周波数に換算するとそれぞれ1.1,1.8,2.9,4.5,7.1および10.2cycles/degree(以下,cpd)に相当する.条件は光学的距離5m,呈示時間0.8秒に設定し,背景輝度は明所(100cd/m2)および薄暮(10cd/m2)の2条件とした.また,2条件ともグレア光(高輝度白色LED)を照射した測定も行い,グレア光の強さは明所で100,000cd/m2,薄暮で40,000cd/m2とした5).薄暮の条件では,測定前に15分間の暗順応を行った.測定は被験者の応答に従って自動的に進められ,被験AB図1コントラストグレアテスターCGT-2000(A)と二重輪視標(B)者には二重輪が見えた段階でボタンを押すように指示した6).測定条件は,被験者に遠方完全屈折矯正レンズを装用させ,自然瞳孔のまま両眼開放にて,同一検者による2回のコントラスト感度測定を行った.2回の測定は,15分以上の時間を空けた.統計学的解析には,Bland-Altman解析7)から得られた2回測定の95%一致限界(95%limitsofagreement:LoA)8)により,CGT-2000の再現性を評価した.LoAは,2回の測定値の差の平均をd,2回の測定値の差の標準偏差をSDd,95%信頼区間のz値である1.96とした場合,「LoA=d±1.96×SDd」の式を用いて算出した8,9).II結果1回目と2回目の測定値を比較した結果,両者に差は認められなかった(対応のあるt検定,p>0.05).一方,Bland-Altman解析の結果,明所グレアなしのLoAは,1.1.2.9cpdが±0.06と一定であり,4.5.10.2cpdは,それぞれ±0.25,±0.36,±0.38へと増加した(表1).薄暮グレアなしでは,空間周波数が高くなるに従い,±0.06,±0.14,±0.18,±0.36,±0.45,±0.46と増加した.また,明所グレアありのLoAは,1.1.2.9cpdが±0.00と一定であり,4.5cpdが±0.23,7.1cpdと10.2cpdが±0.47および±0.44であった(表2).薄暮グレアありでは,1.1.10.2cpdまでそれぞれ±0.00,±0.14,±0.34,±0.43,±0.34,±0.29であり,中空間周波数においてLoAが大きくなる傾向にあった.各160あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(160) 条件における結果を図2に示す.III考按今回,健常若年者を対象に,CGT-2000の再現性をBland-Altman解析から得られた95%一致限界により評価した.まず,Bland-Altman解析から得られた2回測定の差の平均は±0.05logCS以内であった.この値が正あるいは負の値のどちらかに偏った場合,測定機器の設計および構造による影響や,測定時における練習効果や疲労の影響によるものとされる.今回,CGT-2000の測定が1段階を0.15logCS単位で行うことを考慮すると,上記の影響は無視できる範囲内と考えられた.つぎに,本検討で得られた2標準偏差(LoA)は最小で±0.00,最大で±0.46であった.先行研究では測定機器が異なるものの,Hongら9)が±0.16.±0.23,Pesudovsら11)が±0.22.±0.45,Kellyら4)が±0.39.±0.58,Reevesら10)が±0.59.±0.83と報告しており,CGT-2000のばらつきは小さく,再現性は良好であることが示唆された.ただし,高空間周波数になるに従いLoAは広がる傾向にあり9),logCS単位で2.3段階に相当した.そのため,高空間周波数のばらつきが大きいことに留意する必要がある.個別で比較すると,グレアなしの条件ではおおむね2段階のばらつきにおさまり,既報12)のとおり,グレアありの条件と比して再現性は良好となった.その原因については,レンズの反射率が視力に影響すると指摘されており13),再現性が低下した原因として眼鏡レンズの反射によるものと推察された.すなわち,屈折矯正のために使用した眼鏡によりグレア光の反射が変化し,結果として再現性が低下したと考えられる.ただし,明所グレアありの条件では,低空間周波数において22名の測定値が完全に一致し,高い再現性を得た.これは,測定条件および屈折矯正により被験者の視機能を統一できた結果と解釈することができる.また,明所と比して薄暮での測定では,若干ながら再現性が低下した.この傾向はHohbergerらの研究14)を支持する結果であり,暗順応の影響が考えられた.すなわち,事前に15分間の暗順応を行う条件は統一したが,実際に順応状態を測定しておらず,順応時間には個人差が認められる15)ため,両条件におけるLoAに差が生じた可能性がある.最後に,本検討で得られた測定値はBand-Pass型ではなく,Low-Pass型の傾向がみられた.一般にLow-Pass型は眼光学系を,Band-Pass型は網膜以降を含めた視覚系全体を評価することにより得られるとされている3).CGT-2000の測定における特徴は,Badal光学系を用いた字ひとつ視標であること,縞視標ではなく二重輪視標であること,視標の方向(切れ目)を問う過程が省略されていることが挙げられる.Low-Pass型を示した原因との関係は不明であるが,測(161)明所グレアなし薄暮グレアなしlogコントラスト感度logコントラスト感度2.52.01.51.00.50.01.11.82.94.57.110.21.11.82.94.57.110.2空間周波数(cpd)空間周波数(cpd)明所グレアあり薄暮グレアあり2.52.01.51.00.50.01.11.82.94.57.110.21.11.82.94.57.110.2空間周波数(cpd)空間周波数(cpd)図24条件におけるコントラスト感度の平均と2回測定の一致限界黒線は各条件における22名の被験者のコントラスト感度の平均を,網掛けは2回測定の一致限界(LoA)を示す.定方法の相違により,他機種と単純な比較ができない可能性があり,注意を要する.本検討では,タカギセイコー社製のCGT-2000を用い,Bland-Altman解析からコントラスト感度およびグレアテストの再現性を評価した.その結果,CGT-2000による測定は良好な再現性を有することが示唆された.本論文の要旨は,第49回日本眼光学学会(京都)にて発表した.文献1)ShimizuK,KamiyaK,IgarashiAetal:Intraindividualcomparisonofvisualperformanceafterposteriorchamberphakicintraocularlenswithandwithoutacentralholeimplantationformoderatetohighmyopia.AmJOphthalmol154:486-494,20122)MunozG,Belda-SalmeronL,Albarran-DiegoCetal:Contrastsensitivityandcolorperceptionwithorangeandyellowintraocularlenses.EurJOphthalmol22:769-775,20123)魚里博,中山奈々美:視力検査とコントラスト感度.あたらしい眼科26:1483-1487,20094)KellySA,PangY,KlemencicS:ReliabilityoftheCSV1000inadultsandchildren.OptomVisSci89:1172あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015161 1181,20125)KanazawaM,UozatoH:Relationshipbetweenabsorptivelensesandcontrastsensitivityinhealthyyoungsubjectswithglareunderphotopic-andmesopic-visionconditions.OpticalReview20:282-287,20136)金澤正継,魚里博:周辺視野のグレア光がコントラスト感度に与える影響.視覚の科学.視覚の科学34:86-90,7)BlandM,AltmanDG:Statisticalmethodsforassessingagreementbetweentwomethodsofclinicalmeasurement.Lancet1:307-310,19868)KawamoritaT,UozatoH,KamiyaKetal:Repeatability,reproducibility,andagreementcharacteristicsofrotatingSheimpflugphotographyandscanning-slitcornealtopographyforcornealpowermeasurement.JCataractRefractSurg35:127-133,20099)HongYT,KimSW,KimEKetal:Contrastsensitivitymeasurementwith2contrastsensitivitytestsinnormaleyesandeyeswithcataract.JCataractRefractSurg36:547-552,201010)ReevesBC,WoodJM,HillAR:VistechVCTS6500Charts-within-andbetween-sessionreliability.OptomVisSci68:728-737,199111)PesudovsK,HazelCA,DoranRMetal:TheusefulnessofVistechandFACTcontrastsensitivitychartsforcataractandrefractivesurgeryoutcomesresearch.BrJOphthalmol88:11-16,200412)ElliottDB,BullimoreMA:Assessingthereliability,discriminativeability,andvalidityofdisabilityglaretests.InvestOphthalmolVisSci34:108-119,199313)和氣典二,平野邦彦,和氣洋美ほか:種々の照明状況下の視力と眼鏡.日本眼光学学会誌11:43-53,199014)HohbergerB,LaemmerR,AdlerWetal:MeasuringcontrastsensitivityinnormalsubjectswithOPTEC6500:influenceofageandglare.GraefesArchClinExpOphthalmol245:1805-1814,200715)PatryasL,ParryNR,CardenDetal:Assessmentofagechangesandrepeatabilityforcomputer-basedroddarkadaptation.GraefesArchClinExpOphthalmol251:18211827,2013***162あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(162)