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バルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮症候群の1例

2018年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(1):149.151,2018cバルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮症候群の1例福戸敦彦木内良明広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門視覚病態学CBaerveldtGlaucomaImplantSurgeryforIridocornealEndothelialSyndromeAtsuhikoFukutoandYoshiakiKiuchiCDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalScicnces,HiroshimaUniversity複数回の線維柱帯切除術を行ったが,良好な眼圧コントロールが得られずバルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮(ICE)症候群のC1例を経験したので報告する.症例はC66歳,男性.線維柱帯切開術をC1回,線維柱帯切除術をC3回,濾過胞再建術をC4回行ったが,眼圧コントロール不良であり,視野障害が進行し当科紹介となった.左眼CCogan-Reese症候群による続発緑内障と診断し,バルベルト緑内障インプラント手術を行った.術後C1年以上C22mmHg未満の眼圧を維持している.バルベルト緑内障インプラント手術はCICE症候群による続発緑内障に対して有効であった.CWereportthecaseofapatientwhounderwentBaerveldtglaucomaimplantsurgeryforiridocornealendothe-lialCsyndromeCbecauseCgoodCintraocularCpressureCcontrolCwasCnotCprovidedCbyCrepeatedCtrabeculectomy.CTheCpatient,a66-year-oldmale,hadundergonetrabeculotomyonce,trabeculectomythreetimesandblebrevisionfourtimesinhislefteye.Sincethoseprocedureshadbeenine.ectiveinreducinghisintraocularpressureandleftvisu-al.eldhadsubsequentlydeteriorated,hewasreferredtoourhospital.WediagnosedsecondaryglaucomaduetoCogan-ReeseCsyndromeCandCthereforeCperformedCBaerveldtCglaucomaCimplantCsurgery.CIntraocularCpressureCwasCmaintainedatlessthan22CmmHgforover12monthssincethelastsurgery.Baerveldtglaucomaimplantsurgeryseemstobee.ectiveinglaucomasecondarytoiridocornealendothelialsyndrome.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(1):149.151,C2018〕Keywords:虹彩角膜内皮症候群,Cogan-Reese症候群,バルベルト緑内障インプラント.ICEsyndrome,Cogan-Reesesyndrome,Baerveldtglaucomaimplant.Cはじめに虹彩角膜内皮(iridocornealCendothelial:ICE)症候群は片眼性で角膜内皮異常,周辺虹彩前癒着,虹彩異常,続発緑内障を特徴とする疾患である.ICE症候群による緑内障はしばしば難治性で,点眼による眼圧コントロールが困難となった場合にはおもに線維柱帯切除術が行われてきた.一方,従来の緑内障手術が実施困難な症例や施行したものの奏効しなかった症例などに限定して,チューブシャント手術がわが国でも近年承認された.今回,複数回の緑内障手術を行ったが良好な眼圧コントロールが得られず,バルベルト緑内障インプラント手術を行ったCICE症候群のC1例を経験したので報告する.CI症例66歳,男性.主訴は左眼の視野狭窄である.左眼開放隅角緑内障と診断されC2005年までに白内障手術をC1回,線維柱帯切開術をC1回,線維柱帯切除術をC3回,濾過胞再建術を4回行ったが,2015年C5月から眼圧がC20CmmHgを超え,視野も悪化したためC2015年C9月に広島大学病院眼科に紹介されて受診した.初診時の視力は右眼C1.0(1.2C×sph+1.25D(cyl.0.5DAx80°),左眼C0.3(0.5C×sph.0.75D(cyl.1.75DCAx90°)〔別刷請求先〕福戸敦彦:〒734-8551広島市南区霞C1-2-3広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門視覚病態学Reprintrequests:AtsuhikoFukuto,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,HiroshimaUniversity,1-2-3Kasumi,Minami-ku,Hiroshima734-8551,JAPAN0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(149)C149図1初診時左眼前眼部写真6時にきのこ状の虹彩結節がある.図3術後前眼部写真チューブの先端は後房に位置している.で,眼圧は右眼C14CmmHg,左眼C18CmmHgであった.右眼は前眼部,中間透光体および眼底に特記すべき所見はなかった.左眼は角膜に混濁や浮腫はなく,前房は正常深度で炎症細胞はなかった.瞳孔の偏位はなく,ぶどう膜外反もなかった.下方の虹彩表面に亜有茎性の結節があったが,萎縮巣や孔形成はなかった(図1).下方隅角に広範な周辺虹彩前癒着があった.左眼視神経乳頭は蒼白で陥凹拡大があった.スペキュラーマイクロスコープ検査では角膜内皮細胞密度は右眼2,222個/mmC2,左眼C1,541個/mmC2と左眼で減少していた.左眼の内皮細胞は大小不同があり,細胞内に暗調な部分があった(図2).視野は湖崎分類で右眼Ia,左眼CIIIaであった.経過:左眼CCogan-Reese症候群による続発緑内障と診断し,2015年C11月左眼耳下側にバルベルト緑内障インプラントCBG101-350を挿入した.結膜切開は円蓋部基底で行い,プレートを下直筋と外直筋の下に挿入し,7-0シルクで固定図2左眼スペキュラーマイクロスコープa:右眼.Cb:左眼.左眼の角膜内皮細胞は境界が不鮮明で大小不同が目立ち,細胞内にCdarkareaがある.Cした.術直後の低眼圧を予防するためC3-0ナイロン糸をチューブ内に留置した.チューブを後房に挿入しC8-0バイクリル糸で結紮し,SherwoodCslitを作製した(図3).8-0バイクリル糸で結膜縫合し閉創した.術後C22日でチューブ内の3-0ナイロン糸を抜去した.術後C1年が経過し,ビマトプロスト点眼,ブリンゾラミド・チモロール配合剤点眼,ブリモニジン点眼の併用で左眼眼圧はC16.19CmmHgとコントロール良好であった.また術後合併症としてチューブの露出や閉塞はなく,術後の角膜内皮細胞密度はC1,770個/mmC2と減少していなかった.CII考按ICE症候群は,異常な角膜内皮細胞が増殖膜となり前房隅角を障害する開放隅角緑内障や,増殖膜の収縮により幅広い周辺虹彩前癒着を形成する閉塞隅角緑内障が起こり,高率に緑内障を合併する1).Cogan-Reese症候群,Chandler症候群,進行性虹彩萎縮の三つのサブタイプが存在し,Cogan-Reese症候群は虹彩表面の結節を伴い,Chandler症候群は虹彩にほとんど異常を示さず,進行性虹彩萎縮は虹彩の萎縮が強く,孔形成を伴う2).本症例は角膜内皮細胞の減少と形態異常に加えて,片眼性の虹彩結節が観察されたためCCogan-Reese症候群と診断した.典型例では色素を伴った結節が虹彩表面に多数観察されるが,本症例では虹彩の変化は比較的軽微であった.また初診時には虹彩の異常がなくCChandler症候群と診断されたが,経過観察中に虹彩結節が出現し150あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(150)Cogan-Reese症候群と診断が変更された症例も報告されており3),本症例も前医ではCCogan-Reese症候群との診断に至らなかったと思われた.Cogan-Reese症候群は異常な角膜内皮細胞が線維柱帯に限局するCChandler症候群と比べて緑内障が重症化しやすく,また線維柱帯切除術による眼圧コントロールが困難であると考えられている4).ICE症候群による緑内障は難治性で薬物療法にしばしば抵抗を示し,マイトマイシンCC併用線維柱帯切除術が行われてきた5).その後チューブシャント手術が登場し,ICE症候群に続発する緑内障に対する代謝拮抗薬(マイトマイシンCCもしくはC5-FU)併用線維柱帯切除術とチューブシャント手術の術後成績を比較し,1年生存率はほぼ同等だがC3年生存率やC5年生存率といった長期予後はチューブシャント手術が有意に良好であったと報告されている4).わが国においてCICE症候群に対しチューブシャント手術を行ったという報告は少ないが,Chandler症候群に対して線維柱帯切除術併用バルベルト緑内障インプラント手術を行った報告があり,術後経過観察期間はC5カ月と短期ではあるが十分な眼圧下降が得られている6).今回すでに複数回の線維柱帯切除術や濾過胞再建術を行っており,またCICE症候群のなかでも眼圧コントロールが困難なCCogan-Reese症候群であることからチューブシャント手術を選択した.バルベルト緑内障インプラントには前房挿入型のCBG103-250,BG101-350と硝子体切除を要する毛様体扁平部挿入型のCBG102-350がある.浅前房や角膜移植後といったチューブを前房に挿入すると角膜内皮代償不全を起こしやすい症例に対してチューブを後房に挿入すると,角膜内皮保護に有効であったと報告されている7).本症例も角膜内皮細胞数がやや少ない症例であり,チューブが角膜内皮に接触するのを防ぐため,本来前房に挿入するCBG101-350のチューブを後房に挿入した.術後C1年の経過観察で,良好な眼圧コントロールが得られており,角膜内皮も減少しなかった.しかし,ICE症候群は進行性の疾患であり,周辺虹彩前癒着が拡大して隅角閉塞を起こし眼圧が上昇してくる可能性がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)LaganowskiHC,KerrMuirMG,HitchingsRA:GlaucomaandCtheCiridocornealCendothelialCsyndrome.CArchCOphthal-molC110:346-350,C19922)ShieldsMB:Progressiveessentialirisatrophy,Chandler’ssyndrome,andtheirisnevus(Cogan-Reese)syndrome:aspectrumofdisease.SurvOphthalmolC24:3-20,C19793)WilsonCMC,CShieldsCMB:ACcomparisonCofCtheCclinicalCvariationsCofCtheCiridocornealCendothelialCsyndrome.CArchCOphthalmolC107:1465-1468,C19894)DoeEA,BudenzDL,GeddeSJetal:Long-termsurgicaloutcomesCofCpatientsCwithCglaucomaCsecondaryCtoCtheCiri-docornealCendothelialCsyndrome.COphthalmologyC108:C1789-1795,C20015)LanzlIM,WilsonRP,DudleyDetal:Outcomeoftrabec-ulectomywithmitomycin-Cintheiridocornealendothelialsyndrome.OphthalmologyC107:295-297,C20006)川守田珠里,濱中輝彦,百野伊恵:高度の高眼圧を示す症例に対する線維柱帯切除術併用チューブシャント手術─病理学的検査から判明したCChandler症候群.あたらしい眼科C31:1215-1218,C20147)WeinerCA,CCohnCAD,CBalasubramaniamCMCetCal:Glauco-maCtubeCshuntCimplantationCthroughCtheCciliaryCsulcusCinCpseudophakiceyeswithhighriskofcornealdecompensa-tion.JGlaucomaC19:405-411,C2010***(151)あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C151