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Microhook trabeculotomy の術後6 カ月成績の検討

2021年8月31日 火曜日

《第31回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科38(8):959.962,2021cMicrohooktrabeculotomyの術後6カ月成績の検討青木良太*1野口明日香*1田淵仁志*1中倉俊祐*1木内良明*2*1三栄会ツカザキ病院眼科*2広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学CExaminationoftheSurgicalOutcomesofMicrohookTrabeculotomyat6-MonthsPostoperativeRyotaAoki1),AsukaNoguchi1),HitoshiTabuchi1),ShunsukeNakakura1)andYoshiakiKiuchi2)1)DepartmentofOphthalmology,SaneikaiTsukazakiHospital,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,HiroshimaUniversityC目的:Microhooktrabeculotomy(以下,μLOT)の術後成績について報告する.対象および方法:ツカザキ病院眼科でCμLOTを施行した緑内障手術既往のないC62眼(単独手術C17眼,白内障同時手術C45眼)を対象とした.術前および術後C1,C3,6カ月の眼圧と点眼スコア,緑内障手術追加の有無,合併症を後ろ向きに検討した.結果:単独群の平均年齢はC57.4C±19.1歳,術前および術後C6カ月の眼圧はそれぞれC23.2C±5.1,15.2C±4.0CmmHgであり,白内障同時群の平均年齢はC72.5C±9.7歳,眼圧はそれぞれC18.5C±3.4,13.1C±2.6CmmHgであった.術後C6カ月で両群とも有意に眼圧は下降していた(p<0.01).単独群の術前および術後C6カ月の点眼スコアはそれぞれC3.1C±1.2,2.0C±1.3であり,白内障同時群ではそれぞれC2.3C±1.3,1.0C±0.9であった.術後C6カ月で単独群では有意な減少を認めなかったが(p>0.05),白内障同時群では有意に減少した(p<0.01).結論:術後C6カ月ではあるが,μLOTで良好な眼圧を得られた.CPurpose:ToCreportCtheCsurgicalCoutcomesCofCmicrohooktrabeculotomy(μLOT)C.Methods:InC62CeyesCthatCunderwentμLOT(17CμLOTCsingle-surgeryCeyes,CandC45CμLOT-Phacoeyes)C,Cpre-andCpostoperativeCintraocularpressure(IOP)andmedicationscoreswereretrospectivelyreviewed.Results:ThemeanpatientageintheμLOTandCμLOT-PhacoCgroupsCwasC57.4±19.1CyearsCandC72.5±9.7Cyears,Crespectively.CAtC6-monthsCpostoperative,CtheCmeanCIOPCdecreaseCinCtheCμLOTCgroupCandCμLOT-PhacoCgroupCeyesCwasCfromC23.2±5.1CmmHgCtoC15.2±4.0mmHg(p<0.01)C,CandCfromC18.5±3.4CmmHgCtoC13.1±2.6CmmHg(p<0.01)C,Crespectively.CTheCpreoperativeCandC6-monthsCpostoperativeCmedicationCscoresCwereC3.1±1.2CandC2.0±1.3(p>0.05)intheμLOTCgroupCandC2.3±1.3CandC1.0±0.9(p<0.01)intheμLOT-PhacoCgroup,Crespectively.CConclusion:AtC6-monthsCpostCsurgery,CourC.ndingsrevealedgoodIOPinbothμLOTandμLOT-Phacogroupeyes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(8):959.962,C2021〕Keywords:谷戸式microhook,線維柱帯切開術,MIGS.Tanitomicrohookabinterno,trabeculotomy,minimallyinvasiveglaucomasurgery.Cはじめにトラベクレクトミーやプローブトラベクロトミーなどの眼外からの緑内障手術は古くから行われてきたが,近年,前房内から隅角にアプローチする術式が広まってきている.前房内からのアプローチで線維柱帯の抵抗を軽減させるための術式としてトラベクトーム,KahookDualBlade,microhook,5-0ナイロン糸を使う方法がある1).Microhookを用いた術式は,強膜フラップを作製せずに眼内から施行できる新しい術式であり,TanitoらによってCmicrohookCtrabeculotomy(μLOT)として報告された2).μLOTのメリットとしては2/3周という広範囲の切開が可能であること,手術手技が複雑でないこと,眼表面への侵襲が少ないこと,手術時間が短いことがあげられる3).μLOTの術後成績は報告されはじめている4.7)が,その数はまだ多くはない.そこで今回,μLOTの術後成績について検討したので報告する.〔別刷請求先〕青木良太:〒671-1227兵庫県姫路市網干区和久C68-1三栄会ツカザキ病院眼科Reprintrequests:RyotaAoki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SaneikaiTsukazakiHospital,68-1AboshikuWaku,Himeji-shi,Hyogo671-1227,JAPANCI対象および方法2019年C2月.2020年C5月にツカザキ病院眼科でCμLOTを施行した緑内障手術既往のないC62眼を対象とした.対象のうちC17眼が単独手術(以下,単独群),45眼が白内障同時手術(以下,白内障同時群)であり,各群の患者背景は表1に示すとおりであった.両群の術前および術後C1,3,6カ月の眼圧と点眼スコア,緑内障手術追加の有無,術後合併症の有無を後ろ向きに検討した.合併症の前房出血はニボーを伴うもの,一過性眼圧上昇はC30CmmHgを超えるものと定義した.点眼スコアは緑内障点眼薬C1種類につきC1点(配合剤は2点),アセタゾラミド内服をC1点とした.眼圧および点眼スコアはCDunnett法を用いて検定した.手術はC2名の術者(SNおよびCRA)によって施行した.単独群,白内障同時群ともに線維柱帯切開部位は,180°切開例では鼻側および下方,240°切開例では上方,鼻側,下方であった.白内障同時群では水晶体再建術を先行して行い,眼内レンズ挿入後に線維柱帯切開を施行した症例がC28眼,先に線維柱帯切開を行った症例がC17眼であった.白内障同時群における手術手順と合併症の関連についてはCFisherの直接確率計算法を用いて検定した.術後点眼はC2名の術者それぞれの判断で管理された.両名とも術直後は緑内障点眼をすべて中止し,術後C1カ月頃から目標眼圧に応じて緑内障点眼を再開した.ただし術後に眼圧上昇を認めた症例は,必要であればその時点から緑内障点眼を再開,もしくはアセタゾラミド内服薬を投与した.また,術直後から術後C1.3カ月までピロカルピン点眼を行った.表1両群の患者背景単独群白内障同時群症例数15例17眼29例45眼年齢(平均C±標準偏差)C57.4±19.1歳C72.5±9.7歳性別男性女性9例9眼6例8眼8例11眼21例34眼緑内障病型原発開放隅角緑内障原発閉塞隅角緑内障落屑緑内障混合型緑内障正常眼圧緑内障ステロイド緑内障若年性緑内障8眼(4C7.1%)0眼5眼(2C9.4%)0眼0眼3眼(1C7.6%)1眼(5C.9%)32眼(C71.1%)5眼(1C1.1%)3眼(6C.7%)3眼(6C.7%)2眼(4C.4%)0眼0眼Humphrey視野計C24-2のMD値(平均C±標準偏差)C.6.4±5.2CdBC.10.5±5.5CdB切開範囲(平均C±標準偏差)C189±31°C175±22°MD:meandeviation本研究はヘルシンキ宣言に則って行い,対象患者からは事前にインフォームド・コンセントを得た.また,ツカザキ病院の倫理委員会で承認を得たうえで行った.CII結果単独群の術前および術後C1,3,6カ月の眼圧はそれぞれC23.2C±5.1,17.2C±4.3,15.3C±1.9,15.2C±4.0mmHgであり,白内障同時群ではそれぞれC18.5C±3.4,13.7C±3.4,12.9C±3.0,C13.1±2.6CmmHgであった.両群とも術後すべての時点で術前と比較して有意に眼圧は下降していた(p<0.01,Dunnett法)(表2).単独群の術前および術後C1,C3,6カ月の点眼スコアはそれぞれC3.1C±1.2,0.5C±1.1,1.4C±1.2,2.0C±1.3であり,白内障同時群ではそれぞれC2.3C±1.3,0.3C±0.7,0.9C±1.0,1.0C±0.9であった.単独群の術後C1,3カ月,白内障同時群の術後すべての時点で術前と比較して有意に点眼スコアは減少しており(p<0.01,Dunnett法),単独群の術後C6カ月では有意差を認めなかった(p>0.05)(表2).単独群ではニボーを伴う前房出血がC4眼(23.5%),30CmmHgを超える一過性眼圧上昇がC3眼(17.6%)あり,白内障同時群では前房出血を3眼(6.7%),一過性眼圧上昇をC6眼(13.3%)に認めた(表3).白内障同時群で術後前房出血をきたしたC3眼のうち,2眼は眼内レンズ挿入後に線維柱帯を切開した症例であり,1眼は先に線維柱帯切開を行った症例であった.また,一過性眼圧上昇をきたしたC6眼は全例眼内レンズ挿入後に線維柱帯を切開した症例であった.手術手順と前房出血には関連はなく(p=0.68,Fisherの直接確率計算法),一過性眼圧上昇は先に水晶体再建術を行い眼内レンズ挿入後に線維柱帯を切開した症例で有意に多かった(p=0.046)(表3).両群とも術後前房出血をきたした症例は,全例経過観察のみで軽快した.単独群では緑内障手術の追加例はなく,白内障同時群では術後C4カ月目にC1眼に線維柱帯切除術を追加施行した.CIII考按本検討では単独群,白内障同時群ともに術後C6カ月で有意に眼圧は下降しており,点眼スコアは白内障同時群のみで有意な減少を認めた.過去の報告ではCμLOT単独手術では術前眼圧C25.9C±14.3mmHgから術後C6カ月でC14.5C±2.9CmmHgまで下降し,点眼スコアもC3.3C±1.0からC2.6C±0.5に減少した4)との報告や,術前眼圧C28.4C±7.8CmmHgから術後C12カ月にC17.8C±6.3CmmHgまで下降し,点眼スコアはC4.9C±1.1からC3.1C±1.6になった5)との報告がある.目標眼圧の違いによる術後点眼スコアの差が術後眼圧の差に影響している可能性はあるが,本検討の単独群は既報と同程度の術後眼圧が得られたと考える.本検討単独群の術後C6カ月の点眼スコアは術前と比較して有意差は認められなかったが,既報4.7)からは術前眼圧が高いほど術表2術前および術後1,3,6カ月の眼圧,点眼スコア単独群白内障同時群眼圧点眼スコア眼圧点眼スコア平均±標準偏差p値*平均±標準偏差p値*平均±標準偏差p値*平均±標準偏差p値*術前C23.2±5.1C3.1±1.2C18.5±3.4C2.3±1.3術後C1カ月C17.2±4.3<C0.01C0.5±1.1<C0.01C13.7±3.4<C0.01C0.3±0.7<C0.01術後C3カ月C15.3±1.9<C0.01C1.4±1.2<C0.01C12.9±3.0<C0.01C0.9±1.0<C0.01術後C6カ月C15.2±4.0<C0.01C2.0±1.3>C0.05C13.1±2.6<C0.01C1.0±0.9<C0.01*Dunnett法.術後各時点の値を術前と比較した.表3合併症単独群白内障同時群p値*前房出血4眼(2C3.5%)水晶体再建術から施行2眼C3眼(6C.7%)線維柱帯切開から施行1眼0.68一過性眼圧上昇3眼(1C7.6%)水晶体再建術から施行6眼C6眼(1C3.3%)線維柱帯切開から施行0眼0.046*Fisherの直接確率計算法.白内障同時群の手術手順と合併症の関連性を検定した.後眼圧も高く,術後点眼スコアも大きくなる可能性が考えられる.単独群の術前眼圧がC23.2CmmHgであったことを考えると,術後点眼スコアは減少しにくいと考えられる.また,独群は症例数が多くないことも有意差が出なかった一因になっている可能性がある.白内障同時手術では術前眼圧C16.4C±2.9CmmHgから術後C1年でC11.2C±2.2mmHgに下降し,点眼スコアC2.4C±1.2からC2.0±0.9になった6)との報告や,術前眼圧C19.0C±5.72CmmHgから術後C6カ月でC13.5C±1.72CmmHgまで下降し,点眼スコアもC3.67C±1.24からC2.00C±1.39に減少した7)との報告がある.本検討の白内障同時群は,Tanitoらの報告6)と比較すると術後眼圧がやや高くなっているが,既報の術後点眼スコア2.0に対し本検討ではC1.0と少なくなっており,単独群と同様に術後眼圧コントロールの方針の差が結果に影響している可能性があると考える.合併症については単独手術ではニボーを伴う前房出血が16.38%4,5),30CmmHgを超える一過性眼圧上昇がC4%4),術後C2週間以内に術前眼圧を超える一過性眼圧上昇がC36%5),白内障同時手術では前房出血がC3.41%6,7),30CmmHgを超える一過性眼圧上昇がC9.13%6,7)と報告されている.報告により差があるが,本検討の単独群,白内障同時群のいずれも過去に報告されている頻度の範囲内であった.白内障同時群を手術方法別にみると,後から線維柱帯を切開した症例で一過性眼圧上昇が多かった.過去にCTanitoら8)は,術後前房出血の存在や,血餅が線維柱帯切開部位を一時的に閉塞することが,一過性眼圧上昇の原因になっていると考察している.本研究の白内障同時群で術後一過性眼圧上昇をきたした症例は,全例,後から線維柱帯切開を行っていた.先に線維柱帯を切開すると,その後に続く水晶体再建術の時間が止血時間として働いていることが考えられる.また,先に水晶体再建術を施行した場合,皮質吸引時に眼内圧が低下してSchlemm管が充血することにより,線維柱帯切開時に出血しやすくなっている可能性がある.後から線維柱帯切開を行うと,niveauを作らない程度ではあっても,前房内の出血量が多くなり術後一過性眼圧上昇の原因になっている可能性がある.本研究は後ろ向き研究であり,とくに単独群の対象症例数が多いとはいえず,また術後C6カ月までの調査であった.さらに術後の抗炎症点眼薬や緑内障点眼薬の使用については各主治医の方針によって決定されているため,術後眼圧コントロールの方針が統一されていないことも本研究の限界としてあげられる.多数例で長期間の術後成績を検討することで,さらに有用な報告とすることを今後の課題と考える.術後C6カ月であるが,μLOT単独手術では術後緑内障点眼を継続することにより良好な眼圧を達成でき,白内障同時手術では少ない点眼で有意な眼圧下降を得られた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TanitoCM,CMatsuoM:Ab-internoCtrabeculotomy-relatedCglaucomasurgeries.TaiwanJOphthalmolC9:67-71,C20192)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetal:MicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsur-gery,ineyeswithopen-angleglaucomawithscleralthin-ning.ActaOphthalmolC94:e371-e372,C20163)TanitoM:MicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgery.CClinCOphthalmolC12:43-48,C20184)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmolC95:e354-e360,C20175)MoriCS,CMuraiCY,CUedaCKCetal:ACcomparisonCofCtheC1-yearCsurgicalCoutcomesCofCabCexternoCtrabeculotomyCandCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomyCusingCpropensityCscoreanalysis.BMJOpenOphthalmolC5:e000446,C20206)TanitoCM,CIkedaCY,CFujiharaE:E.ectivenessCandCsafetyCofCcombinedCcataractCsurgeryCandCmicrohookCabCinternotrabeculotomyinJapaneseeyeswithglaucoma:reportofaninitialcaseseries.JpnJOphthalmolC61:457-464,C20177)OmotoCT,CFujishiroCT,CAsano-ShimizuCKCetal:Compari-sonCofCtheCshort-termCe.ectivenessCandCsafetyCpro.leCofCabCinternoCcombinedCtrabeculotomyCusingC2CtypesCofCtra-becularhooks.JpnJOphthalmolC64:407-413,C20208)TanitoM,OhiraA,ChiharaE:FactorsleadingtoreducedintraocularCpressureCafterCcombinedCtrabeculotomyCandCcataractsurgery.JGlaucomaC11:3-9,C2002***

緑内障手術既往眼に対するSuture Trabeculotomy眼内法の成績

2020年7月31日 金曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(7):865.868,2020c緑内障手術既往眼に対するSutureTrabeculotomy眼内法の成績小林聡*1稲村幹夫*1鍵谷雅彦*1田岡梨奈*2猪飼央子*1*1稲村眼科クリニック*2地域医療機能推進機構横浜保土ヶ谷中央病院眼科COutcomesofSutureTrabeculotomyAbInternoinEyeswithPriorIncisionalGlaucomaSurgerySatoshiKobayashi1),MikioInamura1),MasahikoKagiya1),RinaTaoka2)andNakakoIkai1)1)Inamuraeyeclinic,2)DepartmentofOphthalmology,YokohamaHodogayaCentralHospital,JapanCommunityHealthCareOrganizationC目的:緑内障手術既往眼に対するCsuturetrabeculotomy眼内法(s-lot)の成績について報告する.対象および方法:s-lotを施行し,3カ月以上経過観察が可能であった緑内障手術既往眼C19例C19眼を対象とした.既往術式の内訳は流出路再建術がC7眼,チューブシャントを含む濾過手術がC12眼であった.平均年齢はC75.7C±11.6歳,平均観察期間はC8.0C±3.7カ月であった.眼圧,生存率,薬剤スコア,合併症について後ろ向きに検討した.累積成功率は眼圧が5CmmHg以上C21・18・15CmmHg以下を成功基準と定義した.結果:平均眼圧は術前C23.3C±5.8CmmHg,術後C12カ月C13.5±1.4CmmHgと有意に下降した.術後C12カ月での累積生存率は基準眼圧がC21,18,15CmmHgでそれぞれC100%,89.4%,84.2%であった.平均薬剤スコアは術前C4.5C±0.86,術後C12カ月C3.2C±1.7と有意に減少した.術後に前房出血がC9眼,30CmmHg以上の眼圧上昇がC9眼にみられたが,いずれも自然経過または薬物治療で改善した.結論:s-lotは緑内障手術既往眼に対して有用な術式と考えられる.CPurpose:Toinvestigatethesurgicaloutcomesofsuturetrabeculotomy(S-LOT)abinternoineyeswithpriorincisionalglaucomasurgery.Methods:Thisretrospectivestudyinvolved19eyesof19caseswithpriorincisionalglaucomasurgerythatunderwenttheS-LOTprocedure.Ofthe19eyes,7hadpreviouslyundergonetrabeculoto-myand12hadpreviouslyundergone.ltrationsurgery.Inallcases,intraocularpressure(IOP)C,cumulativesurviv-alrate,numberofglaucomamedications,andsurgicalcomplicationswereexamined.Surgerywasjudgedasasuc-cessCwhenCIOPCwasCkeptCbetweenC5CandC21/18/15CmmHg.CResults:TheCmeanCIOPCsigni.cantlyCdecreasedCfromC23.3±5.8CmmHgCbeforeCsurgeryCtoC13.5±1.4CmmHgCatC12-monthsCpostoperative.CTheCmeanCnumberCofCglaucomaCmedicationswassigni.cantlyreducedfrom4.5±0.86beforesurgeryto3.2±1.7at12-monthspostoperative.ThecumulativeCsurvivalCratesCwereC100,C89.4,Cand84.2%CatCtheCIOPCofC21,C18,CandC15CmmHgCorCless,Crespectively,CatC12-monthspostoperative.Hyphemawasseenin9eyes,andanIOPelevationof30CmmHgormorewasseenin9eyes.Conclusion:S-LOTabinternoineyeswithpriorincisionalglaucomasurgerywasfoundtobeane.ectiveprocedure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(7):865.868,C2020〕Keywords:suturetrabeculotomy眼内法,s-lot,低侵襲緑内障手術,MIGS,緑内障手術既往眼.suturetrabecu-lotomyabinterno,s-lot,minimallyinvasiveglaucomasurgery,priorglaucomasurgery.CはじめにをCSchlemm管内に挿入することによって全周の線維柱帯をCSuturetrabeculotomy眼内法(s-lot)は緑内障に対する流切開しCSchlemm管を開放することができる.従来の線維柱出路再建術に用いられる新しい手法であり,5-0ナイロン糸帯切開術に比較して,広範囲に線維柱帯を切開することがで〔別刷請求先〕小林聡:〒231-0045横浜市中区伊勢佐木町C5-125稲村眼科クリニックReprintrequests:SatoshiKobayashi,M.D.,Inamuraeyeclinic,5-125Isezaki-cho,Naka-ku,Yokohama,Kanagawa231-0045,CJAPANCきる点で有用である可能性がある.本術式は角膜切開のみで施行することができ,いわゆるCminimallyCinvasiveCglauco-masurgery(MIGS)とよばれる低侵襲緑内障手術の一つである.2014年に初めて報告があり1),その後も多数の臨床成績の報告がなされており日本でも広く行われている2,3).緑内障手術既往眼に対する報告は海外から良好な結果が報告がされているが4),現在のところ日本での報告はない.そこで今回筆者らは緑内障手術既往眼に対するCs-lotの手術成績を報告し有効性,安全性を検討した.CI対象および方法対象はC2016年C11月.2019年C3月に地域医療機能推進機構・横浜保土ヶ谷中央病院および稲村眼科クリニックにおいてCs-lotを用いて緑内障流出路再建術を施行し,3カ月以上経過観察が可能であったC19例C19眼である.男性C8眼,女性C11眼,平均年齢はC74.2C±13.2歳(42.87歳),平均観察期間はC7.0C±3.8カ月(3.12カ月)であった.疾患の内訳は広義原発開放隅角緑内障C9眼(47.4%),落屑緑内障C7眼(36.8%),原発閉塞隅角緑内障C2眼(10.5%),外傷性緑内障1眼(5.3%)であった.既往術式の内訳は緑内障濾過手術に分類される手術が合計C15眼(78.9%)で,線維柱帯切除術C5眼(26.3%),エクスプレスC7眼(36.8%),濾過胞再建術(ニードリングを除く)2眼(10.5%),チューブシャント手術C1眼(5.3%)であった.緑内障流出路再建術に分類される手術が合計C8眼(42.1%)で,線維柱帯切開術(眼外法)2眼(10.5%),トラベクトームC3眼(15.8%),Kahookdualblade1眼(5.3%),隅角癒着解離術C2眼(10.5%)であった.複数回の既往がある症例がC4眼(21.1%)であった.手術による結膜瘢痕が残る症例はC15眼(78.9%)であった.手術はすべて同一術者により施行された.手術方法は耳側角膜切開を作製し,粘弾性物質にて前房形成したあとに頭部を患眼と対側へ傾斜する.隅角鏡を乗せ鼻側の線維柱帯を確認し,23ゲージ鋭針にて鼻側線維柱帯を一部切開し,そこからC5-0ナイロン糸をCSchlemm管内に挿入する.1周して対側から現れたナイロン糸の先端を把持して,対側の糸を引くことによって線維柱帯を全周切開する.挿入途中でナイロン糸が止まった場合はその範囲までの切開を行い,続いて対側から再度ナイロン糸を挿入して可能な限り広範囲を切開するように試みた.その後前房洗浄を行い,創口閉鎖を確認した.創口は全例無縫合で自己閉鎖とした.白内障同時手術を施行する場合は,そのあとに同一創口で施行した.白内障同時手術を行った症例はC5眼(26.3%)で,単独手術のうち眼内レンズ挿入眼がC13眼(68.4%),有水晶体眼がC1眼(5.3%)であった.眼圧,手術成功率,術後合併症,視力,点眼スコアについて後ろ向きに検討を行った.眼圧,視力,点眼スコアの推移についてはCDunnetttestを用いて評価した.手術成功率は,眼圧がC5CmmHg以上C21,18,15CmmHg以下,かつ眼圧下降率C20%以上を成功基準として,術後C1カ月以上経過してからC2回連続で基準を超えた場合,緑内障手術を追加した場合,光覚を喪失した場合を死亡と定義しCKaplan-Meierの生命曲線およびCLogranktestを用いて評価した.視力に関して指数弁はC0.005,眼前手動弁はC0.003,光覚弁はC0.001と換算し,小数視力をClogMAR視力へ変換したうえで解析を行った.点眼スコアは眼圧下降薬の点眼薬C1種類につきC1点,アセタゾラミド内服の併用はC1錠につきC1点,配合剤点眼薬はC1成分ごとにC1点とした.術後合併症としての角膜内皮細胞への影響は,術前,術後に角膜中央部で測定した角膜内皮細胞密度を用いて検討した.本研究はヘルシンキ宣言に則り,検査データを研究,教育目的のために利用する可能性について事前に文書にてインフォームド・コンセントを得ていた症例を対象とし,当施設の倫理委員会での承認のもとに行った.CII結果平均切開範囲はC325.3C±50.3°,360°切開することができた症例がC10眼(52.6%),180°以上C360°未満がC9眼(47.4%),180°未満の症例はいなかった.術前術後の眼圧の推移と生存曲線と薬剤スコアの推移について図1.3に示す.平均眼圧は術前C23.3C±5.8mmHg,術後C12カ月C13.5C±1.4CmmHgと有意な下降がみられた(p<0.05).累積生存率は術後C12カ月の時点での基準眼圧をC5CmmHg以上C21,18,15CmmHg以下としたときにそれぞれC100%,89.4%,84.2%であった.死亡原因はいずれも眼圧の成功基準の上限をC2回連続で超えたものであり,再手術を要した症例や光覚を消失した症例はいなかった.平均ClogMAR視力は術前C0.04C±0.22,術後C12カ月C0.0C±0.17と有意差はみられなかった.平均薬剤スコアは術前C4.5C±0.86,術後C12カ月C3.2C±1.7と有意な下降がみられた(p<0.01).既往術式により濾過手術と流出路再建術のC2群に分類して比較すると術前平均眼圧がそれぞれC22.3C±4.5CmmHg,23.2C±5.0mmHg,術後C12カ月の平均眼圧はそれぞれC12.7C±0.5CmmHg,14.5C±1.5mmHgで有意差はなかった.また,累積生存率は術後C12カ月の時点で基準をC5CmmHg以下C15mmHg以上としたときに,それぞれC91.7%,71.4%で有意差はなかった(図4).合併症については,前房出血がC9眼(47.4%),30CmmHgを超える一過性眼圧上昇がC9眼(47.4%)にみられたが,追加処置や手術を要する症例はなかった.周辺虹彩前癒着が術前よりC30°以上広がった症例が2眼(10.5%)であった.術前,術後C12カ月の平均角膜内皮細胞密度はそれぞれC2177.5C±463.7,2255.3C±563.5Ccells/mm2と有意差はなく,30%以1.003530**********0.80スコア眼圧(mmHg)累積生存率累積生存率0.600.401050.200術前1D1W2W1M2M3M6M12M0.00n=19n=19n=19n=19n=19n=19n=18n=13n=6観察期間図1眼圧の推移図2累積生存率Dunnetttest*:p<0.05,**:p<0.01.Kaplan-Meierの生存曲線.02468101214観察期間(M)1.000.804320.600.400.20図3薬剤スコアの推移Dunnetttest*:p<0.01.上の減少を認めた症例はなかった.CIII考按一般的に線維柱帯切除術やチューブシャント手術などの濾過手術や従来の線維柱帯切開術(眼外法)は結膜への侵襲を伴い術後に結膜瘢痕を残すことが多く,緑内障手術を追加する場合に術式の選択に苦慮することがある.MIGSは角膜切開のみで施行できるものがほとんどで,結膜や強膜の状態は手術適応に影響を及ぼさない.当術式もCMIGSの一種であり,結膜瘢痕を伴う症例に対する緑内障手術の術式選択に有利である.実際に本研究の対象で結膜瘢痕を伴う症例はC15眼(78.9%)であったが,問題なく施行することができた.追加手術の作用機序を既往術式別に考察すると,流出路再建術についてはCChinらによってCs-lot眼外法におけるCSch-lemm管開放の範囲と眼圧下降幅の相関が報告されており5),今回の流出路再建術既往眼に対する効果は切開範囲の拡大が寄与していると考えられる.切開範囲と眼圧下降効果の関係の有無についてはさまざまな報告があるが5,6),筆者らは広0.00図4術式別の累積生存率Kaplan-Meierの生存曲線,Logranktestp=0.28.範囲の切開が眼圧下降に寄与すると考えている.その理由として,短期的には広範囲の切開により多くの集合管が開放されること,長期的には術後に切開部への虹彩の陥頓により周辺虹彩前癒着を生じた場合に切開範囲が広ければ影響が限定されるためと考えている.濾過手術に関してはCJohnsonらにより濾過手術後には主流出路への房水流出が減少してCSchlemm管が縮小し集合管以降の機能が低下すると報告されており7),Schlemm管を介した房水流出の改善を機序とする流出路再建に分類される本術式は効果が低いと予想されたが,結果は逆であった.今回の濾過手術既往眼に対する効果は縮小したCSchlemm管や集合管以降の主流出路が再度機能しうることを示唆している.症例数が少ないために有意差は出なかったが,術式別の比較ではむしろ濾過手術既往眼のほうが成績の良い傾向があった.流出路再建術で効果が不十分であった症例の原因は集合管以降の主流出路の機能低下に起因している可能性があり,その場合にはCs-lotによる線維柱帯の切開は範囲の拡大によらず効果が期待できなかったとも考えられる.流出路再建術術前1M3M6M12Mn=19n=19n=18n=13n=6観察期間02468101214観察期間(月)の不成功例のなかには一定数そのような症例が存在すると考えられているが予測は困難である.既報では既往術式によらず有効であったと報告されているが4),本研究は症例数が少ないために十分な評価ができず,今後の課題としたい.以上,緑内障手術既往眼に対するCs-lotの手術成績について評価を行った.良好な成績と安全性を示すことができ,有効な治療法と考えることができる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Gonioscopy-assist-edCtransluminalCtrabeculotomy,CabCinternoCtrabeculoto-my:techniqueCreportCandCpreliminaryCresults.COphthal-mologyC121:855-861,C20142)SatoT,KawajiT,HirataAetal:360-degreesuturetra-beculotomyCabCinternoCtoCtreatCopen-angleglaucoma:2-yearoutcomes.ClinOphthalmol17;C12:915-923,C20183)GroverDS,SmithO,FellmanRLetal:Gonioscopy-assist-edtransluminaltrabeculotomy:Anabinternocircumfer-entialtrabeculotomy:24CmonthsCfollow-up.CJCGlaucomaC27:393-401,C20184)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Outcomesofgoni-oscopy-assistedCtransluminaltrabeculotomy(GATT)inCeyesCwithCpriorCincisionalCglaucomaCsurgery.CJCGlaucomaC26:41-45,C20175)ChinS,NittaT,ShinmeiYetal:Reductionofintraocularpressureusingamodi.ed360-degreesuturetrabeculoto-mytechniqueinprimaryandsecondaryopen-angleglau-coma:apilotstudy.JGlaucomaC21:401-407,C20126)ManabeCS,CSawaguchiCS,CHayashiCKCetal:TheCe.ectCofCtheCextentCofCtheCincisionCinCtheCSchlemmCcanalConCtheCsurgicaloutcomesofsuturetrabeculotomyforopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmolC61:99-104,C20177)JohnsonCDH,CMatsumotoY:SchlemmC’sCcanalCbecomesCsmallerCafterCsuccessfulC.ltrationCsurgery.CArchCOphthal-molC118:1251-1256,C2000***