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Uveal Effusionを伴った原田病の1例

2021年4月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科38(4):470.475,2021cUvealE.usionを伴った原田病の1例恩田昌紀渡辺芽里佐野一矢牧野伸二川島秀俊自治医科大学眼科学講座CAPatientExhibitingSymptomsofBothUvealE.usionandVogt-Koyanagi-HaradaDiseaseMasatoshiOnda,MeriWatanabe,IchiyaSano,ShinjiMakinoandHidetoshiKawashimaCDepartmentofOphthalmology,JichiMedicalUniversityC目的:Uveale.usionを伴った原田病と思われる症例を経験したので報告する.症例:61歳,女性.両眼の視力低下と難聴を自覚し,近医眼科を受診.両眼の虹彩炎と下方の胞状網膜.離を認めたため自治医科大学附属病院眼科を紹介受診した.両眼とも前房は浅く,炎症細胞があり,毛様体.離,視神経乳頭の発赤,超音波CBモードにて強膜肥厚および体位変換により移動する胞状網膜.離を認めた.光干渉断層計では黄斑部に漿液性網膜.離があり,厚い脈絡膜の波打ち様変化を認めた.フルオレセイン蛍光造影検査では,後極部に少数の点状過蛍光はあったが蛍光貯留はなかった.無菌性髄膜炎,感音性難聴,DR4陽性を認めたことより原田病と診断し,併せてCuveale.usionを呈している病態と考えた.ステロイドパルス療法を施行し,胞状網膜.離は速やかに消失した.結論:両疾患の合併報告は少ないが,女性,DR4陽性,短眼軸長などは発症に関連する因子の可能性がある.CPurpose:Toreportapatientwhoexhibitedsymptomsofbothuveale.usion(UE)andVogt-Koyanagi-Hara-da(VKH)disease.Casereport:Thisstudyinvolveda61-year-oldfemalewhovisitedalocalclinicafterbecomingawareofdecreasedvisioninbotheyesandahearingdisturbance.Examinationrevealediritisandbullousretinaldetachment(BRD),CandCsheCwasCsubsequentlyCreferredCtoCourCclinic.COphthalmologicalCexaminationCrevealedCthatCsheCmanifestedCBRDCthatCshiftedCwithCbodyCposition,CtogetherCwithCthickCsclera.COpticalCcoherenceCtopographyCrevealedCmacularCserousCdetachmentCandCaCwavyCthickCchoroid.CFluoresceinCangiographyCrevealedCaCspottedChyper.uorescentpatternintheposteriorfundus,andincombinationwithasepticmeningitis,sensoryhearingloss,andHLADR4,thepatientwasdiagnosedashavingbothUEandVKH.Corticosteroidtherapywasinitiated,whiche.ectivelyCeliminatedCtheCBRD.CConclusion:FactorsCincludingCfemaleCsex,CDR4,CandCshortCvisualCaxisClengthCmayChavecontributedtotheonsetofthisrarecondition.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(4):470.475,C2021〕Keywords:原田病,uveale.usion,胞状網膜.離,脈絡膜.離.Vogt-Koyanagi-Haradadisease,uveale.usion,bullousretinaldetachment,choroidaldetachment.CはじめにUveale.usion(UE)は体位変換によって網膜下液が容易に移動する可能性が高い非裂孔原性網膜.離と眼底周辺部全周に存在する毛様体.離・脈絡膜.離(choroidalCdetach-ment:CD)を主病像とする疾患群で,最近ではCuveale.u-sionsyndromeと呼称されている1.3).本症の病態の本態は強膜にあるとされ,経強膜的流出路障害説として強膜の肥厚および硬化により強膜を透過する眼内液の眼外への流出障害が主要因とされているが,経渦静脈流出路障害説も副次的要因と考えられている.これらの要因により生じる胞状網膜.離(bullousCretinaldetachment:BRD)は,網膜病変部の責任病巣直下に貯留することなく,体位による移動が特徴的で,他に多発性後極部網膜色素上皮症(multifocalposteriorpigmentepitheliopathy:MPPE)などで認められる1).これらの疾患概念には交錯する部分もあり,とくに日常臨床において鑑別診断は必ずしも明解とはならない.さらに,Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)にCUEあるいはCMPPEを合併したとの報告は少なく4.8),病態評価の機会は貴重である.〔別刷請求先〕恩田昌紀:〒329-0498栃木県下野市薬師寺C3311-1自治医科大学眼科学講座Reprintrequests:MasatoshiOnda,M.D.,DepartmentofOphthalmology,JichiMedicalUniversity,3311-1Yakushiji,Shimotsuke,Tochigi329-0498,JAPANC図1初診時前眼部写真(a,b)および前眼部光干渉断層計検査(c,d)a:右眼,b:左眼.両眼とも前房は浅い.c:右眼,d:左眼.両眼とも毛様体.離,脈絡膜.離(.)を認めた.今回筆者らは,uveale.usionを伴った原田病と思われる症例を経験したので報告する.CI症例患者:61歳,女性.主訴:両眼の視力低下と難聴.現病歴:受診C1.2カ月前からの両眼の視力低下と難聴,頭痛を自覚し近医眼科を受診,両眼の虹彩炎と下方のCBRDが認められたため,自治医科大学附属病院眼科を紹介受診した.既往歴・家族歴:特記すべきことなし.初診時所見:視力は右眼C0.1(0.3×+2.25D(cyl+1.75DAx160°),左眼C0.1(0.3×+1.50D(cyl+1.50DAx180°),眼圧は右眼C12CmmHg,左眼C11CmmHgであった.両眼とも前眼部は浅く(図1a,b),炎症細胞(1+)を認め,白内障はCEmery-LittleGrade3程度であった.前眼部光干渉断層計検査(opticalCcoherencetomography:OCT)では毛様体.離,CDを認めた(図1c,d).眼底は両眼とも視神経乳頭は発赤,腫脹し,網膜は下方にCBRDを認めた(図2a,b).フルオレセイン蛍光造影検査(.uoresceinangiography:FA)では後極部に少数の蛍光漏出による点状過蛍光はあったが,明らかな蛍光貯留は認めなかった(図2c~f).超音波CBモードでは肥厚した脈絡膜と強膜に加え,座位で下方に,仰臥位で後極側に移動する網膜.離を認めた(図3).眼軸長は両眼C21Cmm程度(右眼C21.07Cmm,左眼C21.22Cmm)であった.OCTでは黄斑部にフィブリン析出を伴う漿液性網膜.離があり,脈絡膜の波打ち様変化が観察された(図4).頭痛と感音性難聴の自覚症状もあり,原田病を疑い当院神経内科にて精査したところ,髄液検査では単核球優位の細胞増多を認め,感音性難聴もあることから原田病と診断した.さらに,肥厚した強膜および体位変換により移動するCBRDからCUEを合併した病態と考えた.MPPEは脈絡膜.離を伴っていることとCFAで蛍光貯留がないことなどから否定した.以上より,UEと原田病の合併症例と診断し,患者と相談のうえ,はじめにメチルプレドニゾロンステロイドパルス療法を実施することとした.なお,治療開始後にCHLAはCDR4陽性が判明している.経過:ステロイドパルス療法C1クール後,下方のCBRDは消失し(図5a,b),OCTによる脈絡膜の波打ち様変化も軽快したが,黄斑部の漿液性網膜.離は残存していた.前房深度は毛様体.離の消失に合わせて改善した(図5c,d).ステロイドパルス療法は計C3クール行い,その後,後療法としてプレドニゾロンC30Cmg/日(0.5Cmg/kg/日)より,内服漸減した.この時点で,強膜への外科的治療の介入の必要性は低いと判断した.さらに,漿液性網膜.離は徐々に軽快し,治療開始C2カ月後に両眼の漿液性網膜.離は消退した(図5e,f).治療開始C2カ月後の視力は,白内障のため右眼C0.3(0.3×+1.00D(cyl+1.00DAx145°),左眼C0.2(0.3×+0.50D(cyl+1.00DAx180°)にとどまったが,自覚症状は改善した.CII考按本症例は短眼軸長の女性で,HLADR4陽性の原田病に,UE,CDを伴ったことが特徴であった.図2初診時眼底写真(a,b)およびフルオレセイン蛍光造影検査(c~f)a:右眼,Cb:左眼.両眼とも視神経乳頭は発赤し,下方に胞状網膜.離を認めた.Cc:右眼(早期),d:左眼(早期),e:右眼(後期),f:左眼(後期).後極部に少数の蛍光漏出による点状過蛍光はあるが蛍光貯留はみられない.原田病の臨床症状として,多発する両眼性の漿液性網膜.離や視神経乳頭炎,前房炎症を伴う汎ぶどう膜炎がみられる.FAでは比較的初期から脈絡膜からのびまん性の蛍光漏出がみられ,後期ではこれらが融合し胞状の蛍光貯留を形成し,大きな円形の過蛍光が認められる.OCTでは,本症例のような隔壁を伴う炎症性変化の強い網膜下液を認める.ステロイドパルス療法の是非を勘案すべき本症例において,BRDを伴う病態としてのCMPPEの鑑別は不可欠であった.MPPEでも滲出性網膜.離が多発し,原田病によく似た臨床像を呈し,脈絡膜から網膜色素上皮に病変の主座がある9).しかし,MPPEでは本症例のようなCCDを伴うことはなく,FAで多発性過蛍光点が存在し,中心性網脈絡膜症の激症型とされている.杉本ら10)によると,UE,MPPEともにOCTにおける脈絡膜肥厚などの眼所見など知見の集積が待たれる分野である.また,さらなる鑑別として後部強膜炎もあげられるが,眼痛がないことや髄液検査で無菌性髄膜炎の図3初診時超音波Bモードa:右眼座位,Cb:左眼座位,Cc:右眼仰臥位,Cd:左眼仰臥位.座位から仰臥位への体位変換で下方の網膜.離(.)が後極部へ移動した(C.).脈絡膜および強膜が肥厚していることがわかる.図4初診時光干渉断層計検査a:右眼,b:左眼.黄斑部に漿液性網膜.離があり,脈絡膜の波打ち様変化を認めた.所見が得られたことから否定的と考えた.よって本症例で般的に特発性または真性小眼球に伴うものがCuveale.usionは,無菌性髄膜炎,難聴,COCT所見,CCDを伴うことなどsyndromeとよばれている1.3).CUyamaら2)は本症を小眼から,原田病が存在していると判断した.球・強膜肥厚の有無により,C3病型に分類した.過去の報告UEは強膜異常によりぶどう膜からの滲出が発生する比較から,病態は強膜にあると理解されており,経強膜的流出路的まれな疾患で,体位変換により網膜下液が容易に移動する障害説が主要因,経渦静脈流出路障害説が副次的要因とし可動性が高い非裂孔原性網膜.離と眼底周辺部全周に存在すて,上脈絡膜腔での液体貯留期間が長期に及ぶと脈絡膜.離るCCDを主病変とする疾患群として紹介された.現在では一を生じ,二次的に網膜色素上皮のポンプ機能が障害され,脈図5治療後の眼底写真(a,b)と前眼部光干渉断層計検査(c,d)および治療開始2カ月後の光干渉断層計検査(e,f)a:右眼,Cb:左眼.下方の胞状網膜.離は消失した.Cc:右眼,Cd:左眼.毛様体.離は消失し,前房は深くなった.Ce:右眼,f:左眼.黄斑部の漿液性網膜.離は消退した.絡膜下に滲出性網膜.離が発生すると考えられている.今回の症例は真性小眼球を伴わないCUEの病態を呈したと考えている.さらに,UEを生じた原因として,原田病による炎症を背景に,強膜病態が悪化してCUEとしての病態発症機転が閾値を超えてCBRDを生じたと考えている.合わせて,ステロイドパルス療法のみで外科的治療を要せず治癒したことも,このことを示唆している.すなわち,ステロイドパルス療法は直接的には原田病による炎症病態を抑制し,その炎症病態により誘発されていたCUE(BRD病態)も間接的に消失させたと考えた.ちなみに過去の報告によると,原田病で脈絡膜循環障害を生じて網膜色素上皮の柵機能障害が起きたことが,網膜下液貯留の原因としてあげられており4),病態発生に関与した可能性もある.また,原田病にCUE,CDを合併した報告は少ないが,そのなかでもCYamamotoら6)が女性,DR4陽性,眼軸長C21CmmのC1症例を報告しており,小眼球といかないまでも短眼軸長であることはCUE病態を惹起しやすいという可能性があると考えられ,移動性のあるBRDを伴う症例に遭遇した際は,眼軸計測は不可欠の臨床検査であると考える.本症例において治療開始C2カ月後の矯正視力は両眼(0.3)であるが,これは白内障の影響と考えている.OCTにて黄斑部網膜外層(ellipsoidzone)の消失があるようにもみえるが,UEとの合併や視力不良への関連については不明である.以上,UEを合併した原田病症例を報告した.BRDを伴っており,MPPEを否定することがステロイドパルス療法に先駆けて不可欠であった.本症例のごとく,女性,DR4陽性,短眼軸長であることは両疾患合併の危険因子となる可能性がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)盛秀嗣,髙橋寛二:UvealCe.usionsyndrome.あたらしい眼科C34:1691-1699,C20172)UyamaCM,CTakahashiCK,CKozakiCJCetal:UvealCe.usionsyndrome:clinicalCfeatures,CsurgicalCtreatment,ChistologicCexaminationCofCtheCsclera,CandCpathophysiology.COphthal-mologyC107:411-419,C20003)ElagouzCM,CStanescu-SegallCD,CJacksonTL:UvealCe.u-sionsyndrome.SurvOphthalmolC55:134-145,C20104)林昌宣,山本修一,斉藤航ほか:Uveale.usionを伴う原田病のC2例.眼臨C95:297-299,C20015)植松恵,川島秀俊,山上聡ほか:ステロイドパルス療法が奏効した脈絡膜.離が顕著であった原田病のC2症例.臨眼C51:1625-1629,C19976)YamamotoCN,CNaitoK:AnnularCchoroidalCdetachmentCinCaCpatientCwithCVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC242:355-358,C20047)ElaraoudI,AndreattaWJiangLetal:Amysteryofbilat-eralCannularCchoroidalCandCexudativeCretinalCdetachmentCwithCnoCsystemicinvolvement:isCitCpartCofCVogt-Koy-anagi-HaradaCdiseaseCspectrumCorCaCnewentity?CCaseRepOphthalmolC8;1-6,C20178)斎藤憲,増田光司,三浦嘉久ほか:ステロイド療法中の原田病患者に見られた多発性後極部網膜色素上皮症.眼臨医報C91:1175-1179,C19979)宇山昌延,塚原勇,浅山邦夫ほか:Multifocalposteriorpigmentepitheliopathy多発性後極部色素上皮症とその光凝固による治療.臨眼C31:359-372,C197710)杉本八寿子,木村元貴,城信雄ほか:Uveale.usionsyn-dromeにおける網脈絡膜の光干渉断層計による観察.臨眼C70:1465-1472,C2016***

網膜下に遊走滲出塊を伴った特異なUveal Effusion の1例

2010年6月30日 水曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(131)845《原著》あたらしい眼科27(6):845.849,2010cはじめにUvealeffusionは1963年にSchepensら1)によって報告された疾患で,多くは中年男性に非裂孔原性の胞状網膜.離を認め,頭位により網膜下液が移動する特徴がある.ステロイドを含む薬物療法には反応せず,強膜弁下強膜切除術2.4)や渦静脈の減圧術5)が有効であると報告されている.小眼球症および強膜の肥厚の有無により分類6)されており,病型により治療法が異なっている.今回筆者らは,網膜下に大きな滲出塊を伴った特異なuvealeffusionが,3カ月の間隔で両眼に発症した1例を経験し,強膜弁下強膜切除術によって良好な結果を得たので報告する.I症例患者:68歳,男性.初診日:2006年1月20日.主訴:右眼視力低下.現病歴:2006年1月8日,起床時に右眼がほとんど見え〔別刷請求先〕佐々木慎一:〒683-8504米子市西町36-1鳥取大学医学部視覚病態学Reprintrequests:Shin-ichiSasaki,M.D.,DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity,36-1Nishi-cho,Yonago-shi683-8504,JAPAN網膜下に遊走滲出塊を伴った特異なUvealEffusionの1例佐々木慎一*1佐々木勇二*2小松直樹*1井上幸次*1*1鳥取大学医学部視覚病態学*2公立八鹿病院眼科ACaseofUnusualUvealEffusionwithSubretinalFloatingExudatesShin-ichiSasaki1),YujiSasaki2),NaokiKomatsu1)andYoshitsuguInoue1)1)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,FacultyofMedicine,TottoriUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,PublicYokaHospital網膜下を遊走する滲出塊を伴った特異なuvealeffusionの1例を経験したので報告する.症例は68歳,男性.右眼の視力低下を主訴に近医を受診し網膜.離と診断され,鳥取大学眼科を紹介受診.右眼に胞状網膜.離を認め,.離の範囲は頭位によって変化し,網膜下液内に遊走する滲出塊がみられた.裂孔を認めず眼軸長も正常のため,小眼球を伴わないuvealeffusionと診断し強膜弁下強膜切除術を施行した.術後右眼の網膜.離は徐々に消退し,滲出塊も吸収消失した.1カ月後左眼にも同様のuvealeffusionが生じたが,強膜弁下強膜切除術により同様の経過をたどった.最終矯正視力は両眼1.5と良好であった.滲出塊を伴う特異なuvealeffusionが,強膜弁下強膜切除術によって治癒した.手術により脈絡膜から眼外への流出抵抗が低下したため,網膜下液の蛋白濃度が低下し,滲出塊の融解が促進されたものと推察した.Thepatient,a68-year-oldmalewhocomplainedofreducedvisualacuityinhisrighteye,wasreferredtousforretinaldetachment(RD).BullousRDwasobservedinhisrighteye,theRDareaalteringdependingonthepositionofthepatient’shead.Subretinalfloatingexudateswerealsoobserved.Thediagnosiswasuvealeffusionwithoutnanophthalmos,sinceaxiallengthwasnormalandtherewerenotears.Subscleralsclerectomywereperformed.Aftertheoperation,RDintherighteyegraduallyreduced,withabsorptionofthefloatingexudates.Onemonthlater,asimilartypeofuvealeffusionoccurredinthelefteye,whichhadagoodclinicalcourseaftersubscleralsclerectomy.Thusinthiscase,unusualuvealeffusionwithfloatingexudateswashealedbysubscleralsclerectomy.Thusinthiscase,unusualuvealeffusionwithfloatingexudateswashealedybysubscleralsclerectomy.Presumably,reducedoutflowresistancefromthechoroidresultedindecreasedproteinconcentrationofthesubretinalfluid,promptingthemeltingoffloatingexudates.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(6):845.849,2010〕Keywords:uvealeffusion,遊走滲出塊,強膜弁下強膜切除術.uvealeffusion,floatingexudates,subscleralsclerectomy.846あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010(132)ないことを自覚したが放置していた.1月20日,山陰労災病院神経内科受診時に右眼視力低下を訴え,同院眼科にて右眼網膜.離と診断され,同日治療目的で鳥取大学医学部附属病院眼科(以下,当科)を紹介受診した.既往歴:脳梗塞(66歳),左尿管狭窄(66歳),左膿腎症(68歳).家族歴:特記事項なし.初診時眼所見:視力は右眼0.2(0.3×+1.00D(cyl.1.00DAx90°),左眼0.7(1.2×+1.00D(cyl.1.00DAx90°)で,眼圧は右眼7mmHg,左眼9mmHgであった.右眼前房に軽度の細胞浮遊がみられた.右眼眼底の下方に広範な非裂孔原性の胞状網膜.離を認め,さらにアーケード血管の後面に3乳頭径に及ぶ大きな滲出塊が存在し(図1),頭位の変化により網膜下を移動した.滲出塊は境界明瞭で黄白色,移動による形状の変化はみられなかった.この時点で左眼眼底には特に異常を認めなかった.蛍光眼底造影では右眼眼底全体にleopardspotpatternとよばれるびまん性の低蛍光と点状過蛍光の混在所見を呈した(図2).眼軸長は右眼22.8mm,左眼23.0mmで,小眼球症は認めなかった.視野検査では右眼で上方に広範な視野欠損を認めた.Bモードエコー検査では座位では下方に限局した胞状網膜.離,仰臥位ではほぼ全.離となった.また,通常よりも強膜の輝度が高く,強膜肥厚が疑われた(図3).20JシングルフラッシュERG(網膜電図)では,右眼にa波,b波の著明な減弱と律動様小波の消失を認めた.全身的には尿路系機能障害に伴う遷延性の軽度腎機能障害と炎症反応を認めたが,各種ウイルス抗体価,血圧,心電図は正常であった.経過:入院後の諸検査の結果,小眼球症を伴わないuvealeffusionと診断し,しばらく経過観察を行ったが,右眼網膜.離は消退せず,視力改善は得られなかった.網膜.離の遷ab図1術前の両眼眼底写真a:右眼.下方に胞状網膜.離を認め,アーケード血管後面に遊走する滲出塊がみられる.b:左眼.異常なし.図2右眼の蛍光眼底造影写真Leopardspotpatternとよばれるびまん性の低蛍光と点状過蛍光の混在所見がみられる.図3右眼のエコー写真網膜.離および肥厚した強膜の高輝度像を認める.(133)あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010847延による黄斑機能の低下に加え,移動する滲出塊によって網膜が障害される可能性も考慮し手術療法を選択した.2006年2月6日,全身麻酔下に右眼強膜弁下強膜切除術を施行した.全周の結膜を切開した後,4直筋に制御糸を掛け,赤道部に4×5mmの後方を基底とした厚さ約0.3mm程度の強膜弁を作製した.その強膜弁下に2×3mmの切開を加え,残りの強膜層を切除し脈絡膜を露出した.この際,露出した脈絡膜よりゆっくりと脈絡膜上液が滲み出ることを確認した.また,切開時に強膜の肥厚を認めると同時に,強膜と脈絡膜の境界が不明瞭であることを確認した.脈絡膜や強膜弁下に熱凝固は行わず,強膜弁を元に戻して9-0ナイロン糸で2針縫合した.同様の操作を4象限に行った(図4).術後1週間は網膜.離は不変であったが,その後網膜下液は徐々に減少し,視力改善が得られた.滲出塊は耳側網膜下に存在し,その後徐々に吸収された.経過良好にて以後外来経過観察を行った.退院時の視力は,右眼0.2(0.4),左眼0.7(1.2)であった.右眼手術の約2カ月後,2006年4月7日,左眼の視力低下を訴え当科再診時,視力は,右眼0.6(矯正不能),左眼0.02(0.03)であった.左眼下方に胞状網膜.離を認めたため入院となった(図5).しばらく入院のまま経過観察を行っ図4術中所見および模式図右:術中所見.強膜弁下で強膜ブロックを切除したところ.左:模式図.①:強膜弁作製,②:強膜ブロック切除,③:滲出液確認,④:強膜弁縫合.図5左眼発症時の術前眼底写真左眼下方に胞状網膜.離がみられる.ab図6術後2年半の両眼眼底写真a:右眼,b:左眼.両眼とも網膜.離の再発は認めず,視力は両眼(1.5).848あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010(134)たが網膜.離は消退せず,網膜下液中に小滲出塊の出現を認めたため,右眼と同様の病態と判断し,4月17日全身麻酔下に右眼と同様の強膜弁下強膜切除術を施行した.術後左眼の網膜.離も徐々に消退し,視力改善が得られたため(視力:右眼矯正0.6,左眼矯正0.2)退院した.その後両眼の網膜.離は完全に消失し,術後2年6カ月の時点までの経過中,網膜.離の再発は認めず,視力は右眼(1.5),左眼(1.5)と良好に保たれている(図6).その間両眼の眼圧は6.8mmHgと低眼圧であった.II考按漿液性網膜.離の原因としては他に原田病など炎症性疾患も考慮する必要があるが,初めは片眼性であったこと,充血や疼痛など特徴的な炎症所見がなかったこと,さらに蛍光眼底造影の所見より,本症例を特発性uvealeffusionと診断した.田上ら6)はuvealeffusionを小眼球および強膜肥厚の有無によってI.型に分類し,組織学的に検討している.すなわち,小眼球と強膜肥厚の両者を伴うものをI型,小眼球ではないが強膜肥厚を認める型,両方とも伴わないものを型と分類し,Ⅰ型と型では強膜の組織学的異常が高度であることを示している.型に関しては裂孔が発見されない裂孔原性網膜.離の可能性から真のuvealeffusionではないとの意見7)もある.本症例に関しては,眼軸長が正常であることと,Bモードエコーと手術中の所見で強膜肥厚を認めたことにより型uvealeffusionと診断した.Gass3),高橋7)により推察されているuvealeffusionの発症機序をまとめるとつぎのようになる.通常の組織であれば血管外に漏出した蛋白成分はリンパ組織によって運搬されるが,眼球にはリンパ組織がないため,脈絡膜の血管外蛋白成分はSchlemm管や強膜を直接透過することによって眼外のリンパ組織に流れる.しかし,強膜肥厚が存在すると強膜の蛋白透過性が低下すると同時に,肥厚強膜の圧迫による渦静脈のうっ滞が生じることによって脈絡膜組織液が貯留する.その結果,網膜色素上皮細胞による網膜下液のポンプ作用に機能異常をきたし,網膜下液が貯留しuvealeffusionが生じるというものである.さらに網膜色素上皮バリア機能に言及すると,漿液性網膜.離の発症には,①脈絡膜からの滲出液およびその液圧,②網膜色素上皮バリア機能の破綻,③網膜色素上皮ポンプ機能の低下,の3つの条件が関与するともいわれている8).本症例においても何らかの先天強膜異常が存在していた可能性は高いが,68歳までまったく無症状であったにもかかわらず,突如3カ月の間隔で両眼に発症したことは非常に興味深い.ウイルス感染,アレルギー反応,外傷,血圧上昇などが直接の発症原因である可能性も示唆されており3),先天的な強膜異常という局所の要因を背景に,発症時期における全身状態の変化が発症の引き金になったのではないかと推察される.Uvealeffusionにおける網膜下液では血清ならびにアルブミン濃度が高いことが知られており9),本症例では両眼とも網膜下液中に蛋白成分が析出したとみられる大きな滲出塊が出現し,網膜下を遊走するかのように移動するという特異な所見を呈していた.これは下液の蛋白濃度が上昇した結果ではないかと思われる.発症前に全身状態が変化したことは明らかではないが,患者には尿管狭窄の既往があり,uvealeffusion発症の4カ月前に左の膿腎症をきたし尿管ステントの留置処置を受けている.因果関係は不明であるが,尿路系感染と機能異常が契機になった可能性は否定できないと考える.本症例の全身経過のなかにuvealeffusionの発症原因を特定する鍵が隠されているのかもしれない.Uvealeffusionの治療に関しては,原則として強膜肥厚を伴うI型と型には強膜弁下強膜切除術が適応とされている10.14)が,硝子体手術によって復位が得られた報告9,15.18)も近年多数みられる.強膜弁下強膜切除術に関しては,筆者らのように4象限に行った例と下方の2象限のみに行った報告があるが,後者において非復位や再発例が多いように見受けられる.Uvealeffusionのインドシアニングリーン蛍光眼底造影所見では,広範な脈絡膜血管の異常が指摘されており10),また,先天性の強膜組織異常が根底にあるのであれば,特に高度の網膜.離を伴う例では,再発予防のためにはバランスよく4象限に強膜弁下強膜切除術を行う必要があるのかもしれない.本症例に関しては強膜肥厚が原因と推察されたため,まずは強膜弁下強膜切除術を第一選択とし,改善が得られない場合に硝子体手術を選択とした.強膜弁下強膜切除術により脈絡膜組織液の貯留が軽減されたことで,まず①脈絡膜上腔の圧が減少,それによって②網膜色素上皮バリア機能が改善し,蛋白成分の持続的な漏出が低下して網膜下液の蛋白濃度上昇が抑制,さらに③網膜色素上皮ポンプ機能が改善し,高濃度の蛋白成分に伴う網膜下への水分移動を,網膜色素上皮による網膜下液のくみ出しが上回り,網膜下液は希釈しながら徐々に吸収されたのではないかと推察した.その過程で,網膜下液の蛋白濃度が低下し滲出塊の融解が促進されたものと考えた.その結果,やや時間はかかったが網膜の復位と良好な視力回復が得られた.網膜.離が長期に及んでもuvealeffusionの視力予後は比較的良好といわれている.本症例でもほぼ2カ月間,網膜が.離していたにもかかわらず最終矯正視力は1.5であった.これは,座位においては下液の移動により黄斑部網膜が一時的に復位していたことで,黄斑部網膜の障害が最小限にとどまったためと考える.本症例は両眼に網膜下液中を移動する滲出塊を伴う特異なuvealeffusionであったが,強膜弁下強膜切除術が奏効し,(135)あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010849滲出塊の吸収消失が得られた.しかし再発の報告もみられるため,今後も注意深い経過観察が必要であり,再発時には硝子体手術を考慮する必要もあると考える.文献1)SchepensCL,BrockhurstRJ:Uvealeffusion,I.Clinicalpicture.ArchOphthalmol70:189-201,19632)GassJDM,JallowS:Idiopathicseriousdetachmentofthechoroid,ciliarybodyandretina(uvealeffusionsyndrome).Ophthalmology89:1018-1032,19823)GassJDM:Uvealeffusionsyndrome:Anewhypothesisconcerningpathogenesisandtechniqueofsurgicaltreatment.Retina3:159-163,19834)JohnsonMW,GassJDM:Surgicalmanagementoftheidiopathicuvealeffusionsyndrome.Ophthalmology97:778-785,19905)BrockhurstRJ:Vortexveindecompressionfornanophthalmicuvealeffusion.ArchOphthalmol98:1987-1990,19806)田上伸子,宇山昌延,山田佳苗ほか:Uvealeffusion,強膜の組織学的所見.日眼会誌97:268-274,19937)高橋寛二:Uvealeffusionsyndromeの病態,診断と治療.臨眼53:119-127,19998)MarmorMF,YaoXY:Conditionsnecessaryfortheformationofserousdetachment.Experimentalevidencefromthecat.ArchOphthalmol112:830-838,19949)村口玲子,難波美江,蔭山誠ほか:硝子体手術が奏効したUvealEffusionの1例.あたらしい眼科17:897-900,200010)町田繁樹,林一彦,長谷川豊ほか:Bullousretinaldetachmentの脈絡膜病変とその外科的治療法.日眼会誌101:481-486,199711)佐藤智樹,平田憲,武藤知之ほか:強膜開窓術を施行したUvealEffusionの臨床経過.眼紀52:409-414,200112)東雅美,忍足和浩,三木大二郎ほか:Uvealeffusionを発症した小眼球強膜の組織学的検討.眼科手術15:399-402,200213)細田ひろみ,野田徹:真性小眼球に伴うuvealeffusionに対するマイトマイシンC併用強膜開窓術.臨眼56:613-616,200214)武蔵トゥリーン,加藤整,中川夏司ほか:真性小眼球を伴わないUvealEffusionに対する強膜開窓術前後の超音波生体顕微鏡(UBM)の検討.眼臨97:730-733,200315)京兼郁江,安藤文隆,笹野久美子ほか:特発性uvealeffusionに対する硝子体手術.臨眼53:1351-1353,199916)島智子,濱田潤,岡村展明ほか:硝子体手術により網膜復位を得たUvealEffusionの1例.眼臨94:1177-1181,200017)藤関義人,高橋寛二,山田晴彦ほか:硝子体手術を行ったnanophthalmosを伴うuvealeffusionsyndromeの2症例.臨眼55:787-791,200118)大喜多隆秀,恵美和幸,豊田恵理子ほか:特発性uvealeffusionsyndromeに対する硝子体手術の有効性.日眼会誌112:472-475,2008***