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Dynamic Contour Tonometer を用いた,ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの眼圧下降率の比較

2010年9月30日 木曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(103)1269《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(9):1269.1272,2010cはじめに原発開放隅角緑内障の治療の目的は,眼圧を下げることにより緑内障性の視野障害を抑制することにある1).眼圧が統計学的に正常域にある正常眼圧緑内障の治療においても眼圧下降の重要性が指摘されている2).点眼薬による眼圧下降は,過去の約10年において,高い眼圧下降作用と安全性でプロスタグランジン製剤が重要な位置を占めるようになった3).プロスタグランジン誘導剤は房〔別刷請求先〕白木幸彦:〒526-8580長浜市大戌亥町313市立長浜病院眼科Reprintrequests:YukihikoShiraki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NagahamaCityHosptal,313Ohinui-cho,Nagahama526-8580,JAPANDynamicContourTonometerを用いた,ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの眼圧下降率の比較白木幸彦山口泰孝梅基光良植田良樹市立長浜病院眼科DynamicContourTonometerUsedtoCompareEffectsofLatanoprost,TravoprostandTafluprostinGlaucomaYukihikoShiraki,YasutakaYamaguchi,MitsuyoshiUmemotoandYoshikiUedaDepartmentofOphthalmology,NagahamaCityHospital目的:ラタノプロスト(LA),トラボプロスト(TR),タフルプロスト(TA)の眼圧下降作用を,Dynamiccontourtonometer(DCT)とGoldmannapplanationtonometer(GAT)を用いて評価する.対象および方法:対象は緑内障の日本人患者32症例58眼(開放隅角緑内障13眼,正常眼圧緑内障45眼).無点眼,もしくはwash-out後の眼圧をベースライン眼圧(BL)とし,その後1眼に対し,LA,TR,TAを1剤ずつ順次使用し,それぞれの点眼後の眼圧を測定した.結果:BLはGAT18.7±3.9mmHg,DCT23.5±4.3mmHg.点眼後眼圧はGATでは,LA,TR,TAの順に16.7±3.9mmHg,15.6±2.9mmHg,16.2±3.3mmHg.DCTでは19.7±4.0mmHg,18.5±3.4mmHg,19.3±3.2mmHgであり,3剤ともBLよりも有意差をもって眼圧が低下したが,3剤間では有意差はなかった.平均眼圧下降率は,GATではLA,TR,TAの順に,11.1±17.4%,16.7±14.6%,13.7±13.1%,DCTでは15.2±16.0%,21.4±12.0%,17.9±11.3%.眼圧下降率ではDCTでのLA,TR間のみ有意差を得た.Method:Participantscomprised32patients(58eyes)withopen-angleglaucoma(13eyes),ornormal-tensionglaucoma(45eyes),allofJapaneseorigin.Patientswereswitchedamonglatanoprost(LA),travoprost(TR),andtafluprost(TA)fora2-4weektreatmentperiodaftera2-4weekmedicine-freeperiod.Intraocularpressure(IOP)wasmeasuredatuntreatedbaselineandattheendofeachtreatmentperiod,usingGoldmannapplanationtonometer(GAT)andDynamiccontourtonometer(DCT).Result:ThemeanIOPatbaselinewas18.7±3.9mmHg(GAT)and23.5±4.3mmHg(DCT).Themeanpost-treatmentIOPresultwithGATwas16.7±3.9mmHg(LA),15.6±2.9mmHg(TR),and16.2±3.3mmHg(TA).TheresultwithDCTwas19.7±4.0mmHg(LA),18.5±3.4mmHg(TR),and19.3±3.2mmHg(TA).AllmedicationssignificantlyreducedmeanIOPfrombaseline.TheefficacyofIOPreductionshowednosignificantdifferenceamongmedicationswitheitherIOPmeasurement.TheIOPreductionpercentageasmeasuredbyGATwas11.1±17.4%(LA),16.7±14.6%(TR),and13.7±13.1%(TA);asmeasuredbyDCTitwas15.2±16.0%(LA),21.4±12.0%(TR),and17.9±11.3%(TA).TheDCT-measuredreductionrateforTRwassignificantlygreaterthatforLA.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(9):1269.1272,2010〕Keywords:ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト,眼圧,Dynamiccontourtonometer(DCT).latanoprost,travoprost,tafluprost,intraocularpressure,Dynamiccontourtonometer(DCT).1270あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(104)水産生に影響なく房水流出を増大するとされており4),海外ではラタノプロスト,ウノプロストン,トラボプロスト,ビマトプロストなどのプロスタングランジン製剤が臨床使用されている.長年にわたり日本においては,ラタノプロスト,ウノプロストンのみが臨床使用ができる状況であったが,近年,トラボプロスト,タフルプロストの2種が臨床でも使用することができるようになった.ビマトプロストはラタノプロストより有効に緑内障や高眼圧症の眼圧を下降させる5),もしくはラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロストが有効に眼圧を下降させるが相互に有意の違いがない6)など,施設により内容が異なることがあり,その視野など視機能についての長期的な影響もよく知られてはいない.さらに,日本における後発薬は日本人に対しての臨床報告はまだ少ない.特にタフルプロストは,海外でも発売されてから日が浅く,報告自体が少ない.適正使用のためには,まずは短期使用での眼圧下降の程度や有効性についての比較検討が必要である.今回筆者らは,通常診療において,緑内障ガイドライン7)で推奨されている治療トライアルを,ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストにおいて順次実施した.眼圧下降に最も有効な薬剤を各症例について知る必要があるため,同一症例に対して3剤を順次切り替えて,その眼圧下降作用を評価した.眼圧測定法もGoldmannapplanationtonometer(GAT)に加え,Dynamiccontourtonometer(DCT)を用いた.I対象および方法当院において視神経乳頭陥凹とそれに一致する視野障害から広義の原発開放隅角緑内障と診断された症例のうち,ラタノプロストのみを使用中,もしくは無点眼の症例で点眼が必要と判断された症例で,通常診療にあたって3剤を比較して最も有効なものを使用することに同意が得られた32症例58眼で検討を行った.落屑症候群を有する者,内眼手術歴がある者は除外した.男性は12症例22眼,女性は20症例36眼.年齢は71.9±9.4歳(44.87歳).緑内障の類型の内訳は狭義の原発開放隅角緑内障13眼,正常眼圧緑内障45眼であった.今回の研究開始まで無点眼であった症例は6眼であった.研究期間は2009年7.10月であった.もともと無点眼であった症例は点眼前の眼圧を,点眼中の症例は2.4週間の無点眼期間を設けてその後の眼圧をベースラインとした.その後ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの3剤を1種類ずつ順次切り替えたうえ,2.4週間使用後の眼圧を点眼後の眼圧とした.眼圧測定の時間帯はなるべく同一にした.3種点眼の順番は無作為とし,これについての検討はしていない.眼圧測定方法はGATに加え,DCTを用いた.DCTは圧センサーを用いた眼圧測定方法で,角膜厚の影響を受けにくく,拡張期眼圧とともに眼球脈波(ocularpulseamplitude:OPA)も測定することができ,拡張期眼圧に眼球脈波の値を加えることによって収縮期眼圧も測定することができるものである.小数点以下一桁まで表示することができるため,より低眼圧領域での正確な解析に有用と考えられる8,9).今回GAT値,DCT値を用いて眼圧下降値と下降率を算出した.測定値は個人情報とまったく分離してデータ解析に用い,すべての手順はヘルシンキ宣言にのっとって行った.データの収集と公開に関しては当院の倫理委員会の了承を得て行った.統計学的検討は,2群間の差はt-testを行った.3剤の比較には分散分析を行い,有意差を認めた場合は多重比較(Tukey)を行った.p<0.05で有意差ありとした.II結果各点眼平均期間はラタノプロスト16.8日,トラボプロスト14.7日,タフルプロスト15.1日であった.ベースライン眼圧はGAT18.7±3.9mmHg,DCT23.5±4.3mmHgであった.GATでの点眼後眼圧はラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの順に16.7±3.9mmHg,15.6±2.9mmHg,16.2±3.3mmHgで,DCTでは19.7±4.0mmHg,18.5±3.4mmHg,19.3±3.2mmHgであった(図18.7±3.916.7±3.915.6±2.916.2±3.3BLLATRTA35302520151050GAT眼圧(mmHg)23.5±4.319.7±4.018.5±3.419.3±3.2BLLATRTA35302520151050DCT眼圧(mmHg)図1各種眼圧測定法によるベースライン(BL)とラタノプロスト(LA),トラボプロスト(TR),タフルプロスト(TA)の平均眼圧値(105)あたらしい眼科Vol.27,No.9,201012711).どちらの眼圧測定値においても,3剤すべてで優位にベースラインより眼圧下降作用を認めた(p<0.01).3剤間は,分散分析において有意差は認めなかった.平均眼圧下降率は,GATではラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの順に,11.1±17.4%,16.7±14.6%,13.7±13.1%で,DCTでは15.2±16.0%,21.4±12.0%,17.9±11.3%であった(図2).3剤間で,統計学的に有意差を認めたのはDCT値でのラタノプロストとトラボプロスト間(p=0.027)のみであったが,トラボプロストがどちらの眼圧値においても高い眼圧下降率を有する傾向を認めた.眼圧下降率を眼圧測定法,点眼薬別に10%以下,10%から20%,20%から30%,30%以上に分け,それぞれが占める割合を図3に表示した.GATでは特に3剤の間に大きな違いはみられなかった.DCTでは,ラタノプロストに比べ,トラボプロスト,タフルプロストともに10%以上の眼圧下降率を示した症例が増えていた.タフルプロストでは,20%以上の高い効果を示した割合はラタノプロストと同程度であった.一方,トラボプロストはラタノプロストに比べて20%以上の眼圧下降を示す症例が増加した.各症例に対し最も眼圧下降率が高かった薬剤の内訳は図4のようになった(3剤とも10%以下の眼圧下降率を示したものは無効とした.GATの結果とDCTの結果に差異がなかったためDCTでの結果のみ記載した).ラタノプロストは14%(8眼),トラボプロスト48%(28眼),タフルプロスト31%(18眼),無効は7%(4眼)であった.トラボプロストが半数の症例で最も高い効果を示した.11.1±17.416.7±14.613.7±13.1(%)LATRTA15.2±16.021.4±12.017.9±11.3LATRTA50403020100-10(%)50403020100-10GATDCT図2各種眼圧測定法によるラタノプロスト(LA),トラボプロスト(TR),タフルプロスト(TA)の平均眼圧下降率LA39.7TR37.9TA■:10%以上■:10~20%■:20~30%■:30%以上50.0LA37.9TRGATDCT20.7TA24.125.931.017.231.025.98.613.820.719.017.212.112.124.137.917.243.119.013.8100806040200(%)図3各種眼圧測定法によるラタノプロスト(LA),トラボプロスト(TR),タフルプロスト(TA)の眼圧下降率の内訳50.040.030.020.010.00.035.9LA(%)a19.3TR20.5TA50.040.030.020.010.00.025.6TR(%)b13.3LA14.9TA50.040.030.020.010.00.021.3TA(%)c7.6LA15.6TR図5同一症例のなかで,最も効果のある薬剤と他の2剤の平均眼圧下降率a:ラタノプロスト(LA)が最有効薬の症例,b:トラボプロスト(TR)が最有効薬の症例,c:タフルプロスト(TA)が最有効薬の症例.TR48%TA31%LA14%無効7%図4DCTにおいて各症例で最も効果の高かった薬剤の内訳LA:ラタノプロスト,TR:トラボプロスト,TA:タフルプロスト.1272あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(106)さらに,最も効果の高い薬剤の眼圧下降率と,他の2剤の薬剤の平均眼圧下降率(DCT値)を算出し,同一症例のなかで,最も効果のある薬剤と他の2剤の効果の差がどれほどあるのかを検討した.ラタノプロストが最有効薬の症例(8眼)での各点眼薬の平均眼圧下降率は,ラタノプロスト35.9%に対し,トラボプロスト19.3%,タフルプロスト20.5%(図5-a).トラボプロストが最有力の症例(28眼)では,トラボプロスト25.6%に対し,ラタノプロスト13.3%,タフルプロスト14.9%(図5-b).タフルプロストが最有効薬の症例(18眼)では,タフルプロスト21.3%に対し,ラタノプロスト7.6%,トラボプロスト15.6%であった(図5-c).ラタノプロストが最有効薬の場合は,他の2剤の効果が高いだけに,それよりも高い効果をラタノプロストは認めた.一方,タフルプロストが最有効薬の場合はラタノプロストの効果が低い傾向にあった.III考按眼圧下降作用においてはトラボプロストが比較的高い効果があることが示されたが,統計学的な有意差は,DCTで測定された下降率についてラタノプロストとトラボプロスト間で認めたのみであった.すべてにおいてトラボプロストが最有効なわけではなく,症例によってはラタノプロスト,もしくはタフルプロストが最も眼圧下降率が高かった.日内変動や季節変動などの影響10)は考えねばならないが,各症例に対して,最も眼圧下降作用のある薬剤は一様ではないとも考えられ,慎重な点眼薬の選択が必要と思われる.眼圧下降作用に関しては,GATに比べ,DCTでより変化が鋭敏に示されている.DCTでは小数点以下一桁まで測定できる.今回の解析には正常眼圧緑内障が多く含まれており,低眼圧の症例での変化がより正確に反映された可能性がある.また眼圧の平均値で集団を2分して,3剤の眼圧下降率を集団間で比較したが,低眼圧側の集団で下降率が低値すなわち無効となる症例が増加することを除き著明な有効性の違いは集団間でみられなかったため,今回は全体の解析を報告するにとどめた.DCTでは,OPA値の測定が可能であり,拡張期眼圧に加え,DCT値にOPA値を加えた収縮期眼圧も測定することができる.OPA値については,脈絡膜循環を反映するとの報告がある11)が,その値が臨床的に緑内障に対してどのような影響を与えるかは明らかな結論はない.筆者らは収縮期眼圧(DCT+OPA)に関しても同様の検討を行ったが,拡張期眼圧(DCT)での結果と特に大きな違いはみられなかったため本報告からは省いた.文献1)TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS):7.Therelationshipbetweencontrolofintraocularpressureandvisualfielddeterioration.AmJOphthalmol130:429-440,20002)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressures.AmJOphthalmol126:487-497,19983)AlexanderCL,MillerSJ,AbelSR:Prostaglandinanalogtreatmentofglaucomaandocularhypertension.AnnPharmacother36:504-511,20024)LimKS,NauCB,O’ByrneMM:Mechanismofactionofbimatoprost,latanoprost,andtravoprostinhealthysubjects.Ophthalmology115:790-795,20085)NoeckerRS,DirksMS,Bimatoprost/LatanoprostStudyGroup:Asix-monthrandomizedclinicaltrialcomparingtheintraocularpressure-loweringefficacyofbimatoprostandlatanoprostinpatientswithocularhypertensionorglaucoma.AmJOphthalmol135:55-63,20036)OrzalesiN,RossettiL,BottoliAetal:Comparisonoftheeffectsoflatanoprost,travoprost,andbimatoprostoncircadianintraocularpressureinpatientswithglaucomaorocularhypertension.Ophthalmology113:239-246,20067)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン.日眼会誌107:125-157,20038)冨山浩志,石川修作,新垣淑邦ほか:DynamicContourTonometer(DCT)とGoldmann圧平眼圧計,非接触型眼圧計の比較.あたらしい眼科25:1022-1026,20089)山口泰孝,梅基光良,木村忠貴ほか:DynamicContourTonometerによる眼圧測定と緑内障治療.あたらしい眼科26:695-699,200910)GiuffreG,GiammancoR,DardanoniGetal:Prevalenceofglaucomaanddistributionofintraocularpressureinapopulation.ActaOphthalmolScand73:222-225,199511)TrewDR,SmithSE:Postualstudiesinpulsatileocularbloodflow:II.Chronicopenangleglaucoma.BrJOphthalmol75:71-75,1991***

原発開放隅角緑内障におけるラタノプロストと塩化ベンザルコニウム非含有トラボプロスト点眼前後の角膜厚および眼圧変化

2010年7月30日 金曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(95)955《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(7):955.958,2010cはじめにラタノプロストおよびトラボプロストはいずれもプロスタグランジン関連薬の一つであり,1日1回で強力な眼圧下降効果を示し,また,全身副作用がないことから第一選択薬として広く用いられている.プロスタグランジン関連薬の眼圧下降機序はいまだ明らかではないが,おもに毛様体および強膜のmatrixmetalloproteinase(MMP)の活性化に伴うコラーゲンの減少を含む細胞外マトリックスのリモデリングと考えられている1).しかし,FP受容体は角膜にもあるため2),同様の機序が角膜においてもみられる可能性がある.近年,プロスタグランジン関連薬治療前後の中心角膜厚の変化に関する報告が散見されるが,治療後,中心角膜厚は減少する3.5),変わらない6),増加する7)報告があり,プロスタグランジン関連薬の中心角〔別刷請求先〕里誠:〒164-8541東京都中野区中野4-22-1東京警察病院眼科Reprintrequests:MakotoSato,M.D.,TokyoMetropolitanPoliceHospital,4-22-1Nakano,Nakano-ku,Tokyo164-8541,JAPAN原発開放隅角緑内障におけるラタノプロストと塩化ベンザルコニウム非含有トラボプロスト点眼前後の角膜厚および眼圧変化里誠中元兼二小川俊平安田典子東京警察病院眼科EffectofLatanoprostandTravoprostwithoutBenzalkoniumChlorideonCornealThicknessandIntraocularPressureinPrimaryOpen-AngleGlaucomaMakotoSato,KenjiNakamoto,ShunpeiOgawaandNorikoYasudaDepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanPoliceHospital広義の原発開放隅角緑内障30例57眼においてラタノプロストと塩化ベンザルコニウム(BAC)非含有トラボプロストの中心角膜厚,周辺角膜厚および眼圧に及ぼす効果について検討した.対象を無作為にラタノプロスト治療群,BAC非含有トラボプロスト治療群に割付け,ラタノプロスト0.005%(キサラタンR),BAC非含有トラボプロスト0.004%(トラバタンズR)を1日1回夜片眼または両眼に点眼させて,治療前および治療後8週に,角膜厚および眼圧を測定した.眼圧は両治療群とも治療後有意に下降した(p<0.001).眼圧下降率は,両治療群間に有意な差はなかった(p=0.72).中心角膜厚は,ラタノプロスト治療群では治療前後で有意な変化はなかった(p=0.20)が,BAC非含有トラボプロスト治療群では治療後有意に減少した(p=0.007).周辺角膜厚は両治療群とも治療後有意に減少した(ラタノプロスト治療群:p=0.03,BAC非含有トラボプロスト治療群:p=0.002).Weinvestigatedtheeffectoflatanoprostandtravoprostwithoutbenzalkoniumchloride(BAC-freetravoprost)oncornealthickness(CT),paracentralCTandintraocularpressure(IOP).Subjectscomprised30patients(57eyes)withprimaryopen-angleglaucomawhowererandomlyassignedtoreceivelatanoprost(16patients,30eyes)orBAC-freetravoprost(14patients,27eyes)for8weeks.CTandIOPweremeasuredbeforeandaftertreatment.StatisticallysignificantIOPreductionwasobservedinbothgroups(p<0.001),withnosignificantdifferencebetweentheirpercentreductions(p=0.72).CentralCTdecreasedsignificantlyonlyintheBAC-freetravoprostgroup(p=0.007);peripheralCTdecreasedsignificantlyinbothgroups(latanoprostgroup:p=0.03,BAC-freetravoprostgroup:p=0.002).〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(7):955.958,2010〕Keywords:原発開放隅角緑内障,ラタノプロスト,トラボプロスト,角膜厚,眼圧.primaryopen-angleglaucoma,latanoprost,travoprost,cornealthickness,intraocularpressure.956あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(96)膜厚に及ぼす効果に関してもいまだ明らかでない.また,プロスタグランジン関連薬の傍中心角膜厚に及ぼす効果に関しては,筆者らの調べる限り,いまだ報告されていない.そこで今回,広義の原発開放隅角緑内障におけるラタノプロストと塩化ベンザルコニウム(BAC)非含有トラボプロストの中心角膜厚,傍中心角膜厚および眼圧に及ぼす効果について検討した.I対象および方法対象は2008年4月から12月までに東京警察病院を受診した,治療歴のない広義の原発開放隅角緑内障患者30例57眼で,年齢は56.3±13.0(31.80)歳,性別は男性20例,女性10例である.原発開放隅角緑内障(狭義)は3例6眼,正常眼圧緑内障は27例51眼であった.除外基準は,重篤な角膜疾患,ぶどう膜炎の既往のあるもの,内眼手術の既往のあるもの,角膜内皮細胞密度が1,500個/mm2以下のもの,コンタクトレンズ装用者,担当医が不適切と判断したものである.本試験は東京警察病院治験審査委員会にて承認されており,本試験開始前に全例に試験の内容などを口頭および文書を用いて十分に説明し同意を得た.対象を無作為にラタノプロスト治療群16例30眼,BAC非含有トラボプロスト治療群14例27眼に割付けた.ラタノプロスト治療群はラタノプロスト0.005%(キサラタンR)を,また,BAC非含有トラボプロスト治療群はBAC非含有トラボプロスト0.004%(トラバタンズR)を1日1回夜片眼または両眼に点眼させた.1滴点眼後5分以上涙.圧迫および眼瞼を閉瞼させた.治療前および治療後8週に,角膜厚および眼圧を測定した.角膜厚は,ビサンテ前眼部光干渉断層計のPachymetryscan(スキャン方向8方向)で1回測定し,角膜中心から0.2mm(中心角膜)の平均値と2.5mm(傍中心角膜)の平均値を用いてそれぞれ検討した.なお,ビサンテ前眼部光干渉断層計のPachymetryscanでの中心角膜厚測定の再現性は良好であることはすでに報告されている8).眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で治療前後ともに同一医師が1回測定した.測定は,角膜厚から行い,直後に眼圧を測定した.まず,両群の背景因子を比較した.つぎに,各治療群において治療前後の中心角膜厚,傍中心角膜厚,眼圧を比較した.また,各治療群において治療前中心角膜厚と眼圧下降率[((治療前眼圧.治療後眼圧)/治療前眼圧)×100(%)]との関係を回帰分析を用いて検討した.さらに,各群において中心角膜厚変化率[((治療前中心角膜厚.治療後中心角膜厚)/治療前中心角膜厚)×100(%)]と眼圧下降率との関係を回帰分析を用いて検討した.統計解析は,群内比較にはWilcoxonsigned-rankstest,群間比較には,Mann-WhitneyUtestを用いた.有意水準はp<0.05とした.II結果経過中,全例重篤な副作用はなく,中止・脱落したものはなかった.両治療群の背景因子には有意差はなかった(表1).眼圧は,ラタノプロスト治療群では治療前15.5±3.2mmHg,治療後13.4±2.5mmHg,BAC非含有トラボプロスト治療群では治療前16.3±3.2mmHg,治療後13.9±2.9mmHgであり,両治療群とも治療後有意に下降した(p<0.001)(表1).眼圧下降率はラタノプロスト治療群で11.6±16.4%,BAC非含有トラボプロスト治療群で13.6±16.5%であったが,両治療群間に有意な差は認めなかった(p=0.72)(図1).中心角膜厚は,ラタノプロスト治療群では治療前527.5±25.8μm,治療後526.3±26.7μmであり,治療前後で有意差表1背景因子治療群ラタノプロストp値(n=30)BAC非含有トラボプロスト(n=27)年齢(歳)58.5±12.153.9±13.90.17性別(男/女)11/59/50.20等価球面度数(D).2.5±2.4.3.7±4.30.45角膜厚(μm)中心(0.2mm)527.5±25.8528.9±43.00.94傍中心(2.5mm)544.3±26.3547.1±42.40.77眼圧(mmHg)15.5±3.216.3±3.20.39MD(dB).4.6±6.1.4.8±4.70.55両治療群の背景因子には有意差はなかった.MD:meandeviation.平均値±標準偏差.0481216ラタノプロスト治療群(n=30)BAC非含有トラボプロスト治療群(n=27)眼圧下降率(%)Mean±SE図1眼圧下降率比較眼圧下降率はラタノプロスト治療群で11.6±16.4%,BAC非含有トラボプロスト治療群で13.6±16.5%であり,両治療群間に有意な差はなかった(p=0.72).(97)あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010957はなかった(p=0.20).BAC非含有トラボプロスト治療群では,中心角膜厚は治療前528.9±43.1μm,治療後525.3±44.7μmであり,治療後中心角膜厚は有意に減少した(p=0.007)(表2).傍中心角膜厚は,ラタノプロスト治療群では治療前544.3±26.3μm,治療後542.0±28.1μm(p=0.03),BAC非含有トラボプロスト治療群は治療前547.1±42.4μm,治療後543.0±43.4μmであり(p=0.002),両群とも治療後有意に減少した(表2).治療前中心角膜厚と眼圧下降率の関係を回帰分析で検討したところ,両群とも治療前中心角膜厚と眼圧下降率の間に有意な相関はなかった(ラタノプロスト治療群:眼圧下降率=.35.3+0.09×治療前中心角膜厚,r2=0.02,r=0.14,p=0.46,BAC非含有トラボプロスト治療群:眼圧下降率=.13.6+0.05×治療前中心角膜厚,r2=0.02,r=0.13,p=0.50).中心角膜厚変化率と眼圧下降率の間には,両治療群ともに有意な正の相関があり,中心角膜厚変化率が大きいほど眼圧下降率が大きかった(ラタノプロスト治療群:眼圧下降率=10.2+6.2×中心角膜厚変化率,r2=0.16,r=0.41,p=0.03,BAC非含有トラボプロスト治療群:眼圧下降率=9.9+5.3×中心角膜厚変化率,r2=0.17,r=0.41,p=0.03)(図2).III考按ラタノプロストとトラボプロストの眼圧下降効果を比較した海外の報告によると,夕方9)または点眼24時間後のトラフ時刻10)で,トラボプロストのほうがラタノプロストより眼圧下降効果が大きいとするものがあるが,点眼12時間後のピーク時刻においては両者の眼圧下降効果には差がないとする報告が多い9.11).今回筆者らは,日本人を対象にピーク時刻でのラタノプロストとBAC非含有トラボプロストの眼圧下降効果を比較したところ,両者の眼圧下降率には有意な差がなかった.このことから,日本人の原発開放隅角緑内障(広義)においてもラタノプロストとBAC非含有トラボプロストの眼圧下降効果はピーク時刻では差がないといえる.プロスタグランジン関連薬の中心角膜厚への影響に関しては,近年いくつかの報告が散見されるが,いまだ明らかではない.Arcieriら6)によると,原発開放隅角緑内障および高眼圧症患者を対象にして,ラタノプロスト,トラボプロストおよびビマトプロストの血液房水柵および中心角膜厚へ及ぼす影響を調べたところ,ビマトプロストのみが中心角膜厚を有意に減少させ,ラタノプロストおよびトラボプロストでは中心角膜厚は有意に変化しなかった.一方,Hatanakaら4)は,開放隅角緑内障患者52例52眼をビマトプロスト,トラボプロストまたはラタノプロストで8週治療したところ,中心角膜厚はすべての群において有意に減少したと報告している.また,逆に治療後中心角膜厚が増加したとする報告も表2治療前後の眼圧および角膜厚変化治療群ラタノプロスト(n=30)BAC非含有トラボプロスト(n=27)眼圧(mmHg)治療前15.5±3.2p<0.001*16.3±3.2p<0.001*後13.4±2.513.9±2.9角膜厚(μm)中心(0.2mm)治療前527.5±25.8p=0.20528.9±43.0p=0.007*後526.3±26.7525.3±44.7傍中心(2.5mm)治療前544.3±26.3p=0.03*547.1±42.4p=0.002*後542.0±28.1543.0±43.4*:有意差あり.平均値±標準偏差.ラタノプロスト治療群非含有トラボプロスト治療群402000-20-2-1012-3-2-10123眼圧下降率(%)4020-20眼圧下降率(%)中心角膜厚変化率(%)中心角膜厚変化率(%)図2中心角膜厚変化率と眼圧下降率との関係中心角膜厚変化率と眼圧下降率の間には,両治療群ともに有意な正の相関があり,両群とも中心角膜厚変化率が大きいほど眼圧下降率が大きかった(ラタノプロスト治療群:眼圧下降率=10.2+6.2×中心角膜厚変化率,r2=0.16,r=0.41,p=0.03,BAC非含有トラボプロスト治療群:眼圧下降率=9.9+5.3×中心角膜厚変化率,r2=0.17,r=0.41,p=0.03).958あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(98)ある7).Bafaら7)は,開放隅角緑内障患者108眼を無作為にラタノプロスト,トラボプロストまたはビマトプロストで2年間治療したところ,ラタノプロストとビマトプロストでは,中心角膜厚は治療後有意に増加したが,トラボプロスト治療群では有意な変化はなかったと報告している.このように,現時点では,両薬剤の中心角膜厚に与える影響については,明らかではない.また,傍中心角膜厚も,中心角膜厚と同様に眼圧と有意な正の相関を示すことがHamilton12)により報告されているが,これまでプロスタグランジン関連薬の傍中心角膜厚に及ぼす効果に関する報告はない.そこで今回,広義の原発開放隅角緑内障患者を対象に,ラタノプロスト,BAC非含有トラボプロストの中心角膜厚および傍中心角膜厚への影響を調べた.治療後の中心角膜厚は,ラタノプロスト治療群では,平均1.2μm,BAC非含有トラボプロスト治療群では平均3.7μm減少していたが,有意な変化はBAC非含有トラボプロスト治療群のみにみられた.また,傍中心角膜厚はラタノプロスト治療群では,平均5.0μm,BAC非含有トラボプロスト治療群は平均6.0μm減少しており,これらは両治療群とも有意な変化であった.しかし,中心角膜厚変化値の範囲はラタノプロスト治療群で.12.+10μm,BAC非含有トラボプロスト治療群で.14.+14μmと小さく,また,Goldmann圧平眼圧計の測定誤差も併せて考慮すると,両薬剤による中心角膜厚の変化が眼圧測定値に与える影響は,臨床上ほとんど問題にならないと考えられる13).今回の検討では,両治療群ともに中心角膜厚変化率と眼圧下降率の間に有意な正の相関があり,両治療群ともに中心角膜厚変化率が大きいほど眼圧下降率が大きいという結果であった.仮に,プロスタグランジン関連薬による角膜厚減少の機序が,眼圧下降機序と同様にMMPの活性化によるコラーゲン減少を含む細胞外マトリックスのリモデリングであるとすると1,14),毛様体や強膜における薬理作用が強い症例ほど,角膜での作用もより強い可能性が考えられる.あるいは,この中心角膜厚減少による見かけ上の眼圧下降効果のために真の眼圧下降効果が過大評価されている可能性も否定できない.しかし,今回の中心角膜厚変化率と眼圧下降率の相関はいずれの治療群においても弱く,また,本試験は少数例,短期間での検討であるため,より多数例,長期間で検討する必要があると考える.文献1)TorisCB,GabeltBT,KaufmannPL:Updateonmechanismofactionoftopicalprostaglandinsforintraocularpressurereduction.SurvOphthalmol53:S107-S120,20082)Schlotzer-SchrehardtU,ZenkelM,NusingRM:ExpressionandlocalizationofFPandEPprostanoidreceptorsubtypesinhumanoculartissues.InvestOphthalmolVisSci43:1475-1487,20023)SenE,NalcaciogluP,YaziciAetal:Comparisonoftheeffectoflatanoprostandbimatoprostoncentralcornealthickness.JGlaucoma17:398-402,20084)HatanakaM,VessaniRM,EliasIRetal:Theeffectofprostaglandinanalogsandprostamideoncentralcornealthickness.JOculPharmacolTher25:51-53,20095)HarasymowyczPJ,PapamatheakisDG,EnnisMetal:Relationshipbetweentravoprostandcentralcornealthicknessinocularhypertensionandopen-angleglaucoma.Cornea26:34-41,20076)ArcieriES,PierreFilhoPT,WakamatsuTHetal:Theeffectsofprostaglandinanaloguesonthebloodaqueousbarrierandcornealthicknessofphakicpatientswithprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.Eye22:179-83,20087)BafaM,GeorgopoulosG,MihasCetal:Theeffectofprostaglandinanaloguesoncentralcornealthicknessofpatientswithchronicopen-angleglaucoma:a2-yearstudyon129eyes.ActaOphthalmol,2009,Epubaheadofprint8)大貫和徳,前田征宏,伊藤恵里子ほか:検者間および同一検者での前眼部OpticalCoherenceTomographyの測定再現性.視覚の科学29:103-106,20089)NetlandPA,LandryT,SullivanEKetal:Travoprostcomparedwithlatanoprostandtimololinpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOphthalmol132:472-484,200110)DubinerHB,SircyMD,LandryTetal:Comparisonofthediurnalocularhypotensiveefficacyoftravoprostandlatanoprostovera44-hourperiodinpatientswithelevateintraocularpressure.ClinicalTher26:84-91,200411)vanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocularpressure-loweringeffectsofallcommonlyusedglaucomadrugs:ameta-analysisofrandomizedclinicaltrials.Ophthalmology112:1177-1185,200512)HamiltonK:Midperipheralcornealthicknessaffectsnoncontacttonometry.JGlaucoma18:623-627,200913)DoughtyMJ,ZamanML:Humancornealthicknessanditsimpactonintraocularpressuremeasures:areviewandmeta-analysisapproach.SurvOphthalmol44:367-408,200014)WuKY,WangHZ,HongSJ:Effectoflatanoprostonculturedporcinecornealstromalcells.CurrEyeRes30:871-879,2005***

日本人正常眼圧緑内障眼に対するラタノプロストからトラボプロスト点眼液への切り替え試験による長期眼圧下降効果

2010年5月31日 月曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(115)687《原著》あたらしい眼科27(5):687.690,2010cはじめにプロスト系プロスタグランジン関連薬(以下,プロスト系薬剤)は現在眼圧下降治療薬のなかで最大の眼圧下降効果を有し,終日にわたる眼圧下降作用と眼圧変動幅抑制効果の点でも優れている.さらに,1回点眼であることと局所のみの副作用により,良いアドヒアランスが見込まれ,第一選択薬としての地位を確立している.すでに4種類のプロスト系薬剤が発売されているが,ラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロストは海外での臨床データが蓄積し,最近のメタアナリシス解析でもほぼ同様な25.30%の眼圧下降効果を有することが判明している1).日本で発売されて10年になるラタノプロストは,日本人正常眼圧緑内障(NTG)を対象〔別刷請求先〕相原一:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学医学部眼科学教室Reprintrequests:MakotoAihara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,UniversityofTokyoGraduateSchoolofMedicine,7-3-1Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPAN日本人正常眼圧緑内障眼に対するラタノプロストからトラボプロスト点眼液への切り替え試験による長期眼圧下降効果大谷伸一郎*1湖.淳*2鵜木一彦*3竹内正光*4宮田和典*1相原一*5*1宮田眼科病院*2湖崎眼科*3うのき眼科*4竹内眼科医院*5東京大学大学院医学系外科学専攻感覚運動機能医学講座眼科学IntraocularPressure-ReductionEffectofSwitchingfromLatanoprosttoTravoprostinJapaneseNormal-TensionGlaucomaPatientsShin-ichiroOtani1),JunKozaki2),KazuhikoUnoki3),MasamitsuTakeuchi4),KazunoriMiyata1)andMakotoAihara5)1)MiyataEyeHospital,2)KozakiEyeClinic,3)UnokiEyeClinic,4)TakeuchiEyeClinic,5)DepartmentofOphthalmology,UniversityofTokyoGraduateSchoolofMedicine日本人正常眼圧緑内障(NTG)眼におけるトラボプロスト0.004%(トラバタンズR)点眼による眼圧下降効果をラタノプロスト0.005%(キサラタンR)点眼液からの前向き切り替え試験で検討した.4施設において日本人NTG眼57例57眼をエントリーし前向きに眼圧,視力,充血,角膜上皮障害を,切り替え後1,3カ月後に評価し,エントリー時と比較検討した.3カ月間持続点眼できた38例のエントリー時,1,3カ月の眼圧はそれぞれ13.4±2.3,12.8±2.0,12.7±1.8mmHg(平均±標準偏差)であり有意な眼圧下降効果が得られた(paired-ttest,p<0.05).視力,充血には変化がなかったが,角膜上皮障害は1カ月で著明に改善し,その後3カ月間悪化しなかった.トラボプロスト点眼液は,日本人正常眼圧緑内障眼に対してラタノプロストと同様な眼圧下降効果が期待でき,また角膜上皮障害を惹起しにくいことが示された.Theintraocularpressure(IOP)-loweringeffectoftravoprost0.004%inJapanesenormal-tensionglaucoma(NTG)patientswasprospectivelyassessedbyreplacinglatanoprost0.005%withtravoprostat4eyecenters.Inthe57NTGpatientsenrolled,IOP,visualacuity,hyperemiaandocularsurfacedamagewereevaluatedat1and3months.In38patientsthatcompletedtheprotocol,IOPatentry,1and3monthswas13.4±2.3mmHg,12.8±2.0mmHgand12.7±1.8mmHg,respectively.IOPat1and3monthswassignificantlyreducedcomparedtothevalueatentry(p<0.05).Therewasnosignificantdifferenceinvisualacuityorhyperemiaamongthe3timepoints,whereascornealepitheliopathywassignificantlyimprovedat1monthandwasnotworsenedat3months.TravoprosthasanIOP-loweringeffectsimilartothatoflatanoprostinJapaneseNTGpatients,andhaslessdetrimentaleffectonthecornealsurfacethandoeslatanoprost.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(5):687.690,2010〕Keywords:緑内障,眼圧,ラタノプロスト,トラボプロスト,塩化ベンザルコニウム.glaucoma,intraocularpressure,latanoprost,travoprost,benzalkoniumchloride.688あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(116)とした研究においても,約10.20%の眼圧下降効果を示し,さらにベースライン眼圧が15mmHg以下の場合でも1mmHg以上の有意な眼圧下降効果が得られており2.5),特に低眼圧で眼圧下降効果が得られにくい患者には,確実な眼圧下降効果を示しアドヒアランスを向上させるために重要な薬物である.しかし,ラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロストは15mmHg以上の緑内障患者を対象に治験が行われており,純粋にNTGを対象とした治験や報告はない.一方,国内開発のタフルプロストは臨床開発治験において原発開放隅角緑内障(OAG)を対象にラタノプロストに対して非劣勢の眼圧下降効果を示し,またNTG眼を対象に4週間で.4mmHgの有意な眼圧下降を有していることが第三相試験で判明している(タフルプロストインタビューフォーム).しかし,NTGを対象にラタノプロストと比較した報告はなく,長期使用における眼圧下降効果も不明である.プロスト系関連薬トラボプロストのトラバタンズR0.004%点眼液は,防腐剤として塩化ベンザルコニウム(benzalkoniumchloride:BAC)を含有せず,SofZiaRというZn(亜鉛)を用いたイオン緩衝系システムを導入している.日本でのトラボプロスト点眼液導入に際し,臨床治験では,BAC含有0.004%トラボプロスト(トラバタンR)を用いたNTGを含むOAGを対象にしていたため,SofZiaR含有0.004%トラボプロスト(トラバタンズR)の日本人NTGにおける眼圧下降効果の報告はない.BACは界面活性剤であるため,細胞膜の透過性を亢進させ細胞を破壊することによる抗菌作用をもつ一方,薬剤透過性を亢進する可能性があるため,BACの有無は薬効に影響することが懸念される.そこで,日本人NTG患者におけるキサラタンRからの切り替えによる眼圧下降効果を多施設で前向きに3カ月にわたり検討した.I対象および方法1.対象参加4施設(宮田眼科病院,うのき眼科,湖崎眼科,竹内眼科医院)に2008年1月から2月にかけて通院中の患者のうち,すでにNTGと診断された患者で,3カ月以上ラタノプロスト(キサラタンR)点眼液を単剤投与されている57例57眼を対象にした.評価対象眼は両眼NTGの場合は眼圧が高いほうもしくは同じ場合は右眼とした.なお,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則し,共同設置の倫理委員会の承認を経て,患者からの同意を得たうえで実施された.2.方法エントリー時にラタノプロスト点眼液をトラボプロスト点眼液に切り替え,変更前および変更後1および3カ月の午前もしくは午後の同一時間帯に受診後,視力を測定,結膜充血の観察,さらにフルオレセイン染色による角膜病変をコバルトブルーフィルターもしくはブルーフリーフィルターを用いて細隙灯顕微鏡で観察,眼圧をGoldmann圧平眼圧計にて測定した.主要評価項目は眼圧であり,変更前エントリー時の眼圧測定値と,変更後1および3カ月の測定値とをpairedt-testにて比較した.副次的評価項目である角膜病変は点状表層角膜症(SPK)をAD分類6)を用いて評価し,結膜充血は4施設共通の標準写真を用いて,正常範囲,軽度,中等度,重度の4段階に分類した.II結果試験期間中の1カ月以内に14例脱落があった.内訳は,充血6例,眼圧上昇2例(16から17mmHg,16から19mmHg),他は表1のとおりであり,少なくとも主剤に関係ある重大な副作用は認められなかった.さらに3カ月までに5例の脱落があり,その内訳は,理由不明の中止例が3例,来院しなかった2例であった.最終的に38例38眼(エントリー中67.2%)が3カ月間持続点眼可能であった.38例は男性8例,女性30例,平均年齢68.2±10.7歳(34.82歳)であった.エントリー時,変更後1,3カ月の視力は,logMAR視力で0.89,0.86,0.84と有意差がなかった.眼圧は図1のとおり,エントリー時13.4±2.3mmHgに対し,変更後1カ月で12.8±2.0mmHg,3カ月で12.7±1.8mmHgと有意に切り替え眼圧(mmHg)20151050*p=0.02*p=0.03エントリー時(ラタノプロスト)トラボプロスト変更1カ月後継続期間(月)トラボプロスト変更3カ月後13.4±2.312.8±2.012.7±1.8図1ラタノプロストからトラボプロストへの切り替えによる眼圧の推移n=38,paired-ttest,p=0.01(1カ月),p=0.03(3カ月).表13カ月経過観察中の脱落理由1カ月以内脱落理由充血異物感不快感頭痛,めまい眼圧上昇眼圧変化がないため6例131213カ月以内脱落理由原因不明通院せず32(117)あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010689下降した(paired-ttest,p=0.02,0.03).SPKのAD分類の変化を表2に示す.エントリー時にSPKを認めた症例は38例中18例(47.4%)であった.A1D1が13例(34.2%),A1D2が1例(2.6%),A2D1が3例(7.9%),A2D2が1例(2.6%)であったが,変更後1,3カ月でA1D1が2例(5.3%)ずつと著明に改善した(c2検定,p<0.01).結膜充血はエントリー時に軽度充血が5例,変更後1カ月で8例,3カ月で0例であった.III考按今回の検討は,同系統のプロスト系薬剤であるラタノプロストからトラボプロストへの切り替えによる日本人NTG眼に対する長期眼圧下降効果であるが,BAC含有ラタノプロストから,BAC非含有トラボプロストに切り替えたことにより,BACによるオキュラーサーフェスへの影響と主剤のプロスト系の効果とがともに影響した結果であり,単純に主剤の効果を比較検討したものではない.過去のBAC含有点眼液トラボプロストとラタノプロストの緑内障および高眼圧症患者を対象にした眼圧下降効果を比較したメタアナリシスの報告7)では,ともに点眼後のトラフ値,ピーク値でラタノプロストが28%,31%,トラボプロストが29%,31%と同様な眼圧下降を呈することがわかっている.ただし,これらのメタアナリシスの解析に用いられた報告はトラボプロストについてはBAC含有点眼液であり,最近わが国で発売されたBAC非含有,SofZiaR含有点眼液での報告ではない.筆者らはすでに,BAC非含有トラボプロスト0.004%点眼液(トラバタンズR0.004%点眼液)の日本人健常眼に対する単回点眼による眼圧下降効果を,前日同時刻と比較することにより日内変動の影響を抑えた評価方法により評価した.その結果,BAC非含有トラボプロスト点眼は,正常眼に点眼後12時間で3.5mmHg(26.9%)の眼圧下降を呈した8).したがって,防腐剤が代わりBAC非含有となっても,眼圧下降には影響しないと考えられた.さらに,海外欧米人におけるOAGおよび高眼圧症(OH)を対象とした,BAC含有および非含有トラボプロスト点眼による眼圧下降効果には差がないことが報告されており9),日本人緑内障患者においてもBACの有無にかかわらず,トラバタンズR0.004%による眼圧下降効果が期待できると考え,今回日本人NTG対象にBAC含有キサラタンR単独投与症例に対して切り替え試験により前向き研究を行った.海外のラタノプロストからトラボプロスト(ともにBAC含有)切り替え試験では,眼圧はより下降もしくは同等であったと報告されている10.12).今回は日本人NTGを対象として3カ月でキサラタンRと比較し,約1mmHgの眼圧下降効果が有意に得られたことは,海外のNTGを含む早期緑内障を対象にした大規模試験であるEarlyManifestTrialでも示されているように1mmHgの眼圧下降は進行のリスクを約10%軽減させる13)ということからも,十分意義あるものと考える.今回のスタディではNTGと診断された症例ですでに3カ月ラタノプロストを投与された症例を対象にしたが,ベースライン眼圧の測定が必ずしも同一施設でなされていないため,純粋にNTGに対する眼圧下降効果を測定できていないが,ラタノプロストと同等以上の効果を有する結果となり,過去の切り替え試験での有効症例の存在に関する報告10)も合わせて考えれば,NTGを対象にしてもある種類のプロスト系薬剤に低反応性であれば切り替える意義は十分あることを裏付けている.ただし,今回はラタノプロスト点眼時の眼圧をエントリー時1回で評価している点が眼圧下降評価研究計画上の問題である.結果として切り替えにより有意差が得られたものの,この点を考慮して少なくともラタノプロストからトラボプロストへの切り替え試験により同等な結果,眼圧下降効果を有すると結論づけた.また,ベースライン眼圧が不明であるため,本対象症例のなかでラタノプロストに対する反応性とトラボプロストに対する反応性の相関を比較できなかった.今後は無治療NTGを対象に無作為平行群間比較試験かつ薬剤のクロスオーバーを行って,個々の症例でのプロスト系薬剤への反応性の相違を検討すべきであると考える.今回眼圧が切り替えにより平均で有意に下降した理由は,主剤自体の特徴と対象眼の感受性の問題が第一にあると考えられる.トラボプロストはラタノプロストに比べ,末端フェニル基にフッ素が付き化学構造を安定化させることにより効果を持続させている可能性があり,他のプロスト系薬剤と比べ細胞内シグナルのイノシトール代謝物を最大限惹起できること14)や,最終点眼後の眼圧下降持続効果が高いこと15)が報告されている.また,作用点であるFP受容体の遺伝的多型や発現分布なども薬理効果の相違につながると考えられるが確証は得られておらず,今後の課題である.第二の理由として,切り替えによるアドヒアランスの改善が考えられる.今回は初回エントリー57症例中1カ月で14例,3カ月で5例の症例が脱落した(表1).脱落理由に眼圧下降不良が2例あるが1回の測定による軽微な変化であり持続的変化であるかは判定していない.切り替え試験も含め眼圧下降作用を確表2AD分類によるSPKの推移A0A1A2A3D020→36→36D113→2→23→0→00D21→0→001→0→0D3000数字はエントリー時→1カ月後→3カ月後の症例数を示す.690あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(118)認する研究では,脱落例が生じることは否めず,脱落例に眼圧上昇例が多く含まれていれば結果に影響するが,今回19例の脱落中,眼圧下降不良という理由であった例はわずか2例であり,16から17mmHg,16から19mmHgへ上昇した例であった.残り17例は眼圧上昇以外の理由であり表1に示したとおりで,眼圧も変化がなかったか下降した例であるため,これら脱落例を含めても少なくとも今回の切り替え試験により眼圧が悪化したことにはならないと考える.むしろ主剤そのものに対して眼圧下降反応が低いというよりも,表1にあるような,持続的に起こる充血やしみるといった製剤の特徴により,脱落することが多いことがわかる.たとえば充血を理由にした脱落は6例(10%)存在する.また,不快感や異物感に関連するオキュラーサーフェスへの影響も重要なアドヒアランス良否に関わる因子である.今回3カ月継続可能であった38例の角膜障害は1カ月後著明に改善し,さらに3カ月までその改善効果が持続した.これは,すでに筆者らが報告したOAG,OH患者114例を対象にラタノプロストからトラボプロストに切り替えた試験と同様,有意な角膜上皮障害改善を示す結果であった16).したがってBAC非含有製剤であるトラバタンズRはオキュラーサーフェスへの影響が少ないことが示唆された.このような主剤の効果以外のアドヒアランスの影響を考えると,今回3カ月持続点眼可能であった症例は,実はアドヒアランスが不良であったが,トラバタンズRへの切り替えにより角膜障害が改善して,点眼アドヒアランスが良好となり,眼圧がより下降した可能性がある.患者によって副作用はかなり異なるが,少なくとも個々の患者にとってアドヒアランスが良い点眼,すなわち副作用が少なく,差し心地が良い点眼は,主剤の眼圧下降効果以上に重要な因子であると考える.緑内障患者は点眼薬を長期にわたり多剤併用することが多く,点眼液の主剤のみならず防腐剤を含めた基剤も複雑に影響して眼表面への副作用を惹起しやすい状況にあり,点眼に対するアドヒアランスが眼圧下降効果に大きく影響すると考えられる.したがって,眼圧のみにとらわれず,患者の生活環境や性格と眼表面への副作用,点眼時の印象も加味して治療効果を評価する姿勢が重要である.その点でトラバタンズR点眼液のように主剤としてNTGを対象にしても十分な眼圧下降効果が得られ,かつ防腐剤を改良したオキュラーサーフェスに優しい点眼液は,今後の点眼治療薬としての理想的な方向性を示している.今回は3カ月間の経過を追った研究であるが緑内障の長期管理は年単位であり,今後はさらに1年以上の長期点眼による影響を再評価する必要がある.文献1)AptelF,CucheratM,DenisP:Efficacyandtolerabilityofprostaglandinanalogs:ameta-analysisofrandomizedcontrolledclinicaltrials.JGlaucoma17:667-673,20082)岩田慎子,遠藤要子,斉藤秀典ほか:正常眼圧緑内障に対するラタノプロストの眼圧下降効果.あたらしい眼科20:709-711,20033)木村英也,野崎実穂,小椋祐一郎ほか:未治療緑内障眼におけるラタノプロスト単剤投与による眼圧下降効果.臨眼57:700-704,20034)椿井尚子,安藤彰,福井智恵子ほか:投与前眼圧16mmHg以上と15mmHg以下の正常眼圧緑内障に対するラタノプロストの眼圧下降効果の比較.あたらしい眼科20:813-815,20035)緒方博子,庄司信行,清水公也ほか:正常眼圧緑内障におけるラタノプロスト単剤変更1年後の眼圧,視野,視神経乳頭形状の検討.臨眼59:943-947,20056)MiyataK,AmanoS,SawaMetal:Anovelgradingmethodforsuperficialpunctatekeratopathymagnitudeanditscorrelationwithcornealepithelialpermeability.ArchOphthalmol121:1537-1539,20037)vanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocularpressure-loweringeffectsofallcommonlyusedglaucomadrugs:ameta-analysisofrandomizedclinicaltrials.Ophthalmology112:1177-1185,20058)大島博美,新卓也,相原一ほか:日本人健常眼に対する塩化ベンザルコニウム非含有トラボプロスト無作為単盲検単回点眼試験による眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科26:966-968,20099)LewisRA,KatzGJ,WeissMJetal:Travoprost0.004%withandwithoutbenzalkoniumchloride:acomparisonofsafetyandefficacy.JGlaucoma16:98-103,200710)KabackM,GeanonJ,KatzGetal:Ocularhypotensiveefficacyoftravoprostinpatientsunsuccessfullytreatedwithlatanoprost.CurrMedResOpin20:1341-1345,200411)NetlandPA,LandryT,SullivanEKetal:Travoprostcomparedwithlatanoprostandtimololinpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOphthalmol132:472-484,200112)ParrishRK,PalmbergP,SheuWP:Acomparisonoflatanoprost,bimatoprost,andtravoprostinpatientswithelevatedintraocularpressure:a12-week,randomized,masked-evaluatormulticenterstudy.AmJOphthalmol135:688-703,200313)LeskeMC,HeijlA,HusseinMetal:Factorsforglaucomaprogressionandtheeffectoftreatment:theearlymanifestglaucomatrial.ArchOphthalmol121:48-56,200314)SharifNA,KellyCR,CriderJY:Humantrabecularmeshworkcellresponsesinducedbybimatoprost,travoprost,unoprostone,andotherFPprostaglandinreceptoragonistanalogues.InvestOphthalmolVisSci44:715-721,200315)SitAJ,WeinrebRN,CrowstonJGetal:Sustainedeffectoftravoprostondiurnalandnocturnalintraocularpressure.AmJOphthalmol141:1131-1133,200616)湖.淳,大谷伸一郎,鵜木一彦ほか:トラボプロスト点眼液の臨床使用成績─眼表面への影響─.あたらしい眼科26:101-104,2009

ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの眼圧下降効果

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(105)3830910-1810/10/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科27(3):383386,2010cはじめに緑内障は慢性に視野障害が進行する疾患である.視野障害進行抑制のエビデンスが得られている唯一の治療が眼圧下降療法である1,2).眼圧下降のために通常点眼薬治療がまず行われる.眼圧下降効果の点からファーストチョイスはプロスタグランジン関連薬が用いられることが多い.わが国におけるプロスタグランジン関連薬は1994年にイソプロピルウノプロストン点眼薬,1999年にラタノプロスト点眼薬,2007年にトラボプロスト点眼薬,2008年にタフルプロスト点眼薬が発売された.このなかでプロスト系の点眼薬(ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬)は特に眼圧下降効果が強力である.これらの薬剤の単剤投与における眼圧下降効果は,原発開放隅角緑内障,高眼圧症,性緑内障,色素緑内障に対して投与期間はさまざまであるが多数報告されている311).その眼圧下降率はラタノプロスト点眼薬が25.132%39),トラボプロスト点眼薬が26.131.1%10,11),タフルプロスト点眼薬が25.927.5%3)である.しかしこれら3剤を互いに比較した報告はまだない.〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロストの眼圧下降効果井上賢治*1増本美枝子*1若倉雅登*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座OcularHypotensiveEfectsofLatanoprost,TravoprostandTaluprostKenjiInoue1),MiekoMasumoto1),MasatoWakakura1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,UniversityofToho目的:ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬の単剤投与における眼圧下降効果と安全性をレトロスペクティブに検討した.方法:ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬のいずれかを新規に単剤投与された原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症患者128例128眼を対象とした.投与前と投与1,3カ月後の眼圧を比較した.投与1,3カ月後の眼圧下降幅と眼圧下降率を算出し,各薬剤間で比較した.さらに副作用の出現を調査した.結果:眼圧は3剤ともに投与1,3カ月後に有意に下降した.眼圧下降幅,眼圧下降率は投与1,3カ月後で3剤間に差はなかった.副作用による中止症例の頻度は3剤間で同等であった.結論:原発開放隅角緑内障および高眼圧症患者に対してラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬は短期的には同等の眼圧下降効果と安全性を有する.Purpose:Toinvestigatetheocularhypotensiveeectsandsafetyoflatanoprost,travoprostandtauprostinpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.Methods:Latanoprost,travoprostortauprostwasadministeredto128patientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.Intraocularpressure(IOP),dierenceinIOPreduction,IOPreductionrateandadversereactionswereretrospectivelycheckedmonthlyfor3months.Results:Thelatanoprost,travoprostandtauprostgroupsallshowedsignicantlydecreasedIOPat1and3monthsaftertherapy.DierencesinIOPreductionandreductionrateweresimilaramongthe3groups.Therateofadversereactionswasalsosimilaramongthe3groups.Conclusion:Inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension,latanoprost,travoprostandtauprosthavealmostthesameocularhypotensiveeectsanddegreeofsafety.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(3):383386,2010〕Keywords:ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト,眼圧,副作用.latanoprost,travoprost,tauprost,intraocularpressure,adversereaction.———————————————————————-Page2384あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(106)今回,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬を単剤で投与された症例の短期的な眼圧下降効果と安全性をレトロスペクティブに検討した.I対象および方法2009年1月から4月までの間に井上眼科病院に通院中の患者で,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬のいずれかを新規に単剤で投与された原発開放隅角緑内障および高眼圧症患者128例128眼を対象とした.緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)24例,正常眼圧緑内障102例,高眼圧症2例であった.手術既往のある症例は除外した.レトロスペクティブに調査したところ,ラタノプロスト点眼薬群は62例で,平均年齢は60.6±14.6歳(平均±標準偏差)(3183歳),緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)11例,正常眼圧緑内障49例,高眼圧症2例であった(表1).トラボプロスト点眼薬群は52例で,平均年齢は55.8±13.7歳(2883歳),緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)9例,正常眼圧緑内障43例であった.タフルプロスト点眼薬群は14例で,平均年齢は60.8±11.9歳(3679歳),緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)4例,正常眼圧緑内障10例であった.投与前の眼圧は,ラタノプロスト点眼薬群は17.4±4.5mmHg(1032mmHg),トラボプロスト点眼薬群は17.0±2.7mmHg(1224mmHg),タフルプロスト点眼薬群は18.3±4.6mmHg(1330mmHg)であった.Hum-phrey視野プログラム中心30-2のmeandeviation(MD)値は,ラタノプロスト点眼薬群は6.8±6.0dB(24.20.4dB),トラボプロスト点眼薬群は5.3±3.8dB(14.50.3dB),タフルプロスト点眼薬群は4.7±7.5dB(25.51.3dB)であった.各群の年齢,緑内障病型,投与前眼圧,Hum-phrey視野のMD値に有意差を認めなかった(ANOVA;analysisofvariance,分散分析).眼圧の測定はGoldmann圧平眼圧計を用いて基本的には1カ月ごとに行った.両眼に投与した症例では眼圧の高いほうの眼を,眼圧が同値の場合は右眼を対象眼とした.各群で投与前と投与1,3カ月後の眼圧を対応のあるt検定を用いて比較した.投与1,3カ月後の眼圧下降幅および眼圧下降率を算出し,3群間でANOVA(Bonferroni/Dunnet法)を用いて比較した.副作用の出現を診療録から抽出した.副作用により点眼薬が中止になった症例の頻度を,3群間でc2検定を用いて比較した.副作用により点眼薬が中止になった症例は眼圧の解析からは除外した.有意水準(危険率)を5%以下とした.II結果眼圧は,ラタノプロスト点眼薬群では投与1カ月後は14.4±3.3mmHg,投与3カ月後は13.8±2.9mmHgで投与前(17.4±4.5mmHg)に比べて有意に下降した(p<0.0001)(図1).トラボプロスト点眼薬群では投与1カ月後は13.7±2.4mmHg,投与3カ月後は13.5±2.0mmHgで投与前(17.0±2.7mmHg)に比べて有意に下降した(p<0.0001).タフルプロスト点眼薬群では投与1カ月後は14.3±2.9mmHg,投与3カ月後は14.0±3.4mmHgで投与前(18.3±4.6mmHg)に比べて有意に下降した(p<0.0001).眼圧下降幅は,ラタノプロスト点眼薬群では投与1カ月後は3.5±2.7mmHg,投与3カ月後は3.6±3.3mmHg,トラ表1患者背景ラタノプロストトラボプロストタフルプロストp値症例(例)625214NS平均年齢(歳)60.6±14.655.8±13.760.8±11.9NS病型(例)NS原発開放隅角緑内障(狭義)1194正常眼圧緑内障494310高眼圧症200投与前眼圧(mmHg)17.4±4.517.0±2.718.3±4.6NSHumphrey視野MD値(dB)6.8±6.05.3±3.84.7±7.5NSNS:notsignicant.08101214161820222426投与前******投与1カ月後眼圧(mmHg)投与3カ月後図1ラタノプロスト点眼薬群,トラボプロスト点眼薬群,タフルプロスト点眼薬群の眼圧(*:p<0.0001,対応のあるt検定):ラタノプロスト点眼薬群,:トラボプロスト点眼薬群,:タフルプロスト点眼薬群.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010385(107)ボプロスト点眼薬群では投与1カ月後は3.4±1.9mmHg,投与3カ月後は3.5±2.3mmHg,タフルプロスト点眼薬群では投与1カ月後は4.2±3.1mmHg,投与3カ月後は4.3±2.5mmHgであった(図2).3群ともに眼圧下降幅は,投与1,3カ月後で同等であった.3群の比較では投与1,3カ月後ともに眼圧下降幅は同等であった.眼圧下降率は,ラタノプロスト点眼薬群では投与1カ月後は18.3±10.1%,投与3カ月後は18.3±14.0%,トラボプロスト点眼薬群では投与1カ月後は19.4±9.8%,投与3カ月後は19.6±11.2%,タフルプロスト点眼薬群では投与1カ月後は21.4±10.2%,投与3カ月後は22.8±9.9%であった(図3).3群ともに眼圧下降率は,投与1,3カ月後で同等であった.3群の比較では投与1,3カ月後ともに眼圧下降率は同等であった.副作用による投与中止例は,ラタノプロスト点眼薬群で6.5%(4例/62例),トラボプロスト点眼薬群で3.8%(2例/52例),タフルプロスト点眼薬群で14.3%(2例/14例)で,頻度は同等であった(p=0.36).ラタノプロスト点眼薬群では投与2週間後に充血,投与1カ月後にかすみ,投与2カ月後に違和感,投与3カ月後に眼瞼腫脹で各1例が中止になった.トラボプロスト点眼薬群では投与3週間後に眼瞼色素沈着,投与1カ月後に充血で各1例が中止になった.タフルプロスト点眼薬群では投与2カ月後に眼精疲労,投与2カ月後に違和感で各1例が中止になった.III考按ラタノプロスト点眼薬は発売から10年以上が経過しており,眼圧下降効果と安全性について多数の報告が行われている39,1215).原発開放隅角緑内障,高眼圧症,性緑内障,色素緑内障に対する眼圧下降率は,4週間投与で27.6%3),6週間投与で26.2%4),60日間投与で28.0%5),12週間投与で26.8%6,7),3カ月間投与で29.3%8),12カ月間投与で32%9)と今回の3カ月間投与(18.3%)よりは良好である.今回は正常眼圧緑内障が多数(79.0%)を占め,投与前眼圧(17.4±4.5mmHg)がこれらの報告(22.625.3mmHg)39)より低値であったためと考えられる.一方,正常眼圧緑内障に対する眼圧下降率は,3週間投与で21.3%12),4週間投与で16.9%13),8週間以上投与で16.3%14),3カ月間投与で24.4%8),8年間投与で14.6%15)と今回の3カ月間投与(18.3%)とほぼ同等である.トラボプロスト点眼薬は防腐剤として塩化ベンザルコニウムが使用されている点眼薬が海外で先行発売された.わが国で発売されたトラボプロスト点眼薬は防腐剤として塩化ベンザルコニウムは使用せず,sofZiaRを使用しており,これはホウ酸・ソルビトール・塩化亜鉛などを含み,塩化亜鉛がホウ酸・ソルビトール存在下で陽イオン化して発揮する殺菌効果を利用している.塩化ベンザルコニウムが含有されていないトラボプロスト点眼薬の原発開放隅角緑内障,高眼圧症,性緑内障,色素緑内障に対する眼圧下降率は,2週間投与で26.130.4%10),3カ月間投与で29.831.1%11)で,塩化ベンザルコニウムが含有されているトラボプロスト点眼薬と同等であった.今回の3カ月間投与の眼圧下降率(19.6%)はこれらの報告10,11)より低値であったが,正常眼圧緑内障が多数(82.6%)を占め,投与前眼圧(17.0±2.7mmHg)が過去の報告(23.627.1mmHg)10,11)に比べ低かったことによると考えられる.一方,メタアナリシスの報告ではラタノプロスト点眼薬と(塩化ベンザルコニウム含有)トラボプロスト点眼薬の眼圧下降効果は同等であった16,17).また,ラタノプロスト点眼薬,(塩化ベンザルコニウム含有)トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬を12週間投与した際の眼圧下降幅は,各々5.98.6mmHg,5.77.9mmHg,6.58.7mmHgで同等と報告されている18).投与1カ月後8.07.06.05.04.03.02.01.00.0眼圧(mmHg)投与3カ月後図2ラタノプロスト点眼薬群,トラボプロスト点眼薬群,タフルプロスト点眼薬群の眼圧下降幅(ANOVA検定)■:ラタノプロスト点眼薬群,□:トラボプロスト点眼薬群,■投与1カ月後35.030.025.020.015.010.05.00.0眼圧下降率(%)投与3カ月後図3ラタノプロスト点眼薬群,トラボプロスト点眼薬群,タフルプロスト点眼薬群の眼圧下降率(ANOVA検定)■:ラタノプロスト点眼薬群,□:トラボプロスト点眼薬群,■———————————————————————-Page4386あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(108)タフルプロスト点眼薬の原発開放隅角緑内障,高眼圧症に対する眼圧下降率は,わが国における第III相検証的試験の結果3)しかないが,4週間投与で25.927.5%であった.今回の3カ月間投与の眼圧下降率(22.8%)はこの報告に比べてやや低値であるが,正常眼圧緑内障が多数(71.4%)を占め,投与前眼圧(18.3±2.4mmHg)がこの報告(23.8±2.3mmHg)3)に比べ低かったことによると考えられる.副作用が出現して点眼薬が中止になった症例は,ラタノプロスト点眼薬では0%35,7,8,12,13),2.5%6),11%9),トラボプロスト点眼薬では0%10),1.5%11),タフルプロストでは5.4%3)と報告されている.今回のラタノプロスト点眼薬群6.5%,トラボプロスト点眼薬群3.8%,タフルプロスト点眼薬群14.3%はやや高値であったが,点眼薬を中止する基準がなく,薬剤との因果関係は不明であるが患者の訴えにより中止となった症例が含まれている可能性がある.しかし点眼薬が中止になった症例においても副作用として重篤な症例はなく,後遺症もなかった.今回はレトロスペクティブな調査であり,プロスペクティブな調査とは結果が異なる可能性がある.レトロスペクティブな調査の問題点として,眼圧測定が行われていた経過観察期間中の来院日に一貫性がないこと,対照群がおかれていないこと,盲検化されていないこと,コンプライアンスが評価できなかったことなどがあげられる.また,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬の3剤のなかからどの薬剤を選択するかの明確な基準がなかったために症例に偏りがあった可能性が考えられる.以上,結論として,今回のレトロスペクティブの調査結果においては,原発開放隅角緑内障および高眼圧症患者に対してラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,タフルプロスト点眼薬は短期的には同等の眼圧下降効果と安全性を有すると思われる.文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy-Group:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpres-sure.AmJOphthalmol126:487-497,19982)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy-Group:Theeectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,19983)桑山泰明,米虫節夫:0.0015%DE-085(タフルプロスト)の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした0.005%ラタノプロストとの第III相検証的試験.あたらしい眼科25:1595-1602,20084)SaitoM,TakanoR,ShiratoS:Eectsoflatanoprostandunoprostonewhenusedaloneorincombinationforopen-angleglaucoma.AmJOphthalmol132:485-489,20015)PavanJ,tambukN,urkoviTetal:Eectivenessoflatanoprost(XalatanTM)monotherapyinnewlydiscoveredandpreviouslymedicamentouslytreatedprimaryopenangleglaucomapatients.CollAntropol29:315-319,20056)三嶋弘,増田寛次郎,新家真ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とするPhXA41点眼液の臨床第III相試験─0.5%マレイン酸チモロールとの多施設二重盲検試験─.眼臨90:607-615,19967)MishimaHK,MasudaK,KitazawaYetal:Acomparisonoflatanoprostandtimololinprimaryopen-angleglauco-maandocularhypertension.A12-weekstudy.ArchOph-thalmol114:929-932,19968)木村英也,野崎美穂,小椋祐一郎ほか:未治療緑内障眼におけるラタノプロスト単剤投与による眼圧下降効果.臨眼57:700-704,20039)CamrasCB,AlmA,WatsonPetal:Latanoprost,apros-taglandinanalog,forglaucomatherapy.Ecacyandsafe-tyafter1yearoftreatmentin198patients.Ophthalomol-ogy103:1916-1924,199610)GrossRL,PeaceJH,SmithSEetal:DurationofIOPreductionwithtravoprostBAK-freesolution.JGlaucoma17:217-222,200811)LewisRA,KatzGJ,WeissMJetal:Travoprost0.004%withandwithoutbenzalkoniumchloride:acomparisonofsafetyandecacy.JGlaucoma16:98-103,200712)RuloAH,GreveEL,GeijssenHCetal:Reductionofintraocularpressurewithtreatmentoflatanoprostoncedailyinpatientswithnormal-pressureglaucoma.Ophthal-mology103:1276-1282,199613)橋本尚子,原岳,高橋康子ほか:正常眼圧緑内障に対するチモロール・ゲル,ラタノプロスト点眼の短期使用と長期眼圧下降効果.日眼会誌108:477-481,200414)中元兼二,安田典子,南野麻美ほか:正常眼圧緑内障におけるラタノプロストの眼圧日内変動に及ぼす効果.日眼会誌109:530-534,200315)小川一郎,今井一美:正常眼圧緑内障のラタノプロストによる長期視野─3,5,6,8年群の比較─.あたらしい眼科25:1295-1300,200816)AptelF,CucheratM,DenisP:Ecacyandtolerabilityofprostaglandinanalogs:ametaanalysisofrandomizedcontrolledclinicaltrials.JGlaucoma17:667-673,200817)EyawoO,NachegaJ,LefebvrePetal:Ecacyandsafe-tyofprostaglandinanaloguesinpatientswithpredomi-nantlyprimaryopen-angleglaucomaorocularhyperten-sion:ameta-analysis.ClinOphthalmol3:447-456,200918)ParrishRK,PalmbergP,SheuWPetal:Acomparisonoflatanoprost,bimatoprost,andtravoprostinpatientswithelevatedintraocularpressure:a12-week,randomized,masked-evaluatormulticenterstudy.AmJOphthalmol135:688-703,2003***