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プリザーフロマイクロシャント挿入術の早期成績

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):679.685,2026cプリザーフロマイクロシャント挿入術の早期成績遠藤誠子徳田直人佐浦里奈山田雄介豊田泰大塚本彩香金成真由北岡康史聖マリアンナ医科大学眼科学教室CResultsofPreserfloMicroShuntImplantationintheEarlyPostoperativePeriodAkikoEndo,NaotoTokuda,RinaSaura,YusukeYamada,YasuhiroToyoda,AyakaTsukamoto,MayuKanariandYasushiKitaokaCSt.MariannaUniversitySchoolofMedicineDepartmentofOphthalmologyC目的:プリザーフロマイクロシャント(PMS)挿入術の術後早期成績について検討する.対象および方法:広義の原発開放隅角緑内障(POAG)または落屑緑内障(PEG)に対してCPMS挿入術を施行し,術後C12カ月間経過観察可能であったC21例C33眼(67.4歳)を対象とした.PMS挿入術施行前後の眼圧推移,緑内障点眼スコア,術前後の角膜内皮細胞密度の変化,術後合併症について検討した.結果:PMS挿入術後,眼圧は術前C18.4CmmHgが術後C12カ月で12.2CmmHgと有意に下降した.緑内障点眼スコアは術前C4.5点が術後C12カ月でC0.6点と有意に減少した.術後合併症は角膜内皮細胞密度の減少(1.3%/年),前房出血,脈絡膜.離,浅前房などが認められた.なお,PMS挿入部付近の角膜内皮細胞密度が角膜中央部の角膜内皮細胞密度よりも減少している症例が存在した.結論:PMS挿入術は開放隅角緑内障に対して有効だが,PMS挿入術特有の合併症にも注意を要する.CPurpose:ToevaluatetheearlypostoperativeoutcomesofPreserFloMicroShunt(PMS)(SantenPharmaceu-tical)implantationCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleglaucoma(POAG)C.CPatientsandMethods:ThisCstudyCinvolved33eyesof21POAGpatients(meanage:67.4years)whounderwentPMSimplantationandwhowerefollowedCforC12-monthsCpostoperative.CChangesCinCintraocularpressure(IOP)C,CglaucomaCmedicationCscore,CcornealCendothelialCcellCdensity,CandCpostoperativeCcomplicationsCwereCanalyzed.CResults:FromCpreCsurgeryCtoCatC12-monthsCpostoperative,CtheCmeanCIOPCandCglaucomaCmedicationCscore,Crespectively,ChadCsigni.cantlyCdecreasedCfrom18.4mmHgto12.2mmHgandfrom4.5to0.6(p<0.05)C,andthemeanreductionincornealendothelialcell(CEC)densitywas1.3%.SomepatientsshowedlocalizedCEClossneartheimplantationsite.Postoperativecom-plicationsCincludedChyphema,CchoroidalCdetachment,CandCaCshallowCanteriorCchamber.CConclusions:PMSCimplanta-tione.ectivelyreducedIOPandglaucomamedicationuseinPOAGpatients,however,carefulpostoperativemoni-toringisrequiredduetospeci.ccomplicationsassociatedwiththisprocedure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(6):679.685,C2026〕Keywords:プリザーフロマイクロシャント,低侵襲緑内障手術,MIBS,角膜内皮細胞.PreserfloMicroShunt,minimallyinvasiveglaucomasurgery(MIGS),minimallyinvasiveblebsurgery(MIBS),Cornealendothelialcell.Cはじめに昨今,緑内障手術は低侵襲化が進み,低侵襲緑内障手術(minimallyCinvasiveCglaucomasurgery:MIGS)1)とよばれる緑内障術式が広く行われるようになった.そのなかでも濾過手術の性質をもち,濾過胞を形成するものをCminimallyinvasiveblebsurgery(MIBS)と称し,識別するようになりつつある2).わが国で施行可能なCMIBSとしてプリザーフロマイクロシャント(PreserFloMicroShunt:PMS)(参天製薬)を用いたCPMS挿入術がある.PMSはわが国でC2023年に認可され,その後比較的多くの施設でCPMS挿入術が施行されている.聖マリアンナ医科大学病院(以下,当院)でも,正常眼圧緑内障(normalCtensionglaucoma:NTG)を含めた広義の原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglauco-ma:POAG),落屑緑内障(pseudoexfoliationglaucoma:〔別刷請求先〕遠藤誠子:〒C216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生C2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室Reprintrequests:AkikoEndo.M.D.,St.MariannaUniversitySchoolofMedicineDepartmentofOphthalmology,2-16-1SugaoMiyamae-ku,Kawasaki216-8511,JAPANC表1対象の背景表2緑内障病型と手術既往年齢C67.4±11.0歳性別(男/女)C26/7術前眼圧C18.4±4.8CmmHg術前ClogMAR視力-0.15±0.4(少数視力)(C0.01-1.2)術前角膜内皮細胞密度C2,345±391Ccells/mm2眼軸長C26.7±1.4Cmm等価球面度数-3.0±2.7D術前薬剤スコアC4.5±1.5点MD値-13.5±9.4CdBMD:meandeviation.PEG),そして硝子体手術後の無硝子体眼もCPMS挿入術の適応と考え施行している.今回筆者らは当院でCPMS挿入術を施行した症例の術後短期成績について検討したので報告する.CI対象および方法本研究は診療録による後ろ向き研究である(聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会C7079号).対象は2023年7月.C2024年9月に当院でPOAG(広義)またはCPEGに対してCPMS挿入術を施行し,術後C12カ月間経過観察可能であったC21例C33眼,平均年齢C67.4C±11.0歳(以下平均±標準偏差)である.対象の背景を表1に示す.検討項目はCPMS挿入術施行前後の眼圧推移と眼圧下降率〔(術前眼圧-術後最終診察時眼圧)C÷術前眼圧をC100倍したもの〕,緑内障点眼スコア(緑内障点眼薬C1剤C1点,緑内障配合点眼薬C2点として算出),術前後の角膜内皮細胞密度の変化〔スペキュラーマイクロスコープCellChek20-1(コーナン・メディカル)〕,術後合併症とした.眼圧の推移については,対象を緑内障病型,白内障手術既往の有無,硝子体手術既往の有無で分類(表2)し,それぞれについて比較検討した.なお,統計解析は眼圧,薬剤スコア,角膜内皮細胞密度の変化については対応のあるCt検定により検討した.PMS挿入術は以下の手順で施行した.まず結膜下にC2%キシロカインを注入後,鼻上側に円蓋部基底結膜弁を作製し,強膜止血後に眼科用マイトマイシンCC製剤〔マイトマイシン眼科外用液用C2Cmg(協和キリン)〕をC0.04%に調整した状態で結膜下に塗布し,3.C5分間留置(時間は症例のTenon.の状態で増減した)後,生理食塩水C100CmClで洗浄した.角膜輪部からC3Cmmのところにマーキングし,その部分から付属のダブルステップナイフで強膜トンネルを作製し,その後前房穿刺した.その部分からCPMSを挿入し,PMSの後端から房水が流れていることを確認後,結膜と緑内障病型原発開放隅角緑内障(POAG)15眼(C45.5%)落屑緑内障(PEG)12眼(C36.4%)PEGを除く無硝子体眼などの続発開放隅角緑内障(SOAG)6眼(C18.1%)白内障なし(有水晶体眼)10眼(C30.3%)手術既往眼内レンズ挿入眼23眼(C69.7%)硝子体なし(有硝子体眼)30眼(C90.9%)手術既往硝子体手術既往眼(無硝子体眼)3眼(C9.1%)POAG:primaryCopenCangleglaucoma,PEG:pseudoexfoliationglaucoma,SOAG:secondaryCopenCangleCglaucoma.Tenon.でCPMSを被覆し手術を終了とした.なお,術後低眼圧の予防として,PMS内部にナイロン糸を留置し,術後眼圧が上昇してからナイロン糸を抜去する方法があるが,これは本検討の最中には施行していない.CII結果まず,全症例のCPMS挿入術前後の眼圧推移について示す(図1).PMS挿入術施行後眼圧は速やかに下降し,術後C12カ月まで術前眼圧に比し有意な眼圧下降を維持した.眼圧下降率は,術後C12カ月の時点で平均C28.1%C±32.8であった.術後C1カ月以降に眼圧がC2回連続でC20CmmHgを超えた時点,またはCneedling以外の濾過胞再建術を行った時点を死亡とした場合に,術後C12カ月の累積生存率はC78.8%であった.つぎに対象を緑内障病型別,白内障手術既往の有無,硝子体手術既往の有無に分類し(表2),それぞれの眼圧推移を比較した.図2に緑内障病型別の眼圧推移を示す.各病型ともに生存症例については術前に比し術後C12カ月まで有意な眼圧下降を示したが,続発開放隅角緑内障(secondaryCopenangleCglaucoma:SOAG)症例のうちC1例,術後C2カ月の時点で眼圧がC52CmmHgまで上昇してしまったため標準偏差が大きくなっている.図3に白内障手術既往別CPMS挿入術前後の眼圧推移を示す.両群ともに術前に比し術後C12カ月まで有意な眼圧下降を示した.図4に硝子体手術既往別PMS挿入術前後の眼圧推移を示す.硝子体手術既往眼は3眼と少ないが,3例ともCPMS挿入術後良好な眼圧下降が維持された.緑内障点眼スコアについては術前C4.5C±1.5点が術後C12カ月でC0.6C±1.0点と術前に比し有意に減少した(図5).なお,(mmHg)30201006789101112観察期間(カ月)図1プリザーフロマイクロシャント(PMS)挿入術前後の眼圧推移PMS挿入術施行後,術後C12カ月まで各測定点において術前に比し有意な眼圧下降を認めた.(mmHg)40眼圧3020100術前術後123456789101112観察期間(カ月)図2緑内障病型別のPMS挿入術前後の眼圧推移PMS挿入術施行後,SOAG群のC1例で術後C2カ月の時点で急激な眼圧上昇が生じた.POAG:CprimaryCopenangleCglaucoma,PEG:pseudoexfoliationCglaucoma,SOAG:secondaryCopenCangleglaucoma.当院ではCPMS挿入術後には術前に使用していた緑内障点眼をすべて中止し,ガチフロキサシン点眼C1日C4回,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼C1日C4回とし適宜減量している.術前後の角膜内皮細胞密度は,術前C2,345C±391Cmm2が術後C12カ月の時点でC2,276C±447Cmm2と有意に減少した(pC=0.03).角膜内皮細胞密度の減少率としてはC1.6%(C±6.1)であった.表3にCPMS挿入術合併症について示す.おもな術後合併症としては,1Cmm以上のニボーを伴う前房出血C9例(27.3%),眼底検査でC1象限以上確認できる脈絡膜.離C4例(12.1%),低眼圧,浅前房がそれぞれC3例(9.1%)であった.CPMSに特有な合併症として,チューブ露出がC1例(3.0%)存在した.前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)のCCASIA2(トーメーコーポレーション)で術後のCPMSの位置を確認し,PMSの位置が角膜と虹彩のなす角度の中央部より角膜寄りに存在した症例がC1例C2眼(6.1%)存在した.前眼部COCT上,PMSが虹彩に接触していた(mmHg)3020100術前術後123456789101112観察期間(カ月)図3白内障手術既往別PMS挿入術前後の眼圧推移PMS挿入術施行後,両群ともに術後C12カ月まで各測定点において術前に比し有意な眼圧下降を認めた.(mmHg)30眼圧20100術前術後123456789101112観察期間(カ月)図4硝子体手術既往別PMS挿入術前後の眼圧推移PMS挿入術施行後,両群ともに術後C12カ月まで各測定点において術前に比し有意な眼圧下降を認めた.症例がC1例(3.0%)存在した.角膜中央部の角膜内皮細胞密度が術前に比しC10%以上減少した症例がC2例(6.0%)認められた.角膜内皮細胞の撮影を角膜中央のみならずCPMSが留置されている付近(当院の場合,全例鼻上側)でも行った.その結果,先に示したCPMSが角膜寄りに留置されたC1症例(2眼)の術後C12カ月時点での角膜内皮細胞密度は,角膜中央部において,右眼C2,339Ccells/mmC2,左眼C2,444Ccells/mmC2に対して,PMS留置付近では右眼C1,589cells/mmC2,左眼C656Ccells/mm2とかなり減少していることがわかった(図6).その他,術後Cneedlingなどの濾過胞再建術を施行した症例はC6例(18.2%),濾過胞炎を生じた症例がC1例(3.0%)存在した.CIII考按当院では,緑内障手術が必要であるものの,年齢が比較的若く,流出路再建術では眼圧下降効果が不十分と判断されるような場合にCPMS挿入術を選択している.また,PMS挿入術では線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)と異なり,前房穿刺時に眼球虚脱が生じないため,硝子体手術の既往がある症例にも施行している.水晶体再建術の同時手術については,結膜切開による白内障手術がトラベクレクトミーの濾過胞の生存率に影響するという報告3)があるため,PMS挿薬剤スコア(点)76543210術前術後123456789101112観察期間(カ月)図5PMS挿入術前後の緑内障点眼スコアの推移PMS挿入術施行後,術後C12カ月まで緑内障点眼薬数は有意に減少できた.入術についても白内障手術との同時手術は行っていない.PMSの添付文書や緑内障診療ガイドラインの適応に加え,筆者らの考えるこれらの基準をもとに症例選択をしたうえでのCPMS挿入術の術後成績についてまとめた.以下,結果について考察する.眼圧については既報4)と同様に全体的に良好な眼圧下降が得られた.術後の緑内障点眼薬についても減らすことができた.緑内障点眼薬の数が増えることでアドヒアランスが低下することが指摘されている5)ため,今回の結果はCPMSを肯定する理由になると考える.対象の背景による違いは,白内障手術既往の有無については術後C1年は統計学的に有意差を認めなかった.白内障手術既往眼は,PMSを前房穿刺する際にチューブの先端が水晶体に当たるリスクはないが,白内障手術が結膜切開で行われていた場合,濾過胞の生存率に影響が出ることが懸念されたが術後C1年においては影響がなかった.硝子体手術後の症例についてもC3例と症例数は少ないものの良好な眼圧下降が得られ,硝子体手術既往眼に対してPMSが有効である可能性が示唆された.緑内障病型については,PEGに対するCPMSの効果について賛否が分かれるなか,今回の検討については良好な眼圧下降が得られたため,PEG症例については今後もとくに注意深く経過観察する必要があると考える.角膜内皮細胞密度については,健常者においてもC0.6%/年で減少することが報告されている6).一方で,トラベクレクトミー後C1年で角膜内皮細胞密度が約C5%減少し,その後も減少することが報告されている7).PMSの先端が角膜付近に留置されることから,術後に影響が生じることが懸念されたが,角膜中央部における角膜内皮細胞密度減少率は平均表3PMS挿入術合併症合併症症例数前房出血(1Cmm以上のニボーを伴うもの)9例C9眼(2C7.3%)浅前房3例C3眼(9C.1%)チューブ異常(露出,角膜接触,虹彩接触など)露出:1例C1眼(3C.0%)角膜寄り:C1例C2眼(6C.1%)虹彩接触:C1例C1眼(3C.0%)角膜内皮細胞減少(中央部の内皮細胞減少率≧10%)2例C2眼(6C.0%)一過性眼圧上昇(術後C1カ月以内C25CmmHg以上)1例C1眼(3C.0%)低眼圧(5CmmHg未満)3例C3眼(9C.1%)脈絡膜.離(眼底検査でC1象限以上)4例C4眼(1C2.1%)needlingなど施行6例C6眼(C18.2%)濾過胞炎1例C1眼(3C.0%)1.3%と既報4)よりも少なかった.当院ではCPMS挿入術後に全例前眼部COCTでCPMSの位置を確認している.本検討において角膜中央部の角膜内皮細胞密度の減少率は高くなかったものの,PMSの位置が角膜と虹彩のなす角度の中央部より角膜寄りに存在した症例については,角膜内皮細胞への影響は拭い去れない.実際にCPMS挿入術後早期に角膜内皮細胞が障害されたという報告もある8).当院で使用しているスペキュラーマイクロスコープCCellChek20-1は中心C1点に加え,周辺部C6点も角膜内皮細胞の撮影が可能であるため,PMSが留置された部分(鼻上側)の角膜内皮細胞の撮影を行術前術後C12カ月術後C12カ月術後C12カ月角膜中央部角膜PMS周辺部前眼部角膜内皮細胞密度角膜内皮細胞密度角膜内皮細胞密度OCT所見右眼C2,372Ccells/mmC2左眼C2,031Ccells/mmC2右眼C2,339Ccells/mmC2左眼C2,444Ccells/mmC2右眼C1,589Ccells/mmC2左眼C656Ccells/mmC2右眼C10CmmHg左眼C11CmmHgPMS先端が角膜内皮に近い図6落屑緑内障に対してPMS挿入術を施行した症例(64歳,男性)術後CPMSの位置が角膜と虹彩のなす角度の中央部より角膜寄りに存在した症例である.角膜中央部においては,術前後で角膜内皮細胞密度に大きな変化を認めなかったが,PMS挿入部付近で角膜内皮細胞の撮影を行うことで角膜内皮細胞の減少をより早期に確認できる.ったところ,角膜中央部では術前とほぼ変わりない状態であったが,PMS留置部付近の角膜内皮細胞は明らかに減少していた.本症例からCPMS挿入術後の角膜内皮細胞密度の経過観察の際には,角膜中央部のみならず,PMS挿入部付近も精査することの重要性が明らかになった.その他の術後合併症については,前房出血がC9例(27.3%)に認められたが,すべて術後C1週間以内に消失した.PMS後の前房出血は前房穿刺時に毛様体または強膜内の血管を損傷したことにより生じると考えるが術後成績に影響を及ぼすものではなかったといえる.脈絡膜.離がC4例(12.1%)に認められたが,そのうちC3例は自然に消失したが,1例はC4象限の脈絡膜.離と浅前房が遷延したため強膜開窓術を要した.PMS挿入術後C2カ月の時点でCPMSの後端が結膜から露出した症例がC1例に認められ,その症例については結膜被覆術を行った.術後Cneedlingなどの濾過胞再建術を施行した症例はC6例(18.2%)存在したがCneedling後に眼圧下降が得られた.PMS挿入術の場合,needlingで前房内まで到達することは不可能であるため,効果についてはあまり有効ではないと予想していたが,実際にやってみると眼圧下降が得られることが多いため,PMS挿入術後の高眼圧で濾過胞が維持されている症例については緑内障点眼薬を追加するよりも先にCneedlingを行う意義はあると考える.濾過胞炎を生じた症例は術後C1カ月までは経過良好であったが,術後C2カ月で突然眼圧がC52CmmHgまで上昇し,無血管な濾過胞の周囲は毛様充血が強く,濾過胞感染を疑うような状態であった.抗菌薬とステロイドの点眼で改善が得られたが,PMS挿入術も濾過手術である以上,濾過胞感染はつねに意識しておく必要があると考える.おわりに以上,PMS挿入術の術後早期成績について報告した.PMS挿入術はCPOAG,PEG,SOAGにも有効で,とくに無硝子体眼にも有効である可能性が示唆された.PMS挿入術後角膜内皮細胞密度の測定は角膜中央部のみならずCPMS留置付近についても精査すべきであることがわかった.本検討において,術者自身がまだ経験が浅かったことからチューブの留置位置に問題があった症例が存在したこと,症例数が少ないということ,コントロール群を作らずに検討していることなどが限界としてあげられるが,今後症例数を増やし,観察期間を延ばして,わが国におけるCPMS挿入術の有効性・安全性について検討していく予定である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)SahebCH,CAhmedII:Micro-invasiveCglaucomasurgery:CcurrentCperspectivesCandCfutureCdirections.CCurrCOpinCOphthalmolC23:96-104,C20122)QidwaiU,JonesL,RatnarajanG:AcomparisonofiStentcombinedwithphacoemulsi.cationandendocyclophotoco-agulation(ICE2)withCtheCPreserFloCMicroShuntCandCXEN-45Cimplants.CTherCAdvCOphthalmolC14:25158414221125697,C20223)TakiharaCY,CInataniCM,COgata-IwaoCMCetal:Trabeculec-tomyCforCopen-angleCglaucomaCinCphakicCeyesCvsCinCpseu-dophakicCeyesCafterphacoemulsi.cation:aCprospectiveCclinicalcohortstudy..JAMAOphthalmolC132:69-76,C20144)YamaeT,SakataR,SuzukiHetal:Short-termoutcomesofCtheCPreserFloCMicroShuntCinCJapaneseCpatientsCwithCexfoliationglaucoma:aCcomparisonCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCusingCpropensityCscoreCmatching.CJpnJOphthalmolC70:210-220,C20265)TsumuraCT,CKashiwagiCK,CSuzukiCYCetal:ACnationwideCsurveyoffactorsinfluencingadherencetoocularhypoten-siveCeyedropsCinCJapan.CIntCOphthalmolC39:375-383,C20196)BourneW,NelsonL,HodgeD:Centralcornealendotheli-alcellchangesoveraten-yearperiod..InvestOphthalmolVisSciC38:779-782,C19977)HirookaCK,CNittaCE,CUkegawaCKCetal:E.ectCofCtrabecu-lectomyConCcornealCendothelialCcellCloss.CBrCJCOphthal-molC104:376-380,C20208)IwasakiCK,CTakamuraCY,CInataniM.:RapidCcornealCendo-thelialCcellClossCafterCPreserFloCMicroShuntSurgery:aCcasereport..CureusC17:e83091,C2025***

プリザーフロマイクロシャント挿入術単独とEXPRESS濾過手術単独の有効性と安全性

2025年8月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科42(8):1058.1063,2025cプリザーフロマイクロシャント挿入術単独とEXPRESS濾過手術単独の有効性と安全性永井浩平*1新田耕治*1立花学*2*1福井県済生会病院眼科*2国立病院機構金沢医療センター眼科CSafetyandE.cacyofPreserFloMicroShuntandEX-PRESSGlaucomaDrainageDeviceStandaloneImplantationfortheTreatmentofGlaucomaKoheiNagai1),KojiNitta1),GakuTachibana2)1)DepartmentofOphthalmology,Fukui-kenSaiseikaiHospital,2)DepartmentofOphthalmology,NHOKanazawaMedeicalCenterC目的:プリザーフロマイクロシャント挿入術(以下,PM)とCEXPRESS濾過手術(以下,EX)の有効性と安全性を比較検討した.方法:福井県済生会病院通院中の眼圧コントロール不良の緑内障患者のうちCPM単独手術を施行したC17例C20眼,EX単独手術を施行したC32例C32眼を対象に眼圧,眼圧下降率,点眼スコア,合併症について検討した.結果:術後眼圧は術前と比較し両群とも観察期間すべてで有意に低下していた.両群を比較すると術後眼圧は術翌日,1週はCPM群が有意に低値,3カ月,6カ月ではCEX群で有意に低値であった.合併症のうち低眼圧は有意差がみられなかったもののCPM群で多く(4眼,20%,p=0.408),遷延例には粘弾性物質で前房形成を施行した.結論:両群ともに術後有意な眼圧下降が得られ,術後眼圧は早期ではCPMが,3カ月以降ではCEXが有意に低値であった.PM術後は低眼圧に注意する必要がある.CPurpose:Tocomparethesafetyande.cacyofPreserFloMicroShunt(PM)(Santen)andEX-PRESSGlauco-maCDrainageDevice(EX)(Alcon)standaloneCimplantationCforCtheCtreatmentCofCglaucoma.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC20CeyesCofC17CpatientsCwhoCunderwentCPMCimplantationCandC32CeyesCofC32CpatientsCwhoCunderwentCEXCimplantation.Inalltreatedeyes,intraocularpressure(IOP),IOPreductionrates,eye-dropusagescores,andcom-plicationsCwereCevaluatedCpostCsurgery.CResults:PostCsurgery,Csigni.cantCIOPCreductionCwasCobservedCinCbothCgroupscomparedtothepreoperativelevels;i.e.,itwassigni.cantlylowerat1-dayand1-weekpostoperativeinthePMgroupandat3-and6-monthspostoperativeintheEXgroup,andeye-dropscoressigni.cantlydecreasedinbothgroups.HypotonyoccurredmorefrequentlyinthePMgroup,althoughtherewasnosigni.cantdi.erencebetweenthegroups.Anteriorchamberreformationwase.ectiveinthehypotonycases.Conclusion:Bothproce-duresshowedgoodshort-termoutcomes,yetPMrequirescarefulfollow-upduetotheriskofhypotony.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(8):1058.1063,C2025〕Keywords:プリザーフロマイクロシャント,エクスプレス.PreserFloMicroShunt,ExPRESS.はじめにEXPRESS濾過手術(以下,EX)とプリザーフロマイクロシャント挿入術(以下,PM)はともにデバイスを用いた濾過手術である.EXはステンレス製のチューブを強膜弁下に前房内へ挿入し,眼圧下降をはかる濾過手術の一法である.強角膜切除や虹彩切除を必要とせず,線維柱帯切除術(trabeculectomy:TLE)と比べて術後の視力の回復が早く,低眼圧に伴う有害事象の発生率が低いと報告3)されている.PMはC2022年に国内で承認された新しいデバイスを用いた濾過手術である.中腹にフィンがついたチューブを結膜下から前房内に挿入することで人工的に房水流出路を作製し眼圧を下降させる4,5).理論上は低眼圧になりにくいように設計されており6),術後の眼圧調整が不要というメリットがあ〔別刷請求先〕永井浩平:〒918-8503福井市和田中町舟橋C7-1福井県済生会病院眼科Reprintrequests:KoheiNagai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,Fukui-kenSaiseikaiHospital.Funabashi7-1,Wadanakamachi,Fukui-shi918-8503,JAPANC1058(124)る.強膜弁を作製しないという点でCEXよりもさらに低侵襲な術式といえる.眼圧下降効果については海外の報告7)によるとCTLEと比較して劣るとされているが,濾過手術であることから流出路再建術よりも優れた眼圧下降効果が期待される.EXとCPMはともにデバイスを用いた濾過手術という点で共通はしているが,両者の術後成績や安全性について比較した報告は筆者らの知る限りない.今回,福井県済生会病院(以下,当院)で行ったCEXとCPMの眼圧下降効果と安全性について後ろ向きに比較検討を行ったため報告する.CI対象および方法2022年2月1日.2023年9月30日に当院眼科を受診した眼圧コントロール不良な緑内障患者のうち,初回緑内障手術としてCPM単独手術またはCEX単独手術を施行し,半年以上経過観察できたC49例C52眼を対象に後ろ向きに検討した.術式選択には明確な基準がなかったが,患者背景,緑内障病期,目標眼圧などを総合的に考慮したうえで決定した.評価項目は術前,術翌日,1週,1カ月,2カ月,3カ月,6カ月の眼圧および眼圧下降率,術前および術後C6カ月の点眼スコア,術後有害事象とした.有害事象については低眼圧を眼圧C5CmmHg以下,浅前房を前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で前房深度C2.0Cmm以下と定義した.点眼スコアは緑内障治療点眼の単剤をC1点,配合剤をC2点,炭酸脱水酵素阻害薬内服をC2点とした.手術はすべて同一術者が行った.手術方法はCPMではC2%リドカイン塩酸塩水和物(キシロカイン注ポリアンプ2%)でCTenon.下麻酔後,円蓋部基底結膜切開を行い,円蓋部までCTenon.を.離した.0.04%マイトマイシンCCをC90秒間塗布し,100Cmlの灌流液で洗浄した.プリザーフロマイクロシャントを外科的輪部外側から3Cmmでダブルステップナイフを使用して強膜浅層および前房内まで穿刺し,隅角鏡で線維柱帯を貫通していることを確認した.位置不良であれば違う場所から挿入し直した.位置に問題なければプリザーフロマイクロシャント遠位端からの房水流出を確認し,円蓋部へ後退したCTenon.を前転,Tenon.を結膜の裏打ちとしてC2重にしてC10-0ナイロン糸の丸針で閉創した.最後にデキサート結膜下注射を行った.EXはCPMと同様にC2%リドカイン塩酸塩水和物(キシロカイン注ポリアンプ2%)でCTenon.下麻酔後,円蓋部基底結膜切開を行い円蓋部までCTenon.を.離した.3C×3Cmmの強膜弁を作製後,0.04%マイトマイシンCCをC90秒間塗布し,100Cmlの灌流液で洗浄した.25CGポートナイフで強膜弁下の外科的輪部から虹彩に平行にエクスプレスを前房内に穿刺し,強膜弁下に固定した.強膜弁はC10-0ナイロン丸針で房水流出量をコントロールしながら通常C5糸でウォータータイトに結紮した.その後,円蓋部へ後退したCTenon.を前転し,Tenon.を結膜の裏打ちとしてC2重にしてC10-0ナイロン丸針で閉創した.最後にデキサート結膜下注射を行った.術後は術前に使用していたすべての緑内障点眼を中止し,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム・フラジオマイシン硫酸塩液(点眼・点鼻用リンデロンCA液),1.5%レボフロキサシン点眼液(レボフロキサシン点眼液C1.5%「日点」)をC1カ月使用した.EXでは術後眼圧や濾過胞の状態をみて術者の判断でレーザー切糸(laserCsuturelysis:LSL)を行い,眼圧をC10前後に調整した.その後の経過観察中に眼圧上昇がみられた際は目標眼圧に応じてCLSLの追加,緑内障点眼再開,自己マッサージ指導を適宜行った.濾過胞の限局化がみられた場合はニードリングではなく開創して濾過胞再建術を施行した.統計学的な処理については,2群間の連続変数の比較にはマンホイットニーCU検定を,各群の眼圧推移にはCWilcoxonの符号順位検定を使用した.眼数の比較にはCXC2検定およびFisherの正確確率検定を使用した.本研究は当院の臨床研究審査委員会の承認を得たうえで実施した.書面によるインフォームドコンセントの代わりにオプトアウト方式を用いた.CII結果対象となったC49例C52眼の内訳は,PM群がC17例C20眼,EX群がC32例32眼であった.PM群の平均年齢はC72.3C±11.0歳,男性C9例であった.EX群は平均年齢C66.8C±12.2歳,男性C16例であった.患者背景は記載のすべての項目で統計学的な有意差を認めなかった(表1).術前眼圧〔中央値(範囲,四分位数)〕はCPM群ではC17(13.36,15.19)mmHg,EX群ではC18(7.41,15.24)mmHgであり,両群に有意差を認めなかった(p=0.515).術前点眼スコアにも有意差を認めなかった(p=0.100).術翌日,1週,1カ月,2カ月,3カ月,6カ月の術後眼圧〔中央値(範囲,四分位範囲)〕および眼圧下降率〔中央値(範囲,四分位範囲)〕はCPM群で,8(3.20,6.8)mmHg,57.1(28.6.81.3,50.0.66.7)%,8(3.12,6.9)mmHg,57.1(36.8.82.4,50.0.70.8)%,11(5.5.30,9.5.13)mmHg,38.5(7.1.66.7,20.0.47.1)%,12(8.30,10.13)mmHg,27.8(.6.7.62.5,15.4.47.1)%,12(8.21,10.13)mmHg,33.3(.10.5.58.3,15.4.50.0)%,13(7.39,11.13)mmHg,18.8(.10.5.63.2,7.7.42.1)%であった.EX群ではC16(8.40,11.19)mmHg,11.1(-37.9.63.0,-14.29.38.89)%,10(4.31,7.12)mmHg,50.0(.42.9.84.0,21.4.61.1)%,10(5.27,8表1患者背景PM群(C17例20眼)EX群(C32例32眼)p値年齢C72.5±11.5歳C66.8±12.2C0.128*1男性9例(5C2.9%)16例(C50.0%)C0.845*2右眼9眼(4C5.0%)17眼(C53.1%)C0.100*2点眼スコア3(0C-7,1C-4)4(0C-5,3C-4)C0.100*3眼内レンズ眼16眼(C80.0%)17眼(C53.1%)C0.115*2CHFA30.2MDC.15.72(C.21.4.C.12.80)CdBC.19.60(C.21.92.C.9.91)CdBC0.912*3病型C0.701*2原発開放隅角緑内障13眼(C65.0%)19眼(C59.4%)落屑緑内障7眼(3C5.0%)12眼(C37.5%)ステロイド緑内障0眼(0%)1眼(3C.1%)HFA:HumphreyCFieldAnalyzer,MD:meandeviation,*1:対応のないCt検定,*2:XC2検定,*3:Mann-WhitneyのCU検定..12)mmHg,46.7(.50.0.75.6,37.5.52.0)%,10(5.24,8.14)mmHg,45.8(0.73.2,33.3.53.8)%,10(6.24,8.12)mmHg,44.4(0.73.2,29.4.54.2)%,11(6.18,8.13),40.9(-14.3.75.9,29.4.59.3)%であった(図1).いずれの術式も術後すべての時点で有意な眼圧下降がみられた(Wilcoxon符号順位検定,p<0.05).両群を比較すると術後眼圧は術翌日,1週間ではCPM群で有意に低値であったが(p<0.01,p=0.02),3カ月,6カ月ではCEX群で有意に低値であった(p=0.02,p=0.03).眼圧下降率は術翌日でCPM群が有意に高率(p>0.01),6カ月でCEX群が有意に高率であった(p=0.03).術後C6カ月の点眼スコア〔中央値(範囲,四分位範囲)〕はCPM群C0(0.2,0.0),EX群0(0.3,0.0)と両群ともに術後有意な低下が得られ(p<0.05),両群間には有意差はみられなかった(p=0.852).術後有害事象はCPM群では低眼圧C4眼(20%),浅前房C4眼(20%),脈絡膜.離C3眼(15%),前房出血C5眼(25%),チューブ位置不良C1眼(5%),チューブ閉塞C1眼(5%)であった.EX群では低眼圧C3眼(9%),浅前房C1眼(3%),脈絡膜.離C5眼(16%),前房出血C1眼(3%),Seidel陽性C6眼(19%)であった.前房出血はCEX群で有意に少なく(p=0.026),Seidel陽性はCPM群で有意に少なかった(p=0.04)(表2).術後早期に介入を要したのはCPM群では粘弾性物質(ophthalmicviscosurgicaldevice:OVD)による前房形成を行ったものがC1眼,プリザーフロ留置位置が角膜に近く術後に位置修正を行ったものがC1眼,プリザーフロに虹彩が嵌頓したためCNd:YAGレーザーによる閉塞解除を行ったものがC1眼であった.EX群ではCLSL後に低眼圧が遷延したため経結膜的強膜弁縫合を行ったものがC4眼,経結膜的強膜弁縫合後も低眼圧が遷延したため開創して強膜弁の直接縫合を行ったものがC2眼であった.PM術後,過剰濾過により低眼圧・浅前房となった症例のうちC2症例を前眼部COCTの経過(図2,3)とともに提示する.症例1:術翌日の眼圧はC5CmmHgと低く,術後C8日目に浅前房,脈絡膜.離も出現した.しかし術後C11日目,浅前房の進行はなく経過観察としたところ,術後C1カ月で眼圧は9CmmHgに安定し,前房深度,脈絡膜.離は改善した.症例2:術翌日の眼圧はC5CmmHgと低眼圧であり,術後C2日目に浅前房化した.術後C3日目に浅前房がさらに進行したため,低眼圧遷延と判断し,前房内にCOVDを注入した.OVD注入の翌日に眼圧はC21CmmHgに上昇し,浅前房と脈絡膜.離は改善した.OVD注入から約C1カ月後,眼圧はC8mmHgと安定した.CIII考察まず,今回の代表的な結果を要約し,それぞれに対して考察する.PMの術後眼圧は既報7)と同様に早期にはやや低めに推移し,1カ月程度で安定していた.EXでは強膜弁をウォータータイトに縫合しており,翌日の眼圧は高めであったが,術後C1週間程度で眼圧C10CmmHg程度に調整され,その後安定していた.両群ともに術後C6カ月の眼圧は術前と比較して有意に低下し,点眼スコアも有意な低下が得られていた.術後眼圧は両群を比較すると術後早期はCPM群が有意に低値で,3カ月以降ではCEX群が有意に低値であった.PMとCTLEを比較した研究では,術後C6カ月でCTLEが眼圧および眼圧下降率において優れていたと報告7)されており,EXとCTLEの術後成績が同等であるという既報8,9)を考慮すると,本研究で得られた結果は妥当であるといえる.眼圧下降率(%)眼圧(mmHg)a454035302520151050PM単独EX単独術前術翌日術後1週術後1カ月術後2カ月術後3カ月術後6カ月100806040200-20-40-60b術翌日術後1週術後1カ月術後2カ月術後3カ月術後6カ月図1PM単独群,EX単独群の眼圧(a)および眼圧下降率(b)の推移.表2術後有害事象PM群(2C0眼)EX群(3C2眼)p値低眼圧4眼(20%)3眼(9%)C0.408*1浅前房4眼(20%)1眼(3%)C0.066*1脈絡膜.離3眼(15%)5眼(16%)C0.100*1前房出血5眼(25%)1眼(3%)C0.026*1Seidel陽性C06眼(19%)C0.040*1チューブ位置不良1眼(5%)C0C0.385*1チューブ閉塞1眼(5%)C0C0.385*1*1:Fisherの正確確率検定.術後8日術後11日術後17日術後30日図2症例1の前眼部OCTの推移術後に浅前房化したが進行はなく,経過観察したところ前房深度は徐々に深化した.術後1日術後2日術後3日術後30日図3症例2の前眼部OCTの推移術後に浅前房が進行し,OVDによる前房形成を施行したところ,術後C30日に前房は深化した.安全性に関しては,低眼圧に注目すると本研究では有意差はみられなかったが,PM群で多い結果であった.低眼圧の発生率は,初期の報告7)ではCPMがCTLEよりも有意に低率であった(PM26.3%vsTLE48.1%)とされているが,PMとCTLEを比較したシステマティックレビューC&メタアナリシスでは有意差なしとも報告10)されており,PMが安全面において優れるかどうかについては一定の見解は得られていない.低眼圧の原因としては,プリザーフロ刺入部のフィンからの房水漏出による一時的な過剰濾過が考えられている11,12).低眼圧への対応として定まったものはないが,報告されているものとしては経過観察,アトロピン点眼,前房形成,10-0ナイロン糸のチューブ内腔留置,チューブ抜去がある11.13).当院ではCPM術後に低眼圧となった症例に対してはCOVDを用いて前房形成を行った.低眼圧への対応として,EXでは経結膜的強膜弁縫合や開創しての強膜弁の直接縫合が可能である一方でCPMでは不可能であるため,外来でも簡便に行えるCOVDの注入が有用であると考える.また,浅前房が遷延すると前房が消失してCPMが虹彩と癒着し濾過効果が失われることがあるため,過剰濾過時の管理には注意を要する.本研究デザインには以下の限界がある.まず,患者の選択バイアスである.本研究は術式選択の時点で,目標眼圧がより低い症例で眼圧調整が可能なCEXが選択される傾向にあった可能性がある.これは,EX群で術後早期に眼圧上昇が起こった場合には,LSLや自己マッサージなどの眼圧下降処置や緑内障点眼再開が積極的に行われることを意味し,術後眼圧に有意差が生じる原因となりうる.二つ目は,緑内障病型を開放隅角緑内障に限定しなかったことである.このような研究デザインとした理由としては,実臨床の中で両術式を比較したいという思いがあったこと,対象から水晶体再建同時手術を除外したことにより症例数が想定を下回ったことがあげられるが,緑内障病型によっては術後成績が異なる可能性があり,本研究結果に影響したと考えられる.最後に,ラーニングカーブの問題がある.本研究の時点ではCPMは導入初期の段階であった.このため,手術手技および術後管理に習熟しているCEXと習熟していないCPMの間で術後成績および合併症の発生率に差が生じた可能性がある.結論として,両術式とも短期的には良好な眼圧下降が得られており,両群を比較すると術後早期はCPM,3カ月以降ではEXの眼圧が有意に低値であった.安全面においては術式間での有意差はみられなかったが,PM群では術直後に過剰濾過による低眼圧となる症例が高率にみられた.低眼圧が遷延した症例に対してはCOVDを用いた前房形成が有用であった.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)QinCQ,CZhangCC,CYuCNCetal:DevelopmentCandCmaterialCcharacteristicsCofCglaucomaCsurgicalCimplants.CAdvCOph-thalmolPractResC3:171-179,C20232)FujitaA,HashimotoY,MatsuiHetal:Recenttrendsinglaucomasurgery:anationwidedatabasestudyinJapan,2011-2019.CJpnJOphthalmolC66:183-192,C20223)Beltran-AgulloCL,CTropeCGE,CJinCYCetal:ComparisonCofCvisualCrecoveryCfollowingCex-pressCversusCtrabeculecto-my:resultsCofCaCprospectiveCrandomizedCcontrolledCtrial.CJGlaucomaC24:181-186,C20154)Burgos-BlascoCB,CGarcia-FeijooCJ,CPerucho-GonzalezCLCetal:EvaluationCofCaCnovelCAbCExternoCmicroshuntCforCtheCtreatmentofglaucoma.AdvTherC39:3916-3932,C20225)SadruddinCO,CPinchukCL,CAngelesCRCetal:AbCexternoCimplantationoftheMicroShunt,apoly(styrene-block-iso-butylene-block-styrene)surgicaldeviceforthetreatmentofprimaryCopen-angleCglaucoma:aCreview.CEyeCVis(Lond)6:36,C20196)GambiniCG,CCarlaCMM,CGiannuzziCFCetal:PreserFloCRMicroShunt:anCoverviewCofCthisCminimallyCinvasiveCdeviceCforCopen-angleCglaucoma.Vision(Basel)C6:12,20227)PanarelliCJF,CMosterCMR,CGarcia-FeijooCJCetal:Ab-ExternoCMicroShuntCversusCTrabeculectomyCinCprimaryCopen-angleCglaucoma:two-yearCresultsCfromCaCrandom-ized,CmulticenterCstudy.COphthalmologyC131:266-276,C20248)輪島良太郎,新田耕治,杉山和久ほか:EX-PRESS併用と非併用濾過手術の術後成績.あたらしい眼科C32:1477-1481,C20159)Kha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Preserflo MicroShuntの6カ月成績とnylon stentによる術後脈絡膜剝離予防策の検討

2024年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(12):1476.1481,2024cPreser.oMicroShuntの6カ月成績とnylonstentによる術後脈絡膜.離予防策の検討城下哲夫貞松良成さだまつ眼科クリニックCSix-monthOutcomesafterPreser.oMicroShuntImplantationandPreventionofPostoperativeChoroidalDetachmentwithaNylonStentTetsuoJoshitaandYoshinariSadamatsuCSadamatsuEyeClinicC目的:プリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)の術後C6カ月成績および術後の過剰濾過対策としてのCnylonstentの有用性の検討を行う.対象および方法:さだまつ眼科クリニックにおいてC2023年C1.8月にPFM挿入術を施行したC45例C51眼を対象とした.診療録から後ろ向きに眼圧,緑内障薬の点眼数,6カ月生存率,角膜内皮細胞密度,併発症について検討した.成功基準は術前からC20%以上の眼圧下降とした.結果:術前眼圧C24.7±7.5CmmHgはC6カ月後C14.1±4.6CmmHgへ有意に下降した.術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった.術後合併症としてもっとも多かったのは脈絡膜.離でC14眼(27.5%)に認め,うちC2眼は外科的介入を要した.脈絡膜.離(CD)発生の有無における患者背景の群間比較では,平均年齢,術前眼圧,眼圧下降幅に有意差が認められた.術中にC10-0nylonstentをCPFM内腔に挿入し対策を講じることで低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%へ有意に減少した.結論:PFM挿入術は術後有意な眼圧下降を認めたが,脈絡膜.離の合併症には注意する必要があり,その対策として,とくに高齢で術前眼圧の高い症例にはCnylonstentは有用な可能性がある.CPurpose:ToCevaluateCtheC6-monthCpostoperativeCoutcomesCofCPreser.oMicroShunt(PFM,CSantenCPharma-ceuticalCCo.,Ltd.)implantationCandCtheCe.ectivenessCofCnylonCstentingCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMeth-ods:Thisretrospectivestudyinvolved51eyesof45glaucomapatientsthatunderwentPFMimplantationatSad-amatsuCEyeCClinic,CSaitama,CJapanCbetweenCJanuaryCandCAugustC2023.CTheCmedicalCrecordsCofCallCcasesCwereCreviewedCtoCinvestigateCintraocularpressure(IOP),CnumberCofCglaucomaCmedicationsCused,CsurvivalCrateCatC6-monthspostoperative,cornealendothelialcell(CEC)density,andpostoperativecomplications.Thesuccesscrite-rionwasa.20%IOPreductionfromthatatbaseline.Results:At6-monthspostoperative,themeanpreoperativeIOPof24.7±7.5CmmHghadsigni.cantlydecreasedto14.1±4.6CmmHg,andthesurvivalratewas76.5%.Theaver-agedecreaseofCECdensitywas2.8±0.1%,andthemostcommoncomplicationwaschoroidaldetachment(CD);Ci.e.,CDobservedin14(27.5%)ofthe51eyes,2ofwhichrequiringsurgicalintervention.InthecomparisonoftheincidenceCofCCDCbetweenCtheCinvestigatedCfactors,Csigni.cantCdi.erencesCwereCobservedCinCtheCmeanCageCofCtheCpatients,preoperativeIOP,anddegreeofIOPreduction.Duringsurgery,10-0nylonstentingintothePFMlumensigni.cantlyCreducedCtheCincidenceCofCover-.ltrationCfrom31.0%Cto4.5%.CConclusion:PFMCimplantationCsigni.cantlydecreasedtheIOP,yetcarefulattentionmustbepaidtothepossibledevelopmentofCD.Nylonstent-ingmaybeane.ectivepreventivemeasure,especiallyinelderlypatientsandthosewithhighpreoperativeIOP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(12):1476.1481,C2024〕Keywords:緑内障手術,プリザーフロマイクロシャント,脈絡膜.離,低眼圧,ナイロンステント.glaucomaCsurgery,Preser.oMicroShunt,choroidaldetachment,hypotony,nylonstenting.C〔別刷請求先〕城下哲夫:〒344-0035埼玉県春日部市谷原新田C2213-1さだまつ眼科クリニックReprintrequests:TetsuoJoshita,M.D.,SadamatsuEyeClinic,2213-1Yaharashinden,Kasukabe-city,Saitama344-0035,JAPANC1476(92)はじめに緑内障手術において線維柱帯切除術(trabeculectomy:LET)はC1968年に報告され,以来効果的な手術として知られている1.3)が,同時にその合併症リスクも高い4).わが国でC2023年C8月より使用可能となったプリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)は,長さC8.5Cmm,外径C350Cμm,内腔C70Cμmのデバイスで,生体適合性材料であるスチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(polystyrene-isobuthlene-styrene:SIBS)で作られている5,6).PFMを用いた濾過手術はCLETに比べ術後早期の低眼圧のリスクは有意に低いという報告がある7,8)が,一方でLETに比べCPFMで術後早期の低眼圧が有意に多く,脈絡膜.離(choroidaldetachment:CD)も多い傾向にあるという報告9)もある.今回,PFMのC6カ月成績を後ろ向きに検討した.CI対象と方法2023年C1.8月にCPFM単独,または白内障同時手術を当院で施行した緑内障患者連続C45例C51眼を対象とした.眼圧は原則としてCGoldmann圧平眼圧測定を用い,一部測定が困難で測定結果に信頼性が低かったものにおいてはアイケア手持眼圧計(iCareIC100,IcareFinlandOy)を用いて測定した.角膜内皮細胞密度はスペキュラマイクロスコープ(TOMEYEM-4000,トーメーコーポレーション),角膜厚は前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて測定した.手術室において,点眼麻酔後,術野消毒・ドレーピングし術野を確保した.2%キシロカインCEで結膜下浸潤麻酔を行い角膜輪部側より結膜を切開,Tenon.を展開し強膜を露出させ,2%キシロカインCEでCTenon.下麻酔を行った.止血を確認したのち,0.04%マイトマイシンC(MitomycinC:MMC)を強膜にC4分間塗布し,生理食塩水C20Cmlで洗浄した.角膜輪部からC3Cmmの位置から専用のダブルステップナイフを用いて強膜トンネルを作製し前房内に穿孔,同トンネル内にCPFMを挿入した.PFMの先端が前房内にあることを確認し,PFM後端からの房水の逆流を確認したのち,PFM後方露出部を矢状方向に強膜上に沿わせた状態でTenon.と結膜を角膜輪部にC9-0バージンシルク縫合糸を用いてC2針縫合した.手術終了時にデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムC1.65Cmg(デカドロン)の結膜下注射を行った.白内障同時手術の場合は,まずに先にC12時よりC2.3Cmmの角膜切開にて白内障手術を施行し,前房内の粘弾性物質(ヒアルロン酸CNa1.1眼粘弾剤C1%CMV「センジュ」)を十分に洗浄除去したのち,PFMの手順へ進んだ.連続症例C30眼目以降のC22眼においては全眼,術中にCPFMの後端より10-0ナイロン糸(以下,nylonstent)を挿入し,術後の眼圧に応じて術後平均C5.4C±9.3日目(1.42日目)に抜去した.術眼の緑内障点眼薬は術後から中止し,術後眼圧に応じて再開した.術後はモキシフロキサシン(ベガモックス点眼液0.5%)をC2週間,デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム(サンテゾーン点眼液C0.1%)をC6カ月間,ブロムフェナクナトリウム(ブロナック点眼液C0.1%),レバミピド(ムコスタ点眼液CUD0.2%)をC3カ月間継続した.検討項目は術後眼圧経過,薬剤スコア,累積生存率,角膜内皮細胞密度および併発症とした.CD発生の有無における患者背景の群間比較項目は,病型,角膜厚,術前からの眼圧下降幅,術前眼圧,平均年齢,Cnylonstentの有無,白内障同時手術の有無とした.CNylonstentの有無,およびCPFM単独/白内障同時手術における術翌日眼圧,CD発生率,低眼圧発生率を比較した.全観察点で(術前,術後C1日,1,2,3週日,1,2,3,4,5,6,7およびC8カ月)で診察と眼圧測定を行った.薬剤スコアは緑内障の単剤をC1点,配合剤はC2点,経口炭酸脱水酵素阻害薬はC1錠C2点として計算した.解析方法として,術後眼圧と薬剤スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較検定を行い,生存率は既報7)と同じように緑内障治療薬の追加なしで術前からC20%以上の眼圧下降を成功,これをC2回連続した観察点で満たさない場合,または手術室での追加緑内障手術を要した場合を死亡としてCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成した.CD発生の有無,nylonstentの有無,PFM単独/白内障同時手術における患者背景の群間比較にはCt検定,Fisherの直接確率計算法,nylonstentの有無およびCPFM単独/白内障同時手術におけるCCDと低眼圧発生頻度の比較にはCFisherの直接確率計算法を用いた.有意水準はp<0.05とした.本研究は臨床研究法を遵守しヘルシンキ宣言に基づき,手術前にインフォームド・コンセントを得て,豊栄会研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:H023R504).CII結果対象の連続C45例C51眼を後ろ向きに検討した.患者背景を表1に示す.病型の内訳は,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleglaucoma:POAG)23眼,落屑緑内障(exfolia-tionglaucoma:EXG)19眼,EXG以外の続発開放隅角緑内障(secondaryCopenCangleglaucoma:SOAG)で硝子体手術後の眼圧上昇C3眼,新生血管緑内障C2眼,抗精神病薬内服によると思われる続発閉塞隅角緑内障C2眼,ぶどう膜炎緑内障1眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼であった.全症例の術後平均観察期間はC4.0C±2.2カ月であった.全症例の眼圧経過は術後C8カ月を除いた全期間において術前C24.7C±7.5CmmHgから有意に下降し,術後C6カ月目ではC14.1±4.6CmmHgまで減少した(p<0.001,ANOVA+Dun-nett’stest,図1).全症例の薬剤スコアは術前C3.8C±0.8から術後C6カ月目ではC0.5C±1.2に減少した(p<0.001,pairedtest).術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286,pairedt-test).図2にCKaplan-Meier生命表解析を用いた生存曲線を示す.表1患者背景眼数年齢(歳)男:女病型(POAG:EXG:others)術前眼圧(mmHg)術前薬剤スコア術前角膜内皮細胞密度(cells/mmC2)術前中心角膜厚(μm)術後観察期間(カ月)IOL:phakiaPFM単独手術:白内障同時手術PFM挿入位置鼻上側:耳上側:鼻下側ナイロンステント挿入無硝子体眼緑内障手術歴あり45例51眼C73.7±10.5(48.88)33:1823:19:9C24.7±7.5(16.42)C3.8±0.8(2.5)C2314±438C525±37C4.0±2.239:1243:848:2:122眼7眼11眼(mean±SD)(Range)薬剤スコアは炭酸脱水酵素阻害薬をC1錠C2点,配合剤点眼をC2点とした.POAG:原発性開放隅角緑内障,EXG:落屑緑内障,PFM:プリ術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.術後併発症として頻度が高かったのはCCDで,51眼中C14眼(27.5%)に認めた.うちC9眼(17.6%)は経過観察またはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン点眼液0.1%),アトロピン硝酸塩水和物(日点アトロピン点眼液C1%),粘弾性物質(ophthalmicCviscosurgicaldevice:OVD)(オペガン0.6眼粘弾剤1%)の前房内注入(1眼)で消退,3眼(5.9%)はそれぞれ術後C8カ月目,2週目,1週目時点で経過観察可能な範囲のCCDが残存し,2眼(3.9%)は重篤なCCDとなり外科的な介入を要した.その他の術後併発症は,高眼圧(16CmmHg<)がC12眼(23.5%),低眼圧(<6CmmHg)が10眼(19.6%),前房出血がC10眼(19.6%),浅前房がC7眼(13.7%),複視がC4眼(7.8%),PFMの挿入位置不良がC2眼(3.9%)であった.術後の追加処置としては,9眼(17.6%)でCneedling(1回3眼,2回4眼,3回2眼),5眼(9.8%)で濾過胞再建とPFM短縮,2眼(5.7%)で重篤なCCDのためCtappingとシリコーンオイル(siliconoil:SO)置換,1眼(2.0%)でCOVDの前房内注入(1回),1眼(2.0%)で挿入位置修正を行った.患者背景の群間比較では,CD群とCCDが発生しなかった群でそれぞれ,平均年齢がC80.9C±6.6歳とC70.9C±10.6歳(p=0.0018*),術前眼圧がC29.6C±7.5CmmHgとC22.8C±6.7CmmHg(p=0.00765*),術前からの眼圧下降幅がC21.9C±9.1CmmHgとC13.1C±7.2CmmHg(p=0.00069*)であった.Nylonstent群と非挿入群ではそれぞれ,平均年齢がC69.4C±11.9歳とC76.9C±3.8mmHg±6.11),術翌日眼圧がC2表)(*0.00993=3歳(pC.8.001)7mmHg(p<0C.3±と7.3ザーフロマイクロシャント.C24.7±7.53025(表2),CD発生率はCNylon眼圧(mmHg)15.1±4.52014.1±4.6*15********10**5pre171421285684112140168196234観察期間(日)(mean±SD)眼数515151392345423830221791図l眼圧経過術C7カ月後まで有意に下降した(*p<0.001,ANOVA+Dunnett’stest)生存率(%)100806040200050100150生存期間(日)図2Baselineより20%以上眼圧下降6カ月生存率生存率はC76.5%であった.表2患者背景(CD発生群と非発生群)EXGCPOAG角膜厚(μm)平均年齢(歳)術前眼圧(mmHg)術前からの眼圧下降幅(mmHg)術翌日眼圧(mmHg)Cnylonstent(+)白内障同時手術CD群CDが発生(n=14)しなかったp値群(n=37)8(57.1%)11(29.7%)4(28.6%)19(51.4%)C533.7±32.0C522.0±38.5C80.9±6.6C70.9±10.6C29.6±7.5C22.8±6.7C21.9±9.1C13.1±7.2C7.7±4.0C9.8±4.33(21.4%)19(51.4%)1(7.1%)7(18.9%)0.106+0.21+0.318*C0.0018*C0.00765*C0.00069*C0.129*C0.0658+0.419+NS群NSを入れな(n=22)かった群p値(n=29)5(22.7%)14(48.3%)11(50.0%)12(41.4%)C514.4±36.5C533.4±35.3C69.4±11.9C76.9±8.3C25.4±8.1C24.1±7.1C13.7±8.2C16.8±8.9C11.6±3.8C7.3±3.75(22.7%)3(10.3%)0.0829+0.581+0.0674*C0.00993*C0.567*C0.212*C0.000174*C0.268+PFM単独白内障同時群(n=43)手術群p値(n=8)18(41.9%)1(12.5%)C0.231+20(46.5%)3(37.5%)C0.715+526.1±36.9C520.8±39.0C0.712*C75.6±9.4C63.4±11.3C0.00194*C25.0±7.4C22.6±7.8C0.406*C16.3±8.9C11.0±8.0C0.111*C8.7±3.9C11.6±5.4C0.08*17(39.5%)5(62.5%)C0.268+(mean±SD)+:Fisher’sexacttest,*:t-testCD:脈絡膜.離,NS:ナイロンステント,PFM:プリザーフロマイクロシャント,EXG:落屑緑内障,POAG:原発性開放隅角緑内障.stent群がC13.6%,非挿入群がC37.9%(p=0.0658)(表3),術表3Nylonstentの有無およびPFM単独/白内障同時手術によ翌日の低眼圧発生率はCnylonstent群がC4.5%,非挿入群がるCDと低眼圧発生頻度の比較31.0%(p=0.0302*)(表3)であった.白内障同時手術群のCD発生率はC12.5%,PFM単独群がC30.2%(p=0.419)(表2)であった.CIII考按術後の眼圧変化としては,1眼しかなかった術後C8カ月を除いた全観察期間において有意に眼圧下降が得られた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest,図1).術翌日はC10CmmHgCD発生有低眼圧発生有(<6mmHg)nylonstent(C.)nylonstent(+)11/29(C37.9%)3/22(C13.6%)9/29(C31.0%)1/22(C4.5%)p値C0.0658+0.0302+PFM単独白内障同時手術13/43(C25.5%)1/8(C12.5)8/43(C18.6%)2/8(C25.0%)p値C0.419+0.647++:Fisher’sexacttest以下まで下降し,術後C1カ月目まで徐々に上昇して安定しCD:脈絡膜.離,PFM:プリザーフロマイクロシャント.た.この傾向は既報7,8)と一致した.術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286).Bakerらは術後C1年での角膜内皮細胞密度の平均減少率はCPFMとCLETで差はないとしており7),少なくとも短期でのCPFMによる角膜内皮細胞の明らかな減少は認められないといえる.しかし,PFMの挿入角度によって,角膜内皮に近く固定されたものは角膜内皮細胞の減少が危惧されるため,挿入位置の修正が必要になることもあるだろう.今回の症例にも術翌日にCPFMの先端が角膜内皮近くに挿入されていたため,再手術にて挿入角度を修正した症例があった.今回C51眼中C14眼(27.5%)にCCDを認めた.既報のCCDの発生頻度C4.6.11%C7.10)に比べて多い結果であった.PFM施行後のCCD発生リスクについての報告は未だないが,Iwa-sakiらはCLET施行後のCCD発生のリスクファクターとして,EXG,大幅な眼圧下降,厚い角膜厚をあげている11).今回EXGの有無でCCD発生率に有意差は認められず(p=0.106),角膜厚においてもCCD発生の有無に差はなかった(p=0.318)(表2).術前から術翌日の眼圧下降幅においては,CD発生群C21.9C±9.1CmmHgに対しCCDが発生しなかった群でC13.1C±7.2CmmHgと有意差を認めた(p<0.001)(表2).やはり大幅な眼圧下降はCCD発生のリスクといえよう.PFMはその構造上,高い眼圧のほうが下降幅は大きくなる.そこで術前眼圧を比較するとCCD発生群C29.6C±7.5CmmHgに対し発生しなかった群C22.8C±6.7CmmHgと有意差を認めた(p<0.01)(表2).術前眼圧が高いことはCCD発生のリスクとして考慮する必要がある可能性がある.また,平均年齢においてCCD発生群C80.9C±6.6歳に対しCCDが発生しなかった群でC70.9C±10.6歳と有意差を認めた(p<0.01)(表2).高齢であることもCD発生のリスクファクターとなり得る.今回の対象の平均年齢はC73.7C±10.5歳と既報C7.10)に比べ高齢であったことはCDの発生率が高いことに影響している可能性がある.低眼圧に対してCOVDの前房内注入はCPFMの閉塞を危惧し,当初は選択を避けていたが,その後,白内障同時手術を経験していく中でCOVDは使用可能と判断し,低眼圧傾向とCDの出現早期からCOVDの前房内注入をするようにすることで以降の症例では術後にコントロール不良なCCDにまでは発展することなく経過した.LupardiらはCPFM術後の過剰濾過に対し,PFM内腔に10-0ナイロン糸を挿入することで低眼圧を改善・予防した12,13).また,LukeらはCPFM内腔にC8-0ポリアミド糸を挿入することで術後の低眼圧を予防した14).今回Cnylonstent群では非挿入眼に比し術翌日の眼圧は有意に上昇し,低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%まで有意に減少した(p=0.0302)(表3).CDの発生率は有意差はないもののC37.9%からC13.6%へ減少傾向を示した(p=0.0658)(表3).しかし,Cnylonstentの有無による術前眼圧と術前眼圧下降幅に差はなかった(表2).今回Cnylonstentの使用は無作為に割り付けていたが,平均年齢はCnylonstentを入れなかった群で有意に高かった.そこでCnylonstentを入れなかったC29眼を対象にCCD発生の有無で平均年齢,術前眼圧,術前からの眼圧下降幅,角膜厚,術翌日眼圧,EXGの有無に統計的差があるかを検討したところ,それぞれ平均年齢C81.9C±4.3歳,73.9C±8.7歳(p=0.0084*,t-test),術前眼圧C28.3C±6.8CmmHg,21.6C±6.1CmmHg(p=0.0108*,t-test),術前眼圧からの眼圧下降幅C21.3C±9.4mmHg,14.1C±7.5CmmHg(p=0.0306*,t-test)と有意差を認めた.角膜厚(p=0.705,t-test),術翌日眼圧(p=0.703,t-test),EXGの有無(p=0.264,Fisher’sCexacttest)については有意差は認められなかった.このことからも高齢で術前眼圧が高いことは術後CCD発症のリスクとなる可能性が高いといえるだろう.術翌日眼圧はCnylonstentを入れた群で有意に高かった(表2).Nylonstentによって大幅な眼圧下降は抑制できると期待できる.CNylonstentは低眼圧や大幅な眼圧下降に伴うCCDについては予防策となるかもしれない.今回経験した症例の結果からは,とくに高齢で術前眼圧が高い患者にはCnylonstentが有用な可能性が期待できる.しかし,nylonstentによるPFMの長期の成功率への影響は未知数であり,今後さらに多数,長期の検討が必要である.文献1)CairnsJE:Trabeculectomy.CpreliminaryCreportCofCaCnewCmethod.AmJOphthalmolC66:673-679,C19682)GeddeSJ,FeuerWJ,ShiWetal:TreatmentoutcomesintheCprimaryCtubeCversusCtrabeculectomyCstudyCafterC1Cyearoffollow-up.OphthalmologyC125:650-663,C20183)CaprioliJ,DeLeonJM,AzarbodPetal:TrabeculectomycanCimproveClong-termCvisualCfunctionCinCglaucoma.COph-thalmologyC123:117-128,C20164)EdmundsB,ThompsonJR,SalmonJFetal:TheNationalsurveyoftrabeculectomy.III.earlyandlatecomplications.EyeC16:297-303,C20025)KerrCNM,CAhmedCIIK,CPinchukCLCetal:PRESERFLOCMicroShunt.In:MinimallyCinvasiveCglaucomaCsurgery(SngCCCA,CBartonK),p91-103,CSingapore,CSpringer,C20216)GreenCW,CLindCJT,CSheybaniA:ReviewCofCtheCXenCgelCstentCandCInnFocusCMicroShunt.CCurrCOpinCOphthalmolC29:162-170,C20187)BakerCND,CBarnebeyCHS,CMosterCMRCetal:Ab-externoCMicroShuntversustrabeculectomyinprimaryopen-angleglaucoma:one-yearCresultsCfromCaC2-yearCrandomized,Cmulticenterstudy.OphthalmologyC128:1710-1721,C20218)FeaAM,La.GL,MartiniEetal:E.ectivenessofMicro-Shuntinpatientswithprimaryopen-angleandpseudoex-foliativeCglaucoma.COphthalmolCGlaucomaC5:210-218,C2022C9)BohlerAD,TraustadottirVD,HagemAMetal:Hypoto-nyCinCtheCearlyCpostoperativeCperiodCafterCMicroShuntCimplantationCversustrabeculectomy:aCregistryCstudy.CActaOphthalmolC102:186-191,C202310)TannerA,HaddadF,Fajardo-SanchezJetal:One-yearsurgicaloutcomesofthePreserFloMicroShuntinglauco-ma:aCmulticentreCanalysis.CBrCJCOphthalmolC107:1104-1111,C202311)IwasakiCK,CKakimotoCH,CArimuraCSCetal:ProspectiveCcohortstudyofriskfactorsforchoroidaldetachmentaftertrabeculectomy.IntOphthalmolC40:1077-1083,C202012)LupardiCE,CLa.CGL,CCiardellaCACetal:Ab-externoCintra-luminalCstentCforCprolongedChypotonyCandCchoroidalCdetachmentCafterCPreser.oCimplantation.CEurCJCOphthal-molC33:63-66,C202313)LupardiCE,CLa.CGL,CMoramarcoCACetal:SystematicCPreser.oCMicroShuntCintraluminalCstentingCforChypotonyCpreventionCinChighlyCmyopicpatients:aCcomparativeCstudy.JClinMedC12:1677,C202314)LukeCJN,CReinkingCN,CDietleinCTSCetal:IntraoperativeCprimaryCpartialCocclusionCofCtheCPreserFloCMicroShuntCtoCpreventCinitialCpostoperativeChypotony.CIntCOphthalmolC43:2643-2651,C2023***