《第35回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科42(7):881.886,2025c多施設による緑内障患者の実態調査2024年版─薬物治療─小林大航*1,2井上賢治*1塩川美菜子*1國松志保*3富田剛司*1,2石田恭子*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院*3西葛西・井上眼科病院CMulti-institutionalsurveyforglaucomain2024─drugtherapy─TaikoKobayashi1,2)C,KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),GojiTomita1,2)CandKyokoIshida2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter,3)NishikasaiInouyeEyeHospitalC目的:現状の緑内障患者の実態をアンケート調査して,さらに経時的変化を検討する.対象と方法:本調査に賛同したC82施設に外来受診した緑内障および高眼圧症患者C6,323例C6,323眼を対象とした.病型と,レーザーおよび手術既往歴,使用薬剤を調査した.2020年に行った前回調査とも比較した.結果:病型は正常眼圧緑内障C45.6%,原発開放隅角緑内障C33.1%,続発緑内障C7.8%などであった.使用薬剤数はC1.8C±1.4剤であった.単剤はCFP作動薬C61.9%,2剤はCFP/Cb配合剤C56.4%が各々最多だった.配合剤使用はC3剤C91.3%,4剤C94.2%で前回調査より増加した.単剤はEP2作動薬が,2剤はCFP/Cb配合剤が前回調査より増加した.レーザーと手術既往は前回調査より増加した.結論:単剤はCFP作動薬,2剤はCFP/Cb配合剤が依然として最多だった.3剤以上での配合剤使用,レーザー既往,手術既往は調査ごとに増加している.CPurpose:ToCinvestigateCtheCcurrentCstatusCofCglaucomaCtherapyCthroughCaCsurvey,CandCfurtherCexamineCchangesovertime.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved6,323glaucomaandocularhypertensionpatientsseenat82participatingfacilities.Diseasetype,historyofsurgery/laser-surgery,andmedicationsusedwereinves-tigatedandcomparedwiththeprevious2020survey.Results:Subtypesincludednormal-tensionglaucoma(45.6%)C,primaryCopen-angleCglaucoma(33.1%)C,CandsecondaryCglaucoma(7.8%)C.CFPCagonistsCandCFP/bcombinationCdrugsweremostcommonlyusedinsingle-medication(61.9%)anddual-medication(56.4%)therapies,respective-ly,andofthecombinationdrugsused,91.3%involved3medicationsand94.2%involved4medications,anincreaseCcomparedtothe2020survey.Comparedtotheprevioussurvey,EP2agonists(monotherapy)andFP/bcombina-tiondrugs(dual-medication)wereusedmorefrequentlyandthenumberofsurgicalandlaser-surgeryproceduresperformedChadCincreased.CConclusions:ComparedCtoCtheCpreviousCsurvey,CFPagonists(monotherapy)andCFP/bcombinationdrugs(dual-medicationtherapy)remainedCtheCdrugsCmostCcommonlyCused,CwithC3CorCmoreCmedica-tionsCusedCmoreCfrequentlyCinCtheCcombinationCdrugs,CandCtheCnumberCofCsurgicalCandClaser-surgeryCproceduresCperformedhadincreased.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(7):881.886,C2025〕Keywords:眼科医療施設,多施設,緑内障治療薬,緑内障実態調査,配合剤.ophthalmologymedicalfacility,drugforglaucoma,surveyforglaucoma,combinationeyedrops.Cはじめに日本緑内障学会による緑内障診療ガイドライン第C5版が2022年に改訂された1).緑内障性視野障害進行抑制に対して唯一根拠が明確に示されている治療は眼圧下降で,わが国において現在の開放隅角緑内障治療の第一選択は薬物治療である.新たな作用機序を有する眼圧下降薬,新規配合剤が使用可能となり,薬物治療を行ううえでの選択肢は増えている.緑内障診療ガイドライン第C4版がC2018年に改訂されて以降,EP2作動薬(オミデネパグイソプロピル)と新規配合剤(ブリモニジン/ブリンゾラミド,リパスジル/ブリモニジン)が使用可能になった.そこで,眼科専門病院やクリニックにおける多施設での緑内障患者実態調査をC2007年に開始した2).〔別刷請求先〕小林大航:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:TaikoKobayashi,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3KandaSurugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(97)C881表1研究協力施設(82施設)1ふじた眼科クリニックC22あいりす眼科クリニックC43おがわ眼科C64たじま眼科・形成外科C2苫小牧しみず眼科C23かさい眼科C44綱島駅前眼科C65やなせ眼科C3有楽町駅前眼科C24みやざき眼科C45眼科中井医院C66母心堂平形眼科C4アイ・ローズクリニックC25はしだ眼科クリニックC46市ヶ尾眼科C67ヒルサイド眼科クリニックC5飯田橋藤原眼科C26にしかまた眼科C47さいとう眼科C68さいはく眼科クリニックC6中山眼科医院C27久が原眼科C48あおやぎ眼科C69藤原眼科C7白金眼科クリニックC28田宮眼科C49本郷眼科C70ふじもと眼科クリニックC8高輪台眼科クリニックC29そが眼科クリニックC50吉田眼科C71大原ちか眼科C9小川眼科診療所C30明大前西アイクリニックC51のだ眼科麻酔科医院C72かわぞえ眼科クリニックC10もりちか眼科クリニックC31ほりかわ眼科久我山井の頭通りC52みやけ眼科C73いまこが眼科医院C11鈴木眼科C32広沢眼科C53高根台眼科C74槇眼科医院C12良田眼科C33小滝橋西野眼科クリニックC54大島眼科医院C75むらかみ眼科クリニックC13駒込みつい眼科C34いなげ眼科C55おおあみ眼科C76川島眼科C14赤羽すずらん眼科C35眼科松原クリニックC56いずみ眼科クリニックC77鬼怒川眼科医院C15菅原眼科クリニックC36しらやま眼科クリニックC57サンアイ眼科C78お茶の水井上眼科クリニックC16うえだ眼科クリニックC37赤塚眼科はやし医院C58さいき眼科C79井上眼科病院C17江本眼科C38氷川台かたくら眼科C59林眼科医院C80西葛西・井上眼科病院C18えづれ眼科C39えぎ眼科仙川クリニックC60のいり眼科クリニックC81大宮・井上眼科クリニックC19的場眼科クリニックC40西府ひかり眼科C61石井眼科クリニックC82札幌・井上眼科クリニックC20錦糸町おおかわ眼科クリニックC41東小金井駅前眼科C62やながわ眼科C21江戸川のざき内科眼科C42後藤眼科C63ふかさく眼科そののち,2009年に第C2回3),2012年に第C3回4),2016年に第C4回5),2020年に第C5回の緑内障患者実態調査6)を実施した.そこで今回は,緑内障診療ガイドライン第C5版に合わせて新たに第C6回緑内障患者実態調査を実施し,緑内障患者の最新の実態を解明した.加えて前回調査の結果6)と比較し,経年変化を解析した.CI対象と方法本調査は,緑内障患者実態調査の趣旨に賛同した全国C82施設においてC2024年C3月C10.16日に施行した.調査目的は緑内障患者への薬物治療の実態把握である.協力施設を表1に示す.調査期間内に外来受診した緑内障および高眼圧症患者全例を対象とした.今回の調査から緑内障病型として初めて前視野緑内障(preperimetricCglaucoma:PPG)を入れた.総症例数はC6,323例,男性C2,765例,女性C3,558例,平均年齢C69.2C±13.3歳(5.100歳)であった.緑内障の診断と治療は緑内障診療ガイドライン1)に則り,主治医の判断で行った.調査は調査票(図1)を用いて行った.調査票に年齢,性別,病型,使用薬剤,レーザー治療と緑内障手術の既往を記載し回収した.片眼症例は患眼,両眼症例は右眼を調査した.患者背景,使用薬剤数,単.5剤の使用薬剤を調査した.前回の調査と同様に薬剤は一般名での収集とした.配合剤はC2剤として解析した.さらに,2020年に行った前回調査の結果6)と比較した.今回調査の各薬剤分布の比較にはC|2検定,Fisherの直接法,今回調査と前回調査の患者背景の年齢比較には対応のないCt検定,使用薬剤数の比較にはCMann-Whit-neyのCU検定,男女比,レーザー治療既往症例,手術既往症例の比較にはC|2検定,Fisherの直接法を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.CII結果今回の調査での病型は正常眼圧緑内障C2,882例(45.6%),原発開放隅角緑内障C2,090例(33.1%),続発緑内障C492例(7.8%),前視野緑内障C344例(5.4%)などであった(図2).レーザー治療既往症例はC312例(4.9%),緑内障手術既往症例はC571例(9.0%)であった(表2).レーザー治療の内訳は,選択的レーザー線維柱帯形成術(selectiveClaserCtrabeculo-図1調査票正常眼圧緑内障45.651.0**原発開放隅角33.1**緑内障31.07.8続発緑内障8.25.40.1**4.4前視野緑内障高眼圧症5.4原発閉塞隅角今回調査3.54.2**緑内障前回調査0.2小児緑内障0.10102030405060図2前回調査との比較(手術既往症例,レーザー治療既往症例比較)*p<0.05,**p<0.001(C|2plasty:SLT)174例(55.8%),レーザー虹彩切開術(Laseriridotomy:LI)はC120例(38.5%),その他C18例(5.8%)であった.緑内障手術の内訳は,線維柱帯切除術C300例(52.6%),線維柱帯切開術C111例(19.5%),iStent手術C87例(15.3%),チューブシャント手術C14例(2.5%),隅角癒着解離術(GSL)6例(1.1%)などであった.使用薬剤数は平均C1.8C±1.4剤で,その内訳は無投薬C739検定,Fisherの直接法比較)例(11.7%),単剤C2,473例(39.1%),2剤C1,435例(22.7%),3剤C838例(13.3%),4剤C513例(8.1%),5剤C266例(4.2%),6剤C53例(0.8%),7剤C6例(0.1%)であった.使用薬剤の内訳を以下に示す.単剤はCFP作動薬C1,532例(61.9%),b遮断薬C476例(19.2%),EP2作動薬C255例(10.3剤2).3図,ROCK阻害薬62例(2.5%)などであった(%)はCFP/Cb配合剤C810例(56.4%),FP作動薬+b遮断薬C116表2前回調査との比較(|2検定)例(8.1%),CAI/Cb配合剤C115例(8.0%),FP作動薬+点眼CAI112例(7.8%)などであった(図4).2剤で最多となったCFP/b配合剤の内訳は,ラタノプロスト/カルテオロール配合剤C451例(55.7%),ラタノプロスト/チモロール配合剤C199例(24.6%),トラボプロスト/チモロール配合剤C61例(7.5%),タフルプロスト/チモロール配合剤C99例(12.2%)であった.3剤,4剤,5剤の薬剤内訳を表3に示す.配合剤使用例はC3剤C765例(91.3%),4剤C483例(94.2%),5剤C264今回調査前回調査p値症例数6,323例5,303例男女比2,765:C3,5582,347:C2,956C0.58平均年齢C69.2±13.3歳(5.C100歳)C68.7±13.1歳(1C1.C101歳)C0.09手術歴レーザー歴571例(C9.0%)312例(C4.9%)366例(C6.9%)220例(C4.1%)<C0.05<C0.01FP作動薬1,4131,532*476b遮断薬473107255*EP2作動薬962*ROCK阻害薬58イオン開口5747点眼CAI391578*a2作動薬14ab遮断薬136今回調査a1遮断薬67前回調査経口CAI41その他402004006008001,0001,2001,4001,600図3前回調査との比較(単剤使用比較)*p<0.05,**p<0.001(C|2検定)FP作動薬:FP受容体作動薬,EP2:EP2受容体作動薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬.CFP/b配合剤521810**FP+b116149**CAI/b配合剤115146*FP+点眼CAI112143**82FP+a2851041**CAI/a2配合剤032**27a2/b配合剤FP+ROCK2517a2+EP2916b+EP213今回調査9b+a235前回調査a2/ROCK配合剤08*50その他420100200300400500600700800900図4前回調査との比較(2剤比較)*p<0.05,**p<0.001(C|2検定)FP:FP受容体作動薬,EP2:EP2受容体作動薬,Cb:b遮断薬,Cab:ab遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,Ca2:a2刺激薬,ROCK:ROCK阻害薬.表33,4,5剤の処方内訳使用薬剤数処方薬剤組み合わせ患者数(例)割合(%)FP作動薬+CAI/b配合剤C21325.4%C3剤FP/b配合剤+点眼CCAIC14317.1%CFP/b配合剤+a2作動薬C11914.2%その他C36343.3%FP/b配合剤+CAI/a2配合剤C18536.1%4剤CFP作動薬+CAI/b配合剤+a2作動薬C7514.6%CFP/b配合剤+ROCK/a2配合剤C346.6%その他C21942.7%FP/b配合剤+CAI/a2配合剤+ROCK阻害薬C11844.4%5剤CFP作動薬+CAI/b配合剤+ROCK/a2配合剤C3814.3%FP作動薬+CAI/b配合剤+a2作動薬+ROCK阻害薬C3011.3%その他C8030.0%※配合剤はC2剤としてカウントし,使用ボトル数での試算はしていない.また,6剤以上の使用報告もあるが,件数は統計に必要なサンプル数を満たさなかった.例(99.2%)であった.配合剤C2本(4剤)使用はC4剤C229例(44.6%),5剤C186例(69.9%)であった.今回の調査結果をC2020年の前回調査10)の結果と比較した(表2).平均年齢は今回と前回で同等であった.病型は今回が前回に比べて原発開放隅角緑内障,前視野緑内障が有意に多く,原発閉塞隅角緑内障,正常眼圧緑内障が有意に少なかった(p<0.001).レーザー治療既往症例は今回のC312例(4.9%)が前回のC220例(4.1%)に比べて有意に多かった(p<C0.01).緑内障手術既往症例は今回のC571例(9.0%)が前回のC366例(6.9%)に比べて有意に多かった(p<0.05).平均使用薬剤数は,今回調査で前回に比べて有意に増加した(p=0.05).使用薬剤数の分布では,単剤およびC2剤の使用が有意に減少し(p<0.05),5剤以上の使用が有意に増加した(p<0.001).単剤使用において,FP作動薬の使用率は前回調査と同等だったが,EP2作動薬(p<0.0001)およびROCK阻害薬(p<0.0001)の使用が有意に増加した.2剤使用では,FP/Cb配合剤の使用が有意に増加(p<0.0001),CCAI/b配合剤の使用が有意に減少(p<0.001)し,CAI/Ca2配合剤の使用が有意に増加した(p<0.001).3剤以上の使用に関して,配合剤の使用率はC3剤(p<C0.001),4剤(p<0.001),5剤(p<0.001)でいずれも有意に増加した.とくに,4剤では配合剤C2本の使用での処方が可能となり,今回調査でC44.6%にみられた.5剤では,配合剤C2本の使用が前回調査に比べて有意に増加した(p<C0.001).6剤以上の使用例もあったが,統計解析に必要なサンプル数を満たさなかった.III考按今回調査では,緑内障病型は正常眼圧緑内障C45.6%,原発開放隅角緑内障C33.1%と広義の原発開放隅角緑内障がC8割近くを占めた.多治見スタディ7)や過去の緑内障患者実態調査2.6)とも同様であった.また今回調査では,前回に比べて原発開放隅角緑内障が有意に増加し,原発閉塞隅角緑内障が有意に減少した.日本国民の屈折が近視化していることが一因と考えられる.緑内障診療ガイドライン第C4版にて,今までなかった緑内障の概念として前視野緑内障が定義された.前回調査は第C4版の発表後であったために前視野緑内障はC0.1%であったが,今回調査では前視野緑内障はC5.4%と有意に増加した.前視野緑内障の診断増加により,正常眼圧緑内障は今回調査C45.6%で前回調査C51.1%に比べて有意に減少した.レーザー治療既往症例は今回調査のC312例(4.9%)のほうが前回のC220例(4.1%)に比べて有意に多かった.レーザー種別では,レーザー虹彩切開術が今回C120例(38.5%)と前回のC151例(68.6%)に比べて有意に減少した.一方で,選択的レーザー線維柱帯形成術は今回調査でC174例(55.8%)と,前回のC68例(30.9%)に比べて有意に増加した.狭隅角,閉塞隅角症例の第一選択は白内障手術が選択されているためと考えられ,選択的レーザー線維柱帯形成術が増加しているのは,その効果や安全性が報告されている8)ためと考えられる.手術既往症例は今回調査でC9.0%と,前回のC6.9%に比べて有意に増加した.高齢化に伴う緑内障症例の増加と前回調査からの経年による進行例の増加によるものと考えた.術式にも変化があった.線維柱帯切除術は今回調査でC300例(52.6%)と前回のC263例(71.9%)から有意に減少した.一方で,低侵襲手術として負担が少なく,合併症も少ないCMinimallyInvasiveGlaucomaSurgeryの増加が今回調査に反映され,たとえば,iStent手術は今回調査C87例(15.3%)は前回調査C5例(1.4%)に比べて有意に増加した.使用薬剤数は今回調査で前回に比べて有意に多かった.配合剤が多数使われるようになったことなどが原因と考えられる.今回調査では単剤,2剤が有意に減少し,5剤が有意に増加した.配合剤の使用が増加したことが要因と考えられる.3剤以上の使用例では配合剤を使用する割合はC9割を超えた.また,配合剤の種類が増えたことによりC4剤以上の使用例で配合剤C2本を使用することも可能となった.今回調査の単剤の使用薬剤はCFP作動薬C61.9%,Cb遮断薬19.2%,EP2作動薬C10.3%の順であった.FP作用薬,Cb遮断薬が多いのは過去の緑内障患者実態調査C2.6)と同様であった.EP2作動薬は前回調査に比べて有意に増加したが,プロスタグランジン関連眼窩周囲症の副作用が少ない点8)が影響したと考えられた.2剤ではCFP/Cb配合剤がもっとも多く,ついでCFP作動薬+b遮断薬,CAI/Cb配合剤の順で,前回調査と同様だった.FP/Cb配合剤は有意に増加した.FP作動薬を単剤使用した後の治療強化として,FP/Cb配合剤が選択されていると考えられる.今回調査ではCCAI/Cb配合剤は有意に減少した.CAI/Ca2配合剤は有意に増加した.Cb遮断作用のないCa2作動薬を選択する傾向があると考えられる.また,前回調査から今回調査の間にCROCK/Ca2配合剤が使用可能となり,2剤目以降の選択も多様化したと考えた.今回調査ではC3剤以上についても検討した.3剤での配合剤使用例は今回調査ではC9割を超えており,前回調査9)と比べて有意に増加した.4剤での配合剤使用例も今回調査ではC9割を超えた.新規配合剤の登場により,前回調査では少なかったC4剤,5剤での配合剤C2本使用例の増加がめだった.従来の点眼本数を減らすことができて点眼アドヒアランス向上も見込めることから,配合剤は積極的に使用される傾向にあると考えられる.全体のまとめとしては,眼科医療施設における緑内障患者は原発開放隅角緑内障(広義)が多い.平均使用薬剤数はC1.8C±1.4剤であった.単剤はCFP作動薬が,2剤はCFP/Cb配合剤が依然として最多である.3剤は配合剤を使用する割合が9割以上を占め,4剤使用以上ではC2種類の配合剤使用が著明に増加した.本論文は第C35回日本緑内障学会で発表した.謝辞:本調査にご参加いただき,ご多忙にもかかわらず診療録の調査,記載,集計作業にご協力頂いた各施設の諸先生方に深く感謝いたします.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)中井義幸,井上賢治,森山涼ほか:多施設による緑内障患者の実態調査.薬物治療..あたらしい眼科C25:1581-1585,C20083)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2009年版C.薬物治療..あたらしい眼科28:874-878,C20114)塩川美菜子,井上賢治,富田剛司:多施設による緑内障実態調査C2012年版C.薬物治療..あたらしい眼科C30:851-856,C20135)永井瑞希,比嘉利沙子,塩川美菜子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2016年度版─薬物治療─.あたらしい眼科34:1035-1041,C20176)黒田敦美,井上賢治,井上順治ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2020年度版─薬物治療─.臨床眼科C75:C377-385,C20217)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:TheprevalenceofpriC-maryopen-angleglaucomainJapanese.theTajimistudy.OphthalmologyC111:1641-1648,C20048)GazzardG,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