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Candida albicans による尿路感染症に起因する両眼内因性 真菌性眼内炎を発症した2 型糖尿病患者の1 例

2026年4月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科43(4):453.456,2026cCandidaalbicansによる尿路感染症に起因する両眼内因性真菌性眼内炎を発症した2型糖尿病患者の1例田中桂樹清水美穂緑川崇芳山崎光理森潤也今泉寛子宮本寛知市立札幌病院眼科CACaseofBinocularEndogenousFungalEndophthalmitiswithType2DiabetesAssociatedwithUrinaryTractInfectionCausedbyCandidaalbicansCKeijuTanaka,MihoShimizu,SuoMidorikawa,HikariYamasaki,JunyaMori,HirokoImaizumiandHirotomoMiyamotoCDepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospitalCCandidaalbicansによる尿路感染症から内因性真菌性眼内炎をきたしたC2型糖尿病患者症例を経験したので報告する.症例はC71歳,男性.15年来の長期にわたる糖尿病の背景あり.発熱,食思不振を主訴に近医を受診し,癌胎児性抗原(CEA)および糖鎖抗原(CA)19-9高値,腎機能障害を指摘され市立札幌病院(以下,当院)内科を紹介.血液培養でカンジダ菌血症と診断されたが,感染病巣が不明で,発熱後飛蚊症があり当院眼科を受診.初診時視力右(0.9),左(0.5),眼圧は両眼ともC10CmmHg,両眼軽度前房炎症細胞,広範囲に多発性の網膜斑状出血,円形白色滲出斑と硝子体混濁がみられた.経過と所見から真菌性眼内炎と診断し両眼硝子体切除術,水晶体摘出術を施行.両眼術中採取の硝子体液からCC.albicansが検出された.全身検索では,尿培養の真菌陽性以外に感染病巣は特定されず,腎盂腎炎が原因病巣と診断した.長期にわたる糖尿病患者は,その易感染性により尿路感染症からでも真菌性眼内炎を発症する可能性があり,早期発見治療のためにも他科との連携が重要である.CWereportacaseofbinocularendogenousfungalendophthalmitiscausedbyCandidaalbicansCoriginatingfromaurinarytractinfectionina71-year-oldmanwithlong-standingdiabetes.Hewasreferredtoourhospitalduetofever,anorexia,elevatedtumormarkers,andrenaldysfunction.Bloodculturesrevealedcandidemia,butthesourceofCinfectionCwasCunclear.CHisCvisualCacuityCwasC0.9CODCandC0.5COS,CandCintraocularCpressureCinCbothCeyesCwasC10CmmHg.Anteriorchamberinflammation,macularretinalhemorrhage,whiteexudativespots,andvitreousopacitywasCobservedCinCbothCeyes.CTheCdiagnosisCwasCfungalCendophthalmitis,CsoCvitrectomyCandClensectomyCwasCper-formedonbotheyes.Systemicexaminationrevealednofociofinfectionotherthanapositiveurinecultureforfun-gi,andpyelonephritiswasdiagnosed.Thiscasehighlightsthatpatientswithlong-standingdiabetesmaydevelopfungalCendophthalmitisCevenCfromCurinaryCtractCinfections,CsoCearlyCdiagnosisCandCinterdepartmentalCcollaborationCareessential.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(4):453.456,C2026〕Keywords:内因性真菌性眼内炎,尿路感染症,2型糖尿病,カンジダ.endogenousfungalendophthalmitis,uri-narytractinfections,type2diabetesmellitus,Candidaalbicans.Cはじめに内因性真菌性眼内炎は,全身の真菌血症により真菌が血行性に脈絡膜血管に移行し発症する疾患であり,通常経中心静脈栄養や各種カテーテル留置に伴うことが多く,とくに免疫抑制療法や悪性腫瘍,糖尿病など免疫能が低下している状態で生じやすい.一般的な起因菌としてCCandidaalbicans,Aspergillusniger,Fusariumsolaniが知られている.今回筆者らは,C.albicansによる尿路感染症から内因性真菌性眼内炎を発症した糖尿病患者のC1例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕田中桂樹:〒C060-8604札幌市中央区北C11条西C13-1-1市立札幌病院眼科Reprintrequests:KeijuTanaka,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,13-1-1Kita11-joNishi,Chuou-ku,Sapporo060-8604,JAPANC図1初診時眼底写真両眼に硝子体混濁および黄白色円形滲出斑C,網膜出血を認める.I症例患者:71歳,男性.主訴:飛蚊症.全身既往歴:2型糖尿病(HbA1c7.7%),胸部大動脈瘤,右総腸骨動脈瘤,胃癌,腎腫瘍.現病歴:2022年C4月CX日にC10日前からの発熱,食思不振を主訴に近医を受診し,癌胎児性抗原(carcinoembryonicantigen:CEA)および糖鎖抗原(carbohydrateCantigen:CA)19-9高値,腎機能障害,胸部大動脈瘤の拡大を指摘され,同日に市立札幌病院(以下,当院)消化器内科を紹介受診した.体温はC37.7℃.生化学的所見はCWBC12,000/μl,C反応性蛋白(C-reactiveprotein:CRP)13.0Cmg/dl,β-DグルカンC509.1pg/mlと播種性真菌感染症を疑う所見であった.また,血清クレアチニン(Cr)1.82Cmg/dl,尿素窒素(bloodCureamitrogen:BUN)62.6Cmg/dl,推算糸球体濾過量(estimatedglomerularfiltrationrate:eGFR)29.6Cml/分C/1.73m2と腎機能障害を認めた.胸腹部CCTでは左腎臓に22Cmmの結節と背側にC47Cmmの.胞を認めたが,感染を疑う所見はなかった.X日からフルコナゾールC200Cmg/日で抗真菌薬の点滴が開始された.入院時に採取された血液培養および尿培養からはCC.albicansが検出された.発熱後から飛蚊症の訴えがあり,感染巣は不明なままC4月CX+4日に当院眼科(以下,当科)受診となった.初診時現症:視力は右眼(0.9C×sph-1.0DCcyl-2.0DAx85°),左眼(0.5C×sph-1.25DCcyl-1.25DAx95°).眼圧は両眼C10CmmHg.左眼にごく軽度の角膜上皮浮腫,両眼軽度の前房炎症細胞があり,両眼底に広範囲に多発性の網膜斑状出血,多発性円形黄白色滲出斑と硝子体混濁を伴っていた(図1).同日施行したフルオレセイン蛍光造影(fluoresce-inangiography:FA)(図2)では造影早期に滲出斑に一致した低蛍光,造影後期には滲出斑の辺縁,網膜静脈,視神経乳頭からの蛍光漏出,インドシアニングリーン蛍光造影(indocyanineCgreenangiography:IA)(図3)では造影早期後期ともに滲出斑に一致した低蛍光斑とそれ以外にも多数の低蛍光斑が散在していた.眼科経過:初診後の経過観察にて徐々に滲出斑は増加して黄斑部にも出現し,硝子体混濁も増強してきたため,X+7日に左眼,X+10日に右眼の硝子体切除術および水晶体摘出術を施行した.眼内灌流液中にはフルコナゾールをC10μl/mlで添加した.術中採取した両眼硝子体液からはCC.albicansが検出された.薬剤感受性試験ではフルコナゾールへの感受性は良好であった.術後眼内炎症反応は軽減し,当科初診からC3カ月後に両眼内レンズ挿入術を施行,当科初診からC6カ月後に視力は両眼ともに(1.0)まで改善,網膜滲出斑は瘢痕化し網膜出血は消退した.全身経過:諸検査を行ったが尿路以外での感染巣は認めず,C.albicansによる腎盂腎炎が確定診断となった.X+16日には血清CCr1.05Cmg/dl,BUN20.6Cmg/dl,eGFR53.9ml/分/1.73CmC2と腎機能は改善,X+40日にはCEA,CA19-9は正常化し,炎症による一過性の上昇と考えられた.X日からC19日間のフルコナゾール全身投与とその後のC36日間のフルコナゾール内服により,カンジダ菌血症は治癒した.CII考按内因性眼内炎は全身の菌血症により血行性に眼内に移行し発症する疾患であり,内眼手術や外傷によって直達的に起因菌が眼内に及んで生じる外因性眼内炎と比べ頻度は少なく,眼内炎全体のC2.15%である1).内因性眼内炎の約C50%において起因菌が真菌であり2),C.albicans,A.niger,F.solaniの順に頻度が多い.内因性真菌性眼内炎のリスクファクターとしては中心静脈栄養(intravenoushyperalimentation:IVH),尿管カテーテル,外科手術,心疾患,呼吸器疾患,血液疾患,糖尿病,免疫抑制薬投与などがあげられ,とくに図2初診時フルオレセイン蛍光造影(FA)上段:造影早期.滲出斑に一致した類円形低蛍光斑.網膜出血による低蛍光がみられる..下段:造影後期.滲出斑の辺縁,網膜静脈,視神経乳頭および毛細血管からの蛍光漏出がみられる.図3初診時インドシアニングリーン蛍光造影(IA)造影早期(上段).後期(下段).滲出斑に一致した低蛍光斑以外にも多数の低蛍光斑が散在.表1内因性真菌性眼内炎の病期分類Ⅰ期前房内と硝子体中に炎症性細胞の遊出する時期Ⅱ期後極部に円形白色病変をみる時期Ⅲ期Ca上記に加えて硝子体中に軽度の限局性の混濁をみる時期Ⅲ期Cb限局性の硝子体混濁が中等度になる時期Ⅳ期上記に加えて網膜.離がある,または高度の硝子体混濁のため眼底が透見できない時期IVHはリスクが高く真菌性眼内炎の原因のC90%を占めるという報告もある3,4).本症例では,HbA1c7.7%の糖尿病と2007年に腹部外科手術の既往はあったが,IVHやカテーテルの留置はなく,とりわけハイリスクであったとはいいがたい.また,カンジダ菌血症患者における眼病変発現率はC2.2.9.3%である5)ことや,国内での尿路感染症からの内因性真菌性眼内炎の報告は数例にとどまる6.8)こと,カンジダ尿のほとんどが保菌であり臨床的意義が少ないことからも,真菌性腎盂腎炎から眼内炎にまで進展することは比較的まれであるといえる.また,本症例では当院消化器内科を受診してから休日を挟んでC4日後に当科に紹介となった.初診日のX日は診療時間外帯に受診したこと,翌日にβ-Dグルカン上昇を確認したこともふまえると,当院初診から当科受診までC4日間を要したものの,診療科間での連携はとれており早期発見・治療介入につながった.長期にわたる糖尿病という易感染性の状況下においては,尿路感染症からも眼内炎発症を考慮に入れた注意深い経過観察とともに,腎臓内科,泌尿器科,眼科など関連診療科の密な連携が重要であると考える.現在の臨床現場で,真菌性眼内炎の治療においては抗真菌薬の全身投与と硝子体手術が選択肢として存在する.石橋ら9)は真菌性眼内炎を眼内所見から病期分類し,Ⅲa期までは抗真菌薬の全身投与で改善を見込めるが,ⅢCb期を超えると硝子体手術の併用が望ましいと報告した(表1).また,佐藤ら10)の報告ではⅢCb期に硝子体手術を行った場合に最終視力がC0.03未満の症例はなく,半数以上の症例でC0.5以上であったが,Ⅳ期に進行してから硝子体手術を行った場合はすべての症例で最終視力は手動弁であった.日本医真菌学会の侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドラインでは,抗真菌薬の投与が基本であるとされている11).軽.中等症ではC1.2週間後に抗真菌薬の効果判定を行い抗菌薬の変更を検討するが,経過観察中に所見の悪化や初診時から重症であった場合は硝子体手術や,保険適用外ではあるが抗真菌薬の硝子体内注射を行う11).本症例では,当科初診時すでに抗真菌薬の全身投与が開始されてC5日経っており,眼所見も石原分類でⅢa期の状態から数日でⅢCb期への進行を認めたため硝子体手術を施行した.ガイドラインに即して早期に硝子体手術に踏み切る決断をしたことが術後視力改善に大きく寄与したと考える.おわりに尿路感染症から播種性カンジダ症,真菌性眼内炎を発症したC2型糖尿病のC1例を経験した.経過が長期にわたる糖尿病患者はその易感染性により尿路感染症からでも播種性カンジダ症,真菌性眼内炎を発症する可能性を常に考慮し診療する必要がある.また,真菌性眼内炎は病期を判断し適切なタイミングで硝子体手術を選択することで視力予後が見込める治療可能な疾患であり,早期発見・治療介入のためにも眼科と他科との連携が重要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)SchiedlerV,ScottIU,FlynnHW:Culture-provenendog-enousendophthalmitis:clinicalfeaturesandvisualacuityoutcomes.AmJOphthalmol137:725-731,20042)BinderCMI,CChuaCJ,CKaiserCPK:EndogenousCendophthal-mitis:an18-yearCreviewCofCculture-positiveCcasesCatCaCtertiaryCcareCcenter.Medicine(Baltimore)82:97-105,20033)川上秀昭,田中大貴,望月清文:真菌性眼内炎.臨眼C73:C282-289,C20194)西村哲哉,岸本直子,宇山昌延:真菌性眼内炎の経過と硝子体手術の適応.臨眼C47:641-645,C19935)大矢佳美,土屋嘉昭,石峰ほか:カンジダ血症患者に対する眼底検査の再検討―全身管理医師への意識調査から―.日眼会誌116:476-484,C20126)小川令,福岡秀記,永田健児ほか:複雑性腎盂腎炎に関連した両眼性内因性真菌性眼内炎のC1例.日眼会誌C123:C1095-1100,C20197)及川拓,藤原貴光,町田繁樹ほか:尿路結石を契機とする腎盂腎炎からの両眼性真菌性眼内炎のC1例.臨眼C59:C209-213,C20058)SuzukiCR,CKurodaCH,CMatsubayashiCHCetal:CandidemiaCfromanupperurinarytractinfectioncomplicatedbyCan-didaEndophthalmitis.CInternMedC54:2693-2698,C20159)石橋康久,本村幸子,渡辺享子:本邦における内因性真菌性眼内炎.日眼会誌92:952-958,C198810)佐藤幸裕,宮坂忍,島田宏之:内因性真菌性眼内炎の治療成績と石橋分類の有用性.日眼会誌105:37-41,C200111)二木芳人,三鴨廣繁,詫間隆博ほか:侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドラインCExecutivesummary集.MedCMycolCJC54:147-251,C2013***

Klebsiella pneumoniae による尿路感染症および肝膿瘍に 起因する内因性細菌性眼内炎をきたした1 例

2021年2月28日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(2):220.224,2021cKlebsiellapneumoniaeによる尿路感染症および肝膿瘍に起因する内因性細菌性眼内炎をきたしたC1例村上卓半田弥生井田洋輔伊藤格日景史人大黒浩札幌医科大学眼科学講座CACaseofEndogenousBacterialEndophthalmitisAssociatedwithUrinaryTractInfectionandLiverAbscessCausedbyKlebsiellapneumoniaeCSuguruMurakami,YayoiHanda,YosukeIda,KakuItoh,FumihitoHikageandHiroshiOhguroCDepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversityCKlebsiellapneumoniaeによる内因性細菌性眼内炎のため眼球内容除去に至ったC1例を経験したので報告する.症例はC80歳,女性.右眼の急激な視力低下と眼痛を自覚し近医受診し,水晶体起因性ぶどう膜炎の疑いで当院紹介となった.当院初診時,右眼の視力は光覚弁,眼圧はC27CmmHgで,角膜の浮腫と混濁,前房炎症を認めた.生化学的検査にて炎症反応高値,軽度肝機能障害,尿路感染とコンピューター断層撮影検査(computerizedtomography:CT)にて肝臓に直径C61Cmmの肝腫瘤を認めた.内因性細菌性眼内炎の可能性も考慮し,抗菌薬の全身投与と点眼を行ったが,結局眼球内容除去を施行した.血液,尿,眼球内容,および肝膿瘍の排液の細菌培養検査にてCKlebsiellaCpneumoniaeが検出された.全身状態が不良な急性の眼内炎を診察した際は,全身検索や他科の医師との連携が眼科的な治療と生命予後の改善のために重要であると考える.CPurpose:Toreportacaseofendogenousbacterialendophthalmitis(EBE)associatedwithurinarytractinfec-tionandliverabscesscausedbyKlebsiellapneumoniaeCthatwasultimatelysuccessfullytreatedbyeviscerationoftheCeye.CCase:AnC80-year-oldCwomanCwasCreferredCtoCourChospitalCforCsuspectedClens-inducedCuveitisCafterCbecomingCawareCofCimpairedCvisionCandCophthalmalgiaCinCherCrightCeye.CInCherCright,CtheCvisualCacuityCwasClightCperceptionandtheintraocularpressurewas22CmmHg.Herrighteyeshowedcornealedema,cornealopaci.cation,andanteriorchamberin.ammation.Thelaboratory.ndingsrevealedahighlevelofin.ammatoryresponse,alowlevelofliverdamage,andaurinarytractinfection.Computedtomographyshoweda61Cmmmassintheliver.Con-sideringCtheCpossibilityCofCEBE,CsheCwasCadministeredCantibiotics,CyetCherCrightCeyeCwasCultimatelyCeviscerated.CKlebsiellaCpneumoniaeCwasCidenti.edCfromCblood,Curine,CintraocularC.uids,CandCpusCofCtheCliverCabscess.CConclu-sion:Incasesofacuteendophthalmitiswithpoorgeneralconditions,asystemicexaminationandclosecollabora-tionbetweenophthalmologistsandotherphysiciansisrequiredforophthalmologictreatmentandimprovementoflifeprognosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(2):220.224,C2021〕Keywords:内因性細菌性眼内炎,尿路感染症,肝膿瘍,クレブシエラ,眼球内容除去.endogenousCbacterialCen-dophthalmitis,urinarytractinfection,liverabscess,Klebsiellapneumoniae,evisceration.Cはじめにム陰性菌ではCKlebsiellapneumoniaeやCEscherichiacoli,グ内因性細菌性眼内炎は,遠隔臓器の感染病巣から菌が血行ラム陽性菌ではCStaphylococcusaureusやCStaphylococcuspneu-性に眼内に移行して発症する比較的まれな疾患で,視力予後moniaeが多いことが知られているが,日本を含む東アジアはきわめて不良といわれる1,2).一般的な起因菌として,グラではCKlebsiellapneumoniaeなどのグラム陰性菌による胆肝〔別刷請求先〕村上卓:〒060-8543北海道札幌市中央区南C1条西C17丁目札幌医科大学眼科学講座Reprintrequests:SuguruMurakami,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,17Chome,Minami1Jonishi,Chuoku,Sapporo-shi,Hokkaido060-8543,JAPANC系感染が原病巣であることが多いと報告されている1.3).今回,筆者らはCKlebsiellapneumoniaeによる尿路感染症および肝膿瘍に起因する内因性細菌性眼内炎を発症し,眼球内容除去に至ったC1例を経験したので報告する.CI症例患者:80歳,女性.主訴:右眼視力低下,眼痛.全身既往歴:突発性難聴.家族歴:特記事項なし.眼既往歴:白内障.現病歴:白内障にて近医定期通院中であった.20xx年C4月某日(第C0病日とする)より右眼の急激な視力低下と眼痛を自覚し,第C1病日に前医を受診した.右眼の視力は光覚弁で強い前房内炎症所見を認め,水晶体起因性ぶどう膜炎の疑いで第C2病日に札幌医科大学附属病院(以下,当院)眼科紹介初診,即日入院となった.初診時現症:視力は右眼光覚弁(矯正不能),左眼C0.3(0.5C×.1.00D).眼圧は右眼C27mmHg,左眼C18mmHg.右眼には角膜実質浮腫と角膜混濁,フィブリン析出を伴った強い前房内炎症,球結膜の充血と浮腫を認め(図1),中間透光体は加齢性白内障(Emery-Little分類CgradeII)のほか,硝子体混濁が強く眼底は透見不能であった.左眼には炎症所見を認めなかった.全身所見:車椅子への移乗も困難なほど衰弱している様子であった.体温はC36.6℃.生化学的所見ではCWBCC8,500/μL(Neut80.5%,Lymph13.0%)のほか,CRPC22.1Cmg/dl,プロカルシトニン9.6Cng/mlと高値を示し,全身的な感染を疑う所見であった.また,アルブミン2.3Cg/dlと低下がみられ,GOT60CU/l,GPT57CU/l,ALP405CU/lと軽度肝機能障害が認められた.尿所見はCWBC(2+),亜硝酸塩(2+),尿潜血(2+)であり,入院時(第C2病日)に提出した血液培養は陰性であったが,尿培養にてCKlebsiellaCpneu-moniaeを少量検出し,尿路感染症が推測された.薬剤感受性評価ではアンピシリンとミノマイシンに耐性を示す以外には,他の抗菌薬に対する感受性はCsensitiveであった.胸腹骨盤単純コンピューター断層撮影検査(computerizedtomog-raphy:CT)にて肝臓CS1領域に直径C61Cmm大の腫瘤影を認めた(図2).臨床経過:諸検査の結果より,水晶体起因性ぶどう膜炎ではなく,尿路感染症に起因する内因性眼内炎の可能性が考えられ,肝腫瘤については胆管細胞癌が疑われた.全身状態不良のため当院内科に治療介入を依頼し,第C2病日から右眼に対しレボフロキサシン点眼液C1日C4回,ベタメタゾンリン酸エステル点眼液C1日C6回,アトロピン点眼液C1日C1回の局所治療のほか,全身治療としてセフォペラゾンナトリウム・スルバクタム(スルペラゾン)2Cg/日による点滴治療を開始した.第C3病日には右眼の眼圧がC39CmmHgと上昇,ビマトプロスト点眼液,チモロールマレイン酸点眼液,ブリンゾラミド点眼液,ブリモニジン点眼液を開始,全身管理のために内科に転科となった.第C4病日にはクリンダマイシン(ダラシン)1.8Cg/日の点滴が追加投与となり,右眼の結膜浮腫が著明となりオフロキサシン眼軟膏C1日C3回塗布を開始した.第5病日には右眼の眼圧がC54CmmHgとさらなる上昇を認め,リパスジル点眼液とCD-マンニトール点滴にて追加加療するも,高眼圧状態と眼痛の改善を得られなかった.第C6病日撮影の造影CCT検査にて右眼眼球の腫脹と突出,眼球壁の肥厚,および眼球周囲の脂肪織の輝度上昇を認め,全眼球炎が示唆された(図3).同日水晶体再建術+硝子体手術を施行した.結膜充血と浮腫,角膜実質浮腫と角膜混濁,強い前房内図1初診時前眼部写真角膜実質浮腫と角膜混濁,フィブリンを伴う強い前房内炎症,球結膜の充血と浮腫を認めた.図2初診時胸腹骨盤単純CT肝臓CS1領域に直径C61Cmm大の腫瘤影を認めた.図3第6病日の頭部造影CT右眼球の腫脹と突出,眼球壁の肥厚,および眼球周囲の脂肪織の輝度上昇を認め,全眼球炎が示唆された.図4術中写真a:手術開始時.結膜充血と浮腫,角膜実質浮腫と角膜混濁,強い前房内炎症を認めた.Cb:水晶体処理後.硝子体は著明に白色混濁していた.Cc:広角眼底観察システム(Resight)使用下.硝子体は著明に白色混濁しており,網膜色調も不良だった.d:脈絡膜出血後.硝子体腔および上鼻側の強膜ポート挿入部より多量の出血を認めた.炎症を認めた(図4a).硝子体は著明に白色混濁しており(図病日にC40℃台の発熱と炎症反応の再燃あり,同日に提出しC4b~c),網膜色調も不良であった(図4c).硝子体手術中にた血液培養からCKlebsiellapneumoniaeが検出され,抗菌薬硝子体腔および上鼻側の強膜ポート挿入部より多量の出血を点滴をタゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン)13.5Cg/日に変認め(図4d),上脈絡膜出血と考えられた.視機能を期待で更した.第C10病日にもC39℃台の発熱あり,当初胆管細胞癌きないとの術中判断にて,眼球内容除去へ術式を変更した.を疑っていた腫瘤影が肝膿瘍である可能性も否定できず,経術後に得られた硝子体液からCKlebsiellapneumoniaeが検出皮経肝胆管ドレナージ(percutaneousCtranshepaticCcholan-された.術後経過において炎症反応改善傾向だったが,第C9Cgialdrainage:PTCD)を施行したところ白色膿汁の排液を認めた.排液からもCKlebsiellapneumoniaeが検出され,薬剤感受性評価も同様にアンピシリンとミノマイシンに耐性を示す他は抗菌薬にCsensitiveであった.それまで投与されていた抗菌薬への耐性は示さなかったものの,治療強化のため抗菌薬をセフトリアキソン(ロセフィン)4Cg/日に変更した.ドレナージ後から順調に全身状態は改善し,第C17病日の造影CCT検査でも肝膿瘍の縮小を認めた.第C21病日から抗菌薬を点滴からレボフロキサシン内服に変更したが以後感染の再燃なく経過し,第C30病日リハビリ目的に転院となった.CII考按内因性眼内炎は転移性眼内炎ともよばれ,遠隔臓器の感染病巣から菌血症を経て血行性に眼内に移行して発症するもので,内眼手術や穿孔性眼外傷,角膜潰瘍などによって起炎菌が直達的に眼内に及んで起こる外因性眼内炎とは区別される1,2).眼外の病巣がC67%に発見され,部位別にみると肝膿瘍がC26%と最多で,以下肺炎C12%,中枢神経系感染C10%,腎尿路系感染C10%と続き,12%には複数の眼外病巣がみつかったとの報告がある1.3).背景疾患をもつものがC56%を占め,糖尿病が最多で,HIV感染,自己免疫疾患,血液疾患,アルコール中毒など1.3)のほか,薬物の血管内投与や外科手術,血液透析,免疫抑制薬投与,中心静脈カテーテルに関連した症例の報告も多い1,2,4).起炎菌はグラム陰性菌としてはCKlebsiellapneumoniaeやCEscherichiacoli,グラム陽性菌としてはCStaphylococcusaureusやCStaphylococcuspneumoniaeが多いことが知られている1,2).起炎菌や原病巣には,地域差があるといわれており,欧米ではグラム陽性菌を起炎菌とした心内膜炎や尿路感染症が原病巣であることが多いのに対して,東アジアではCKlebsiellapneumoniaeなどのグラム陰性菌による胆肝系感染が多いといわれている1,3.6).日本においてもCKlebsiellapneumoniaeによる内因性眼内炎の報告が多数存在している5.11).視力予後はきわめて不良で,指数弁以上の視力を維持できるものはC32%にすぎず,光覚を失うものがC44%,眼球摘出を要するものがC25%との報告もあるC1.3).本症例では血液,尿,PTCDの排液,および硝子体液の培養からCKlebsiellapneumoniaeが検出されており,最終的に眼球内容除去を施行するに至った.Klebsiellapneumoniaeによる細菌性内因性眼内炎は早期かつ積極的な抗菌薬の投与および外科的処理にもかかわらずその転帰は不良とされ,硝子体切除術を施行しても光覚弁,失明,あるいは眼球摘出に至る場合が多くみられる5,7).Gounderらは,Klebsiellapneu-moniaeが分離された内因性細菌性眼内炎のC9症例のうち,肝膿瘍を認めたものがC8症例あり,3症例で眼球内容除去が必要になったと報告している12).また,Liらの報告では,CKlebsiellapneumoniaeによる内因性眼内炎と診断された110人の患者のうち,眼外病変で肝膿瘍を認めた患者がC85人と一番多く,124眼中C91眼(73.4%)で最終視力が指数弁より悪くなり,20眼(16.1%)に内容除去あるいは眼球摘出が必要となった13).本症例では突発性難聴以外の既往歴はなく,免疫不全状態に関連するような背景疾患を有していなかった.内因性細菌性眼内炎と診断されたC57人中危険因子をもつ患者はC43人だったという報告12)やCKlebsiellapneumoniaeによる内因性眼内炎と診断されたC110人中C82人(74.5%)に免疫不全状態に関連する基礎疾患があり,糖尿病がC75人(68.2%)と一番多かったという報告13)もあるが,いずれにおいても免疫不全状態に関連する基礎疾患や危険因子をもっていない患者も多数含まれており,全身的な基礎疾患をもたない患者においても内因性細菌性眼内炎の可能性を考慮する必要があると考える.また,前医にて水晶体起因性ぶどう膜炎疑いの診断であったことに関し,内因性細菌性眼内炎は他の細菌感染症の治療中の患者を除き,充血や視力低下,眼痛などを訴えて眼科を受診した患者に,強い前房炎症という眼所見のみから内因性眼内炎の診断を下すことはむずかしい場合があることが示唆された.Jacksonらの報告によると,内因性細菌性眼内炎342例中C89例(26%)にて誤診を認めており,もっとも多かったのがぶどう膜炎でC32例だった14).また,西田らの報告によると初めから正しく内因性細菌性眼内炎と診断された症例はC21名中C15名(71.4%)であった15).本症例では初対面時の本人の全身状態の異変に気付いたことが診断のきっかけになっており,強い炎症を伴う眼所見を認めた際には,眼所見の詳細な観察のみならず,全身状態の検査や評価を行うことで,より的確な診断ならびに早期治療につながることが示唆された.CIII結語Klebsiellapneumoniaeによる尿路感染症と肝膿瘍に起因する内因性細菌性眼内炎のため眼球内容除去に至ったC1例を経験した.急性の強い眼内炎を認める際には,既往歴や前医での診断にこだわらず,内因性細菌性眼内炎の可能性を常に考慮して全身精査を行うべきである.また,状況によっては早期に適切な診療科への治療介入を依頼することが,眼科的治療のみならず生命予後改善のためにも重要であると考える.文献1)喜多美穂里:転移性眼内炎.あたらしい眼科C28:351-356,C20112)喜多美穂里:内因性細菌性眼内炎.臨眼70:274-278,C20163)JacksonCTL,CEykynCSJ,CGrahamCEMCetal:Endogenousbacterialendophthalmitis:aC17-yearCprospectiveCseriesCandCreviewCofC267CreportedCcases.CSurvCOphthalmolC48:C403-423,C20034)戸所大輔:細菌性転移性眼内炎多施設スタディからわかったこと.臨眼73:1115-1121,C20195)太田雅彦,米田行宏,喜多美穂里ほか:クレブシエラ肺炎桿菌による敗血症・髄膜脳炎に難治性眼内炎が併発したC1例.臨神経53:37-40,C20136)森秀夫,谷原佑子,内本佳世:胆管炎で発症し胆管炎の再発により再発した内因性細菌性眼内炎のC1例.臨眼C70:C747-752,C20167)中瀬古裕一,石田祐一,坂本太郎ほか:肝膿瘍に併発した転移性眼内炎により失明に至ったC1例.日外感染症会誌C14:751-754,C20178)橋本慎太郎,角田順久:肺化膿症・眼内炎を併発したCK.pneumoniaeによる肝膿瘍に対して肝切除により感染制御を得た胆管細胞癌のC1例.日外感染症会誌15:100-104,C20189)山崎仁志,大黒浩,間宮和久ほか:肝膿瘍に合併した両眼性転移性眼内炎のC1例.あたらしい眼科C19:1525-1527,C2002C10)樺山真紀,鍋島茂樹,久保徳彦ほか:臨牀指針肝膿瘍に左細菌性眼内炎を合併した一症例.臨と研C79:1205-1208,C200211)TodokoroCD,CMochizukiCK,CNishidaCTCetal:IsolatesCandCantibioticCsusceptibilitiesCofCendogenousCbacterialCendo-phthalmitis:ACretrospectiveCmulticenterCstudyCinCJapan.CJInfectChemotherC24:458-462,C201812)GounderPA,HilleDM,KhooYJetal:Endogenousendo-phthalmitisCinCWesternAustralia:aCsixteen-yearCretro-spectivestudy.RetinaC40:908-918,C202013)LiYH,ChenYH,ChenKJetal:Infectioussources,prog-nosticCfactors,CandCvisualCoutcomesCofCendogenousCKlebsi-ellaCpneumoniaeCendophthalmitis.COphthalmolCRetinaC2:C771-778,C201814)JacksonCTL,CParaskevopoulosCT,CGeorgalasI:SystematicCreviewCofC342CcasesCofCendogenousCbacterialCendophthal-mitis.SurvOphthalmolC59:627-635,C201415)NishidaT,IshidaK,NiwaYetal:Aneleven-yearretro-spectiveCstudyCofCendogenousCbacterialCendophthalmitis.CJOphthalmolC2015:ArticleID261310,11pages,2015C***