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3 歳児眼科健診における屈折検査の重要性について

2023年5月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科40(5):689.692,2023c3歳児眼科健診における屈折検査の重要性について明石梓藤本愛子窪谷日奈子大塚斎史森井香織三浦真二藤原りつ子あさぎり病院眼科CSigni.canceofRefractiveTestingin3-Year-OldChildHealthCheckupsAzusaAkashi,AikoFujimoto,HinakoKubotani,YoshifumiOtsuka,KaoriMorii,ShinjiMiuraandRitsukoFujiwaraCDepartmentofOphthalmology,AsagiriHosipitalC目的:3歳児眼科健診における屈折検査の有無による弱視治療患者の受診時期,受診の契機について検討すること.方法:2018年C1月C1日.12月C31日に当院斜視弱視外来で検査を行った患者のうち,3歳児眼科健診を終了している例を対象とした.3歳児眼科健診で屈折検査ありの自治体で検査を受けた場合をCA群,屈折検査なしの自治体で検査を受けた場合をCB群に分けて受診時期,受診の契機について比較を行い,8歳以上における視力不良(1.0未満)例について考察した.結果:初診時平均年齢はCA群C3.2歳,B群C4.1歳とCA群のほうが有意に早く(p<0.001),3歳児眼科健診を契機に受診した割合はCA群でC54.7%,B群でC26.5%とCA群で多かった(p<0.001).また,8歳以上における視力不良例(5例)はすべて5.0D以上の遠視があり,80%(4例)でC1.5D以上の不同視が認められた.CAmongthepatientsseenatourdepartment’sstrabismicamblyopiaoutpatientclinicfromJanuary1toDecem-berC31,C2018,CweCtargetedCthoseCwhoChadCcompletedCthe“3-year-oldCchildChealthCcheckups”.CTheCcasesCinCwhichCthethree-year-oldchildhealthcheckupophthalmologicalexaminationwasperformed‘witharefractivetest’werecategorizedasGroupA,whilethoseinwhichtheophthalmologicalexaminationwasperformed‘withoutarefrac-tivetest’werecategorizedasGroupB.Betweenthosetwogroups,thetimingofconsultationwascompared,andtheCproportionCofCcasesCwithCpoorvision(i.e.,CaCvisualacuity[VA]ofClessCthanC1.0diopter[D])amongCpatientsCaged8yearsandolderwasanalyzed.Fromtheresultsofthisstudy,theageatthetimeoftheinitialconsultationwassigni.cantlyearlierinGroupA,withGroupAbeing3.2yearsoldandGroupBbeing4.1yearsold(p<0.001)C,thepercentageofchildrenwhounderwenteyeexaminationsforthree-year-oldswas54.7%inGroupAand26.5%inGroupB(p<0.001)C.Inaddition,allpatientsaged8yearsorolderwithpoorVA(5cases)hadhyperopiaof5.0D,ormore,and80%(4cases)hadanisometropiaof1.5D,ormore.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(5):689.692,C2023〕Keywords:3歳児眼科健診,受診時期,屈折検査,弱視,遠視.3-year-oldchild’shealthcheckups,consultationtime,refractiontest,amblyopia,hyperopia.Cはじめにわが国のC3歳児健康診査視覚検査(以下,3歳児眼科健診)は,1991年より全国の保健所で視機能発達の阻害因子をもつ児を早期に発見する目的で開始された.その後C1999年に実施母体が都道府県から市町村に移譲され現在に至っている.3歳児眼科健診は弱視検出に有用な機会ではあるが,健診をすり抜けて就学時健診や学校健診で弱視を指摘され受診するケースがあることも問題視されてきた1,2).3歳児眼科健診は自治体によって検査内容に差があるが,多くの自治体が自覚的な視力検査と問診のみであり,屈折検査などの他覚的検査を施行している自治体の割合は少ない3,4).令和C3年度に行われた日本眼科医会の全国調査の結果では,3歳児眼科健診で屈折検査を行っている自治体の割合はC28.3%であった.屈折検査の導入が進まない理由としては,検査時間の長さや人員確保,費用面の問題があった.3歳児眼科健診の精度を上げるために追加すべき検査が屈折検査であることは,これまで多数報告されてきた5.8).しかし,同一施設においてC3歳児眼科健診で屈折検査ありの自治体を経た児と屈折検査なしの自治体を経た児における受診時期を比較した報告は少ない10).そこで,今回筆者らは当院斜弱外来で治療中の患〔別刷請求先〕明石梓:〒673-0852兵庫県明石市朝霧台C1120-2あさぎり病院眼科Reprintrequests:AzusaAkashi,DepartmentofOphthalmology,AsagiriHosipital,1120-2Asagiridai,AkashiShi,HyogoKen673-0852,JAPANC者を対象に,3歳児眼科健診を屈折検査ありの自治体で終了した群と屈折検査なしの自治体で終了した群に振り分け,比較検討を行った.CI対象および方法2018年C1月C1日.12月C31日に当院斜視弱視外来に通院中の患者のうち,3歳児眼科健診を終了しているC229名(男児C93名,女児C136名)を対象とした.発達遅滞などで視力検査が不正確な児は除外した.疾患の内訳は屈折異常弱視が157名,不同視弱視がC66名,斜視弱視と屈折異常弱視の合併がC3名,斜視弱視と不同視弱視の合併がC2名,斜視弱視が1名,平均観察期間はC3年C10カ月であった.3歳児眼科健診で屈折検査ありの自治体で検査を受けた児をCA群,屈折検査なしの自治体で検査を受けた場合をCB群に振り分けた.なお,屈折検査ありの自治体では据え置き型のオートレフラクトメータが使用され,要精査の基準は+1.5Dを超える遠視,±1.5Dを超える乱視,C.2.0Dを超える近視であった.なお,A群の自治体ではC3歳C6カ月,B群の自治体ではC3歳3カ月で健診が実施されていた.A群CB群の当院の初診時年齢,6歳以降の受診の割合,各群におけるC3歳児眼科健診を契機に受診した割合,就学時健康診断(以下,就学時健診)を契機に受診した割合の比較検討を行い,8歳以上の児のうち,視力不良(1.0未満)の児について考察した.各群の平均年齢の比較には対応のないCt検定,受診者の割合に関してはCFisher検定を用いて統計学的有意水準をC5%未満とした.本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得た後,ヘルシンキ宣言に準拠して実施された.統計解析には統計ソフトウェアであるCEZR(version1.54)を使用した.CII結果3歳児眼科健診を屈折検査ありの自治体で検査を受けたCA群はC127名,屈折検査なしの自治体で検査を受けたCB群は102名であった.また,弱視の原因となるようなリスクファクターは米国小児眼科・斜視学会(AmericanCAssociationCforCPediatricCOphthalmologyCandStrabismus:AAPOS)の定めたものを基準とし9),初診時のサイプレジン点眼下の屈折値を参考にした.その結果,3.5D以上の遠視はCA群で59.8%,B群でC71.6%(p=0.071),1.5D以上の乱視はCA群でC37.0%,B群でC32.4%(p=0.488),1.5D以上の近視はCA群でC8.7%,B群でC7.8%(p=1.000),斜視の割合はCA群で14.2%,B群でC21.6%(p=0.163)と各群で有意差は認められなかったが,1.5D以上の不同視はA群でC24.4%,B群で46.1%(p<0.001)と有意差がみられた(表1).±11(C.0.96)歳,B群で4C±初診時年齢はA群で3.24(1.83)C歳とCA群のほうが有意に早く(p<0.001),6歳以降の受診はCA群でC4.8%,B群でC33.3%とCB群で多くなった(p<0.001)(表2).また,3歳児眼科健診を契機に受診した割合はA群で54.7%,B群で26.5%とA群で多く(p<0.001),園での眼科健診もあるため就学時健診を契機に受診した割合はA群で0.8%,B群で9.8%(p=0.03)とCB群で多かった(表3).また,3歳児眼科健診と就学時健診で要精検となり受診した児以外の受診の契機としては,両群ともに「親が異常に気がついた」「他疾患で来院時に検査で判明した」というケースが多くを占めていた.8歳以上の視力不良例はC5名であり,1.5D以上の不同視がC80%(4例),全例において5D以上の強い遠視が認められた(表4).CIII考按本研究の結果から,屈折検査ありの自治体群のほうが屈折検査なしの自治体群よりも,眼科の初診時年齢は早いことがわかった.3歳児眼科健診を契機に受診した割合は屈折検査ありの自治体群で有意に多く,初診時年齢のC2群間での差異に影響を及ぼしていると考えられる.また,視覚の感受性期間(criticalperiod)の終了に近いC6歳以降の受診の割合は屈折検査なしの自治体群で有意に多いこともわかった.就学時健診を契機に受診した割合は屈折検査なしの自治体群で有意に多く,3歳児眼科健診をすり抜けて就学時健診で弱視が発見されたケースが多くあると考えられる.今回の検討と同様に,川端らは屈折検査の有無での初診時年齢,屈折異常の発見動機などを検討しているが,「治療を必要とする屈折異常の発見動機」においてC3歳児眼科健診が動機となったケースは,3歳児眼科健診で屈折検査ありの自治体でC72.3%(34/47),屈折検査なしの自治体ではC18.5%(17/92)と統計学的にも有意差を認めており,本研究の結果と合致するものであった10).また,8歳以上の視力不良例(5例)は全例5D以上の遠視があり,80%(4例)にC1.5D以上の不同視が認められた(表4).不同視弱視と斜視弱視の合併例(症例番号①②④)など,適切な時期に弱視治療を開始されるも視力の向上が不十分な症例もあった.症例①④は斜視手術が施行されていたが術後も斜視は顕性化していたこと,①②④ともに健眼遮閉訓練に対する抵抗があり訓練が不十分であったことが最終矯正視力不良であった要因の一つと考える.ただし,criticalCperiodに近い年齢で不同視弱視が発覚したため治療が奏効しない症例も認められており(症例番号③⑤),これらはもっと早い段階で受診し治療が開始されていれば最終矯正視力が良好であった可能性がある.また,各群の初診時年齢の分布図からみるとCA群はC3歳以下がC80%であり,4歳以降の受診はC19.7%と少ないが,B群ではC3歳以下の受診が多いものの,4歳以降の受診者も43.1%見受けられている(図1).やはりC3歳児眼科健診で強度の遠視と不同視を発見することは弱視の予防に重要である表1対象背景A群(n=127)B群(n=102)p値3.5D以上の遠視1.5D以上の乱視1.5D以上の近視1.5D以上の不同視8Δ以上の恒常性斜視59.8%(C76/127)37.0%(C47/127)8.7%(C11/127)24.4%(C31/127)14.2%(C18/127)71.6%(C73/102)C32.4%(C33/102)C7.8%(C8/102)C46.1%(C47/102)21.6%(C22/102)C0.0710.4881.000p<C0.001C0.163表2初診時年齢と6歳以降の受診割合A群(n=127)B群(n=102)p値初診時年齢C3.24±0.96C4.11±1.83p<C0.0016歳以降の受診割合4.80%(C6/127)33.30%(C34/102)p<C0.001表33歳児眼科健診と就学前時眼科健診の受診割合A群(n=127)B群(n=102)p値3歳児眼科健診54.70%(C69/127)26.50%(C27/102)p<C0.001就学時眼科健診0.80%(C1/127)9.80%(C10/102)C0.003表48歳以上の視力不良例の内訳(5例)症例番号群初診時年齢初診時矯正視力最終矯正視力屈折値治療期間病型①CA右C3C0.6C1.5+4.0DC7Y4M不同視弱視+斜視弱視左C0.08C0.6+6.0DC②CB右C3C0.06C0.7+8.5DC9Y5M屈折異常弱視+斜視弱視左C0.2C1.2+8.0DC③CB右C6C1.2C1.5+2.0DC7Y11M不同視弱視左C0.2C0.7+5.0DC④CB右C3C0.6C1.2+2.0DC9Y3M不同視弱視+斜視弱視左C0.1C0.4+6.5DC⑤CB右C9C0.4C0.4+5.5DC2Y11M不同視弱視左C1.5C1.5+1.0DCことが推測される.山田らは弱視治療の予後に関するメタアナリシスを行った結果,弱視の治癒率はC3.5歳ではC89.6%,6歳以上ではC81%となり,オッズ比はC2.27(95%CCI:1.24.4.15)で早期治療の有用性を示しており,早期の弱視発見が望ましいと考えられる3).なお,本研究においては受診契機の割合に関して「3歳児眼科健診」および「就学時健診」のみ比較検討を行ったが,それ以外の受診契機についてはさらなる検討が必要と思われる.このたび厚生労働省における令和C4年度予算概算要求に,「母子保健対策強化事業」が盛り込まれ,事業の補助対象として「屈折検査機器の整備」が明示された.これにより自治体が機器を購入する際に,半分が国庫から補助されることになり,屈折検査のデメリットと考えられてきた費用の部分が軽減される.また,WelchAllyn社から発売されたSpotCVisionScreener(以下,SVS)はフォトスクリーナーの一つであるが,これまでの屈折検査機器と比較すると検査時間が格段に短くなり保健師など眼科検査に慣れていない者でも簡単に操作が可能で,幼児でも検査がスムーズに行える工夫がなされていることより,検査の労力面を軽減することが可能となった.今後はCSVSなどのフォトスクリーナーの普及に伴い,3歳児眼科健診には屈折検査が必須の時代になると予測される.A群(人)120100806040200年齢(歳)B群(人)1201008060402000~34567<年齢(歳)図1初診時年齢の分布IV結論屈折検査ありの自治体でC3歳児眼科健診を受けた群のほうが,屈折検査なしの群よりもC3歳児眼科健診をきっかけに受診する割合は多く,初診時年齢も早かった.3歳児眼科健診の際に屈折検査を行うほうが,弱視治療の適応児に早く治療を開始できるため,屈折検査の導入が望ましいと思われる.0~34567<利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)坂本章子,関向秀樹,織田麻美ほか:三歳時眼科検診開始後に学校検診で発見された視力不良例.臨眼C95:758-760,C20012)渡邉央子,河津愛由美,大淵有理ほか:三歳児健診での弱視見逃しについて.日視会誌36:125-131,C20073)山田昌和:弱視スクリーニングのエビデンスCScreeningCProgramsCforCAmblyopiaCinChildren.あたらしい眼科C27:1635-1639,C20104)中村桂子,丹治弘子,恒川幹子ほか:3歳児眼科健診の現状日本視能訓練士協会によるアンケート調査結果.臨眼C101:85-90,C20175)板倉麻理子,板倉宏高:群馬県乳幼児健診における視覚発達の啓発と屈折検査導入への取り組み.臨眼C72:1313-1317,C20186)RowattAJ,DonahueSP,CrosbyCetal:FieldevaluationoftheWelchAllynSureSightvisionscreener:incorporatC-ingCtheCvisionCinCpreschoolersCstudyCrecommendations.CJAAPOSC11:243-248,C20077)DonahueCSP,CNixonC:VisualCsystemCassessmentCinCinfants,children,andyoungadultsbypediatricians.Pedi-atricsC137:28-30,C20168)林思音:3歳児眼科健診の視覚スクリーニングにスポトビジョンスクリーナーは有用か.あたらしい眼科C37:C1063-1068,C20209)DonaueSP,ArthurB,NeelyDEetal:Guidlinesforauto-matedpreschoolvisionscreening:A10-year,evidenced-basedupdate.JAAPOSC17:4-8,C201310)川端清司:フォトレフラクトメーターによるC3歳児健診あずみの眼科C8年間のまとめ.眼臨98:959-962,C2004***

小児の真性小眼球症の黄斑隆起所見

2021年11月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科38(11):1344.1347,2021c小児の真性小眼球症の黄斑隆起所見浅野真美加近藤寛之産業医科大学眼科学教室CMacularFoldsinPediatricPatientswithNanophthalmosMamikaAsanoandHiroyukiKondoCDepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealthC目的:小児期の真性小眼球症C2例にみられた黄斑隆起所見を報告する.症例:症例C1はC4歳,男児.視力は右眼(0.08),左眼(0.08),両眼眼軸長はC17Cmmであった.光干渉断層計(OCT)画像で両眼黄斑隆起を認め,中心窩無血管帯は消失していた.弱視治療を行い,7歳時視力は右眼(0.6),左眼(0.9)へ改善した.OCT画像による中心窩の網膜内層遺残の程度を,中心外(pIRL)と中心窩での網膜内層の厚み(fIRL)の比(fIRL/pIRL)で経時的にみたところ,4歳時とC7歳時で右眼はC1.60からC1.25,左眼はC1.32からC1.20へ両眼とも減少を認めた.症例C2はC3歳,女児.視力は右眼(0.1),左眼(0.1),眼軸長は右眼C16.69Cmm,左眼C16.70Cmmであった.OCT画像で両眼黄斑隆起を認めた.弱視治療を行い,5歳時視力は右眼(0.3),左眼(0.3)へ改善した.OCT画像によるCfIRL/pIRL比はC3歳時とC5歳時で,右眼はC1.16からC1.15,左眼はC1.27からC1.14へ減少した.結論:真性小眼球症では黄斑隆起所見を認めることがある.眼球の解剖学的成長に伴い黄斑隆起は経時的に平坦化していく可能性がある.CPurpose:ToCreportCtheCclinicalCcourseCofCpediatricCpatientsCwithCnanophthalmos.Cases:CaseC1CinvolvedCaC4-year-oldCboyCwithCaCvisualacuity(VA)ofC0.08ODCandC0.08OS.CInCbothCeyes,CtheCaxiallength(AL)wasC17.00CmmCwithCmacularCfolds.CAmblyopiaCtherapyCresultedCinChisCVACimprovingCtoC0.6CODCandC0.9COSCatC7-yearsCold.CFromC4-toC7-yearsCold,CtheCfovealCversusCparafovealCthicknessCratioCofCtheCinnerCretinallayers(fIRL/pIRL)Chadchangedfrom1.60Cto1.25CODandfrom1.32to1.20COS,respectively.Case2involveda3-year-oldgirlwithaVAof0.1inbotheyesandanALof16.69CmmODand16.70CmmOS.OpticalcoherencetomographyexaminationrevealedCmacularCfoldsCinCbothCeyes.CAmblyopiaCtherapyCresultedCinCherCVACimprovingCtoC0.3CODCandC0.3COSCatC5-yearsCold.CFromC3-toC5-yearsCold,CtheCfIRL/pIRLCratioChadCchangedCfromC1.16CtoC1.15CODCandCfromC1.27CtoC1.14COS,Crespectively.Conclusion:InCpediatricCnanophthalmosCeyes,CtheCfIRL/pIRLCratioCcanCbeCdecreasedCwithCanatomicalgrowthoftheeyeballduringchildhood.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(11):1344.1347,C2021〕Keywords:真性小眼球症,黄斑隆起,弱視,経時的変化.nanophthalmos,CmacularCfolds,Camblyopia,CclinicalCcourse.Cはじめに真性小眼球症は,眼杯裂の閉鎖後に眼球の発育が停止し,眼球の容積が正常のC2/3以下であり,他の身体的異常を伴わないものと定義されている1).馬島らは小眼球を年齢別の眼軸長で分類し,1歳でC19Cmm以下,成人ではC20.4Cmm以下とした2).高度遠視,強膜肥厚,uvealeffusion,閉塞隅角緑内障,黄斑低形成などが高頻度で合併するといわれている3).近年,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の発達に伴い,真性小眼球症の黄斑部の解剖学的構造異常が検討され,黄斑部に隆起性病変を認めるという特徴が報告されている4.8).今回,筆者らは,真性小眼球症のC2症例を経験し,OCTを用いて隆起性病変の経時的変化を観察したので報告する.CI症例[症例1]4歳,男児〔別刷請求先〕浅野真美加:〒807-8555福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘C1-1産業医科大学眼科学教室Reprintrequests:MamikaAsano,DepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealth,1-1,Iseigaoka,Yahatanishi-ku,Kitakyushu-shi,Fukuoka807-8555,JAPANC1344(106)右眼左眼主訴:とくになし.初診:2017年C8月.現病歴:痒みで前医受診時に眼底異常を指摘され,当科初診となった.家族歴なし.初診時所見:視力は,右眼C0.06(0.08C×sph+15.5D(cylC.1.5DAx180°),左眼C0.07(0.08C×sph+15.5D(cyl.1.0DAx175°)であり,高度遠視を認めた.眼軸長は両眼とも17Cmmと短眼軸であった.前眼部に異常は認めなかった.硝子体はベール状の混濁を認めた.両視神経は発赤,中心窩反射は認めなかった.経過:2017年C11月に全身麻酔下での眼底検査を施行した.眼底所見(図1上段)では,視神経乳頭が偽乳頭浮腫様に腫脹し辺縁が不整であったが,血管の拡張・蛇行は認めなかった.黄斑部には明瞭な黄斑色素を認めた.OCT所見(図1下段)は両眼とも網膜内層が皺襞様に隆起していた.網膜前膜を疑う高輝度反射は認めず,En-face画像でも網膜硝子体の境界面には皺襞はみられなかったが,中心窩無血管帯(fovealCavascularzone:FAZ)を認めなかった.網膜電図には異常所見を認めず,蛍光眼底造影検査では上下網膜血管の走行は非対称であった.眼鏡による弱視治療を行い,7歳時の視力は右眼(0.6C×sph+15.5D(cyl-1.0DAx180°),左眼(0.9CpC×sph+15.5D(cyl-1.0DAx180°)まで向上した.OCT画像による中心窩の網膜内層遺残の程度を評価するにあたり,中心窩での網膜内層の厚み(fovealCinnerCretinallayer:fIRL)はCfovealbuldgeがみられるところを中心窩とみなし,その位置で内境界膜内側から内顆粒層外側までの長さを計測した.また,中心外の網膜内層の厚み(parafovealCinnerretinallayer:pIRL)は中心窩からC1,000Cμm鼻側で同様に計測した.網膜内層遺残の程度は中心窩と中心外での網膜内層の厚さの比(fIRL/pIRL比)で評価した9,10).その結果,fIRL/pIRL比はC4歳(2017年C8月)時とC7歳(2020年11月)時では右眼はC1.60からC1.25,左眼はC1.32からC1.20となり,両眼とも中心窩の網膜内層遺残は減少を示した.[症例2]3歳,女児主訴:母からみてよく目を細める.初診:2018年C8月.現病歴:幼稚園で視力不良を疑われ,前医受診.精査目的に当科紹介受診となった.家族歴なし.初診時所見:視力は,ハンドルにて右眼(0.1),左眼(0.1)であった.眼圧は右眼C10CmmHg,左眼C15CmmHgであった.前眼部,中間部透光体に特記すべき異常は認めなかった.初診時は児の協力が得られず,眼底の詳細な検査は困難であった.眼軸長は右眼C16.69mm,左眼C16.70Cmmであった.経過:4歳(2019年C8月)時には眼底検査が可能となった.右眼左眼眼底所見(図2上段)で両眼偽乳頭浮腫様を認め,明瞭な黄斑色素を認め,中心窩反射は認めなかった.OCT所見(図2下段)で網膜内層の皺襞様隆起を認め,網膜に網膜前膜などによる牽引を認めなかった.眼鏡による弱視治療を行い,5歳時での視力は右眼(0.3C×sph+17.0D(cyl.1.5DAx150°),左眼(0.3C×sph+16.0D(cyl.1.5DAx25°)へ改善を認めた.OCT画像によるCfIRL/pIRL比は,3歳(2018年3月)時と5歳(2020年9月)の時点では,右眼1.16から1.15に,左眼はC1.27からC1.14となり,若干の減少を認めた.CII考按本症例では,2症例ともに網膜内層遺残と外層肥厚による隆起性病変を呈していた.真性小眼球症ではCBoyntonらは,発育過程で眼球壁に対して網膜,とくに黄斑部が余剰となり,黄斑隆起を生じると報告した11).1998年CSerranoらは,真性小眼球症では,肥厚した強膜は感覚網膜の発達を妨げないが,脈絡膜と網膜色素上皮の発達を妨げるため,黄斑部の隆起を生じると報告している12).2007年にCWalshらは,FAを用いて真性小眼球症ではCFAZの消失もしくは著しい縮小がみられたとしており,本症例C1に一致した13).2020年のCOkumichiらの報告では,対象C49C±13歳の成人例C5名C8眼において深層CFAZ面積と視力に相関を認めると報告されたが,症例数が少なく,相関を認める理由は不明であった14).また,視力と浅層CFAZ面積や眼軸長,fIRL/pIRL比に相関は認めなかったと報告されている14).真性小眼球症において網膜の隆起性病変に関する報告は複数存在するが,筆者らが調べた限り,小児の真性小眼球症のOCT所見を経時的に示した報告はなかった4.8).今回,筆者らは,全身麻酔下での眼底検査を行うことで小児における真性小眼球症のCOCT所見と視力の経時的変化を追うことができた.症例C1,2ともに年齢が上がるにつれ,fIRL/pIRL比は低下を認めた.また,症例C1,2ともに視力の向上も認めた.筆者らの症例では眼軸長は経時的な測定を行っていないが,眼球の解剖学的成長に伴い,fIRL/pIRL比が低下し,黄斑隆起は経時的に平坦化していく可能性が示された.真性小眼球症における網膜のCOCT所見による経時的変化は今後も検討していく必要があると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)Duke-ElderS:NormalCandCabnormalCdevelopment,CPartC2CCongenitalCdeformities.CSystemCofCOphthalmology,CVol-ume3,p488-495,MosbyCompany,StLouis,19642)MajimaA:MicrophthalmosCandCitsCpathogenicCclassi-.cation.日眼会誌C98:1180-1200,C19943)DemircanCA,CYesilkayaCA,CAltanCCCetal:FovealCavascu-larzoneareameaurementswithopticalcoherencetomog-raphyCangiographyCinCpatientsCwithCnanophthalmos.CEyeC33:445-450,C20194)BijlsmaWR,vanSchooneveldMJ,VanderLelijAetal:COpticalcoherencetomography.ndingsfornanophthalmiceyes.RetinaC28:1002-1007,C20085)DemircanA,AltanC,OsmanbasogluOAetal:SubfovealchoroidalCthicknessCmeasurementsCwithCenhancedCdepthCimagingCopticalCcoherenceCtomographyCinCpatientsCwithCnanophthalmos.BrJOphthalmolC98:345-349,C20146)YalcindaC.FN,CAtillaCH,CBatio.luF:OpticalCcoherenceCtomographyC.ndingsCofCretinalCfoldsCinCnanophthalmos.CaseReportsinOphthalmologicalMedicine:20117)MansourAM,StewartMW,YassineSWetal:Unmea-surableCsmallCsizeCsuper.cialCandCdeepCfovealCavascularCzoneCinnanophthalmos:theCcollaborativeCnanophthalmosCOCTAstudy.BrJOphthalmolC103:1173-1178,C20198)HelvaciogluCF,CKapranCZ,CSencanCSCetal:OpticalCcoher-encetomographyofbilateralnanophthalmoswithmacularfoldsCandChighChyperopia.CCaseCReportsCinCOphthalmologi-calMedicine:20149)MatsushitaI,NagataT,HayashiTetal:Fovealhypopla-siainpatientswithsticklersyndrome.AmAcadOphthal-molC124:896-902,C201710)MaldonadoRS,O’ConnellRV,SarinNetal:DynamicsofhumanCfovealCdevelopmentCafterCprematureCbirth.COph-thalmologyC118:2315-2325,C201111)BoyntonCJR,CPurnellEW:BilateralCmicrophthalmosCwith-outCmicrocorneaCassociatedCwithCunusualCpapillomacularCretinalCfoldsCandChighChyperopia.CAmCJCOphthalmolC79:C820-826,C197512)SerranoJC,HodgkinsPR,TaylorDSIetal:Thenanoph-thamicmacula.BrJOphthalmolC82:276-279,C199813)WalshCMK,CGoldbergMF:AbnormalCfovealCavascularCzoneCinCnanophthalmos.CAmCJCOphthalmolC143:1067-1068,C200714)OkumichiCH,CItakuraCK,CYuasaCYCetal:FovealCstructureCinCnanophthalmosCandCvisualCacuity.CIntCOphthalmolC41:C805-813,C2020C***

角膜輪部デルモイドの屈折異常と弱視に関する検討

2010年8月31日 火曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(137)1149《原著》あたらしい眼科27(8):1149.1152,2010cはじめに輪部デルモイドは角膜輪部に発生する先天性の良性腫瘍で,発生異常により皮膚組織が角結膜に迷入して異所性に増殖した分離腫(choristoma)の一種である1,2).生後に角膜径に対する相対的な大きさは変化しないが,その発生部位の特徴により角膜乱視をひき起こし,弱視を生じやすいために,整容的な面のみならず視機能の発達についても注意を払う必要がある2~7).治療に関しても,腫瘍切除術や表層角膜移植を行うことで整容面の改善が得られることはよく知られているが,視機能の発達や弱視治療との兼ね合いからその手術時期については議論がある2~8).しかし,わが国では多数例で輪部デルモイドの屈折異常や弱視の頻度を調査した報告は少ない.今回,筆者らが経験した輪部デルモイド42例を対象とし,輪部デルモイドに伴う〔別刷請求先〕谷井啓一:〒152-8902東京都目黒区東が丘2-5-1国立病院機構東京医療センター・感覚器センターReprintrequests:KeiichiYatsui,M.D.,NationalInstituteofSensoryOrgans,NationalHospitalOrganizationTokyoMedicalCenter,2-5-1Higashigaoka,Meguro-ku,Tokyo152-8902,JAPAN角膜輪部デルモイドの屈折異常と弱視に関する検討谷井啓一*1羽藤晋*1,2横井匡*3東範行*3山田昌和*1*1国立病院機構東京医療センター・感覚器センター*2慶應義塾大学医学部眼科学教室*3国立成育医療研究センター眼科RefractionandAmblyopiainPatientswithLimbalDermoidKeiichiYatsui1),ShinHatou1,2),TadashiYokoi3),NoriyukiAzuma3)andMasakazuYamada1)1)NationalInstituteofSensoryOrgans,NationalHospitalOrganizationTokyoMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,3)DepartmentofOphthalmology,NationalCenterforChildHealthandDevelopment目的:輪部デルモイドは角膜乱視や弱視を合併しやすいことが知られているが,多数例でその屈折状態や視機能を調査した報告は少ない.今回輪部デルモイド42例の屈折異常と弱視の有無について検討したので報告する.方法:対象は国立成育医療研究センターと東京医療センターを受診中の輪部デルモイド症例42例42眼である.デルモイドの位置,大きさと等価球面度数,乱視度数,乱視軸,視力,弱視の有無の関係についてレトロスペクティブに調査した.結果:デルモイドの位置は下耳側が83%(35/42例)を占め,セントラルデルモイドの1眼を除いて瞳孔領を覆うものはなかった.デルモイドを大きさで3段階に分けると,斜乱視の程度,等価球面度数は大きさの程度と相関した.弱視を合併した例は59%(17/29例)であり,斜乱視と遠視の程度は弱視の有無と相関した.結論:デルモイドは大きいものほど屈折への影響が大きく,約6割の症例で不同視弱視を合併していた.デルモイドでは大きさの評価と屈折検査が視力予後の判定に重要な要素と思われた.Itisknownthatpatientswithlimbaldermoidtendtohaveastigmatismand/oramblyopia,althoughfewstudieshaveexaminedalargenumberofcases.In42eyesof42patientswithlimbaldermoididentifiedatourinstitutions,weretrospectivelyreviewedthelocationandsizeofthelimbaldermoids,theirsphericalequivalent,thedegreeofastigmatism,axisofastigmatism,visualacuityandpresenceofamblyopia.Mostpatients(35/42)hadlimbaldermoidintheinferotemporalregion.Nodermoid,exceptingonecentraldermoid,coveredthepupillaryarea.Whendermoidswereclassifiedinto3gradesbysize,positivecorrelationswerefoundbetweendermoidgradeanddegreeofastigmatismandsphericalequivalent(p<0.05,Kruskal-Wallistest).Amblyopiaoftheaffectedeyewasfoundin59%(17/29)ofpatients.Correlationswereobservedbetweentheiramblyopia,degreeofastigmatismanddegreeofhyperopia(p<0.05,Mann-Whitney’sUtest).Ourresultsshowthatlargerdermoidsarelikelyassociatedwithgreaterrefractiveerror,whichmayresultinanisometropicamblyopia.Sinceanisometricamblyopiaoftheaffectedeyewasfoundinabout60%ofourpatients,wesuggestthatdermoidsizeandrefractionareimportantinvisualprognosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(8):1149.1152,2010〕Keywords:輪部デルモイド,屈折,弱視,乱視.limbaldermoid,refraction,amblyopia,astigmatism.1150あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(138)屈折異常と弱視について検討したので報告する.I対象および方法対象は2002年4月から2007年5月までに国立成育医療研究センターまたは国立病院機構東京医療センターを受診した輪部デルモイド42例42眼である.初診時年齢は生後1日~19歳(平均3.6±4.4歳)で,性別は男児が17例,女児が25例であった.罹患眼は右眼が23例,左眼が19例で,全例片眼性であった.このうち屈折検査ができた症例は34例で,屈折検査の時期は6カ月~19歳(平均6.3±4.9歳)であった.屈折検査は調節麻痺剤としてミドリンPRまたはサイプレジンR点眼後にオートレフラクトメータとスキアスコープで行うことを基本とし,初診時または最初に屈折検査を行った日のデータを用いた.レチノマックスRを含むオートレフラクトメータで再現性があり,スキアスコピーとも整合性のある値が測定できたものが30例あり,これらではオートレフラクトメータの値を用いた.オートレフラクトメータで計測不能であった例は4例あり,これらではスキアスコピーの値を用いた.視力検査ができた症例は29例で,初診時または最初に信頼性のある視力測定ができた日のデータを用い,測定時期は2歳4カ月~19歳(平均7.2±4.7歳)であった.弱視の判定は視力の数値だけではなく年齢も考慮し,健眼との視力差が明らかなものや健眼遮閉などの弱視治療を経過中に行った例は弱視ありと判定した.対象症例について診療録中のシェーマや写真を基にし,輪部デルモイドの発生部位を上下耳鼻側に分類し,大きさについてはGrade1(角膜半径の1/4までを覆うもの),Grade2(角膜半径の1/4~1/2までを覆うもの),Grade3(角膜半径の1/2以上を覆うもの)の3つに分類した(図1).なお,1例のみ角膜中央部を覆うようなデルモイド(セントラルデルモイド)の例があり,この症例は大きさの分類から除外した.デルモイドの大きさ,部位を検討するとともに,これらと等価球面度数,乱視度数と乱視軸,視力,弱視の有無の関係について検討した.II結果1.輪部デルモイドの大きさと発生部位輪部デルモイドの発生部位は下耳側が35例(83.3%),下鼻側が3例(7.1%),上耳側が2例(4.8%),下耳側と上耳側の両方に認めたものが1例(2.4%),中央部(セントラルデルモイド)が1例(2.4%)であり,ほとんどが下耳側に発生していた.輪部デルモイドの大きさの分類では,前述したようにセントラルデルモイドの1例を対象から除外した.この1例を除いた41例中,Grade1(角膜半径の1/4までを覆うもの)が20例(48.7%),Grade2(角膜半径の1/4~1/2までを覆うもの)が15例(36.6%),Grade3(角膜半径の1/2以上を覆うもの)が6例(14.6%)であった.2.輪部デルモイドの屈折異常屈折検査を行うことができた34例を対象とした.輪部デルモイドの大きさと乱視の度数を検討すると,Grade1では1.3±1.3D(範囲0.4.75D),Grade2では4.8±2.3D(範囲0.5.8.0D),Grade3では8.4±1.4D(範囲7.25.10.0D),Grade1Grade2Grade3セントラルデルモイド図1デルモイドの大きさの分類Grade1を角膜半径の1/4までを覆うものとし,Grade2を角膜半径の1/4~1/2までを覆うもの,Grade3を角膜半径の1/2以上を覆うものとした.セントラルデルモイドの1例は分類から除外した.Grade11.3±1.3DGrade38.4±1.4DGrade24.8±2.3D0123456789乱視(D)図2デルモイドの大きさと乱視の度数デルモイドの大きさのGradeが高いほど乱視度数が強い傾向にあり,統計学的にも有意であった(p<0.05,Kruskal-Wallistest).(139)あたらしい眼科Vol.27,No.8,20101151であった(図2).デルモイドの大きさのGradeが高いほど乱視度数が強い傾向にあり,統計学的にも有意であった(p<0.05,Kruskal-Wallistest).なお,今回の症例はすべて片眼性であり,僚眼の乱視は平均0.8±0.8Dであった.乱視の軸は,弱主経線上にデルモイドを含むものが21例(61.8%),強主経線上にあるものが2例(5.9%),デルモイドの位置と関係のない軽度の直乱視が9例(26.5%),乱視のないものが2例(5.9%)であった(表1).Grade別にみるとGrade2またはGrade3の大きなデルモイドほど弱主経線上にデルモイドを含む強い乱視を示す傾向があった.一方で,Grade1の小さなデルモイドでは,デルモイドの位置に関係しない軽度の直乱視や乱視のない例がみられた.等価球面度数についてデルモイドの大きさとの関係を検討すると,Grade1では+0.4±1.2D,Grade2では+1.5±3.2D,Grade3では+3.8±1.6Dであり,僚眼の等価球面度数は平均.0.1±1.6Dであった.デルモイドの大きさのGradeが大きいほど遠視が大きい傾向にあり,統計学的にも有意であった(p<0.05,Kruskal-Wallistest)(図3).3.輪部デルモイドの視力視力が測定できたのは29例であり,このうち17例(58.6%)が弱視を合併していた.弱視の有無と乱視の度数を検討すると,弱視のある症例では5.3±2.8D,弱視のない症例では2.3±2.2Dとなり,弱視のある症例のほうは乱視度数が有意に大きかった(p<0.05,Mann-Whitney’sUtest)(図4).弱視の有無と等価球面度数を検討すると,弱視のある症例では+1.8±3.1D,弱視のない症例では+0.5±1.8Dとなり,弱視のある症例のほうが有意に遠視の度数が強かった(p<0.05,Mann-Whitney’sUtest)(図5).III考按今回筆者らは,輪部デルモイド42例を対象とし,その臨床像を検討するとともに,輪部デルモイドの大きさと屈折異常,弱視の有無について検討した.輪部デルモイドの発生部位は,下耳側に認めたものが83.3%と圧倒的に多く,これ表1乱視の軸とデルモイドの位置,大きさの関係GradeTotal平均乱視度数123弱主経線上にデルモイドを含む強主経線上にデルモイドを含むデルモイドの位置と関係しない直乱視乱視なし716211130300021例2例9例2例4.7±3.0D(0.5.10.0D)1.6±0.5D(1.3.2.0D)1.8±1.3D(0.3.3.8D)弱主経線上にデルモイドを含むものが多く,Grade2またはGrade3の大きなデルモイドほど弱主経線上にデルモイドを含む強い乱視を示す傾向があった.Grade1の小さなデルモイドでは,デルモイドの位置に関係しない軽度の直乱視や乱視のない例がみられた.-10-8-6-4-20246等価球面度数(D)Grade1+0.4±1.2DGrade2+1.5±3.2DGrade3+3.8±1.6D8図3デルモイドの大きさと等価球面度数デルモイドの大きさのGradeが高いほど遠視が強い傾向にあり,統計学的にも有意であった(p<0.05,Kruskal-Wallistest).弱視なし2.3±2.2D弱視あり5.3±2.8D024681012乱視(D)図4弱視の有無と乱視の度数弱視のある例は乱視度数が有意に大きかった(p<0.05,Mann-Whitney’sUtest).図5弱視の有無と等価球面度数弱視のある症例のほうが有意に遠視の度数が強かった(p<0.05,Mann-Whitney’sUtest).-10-8-6-4-202468等価球面度数(D)弱視なし+0.5±1.8D弱視あり+1.8±3.1D1152あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(140)は今までの報告を裏付けるものであった2,3,9~12).デルモイドの大きさはGrade1が48.7%と約半数であったが,Grade2が36.6%,Grade3が14.6%とかなり大きなものもみられた.しかし,瞳孔領を覆う大きさのデルモイドはセントラルデルモイドの1例のみであった.セントラルデルモイドの存在は視力の発達を妨げ弱視を招くため3),早期の表層角膜移植による透明化が必要であると考えられた.輪部デルモイドの屈折異常は遠視が多く,弱主経線上にデルモイドを含む乱視が多かった.これはデルモイドを含む経線が平坦化し,乱視と遠視化を形成するものと考えられた.ただし,堀田ら12)が報告したような強主経線上にデルモイドを含む乱視を示す症例も2例あり,デルモイドを含む経線が急峻化する症例もあることが示された.また,輪部デルモイドの大きさと乱視の程度,遠視の程度は相関し,大きいものほど屈折への影響が大きい結果となった.輪部デルモイドでは弱主経線上にデルモイドを含む乱視が多いことは従来から報告2,9,13)されているが,今回の検討で多数例でこのことを裏付けるとともに,デルモイドの大きさが乱視や遠視の程度と相関することを示すことができた.輪部デルモイドの58.6%の症例では弱視を合併しており,弱視の有無は乱視の程度,遠視の程度と相関することが示された.瞳孔領を覆うほどの輪部デルモイドは1例のみであったことから,弱視は遠視または乱視による不同視弱視と考えられた.ただし,4D以上の乱視と等価球面度数で+4D以上の遠視を有する3例では弱視を合併しておらず,逆に乱視が1.5D以内で等価球面度数が+1.0D以内であっても弱視を合併した例が2例みられた.したがって,単純に屈折異常の程度からだけでは弱視の有無の判定は困難な場合もあると思われた.器質的疾患によらない屈折異常でも,屈折異常の程度と弱視の有無は必ずしも一致しないことは従来から報告14,15)されており,輪部デルモイドの場合も同様であると考えられた.輪部デルモイドでは保護者らは整容的な問題に注目しがちであるが,半数以上の症例で弱視を合併することから,屈折検査を必ず行い,乱視や遠視が強い症例では早期から弱視治療に努める必要があると考えられた.東京医療センター・感覚器センターでは,乳幼児で視力が測定できない年齢であっても4D以上の不同視や4D以上の角膜乱視がある症例では1日2~3時間程度の健眼遮閉を指示し,視力が測定可能な年齢になったら左右差を中心に弱視の有無を判定して健眼遮閉の時間を増減し,眼鏡による屈折矯正を可能な限り行うようにしている.このような弱視治療の効果や予後に関しては,長期間の経過観察が可能であった症例を対象にして改めて評価する必要があると考えている.デルモイドの手術に関しては,表層角膜移植を行っても乱視の軽減効果はほとんどないことが報告4~6,10~11,13)されている.このことから真島ら4)は手術時期として,まず弱視治療を行って,ある程度の視力向上が得られてから,5.6歳前後で手術を行うのが良いと述べている.今回の検討でも,輪部デルモイドに伴う弱視は基本的に不同視弱視と考えられ,多くの症例ではこの方針に従って,まず屈折矯正と健眼遮閉による弱視治療を行ってから手術を考慮するのが良いと考えられた.しかし,輪部デルモイドで乱視の強い症例では,眼鏡による屈折矯正が困難と思われる症例も存在する.乱視が強く,Grade2以上の大きなデルモイドでは,早期に手術を行い,術後にハードコンタクトレンズによる屈折矯正を試みる方法も試される価値があると思われた.今回の検討の結果を踏まえると,デルモイドの大きさとともに屈折検査を行うことで,視力予後を判定することが可能であると考えられた.輪部デルモイドは整容面だけでなく,視機能の発達に影響を与えることが多いので,早期に屈折検査を行い,必要があれば屈折矯正,健眼遮閉などの弱視治療を早めに開始する必要がある.どのような弱視治療を行うかは,手術時期を含めて今後の検討が必要と考えられた.文献1)MansourAM,BarberJC,ReineckeRDetal:Ocularchoristomas.SurvOphthalmol33:339-358,19892)PantonRW,SugerJ:Excisionoflimbaldermoids.OphthalmicSurg22:85-89,19913)MohanM,MukherjeeG,PandaA:Clinicalevaluationandsurgicalinterventionoflimbaldermoid.IndJOphthalmol29:69-73,19814)真島行彦,村田博之,植村恭夫ほか:角膜輪部デルモイド手術例の視力予後.臨眼43:755-758,19895)奥村直毅,外園千恵,横井則彦ほか:表層角膜移植術を行った輪部デルモイド21例.眼紀54:425-428,20036)野呂充:角膜輪部デルモイドにおける弱視治療.眼臨91:490-491,19977)古城美奈,外園千恵:小児のデルモイド.あたらしい眼科23:43-46,20068)PandaA,GhoseS,KhokharSetal:Surgicaloutcomesofepibulbardermoids.JPediatrOphthalmolStrabismus39:20-25,20029)BaumJL,FeingoldM:OcularaspectsofGoldnhar’ssyndrome.AmJOphthalmol75:250-257,198310)ScottJA,TanDTH:Therapeuticlamellarkeratoplastyforlimbaldermoids.Ophthalmology108:1858-1867,200111)外園千恵,井田直子,西田幸二ほか:冷凍保存角膜を用いた輪部デルモイドと弱視の治療.臨眼51:179-182,199712)堀田喜裕,馬場順子,金井淳ほか:輪部デルモイド手術後の長期予後について.眼臨80:106-110,198613)堀純子,鈴木雅信,宮田和典ほか:角膜輪部デルモイドに対する表層角膜移植後の角膜形状解析.臨眼47:1173-1175,199314)大平明彦:最近の弱視の治療.臨眼41:1303-1306,198715)八子恵子:不同視弱視の治療.あたらしい眼科8:1557-1563,1991