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オルソKレンズ装用における未成年の角膜感染症の3例

2025年7月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科42(7):910.914,2025cオルソKレンズ装用における未成年の角膜感染症の3例南幸佑福岡秀記宮平大横井則彦外園千恵京都府立医科大学眼科学教室CThreeCasesofCornealInfectioninMinorsUsingOrthokeratologyLensesKosukeMinami,HidekiFukuoka,HiroshiMiyahira,NorihikoYokoiandChieSotozonoCDepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturaluniversityofMedicineC目的:オルソケラトロジー(オルソCK)レンズの装用中に感染性角膜潰瘍を発症した未成年患者C3症例を報告する.症例:症例C1はC18歳,女性で,中学生からオルソCKレンズを使用し,右眼の痛みと充血で京都府立医科大学附属病院眼科を受診.前房蓄膿と角膜中央付近に円形の浸潤と浸潤よりも広い範囲に上皮欠損を認めた.眼脂培養からは緑膿菌が検出された.抗菌薬の頻回点眼,全身投与により改善した.症例C2はC13歳,女性で,1年前からオルソCKレンズを使用し,右眼の眼痛と充血で受診.角膜擦過物の塗抹鏡検にてアカントアメーバのシストを認めた.抗菌薬,抗真菌薬,グルコン酸クロルヘキシジンの頻回点眼にて改善した.症例C3はC11歳,男性(症例C2の弟)で,2年前からオルソCKレンズを使用していた.右眼の異物感で受診し,角膜擦過物のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査からアカントアメーバDNAが検出された.症例C2と同様の治療で改善した.結論:近年,未成年者へのオルソCKレンズ処方が増加しており,不適切なレンズ使用や管理による角膜感染症の増加が懸念されるため,保護者への指導が一層重要となっている.CPurpose:ToCreportC3CcasesCofCinfectiousCcornealCulcersCinCminorsCusingCorthokeratologyClenses.CCasereports:Case1involvedan18-year-oldfemalewithahistoryoforthokeratologylensusesincejuniorhighwhopresentedCwithCpain,Credness,Chypopyon,CandCaCcornealCin.ltrateCandCepithelialCdefectCinCherCrightCeye.CACpusCcul-tureCrevealedCPseudomonasCaeruginosa.CHerCconditionCimprovedCwithCtheCadministrationCofCtopicalCandCsystemicCantibiotics.Case2involveda13-year-oldfemalewhopresentedwithpaininherrighteye,andacornealscrapingrevealedCAcanthamoebaCcysts.CHerCconditionCimprovedCviaCtheCadministrationCofCantibiotics,Cantifungals,CandCchlorhexidinegluconate.Case3involvedan11-year-oldmale(theyoungerbrotherofCase2)whopresentedwithforeignCbodyCsensation.CPolymeraseCchainCreactionCtestingCcon.rmedCAcanthamoebaCDNA.CHisCconditionCimprovedCfollowingCtheCadministrationCofCtheCsameCtreatmentCappliedCinCCaseC2.CConclusions:WithCtheCincreasingCuseCofCorthokeratologylensesinminors,concernsaboutcornealinfectionsduetoimproperuseandcarehaveincreased,soitisnowcrucialtoprovidedetailedguidancetoparentsandguardians.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(7):910.914,C2025〕Keywords:オルソケラトロジー,感染性角膜潰瘍,アカントアメーバ,緑膿菌.Orthokeratology,Infectiouscor-nealulcer,Acanthamoeba,Pseudomonasaeruginosa.Cはじめにオルソケラトロジー(以下,オルソCK)は,睡眠時に特殊デザインのハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)を装用することにより角膜の形状を一時的に変化させ,日中の裸眼視力を向上させる屈折矯正法である.夜間就寝中にCHCLを使用することで,日中は裸眼で生活できることを目標としている.2009年に初版のガイドラインが公開されたが,当初は適応年齢がC20歳以上とされた.実際には,未成年(20歳未満)への処方がC66%,学童(12歳以下)への処方がC25%にも及び1),また,未成年ゆえの重篤な合併症の報告は少ないという市販後調査2)の結果が報告された.2017年にガイドラインが改定され,未成年に対しても慎重処方という文言が追加された3).視力予後に影響を及ぼすオルソCKの重篤な合併症として感染性角膜潰瘍が報告されており4.5),日本においてC1万人あたり年間C5.4人に発症するといわれている6).オルソCKにおいてはレンズの適切な管理と衛生管理〔別刷請求先〕福岡秀記:〒606-8566京都市上京区広小路通上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:HidekiFukuoka,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine465Kajii-cho,Kamigyo-ku,Hirokoji-doriAgaru,Kyoto606-8566,JAPANC910(126)図1初診時前眼部写真a:角膜浸潤病巣と前房蓄膿,毛様充血を認める.b:浸潤病巣よりも広い範囲に角膜上皮欠損を認める.が不可欠であり,これらが不十分であると角膜感染症のリスクが増大すると考えられる.しかし,未成年は衛生管理に対する意識が低く,不適切なレンズケアが感染症の原因となりうることが指摘されている7.8).今回,未成年のオルソCKレンズ装用による角膜感染症が生じたC3症例を経験したので報告する.CI症例[症例1]18歳,女性.主訴:右眼眼痛および結膜充血.既往歴:特記事項なし.現病歴:中学生の頃からオルソCKレンズ(Targetpower:C.2.0D)を装用しており,親元を離れて一人暮らしであるため,レンズ管理は全て自身で行っている.京都府立医科大学附属病院眼科(以下,当院)を受診する2日前より右眼の結膜充血と掻痒感を自覚し,市販の点眼薬で様子を見ていた.その翌日から眼痛が出現し,症状が増悪してきたため,当院を受診した.初診時所見:右眼視力は指数弁(矯正不能),左眼視力は1.5(1.5C×S+0.5D),角膜中央部に直径約C4mmの円形の膿瘍と前房蓄膿を認めた(図1).フルオレセイン蛍光造影では膿瘍よりも広い範囲に角膜上皮欠損を認めた.眼脂を培養検査に供し,角膜所見より緑膿菌感染が疑われたため,1.5%レボフロキサシン点眼をC1時間ごと,0.3%トブラマイシン点眼C6回/日,0.3%オフロキサシン眼軟膏C4回点入/日,1%アトロピン点眼C1回/日,4日間のセフタジジムC1Cgの全身投与を開始した.治療開始C1週間後には角膜浮腫の改善,角膜上皮の伸展,前房蓄膿の減少を得て,右眼視力はC0.01(矯正不能)に改善した.初診時に採取した眼脂の培養検査にてCPseudomonasaeruginosaが検出された.治療開始C2週間後には角膜上皮欠損はさらに改善し,1.5%レボフロキサシン点眼C6回/日,0.3%トブラマイシン点眼C3回/日,0.3%オフロキサシン眼軟膏C1回点入/日に減量し,1%アトロピン点眼を終了とした.治療開始C1カ月後に右眼視力はC0.2(0.5C×sph.2.0D)まで改善した.角膜上皮欠損は治癒したが,病巣の中心に浸潤が残っていたため,1.5%レボフロキサシン点眼C3回/日を継続した.治療開始C2カ月後には右眼視力は0.2(1.0C×sph.2.0D(cyl.1.0DAx140°)と良好であったが,角膜周辺部から角膜混濁に向かう新生血管を認めたため,0.1%フルオロメトロン点眼C2回/日を追加した.治療開始後C4カ月の現在では,上皮下混濁を残すものの血管侵入の悪化はない.[症例2]13歳,女性.主訴:右眼眼痛,右眼結膜充血.既往歴:特記事項なし.現病歴:12歳からオルソCKレンズ(Targetpower:C.6.0D)を装用しており,当初は母親がレンズ管理を行っていたが,夏休みを機に自身で管理を行うようになった.しかし,日常的なレンズ消毒を怠ることが多く,オルソCKレンズを処方している前医にてプロージェントを用いたレンズ洗浄を実施するも,汚れが除去しきれない状態であった.このため,レンズの再作成が予定されていた.当院受診のC15日前から右眼の眼痛と結膜充血を自覚し,当院受診C12日前に前医を受診した.前医では右角膜に点状表層角膜症を認めたため,ガチフロキサシン点眼とオフロキサシン眼軟膏による治療が開始された.しかし,当院受診C2日前に角膜上皮下混濁,偽樹枝状角膜炎が出現したため,アカントアメーバによる角膜炎を疑い,フルコナゾール点眼を1時間ごと,1.5%レボフロキサシン点眼をC6回/日に変更され,当院紹介となった.初診時所見:視力は右眼視力がC0.1(0.2C×sph.7.0D(cylC.2.0DAx25°),左眼視力は0.6(1.2C×sph.2.0D),右眼に放射状角膜神経炎,偽樹枝状角膜炎を認めた(図2).角膜所見よりアカントアメーバ角膜炎が疑われたため,病巣を擦過し,ファンギフローラCY染色とポリメラーゼ連鎖反応(poly-meraseCchainreaction:PCR)検査を行ったところ,染色に図2初診時前眼部写真a:放射状角膜神経炎と角膜上皮下混濁を認める.b:偽樹枝状の角膜上皮欠損を認める.図3症例2の角膜擦過物のファンギフローラY染色アカントアメーバのシストを認める.て円形のアカントアメーバシストが確認できたため,アカントアメーバ角膜炎と診断した(図3).前医での処方をC0.3%ガチフロキサシン点眼C4回/日,0.02%クロルヘキシジン点眼をC1時間ごと,0.1%ミコナゾール点眼(自家調整)6回/日,1%ピマリシン眼軟膏C6回点入/日に変更し,治療を開始した.治療開始C1週間後には,角膜浮腫や放射状角膜神経炎の所見はやや増悪傾向であったが,1カ月後には角膜上皮下混濁を一部残すものの角膜浮腫は改善し,右眼視力は(1.2C×sph.4.5D(cyl.1.0DA180°)と改善した.そこで,0.02%クロルヘキシジン点眼C6回/日,0.1%ミコナゾール点眼C3回/日,1%ピマリシン眼軟膏C3回点入/日へ減量した.角膜混濁は経過とともに軽減し,治療開始半年後にすべての薬剤を終了した.PCR検査では角膜擦過を行った翌日にアカントアメーバが検出されたため,コンタクトレンズ保存液に対しても初診日のC1週間後に追加のCPCR検査を行ったが,アカントアメーバは検出されなかった.[症例3]11歳,男性.主訴:右眼痛.既往歴:特記事項なし.現病歴:症例C2の弟.姉と同じ眼科(前医)にてC9歳からオルソCKレンズ(Targetpower:C.4.0D)を装用しており,姉が以前に角膜感染症を発症した経緯があるため,前医の指導のもと,レンズ管理は母親が行っていた.当院受診のC4日前より右眼の違和感を自覚し,前医を受診した.前医にて右眼角膜下方の上皮下に線状の細胞浸潤を認めたため,セフメノキシム点眼C4回/日,レボフロキサシン点眼C4回/日が開始された.翌日の診察では角膜所見に改善を認めず,0.1%フルコナゾール液の点眼C6回/日,ピマリシン眼軟膏C4回/日,ガチフロキサシン点眼C6回/日に変更されたが,徐々に浸潤が拡大しており,1年前に姉がアカントアメーバ感染を発症していることもあり,さらなる精査目的に当院へ紹介となった.初診時所見:右眼視力はC0.4(0.9C×sph.5.0D(cyl.1.5DAx50°),左眼視力はC0.3(1.2C×sph.4.75D(cyl.0.75DAx30°)であった.右眼には明らかな放射状角膜神経炎を認めなかったが,角膜浮腫と角膜上皮下浸潤,毛様充血を認めた(図4).病巣を擦過し,ファンギフローラCY染色を行ったが,アカントアメーバのシストは確認できなかった.しかし,角膜所見からアカントアメーバ感染を疑い,0.3%ガチフロキサシン点眼C4回/日,0.02%クロルヘキシジン点眼C6回/日,0.1%ミコナゾール点眼(自家調整)6回/日に変更し,治療を開始した.翌日に角膜擦過物のCPCR検査にてアカントアメーバが検出されたが,コンタクト保存液からは検出されなかった.治療開始C1週間後に角膜浮腫の増悪と放射状角膜神経炎を認め,右眼視力は(0.1C×sph.2.75D)に低下した(図5).上記の点眼内容を継続したところ,治療開始C2週間後には角膜浸潤は軽減し,治療開始C1カ月後には軽度角膜混濁は残存するものの角膜浸潤は改善し,右眼視力は(1.0C×sph.3.5D)へと改善した.0.02%クロルヘキシジン点眼のみC3回/日継続し,残りの点眼は終了とした.治療開始C3図4初診時前眼部写真角膜下方に角膜上皮下混濁を認めるも,明らかな放射状角膜神経炎などアカントアメーバを示唆する所見は認めない.カ月後には角膜混濁も改善し,角膜透明性は良好であったため,クロルヘキシジン点眼を終了した.右眼の最終視力は(1.0C×sph.3.5D)であった.CII考按近視の有病率は世界的に増加傾向にあり,Holdenら9)のメタ解析によれば,全世界の近視有病率はC2000年のC22.9%からC2050年にはC49.8%に増加すると予測されている.強度近視は将来的に緑内障や黄斑円孔網膜.離などの重篤な視力障害を引き起こす可能性があり,その進行予防が重要とされる.オルソCKは小児および青少年の近視進行を抑制する可能性が示唆されており,早期(6.8歳)に開始することでより大きな効果が得られたと報告されている10,11).2017年にオルソCKガイドラインが改定され3),初版では「適応はC20歳以上」とされていたが,第C2版では「20歳未満は慎重処方とする」との文言が追加され,今後はさらなる若年者への処方がさらに増加することが予想される.オルソCKレンズは非オルソCKレンズと異なり,中央角膜に対する圧力が大きくなるため,角膜上皮バリアが損なわれ,数時間の低酸素状態にさらされることで角膜感染のリスクが高まるといわれている12).矯正度数が増すにつれて角膜上皮障害が生じやすくなると考えられるが,矯正度数と角膜障害の関連を明確に証明した研究は見当たらなかった.2024年に報告された日本の多施設共同研究ではオルソCKによる角膜感染の発生率は,もっとも一般的に使用されている日常装用ソフトCCLによる角膜感染の発生率とほぼ同等であった6).オルソCKレンズ装用に伴う角膜感染症のおもな起因菌は緑膿菌とアカントアメーバであり4.7),オルソCKレンズ使用者に角膜感染症が認められた場合は,まずはこれらを念頭におき,迅速に治療を開始する必要がある.両病原体ともに治療が遅れると重篤な視力障害を残す可能性があるが,オルソ図5治療1週間後の前眼部写真初診時には認めなかった放射状角膜神経炎と膜浮腫の増悪を認める.Kによる角膜感染症は発症早期に適切な治療を行うことにより良好な視力予後が得られる報告13)があるように,今回のC3症例においても早期に診断,治療を開始することにより矯正視力はC1.0まで回復している.改訂版ガイドラインでは,「緑膿菌やアカントアメーバによる角膜炎のリスクが高く,レンズは界面活性剤による擦り洗いに加え,ポピドンヨード剤による消毒を推奨する」との注意点が追加された.しかし,未成年者,とくに学童への処方は本人ではなく保護者の希望であることが多く,本人のレンズ装用に対するモチベーションや,レンズケアの重要性への認識は低くならざるを得ない.今回報告するC3症例はすべて未成年である.症例C1および症例C2では,患者本人がレンズ管理を行っていたが,レンズケアの重要性を十分に認識しておらず,ケアを怠ったまま連続装用を続けたことが原因で角膜感染を発症したと考えられる.一方,症例C3では,症例C2の経緯を踏まえ,母親が処方医の指導のもと,徹底した消毒を実施し管理を行っていたにもかかわらず角膜感染が発生した.このため,消毒方法ではなく保管方法など他の要因が関与している可能性が疑われた.コンタクト保存液からはアカントアメーバは検出されなかったが,問診により自宅内にコンタクトレンズの一時保存場所があることが判明した.そこで清潔なスワブを持ち帰ってもらい,その保存場所と水道蛇口を拭取したところ,PCR検査によりアカントアメーバが検出された.このような症例から,外来にてふだんのコンタクトレンズの扱い方や保存方法について親も含めて詳細に問診する必要がある.今後は近視人口の増加に伴い,未成年へのオルソCKレンズの処方数がさらに増加することが考えられるが,レンズ管理と装用が適切に行われるように処方医による保護者への適切な指導がいっそう重要となる.保護者によるレンズの管理が,成年とは異なる課題であることを処方医が認識しなければならない.また,オルソCKによる角膜感染症の多くが緑膿菌やアカントアメーバによるものであることを認識し,早期に適切な治療を開始する必要性を認識すべきであり,定期的な眼科受診を積極的に促す必要があると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)柿田哲彦,高橋和博,山下秀明ほか:オルソCKに関するアンケート調査集計結果報告.日本の眼科C87:527-534,C20162)平岡孝浩,伊藤孝雄,山本輝一:オルソCK使用成績調査:5年間の解析結果.日本コンタクトレンズ学会誌C59:C66-75,C20173)日本コンタクトレンズ学会オルソCKガイドライン委員会:オルソCKガイドライン(第C2版).日眼会誌C121:936-938,C20174)WattCK,CSwarbrickCHA.CMicrobialCkeratitisCinCovernightorthokeratology:reviewofthe.rst50cases.EyeContactLensC31:201-208,C20055)VanCMeterCWS,CMuschCDC,CJacobsCDSCetal:SafetyCofCovernightCorthokeratologyCformyopia:aCreportCbyCtheCAmericanCAcademyCofCOphthalmology.COphthalmologyC115:2301-2313,C20086)HiraokaCT,CMatsumuraCS,CHoriCYCetal:IncidenceCofCmicrobialkeratitisassociatedwithovernightorthokeratol-ogy:aCmulticenterCcollaborativeCstudy.CJpnCJCOphthalmolC69:139-143,C20247)HsiaoCH,YeungL,MaDHetal:Pediatricmicrobialker-atitisCinCTaiwanesechildren:aCreviewCofChospitalCcases.CArchOphthalmolC125:603-609,C20078)CopeJR,CollierSA,ScheinODetal:Acanthamoebaker-atitisCamongCrigidCgasCpermeableCcontactClensCwearersCinCtheCUnitedCStates,C2005CthroughC2011.COphthalmologyC123:1435-1441,C20169)HoldenCBA,CFrickeCTR,CWilsonCDACetal:GlobalCpreva-lenceCofCmyopiaCandChighCmyopiaCandCtemporalCtrendsCfrom2000through2050.OphthalmologyC123:1036-1042,C201610)VanderVeenCDK,CKrakerCRT,CPinelesCSLCetal:UseCofCorthokeratologyforthepreventionofmyopicprogressioninchildren:aCreportCbyCtheCAmericanCAcademyCofCOph-thalmology.OphthalmologyC126:623-636,C201911)LiCSM,CKangCMT,CWuCSSCetal:E.cacy,CsafetyCandCacceptabilityCofCorthokeratologyConCslowingCaxialCelonga-tionCinCmyopicCchildrenCbyCmeta-analysis.CCurrCEyeCResC41:600-608,C201612)DingCH,CPuCA,CHeCHCetal:ChangesCinCcornealCbiometryCandCtheCassociatedChistologyCinCrhesusCmonkeysCwearingCorthokeratologycontactlenses.CorneaC31:926-933,C201213)ChanTCY,LiEYM,WongVWYetal:Orthokeratology-associatedinfectiouskeratitisinatertiarycareeyehospi-talCinCHongCKong.CAmCJCOphthalmolC158:1130-1135,C2014C***

当科における10 年間の感染性角膜潰瘍の起炎菌と薬剤感受性

2023年2月28日 火曜日

当科における10年間の感染性角膜潰瘍の起炎菌と薬剤感受性柴田学張佑子曽田里奈塚本倫子中路進之介南泰明鈴木智地方独立行政法人京都市立病院機構京都市立病院眼科CAlterationofCausativeBacteriaandDrugSusceptibilityinCasesofInfectiousCornealUlcerGakuShibata,YukoCho,RinaSoda,MichikoTsukamoto,ShinnosukeNakaji,YasuakiMinamiandTomoSuzukiCDepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospitalC目的:感染性角膜潰瘍(ICU)の起炎菌と薬剤感受性についての検討.対象および方法:2010年C4月.10年間にICUと診断したC97例C101眼を対象に,患者背景,起炎菌とその薬剤感受性,臨床的特徴を診療録によりレトロスペクティブに検討した.結果:50歳未満(46例)は,コンタクトレンズ装用者がC91.3%を占め,起炎菌はメチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)が最多であった.50歳以上(51例)では,起炎菌は角膜上下方の感染ではCMSSE(27.6%),中央部ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が最多であった(17.4%).耐性菌は検出菌のC4割以上を占め,緑内障点眼使用者でその割合が有意に高かった(p<0.05).緑内障とマイボーム腺機能不全(MGD)の双方を合併したC6例中,4例で耐性菌が検出された.結論:ICUでは,常在細菌叢の加齢性変化に加え,緑内障やCMGDなどの患者背景,耐性菌を念頭において診療にあたることが重要である.CPurpose:ToCinvestigateCtheCcausativeCbacteriaCandCdrugCsusceptibilityCinCcasesCofCinfectiousCcornealCulcer(ICU)C.Methods:InC101CeyesCofC97CpatientsCdiagnosedCwithCICUCfromCAprilC2010CtoCMarchC2020,CpatientCback-ground,CcausativeCbacteriaCandCtheirCdrugCsusceptibility,CandCocularC.ndingsCwereCretrospectivelyCinvestigated.CResults:InCpatientsCunderC50Cyearsold(n=46cases)C,91.3%CwereCcontactClensCwearers,CandCtheCmostCcommonCcausativebacteriumwasMethicillin-susceptibleStaphylococcusepidermidis(MSSE)C.Inpatientsover50yearsold(n=51cases)C,themostcommoncausativebacteriuminupperandlowerregioncornealinfectionswasMSSE(27.6%)C,CwhileCinCcentralCcornealCregionCtheCinfectionCwasCMethicillin-resistantCStaphylococcusaureus(17.4%)C.Morethan40%CofCtheCcausativeCbacteriaCwereCresistantCtoCantibiotics,CandCtheCproportionCofCdrug-resistantCorganismsCwasCsigni.cantlyChigherCinCglaucomaCeyeCdropusers(p<0.05)C.CInC4CofC6CpatientsCwithCglaucomaCandCmeibomianCglanddysfunction,drug-resistantbacteriaweredetected.Conclusion:InICUcases,itisimportanttounderstandtheage-relatedalterationofcommensalbacteriaandthepatientbackground.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(2):243.247,C2023〕Keywords:感染性角膜潰瘍,起炎菌,薬剤感受性,緑内障,マイボーム腺機能不全.infectiouscornealulcer,causativebacteria,drugsusceptibility,glaucoma,meibomianglanddysfunction(MGD)C.Cはじめに角膜感染症は,早期に診断し効果的な治療ができなければ永続的な視力低下を生じうる疾患である.若年者ではコンタクトレンズ(contactlens:CL)の不適切な使用に伴う角膜上皮障害をきっかけとするケースが多い一方,高齢者では,ドライアイ,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddys-function:MGD),眼瞼内反症,緑内障点眼の長期使用など,さまざまな患者背景に起因する角膜上皮障害をきっかけに感染を生じることが多いと考えられている1).近年,周術期を含めた抗菌薬の過度な使用は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusaureus:MRSA)やキノロン耐性コリネバクテリウム属をはじめとする薬剤耐性菌を生じ,これらの細菌に起因した重症の角膜感染症へとつながることが報告されている2,3).一方,健常者のマイボーム腺,結膜.,眼瞼皮膚の常在細菌叢は加齢とともに変化し4),とくにCMGD患者では結膜.の常在細菌叢が変化する〔別刷請求先〕柴田学:〒604-8845京都市中京区壬生東高田町C1-2京都市立病院眼科Reprintrequests:GakuShibata,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospital,1-2MibuHigashitakadacho,Nakagyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto604-8845,JAPANC50歳未満50歳以上症例数,眼数46例49眼51例52眼年齢C30.4±9.4歳C70.2±11.5歳性別(男性/女性)C21/25C23/28マイボーム腺機能不全合併9例(1C9.6%)23例(C45.1%)(p=0.008)コンタクトレンズ装用42例(C91.3%)10例(C19.6%)(p<0C.001)緑内障点眼使用0例(0%)12例(C23.5%)(p<0C.001)(例)25201510500~910~1920~2930~3940~4950~5960~6970~79■症例数■MGD合併症例数■緑内障点眼使用症例数図1年代別感染性角膜潰瘍症例数80~8990~99(歳)各年代におけるマイボーム腺機能不全(MGD)合併症例数,緑内障点眼使用症例数を合わせて表示した.と報告されている5).また,緑内障点眼を使用している患者のC82%はCMGDを合併し6),長期間の緑内障点眼治療により眼表面常在細菌叢が変化することも報告されている7).そこで,今回筆者らは,当院で過去C10年間に経験した感染性角膜潰瘍の患者について,起炎菌とその薬剤感受性,患者背景(とくにCMGDの合併や緑内障点眼使用の有無)についてレトロスペクティブに検討したので報告する.CI対象および方法対象は,2010年4月1日.2020年3月31日の10年間に当院で感染性角膜潰瘍と診断されたC97例である.感染性角膜潰瘍の診断は細隙灯顕微鏡による角結膜所見(角膜細胞浸潤・潰瘍の部位,形状,深さ,前房蓄膿の有無,結膜充血など)から行った.ウイルス性角膜炎,慢性移植片対宿主病(graft-versus-hostdisease:GVHD)による重症ドライアイを合併した症例は除外した.結膜.培養および角膜擦過培養検査,検出菌の薬剤感受性,前眼部所見(角膜感染巣の部位,MGDの有無),CL装用歴,緑内障点眼使用の有無,診断日から治癒までの期間を診療録によりレトロスペクティブに検討した.感染巣の部位は,瞳孔径によらず角膜を上方・中央・下方と三つの部位に均等に分け,上方・下方をまとめて上下方とした.MGDは,2010年に日本で制定された分泌減少型CMGDの診断基準8)に基づいて,マイボーム腺開口部周囲異常所見(血管拡張,粘膜皮膚移行部の前方または後方移動,眼瞼縁不整),マイボーム腺開口部の閉塞所見,マイボーム腺分泌物の圧出低下から診断した.CL使用歴は発症時に装用していた症例を対象とし,緑内障点眼使用については,発症時より遡ってC1年間以上緑内障点眼を継続していた症例を対象とした.各数値は平均値C±標準偏差(standarddeviation:SD)で表記し,統計学的検討にはCt検定を行い,p<0.05を有意水準とした.CII結果対象の詳細を表1に示す.97例C101眼の平均年齢はC51.0C±22.6歳であった.50歳未満(46例C49眼)とC50歳以上(51例C52眼)の各群の平均年齢はそれぞれC30.4C±9.4歳とC70.2C±11.5歳であり,両群とも性差を認めなかった.MGDの合併は全体のC33.0%(32例)で認め,50歳未満のC19.6%(9例),50歳以上のC45.1%(23例)であった.CL装用歴は全体の53.6%(52例)で認め,50歳未満のC91.3%(42例),50歳以上のC19.6%(10例)であった.緑内障点眼の使用症例は全例がC50歳以上であり,23.5%(12例)を占めていた.診断か陰性51.2%MSSE30.2%陰性32.6%MSSE32.6%MSSA4.7%その他8.7%CCorynebacteriumその他S.lugdunensis4.7%CMSSACMRSA8.7%7.0%Corynebacterium2.3%6.5%8.7%MRSE2.2%図2結膜.培養検出菌MSSE:メチシリン感受性表皮ブドウ球菌,MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌,MRSE;メチシリン耐性表皮ブドウ球菌,MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌.Ca上下方(n=27)中央(n=23)CMSSE18.5%CMSSE不明不明26.1%51.9%CMSSA34.8%7.4%CPseudomonasaeruginosaCSerratia7.4%8.7%CSteptococcusspecies7.4%アカントアメーバCMRSECMRSA8.7%Corynebacterium3.7%4.3%4.3%CSteptococcusspeciesS.lugdunensis3.7%4.3%Moraxellacatarrhalis4.3%Enterococcusfaecalis4.3%Cb上下方(n=29)中央(n=23)CMRSA不明CMSSE不明17.4%27.6%27.6%26.1%CMSSECStaphylococcushaemolyticus13.0%CStenotrophomonasmaltophilia3.4%CMSSA4.3%CMRSEC.acnes3.4%13.8%肺炎球菌4.3%8.7%Serratia3.4%CMRSECMRSACMoraxellacatarrhalis真菌10.3%10.3%4.3%CMSSA8.7%CCorynebacterium4.3%8.7%図3角膜の感染部位別起炎菌a:50歳未満,Cb:50歳以上.MSSE:メチシリン感受性表皮ブドウ球菌,MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌,MRSE;メチシリン耐性表皮ブドウ球菌,MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌.ら治癒までの平均日数はC47.6C±57.7日で,50歳未満では症例数および各年齢層におけるCMGD合併症例数と緑内障点C27.9±26.7日,50歳以上ではC65.5C±70.0日であり,50歳以眼使用症例数を図1に示した.年代別症例数では,20歳代上の群でC2倍以上長い結果となった.10歳ごとの年代別のとC70歳代に二峰性のピークを認めた.また,MGD合併症例数はC60.70歳代で,緑内障点眼使用症例数はC70歳代でピークを示した.50歳未満50歳以上上下方中央上下方中央診断から治癒までの日数Cマイボーム腺機能不全合併コンタクトレンズ装用緑内障点眼使用19.2±17.1日C38.3±33.0日C(p=0.05)3例(1C2.5%)6例(2C7.3%)21例(C87.5%)20例(C90.9%)0例(0C.0%)0例(0C.0%)34.9±47.3日C91.7±74.8日(p=0.04)15例(C53.6%)9例(3C9.1%)5例(1C7.9%)5例(2C1.7%)4例(1C4.3%)8例(3C4.8%)結膜.培養検査による検出菌の割合を図2に示す.細菌は50歳未満の群のC48.8%,50歳以上の群のC67.4%から検出され,検出菌は,両群ともメチシリン感受性表皮ブドウ球菌(methicillin-susceptibleCStaphylococcusCepidermidis:MSSE)が最多となり,50歳以上の群ではコリネバクテリウム属,MRSA,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicil-lin-susceptibleCStaphylococcusaureus:MSSA),メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistantCStaphylococcusepidermidis:MRSE)と続き,ブドウ球菌属がC52.2%を占めた.一方で,角膜擦過培養検査では,50歳未満ではC16人中2人,50歳以上ではC24人中C10人が陰性であった.50歳以上からの検出菌のうちC60%がブドウ球菌属,20%がコリネバクテリウム属であった.50歳未満,50歳以上の症例において,各種培養結果や臨床経過から推察された起炎菌を感染部位別にまとめたものをそれぞれ図3に,部位別の臨床像の比較を表2に示す.起炎菌は,各症例の角膜潰瘍擦過塗抹鏡検および培養検査結果(角膜潰瘍部,結膜.,CL,CLケースなど)や,細隙灯顕微鏡による角膜所見(角膜潰瘍の部位,程度,前房蓄膿の有無)および結膜,眼瞼縁の所見,当科受診までの抗菌薬治療歴,当科での抗菌薬治療効果から総合的に推測した.50歳未満では(図3a),上下方,中心とも起炎菌はCMSSEがもっとも多く,中央部の感染でC2例アカントアメーバ角膜炎を認めた.50歳以上では(図3b),上下方の感染の起炎菌はCMSSEがもっとも多く,その他のブドウ球菌属を含めると全体のC60%以上を占めた.中央部の感染の起炎菌はMRSAがもっとも多く,ブドウ球菌属のほか,コリネバクテリウム属や真菌によるものも認めた.50歳以上の症例における診断から治癒までの日数の平均は,上下方の感染ではC34.9±47.3日,中央部の感染ではC91.7C±74.8日であり,中央部の感染で有意に長い結果となった(p=0.004).これら起炎菌のうち薬剤感受性が明らかとなった細菌はC31例から検出され,そのうちレボフロキサシン,ガチフロキサシン,セフメノキシムのいずれかに耐性を有する細菌はC14例で検出された.感染部位の違いやCMGDの有無では耐性菌の割合に明らかな差異を認めなかった.しかし,緑内障点眼の使用群では未使用群と比較して耐性菌の割合が有意に高い結果となった(p=0.049).また,緑内障とCMGDの双方を合併したC6例中,4例で耐性菌(うち,3例でCMRSA)が検出された.CIII考按正常角膜では角膜表面を重層扁平上皮細胞が覆い,上皮細胞間は多数のデスモゾームで連なり,とくに最表層上皮細胞はCZO-1やCclaudineなどのCtightCjunction関連蛋白の発現さらには膜結合型ムチンにより強固なバリア機能を保持している9,10).さらに角膜上皮細胞はCdefensinなどの抗菌物質の発現により細菌微生物の侵入を阻止しているが,何らかの原因で上皮細胞が障害を受けると,微生物の侵入,付着が起こりやすくなり感染症発症の誘引となる11).今回,年代別の検討では,既報と同様にC20歳代とC70歳代に二峰性のピークを認めた12,13).50歳以下の群のC91.3%にCCL装用歴を認め,検出菌はCMSSEが最多であったことから,若年者ではCCL装用による上皮障害をきっかけとした常在細菌による感染症がおもなものであることが再確認された.CL装用者に生じる重傷の感染性角膜潰瘍ではC35%程度でアカントアメーバが原因とされるが14),本検討では,放射状角膜神経炎など典型所見を認め,アカントアメーバ角膜炎の治療が奏効した症例はC2例のみであり,その他の症例では放射状角膜神経炎は認めず,抗菌治療が奏効したことからアカントアメーバの関与はないと考えた.一方,70歳代では,MGD合併例や緑内障点眼使用例の割合が高く(37.5%),コリネバクテリウムやMRSAの検出も増加していた.加齢に伴いマイボーム腺機能は低下しCMGD有病率が増加すること15),緑内障点眼使用によりCMGDの有病率が増加することも報告されている6).加齢や緑内障点眼に合併するCMGDによって常在細菌叢が変化し,角膜感染症の発症に影響している可能性が推測された.今回,結膜.培養検査で細菌が検出された症例では,50歳未満の症例のC90.5%,50歳以上の症例のC80.6%がグラム陽性球菌であり,既報(51.7%)と比べても割合が高く12),この結果も眼表面の常在細菌による角膜感染の割合が増加している可能性を示していると考えられた.一方,角膜擦過培養の検出率はC30.0%であり,既報(36.1%)と比べてやや低い結果であった12).当院では,感染性角膜潰瘍の患者の多くが紹介患者であり,すでに前医で抗菌点眼薬の処方が開始されており細菌の検出率が低くなった可能性が考えられた.角膜の感染部位別では,中央部の感染でキノロン系,セフェム系抗菌薬への耐性菌の割合が高く,上下方の感染と比べ治癒までの日数が有意に長い結果となった.これは,既報と同様に16),角膜中央部は,無血管なため生体反応が生じにくく,感染が成立,拡大しやすいためと考えられた.一方,角膜上方および下方は眼瞼縁との距離が近く,前部眼瞼縁の睫毛や皮膚,後部眼瞼縁のマイボーム腺や眼瞼結膜などの常在細菌叢の変化の影響を受けやすいと想像された.また,ドライアイやCMGDで生じうる角膜下方の慢性的な点状表層角膜症には17),細菌が感染しうると考えられる.緑内障患者では,緑内障点眼による角膜上皮バリア機能障害1)が感染のきっかけになる可能性,緑内障点眼によるCMGDの影響でマイボーム腺内常在細菌叢の変化が生じている可能性などが考えられる.ただし,緑内障点眼薬の長期使用による眼表面常在細菌叢の変化6)については,緑内障点眼の多くに防腐剤として添加されている塩化ベンザルコニウムの影響である可能性が指摘されている2).一般的に緑内障に対する点眼治療は両眼に点眼されている場合が多く,片眼の細菌性角膜潰瘍として治療を開始する際,僚眼のCMGDの有無や角膜上皮障害の有無などの所見が患眼の治療の手がかりとなる.今回の検討により,とくに高齢者の角膜感染症では,加齢に伴う常在細菌叢の変化に加え,緑内障点眼やCMGDなどの患者背景を考慮し,常に耐性菌の可能性を念頭において診療にあたることが重要であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)InoueCK,COkugawaCK,CKatoCSCetal:OcularCfactorsCrele-vanttoanti-glaucomatouseyedrop-relatedkeratoepitheli-opathy.JGlaucomaC12:480-485,C20032)DeguchiH,KitagawaK,KayukawaKetal:ThetrendofresistanceCtoCantibioticsCforCocularCinfectionCofCStaphylo-coccusCaureus,Ccoagulase-negativeCstaphylococci,CandCCorynebacteriumCcomparedCwithC10-yearsprevious:ACretrospectiveCobservationalCstudy.CPLoSCOneC13:Ce0203705,C20183)AokiCT,CKitazawaCK,CDeguchiCHCetal:CurrentCevidenceCforCCorynebacteriumConCtheCocularCsurface.CMicroorgan-isms9:254,C20214)SuzukiCT,CSutaniCT,CNakaiCHCetal:TheCmicrobiomeCofCthemeibumandocularsurfaceinhealthysubjects.InvestOphthalmolVisSciC61:18,C20205)DongX,WangY,WangWetal:Compositionanddiver-sityCofCbacterialCcommunityConCtheCocularCsurfaceCofCpatientsCwithCmeibomianCglandCdysfunction.CInvestCOph-thalmolVisSci60:4774-4783,C20196)KimJH,ShinYU,SeongMetal:EyelidchangesrelatedtoCmeibomianCglandCdysfunctionCinCearlyCmiddle-agedCpatientsCusingCtopicalCglaucomaCmedications.CCorneaC37:C421-425,C20187)OhtaniS,ShimizuK,NejimaRetal:Conjunctivalbacte-riaC.oraCofCglaucomaCpatientsCduringClong-termCadminis-trationCofCprostaglandinCanalogCdrops.CInvestCOphthalmolCVisSciC58:3991-3996,C20178)天野史郎:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科C27:627-631,C20109)木下茂:OcularSurfaceの神秘を探る.臨眼58:2086-2994,C200410)BanCY,CDotaCA,CCooperCLJCetal:TightCjunction-relatedCproteinexpressionanddistributioninhumancornealepi-thelium.ExpEyeResC76:663-669,C200311)FleiszigCSMJ,CKrokenCAR,CNietoCVCetal:ContactClens-relatedcornealinfection:Intrinsicresistanceanditscom-promise.ProgRetinEyeResC76:100804,C202012)阿久根穂高,佛坂扶美,門田遊ほか:2012年からC2年間の久留米大学眼科における感染性角膜炎の報告.あたらしい眼科37:220-222,C202013)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現状─.日眼会誌110:961-971,C200614)宇野敏彦,福田昌彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.日眼会誌115:107-115,C201115)DenCS,CShimizuCK,CIkedaCTCetal:AssociationCbetweenCmeibomianglandchangesandaging,sex,ortearfunction.CorneaC25:651-655,C200616)稲富勉:角膜感染所見を見落とさない所見の見方と考え方.あたらしい眼科19:971-977,C200217)鈴木智:マイボーム腺機能不全に関連した角膜症.COCULISTAC59:42-47,C2018***