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増殖糖尿病網膜症に対する25 ゲージ,27 ゲージ 小切開硝子体手術成績の比較

2022年3月31日 木曜日

《第26回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科39(3):350.353,2022c増殖糖尿病網膜症に対する25ゲージ,27ゲージ小切開硝子体手術成績の比較関根伶生重城達哉佐藤圭司四方田涼佐々木寛季向後二郎高木均聖マリアンナ医科大学眼科学教室CComparativeStudyof25-vs27-GaugeVitrectomyforProliferativeDiabeticRetinopathyReioSekine,TatsuyaJujo,KeijiSato,RyoYomoda,HirokiSasaki,JiroKogoandHitoshiTakagiCDepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicineC目的:増殖糖尿病網膜症(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)に対するC25ゲージ(G)・27CG硝子体手術成績を比較し,27CG硝子体手術の安全性と有効性について検討する.方法:対象はC2012年C12月.2019年C12月に聖マリアンナ医科大学病院にてCPDRに対し単一術者が手術を施行し,6カ月以上経過観察が可能であったC128眼.25CG群とC27CG群に分け,視力,眼圧,手術時間,再手術の有無を後ろ向きに検討した.結果:25G群はC46眼,27G群はC82眼であった.logMAR矯正視力は両群とも術前と比較し,術後C1,3,6カ月で有意に改善が得られたが,各時期において両群間での有意差は認められなかった.手術時間はC25CG群C98.0分,27CG群C80.6分,再手術はC25CG群でC11眼(24%),27G群で8眼(10%)といずれも有意にC27CG群が少なかった(各Cp<0.05).結論:PDRにおいて,27CG硝子体手術の成績はC25CGと同等であったが,再手術が少なく有用である可能性が示唆された.CPurpose:Tocomparativelyexaminethesurgicaloutcomesof25-gauge(G)vs27-Gvitrectomyforprolifera-tivediabeticretinopathy(PDR).Methods:Thisretrospectivestudyinvolved128eyeswithPDRthatunderwentvitrectomybetweenDecember2012andDecember2019.Visualacuity(VA),intraocularpressure,operationtime,andCpostoperativeCcomplicationsCwereCcomparedCbetweenCtheCtwoCgroups.CResults:ThereCwereC46CeyesCinCtheC25-Ggroupand82eyesinthe27-Ggroup.Bothgroupsshowedsigni.cantimprovementinlogarithmofminimalangleofresolution(logMAR)correcteddistanceVA(CDVA)at1-,3-,and6-monthspostoperative.However,nosigni.cantCdi.erenceCinClogMARCCDVACwasCfoundCbetweenCtheCtwoCgroups.CBetweenCtheC25-andC27-GCgroups,Cthemeanoperationtimewassigni.cantlyshorterinthe27-Ggroup(98.0vs80.6minutes,respectively)andthereoperationratewassigni.cantlylowerinthe27-Ggroup(24%Cvs10%,respectively).Conclusion:Thesurgicaloutcomesof27-GvitrectomyforPDRwereequivalenttothoseof25-Gvitrectomy,yetwithashorteroperationtimeandalowerreoperationrate.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(3):350.353,C2022〕Keywords:25ゲージ硝子体手術,27ゲージ硝子体手術,増殖糖尿病網膜症,矯正視力,手術時間.25-gaugevit-rectomy,27-gaugevitrectomy,proliferativediabeticretinopathy,correcteddistancevisualacuity,operation-time.Cはじめに27ゲージ(G)硝子体手術はC2010年にCOshimaらにより開発された1).27CG硝子体手術は従来のC25CGと比較し術後炎症の軽減,創部の早期治癒,切開創を無縫合で終えることが可能であることから,結膜が温存され眼表面の涙液層の安定や術後逆起乱視の低減化により術後早期の視機能改善が得られると考えられている2,3).また,術後の創口閉鎖不全による低眼圧や眼内炎などの術後合併症発生リスクが少なく,安全な手術方法とされている.Mitsuiらは網膜前膜においてC27CGとC25CGを前向きに比較検討し,同等の治療成績を認め,27CGの安全性と有効性を報告している4).さらに裂孔原性網膜.離においても網膜復位率・術後視力・術後眼圧とも〔別刷請求先〕重城達哉:〒216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生C2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室Reprintrequests:TatsuyaJujo,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicine,2-16-1Sugao,Miyamae-ku,Kawasaki-shi,Kanagawa216-8511,JAPANC350(88)にC27CGはC25CGと同等の成績であったと報告され5),今後も27CG硝子体手術はその有用性から,複雑な疾患まで適応が拡大していくと考えられる.増殖糖尿病網膜症(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)は新生血管の破綻により硝子体出血をきたし,硝子体手術が必要となることが多々ある.また,線維血管性増殖膜が形成されると硝子体と網膜との間に強固な癒着が生じ,牽引性網膜.離が発生するために術中に多くの処理を要することがある.27CG硝子体カッターはC25CGと比較し開口部が先端にあり,増殖膜と網膜の間隙に滑り込ませるなどして,より繊細な作業を行えるために,PDRにおいてC27CG硝子体手術は有用である可能性が考えられる.そこで今回の目的はCPDRに対し手術を施行したC25G,27G硝子体手術の手術成績を後ろ向きに比較することでPDRにおけるC27CG硝子体手術の安全性と有効性について検討した.CI対象および方法本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会の承認を得たものである.PDRの診断にて手術加療が必要である患者に対し,手術の必要性や合併症の可能性について十分に説明を行い,インフォームド・コンセントを得て,患者と医師が署名した手術同意書を作成したうえで行った.対象はC2012年C12月.2019年C12月に聖マリアンナ医科大学病院にてCPDRに対し硝子体手術を施行され,6カ月以上経過観察が可能であったC128眼.手術は全例同一術者により施行された.術者は眼科歴C20年以上で増殖糖尿病網膜症の手術に豊富な経験をもつ者である.硝子体手術はCConstellationCVisionSystem(AlconCLabo-ratories)を使用した.2012年C12月.2015年C9月の手術は25G硝子体システムを使用し,2015年C10月.2019年C12月の手術はC27CG硝子体システムを使用した.手術は硝子体手術単独または水晶体再建術併用硝子体術を行い,全例で強膜内陥術の併用は行わなかった.手術終了時のタンポナーデは必要に応じ,六フッ化硫黄ガス(SFC6),八フッ化プロパンガス(CC3F8),シリコーンオイル(SO)に置換し手術を終了した.検討項目は術前,術後C1カ月,3カ月,6カ月時の矯正視力と眼圧,再手術の有無,タンポナーデの有無とし,25CG群とC27CG群とに分け,データを収集した.検討方法は小数視力をClogMAR換算し,各群で術前後の視力と眼圧をWelchのCt検定にて比較検討し,各群間での視力と眼圧をMann-WhitneyのCU検定を用いて検討を行った.各群間での再手術の有無とタンポナーデの有無についてはCc2検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.II結果患者背景を表1に示した.25G群はC46眼,27G群はC82眼であった.性別はC25CG群で男性C31眼,女性C15眼であり,27CG群は男性C58眼,女性C24眼であった.平均年齢はC25CG群でC54.6C±14.4,27G群でC56.5C±11.7であった.眼軸長は25G群でC23.6C±1.0Cmm,27CG群でC23.9C±1.3Cmmであった.増殖膜の処理を行った症例数はC25CG群でC33眼,27CG群で47眼であった.術前眼圧はC25G群でC14.3C±2.9CmmHg,27G群でC14.4C±3.5CmmHgであった.術前ClogMAR矯正視力はC25G群でC0.93C±0.60,27CG群でC0.95C±0.68とそれぞれの項目で両群間に有意差は認められなかった(p>0.05).視力の推移を図1に示した.術C1カ月後のClogMAR矯正視力はC25G群でC0.64C±0.48,27G群でC0.65C±0.65,術C3カ月後はC25G群でC0.54C±0.49,27G群でC0.54C±0.50,術C6カ月後ではC25CG群はC0.48C±0.55,27CG群はC0.43C±0.44であり両群ともにベースラインと比較し術C1カ月後から有意な改善を得ることができた(各Cp<0.01).しかし,各時点でのlogMAR矯正視力に両群間で有意差は認められなかった.術後翌日,1,3,6カ月後の眼圧の推移を図2に示した.術後翌日の眼圧はC25G群でC14.9C±7.6CmmHg,27CG群でC15.7±7.4CmmHgであり,いずれの群においても術前眼圧と有意差は認められなかった.術後C1カ月はC25CG群でC13.8C±3.0CmmHg,27CG群でC14.5C±4.2CmmHg,術後C3カ月はC25CG群でC14.3C±3.6mmHg,27G群でC14.6C±3.3mmHg,術後C6カ月は25CG群で13.9C±3.1mmHg,27CG群で15.0C±3.6CmmHgであり,ベースラインと比較して有意差は認められなかった.また,各時点での両群間においても眼圧に有意差は認められなかった.術翌日の低眼圧(<5CmmHg)はC25CG群でC2眼(4.3%),27CG群でC3眼(3.7%)であり,低眼圧発生の割合も有意差は認められなかった(p=0.85).手術方法,タンポナーデ,手術時間,再手術件数について表2に示した.手術方法はC25G群で白内障併用がC27眼,27CG群でC39眼であり,有意差は認めなかった.タンポナーデを行った症例はC25G群でCSFC6がC5眼,CC3F8がC4眼,SOがC6眼であり,27CG群でCSFC6がC9眼,SOがC6眼でタンポナーデを行った割合に有意差は認めなかった.手術時間は25G群でC98.0C±46.1分,27CG群でC80.6C±37.7分と有意に27CG群が短かった.術後C6カ月以内に再手術を要した症例はC25G群でC11眼,27G群でC8眼であり有意にC27G群が少なかった.CIII考按本研究結果においてC25CGとC27CGともに術後矯正視力は術前より有意に改善を得ることができたが,ゲージ間での有意な差は認められなかった.Naruseらは網膜上膜において術表1患者背景25CG群27CG群Cpvalue性別男性(眼)C31C58C0.69女性(眼)C15C24年齢(年)C54.6±14.4C56.5±11.7C0.26眼軸(mm)C23.6±1.0C23.9±1.3C0.10増殖膜処理(眼)C33C47C0.11術前眼圧(mmHg)C14.3±2.9C14.4±3.5C0.43術前ClogMAR矯正視力C0.93±0.60C0.95±0.68C0.42各項目において,両群間に有意差はなかった(p>0.05).C27G25G*27G25G*1.2*16.5****16logMAR矯正視力0.80.60.4眼圧(mmHg)15.51514.51413.5130.212.50pre1day1M3M6Mpre1M3M6M経過期間経過期間図2眼圧の推移図1視力の推移*p>0.05.両群とも術前と比べ術C1,3,6カ月の眼圧に有*p<0.05.両群とも術前と比べて術C1,3,6カ月で有意に意差はなかった.また術前,術後C1日,1カ月,3カ月,6視力は改善していた.また術前,術後1,3,6カ月時点で両カ月において両群間で眼圧の有意差はなかった.群間に視力は有意差を認めなかった.表2術中,術後転帰の比較術式タンポナーデ手術時間(分)再手術C25CGCPEA+IOL+VIT:2C7眼VIT単独:1C9眼CSF6:5眼CC3F8:4眼SO:6眼C98.0±46.18眼C27CGCPEA+IOL+VIT:3C9眼VIT単独:4C3眼CSF6:9眼SO:6眼C80.6±37.711眼p値C0.23C0.07C0.04C0.03各群で術式,タンポナーデの有無に有意差はなかった(p>0.05).手術時間,再手術件数は有意にC27CG群が少なかった(p<0.05).PEA:phacoemulsi.cation,IOL:intraocularClens,VIT:vitrectomy,CSF6:sulfurChexa.uoride,C3F8:per.uoropropane,SO:siliconoil.1カ月後の視力改善はC25CGと比較し,C27CGが早期に得るこであることが示唆された.とができると報告した6).その要因としてはゲージが小さい眼圧は両群間において,各時期で有意差は認められなかっことにより術後炎症が抑えられること,また角膜形態に与えた.また,術翌日の低眼圧の発症率はC25CG群がC4.3%,2C7CGる影響を少なくすることがあげられる.しかし,CNaruseら群がC3.7%であり有意差は認められなかった.CTakashinaらはCPDRにおいてはC25CGとC27CGで視力の改善に有意差はなはC27CGトロカールの斜め穿刺により,C25CGの同様の方法とかったと報告した7).今回の筆者らの結果も同様であり,比較し,術後低眼圧の発症率を低下させたと報告した8).筆PDRにおけるC27CG硝子体手術はC25CGと同等に有用な術式者らの結果では有意差は認められなかったものの,術翌日の眼圧に関してはC27CG群のほうが安定していた.これらより,PDRの硝子体手術においてもC25CGと同様にC27CGにて安定した術後眼圧を得ることができたと考えられた.術中および術後転帰に関しては,両群間でタンポナーデを行った症例数に有意差はなかったが,手術時間,6カ月以内の再手術件数は25CG群と比較しC27CG群が有意に少なかった.硝子体切除効率はC27CGと比較し,ゲージの大きいC25CGのほうが高く,より硝子体処理を短時間で行うことが可能である4,6).本研究は前向き無作為ではないため患者背景の影響は考慮しなくてはならないが,27CGとC25CGで増殖膜の処理を行った症例数に有意差がなかったため,増殖膜の処理の有無による手術時間への影響は少なかったと考えられる.しかし,PDRにおいてC27CG群で有意に手術時間を短縮できた要因としては,27CGカッター,鑷子,剪刀のほうがC25CGと比較し繊細な操作を行うことができるため,増殖膜の処理時間を短縮することができたこと,また術中網膜.離を起こす症例を少なくすることができた可能性があると考えられた.そしてその優位性が再手術の件数を少なくすることができた要因ではないかと考えられた.しかし,各群間での増殖膜の範囲,処理時間の検討を行えていないため今後の検討課題とした.術者のClearningcurveの影響については,手術技術に関して経験豊富な術者が施行したことから,その影響は少ないと考えられる.また,27CG硝子体システム移行後のC3カ月以内の手術成績とそれ以降の手術成績とを比較し,結果の傾向に違いは認められなかったため,その点の影響も少なかったと考えられた.増殖糖尿病網膜症に対するC27CG硝子体手術は従来のC25CGと同等の手術成績を得ることができ,有用な手術方法である可能性が示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)OshimaCY,CWakabayashiCT,CSatoCTCetal:AC27-gaugeCinstrumentsystemfortransconjunctivalsuturelessmicro-incisionCvitrectomyCsurgery.COphthalmologyC117:93-102,C20102)GozawaCM,CTakamuraCY,CMiyakeCSCetal:ComparisonCofCsubconjunctivalCscarringCafterCmicroincisionCvitrectomyCsurgeryusing20-,23-,25-and27-gaugesystemsinrab-bits.ActaOphthalmolC95:e602-e609,C20173)TekinK,SonmezK,InancMetal:EvaluationofcornealtopographicCchangesCandCsurgicallyCinducedCastigmatismCaftertransconjunctival27-gaugemicroincisionvitrectomysurgery.IntOphthalmolC38:635-643,C20184)MitsuiCK,CKogoCJ,CTakedaCHCetal:ComparativeCstudyCofC27-gaugeCvsC25-gaugeCvitrectomyCforCepiretinalCmem-brane.Eye(Lond)C30:538-544,C20165)OtsukaCK,CImaiCH,CFujiiCACetal:ComparisonCofC25-andC27-gaugeCparsCplanaCvitrectomyCinCrepairingCprimaryCrhegmatogenousretinaldetachment.JOphthalmol2018:C7643174,C20186)NaruseCS,CShimadaCH,CMoriR:27-gaugeCandC25-gaugeCvitrectomyCdayCsurgeryCforCidiopathicCepiretinalCmem-brane.BMCOphthalmolC17:188,C20177)NaruseCZ,CShimadaCH,CMoriR:SurgicalCoutcomeCofC27-gaugeCandC25-gaugeCvitrectomyCdayCsurgeryCforCpro-liferativeCdiabeticCretinopathy.CIntCOphthalmolC39:1973-1980,C20198)TakashinaCH,CWatanabeCA,CTsuneokaH:PerioperativeCchangesoftheintraocularpressureduringthetreatmentofepiretinalmembranebyusing25-or27-gaugesuture-lessCvitrectomyCwithoutCgasCtamponade.CClinCOphthalmolC11:739-743,C2017***

Accurus®とConstellation®の硝子体手術成績の比較

2014年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科31(9):1392.1395,2014c(00)1392(144)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科31(9):1392.1395,2014cはじめに近年の硝子体手術の進歩は目覚しく,従来の20ゲージ(G)手術から経結膜的に手術可能な23Gもしくは25Gシステムを使用した小切開硝子体手術が主流となり,より低侵襲な手術が可能となった1.8).また,硝子体手術装置も従来は2,500cpm程度の回転数が限界であったが,2011年からわが国においても5,000cpmまで高速回転が可能な新たな手術装置であるConstellationRが承認され使用可能となった.さらに,新たに7,500cpmの高速回転といった手術装置や27Gシステムといった新たな器械や器具の開発・改良も進んできている.筆者はすでにAccurusRとConstellationRの手術成績について検討し報告しているが,症例数も少なく両手術器械の差を確認することができなかった9).そのため今回は,その後に症例数を重ねて再度比較検討を行ったので報告する.〔別刷請求先〕廣渡崇郎:〒145-0065東京都大田区東雪谷4-5-10公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院眼科Reprintrequests:TakaoHirowatari,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanHealthandTreatmentCorporationEbaraHospital,4-5-10Higashi-Yukigaya,Ota-ku,Tokyo145-0065,JAPANAccurusRとConstellationRの硝子体手術成績の比較廣渡崇郎*1澁谷洋輔*1石田友香*2秋澤尉子*3*1公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院眼科*2東京医科歯科大学眼科学教室*3東京都職員共済組合シティ・ホール診療所眼科ComparisonofAccurusRandConstellationRinVitreousSurgeryTakaoHirowatari1),YosukeShibuya1),TomokaIshida2)andYasukoAkizawa3)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanHealthandMedicalTreatmentCooperationEbaraHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalandDentalUniversity,3)DepartmentofOphthalmology,CityHallClinic,MutualAssociationforTokyoMetropolitanGovernmentEmployees目的:AccurusRからConstellationRへ手術器械を変更したことによる硝子体手術成績を検討する.対象および方法:2010年5月から2013年12月までに荏原病院で硝子体手術を施行した連続する94例108眼で,手術器械としてAccurusR(A群),およびConstellationR(C群)を使用した.結果:術前視力はA群がlogMAR1.02,C群がlog-MAR0.89で,術後視力はA群logMAR0.29,C群がlogMAR0.26であった.平均手術時間はA群83.8分,C群63.9分であった.合併症はA群5.0%,C群4.4%に医原性裂孔を認めたが,術後低眼圧,網膜.離は認めなかった.結論:AccurusRからConstellationRへ手術器械を変更することにより,安全性を損なうことなく,より短時間での硝子体手術が可能となった.Purpose:ToevaluatetheefficacyandsafetyofAccurusRandConstellationRforvitreoussurgery.Patientsandmethods:Investigatedwere108eyesof94patientswhounderwentvitrectomy40eyeswithAccurusR(GroupA)and68eyeswithConstellationR(GroupC).Durationofsurgery,preoperativecorrectedvisualacuity,post-operativebestcorrectedvisualacuityandcomplications,includingiatrogenicretinalbreak,postoperativelowintra-ocularpressureandretinaldetachmentwerecompared.Results:ThemeandurationofsurgeryforGroupsAandCwas83.8and63.9minutes,respectively.ThemeanpreoperativecorrectedvisualacuityofGroupsAandCwaslogMAR1.02and0.89,andthepostoperativebest-correctedvisualacuitywaslogMAR0.29and0.26,respectively.Iatrogenicretinalbreakoccurredin5.0%ofGroupAand4.4%ofGroupsC.Noeyehadpostoperativelowintraoc-ularpressureorretinaldetachment.TherewasnosignificantdifferencebetweenGroupAandCregardingdura-tionofsurgery,visualacuityorcomplications.Conclusion:Resultscomfirmedtheefficacyandsafetyofthesevit-rectomysurgerysystems.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(9):1392.1395,2014〕Keywords:硝子体手術,手術時間,視力,合併症.vitreoussurgery,operationperiod,visualacuity,complica-tion. I対象および方法対象は2010年5月から2013年12月までの間に荏原病院で同一術者による硝子体切除術を受けた連続する94例108眼で,平均年齢は66.3±10.2歳(28.87歳),男性62眼,女性46眼であった.全手術において十分な説明を行い文書で同意を得た.硝子体手術装置は前半の40眼においてはAlcon社のAccurusRを(A群),後半の68眼においてはAlcon社のConstellationR(C群)を使用した.白内障同時手術はA群30眼(75%),C群44眼(65%)で施行した(表1).手術開始直前に2%キシロカイン3mlにて球後麻酔を行った.術式は全例3ポートで行い,25G小切開硝子体切除システム(Alcon社egdeplusR)を用い,無縫合で手術を終了した.手術用顕微鏡はZeiss社LumeraTRを使用した.中心硝子体切除には広角観察用レンズOculusBIOMIIRを使用し,周辺硝子体切除は強膜圧迫による直視下観察にて行った.黄斑上膜や内境界膜.離などの黄斑処理はHOYA社HHVRメニスカスレンズ下にて行った.硝子体手術におけるカットレートおよび吸引圧は,中心硝子体切除と周辺硝子体切除においてA群およびC群ともそれぞれ異なる設定を用いた(表2).白内障同時手術は2.8mmの上方強角膜3面切開から超音波乳化吸引術を行い,6mmワンピースアクリルレンズ(AlconAcysofRIQ)を.内に挿入した.検討項目は,両群における術前矯正視力および術後最高矯正視力,手術時間,術中および術後合併症とした.なお,視力は小数視力表にて測定し,指数弁はlogMAR1.85,手動弁はlogMAR2.30,光覚弁は2.90と換算して統表1同時・単独手術の割合A群(眼)C群(眼)全体40(100%)68(100%)単独手術10(25%)24(35%)同時手術30(75%)44(65%)計処理を行った10,11).統計学的検討はFisher直接確率法を用い,p<0.05を有意とした.II結果硝子体手術の適応となった原因疾患で最も多いのは増殖糖尿病網膜症36眼(33.3%)で,ついで黄斑上膜26眼(24.1%),裂孔原性網膜.離18眼(16.7%)であった(表3).術前視力はA群全体ではlogMAR1.02±0.69(平均±標準偏差),単独手術ではlogMAR1.02±0.72,同時手術ではlogMAR1.03±0.6.3であった.C群全体ではlogMAR0.89±0.73,単独手術ではlogMAR0.99±0.87,同時手術ではlogMAR0.81±0.60であった.平均術後最高矯正視力はA群ではそれぞれlogMAR0.29±0.43,0.24±0.34,0.42±0.64であった.また,C群ではそれぞれlogMAR0.26±0.48,0.32±0.54,0.22±0.46であった.また,各視力の最大値,最小値,中央値は別表に示す(表4).術前矯正視力および術後最高矯正視力の差については,すべての群で有意な差はみられなかった.手術時間はA群全体で平均83.8±28.5分,単独手術は63.7±17.0分,同時手術は90.5±28.6分であった.対してC群全体で平均63.9±25.2分,単独手術は55.6±26.5分,同時手術は68.7±24.2分であり,全体,単独手術および同時手術のすべてにおいてC群はA群と比較し有意に手術時表2各硝子体手術装置の設定AcuurusR(A群)ConstellationR(C群)中心硝子体切除灌流圧37mmHg30mmHg吸引圧300mmHg400mmHg回転数1,400cpm5,000cpm周辺硝子体切除灌流圧37mmHg30mmHg吸引圧100mmHg200mmHg回転数2,400cpm5,000cpm表3症例の内訳A群全体A群単独手術A群同時手術C群全体C群単独手術C群同時手術(眼)(眼)(眼)(眼)(眼)(眼)増殖糖尿病網膜症1721519127黄斑上膜72519118裂孔原性網膜.離4041477硝子体出血422202網膜静脈閉塞症321523黄斑円孔312404硝子体混濁101413眼内炎110110(145)あたらしい眼科Vol.31,No.9,20141393 表4術前矯正視力・術後最高矯正視力術前矯正視力術前最大値術前最小値術前中央値術後最高矯正視力術後最大値術後最小値術後中央値A群全体1.02±0.69.0.202.301.000.29±0.43.0.201.000.30A群単独手術1.02±0.720.002.301.000.24±0.34.0.200.700.20A群同時手術1.03±0.63.0.202.001.000.42±0.64.0.101.000.30C群全体0.89±0.73.0.202.901.000.26±0.48.0.202.300.10C群単独手術0.99±0.87.0.202.300.800.32±0.54.0.202.300.20C群同時手術0.81±0.60.0.202.901.000.22±0.46.0.202.000.10(logMAR)表5手術時間全体同時手術単独手術A群(分)83.8±28.590.5±28.663.7±17.0C群(分)63.9±25.268.7±24.255.6±26.5間の短縮が得られた(p<0.01)(表5).合併症については,術中医原性網膜裂孔形成,術後網膜.離および術後低眼圧の発生頻度について検討した.なお,術後低眼圧は5mmHg以下の状態と定義した.術中医原性裂孔形成はA群で2眼(5.0%),C群で3眼(4.4%)で発生した.術後網膜.離および術後低眼圧は両群において0眼(0.0%)であり,両群間ですべての合併症において有意な差はなかった.III考按今回,筆者らが比較検討したConstellationRとAccurusRの手術時間についてはすでに複数の報告がなされている.柳田の報告では硝子体カッターの駆動時間のみを計測・比較し,Rizzoの報告では眼内に硝子体カッターを挿入した時点から抜去した時点までの時間を比較している12,13).どちらの報告においてもAccurusRよりもConstellationRのほうが,有意に手術時間が短くなっており,高速回転硝子体カッターとdutycycleの最適化が硝子体切除に要する時間の短縮に寄与していることが示唆される.また,Murrayらは,AccurusRからConstellationRに手術装置を変更したことにより,1件当たりの手術時間と患者1人当たりの手術室滞在時間が短縮され,結果として1日当たりの硝子体手術件数が増加したと報告している14).また,安藤らも同様にAccurusRからConstellationRに手術装置を変更することによりstage3の黄斑円孔に対する手術時間の短縮が得られたと報告している15).今回の筆者らの検討では,実際の手術における時間短縮の効果を検討する観点から,さまざまな症例に対して執刀開始から手術終了までの手術全体の時間を検討した.今回の報告と最も条件が類似していると考えられるMurraryらの報告と同様に,統計学的に有意な手術時間の減少が得られた.このことからMurrayらが述べているように,手術時間の短縮による手術侵襲の軽減のみならず,結果的に業務の効率化も得られていると考えられる.手術時間に関しては,C群はA群と比較して単独手術では8.1分,同時手術では21.8分の短縮であった.この手術時間短縮効果の差については,同時手術を行った症例の内訳に影響を受けた可能性が考えられる.対象症例のうち,糖尿病網膜症と裂孔原性網膜.離については,増殖組織の処理や.離網膜に対する処理が必要なため,より繊細な手術手技が必要とり,手術時間が長くなる傾向にあったが,同時手術を行った症例のうち上記2疾患の割合はA群で同時手術を行った30例中19例(63.3%),C群で同時手術を行った44例中14例(31.8%)と差があった.そのため,同時手術のほうが単独手術よりも手術時間の短縮が得られた結果となったと考えられる.つぎに合併症については,Rizzoの報告において術中医原性裂孔形成がAccurusRでの21.7%からConstellationRでの1.7%と劇的に減少したとされている.これは,高速回転硝子体カッターによる網膜への牽引の軽減によるものと考えられる.筆者らの検討でもConstellationRにおいても4.4%と低い発生率であったが,両群に有意な差はみられなかった.これはRizzoの報告と比較してAccurusRでの術中医原性裂孔形成が5.0%と低いためと考えられる.また,今回両群とも良好な視力改善効果が得られた.これは両群とも安全かつ低侵襲な手術手技により良好な結果が得られたと考えられる.新規の硝子体手術装置であるConstellationRは高性能な手術装置であり,手術時間の短縮などによる手術侵襲の軽減や,合併症頻度の低下などの点で期待されているが,今回の検討では他の報告と同様に,従来の手術装置であるAccurusRと比較し,安全性を損なうことなく手術時間短縮の観点から優位性が確認できた.文献1)FujiiGY,DeJuanEJr,HumayumMSetal:Anew25-gaugeinstrumentsystemfortransconjunctivalsuture-lessvitrectomysurgery.Ophthalmology109:1807-1812,(146) 20022)RecchiaFM,ScottIU,BrownGCetal:Small-gaugeparsplanavitrectomy:areportbytheAmericanAcademyofOphthalmology.Ophthalmology117:1851-1857,20103)HubschmanJP,GuptaA,BourlaDHetal:20-,23-,and25-gaugevitreouscuttersperformanceandcharacteristicsevaluation.Retina28:249-257,20084)LakhanpalRR,HumayumMS,deJuanEJretal:Outcomesof140consecutivecasesof25-gausetransconjunctivalsurgeryforposteriorsegmentdisease.Ophthalmology112:817-824,20055)IbarraMS,HermelM,PrennerJLetal:Longer-termoutcomesoftransconjunctivalsutureless25-gaugevitrectomy.AmJOphthalmol139:831-836,20056)OshimaY,ShimaC,WakabayashiTetal:Microincisionvitrectomyanintravitrealbevacizumabasasurgicaladjuncttotreatdiabetictractionretinaldetachment.Ophthalmology116:927-938,20097)佐藤達彦,恵美和幸,坂東肇ほか:増殖硝子体網膜症に対する硝子体手術成績─25ゲージシステム使用例と20ゲージシステム使用例での後ろ向き比較.日眼会誌116:100-107,20128)MuraM,TanSh,DeSmetMD:Useof25-gaugevitrecctomyinmanagementofprimaryrhegmatogenousretinaldetachment.Retina29:1299-1304,20099)廣渡崇郎,石田友香,秋澤尉子:高速回転硝子体切除装置を用いた硝子体手術成績.臨眼67:697-700,201310)Schulze-BonselK,FeltgenN,BurauHetal:Visualacuities“handmotion”and“countingfingers”canbequantifiedwiththeFreiburgvisualacuitytest.InvestOphthalmolVisSci47:1236-1240,200611)GroverS,FishmanGA,AndersonRJetal:Visualacuityimpairmentinpatientswithretinitispigmentosaatage45yearsorolder.Ophthalmology106:1780-1785,199912)RizzoS,Genovesi-EbertF,BeltingC:Comparativestudybetweenastandard25-gaugevitrectomysystemandanewultrahigh-speed25-gaugesystemwithdutycyclecontrolinthetreatmentofvariousvitreoretinaldisease.Retina31:2007-2013,201113)柳田智彦,清水公也:25ゲージ硝子体手術におけるアキュラスとコンステレーション硝子体切除時間の比較.あたらしい眼科29:869-871,201214)MurrayTG,LaytonAJ,TongKBetal:Transistiontonoveladvancedintegratedvitrectomyplatform:comparisionofthesurgicalimpactofmovingfromtheAccurusvitrectomyplatformtotheConstellationVisionSystemformicroincisionalvitrectomysurgery.ClinOphthalmol7:367-377,201315)安藤友梨,田中秀典,谷川篤弘ほか:25ゲージ黄斑円孔手術におけるアキュラスRとコンステレーションRの比較.あたらしい眼科30:1181-1184,2013***(147)あたらしい眼科Vol.31,No.9,20141395