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カプサイシン処置による角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果

2013年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科30(9):1309.1313,2013cカプサイシン処置による角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果竹治康広中嶋英雄香川陽人浦島博樹篠原久司大塚製薬株式会社赤穂研究所EffectofRebamipideOphthalmicSuspensiononCapsaicin-inducedCornealEpithelialDamageinRatsYasuhiroTakeji,HideoNakashima,YotoKagawa,HirokiUrashimaandHisashiShinoharaAkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.レバミピド点眼液は,角膜および結膜においてムチン産生促進作用を有するドライアイ治療薬である.今回,カプサイシン処置を施したラットにおける角膜上皮障害および涙液安定性の低下に対する効果について検討した.カプサイシン処置を行ったラットに2%レバミピド点眼液または基剤を1日4回,15日間点眼した.角膜上皮障害はフルオレセイン染色スコアにより評価した.また,涙液量,涙液層破壊時間(BUT)および涙液中Muc5AC量を測定した.カプサイシン処置により,角膜上皮障害,涙液量の低下およびBUTの短縮が観察された.レバミピド点眼液により,経時的なフルオレセイン染色スコアの低下が観察され,さらに涙液量の回復,BUTの延長および涙液中Muc5AC量の増加が認められた.レバミピド点眼液は,カプサイシン処置を施したラットにおける涙液の減少を伴う角膜上皮障害を抑制することが明らかとなり,この作用は涙液中のムチン増加を介して涙液保持能を高めることにより,涙液安定性を向上させた可能性が示唆された.Rebamipideophthalmicsuspensionisatherapeuticagentfordryeyethatpromotestheproductionofmucininthecorneaandconjunctiva.Thisstudyinvestigatedtheeffectofrebamipideophthalmicsuspensiononcornealepithelialdamageanddecreaseintearstabilityinrats.Rebamipideophthalmicsuspension(2%)orvehiclewasadministeredtopically4timesdailyfor15daystoratstreatedwithcapsaicin.Cornealepithelialdamagewasevaluatedbyscoringfluoresceinstaining.Tearvolume,breakuptime(BUT)andtearMuc5ACweremeasured.Theadministrationofcapsaicininducedcornealepithelialdamage,decreaseintearvolumeanddepressionoftearstability.Rebamipideophthalmicsuspensionshowedtime-dependentimprovementofcornealepithelialdamage,restorationoftearvolume,shorteningofBUTandincreaseintearMuc5AC.Rebamipideophthalmicsuspensionwasshowntoimprovecapsaicin-inducedcornealepithelialdamageinrats.TheactionofrebamipideophthalmicsuspensionmayimprovetearstabilitybyenhancingtearretentionviaincreasedtearMuc5AC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(9):1309.1313,2013〕Keywords:レバミピド点眼液,涙液減少,角膜上皮障害,涙液安定性,ムチン.rebamipideophthalmicsuspension,tear-deficiency,cornealepithelialdamage,tearstability,mucin.はじめにドライアイは涙液の状態から涙液減少型と涙液蒸発亢進型の2つに大別される.涙液減少型ドライアイは,Sjogren症候群や,術後の知覚神経の障害などの要因により,涙腺からの涙液の供給の低下を生じ,涙液減少に伴い涙液交換の低下,浸透圧上昇など涙液の質の悪化がひき起こされる1).涙液蒸発亢進型ドライアイは,内的および外的なさまざまな要因による涙液の安定性低下が原因である.涙液安定性低下の因子の一つとして,眼表面のムチン減少による角膜表面の水濡れ性低下があげられる.実際,ドライアイ患者において,分泌型ムチン2)および膜型ムチン3)発現が低下していることが報告されている.〔別刷請求先〕竹治康広:〒678-0207兵庫県赤穂市西浜北町1122-73大塚製薬株式会社赤穂研究所Reprintrequests:YasuhiroTakeji,AkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,1122-73Nishihamakita,Ako,Hyogo678-0207,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(109)1309 また,これらドライアイの発症・増悪のコア・メカニズムとして,涙液層の安定性の低下に伴い角膜上皮に障害がひき起こされ,上皮の水濡れ性が低下して,再び涙液層の安定性低下へと続く悪循環が問題とされている.レバミピド点眼液は,角膜および結膜においてムチン産生促進作用を有するドライアイ治療薬である.N-アセチルシステイン処置によるムチン被覆障害モデルにおいて,レバミピド点眼液は,ムチン被覆障害,涙液安定性および角結膜表面の微細構造を改善することを報告している4,5).このムチン被覆障害モデルでは涙液量の低下は認められていないことより,レバミピド点眼液は,ムチンの減少が原因で涙液安定性が低下したドライアイには有効であると考えられるが,涙液が減少したドライアイにおける角膜上皮障害に対する効果については明らかにされていない.今回,カプサイシン処置を施したラットを用いて,涙液の刺激性分泌の低下を伴う角膜上皮障害および涙液安定性の低下に対するレバミピド点眼液の効果について検討した.I実験方法1.カプサイシンの処置カプサイシンの処置は香川らの方法6)を参考にした.生後4日齢のWister/ST雌性ラット(日本エスエルシー)に50mg/kgのカプサイシン(和光純薬)を皮下投与することによりモデルを作製した.カプサイシンは10%エタノール(和光純薬),10%Tween80(Sigma)を含有した生理食塩水で溶解させ使用した.正常群は,非処置とした.カプサイシン投与4週後に,涙液量測定および角膜フルオレセイン染色を行い,群分けを実施した.本研究は,「大塚製薬株式会社動物実験指針」を遵守し実施した.2.薬物の投与カプサイシンを処置したラットのうち,レバミピド群には2%レバミピド点眼液を,コントロール群には基剤を1回5μL,1日4回,15日間点眼した.正常群は点眼を実施しなかった.3.涙液量および涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)の測定涙液量の測定は,1.5mm幅に切断したシルメル試験紙を下側結膜に挿入し,1分間保持した.測定は点眼開始13日目の薬物点眼30分後に実施した.BUTの測定は,既報を一部改変した7).0.2%フルオレセイン溶液を5μL点眼し,強制的に瞬きさせた後,細隙灯顕微鏡(SL-7E,TOPCON)を用いて測定した.測定は点眼開始14日目の点眼30分後に実施した.4.角膜上皮障害の観察ラットの角膜上皮障害の観察は麻酔下で行った.麻酔は吸入麻酔剤であるイソフルラン(フォーレン吸入麻酔液,ア1310あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013表1スコア評価基準スコア角膜の染色状態0点状染色がない(正常)1点状染色が疎である2点状染色が密でもなく疎でもない3点状染色が密であるボット)を実験動物ガス麻酔システム(片山化学)を用いて実施した.1%フルオレセイン溶液を1μL点眼した後,余分な染色液を生理食塩水で洗浄した.共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡(F-10,NIDEK)にて角膜を撮影し,スコア評価は角膜を上部・中央部・下部に分け,各領域の染色状態を戸田らの方法8)に従って0.3点にスコア化し,角膜全体を9点満点とした(表1).角膜上皮障害の観察は,すべて盲検下で点眼前,点眼5,10および15日後に実施した.5.涙液中ムチンMuc5AC量の測定点眼開始13日目にシルメル試験紙を用いて涙液を採取した.シルメル試験紙をあらかじめ0.15mLリン酸緩衝生理食塩水〔PBS(.)〕が入ったチューブに入れ,撹拌することにより抽出した.遠心(15,000rpm,10分,4℃)後,上清を0.1mL採取し,Muc5AC量をRatMuc5ACELISAkit(CUSABIOBIOTECH)を用いて測定した.6.統計解析データは平均値±標準誤差で示し,統計解析は,SAS(Release9.1,SASInstituteJapan,Ltd)を用いて実施した.角膜上皮障害について,コントロール群とレバミピド群の間で繰り返し測定による分散分析を,各時間における2群間の違いを対応のないt-test(両側)を実施した.涙液量,BUTおよび涙液中Muc5ACについて,正常群とコントロール群の間およびコントロール群とレバミピド群の間で対応のないt-test(両側)を行った.いずれの検定も5%を有意水準として解析した.II結果1.角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果について,点眼開始15日目の典型的な角膜フルオレセイン染色の観察像を図1に示す.コントロール群では,正常群に比べ多数の点状染色が出現したのに対し,レバミピド群では点状染色は減少した.図2はフルオレセイン染色スコアの経時変化を示し,正常群のスコアは最大でも開始10日目の1.2±0.3であり,観察期間を通して低い値を示した.一方,コントロール群に関して,開始前のスコア(4.9±0.3)は正常群に比べ明らかに高く,開始15日目においても3.5±0.5を示し,観察期間を通して高いスコアを維持した.レバミピド群は,経時的な染色(110) 図1角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果点眼開始15日目の角膜フルオレセイン染色像を示す.コントロール群では,正常群に比べ,点状の染色が観察された.一方,レバミピド群では,点状の染色は減少した.正常ラットコントロールレバミピドカプサイシン投与ラット:正常ラット##**0123456涙液量(mm)6543:コントロール:レバミピド051015*角膜フルオレセイン染色スコア#*210正常ラットコントロールレバミピド時間(日)図2角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)*:p<0.05vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.#:p<0.05vsコントロール〔繰り返し測定による分散分析〕.スコアの低下を示し,点眼開始10および15日後のレバミカプサイシン投与ラット図3涙液量に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)点眼開始13日目に測定した.##:p<0.01vs正常〔対応のないt-test(両側)〕.**:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.ピド群のスコア(2.0±0.6,1.7±0.6)は,コントロール群のスコア(3.9±0.5,3.5±0.5)に比べて有意に低下した.2.涙液量およびBUTに対するレバミピド点眼液の効果涙液量およびBUTに対するレバミピド点眼液の効果の結果を図3および図4に示す.正常群の涙液量は4.4±0.2mmを示すのに対し,コントロール群の涙液量は2.6±0.1mmに有意に低下した.それに対してレバミピド群は3.1±0.1mmに有意に増加させた.BUTに関して,正常群は10.0±0.7秒を示したのに対し,コントロール群では5.9±0.5秒に有意に短縮した.レバミピド群のBUT(8.9±0.8秒)は,コントロール群に対して有##**024681012BUT(秒)正常ラットコントロールレバミピド意な延長を示した.3.涙液中Muc5ACに対するレバミピド点眼液の効果涙液中Muc5ACに対するレバミピド点眼液の効果の結果を図5に示す.コントロール群のMuc5AC量(19.7±2.8pg)は,正常群(26.6±3.5pg)に対して有意な差はないが低値を示した.一方,レバミピド群(52.4±9.3pg)は,コントロー(111)カプサイシン投与ラット図4BUTに対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)点眼開始14日目に測定した.##:p<0.01vs正常〔対応のないt-test(両側)〕.**:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131311 涙液中Muc5AC量(pg)706050403020100NS##正常ラットコントロールレバミピドカプサイシン投与ラット図5涙液中Muc5AC量に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=11.12)点眼開始13日目に採取した涙液を測定した.##:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.NS:有意差なしvs正常〔対応のないt-test(両側)〕.ル群(19.7±2.8pg)に対して有意な増加を示した.III考按涙液の減少を伴う角膜上皮障害の治療は,涙液量を増加させることであり,人工涙液あるいはヒアルロン酸ナトリウム点眼液が用いられている.しかし,人工涙液の頻回点眼は,涙液の希釈を誘導し眼表面に悪影響を及ぼすこと9),涙液が極度に減少している患者に対してヒアルロン酸ナトリウム点眼液の効果が低いこと10)が報告されており,涙液の量だけでなく質の改善も必要と考えられる.そこで,涙液の減少を伴う角膜上皮障害および涙液安定性に対するレバミピド点眼液の効果について検討した.涙液分泌の低下を示す動物モデルとしては,涙腺を摘出したモデル11)や,副交感神経遮断薬であるスコポラミンの投与により涙腺からの涙液分泌を遮断するモデル12)が報告されているが,今回筆者らは,涙腺自身は正常な機能を保っているカプサイシン処置モデルを用いた.カプサイシンは知覚神経の伝達物質であるサブスタンスPの枯渇をひき起こすため,知覚神経からの栄養物質の欠如,および刺激による涙液分泌の低下を伴う角膜上皮障害を発症することが報告されている6,13).筆者らは,本モデルにおいて涙液量低下および角膜上皮障害だけでなく,涙液安定性の指標となるBUTも短縮していることを確認した.Pengらの報告によれば正常ラットのBUTは14.3.15.3秒であり14),筆者らは既報と大きな違いがない測定系において,カプサイシンモデルにおけるBUT短縮を明らかにした.レバミピド点眼液を反復投与すると,角膜上皮障害が改善することが明らかになった.以前,レバミピド点眼液はムチ1312あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013ン被覆障害モデルにおいて,角結膜表面の微細構造を改善し,それには角結膜のムチン増加が関与していることを報告している5).本モデルにおいても涙液中Muc5ACの増加が観察されていることより,上皮障害改善作用にはムチン増加が関与していると推測される.さらに,涙液量の回復とBUTの延長を示していることより,レバミピド点眼液は眼表面のムチン増加を介して,涙液保持能の向上および角膜上皮障害の改善により安定した涙液層の形成を促したことが示唆された.なお,レバミピド点眼液は本モデルにおける知覚の低下に対して効果を示さないことを確認しており,涙液量の増加および角膜上皮障害の改善は,知覚神経自身の機能の改善を介したものではないと考えられる.LASIK(laserinsitukeratomileusis)術後の知覚神経の障害に伴う涙液分泌低下,BUTの短縮は,ドライアイの要因の一つとされていること15)から,カプサイシン処置ラットを用いた今回の結果より,レバミピド点眼液は涙液の刺激性分泌の減少に起因した角膜上皮障害が生じているドライアイ患者に対しても有効な治療薬として期待される.文献1)TheInternationalDryEyeWorkShop:Thedefinitionandclassificationofdryeyedisease:reportoftheDefinitionandClassificationSubcommitteeoftheInternationalDryEyeWorkShop.OculSurf5:291-297,20072)ArguesoP,BalaramM,Spurr-MichaudSetal:DecreasedlevelsofthegobletcellmucinMUC5ACintearsofpatientswithSjogrensyndrome.InvestOphthalmolVisSci43:1004-1011,20023)ArguesoP,Spurr-MichaudS,RussoCLetal:MUC16mucinisexpressedbythehumanocularsurfaceepitheliaandcarriestheH185carbohydrateepitope.InvestOphthalmolVisSci44:2487-2495,20034)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,20045)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20126)KagawaY,ItohS,ShinoharaH:Investigationofcapsaicin-inducedsuperficialpunctatekeratopathymodelduetoreducedtearsecretioninrats.CurrEyeRes38:729735,20137)JainP,LiR,LamaTetal:AnNGFmimetic,MIM-D3,stimulatesconjunctivalcellglycoconjugatesecretionanddemonstratestherapeuticefficacyinaratmodelofdryeye.ExpEyeRes93:503-512,20118)TodaI,TsubotaK:Practicaldoublevitalstainingforocularsurfaceevaluation.Cornea12:366-367,19939)大竹雄一郎,山田昌和,佐藤直樹ほか:点眼薬中の防腐剤による角膜上皮障害について.あたらしい眼科8:15991603,1991(112) 10)高村悦子:ドライアイのオーバービュー.FrontiersinDryEye1:65-68,200611)FujiharaT,MurakamiT,NaganoTetal:INS365suppresseslossofcornealepithelialintegritybysecretionofmucin-likeglycoproteininarabbitshort-termdryeyemodel.JOculPharmacolTher18:363-370,200212)DursunD,WangM,MonroyDetal:Amousemodelofkeratoconjunctivitissicca.InvestOphthalmolVisSci43:632-638,200213)FujitaS,ShimizuT,IzumiKetal:Capsaicin-inducedneuroparalytickeratitis-likecornealchangesinthemouse.ExpEyeRes38:165-175,198414)PengQH,YaoXL,WuQLetal:EffectsofextractofBuddlejaofficinaliseyedropsonandrogenreceptorsoflacrimalglandcellsofcastratedratswithdryeye.IntJOphthalmol3:43-48,201015)TodaI:LASIKandtheocularsurface.Cornea27:S7076,2008***(113)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131313

ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果

2012年8月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科29(8):1147.1151,2012cウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果中嶋英雄浦島博樹竹治康広篠原久司大塚製薬株式会社赤穂研究所TherapeuticEffectofRebamipideOphthalmicSuspensiononCornealandConjunctivalDamageinMucin-removedRabbitEyeModelHideoNakashima,HirokiUrashima,YasuhiroTakejiandHisashiShinoharaAkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.ウサギの眼表面ムチン被覆障害モデルにおける眼表面の障害に対するレバミピド点眼液の効果について検討した.本モデルに1%レバミピド点眼液または基剤を1日6回,2週間点眼した後,電子顕微鏡により角結膜表面微細構造を観察するとともに,コムギ胚芽レクチンを用いた酵素免疫法で角結膜のムチン様糖蛋白質を定量した.また,ドライアイ観察装置を用いて涙液安定性についても評価した.レバミピド点眼液は角結膜表面の微絨毛/微ひだを修復し,また,角結膜のムチン様糖蛋白質を有意に回復させた.さらに,涙液層におけるドライスポットの出現を抑制したことから,涙液安定性の改善が示唆された.レバミピド点眼液は角結膜表面の微細構造の修復作用と角結膜ムチンの増加作用により,涙液層を安定化させたと考えられた.Thisstudyinvestigatedtheeffectofrebamipideophthalmicsuspensiononcornealandconjunctivaldamageinthemucin-removedrabbiteyemodel.Rebamipideophthalmicsuspension(1%)orvehicleonlywastopicallyappliedtothesubjecteyes6timesdailyfor2weeks.Thefinestructureofthecornealandconjunctivalsurfacewasexaminedusingtransmissionandscanningelectronmicroscopy.Cornealandconjunctivalmucinsweremeasuredbyenzyme-linkedlectinassaywithwheatgermagglutinin.Tearfilmstabilitywasevaluatedusinganophthalmoscopefordryeye.Rebamipideophthalmicsuspensionstimulatedrecoveryofmicrovilli/microplicaeonthecornealandconjunctivalsurfaceandsignificantlyincreasedcornealandconjunctivalmucinsinmucin-removedrabbiteyes.Inaddition,rebamipideophthalmicsuspensionsuppressedtheappearanceofdryspots,whichsuggestsimprovedtearfilmstability.Theseresultssuggestthatrebamipideophthalmicsuspensionincreasescornealandconjunctivalmucinsandinducesrecoveryofthefinestructureoftheocularsurface,therebyimprovingtearfilmstability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(8):1147.1151,2012〕Keywords:レバミピド,ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデル,N-アセチルシステイン,微絨毛/微ひだ,ムチン様糖蛋白質,涙液安定性.rebamipide,mucin-removedrabbiteyemodel,N-acetylcysteine,microvilli/microplicae,mucinlikeglycoprotein,tearfilmstability.はじめにドライアイはさまざまな要因による涙液および眼表面上皮における慢性疾患である.その病態の成立には涙液と角結膜上皮の悪循環,およびその悪循環をひき起こすリスクファクターが関与し,その結果として生じる涙液安定性の低下はドライアイのコアメカニズムの一つであると捉えられている1).涙液は油層と水/ムチン層からなり,眼表面のムチンは角結膜表面の親水性を高め,角膜表面での安定な涙液層の形成に寄与するとされる.ドライアイでは涙液および眼表面のムチンが減少すると報告されており2,3),ドライアイの治療において眼表面のムチンを増加させることの重要性が指摘されている.角結膜表面に発達している微絨毛/微ひだはその先端〔別刷請求先〕中嶋英雄:〒678-0207兵庫県赤穂市西浜北町1122-73大塚製薬株式会社赤穂研究所Reprintrequests:HideoNakashima,AkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,1122-73Nishihamakita-cho,Ako-shi,Hyogo678-0207,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(121)1147 に膜結合型ムチンが局在するとされ4),ドライアイにおいては微絨毛/微ひだが減少・不整化していること5.7)や,微絨毛/微ひだの減少に依存して涙液安定性が低下することが報告されている8).新規ドライアイ治療薬であるレバミピド点眼液は,N-アセチルシステインを点眼することにより眼表面のムチンを除去したウサギ(眼表面ムチン被覆障害モデル)の角結膜においてムチン様物質を増加させ,ローズベンガル染色スコアを改善させることがこれまでに報告されている9).今回,ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルの角結膜表面微細構造,角結膜のムチン様糖蛋白質および涙液安定性について検討するとともに,レバミピド点眼液の効果について検討した.I実験方法1.眼表面ムチン被覆障害モデルの作製およびレバミピド点眼液の投与雌性NZW(NewZealandWhite)ウサギ(北山ラベス)に,10%N-アセチルシステイン溶液(和光純薬,溶媒:生理食塩液)を1日6回点眼し,眼表面ムチン被覆障害モデルを作製した.N-アセチルシステイン処置翌日より1%レバミピド点眼液または基剤を1回50μL,1日6回,両眼に2週間点眼した.なお,本研究は「大塚製薬株式会社動物実験指針」を遵守して実施した.2.角結膜表面微細構造の観察はじめに,N-アセチルシステイン処置後,非点眼で3日,1週間および2週間経過後の角膜表面微細構造について検討し,つぎに,N-アセチルシステイン処置翌日から,レバミピド点眼液または基剤を2週間点眼した後の角膜および結膜表面の微細構造について検討した.ペントバルビタールナトリウム注射液(共立製薬)の静脈内投与によりウサギを安楽殺し,中央部角膜および上部球結膜を採取した.2%パラフォルムアルデヒドと2%グルタルアルデヒドの混合液に続いて2%四酸化オスミウムにより固定した後,樹脂包埋し,超薄切片を作製した.酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛による二重染色とカーボン蒸着を行った後,透過型電子顕微鏡(TEM;JEM-1200EX,日本電子)で観察した.また,同様に固定した角膜に,真空乾燥,オスミウムコーティングを施し,走査型電子顕微鏡(SEM;S-800S,日立)で観察した.3.角結膜におけるムチン様糖蛋白質の測定角膜上皮細胞は機械的.離により,上部球結膜組織は直径10mmに打ち抜き採取した.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)/10%Dulbecco’sPBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液に30℃で一昼夜インキュベートして可溶化した後,カラム(SepharoseCL-4B,Bio-Lad)を用いてゲル濾過し,ボイドボリュームに溶出した高分子蛋白質を含む溶液をムチン様糖蛋白質サンプルとした.サンプルまたは検量線用のウシ顎下1148あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012腺ムチン(和光純薬)を96穴マイクロプレートに入れ,一晩乾燥させて固相化した.ペルオキシダーゼ標識コムギ胚芽レクチン(ホーネンコーポレーション)と37℃で1時間,続いてo-dianisidine(Sigma)と37℃で1時間反応させた後,マイクロプレートリーダー(MolecularDevices)にて405nmの吸光度を測定した.4.涙液安定性の評価N-アセチルシステイン処置後点眼開始前および2週間後にドライアイ観察装置DR-1R(興和)を用いて涙液層におけるドライスポットの出現を評価した.ウサギに強制瞬目を3回施した後,角膜中央部表面をDR-1Rで観察し,倍率12倍で写真撮影した.5.統計解析角膜および結膜のムチン様糖蛋白質に関してSAS(SASInstituteJapan)を用いて5%を有意水準として解析した.正常眼とN-アセチルシステイン処置眼(基剤),およびNアセチルシステイン処置眼の基剤と1%レバミピド点眼液について対応のないt検定(両側)を実施した.II結果1.角結膜表面の微絨毛.微ひだに対する作用正常眼の角膜表面は多くの微絨毛/微ひだを有していたのに対し,N-アセチルシステイン処置3日後では微絨毛/微ひだが消失し,1週間および2週間後においても微絨毛/微ひだの再形成は認められなかった(図1).N-アセチルシステイン処置後に1%レバミピド点眼液または基剤を2週間投与した角膜表面をTEMで観察したところ,1%レバミピド点眼液群では基剤群と比較して多くの微絨毛/微ひだが認められた(図2a,b).また,SEMによる観察においても,1%レバミピド点眼液群の角膜表面には基剤群と比較して微絨毛/微ひだが密に認められた(図2c,d).結膜に関しても,1%レバミピド点眼液群は基剤群と比較して発達した微絨毛/微ひだが認められた(図3).2.角結膜におけるムチン様糖蛋白質に対する作用レバミピド点眼液の角膜におけるムチン様糖蛋白質に対する作用を検討した結果を図4aに示す.N-アセチルシステイン処置2週間後の角膜ムチン様糖蛋白質は正常眼と比較して有意に低値を示したのに対し(p<0.01),1%レバミピド点眼液は減少した角膜ムチン様糖蛋白質を有意に増加させた(p<0.01).結膜に対する結果を図4bに示す.角膜同様,N-アセチルシステイン処置により結膜ムチン様糖蛋白質は有意に減少し(p<0.01),1%レバミピド点眼液は減少した結膜ムチン様糖蛋白質を有意に増加させた(p<0.01).3.涙液安定性に対する作用正常眼では均一な涙液層が広がっていた(図5a)のに対し,N-アセチルシステイン処置翌日からドライスポットが(122) ..μ….μ….μ….μ….μ….μ….μ….μ….μ..図3N.アセチルシステイン処置による結膜表面微細構造の障害に対する1%レバミピド点眼液の効果a:正常,b:基剤投与2週間後,c:1%レバミピド点眼液投与2週間後.図1N.アセチルシステイン処置による角膜表面微細構造の変化a:正常,b:処置3日後,c:同1週間後,d:同2週間後...μ….μ….μ….μ..図2N.アセチルシステイン処置による角膜表面微細構造の障害に対する1%レバミピド点眼液の効果a,c:基剤投与2週間後(a:TEM像,c:SEM像).b,d:1%レバミピド点眼液投与2週間後(b:TEM像,d:SEM像).(123)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121149 4,000**##4,0003,0003,000**##ムチン様糖蛋白質量(ng)ムチン様糖蛋白質量(ng)2,0002,0001,0001,00000正常基剤1%レバミピド点眼液N-アセチルシステイン処置図4角膜および結膜のムチン様糖蛋白質量に対する1%レバミピド点眼液の作用a:角膜,b:結膜.各値は10例の平均値±標準誤差を示す.**p<0.01,##p<0.01,対応のないt検定(両側).正常基剤1%レバミピド点眼液N-アセチルシステイン処置図5N.アセチルシステイン処置後の涙液安定性に対する1%レバミピド点眼液の効果a:正常,b:N-アセチルシステイン処置翌日(薬剤投与前)c:基剤投与2週間後,d:1%レバミピド点眼液投与2週間後図中の矢印はドライスポットを示す..(,)出現し,涙液安定性の低下が示唆された(図5b).1%レバミピド点眼液群で観察されたドライスポットは基剤群と比較して軽微であり(図5c,d),レバミピド点眼液による涙液層の安定化が示唆された.III考按ドライアイでは涙液と角結膜上皮の悪循環が生じており,特に,眼表面ムチンの減少や角結膜表面微細構造の障害により生じる涙液安定性の低下はドライアイの発症・増悪におけるコアメカニズムの一つであると考えられている1).実際に,ムチン溶液を点眼することにより角膜上皮障害が改善されることがドライアイ患者10)やモデル動物11)で報告されている.また,結膜上皮の微絨毛/微ひだ構造の不整化がSjogren症候群6)や移植片対宿主病7)によるドライアイ,非Sjogren症候群のドライアイ患者5,8)において報告されている.今回,ウサギの眼表面ムチン被覆障害モデルにおいて,角結膜表面の微絨毛/微ひだの消失,角膜および結膜におけるムチン様糖蛋白質の減少および涙液安定性の低下が認められたことから,本モデルはドライアイの特徴を有するモデルであることが示唆された.さらに,本モデルに対するレバミピド点眼液の作用を検討したところ,レバミピド点眼液は角結膜表面の微絨毛/微ひだを修復させることが明らかとなった.また,ムチンが高分子であることを考慮してゲル濾過により高分子の蛋白質のみを抽出し,ムチン特有の糖鎖と結合することが知られているレクチンを用いてムチン様物質を定量した結果,レバミピド点眼液は角膜および結膜のムチン様糖蛋白質を増加させることが明らかとなり,眼表面のムチンを増加させる作用が示唆された.さらに,レバミピド点眼液は涙液安定性の指標となるドライスポットの出現を抑制したことから,涙液層を安定化させる作用をもつことが示唆された.以上のことから,レバミピド点眼液はドライアイ患者においても角結膜表面の微細構造を修復するとともに,眼表面にムチンを供給することで角結膜上皮表面の親水性を高め,安定な涙液層を形成させることが予想され,臨床の場においてもドライアイ治療薬として有用であると考えられた.1150あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(124) 文献1)横井則彦:ドライアイ.あたらしい眼科25:291-296,20082)NakamuraY,YokoiN,TokushigeHetal:Sialicacidinhumantearfluiddecreasesindryeye.JpnJOphthalmol48:519-523,20043)CorralesRM,NarayananS,FernandezI:Ocularmucingeneexpressionlevelsasbiomarkersforthediagnosisofdryeyesyndrome.InvestOphthalmolVisSci52:83638369,20114)GipsonIK:Distributionofmucinsattheocularsurface.ExpEyeRes783:79-88,20045)RivasL,ToledanoA,AlvarezMIetal:Ultrastructuralstudyoftheconjunctivainpatientswithkeratoconjunctivitissiccanotassociatedwithsystemicdisorders.EurJOphthalmol8:131-136,19986)KoufakisDI,KarabatsasCH,SakkasLIetal:ConjunctivalsurfacechangesinpatientswithSjogren’ssyndrome:atransmissionelectronmicroscopystudy.InvestOphthalmolVisSci47:541-544,20067)TatematsuY,OgawaY,ShimmuraSetal:MucosalmicrovilliindryeyepatientswithchronicGVHD.BoneMarrowTransplant47:416-425,20128)CennamoGL,DelPreteA,ForteRetal:Impressioncytologywithscanningelectronmicroscopy:anewmethodinthestudyofconjunctivalmicrovilli.Eye(Lond)22:138-143,20089)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,200410)ShigemitsuT,ShimizuY,IshiguroK:Mucinophthalmicsolutiontreatmentofdryeye.AdvExpMedBiol506:359-362,200211)ShigemitsuT,ShimizuY,MajimaY:Effectsofmucinophthalmicsolutiononepithelialwoundhealinginrabbitcornea.OphthalmicRes29:61-66,1996***(125)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121151

シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(93)17010910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(12):17011707,2008c〔別刷請求先〕白石敦:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部感覚機能医学講座視機能外科学分野Reprintrequests:AtsushiShiraishi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity,454Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPANシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討白石敦原祐子山口昌彦大橋裕一愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野EvaluationofOcularSurfaceInuenceandSafetyinExtendedWearofNewlyApprovedSiliconeHydrogelContactLensAtsushiShiraishi,YukoHara,MasahikoYamaguchiandYuichiOhashiDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity1週間連続装用のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)がわが国で認可・発売されたが,連続装用については,まだ安全性を懸念する声も多い.そこで,SHCL連続装用の安全性を検証する目的で,1日使い捨てソフトコンタクトレンズ(SCL),頻回交換型SCL,1カ月交換の終日装用SHCLとの間で多角的な比較評価試験を行った.結果として,実用視力,前眼部所見ならびに涙液安定性に関する1週間連続装用SHCLの評価は,終日装用された他の従来型素材レンズ群と同等であった.一方,角膜厚に関しては,1カ月交換の終日装用SHCLと同様,変化は認められず,従来型素材レンズの終日装用で有意の増加がみられたのとは対照的であった.使用後のレンズの一部からコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が検出されたが,細菌量はいずれも臨床的に問題のないレベルであり,細菌の検出率(陽性率)は1カ月交換の終日装用SHCLと比較して有意に低かった.他方,付着脂質量は従来素材のSCLよりも有意に多く,逆に,付着蛋白質量は,1日使い捨てSCLよりも有意に少なく,1カ月交換の終日装用SHCLよりも多かった.今回の検討から,新しい1週間連続装用のSHCLの安全性,有用性は,従来素材のSCLあるいは終日装用SHCLと遜色ないものと考えられる.Aone-weekextended-wearsiliconehydrogelcontactlens(1wSHCL)hasbeenmarketedinJapan,thoughnegativeopinionsremainregardingthesafetyofextendedwear.Thisstudywasdesignedtoexaminetheclinicalsafetyandutilityofthe1wSHCLincomparisonwiththreedailywearcontrols:adailydisposablesoftcontactlens(ddSCL),a2-weekreplacementsoftcontactlens(2wSCL)oramonthlysiliconehydrogelcontactlens(mSHCL).Nosignicantdierenceswereobservedbetween1wSHCLandthecontrolgroupsintermsofvision,slitlampndingsandtearstabilityanalysis.SignicantcornealswellingswereobservedinthetwohydrogelCLgroups,butnotinthetwoSHCLgroups.SomecoagulasenegativeStaphylococci(CNS)speciesweredetectedinbacteriologicalexaminationofwornlenses,thoughallwerefarbelowbacterialinfectionlevel.Thebacterialpositiveratiointhe1wSHCLgroupwassignicantlylowerthanthatinthemSHCLgroups.Asforlensdeposits,bothSHCLsabsorbedsignicantlymorelipidsthandidtheddSCLgroup.The1wSHCLabsorbedsignicantlylessproteinthandidtheddSCL,butsignicantlymorethanthemSHCL.Theseresultsindicatethatextendedwearofthis1wSHCLisassafeandusefulasexistingdailywearSHCLsorSCLs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(12):17011707,2008〕Keywords:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ,連続装用,角膜肥厚,涙液安定性,細菌,脂質,蛋白質.siliconehydrogelcontactlens,extendedwear,cornealswelling,tearstability,bacteria,lipids,proteins.———————————————————————-Page21702あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(94)はじめに連続装用コンタクトレンズ(CL)は,CLユーザーにとって利便性が高いため,潜在的なニーズはかなりあるが,終日装用レンズに比較して,合併症,特に細菌性角膜炎の発生頻度が高いとの報告が多数みられる点で,眼科医は処方に消極的な傾向がある1,2).近年,高い酸素透過性と光学特性を有し,蛋白質の付着しにくいシリコーンハイドロゲル(siliconehydrogel:SH)CLが登場した.これを受けて欧米では,1カ月連続装用SHCLの安全性が臨床的に検証され35),生活様式の面からオーバーナイト装用を必要とするユーザーを中心に定着しつつある.一方,連続装用期間は欧米より短いものの,1週間連続装用のSHCLがわが国においても承認・発売された.そこで,この新しいSHCLの1週間連続装用による安全性を,従来素材の終日装用ソフトCL(SCL),および終日装用SHCLを対照に,種々の角度から比較検討した.I対象および方法1.対象2007年1月より10月まで愛媛大学病院眼科にて募集したSCL既装用の成人ボランティア60名を対象に以下に述べる比較試験を行った.しかし,表1に示すように被験レンズの1週間の連続装用の適性予備試験においては8名(14.7%)が不適ないし本人理由により試験に不参加となり,1名が検査期間中に麦粒腫を発症,1名が検査不備のため本試験を中止した(表1).結果,検査を完了した計50例100眼(男性30例,女性20例,平均年齢23.2±SD1.8)について統計学的に検討を行った.2.コンタクトレンズ被験レンズとして1週間連続装用SHCL(BalalconA,含水率36%,以下PV),対照レンズとして1日使い捨てSCL(EtalconA,含水率58%,以下OA),2週間終日装用SCL(HEMA,含水率39%,以下MP)および1カ月終日装用SHCL(LotoralconA,含水率24%,以下OX)を用いた.3.方法試験は臨床検査と非臨床検査とに分けて行った.臨床検査では,レンズの使用期間の違いに基づいて試験Aと試験B表1応募者・参加者と中止理由人数理由応募者60予備試験不適8SPK1,本人理由7本試験参加者52本試験中止2麦粒腫1,角膜の古疵1終了者50SPK:点状表層角膜症.表2臨床試験デザイン症例数試料臨床検査名称素材FDAGroup製造元使用方法試験期間(日)使用日数(1枚当り)使用枚数(サイクル)装用時間(1日当り)ケアシステム試験A30PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用57571─MP(メダリストプラスR)ハイドロゲル1B&L終日装用57571>6hエーオーセプトOA(ワンデーアキュビューR)ハイドロゲル4J&J終日装用57157>6h─試験B20PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用2028574─OX(O2オプティクス)SH1Ciba終日装用263126311>6hエーオーセプト試験APV,OA,MPを3種交使用(不同)PVMPOA試験BPV,OXを交使用(不同)PVPVPVPVOX1W1W1W1W1Month最終週のレンズ回収レンズ回収:72時間以上注)1Week1W1Wレンズ回収レンズ回収最終日のレンズを回収レンズ止レンズ止レンズ止レンズ止図1試験概要のシェーマ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081703(95)の2群に分け,それぞれクロスオーバー法で実施した.試験Aでは,被験レンズ(PV),および対照レンズとして従来素材のSCLの2週間終日装用レンズ(MP)と1日使い捨て(OA)レンズを,それぞれの用法に準じ,1週間ずつ使用した.また,試験Bでは,被験レンズとSHCL終日装用(OX)の対照レンズとをそれぞれの用法に準じ,1カ月ずつ使用した(表2).終日装用は1日6時間以上の装用とし,ケアシステム(MPとOXのみ)には過酸化水素消毒を使用した.予備試験と本試験の間,および本試験での被験レンズと対照レンズの間には,72時間以上の裸眼でのwash-out期間を設けた(図1).非臨床検査では,検査日に装用していたレンズを回収し,右眼のレンズを細菌検査に,左眼のレンズを蛋白質/脂質定量検査に供用した.ただし,蛋白質および脂質の付着は装用中の蓄積によると考えられるため,本来の使用期間より短いMPに関しては蛋白質/脂質定量検査から除外した.4.評価基準a.臨床検査①細隙灯顕微鏡検査:試験レンズ装用前,および試験最終日にレンズを外した直後の前眼部所見を観察した.角膜上皮障害に対してはフルオレセイン染色を用いて拡大率12倍にて観察し,上,下,左,右,中央の5象限の染色スコアを03点(角膜全体では015点)で評価した.②実用視力検査:装用開始直後と試験最終日に試験レンズ装用下での実用視力測定を行った.実用視力測定は,海道らの方法に則り1分間の平均視力を遠方視力(FVA),対数視力(logMAR)として評価し,測定開始時の視力に対する実用視力の比を視力維持率(VMR)として評価した6).③角膜厚検査:連続装用では酸素供給不足から起こる角膜浮腫の発生が懸念される.そこで,装用開始前および試験最終日にレンズを外した直後の角膜中心厚をPentacam(Oculus社)で測定した.④涙液検査:装用開始直後と試験最終日にTearStabilityAnalysisSystem(TSAS,Tomey社)を用いてBreak-UpIndex(BUI)を測定し,レンズ上の涙液の安定性を評価した.裸眼でのBUIは初回検査日に測定した.b.非臨床検査(回収レンズの検査)①微生物検査:試験終了時にレンズ(右眼)を回収し,(財)阪大微生物病研究会(吹田市)にて,細菌の同定・定量を行った.検査法をフローチャートに示す(図2).②蛋白質定量:試験終了時にレンズ(左眼)を回収し,(株)東レリサーチセンター生物科学第2研究室(鎌倉市)にて,付着蛋白質ないし脂質の分析・定量を行った.ただし,全数ではなく,構成比を考慮してレンズごとに1017検体数を抜粋して実施した.蛋白質の測定は検体レンズを加水分解し,ニンヒドリン比色法によるアミノ酸分析法にて行った.具体的には,検体に6mol/lの塩酸400μlを添加し,真空封圧下110℃で22時間加水分解した.ついで,6mol/l塩酸を別の試験管に移し,減圧乾固した後,水100μlに溶解,フィルター濾過後,アミノ酸分析計(日立L-8500形)で測定した.こうして得られたアミノ酸総量を検体レンズ1枚当たりの蛋白質量とし検体(右眼レンズケースレンズ液)菌ビーズり試験管に移すボルテックス1min菌生理塩水で希×10-1,10-2原液の残り全量発育菌の同定35℃,24~48時間培養菌増殖時には5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgarに再分離35℃,1~7日間培養臨床用チオグリコレート培地原液および各希釈検体50??5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgar35℃,24~48時間培養集落数をカウントし,サンプル中の菌数(CFU/m?)に換算発育菌を同定★直接分離培養,増菌培養ともに菌発育を認めない場合は“陰性”★?????????,CNS,?????????????,????????spp.を指定菌として同定指定菌以外は詳細な同定は行わない直接分離培養増菌培養図2微生物検査方法(提供:阪大微生物病研究会坂本雅子氏)———————————————————————-Page41704あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(96)た.③脂質定量:検体レンズから溶媒抽出された脂質をメチルエステルに変換するガスクロマトグラフィー(GC)定量分析にて測定した.具体的には,検体にクロロホルム/メタノール(1/1)2mlを添加して振盪し,溶媒抽出操作を行った.溶媒を除去した抽出脂質試料をメタノリシスするため,ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1mg/mlメタノール溶液を200μl,および5%塩酸・メタノール溶液1mlを加え,70℃で3時間加熱反応させて,試料中の脂肪酸および脂肪酸エステルを脂肪酸メチルエステルに変換した.ついで,ヘキサン1mlを加えてヘキサン層を回収し,ペンタデカン酸メチル0.01%クロロホルム溶液0.2mlを加えて再溶解したものをガスクロマトグラフHP5890型(HewlettPackard社)にてGC分析した.こうして得られた脂肪酸総量を検体レンズ1枚当たりの脂質量とした.II結果1.臨床検査a.前眼部所見試験Aにおいては,角膜上皮障害の発現眼数はOA20眼,MP22眼,PV23眼であり,角膜上皮障害発症眼における平均スコアでもOA1.30点,MP1.27点,PV1.52点と有意差は認めなかった.試験Bにおいては角膜上皮障害の発現眼数がPV22眼,OX8眼とOXにおいて角膜上皮障害発症眼が有意に少なかったが,角膜上皮障害発症眼における平均スコアはPV1.14点,OX1.13点と障害の程度に差は認めなかった.スコア3点以上の上皮障害を認めた症例はなく,1象限でスコア2点を認めた症例は試験AではMP1眼,試験BではPV2眼であった(表3).試験期間中に問題となる角結膜上皮障害,感染症などの前眼部所見は認めなかった.b.実用視力試験A,Bを通じて,レンズ装用下での遠方視力(FVA),対数視力(logMAR),および視力維持率(VMR)ともに,装用開始時と試験最終日との間で,いずれのレンズにおいても有意差はなかった(表4).c.角膜厚試験Aにおいて,従来素材のSCL(MP,OA)で有意な角膜厚の増加を認めた(MP:p<0.05,OA:p<0.01)が,表3角膜上皮障害SPK発現症例数(眼数)発現症例の平均Grade数(/眼)Grade2症例(眼数)試験AOA1W201.300MP1W221.271PV1W231.520試験BPV4W221.142OX1M81.130SPK:点状表層角膜症.表4実用視力PV(n=100)OA(n=60)MP(n=60)OX(n=40)装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後実用視力(FVA)0.94750.97771.08301.09080.92810.96720.99901.0377p値0.240.800.160.37実用視力(LOG)0.04040.03160.01920.04020.03530.02750.02730.0025p値0.500.100.710.19視力維持率(VMR)0.92940.94820.96870.96230.94380.94830.95280.9483p値0.140.150.480.53500550600650552.38角膜厚(μm)554.25556.18567.67装用前装直後570.57559.90OAMPPV**p<0.01*p<0.05NS図3角膜厚検査(1週間,n=60眼)角膜厚(μm)装用前装直後NSNS500550600650557.43552.18567.48565.80PVOX図4角膜厚検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081705(97)SHCLでは有意な増加は認められなかった(PV:p=0.48).試験Bにおいて,SHCLの1週間連続装用(PV1週間×4サイクル)と終日装用(OX)との間に有意差はなかった(図3,4).d.TSAS(BUI)装用直後(ベースライン)および試験最終日のBUI値は,いずれのレンズにおいてもSCL装用前の裸眼値よりも有意に低下していた(p<0.001).レンズごとにベースラインと試験最終日とのBUI値の比較では,PVで1週間後(試験A)に有意に低下していたが,4週間後(試験B)ではベースラインとの間に差はなかった(図5,6).2.非臨床検査a.微生物検査黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS),緑膿菌,セラチアについて同定・定量を行い,これら以外の菌は指定外菌とした.A,B両試験の全レンズ検体からはCNSが3種類(Staphylococcusepidermidis,Staphylococcuschromogenes,Staphylococcuswarneri)5例同定された.指定外菌が8例検出された.指定外菌も含めた検出頻度(陽性率)はレンズ間に有意な差が認められた(p<0.05).ただし,いずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSで起炎性をもつとされる105CFU/mlのレベルの菌量7)を大きく下回るものであった(表5).b.蛋白質定量レンズ検体1枚当りの平均蛋白質量を18種類のアミノ酸表5検体レンズから分離培養された微生物試料名検体数Staphylococcus指定外菌(SA,PA,SM,CNS以外)Totalepidemidischromogeneswarnerl陽性検体数陽性率OA30陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1100CFU/ml4<20CFU/ml620.0%MP30陽性検体数微生物量1>20CFU/ml13.3%PV50陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1<20CFU/ml24.0%OX20陽性検体数微生物量4<20CFU/ml420.0%統計/平均13031181310.0%c20.05=7.815,p=0.0288<0.05.BUI(%)装用開始時装用期間後***p<0.001*p<0.0510002040608073.9053.0553.4456.8851.8350.4350.47裸眼OAMPPV図5BUI検査(1週間,n=60眼)***p<0.001***p<0.001***p<0.001050100150200250300050100150200250300OAPVOX平均蛋白質量(μg/枚)OAPVOX平均脂質量(μg/枚)NS図7レンズ付着蛋白質量・脂質量()用用眼図6BUI検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page61706あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(98)の総量として計測したところ,OAが260.31μg(n=12,SD=129.06),PVが31.11μg(n=17,SD=14.61),OXが3.36μg(n=10,SD=2.07)となり,OAが他のレンズに比べ有意に高かった(各p<0.001).PVはOAよりも有意に低く,OXよりも有意に高かった(各p<0.001).c.脂質定量レンズ検体1枚当りの平均脂質量を6種類の脂肪酸の総量として計測したところ,OAが3.06μg(n=10,SD=1.33),PVが11.48μg(n=13,SD=1.93),OXが10.25μg(n=10,SD=1.80)となった.連続装用のPVと終日装用のOXとの間に差はなかったが,両SHCLともOAと比較して有意に多かった(p<0.001)(図7).III考察CLの装用に伴って,角膜は種々の非生理学的な環境に晒されるが,このなかで,最も大きな課題は酸素供給の低下である.これを解決するために種々の素材の開発が行われてきたが,現在の処方の主流である従来素材のSCLの場合には閉瞼時の酸素供給量を超える程度のレベルであり,オーバーナイト装用では低酸素状態により角膜浮腫をきたすとの報告もみられる8,9).また,低酸素環境下では角膜上皮に細菌が付着しやすくなるという事実も報告されており10),これを裏付けるように,従来素材のSCLの連続装用では,終日装用に比較して感染性角膜炎の発生頻度が高いとされている1,2).このように,一般にCLの連続装用は感染発症の危険因子と考えられている10,11)が,近年登場したSHCLがその画期的な酸素透過性により12,13),この課題を克服できるか否かは興味あるところである.本試験においては,レンズの酸素透過性を最も鋭敏に反映する指標として角膜厚を取り上げ,CL装用前後の変動を比較した.その結果,従来素材のSCLの終日装用とは異なり,連続装用されたPVにおいては検査期間中(4週間)有意な角膜厚の増加は認められなかった.終日装用のOXにおいても同様の結果であり,SHCLの優れた酸素透過性が改めて実証される結果となった.これらの成績は海外における報告14)ともよく一致しており,SHCLでは,終日装用のみならず連続装用においても,角膜厚の増加をきたさないレベルで酸素供給が維持されているものと考えられ,酸素不足による角膜上皮障害の発生も少ないものと推測される.連続装用でつぎに問題となるのがレンズの汚染である.実際,従来素材のSCLに比較してSHCLには細菌が付着しやすいとの報告も少なからずあるため1517),連続装用に伴う細菌付着の実態を明らかにしておくことは重要である.結論から言えば,汚染率は回収レンズ50枚のわずか2枚(4%)と当初の予想をはるかに下回るものであった.検出されたのはいずれもCNSであり,常在細菌叢由来と想定されるが,細菌量はいずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSの起炎閾値とされる105CFU/mlのレベル7)には達しておらず,臨床的には問題とならない細菌量であった.一方で,菌の検出された頻度(陽性率)をみると,連続装用されたPV,終日装用MPとともに低く,1日使い捨てのOAと1カ月定期交換SHCLのOXにおいて比較的高かった.1日使い捨てのOAでは付着蛋白質量が多いことから,レンズに付着した蛋白質の量が細菌の接着に影響した可能性が考えられ15,16),OXは1カ月の終日装用であったため,使用期間の長さも関連している可能性もあり,追加研究での検討が必要であろう.細隙灯顕微鏡による所見では,いずれのレンズにおいても,試験期間を通して問題となるような眼表面の障害は観察されず,安全性に問題はないと推測される.しかし,試験Bにおいて上皮障害の程度はOXとPV間で有意差はなく軽度の角膜上皮障害ではあったが,終日装用のOXに比較してPVで角膜上皮障害発症眼数が多く認められたことは,連続装用CLではより注意深い経過観察が必要であることを示唆する結果であろう.装用レンズ上の涙液安定性は良好な視機能の維持において重要な因子であるが,本研究でも明らかなように,レンズ装用により低下することは避けられない現象である.涙液安定性をBUIにて評価したところ,装用4週間装用試験(試験B)においてPVはOXと同等の結果を示した.確かに,PVの場合,1週間装用試験(試験A)の装用後に有意な低下がみられ,同時に,PVの連続装用開始の最初の1週間に乾燥感が強いとの意見も少なからずある.実際,今回行った被験者に対するアンケート調査結果でも,PVに関する満足度(1:「低い」,7:「高い」の7段階評価)は,1週間後よりも4週間後のほうが良好で(meanscore:1週間後4.8/4週間後5.7),4週間後の満足度は終日装用で最も高い1日使い捨てOAと同等(5.8:1週間後)であった.すなわち,PVの連続装用の場合,装用後徐々にレンズに慣れて涙液の安定性が改善し,快適に使用できるようになるものと推察される.ただし,BUI値が40%未満の57眼(21.9%)については,その40.4%が乾燥感を訴えており,BUI値40%以上の203眼の26.6%に比較して頻度が高い.よって,ドライアイ症例に対しては,慎重に処方を行う必要があると思われる.結論として,PVの1週間連続装用は,終日装用レンズと同等の安全性と有用性を有すると考えられる.従来素材のSCLによる連続装用でみられるような角膜厚の増加はなく,レンズ自体への細菌付着量,陽性率はともに低いレベルであり,海外における成績16)とよく一致していた.職業的な背景などからCL装用者のニーズは多岐にわたるため,連続装用を希望する患者は少なくない.1週間連続装用SHCLの登場により,CL処方の選択肢は広がったといえるが,その一———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081707方で,患者のコンプライアンスも含めた長期的な安全性に関してはさらなる検証が必要であろう.PVの連続装用のメリットを最大限に生かすために,適切な患者選択と,コンプライアンス遵守に向けた地道な患者指導が不可欠である.文献1)ChengKH,LeungSL,HoekmanHWetal:Incidenceofcontact-lens-associatedmicrobialkeratitisanditsrelatedmorbidity.Lancet354:773-778,19992)日本眼科医会医療対策部:「日本コンタクトレンズ協議会コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査」について.日本の眼科74:497-507,20033)BrennanNA,ColesML,ComstockTLetal:A1-yearprospectiveclinicaltrialofbalalconA(PureVision)sili-cone-hydrogelcontactlensesusedona30-daycontinu-ouswearschedule.Ophthalmology109:1172-1177,20024)LievensCW,ConnorCG,MurphyH:Comparinggobletcelldensitiesinpatientswearingdisposablehydrogelcon-tactlensesversussiliconehydrogelcontactlensesinanextended-wearmodality.EyeContactLens29:241-244,20035)DonshikP,LongB,DillehaySMetal:Inammatoryandmechanicalcomplicationsassociatedwith3yearsofupto30nightsofcontinuouswearoflotralconAsiliconehydrogellenses.EyeContactLens33:191-195,20076)海道美奈子:新しい視力計:実用視力の原理と測定方法.あたらしい眼科24:401-408,20077)宮永嘉隆:細菌─総論(Q&A).あたらしい眼科17(臨増):3-4,20008)HoldenBA,MertzGW:Criticaloxygenlevelstoavoidcornealedemafordailyandextendedwearcontactlenses.InvestOphthalmolVisSci25:1161-1167,19849)SolomonOD:Cornealstresstestforextendedwear.CLAOJ22:75-78,199610)ImayasuM,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationbetweencontactlensoxygentransmissibilityandbindingofPseudomonasaeruginosatothecorneaafterovernightwear.Ophthalmology101:371-388,199411)SolomonOD,LoH,PerlaBetal:Testinghypothesesforriskfactorsforcontactlens-associatedinfectiouskera-titisinananimalmodel.CLAOJ20:109-113,199412)RenDH,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationshipbetweencontactlensoxygenpermeabilityandbindingofPseudomonasaeruginosatohumancornealepithelialcellsafterovernightandextendedwear.CLAOJ25:80-100,199913)CavanaghHD,LadageP,YamamotoKetal:Eectsofdailyandovernightwearofhyper-oxygentransmissiblerigidandsiliconehydrogellensesonbacterialbindingtothecornealepithelium:13-monthclinicaltrials.EyeCon-tactLens29(1Suppl):S14-16,200314)EdmundsFR,ComstockTL,ReindelWT:CumulativeclinicalresultsandprojectedincidentratesofmicrobialkeratitiswithPureVisionTMsiliconehydrogellenses.IntContactLensClin27:182-187,200015)KodjikianL,Casoli-BergeronE,MaletFetal:Bacterialadhesiontoconventionalhydrogelandnewsilicone-hydrogelcontactlensmaterials.GraefesArchClinExpOphthalmol246:267-273,200816)SantosL,RodriguesD,LiraMetal:Theinuenceofsurfacetreatmentonhydrophobicity,proteinadsorptionandmicrobialcolonisationofsiliconehydrogelcontactlenses.ContLensAnteriorEye30:183-188,200717)BorazjaniRN,LevyB,AhearnDG:RelativeprimaryadhesionofPseudomonasaeruginosa,SerratiamarcescensandStaphylococcusaureustoHEMA-typecontactlensesandanextendedwearsiliconehydrogelcontactlensofhighoxygenpermeability.ContLensAnteriorEye27:3-8,2004(99)***