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線維柱帯切除術後眼に生じた糸状角膜炎に対し レバミピド点眼が著効した1 例

2023年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科40(12):1587.1590,2023c線維柱帯切除術後眼に生じた糸状角膜炎に対しレバミピド点眼が著効した1例大田啓貴*1近間泰一郎*2木内良明*2*1広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院眼科*2広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学CACaseofFilamentaryKeratitisafterTrabeculectomyinwhichTopicalRebamipidewasE.ectiveHirokiOta1),TaiichiroChikama2)andYoshiakiKiuchi2)1)DepartmentofOphthalmology,JAHiroshimaKouseirenOnomichiGeneralHospital,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,HiroshimaUniversityGraduateSchoolofBiomedicalandHealthSciencesC背景:糸状角膜炎(.lamentarykeratitis:FK)は,角膜表面に糸状物を形成する慢性,再発性の角膜疾患であり,さまざまな眼表面の病態や疾患に関連して生じる.今回,線維柱帯切除術後眼に生じたCFKに対し,レバミピド点眼(RM)が著効した症例を報告する.症例:82歳,女性.複数回の線維柱帯切除術施行後,左眼に異物感が出現しCFKがみられたことから,0.1%フルオロメトロン点眼を行った.1カ月後に,重度の点状表層角膜症(SPK)も生じたことから,点眼をすべて中止し,ホウ酸・無機塩類配合人工涙液点眼の適時使用を行った.SPKの改善はみられたが,FKの改善に乏しいため,RM単独で加療したところ,1カ月でCFKならびにCSPKは消失し,著しい改善が得られた.考察:本症例ではマイボーム腺機能不全による涙液油層の不足やCoverhangingblebによる眼表面の摩擦亢進がみられた.RMで,角膜ムチン産生を促進し,眼表面の摩擦を低下させ,眼表面の涙液が安定したことが著効した原因と考えている.CBackground:Filamentarykeratitis(FK)C,achronicrecurrentcornealdiseasethatforms.lamentsonthecor-nealsurface,isassociatedwithvariousocularsurfacedisorders.HereinwereportacaseofFKaftertrabeculecto-myCsurgeryCthatCwasCsuccessfullyCtreatedCwithCtopicalCrebamipide.CCase:AnC82-year-oldCfemaleCinCwhomCFKCdevelopedCinCherCleftCeyeCafterCmultipleCtrabeculectomyCsurgery,CunderwentCsurgicalCremovalCofCcornealC.lamentsandadministrationof0.1%.uorometholoneeyedrops.At1-monthpostoperative,severesuper.cialpunctatekera-topathy(SPK)developed,CsoCallCmedicationsCwereCdiscontinuedCandCaCcombinedCtreatmentCofCboricCacidCandCinor-ganicsaltswasadministered.AfterSPKimproved,rebamipidealonewasadministeredtotreatthepersistentFK,whichCwasCmarkedlyCimprovedCatC1Cmonth.CConclusions:InCcasesCofCFK,CadministrationCofCrebamipideCpromotesCcornealmucinproduction,reducesfrictionontheocularsurface,andstabilizestear.uidontheocularsurface,thusresultinginmarkedimprovement.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(12):1587.1590,C2023〕Keywords:糸状角膜炎,レバミピド,線維柱帯切除術,ドライアイ..lamentarykeratitis,rebamipide,trabecu-lectomy,dryeye.Cはじめに糸状角膜炎Cfilamentarykeratitis(FK)は,角膜表面に連なる糸状の構造物からなる慢性,再発性の角膜疾患である.FKの発症には,さまざまな眼表面疾患や眼瞼疾患が複合的に関与しており,そのメカニズムはいまだ明確にされていない.一般的にはドライアイが多くの症例で合併しているが,そのほかの基礎疾患として,上輪部角結膜炎などの眼表面疾患,各種眼手術後,糖尿病などの全身疾患,プロスタグランジン関連薬などの点眼薬,眼瞼下垂などがある1,2).FKにおける角膜糸状物は瞬目により牽引され,角膜の知覚神経が刺〔別刷請求先〕大田啓貴:〒722-8508広島県尾道市平原C1-10-23広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院Reprintrequests:OtaHiroki,M.D.,DepartmentofOphthalmology,JAHiroshimaKouseirenOnomichiGeberalHospital,1-10-23,CHirahara,Onomichi-shi,Hiroshima722-8508,JAPANC激されることで,強い異物感などの症状の原因となる3).FKの治療は,角膜糸状物を物理的に除去するだけでは再発を繰り返すため,完治をめざすためには発症に関与する原因疾患を治療する必要がある.保存的な治療としては,防腐剤無添加の人工涙液の頻回点眼や,低力価副腎皮質ステロイド点眼,治療用ソフトコンタクトレンズの装着が知られている4.6).このように,さまざまな治療が行われるものの,満足いく効果が得られないことが多い疾患である.今回,線維柱帯切除術後眼に生じた難治性のCFKに対し,レバミピド懸濁点眼液(ムコスタCUD点眼液C2%CR,大塚製薬)が著効した症例を経験したので報告する.CI症例82歳,女性.両眼緑内障に対し,右眼はチューブシャント手術と線維柱体切除術を施行され,左眼は線維柱帯切除術や濾過法再建術を計C4回施行された.2019年C4月頃から左眼異物感があった.両眼前眼部所見では,マイボーム腺機能不全があり,涙液メニスカス高(tearCmeniscusheight:TMH)はCnormal,涙液層破壊時間(tearC.lmCbreak-uptime:BUT)はC5秒以下だった.右眼はC11時方向にCblebがみられた.左眼はC2時,10時方向にCoverhangingblebがみられた.左眼異物感の症状は,overhangingblebによる合併症と考えられ,摩擦緩和目的にオフロキサシン眼軟膏(タリビッド眼軟膏,参天製薬)を開始した(図1a,b).眼軟膏開始後は自覚症状の改善がみられたが,2カ月経過時点で症状が再発した.症状緩和のため,同年C9月にジクアホソルナトリウム点眼(ジクアス点眼液C3%,参天製薬)を追加したところ,同年C11月に糸状角膜炎が出現した(図1c,d).ジクアホソルナトリウム点眼が要因と考えられ,ジクアホソルナトリウム点眼を中止しレバミピド懸濁点眼液をC1日C4回で開始したところ,2020年C1月には自覚症状が改善して,FKは消失した.その後,レバミピド懸濁点眼液は自己中断していたが,角膜は寛解状態を保っていた.2021年C4月に左眼眼圧がC14CmmHgまで上昇したため,タフルプロスト点眼(タプロス点眼,参天製薬)を開始した.タフルプロスト点眼開始後,左眼異物感が生じ,眼球上方結膜の充血や上皮障害がみられた.レバミピド懸濁点眼液を再開したが,自覚症状や所見の改善はなく,上輪部角結膜炎の発症と考え,0.1%フルオロメトロン点眼液(フルメトロン点眼液C0.1%,参天製薬)を開始した.しかし,0.1%フルオロメトロン点眼開始C1カ月後に左眼異物感症状の悪化があり,左眼でびまん性に点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK)とCFKの散在がみられた(図1e).中毒性角膜症の発症と考え,点眼をすべて中止し,ホウ酸・無機塩類配合剤液(人工涙液マイティア点眼液,千寿製薬)を開始したが,点眼アドヒアランスの不良もあり,改善に乏しく,FKに対して糸状物除去術を施行しつつ,経過観察を行った(図1f).2022年C3月には,左眼眼圧がC18CmmHgまで上昇したため,マイトマイシンCCを併用した濾過法再建術(needle法)を施行した.レボフロキサシン点眼液(クラビット点眼液C0.5%,参天製薬)とC0.1%フルオロメトロン点眼をC1日C3回でC1週間点眼したが,所見の悪化はなかった.2022年C5月にはSPKの一定の改善がみられ,眼表面の状態は薬剤毒性が解消され,ドライアイに伴うCSPKと糸状角膜炎のみになったと判断したことから,レバミピド懸濁点眼液をC1日C2回で開始したところ,2022年C6月にはCSPKとCFKは消失し,自覚症状は改善した(図1g,h).その後,眼圧コントロールは良好で,自覚症状は落ち着いており,FKの再発もみられていない.CII考察糸状物の構造は,ムチンと変性した角膜上皮細胞により構成されている.角膜上皮障害が原因となり上皮細胞の成分周囲にムチンが絡みつき,瞬目による摩擦ストレスで基底細胞レベルから上皮が.離されることにより形成される7).FKは,多様な疾患背景のもとに生じるために,対症的な治療が行われることが多いが,完治をめざすためには所見から病態を理解して治療方針を考慮する必要がある.本症例は,両眼で線維柱体切除術を施行し,右眼は経過中にラタノプラスト(キサラタン点眼液C0.005%,ヴィアトリス製薬)やブリモニジン酒石酸塩液(アイファガン点眼液C0.1%,千寿製薬)を点眼し,マイトマイシンCCを併用した濾過法再建術(needle法)を施行後したが,異物感の症状やCFKの発症はなかった.左眼は複数回の線維柱帯切除術後で,bleb周囲の部分的輪部機能不全による上皮細胞の供給不足をきたしていると考えた.マイボーム腺機能不全による涙液油層の不足やCblebによる角膜表面の摩擦亢進もあった.ドライアイによる異物感の症状に対しジクアホソルナトリウム点眼を開始したが,ジクアホソルナトリウム点眼は杯細胞からのムチン分泌を促し,ムチン/水分比の増加や涙液の粘性の増加を促すことで,結果的に摩擦亢進を引き起こし,糸状物が形成される可能性があると考えられている8).本症例でもジクアホソルナトリウム点眼を使用した際にCFKの発症を招いた.本来摩擦を生じない間隙(Kessingspace)9)がCoverhangingblebによって狭められ,瞬目摩擦が亢進した場合もしくはCbleb周囲に異所性涙液メニスカスが形成され,meniscus-inducedCthin-ningが起こった場合10),bleb周囲に優位にCFKを発症すると考えられる.しかし,本症例では当初角膜耳側の中央から下方優位に糸状物がみられた.10時方向よりもC2時方向のblebの丈が高いことから,耳側で摩擦亢進が強くなったと推測した.また,ドライアイによる涙液安定性の低下が背景にあり,摩擦亢進と強く相互作用する場所が角膜耳側の中央図1本症例の前眼部所見とその経時的変化a,b:2時,10時方向にCoverhangingblebがある.Cc,d:ジクアホソルナトリウム点眼投与後,耳側優位に角膜糸状物が発症している.Ce:0.1%フルオロメトロン点眼後,角膜ほぼ全面にCSPKと糸状角膜炎がある.中毒性角膜症と考え,全点眼中止し,人工涙液マイティアR投与開始した.f:人工涙液マイティアR投与C2週目.改善に乏しく,マイボーム腺機能不全による影響が考えられたため,ホットパックを併用開始した.Cg:人工涙液マイティア投与C21週目.一定の改善がある.従来のドライアイによる点状表層角膜症(SPK)や糸状角膜炎(FK)と考え,レバミピド懸濁点眼液投与開始した.h:レバミピド懸濁点眼液投与C5週目,SPKと糸状角膜炎はほぼ消失している.から下方であったことから,FKが下方に優位にみられたのから糸状角膜炎が再発した.結膜充血や点状の結膜上皮障害ではないかと考えているが,FKの発症部位に関しては今後があり,上輪部角結膜炎の発症を確認したため,炎症性変化さらなる検討が必要である.レバミピド懸濁点眼液でいったに対しC0.1%フルオロメトロン点眼を開始した.しかし,0.1んはCFKの寛解状態にあったが,タフルプロスト点眼開始後%フルオロメトロン点眼により角膜上皮細胞の増殖が抑制され,中毒性角膜症を引き起こしたと推察した.ホウ酸・無機塩類配合剤液で薬剤毒性を解消し,SPKの改善を試みたが,マイボーム腺機能不全による涙液油層の不足やCbleb周囲の部分的輪部機能不全による上皮細胞の供給不足,また点眼アドヒアランスの不良もあり改善に時間を要したと考えられる.薬剤毒性が解消された後に,遷延するCSPKやCFKに対し,レバミピド懸濁点眼液単剤投与を行ったところ,著明に改善した.FKは,眼表面摩擦の亢進が要因となることが報告されている11).本症例は,左眼でCoverhangingblebによる眼表面摩擦の亢進もあった.レバミピド懸濁点眼液は,結膜杯細胞の増加作用や,角膜上皮での膜結合型ムチンの増加作用,角膜上皮創傷治癒促進作用,眼表面摩擦の軽減作用などが報告されている12.14).本症例では,すべての点眼薬の影響をいったん排除した後に,レバミピド懸濁点眼液によりムチン産生を促進し,眼表面の涙液を安定させ,眼表面の摩擦を低下させたことが糸状角膜炎に著効した原因ではないかと考えている.今回の症例では,緑内障点眼を再開することなく眼圧を保つことができている.しかし,緑内障点眼薬の多剤併用時に生じるCFKに対するレバミピド懸濁点眼液投与の有効性については,今後の検討課題である.文献1)KinoshitaCS,CYokoiN:FilamentaryCkeratitis.CtheCcornea,Cfourthedition(FosterCCS,CAzarCDT,CDohlmanCCHeds)C,Cp687-692,Philadelphia,20052)DavidsonCRS,CMannisMJ:FilamentaryCkeratitis.CtheCcor-nea,secondedition(KrachmerJH,MannisMJ,HollandEJeds),p1179-1182,ElsevierInc,20053)HamiltonW,WoodTO:Filamentarykeratitis.AmJOph-thalmolC93:466-469,C19824)AlbietsCJ,CSan.lippoCP,CTroutbeckCRCetal:ManagementCofC.lamentaryCkeratitisCassociatedCwithCaqueous-de.cientCdryeye.OptomVisSciC80:420-430,C20035)MarshCP,CP.ugfelderSC:TopicalCnonpreservedCmethyl-prednisoloneCtherapyCforCkeratoconjunctivitisCsiccaCinCSjogrensyndrome.OphthalmologyC106:811-816,C19996)Bloom.eldSE,GassetAR,ForstotSLetal:Treatmentof.lamentarykeratitiswiththesoftcontactlens.AmJOph-thalmolC76:978-980,C19737)TaniokaCH,CFukudaCK,CKomuroCACetal:InvestigationCofCcornealC.lamentCinC.lamentaryCkeratitis.CInvestCOphthal-molVisSciC50:3696-3702,C20098)青木崇倫,横井則彦,加藤弘明ほか:ドライアイに合併した糸状角膜炎の機序とその治療の現状.日眼会誌C123:C1065-1070,C20199)KnopCE,CKnopCN,CZhivovCACetal:TheClidCwiperCandCmuco-cutaneousCjunctionCanatomyCofCtheChumanCeyelidmargins:anCinCvivoCconfocalCandChistologicalCstudy.CJAnatC218:449-461,C201110)横井則彦:涙液メニスカスの観察.ドライアイ診療CPPP(ドライアイ研究会),p25-27,メジカルビュー社,200211)北澤耕司,横井則彦,渡辺彰英ほか:難治性糸状角膜炎に対する眼瞼手術の検討.日眼会誌C115:693-698,C201112)UrashimaCH,COkamotoCT,CTakejiCYCetal:RebamipideCincreasesCtheCamountCofCmucin-likeCsubstancesConCtheCconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.CorneaC23:613-619,C200413)TakejiY,UrashimaH,AokiAetal:Rebamipideincreas-esCtheCmucin-likeCglycoproteinCproductionCinCcornealCepi-thelialcells.JOculPharmacolTherC28:259-263,C201214)TakahashiY,IchinoseA,KakizakiH:TopicalrebamipidetreatmentCforCsuperiorClimbicCkeratoconjunctivitisCinCpatientswiththyroideyedisease.AmJOphthalmolC157:C807-812,C2014C***

レバミピド懸濁点眼液とMPC ポリマーの併用処理による ドライアイ治療効果の有用性評価

2022年7月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科39(7):982.987,2022cレバミピド懸濁点眼液とMPCポリマーの併用処理によるドライアイ治療効果の有用性評価後藤涼花*1勢力諒太朗*1渡辺彩花*1油納美和*1大竹裕子*1櫻井俊輔*2原田英治*2長井紀章*1*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2日油株式会社ライフサイエンス事業部CEvaluationoftheCombinedTherapyofRebamipideandMPCPolymerfortheTreatmentofDryEyeRyokaGoto1),RyotaroSeiriki1),SayakaWatanabe1),MiwaYuno1),HirokoOtake1),ShunsukeSakurai2),EijiHarata2)CandNoriakiNagai1)1)FacultyofPharmacy,KindaiUniversity,2)LifeScienceProductsDivision,NOFCorporationC本研究では市販ドライアイ治療薬であるレバミピド懸濁点眼液(REB点眼液)と生体適合性CMPCポリマー(MPCP)を併用処理した際のドライアイに対する治癒効果について検討した.REB点眼液点眼C5分後にCMPCPを処理することで,涙液中CREB濃度の滞留性向上が確認され,そのCREB眼表面滞留時間の延長はCREB点眼液単独処理群と比較し有意に高値であった.次に,N-アセチルシステイン処理ウサギ(眼表面ムチン被覆障害モデル)を用い,REB点眼液とCMPCP併用処理時のドライアイに対する治療効果を検討したところ,併用処理により,眼表面ムチン被覆障害モデルの涙液層破壊とムチン量低下は改善され,その効果はCREB点眼液単独処理群に比べ高値であった.以上,MPCP併用により,REBの涙液中薬物滞留性が高まるとともに,ムチン被覆改善作用が向上する可能性が示唆された.CInthisstudy,weinvestigatedwhetherornotacombinationofcommerciallyavailablerebamipideophthalmicsuspension(CA-REBeye-drop)and2-methacryloyloxyethylCphosphorylcholine(MPC)polymerCprovidesCanCenhancedtherapeutice.ectfordryeye.ThecombinationofCA-REBeye-dropandMPCpolymerprolongedthedrugresidenceinthelacrimal.uid.Next,thetherapeuticpotentialofthecombinationtreatmentfordryeyewasevaluatedinanN-acetylcysteine-treatedrabbitmodel.ThecombinationofCA-REBeye-dropandMPCpolymerpromotedimprovementofboththetear.lmbreakupandlevelofdecreasedmucincausedbytheN-acetylcysteinetreatment.Moreover,thetherapeutice.ectwassigni.cantlyincreasedintherabbitsinstilledwiththecombinationofCCA-REBCeye-dropCandCMPCCpolymerCinCcomparisonCwithCtheCrabbitsCinstilledCwithCCA-REBCeye-dropCalone.CTheseresultsshowthatthecombinationofCA-REBeye-dropandMPCpolymermayprovideanenhancedthera-peutice.ectforpatientsa.ictedwithdryeye.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(7):982.987,C2022〕Keywords:MPCポリマー,レバミピド,ドライアイ,眼表面,涙液.MPCpolymer,rebamipide,dryeye,ocularsurface,lacrimal.uid.Cはじめに涙液は外側から油層,水層のC2層で構成され,外側に位置する油層は内側にある水層の蒸発を抑える働きを有している1).また,水層には角膜上皮から分泌されている糖蛋白質ムチンが分布し,このムチンが涙液を角膜表面に維持させる役割を担っている2).これら,ムチンは分泌型ムチンと膜型ムチンのC2種類に大きく分類され,分泌型ムチンは主として涙液の水層に分布し,水分を保持する形で涙液中に混じり込むことで,眼表面で涙液を均一に伸展させる働きを担っている.一方,膜型ムチンは上皮細胞の表面にある微絨毛の先端〔別刷請求先〕長井紀章:〒577-8502東大阪市小若江C3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:NoriakiNagai,Ph.D.,FacultyofPharmacy,KindaiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,CJAPANC982(128)CH3CH3CH2CCH2CCO-CH3COOCH2CH2OPOCH2CH2N+CH3O(CH2)17CH3OCH3l図1MPCポリマーの化学構造式に存在し,糖衣を形成することで,上皮表面の水濡れ性維持に寄与すると考えられている3,4).このようにムチンは眼表面での涙液維持に強く関与する因子であり,眼表面でのムチン量の低下はドライアイの発症に繋がる.ドライアイは涙液減少型,蒸発亢進型,涙液層破壊時間短縮型など,その機序により分類されている5).これらの治療法としては人工涙液,ヒアルロン酸点眼液を用いた涙液の補給,涙点プラグなどによる涙液滞留量の増加,温罨法や瞼縁洗浄などが行われている6,7).さらに近年では,角膜表面上に存在するムチンの産生を高めるレバミピド懸濁点眼液(REB点眼液,ムコスタ点眼液)やムチンの放出を促進するジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス点眼液)といった点眼薬が広く用いられている.これら薬物療法は有用であるが,パソコンやスマートフォンの普及からドライアイ患者数が急増しているわが国においてさらに有用なドライアイ療法の確立が望まれているのが現状である.日油株式会社により開発されたCMPCポリマーは生体適合性,保水性および保湿性に優れ,人工臓器などの医療機器の表面処理剤として開発されている.本研究に用いたCMPCポリマーは,PC構成単位,アミド構成,疎水性構成単位のC3種の構成単位を特定の割合で有する共重合体である.それぞれの構成単位におけるCPC構成単位はC2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンエチルホスファート(MPC)であり,共重合体の生体適合性,親水性に寄与する.アミド構成単位はCN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)であり,高分子量化させることで共重合体の眼表面での滞留性向上が,疎水性構成単位はステアリルメタクリレート(SMA)であり,共重合体の角膜表面への接着性を向上させることが期待できるポリマーである.近年筆者らは,これらCMPCポリマーがムチンと類似した水分保持作用を有することを見出すとともに,N-アセチルシステイン頻回点眼処理により作製した眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルを用い,MPCポリマーの点眼がドライアイ治療に有用であることを報告した8).本研究では,これらCMPCポリマーと市販ドライアイ治療薬であるCREB点眼液を併用処理した際のドライアイに対する治癒効果について,眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルを用いて評価した.CH2CHCONCH3CH3mn涙液採取涙液採取REBREB5minMPCP+REBMPCPREB5min5minREB+MPCPREBMPCP10min20min30min図2本研究で実施したREBとMPCポリマーの点眼処理スケジュールI対象および方法1.使用薬物および実験動物REB点眼液は,大塚製薬から購入し,MPCポリマーは日油から譲渡されたものを用いた.図1には今回用いたCMPCポリマーの構造式を示す.また,N-アセチルシステイン溶液は和光純薬製を用い,シルメル試験紙は昭和薬品化工から購入した.涙液ムチン測定キットはコスモ・バイオから得た.その他の試薬は市販特級品あるいはCHPLC用試薬を用いた.日本白色種雄性ウサギ(2.5.3.0Ckg)は清水実験材料から購入し,近畿大学実験動物規定に従い実験を行った(実験承認番号,KAPS-31-002).C2.薬物の点眼処理方法REB点眼前後にC0.1%CMPCポリマーを点眼し,点眼間隔はC5分,点眼量はC1回C30Cμlとした.また本研究では,MPCポリマー点眼C5分後にCREB点眼処理を行ったものをCMPCP+REB群,REB点眼C5分後にCMPCポリマーを点眼したものをCREB+MPCP群とした.図2にはCMPCポリマーおよびCREB点眼液併用処理時における涙液中CREB濃度を測定した際の点眼処理スケジュールを示す.C3.HPLCを用いたREB濃度の測定試料からのCREB抽出にはN,N-ジメチルホルムアミドを用い,リン酸緩衝液/アセトニトリル=83/17(v/v)を移動相としたCHPLC法にて濃度の測定を行った.HPLC法には,InertsilODS-3を接続した高速液体クロマトグラフィー装置LabSolutions(島津製作所)を用い,カラム温度C35℃(クロマトチャンバーCCTO-20AC使用),移動相の流速はC0.25Cml/ap=0.018bp=0.0202.50.5REB濃度(mg/mL)2.00.4REB濃度(mg/mL)1.50.31.00.20.50.10.00.0図3MPCポリマー(MPCP)併用処理が市販REB点眼液の涙液滞留性に与える影響a:点眼処理C10分後の涙液中CREB濃度.Cb:点眼処理C30分後の涙液中CREB濃度.平均値C±標準誤差,n=3.6.min,検出波長C254Cnm,測定時間C16分とした.試料注入量はC10Cμlとし,オートインジェクターCSIL-20ACを用いた.本研究では,REBのピークがC12.13分の間に検出された.C4.眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルの作製雄性日本白色種ウサギにC10%CN-アセチルシステイン溶液(溶媒:生理食塩液)を午前C9時から午後C7時までC2時間間隔で計C6回(各回C50Cμl)点眼処理を施すことで眼表面ムチン被覆障害モデルを作製した.本研究では,涙液状態の安定化のため,点眼処理C2日後のウサギをドライアイC0日目として研究に用いた.C5.涙液油層の干渉像の観察興和製CDR-1Caを用い,開瞼器にてC5分間開瞼したウサギの涙液油層干渉像を撮影した.撮影は薬物点眼処理C24時間後に行い,角膜中央部にフォーカスをあて干渉像を測定した.また,得られた干渉像よりドライアイスポット(涙液が伸展せず黒色で映る部分)の面積値をCImageJにて測定し,干渉像全体の面積値(40.3CmmC2)に対する比として傷害率を算出した.さらに,点眼処理群の傷害率を点眼未処理群の傷害率で除したもの(傷害率点眼群/傷害率未点眼群×100)を涙液層破壊率(%)とした.C6.涙液中ムチン量の測定結膜.内からCSchirmer試験紙にて涙液をC5分間採取し,得られた試料に存在するムチンコア蛋白質からCO-グリカンをCb脱離すると同時に糖鎖還元末端に蛍光ラベルさせることで得られる蛍光強度を測定することで,ムチン量の定量を行い,涙液量にて除したものを涙液中ムチン濃度とした.これらムチン量の定量には涙液ムチン測定キットを用い,蛍光強度は,CORONA社製蛍光プレートリーダーCSH-9000にて測定した(励起波長C336Cnm,蛍光波長C383Cnm).本実験における薬物処理時におけるムチン量は,未処理群の涙液中ムチン量に対する比(%)として表した.C7.統計解析得られたデータは平均値±標準誤差として表した.各々の実験値はCStudentのCt-testまたはCDunnettの多重比較検定にて解析した.本研究ではCp値がC0.05以下を有意差ありとした.CII結果1.REB点眼液およびMPCP併用処理におけるREB眼表面滞留性の変化図3はCREB点眼液およびCMPCP併用処理(単回)10分およびC30分後における正常ウサギ涙液中でのCREB挙動を示す.REB点眼液を単剤投与したCREB単独処理群の点眼C10分後における涙液中薬物濃度はC1.23Cmg/mlであり,点眼C30分後にはC0.10Cmg/mlまで低下した.また,MPCポリマー点眼C5分後にCREB点眼液を処理したCMPCP+REB処理群の涙液中CREB濃度変化は,REB単独処理群と類似した挙動を示した.一方,REB点眼液処理C5分後にCMPCポリマーを点眼したCREB+MPCP処理群では,眼表面でのCREB滞留性が高まり,眼表面での薬物量はCREB単独処理群のそれに比べ,点眼C10分後でC1.68倍,点眼C30分後でC2.62倍であった.C2.眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルに対するREB点眼液およびMPCP併用処理の有用性評価図4はCREB点眼液単剤処理およびCREB点眼液とCMPCポリマー併用処理を行った際の涙液油層干渉像とその眼表面障害治癒効果を示す.10%CN-アセチルシステイン溶液処理により眼表面の涙液層を破壊したのち生理食塩水連続点眼を行ったCSaline群ではC2日目,5日目における涙液層破壊率はそれぞれC99.8%,76.2%であった.一方,REB単独処理群では,連続点眼C2日目,5日目における涙液層破壊率はそれぞれC44.7%,39.9%であった.また,MPCポリマーを前点眼したCMPCP+REB処理群では,REB単独点眼処理群と同程度であった.一方,REB投与後にCMPCポリマーを点眼したCREB+MPCP処理群では,REB単独処理群と比較し,有意な傷害率の低下が認められ,連続点眼C2日目の涙液層破壊率はC28.6%,5日目ではC10.3%であった.図5は眼表面ムチaSalineREBMPCP+REBREB+MPCP0d2d5dbcp=0.003p=0.0000011201201008060涙液層破壊率(%)10080604000図4市販REB点眼液とMPCポリマー(MPCP)併用処理がウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルの角膜障害に与える影響a:連続点眼処理C2日目およびC5日目の代表的涙液油層干渉像.バーはC1Cmmを示す.Cb:連続点眼処理C2日目の涙液層破壊率.Cc:連続点眼処理C5日目の涙液層破壊率.平均値C±標準誤差,n=3.6.Cp=0.0002402020ap=0.003b175175150150125100755025ムチン量(%)12510075502500図5MPCポリマー(MPCP)と市販REB点眼液併用処理がウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルの涙液中ムチン量に与える影響a:連続点眼処理C2日目の涙液中ムチン量.Cb:連続点眼処理C5日目の涙液中ムチン量.平均値C±標準誤差,n=3.6.ン被覆障害ウサギモデルに各点眼処理を行った際の涙液中ムで低下していた.これら眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルチン量の変化を示す.10%CN-アセチルシステイン溶液処理にCREB単剤点眼を行ったところ,ムチン量の増加が確認さにより,涙液中ムチン量は,正常ウサギのそれの約C70%まれ,連続点眼C5日目の涙液中ムチン量は正常群と同程度であった.また,MPCP+REB処理群においても同様のムチン量の改善が認められた.一方,REB+MPCP点眼処理群では有意に涙液中ムチン量の向上が認められ,点眼処理C5日目のムチン量は正常群の約C140%であった.CIII考按MPCポリマーは生体適合性が高く,ムチンと類似した作用を有することから,眼表面の安定化において有用な物質である8).本研究では正常ウサギを用い,MPCポリマーとドライアイ治療薬CREB点眼液の併用処理が,涙液中での薬物滞留性にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った.また,眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルを用い,これら併用処理時におけるドライアイ治癒効果について検討した.点眼後における涙液中薬物挙動を検討するうえで,評価用動物種の選択は重要である.一般的に使用される実験動物としてはマウスやラットが知られているが,これらは眼が小さく,水晶体も人と比べ非常に大きな割合を示すなど,ヒトの眼と構造が大きく異なっている.一方で,ウサギやサルは眼表面の状態や眼構造ともにヒトのそれと類似しており,眼領域の研究において多用される動物種である.とくに,ウサギはサルに比べて飼育が容易であることからも,点眼薬の薬物動態挙動を確認するうえでもっとも用いられる実験動物種である.このため本研究ではウサギを用い,REBおよびCMPCポリマー併用処理が涙液中CREBの濃度変化におよぼす影響を検討した(図3).REB点眼液を単剤投与したところ(REB単独処理群),点眼直後から眼表面でのCREB濃度の低下が確認され,点眼C30分後の涙液中CREB濃度はC1.23Cmg/mlであった.これらCREB点眼を行ったC5分後にCMPCポリマーを追加点眼したところ(REB+MPCP処理群),涙液中でのREB濃度の増加が確認され,そのCREB眼表面持続時間の延長はCREB単独処理群と比較し有意に高値であった.一方,点眼する順番を変更し,REB点眼の前にCMPCポリマーを処理した場合(MPCP+REB処理群)では,REB眼表面滞留時間の延長は確認されず,MPCP+REB処理群とCREB単独処理群の涙液中CREB濃度に有意な差はみられなかった.筆者らの以前の報告で,MPCポリマーは涙液成分や角膜上皮の両方と親和性を有しており,点眼後上皮膜上に付着したMPCポリマーは涙液層をトラップし,眼表面の安定化が得られるということを報告している8).また,筆者らのこれまでの実験にて,REB点眼液は点眼後CREB微粒子が角膜表面に付着し,溶解したものが徐々に吸収され薬効を示すことが確認されている9).これらの背景および今回の結果から,REB点眼液点眼後の懸濁CREB微粒子が角膜表面に付着後,MPCポリマーがそれをカバーすることで,眼表面でのCREB濃度の維持が得られるのではないかと推察された.また,MPCポリマーが先に角膜上皮に付着し,その後CREB微粒子が角膜表面に接触してきた際には,これらCMPCポリマーによるCREBのカバーが十分には得られず,REB単独点眼と同程度の薬物涙液持続時間を示したのではないかと考えられた.ただ,これらの仮説の証明には今後より詳細な検討が必要と考えている.次に,REB点眼液およびCMPCポリマー併用処理した際の,ドライアイ療法としての有用性について検討を試みた.中嶋らはCN-アセチルシステインをウサギに点眼することにより眼表面のムチンを除去した実験動物モデル(眼表面ムチン被覆障害ウサギモデル)を作製している10).また,本モデルにおいて,角結膜表面の微絨毛/微ひだの消失,角膜および結膜におけるムチン様糖蛋白質の減少,および涙液安定性の低下といったヒトのドライアイ特徴を有していることを示している10).そこで今回,眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルに対しCREB点眼液およびCMPCポリマー併用処理した際の角膜中央部における涙液層破壊率の改善効果について検討を行った.その結果,10%CN-アセチルシステイン溶液処理によりウサギ眼表面の涙液層破壊と涙液中ムチン量の低下が認められ,これら眼表面障害はCREB点眼液の点眼により顕著に軽減された.本研究同様,以前の眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルを用いた報告においても,REB点眼液は角結膜でのムチン産生量を増加させ,涙液安定性の指標となるドライスポットの出現を抑制することが示されており10),今回の結果は,これら以前の研究成果を支持するものであった.さらに,REB投与後にCMPCポリマーを処理したCREB+MPCP処理群について検討したところ,REB点眼処理群に比べ,涙液層破壊とムチン量低下がともに有意に改善した.これら結果は先に示した薬物の涙液滞留時間を反映するものであった.一方,MPCポリマー自身にも涙液保持機能効果が認められることから8),MPCポリマーを前処理したCMPCP+REB処理群においても涙液層破壊の軽減が期待されたが,涙液層破壊とムチン量は,REB単独処理群と同程度であった.この要因として,MPCポリマーの濃度は低いため,後から点眼されたCREBにより希釈,排出が促進され,単独処理による眼表面の安定化を有するほどの濃度が眼表面で維持できなかった可能性があるが,このことについては今後検討が必要である.以上,市販ドライアイ治療薬であるCREB点眼液点眼後にMPCポリマーを処理することで,REBの涙液薬物滞留性が高まるとともに,眼表面ムチン被覆障害ウサギモデルに対する障害修復効果が向上することが示された.この結果からREB点眼液とCMPCポリマーの併用により,ムチン被覆改善作用が向上し,MPCポリマーが眼疾患領域で有用な添加剤になりうる可能性があると考えられた.今後,MPCポリマーを配合したCREB点眼製剤を調製するとともに,そのドライアイ治療効果についても検討を進めていく予定である.利益相反長井紀章(カテゴリーF,クラス:III,日油株式会社)原田英治,櫻井俊輔(カテゴリーE)後藤涼花,勢力諒太朗,渡辺彩花,油納美和,大竹裕子(なし)文献1)真鍋礼三,木下茂,大橋裕一ほか:角膜クリニック第C2版(井上幸次,渡辺仁,前田直之ほか).p2-5,医学書院,C20032)GipsonCIK,CHoriCY,CArguesoP:CharacterCofCocularCsur-faceCmucinsCandCtheirCalterationCinCdryCeyeCdisease.COculCSurfC2:131-148,C20043)InatomiCT,CSpurr-MichaudCS,CTisdaleCASCetal:Expres-sionofsecretorymucingenesbyhumanconjunctivalepi-thelia.InvestOphthalmolVisSciC37:1684-1692,C19964)UchinoCY,CUchinoCM,CYokoiCNCetal:AlterationCofCtearCmucinC5ACCinCo.ceCworkersCusingCvisualCdisplayCtermi-nals:TheOsakaStudy.JAMAOphthalmolC132:985-992,C20145)ドライアイ研究会:ドライアイの定義および診断基準委員会:日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版).ドライアイ研究会,1-5,20166)MoshirfarCM,CPiersonCK,CHanamaikaiCKCetal:Arti.cialCtearspotpourri:aliteraturereview.ClinOphthalmolC8:C1419-1433,C20147)FoulksCGN,CBronAJ:MeibomianglandCdysfunction:aCclinicalCschemeCforCdescription,Cdiagnosis,Cclassi.cation,Candgrading.OculSurfC1:107-126,C20038)NagaiCN,CSakuraiCS,CSeirikiCRCetal:MPCCpolymerCpro-motesrecoveryfromdryeyeviastabilizationoftheocu-larsurface.PharmaceuticsC13:168,C20219)NagaiCN,CItoCY,COkamotoCNCetal:SizeCe.ectCofCrebamip-ideophthalmicnanodispersionsonitstherapeutice.cacyforcornealwoundhealing.ExpEyeResC151:47-53,C201610)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科C29:1147-1151,C2012***

BUT短縮タイプのドライアイ患者に対するムコスタ点眼液UD2%の有効性と安全性:実臨床下での解析結果

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1529.1535,2018cBUT短縮タイプのドライアイ患者に対するムコスタ点眼液UD2%の有効性と安全性:実臨床下での解析結果安田守良*1増成彰*1曽我綾華*1坪田一男*2大橋裕一*3木下茂*4*1大塚製薬株式会社ファーマコヴィジランス部*2慶應義塾大学医学部眼科学教室*3愛媛大学*4京都府立医科大学感覚器未来医療学CE.icacyandSafetyofRebamipideEyeDropsinPatientswithDryEyeSyndromeofShortBUTType.ResultsofRealWorldSettingsMoriyoshiYasuda1),AkiraMasunari1),AyakaSoga1),KazuoTsubota2),YuichiOhashi3)andShigeruKinoshita4)1)PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.Ltd,2)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,3)EhimeUniversity,4)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC2016年に新しいドライアイ診断基準が公表されたことから,角結膜上皮障害のない涙液層破壊時間(break-uptime:BUT)短縮タイプのドライアイ患者に対するレバミピド点眼液の有効性と安全性を,実臨床下で実施した製造販売後調査を用いて検討した.登録患者からCBUT5秒以下の患者を選択し,さらに生体染色スコアにより分類したところ,角結膜上皮障害なしまたは軽度のドライアイ患者がC291名,明らかな角結膜上皮障害をもつ患者がC411名であった.これらC2群の患者についてレバミピド点眼液の有効性を比較したところ,点眼前の角結膜上皮障害の程度にかかわらず,BUTの改善,自覚症状の改善が認められた.さらにコンタクトレンズ装用患者,ドライアイの原因が眼手術であった患者のサブグループでもCBUT,自覚症状の改善が認められた.以上の結果より,BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度のドライアイ患者に対するレバミピド点眼液の実臨床下の有効性,安全性を確認した.CInresponsetopublicationofthenewDiagnosticCriteriaforDryEye,weinvestigatedthee.icacyandsafetyofrebamipideophthalmicsuspensioninpatientswithshortBUTandnoormildcorneal/conjunctivalepithelialdis-ordersusingtheresultsofpost-marketingsurveillanceconductedinJapan.AmongallenrolledpatientswithBUTof5secondsorless,411(44.9%)hadcorneal/conjunctivaldisorderand291Cdidnot.Thee.ectivenessofrebamip-ideregardingBUTanddryeyesymptomswerecomparablebetweenthetwogroups.Moreover,inasubgroupofpatientswithcontactlenses,dryeyecausedbyophthalmicsurgeryalsohadsigni.cantimprovementinBUTandtheseverityof.vesubjectivesymptoms.Theseresultsdemonstratedthee.icacyandsafetyinclinicalpracticeofrebamipideophthalmicsuspensionindryeyepatientswithnoormildcorneal/conjunctivaldisorders.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(11):1529.1535,2018〕Keywords:ドライアイ,レバミピド,コンタクトレンズ,眼手術.dryeye,rebamipide,contactlens,ophthalmicsurgery.Cはじめにレバミピド点眼液(商品名:ムコスタ点眼液CUD2%,大塚製薬)はムチン産生促進作用をもつ薬剤で,ヒアルロン酸点眼液との比較試験でその有効性と安全性が証明され,2012年にドライアイに対する治療薬として発売された1).また,最近では抗炎症作用をもつことも報告されている2).さらに,筆者らは実臨床における有効性と安全性の結果をC916名の患者が参加した製造販売後調査の結果としてすでに公表してきた3).ドライアイの診断基準は,2006年に公表された「ドライ〔別刷請求先〕安田守良:〒540-0021大阪府大阪市中央区大手通C3-2-27大塚製薬株式会社ファーマコヴィジランス部Reprintrequests:MoriyoshiYasuda,Ph.D.,OtsukaPharmaceuticalCo.Ltd.3-2-27,Otedori,Chuo-kuOsaka540-0021,JAPANC0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(81)C1529アイ診断基準」においては自覚症状,涙液異常,角結膜上皮障害の三つが併存していることとされていた4).レバミピド点眼液の第CIII相臨床試験はその診断基準を加味し,角膜上皮障害の指標として生体染色スコアC4以上(15点満点)を対象患者として実施し,その結果を用いてレバミピド点眼液は承認されている.しかし,2016年の「ドライアイ診断基準」の改訂により角結膜上皮障害は必須ではなくなり,涙液層破壊時間(break-uptime:BUT)短縮タイプのドライアイ患者も含むと定義された5).そこでレバミピド点眼液で治療を行った製造販売後調査結果を見直したところ,916例全例がなんらかの自覚症状を有しており,BUT5秒超の患者はわずかC36名(3.9%)であった.したがって,ほぼ全例が新しい「ドライアイ診断基準」に該当することが判明した.さらにCBUT5秒以下の患者群を明らかな角結膜上皮障害が認められる患者と,角結膜上皮障害がないまたは軽度な患者に分類したところ,前者はC44.9%(411/916名),後者はC31.8%(291/916名)であった.角結膜上皮障害がないまたは軽度なドライアイ患者は第CIII相臨床試験では除外されていた患者群であったことから,これら患者に対するレバミピド点眼液の有効性と安全性を解析することにした.また,コンタクトレンズ(contactlens:CL)装用はドライアイのリスクファクターであることが知られている.レバミピド点眼液は防腐剤を含まない製剤であり,CL装用者にも広く使用されている.また,眼手術もドライアイのリスクファクターであるとされている.そこでCCL装用者とドライアイの原因が眼手術と報告されていた患者のサブグループ解析も実施したので報告する.CI対象および方法2016年に報告した製造販売後調査3)と同一のデータを新たに解析した.すなわち,合計C916名の製造販売後データを用いて,BUTがC5秒以下(2016年の診断基準によるドライアイ)とC5秒超または不明のC2群に分け,5秒以下の患者群をさらに生体染色スコアがC0,C1,2の患者群とC3以上の患者群のC2群に分け,患者背景を比較した.このときC3以上とした理由はC2006年の「ドライアイ診断基準」を参考にした.患者背景の比較には連続変数はCt検定,カテゴリー変数ではFisherの直接確率法を用いた.また,BUTの推移について投与開始からC52週までの平均値の推移を集計解析した.ドライアイの自覚症状としては調査したC5項目(異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視)それぞれについて(0:症状なし,1:弱い症状あり,2:中くらいの症状あり,3:強い症状あり,4:非常に強い症状あり)のC5段階で患者からの聞き取りにより評価した.これらのスコアの推移を生体染色スコア2以下の患者群とC3以上の患者群で投与開始からC52週までその平均値を集計した.なお,各自覚症状の解析では,投与開始時にスコアがC1以上である患者を解析対象とした.また,生体染色スコアC2以下の患者群からCCL装用者,ドライアイの原因が眼手術と報告されていた患者を抽出してサブグループとした.BUT,各自覚症状の投与開始時からの推移については,症例数が少ないことから最終観察時と比較して投与前後のスコアを比較した.上記すべての解析で,開始時と投与後の比較には対応のあるCt検定を行った.CII結果データを収集した全体C916名中CBUT5秒以下(2016年診断基準によるドライアイ)はC708名,5秒超または不明は208名であった.BUT5秒以下の患者群をさらに生体染色スコアで分類したところ,スコアC2以下はC291名(全体の31.8%),スコアC3以上はC411名(全体のC44.9%),であった(図1).C1.患.者.背.景BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度な患者群と,BUT短縮かつ明らかな角結膜上皮障害をもつ患者について患者背景を比較した.その結果,角結膜上皮障害なしまたは軽度の患者群では,医師が判定した重症度において軽度の患者が多く(64%vs.24%,p<0.0001),BUTが長かった(2.9秒vs.2.7秒,p=0.0078).また,合併症としてはアレルギー性結膜炎の割合が高く(15.5%Cvs.8.3%,p=0.0035),Sjogren症候群の割合が低かった(1.7%vs.8.8%,p<0.0001)(表1).レバミピド点眼液投与前の自覚症状をもつ患者割合と自覚症状スコアの平均値では,染色スコアC2以下の患者群では,調査したC5項目の自覚症状すべてで症状のある割合が低かった(表2a).また,染色スコアC2以下の患者群では,異物感,乾燥感のスコアの平均値が低かった(表2b).C2.BUT・自覚症状の推移角結膜上皮障害の程度別にC2群に分類した患者群について,レバミピド点眼液投与後のCBUTの推移を示した(図2).角結膜障害なしまたは軽度な患者群で,開始時のCBUTはC3.0C±1.3秒であった.4週後にはC4.0C±2.1秒と有意な増加を示し(p<0.001),52週までのすべての観察時点で開始時と比べて有意な増加を示した.最終観察時点の平均値はC4.3C±2.2秒であった.角結膜障害が明らかな患者群(スコアC3以上)では,開始時C2.7C±1.3秒,4週後C3.9C±2.0秒と有意な改善を示し(p<0.001),52週までのすべての観察時点で開始時と比べて有意な増加を示した.最終観察時点の平均値はC4.5C±2.2秒であった.どちらの患者群でも開始時に比べてC4週後以降は有意な改善を示し,レバミピド点眼液の有効性が確認できた.患者ごとに投与前と最終評価時を比較すると,角結膜障害なしまたは軽度の患者群でCBUT改善C55%,変化なし34%,悪化C11%,角結膜障害が明らかな患者群でCBUT改善76%,変化なしC21%,悪化C3.7%であった.図3に角結膜上図1症例構成表1患者背景の比較全体Cn=916BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度(BUTC5秒以下,染色スコアC2以下)(n=291)BUT短縮かつ角結膜上皮障害(BUTC5秒以下,染色スコアC3以上)(n=411)p値性別:女性の割合(%)C83.8C83.9C86.6C0.32861)年齢:平均値(年)C63±16C62±17C63±16C0.66412)重症度(医師判定)軽度(%)中等度(%)重症(%)C41C51C8C64C34C2C24C64C11<C0.0001***C1)BUT(秒)C3.0±1.6C2.9±1.3C2.7±1.3C0.0078**2)染色スコアの平均値C3.1±2.3C0.98±0.82C4.67±1.64<C0.0001***C2)ドライアイの原因環境因子(%)合併症(%)眼手術(%)コンタクトレンズ(%)薬剤(%)その他(%)C44.5C12.2C9.2C5.6C3.3C36.7C46.7C11.0C10.7C7.9C3.1C32.7C47.5C13.4C7.5C4.9C2.9C36.5C0.87821)C0.35541)C0.17701)C0.11091)C1.00001)C0.29741)合併症白内障(%)緑内障(%)アレルギー性結膜炎(%)結膜炎(%)Sjogren症候群(%)C17.4C12.0C11.6C5.8C5.8C15.8C8.3C15.5C7.9C1.7C16.3C10.2C8.3C6.8C8.8C0.91711)C0.43171)C0.0035**1)C0.65841)<C0.0001***C1)コンタクトレンズあり(%)C6.9C9.3C6.6C0.19611)前治療薬ヒアルロン酸(%)ジクアホソルCNa点眼(%)ステロイド(%)人工涙液(%)C12.4C13.2C4.7C1.3C11.7C16.2C4.8C1.4C13.9C13.1C3.9C1.2C0.42611)C0.27621)C0.57411)C1.00001)1)Fisherの正確検定,2)t検定.表2a投与前自覚症状の比較BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度(BUTC5秒以下,染色スコアC2以下)BUT短縮かつ角結膜上皮障害中等度以上(BUTC5秒以下,染色スコアC3以上)p値異物感75.4%(C211/280名)89.4%(C361/404名)<C0.00011)乾燥感77.8%(C217/279名)90.6%(C366/404名)<C0.00011)羞明25.2%(69/274名)54.7%(C217/397名)<C0.00011)眼痛45.0%(C125/278名)60.8%(C245/403名)<C0.00011)霧視25.0%(69/276名)54.0%(C216/400名)<C0.00011)1)Fisherの正確検定.表2b投与前自覚症状のスコアの比較BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度(BUTC5秒以下,染色スコアC2以下)BUT短縮かつ角結膜上皮障害中等度以上(BUTC5秒以下,染色スコアC3以上)p値異物感C1.78±0.86(C211名)C2.10±0.95(C361名)<C0.00012)乾燥感C1.91±0.91(C217名)C2.22±0.97(C366名)C0.00022)羞明C1.65±0.84(69名)C1.80±0.87(C217名)C0.21122)眼痛C1.70±0.90(C125名)C1.85±0.94(C245名)C0.13392)霧視C1.59±0.79(69名)C1.63±0.91(C216名)C0.74202)2)t検定.BUT5秒以下かつ染色スコア2以下BUT5秒以下かつ染色スコア3以上9.08.07.06.05.04.03.02.01.0BUT(秒)スコアC2以下Cn=291C146C93102C75C58C51C68C44C47C37C32C31C44249スコアC3以上Cn=411C176133138119C72C79C91C80C80C66C71C66C64325図2BUTの推移(染色スコア別)皮障害の程度別にC2群に分類した患者群について,レバミピ時と最終観察時点で比較した.24名でCBUTの投与前後の比ド点眼液投与後の自覚症状の平均値の推移を示した.すべて較が可能であった.BUTは開始時C2.9C±1.1秒からC4.0C±1.8の自覚症状について角結膜上皮障害の程度にかかわらず有意秒へ有意な改善が認められた(p<0.01).また,自覚症状C5な改善が認められた.項目について開始時と最終観察時のスコアを比較したとこC3.CL装用者の結果ろ,すべての自覚症状で開始時と比べて有意な改善が認めらBUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度な患者C291れた(すべてp<0.01)(図4).名のうちCCL装用者C27名を抽出し,BUT,自覚症状を開始異物感乾燥感羞明染色スコア2以下染色スコア3以上染色スコア2以下染色スコア3以上染色スコア2以下染色スコア3以上2.52.52.50.50.50.50.00.00.0スコアスコア2.02.02.0スコア1.51.51.51.01.01.0開始時481216202428323640444852開始時481216202428323640444852開始時481216202428323640444852眼痛霧視染色スコア2以下染色スコア3以上染色スコア2以下染色スコア3以上2.52.50.50.50.00.02.02.0スコアスコア1.51.51.01.0開始時481216202428323640444852開始時481216202428323640444852図3自覚症状の推移(生体染色スコア別)BUT(n=24)自覚症状■投与前■最終観察時■投与前■最終観察時6.03.53.05.02.54.0BUT(秒)2.0スコア3.01.52.01.01.00.50.00.010)=n(霧視16)=n(眼痛11)=n(羞明22)=n(21)乾燥感=(n異物感図4コンタクトレンズ装用者のBUTと自覚症状の投与前と最終観察時の比較4.眼手術既往患者の結果秒からC3.4C±1.6秒へ改善傾向が認められたが,統計学的有BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度な患者C291意差はなかった(Cp=0.0761).自覚症状C5項目についても開名のうち眼手術がドライアイの原因であった患者C31名を抽始時と最終観察時のスコアを比較した結果,異物感,乾燥出し,BCUT,自覚症状を開始時と最終観察時点で比較した.感,眼痛は投与開始時に比べて有意な改善を示した(いずれ24名で投与前後のCBUTが比較可能であり,開始時C2.9C±1.4もp<0C.01).一方で,羞明,霧視ではスコアの改善傾向は4.02.05.02.5BUT(秒)3.01.52.01.01.00.50.00.0図5ドライアイの原因が眼手術であった患者のBUTと自覚症状の投与前と最終観察時の比較表3おもな副作用発現率副作用名BUT短縮かつ角結膜上皮障害なしまたは軽度(BUTC5秒以下,染色スコアC2以下)BUT短縮かつ角結膜上皮障害中等度以上(BUTC5秒以下,染色スコアC3以上)味覚異常9.6%(C28/291名)9.5%(C39/411名)霧視3.8%(C11/291名)2.9%(C12/411名)アレルギー性結膜炎0.7%(2/291名)0.7%(3/411名)眼脂0.7%(2/291名)0.0%(0/411名)眼痛0.7%(2/291名)0.7%(3/411名)眼そう痒症0.7%(2/291名)0.2%(1/411名)MedDRA/Jversion20.0で集計.認められたものの有意ではなかった(図5).C5.副作用表3にC0.5%以上報告された副作用を発現率順に示した.もっとも多く報告された副作用は本剤の物性である苦味に起因すると考えられる味覚異常であり,染色スコアC2以下の患者,3以上の患者でそれぞれC9.6%,9.5%であった.次に多く報告された事象は霧視であり,それぞれC3.8%,2.9%であった.なお,副作用の霧視はドライアイの症状としての霧視とは区別して評価した.これらの発現率は製造販売後調査データ全体(916名)の発現率,味覚異常C9.3%(85/916名),霧視C3.2%(29/916名)とほぼ同じであり,差異は認められなかった.CIII考察2016年に新しい「ドライアイ診断基準」が公表されたことから,レバミピド点眼液の製造販売後調査結果を再解析したところ,916例の全例がなんらかの自覚症状を有していた.そしてCBUT5秒超であった患者割合はわずかC3.9%であり,ほとんどの患者がCBUT5秒以下の患者であったと推測された.すなわち,このC916名ほぼ全員が,新しい「ドライアイ診断基準」ではドライアイと確定診断されると考えられる.レバミピド点眼液の承認申請に用いた第CIII相試験では,フルオレセイン染色スコアがC4以上(15点満点)の患者を対象としていた.そのため,角結膜上皮障害がないまたは染色スコアが低い患者に対するレバミピド点眼の有効性・安全性は確認されていなかった.今回,製造販売後調査データから,BUT短縮例のうち,角結膜上皮障害がないまたは軽度な患者と明らかに角結膜上皮障害がある患者の患者背景,有効性を比較した.患者背景の比較から角結膜上皮障害がないまたは軽度な患者では医師判定の重症度が低く,アレルギー性結膜炎の割合が高いという特徴が見いだされた.これは戸田らの報告と一致していた6).有効性の指標としてCBUTの改善を比較したところ,角結膜上皮障害の程度にかかわらずレバミピド点眼液の効果を確認することができた.同様にC5項目の自覚症状についても二つの患者群でともに改善を確認することができた.これらの結果から,レバミピド点眼液は角結膜上皮障害の程度にかかわらず有効性を示すと考えられた.サブグループとしてCCL装用患者の解析も実施した.レバミピド点眼液は防腐剤を含まないユニットドーズ点眼薬であり,防腐剤による眼表面上皮への細胞損傷の可能性が無視できる.今回,筆者らはCCL装用患者でCBUT,自覚症状の改善を確認することができた.CL装用者に対するレバミピド点眼液の有効性については人工涙液との比較でコントラスト感度,BUT,結膜上皮障害スコアが有意に改善することを浅野らが報告している7).今回は比較対象薬がない検討ではあるが,さまざまな治療薬が使用されている実臨床下で開始時と比較してレバミピド点眼液の有効性が示されたことには意義があると考えられる.また,サブグループとして眼手術がドライアイの原因である患者の解析を行ったところ,自覚症状のうち乾燥感,異物感,眼痛で投与後に有意な改善を示した.BUTおよび羞明,霧視という自覚症状では有意傾向を示すものの統計学的有意差が認められなかった.今後,手術の種類や時期などについて詳細に解析,検討する必要がある.なお,副作用の発現状況においても染色スコアC2以下の患者群と染色スコアC3以上の患者群で発現率に大きな違いは認められなかった.副作用のうち味覚異常(苦味)は本剤が鼻涙管を経由して鼻咽頭へ流れ込むこと,霧視は本剤が懸濁製剤であることに起因すると考えられるが,いずれも一過性の事象である.以上,実臨床データを用いた解析から,BUT短縮かつ角結膜上皮障害がなしまたは軽度なドライアイ患者に対しても,レバミピド点眼液の有効性と安全性が示されていることを確認した.謝辞:本報告にあたり,調査にご協力いただいた先生方に厚くお礼申し上げます.また,統計解析を実施していただきましたエイツーヘルスケア株式会社竹田眞様に感謝いたします.文献1)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:ArandomizedmulticenterCphaseC3studyCcomparing2%Crebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreat-mentofdryeye.OphthalmologyC120:1158-1165,C20132)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:Rebamipideincreas-esCbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionandcytokineexpressioninhumancornealepithelialcells.BrJOphthalmolC97:912-916,C20133)増成彰,安田守良,曽我綾華ほか:レバミピド懸濁点眼液(ムコスタ点眼液CUD2%)の有効性と安全性―製造販売後調査結果─,あたらしい眼科33:101-107,C20164)島崎潤;ドライアイ研究会:2006年ドライアイ診断基準,あたらしい眼科24:181-184,C20075)島﨑潤,横井則彦,渡辺仁ほか;ドライアイ研究会:日本のドライアイの定義と診断基準の改訂(2016年版).あたらしい眼科34:309-313,C20176)TodaCI,CShimazakiCJ,CTsubotaK:DryCeyeCwithConlyCde-creasedCtearCbreak-upCtimeCisCsometimesCassociatedCwithCallergicconjunctivitis.OphthalmologyC102:302-309,C19957)浅野宏規,平岡孝浩,大鹿哲郎:コンタクトレンズ装用眼におけるレバミピド点眼の安全性と有効性.眼臨紀8:155-157,C2015C***

レセプトデータベースを用いたレバミピド懸濁点眼液による涙囊炎・涙道閉塞関連事象の発生状況に関する検討

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1489?1492,2016cレセプトデータベースを用いたレバミピド懸濁点眼液による涙?炎・涙道閉塞関連事象の発生状況に関する検討古田英司*1柴崎佳幸*2福田泰彦*1坪田一男*3大橋裕一*4木下茂*5*1大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部*2大塚製薬株式会社医薬品事業部メディカル・アフェアーズ部*3慶應義塾大学医学部眼科学教室*4愛媛大学*5京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学RetrospectiveAnalysisofaHealth-InsuranceClaimsDatabasetoInvestigatethePrevalenceofDacryocystitisandDacryostenosisRelatedCasesanditsCorrelationwithRebamipideinOphthalmicSuspensionsAdministeredtoDry-EyePatientsEijiFuruta1),YoshiyukiShibasaki2),YasuhikoFukuta1),KazuoTsubota3),YuichiOhashi4)andShigeruKinoshita5)1)PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofMedicalAffairs,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,4)EhimeUniversity,5)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine目的:筆者らはレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の投薬下において涙道閉塞,涙?炎などが認められた症例について報告したが,本稿では,同薬についてレセプトデータベースを用いて,新たに検討を行ったので報告する.方法:レセプトデータベースより取得したデータに基づいて,ドライアイ患者における処方点眼薬を,含有成分別に分類し,処方点眼薬ごとに涙?炎,涙道閉塞の新規発生患者の例数および割合を算出した.結果:レバミピド懸濁点眼液を処方された患者における各関連事象の新規発生割合は,涙?炎0.079%,涙道閉塞0.315%であった.なお,処方点眼薬の含有成分による発生傾向の違いは認められなかった.結論:本検討手法は,データベースの特性を十分に配慮しつつも,同薬における,より実臨床に即した各事象の発生状況を把握する一つの手段として有効であると考えられた.Purpose:Wepreviouslyreportedaretrospectivereviewofpatientswhodevelopeddacryocystitisanddacryostenosisasadverseeventswhileundergoingtheadministrationofrebamipideophthalmicsuspension.Inthispresentstudy,weretrospectivelyanalyzedtheprevalenceofdacryocystitisanddacryostenosisinrelationtorebamipideophthalmicsuspensionuseintheclinicalsettingviatheuseofahealth-insuranceclaimsdatabase.Methods:Weretrospectivelyanalyzedahealth-insuranceclaimsdatabasetoinvestigatetheprevalenceofdacryocystitisanddacryostenosisinpatientswhowereadministeredophthalmicsolutionsforthetreatmentofdryeye.Thosesolutionswerethenclassifiedinrelationtotheirrespectivecomponents.Results:Theprevalenceratesofdacryocystitisanddacryostenosisindry-eyepatientswhounderwentrebamipideadministrationwere0.079%and0.315%,respectively.Nocorrelationwasfoundbetweentheprevalenceofdacryocystitisanddacryostenosisandthetypeofophthalmicsolutioncomponentadministered.Conclusions:Althoughlimitationsdidexistinregardtotheinterpretationofthedatabase,thefindingsofthisstudyrevealednocorrelationbetweentheprevalenceofdacryocystitisanddacryostenosisdevelopmentandtheadministrationofrebamipideophthalmicsuspensionforthetreatmentofdryeyeintheclinicalsetting.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1489?1492,2016〕Keywords:レバミピド,点眼液,レセプトデータベース,涙?炎,涙道閉塞.rebamipide,ophthalmicsolution,health-insuranceclaimsdatabase,dacryocystitis,dacryostenosis.はじめにレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD0.2%,大塚製薬)は,白色を呈した水性懸濁点眼液である.おもな副作用としては,苦味,眼刺激感,眼?痒,霧視などが認められている1?3).また,2015年3月における同薬の添付文書改訂の際には,重大な副作用の項に涙道閉塞(0.1?5%未満),涙?炎(頻度不明)が追記された1).そこで筆者らは,同薬の使用による涙?炎,涙道閉塞などの発生要因を明らかにするため,大塚製薬に集積された症例,ならびに患者から採取された異物の成分分析結果について検討を行ったが,副作用の発症要因の特定には至らなかった4).そこで,筆者らは,大塚製薬に集積された症例情報ではなく,薬剤処方実態などの解析に利用されているレセプトデータベース5)を用いて,ドライアイ患者における涙?炎,涙道閉塞の発生状況を処方点眼薬の含有成分別に分類し,検討を行ったので報告する.I対象および方法日本医療データセンター(JMDC)が管理・提供しているレセプトデータベースについて,同社が提供しているWebツールであるJDM-ファーマコヴィジランスを用いて解析を行った.本データベースには,2016年2月1日時点で2,914,429人の被保険者および被扶養者が登録されていた.分析に使用したデータの抽出対象期間は,データ解析を行った時点で抽出可能であった直近1年間(2014年9月?2015年8月)とした.対象者は,ドライアイの傷病名をもつ患者群を対象とした.新規発生事象は,対象期間中(処方月?2015年8月)のレセプトに新たに記載された傷病名のうち,処方月直前の過去6カ月間に記載されていない事象と定義した.また,各薬剤の処方状況においても,対象期間中に処方された薬剤のうち,処方月直前の過去6カ月間には処方されていないものとした.対象事象は,涙?炎関連,涙道閉塞関連とし,各カテゴリーに該当するICD10コードを選定し(表1),前述の条件を満たした薬剤が処方されている患者群を対象に新規発生事象の発現例数および割合を算出した.対象薬剤は,レバミピド,フルオロメトロン(A),オキシブプロカイン塩酸塩,ネオスチグミンメチル硫酸塩・無機塩類配合,精製ヒアルロン酸ナトリウム(A),精製ヒアルロン酸ナトリウム(B),精製ヒアルロン酸ナトリウム(C),人工涙液,ジクアホソルナトリウム,精製ヒアルロン酸ナトリウム(D),フルオロメトロン(B),レボフロキサシン水和物である.また,レバミピドとその他の薬剤とにおける発生割合の比較にはc2検定を用いた.本研究では,有意水準はとくには設定せず,p値は参考値として示した.対象薬剤については,異なった含有成分であるポリビニルアルコール含有点眼薬,ホウ酸・ホウ砂含有点眼薬,ポリビニルアルコール,ホウ酸・ホウ砂非含有点眼薬の3種類の点眼薬処方について,処方患者数が多かった4剤を比較した.II結果レバミピド懸濁点眼液の適応症であるドライアイを対象に,各薬剤の処方月以降に発生した新規発生事象のうち,涙?炎関連,涙道閉塞関連に該当する事象をもつ患者数(対象総数は,レバミピド3,804名,フルオロメトロン(A)2,028名,オキシブプロカイン塩酸塩633名,ネオスチグミンメチル硫酸塩・無機塩類配合587名,精製ヒアルロン酸ナトリウム(A)5,795名,精製ヒアルロン酸ナトリウム(B)5,740名,精製ヒアルロン酸ナトリウム(C)2,423名,人工涙液2,310名,ジクアホソルナトリウム10,776名,精製ヒアルロン酸ナトリウム(D)8,596名,フルオロメトロン(B)3,523名,レボフロキサシン水和物3,286名)について表2に示した.レバミピド懸濁点眼液における各事象の発生患者数とその割合は,涙?炎関連事象3名,0.079%,涙道閉塞関連事象12名,0.315%であった.また,レバミピド懸濁点眼液の患者群における各事象の発生割合の比較を表2に示した.各事象は,含有成分である,ポリビニルアルコールやホウ酸・ホウ砂の有無にかかわらず,一定の割合で発生していることが認められた.III考按大塚製薬では,レバミピド懸濁点眼液の使用患者における涙?炎,涙道閉塞などの副作用報告を受け,その発生要因や採取された異物に残留する成分に関する検討結果の報告4),ならびに検討の継続を行っているが,いまだ発生要因を特定するには至っていない.しかしながら,同薬の使用により認められた涙?炎,涙道閉塞などには,重篤と判断された事象も存在することから,より実臨床に沿ったリスク最小化ならびに適正使用の推進を図る必要性があると考えている.その一環として,外部のデータベースであり,また,これまでに薬剤処方実態などの解析に使用されているJMDC提供のレセプトデータベースを用いて,ドライアイ患者に対するレバミピド懸濁点眼液の処方実態,ならびに点眼薬の含有成分の涙?炎,涙道閉塞発生に対する影響について検討を行った.レバミピド懸濁点眼液処方患者において,表1に定義された涙?炎,涙道閉塞などの関連事象の発生割合については,表2のとおりであり,レバミピド懸濁点眼液における各事象の発生割合が有意に高いと結論づけることはできなかった.対象患者における併用薬剤やその他の要因による影響については,本解析手法で考慮することは不可能であった.また,複数の併用薬を同時期に処方されている場合や複数の事象が認められている患者が重複して集計された発生割合となっているが,以前の報告4,6)における発症頻度とおおむね同等の範囲に入っていると考えられた.点眼液の含有成分の配合変化について,杉本ら4)は,レバミピド懸濁点眼液使用患者から採取された異物の成分分析結果などを示した.本検討においても,点眼薬の含有成分による影響について検討を試みた.しかしながら,レバミピド懸濁点眼液を含むポリビニルアルコール含有製剤,また同薬との配合変化の懸念が示唆されているホウ酸・ホウ砂含有製剤,ならびにポリビニルアルコールとホウ酸・ホウ砂の両方を含まない非含有製剤のいずれにおいても,製剤の含有成分に依存する発生傾向などを見出すには至らなかった.また,該当する患者がいない事象も存在した.なお,レボフロキサシン水和物の使用者に涙?炎,涙道閉塞が有意に多くみられるのは先行する疾病の存在を疑わせるが,オキシブプロカイン塩酸塩の使用者にも多くみられることについては原因の推定は困難であった.本稿で示した結果はレセプト情報に起因するものであるため,レセプトに記載される傷病名と報告副作用名とが必ずしも一致しない点や,処方理由,処方薬との因果関係の有無,重篤性,処方薬へのアドヒアランスについて明確にできない点など,情報源の性質による限界があることを理解しておく必要がある.また,データベースから抽出可能な項目が限られているため,交絡を調整する解析も十分になされていない.しかしながら,本手法は,大塚製薬に集積される症例情報に加え,実臨床の場における処方患者数や注目する傷病の発生傾向を把握する一つの手段として有効であると考えられる.なお,涙?炎,涙道閉塞などの発生要因は明らかでないものの,懸濁性点眼液を他の水溶性点眼液と併用する場合は,水溶性点眼液を先に点眼し,5分間以上の間隔をあけて点眼することが推奨されている7).したがって,レバミピド懸濁点眼液においても,重篤な患者の発生を抑えるため,他の点眼薬と併用する場合には,添付文書で注意喚起されているように,5分間以上の間隔をあけて,水溶性点眼液の後に点眼するなどの適正使用が望まれる.本稿は大塚製薬により実施された解析結果に基づいて執筆した.開示すべきCOIは木下茂(試験研究費・技術指導料・講演料),坪田一男(試験研究費・技術指導料・講演料),大橋裕一(技術指導料・講演料)である.文献1)大塚製薬株式会社:ムコスタR点眼液UD2%製品添付文書(2015年3月改訂,第4版)2)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:Arandomized,multicenterphase3studycomparing2%rebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreatmentofdryeye.Ophthalmology120:1158-1165,20133)KinoshitaS,AwamuraS,OshidenKetal:Amulticenter,open-label,52-weekstudyof2%rebamipide(OPC-12759)ophthalmicsuspensioninpatientswithdryeye.AmJOphthalmol157:576-583,20144)杉本夕奈,福田泰彦,坪田一男ほか:レバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の投与にかかわる涙道閉塞,涙?炎および眼表面・涙道などにおける異物症例のレトロスペクティブ検討,あたらしい眼科32:1741-1747,20155)株式会社日本医療データセンター(JMDC)6)増成彰,安田守良,曽我綾華ほか:ドライアイに対するレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の有効性と安全性─製造販売後調査結果.あたらしい眼科33:443-449,20167)大谷道輝:点眼剤の「実践編」.JJNスペシャル80:170-176,2007〔別刷請求先〕古田英司:〒540-0021大阪府大阪市中央区大手通3-2-27大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部Reprintrequests:EijiFuruta,Ph.D.,PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-2-27Ote-dori,Chuo-ku,Osaka540-0021,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(103)表1検討対象事象*[]はICD10コード涙?炎関連事象[H043]涙?炎,[H043]急性涙?炎,[H044]慢性涙?炎涙道閉塞関連事象[H045]涙点閉塞症,[H045]涙小管狭窄,[H045]涙小管閉塞症,[H045]鼻涙管狭窄症,[H045]鼻涙管閉鎖症,[H045]涙道狭窄,[H045]涙道閉塞症1490あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(104)表2ドライアイ患者における処方点眼薬ごとの新規発生事象割合ポリビニルアルコール含有点眼薬レバミピド(n=3,804)実患者数(%)p値a)フルオロメトロン(A)(n=2,028)実患者数(%)p値a)オキシブプロカイン塩酸塩(n=633)実患者数(%)p値a)ネオスチグミンメチル硫酸塩・無機塩類配合(n=587)実患者数(%)p値a)涙?炎関連3(0.079)?1(0.049)0.68143(0.474)0.01230(0)0.4961涙道閉塞関連12(0.315)?7(0.345)0.849629(4.581)<0.00010(0)0.1730ホウ酸・ホウ砂含有点眼薬精製ヒアルロン酸ナトリウム(A)(n=5,795)実患者数(%)p値a)精製ヒアルロン酸ナトリウム(B)(n=5,470)実患者数(%)p値a)精製ヒアルロン酸ナトリウム(C)(n=2423)実患者数(%)p値a)人工涙液(n=2,310)実患者数(%)p値a)涙?炎関連0(0)0.03255(0.091)0.83962(0.083)0.96020(0)0.1770涙道閉塞関連13(0.224)0.391514(0.256)0.59393(0.124)0.13264(0.173)0.2910ポリビニルアルコール,ホウ酸・ホウ砂非含有点眼薬ジクアホソルナトリウム(n=10,776)実患者数(%)p値a)精製ヒアルロン酸ナトリウム(D)(n=8,596)実患者数(%)p値a)フルオロメトロン(B)(n=3523)実患者数(%)p値a)レボフロキサシン水和物(n=3,286)実患者数(%)p値a)涙?炎関連7(0.065)0.77826(0.070)0.86285(0.142)0.414112(0.365)0.0089涙道閉塞関連32(0.297)0.858125(0.291)0.816717(0.483)0.255126(0.791)0.0062a)c2検定,p値は参考値として示した.(105)あたらしい眼科Vol.33,No.10,201614911492あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(106)

ドライアイに対するレバミピド懸濁点眼液(ムコスタ®点眼液UD2%) の有効性と安全性─製造販売後調査結果─

2016年3月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(3):443.449,2016cドライアイに対するレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の有効性と安全性─製造販売後調査結果─増成彰*1安田守良*1曽我綾華*1板東孝介*1福田泰彦*1木下茂*2*1大塚製薬株式会社ファーマコヴィジランス部*2京都府立医科大学感覚器未来医療学EffectivenessandSafetyofRebamipideOphthalmicSuspension(MucostaROphthalmicSuspensionUD2%)inPatientswithDryEyeSyndrome─ResultsofPost-MarketingSurveillance─AkiraMasunari1),MoriyoshiYasuda1),AyakaSoga1),KosukeBando1),YasuhikoFukuda1)andShigeruKinoshita2)1)PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineドライアイ治療薬「ムコスタR点眼液UD2%」の使用実態下における観察期間1年の特定使用成績調査を実施し,916例の有効性と安全性の結果をまとめた.その結果,生体染色スコアは投与開始時3.1±2.3点から4週目に1.8±1.8点への改善が認められた(p<0.001).涙液層破壊時間(tearfilmbreak-uptime:BUT)では開始時3.0±1.6秒から4週目に4.0±2.1秒への改善が認められた(p<0.001).自覚症状(異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視)のいずれのスコアについても,開始時に比べて有意な改善が認められた(p<0.001).安全性の指標とした副作用の発現率は14.6%であり,おもな副作用は本剤の物性に起因すると思われる味覚異常をはじめ,霧視,アレルギー性結膜炎,結膜炎,眼瞼炎,眼痛などであった.最終観察時点の評価判定は有効85.7%,無効4.9%であった.以上よりレバミピド懸濁点眼液の実臨床下における有効性と安全性が確認された.Weconductedaone-yearpost-marketingsurveillancestudytoinvestigatetheeffectivenessandsafetyofMucostaROphthalmicSuspensionUD2%forpatientswithdryeyesyndrome.Wereportthefinalresultfrom916patients.Asaneffectivenessmeasurement,fluoresceincornealstainingscorewasimprovedfrom3.1±2.3atbaselineto1.8±1.8atweek-4.Andtearfilmbreak-uptimewasimprovedfrom3.0±1.6secondsatbaselineto4.0±2.1secondsatweek-4.Dryeye-relatedocularsymptoms,suchasforeignbodysensation,dryness,photophobia,eyepain,andvisionblurred,werealsoimproved.Aprevalenceofadversedrugreactionwas14.6%.Frequentlyreportedeventsweredysgeusiaduetocharacteristicsofrebamipide,visionblurred,conjunctivitisallergic,conjunctivitis,blepharitis,eyepain.Intheoverallimprovementrating,85.7%waseffectiveand4.9%wasineffective.Theresultsindicatetheeffectivenessandsafetyofrebamipideophthalmicsuspensionwereconfirmedintherealworldsettings.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(3):443.449,2016〕Keywords:レバミピド,ドライアイ,製造販売後調査,有効性,安全性.rebamipide,dryeye,post-marketingsurveillance,effectiveness,safety.はじめにレバミピドは胃粘膜の保護・修復作用を有し,1990年に胃潰瘍の治療薬として発売された薬剤である.その後,レバミピドが眼表面においても粘膜機能を改善すること1),ドライアイに対し臨床的に有効であることが確認され2,3),2012年1月にレバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%,以下,本剤)はドライアイ治療薬として発売された.筆者らは全国の眼科専門医の協力により,本剤の長期使用時の使用実態下における有効性および安全性を検討する目的で特定使用成績調査(調査期間:2012年8月.2015年1月)を実施〔別刷請求先〕増成彰:〒540-0021大阪府大阪市中央区大手通3-2-27大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部Reprintrequests:AkiraMasunari,PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-2-27,Otedori,Chuo-ku,Osaka-shi,Osaka540-0021,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(113)443 した.本稿では,本特定使用成績調査の解析結果から有効性と安全性について報告する.I対象および方法1.調査方法本調査は治療内容に介入しないプロスペクティブな観察研究であり,日本全国の眼科を標榜する医療機関と事前に契約を交わして実施した.対象患者はドライアイと診断された患者とし,過去に本剤の使用経験がある患者は除外した.目標症例を1,000例とした.症例登録は中央登録方式とした.観察期間は1年間とし,観察期間中の情報を調査担当医師が調査票に記入した.なお,観察中に投与中止した場合はその時点で観察終了とし,調査票を記入することとした.本調査にあたっては,「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令:平成16年12月20日厚生労働省令第171号(GPSP省令)」を遵守した.なお,本調査は観察的研究であることから患者への説明と同意,医療機関における倫理委員会による審査は必須とはしなかった.2.調査項目調査項目として以下の情報を収集した.患者背景:性別,年齢,コンタクトレンズの使用状況,対象眼の重症度,罹病期間,ドライアイの原因,合併症など.投与状況:投与期間,中止理由,1日点眼回数など.有効性評価のための調査項目:以下の情報を収集した.投与開始時および観察期間中に実施された生体染色スコア(フルオレセイン,リサミングリーン,ローズベンガル),涙液層破壊時間(tearfilmbreak-uptime:BUT),Schirmerテストの結果,自覚症状5項目スコア.生体染色スコアは耳側球結膜,角膜,鼻側球結膜における染色の程度をそれぞれ3点,合算9点満点で判定した.また,自覚症状5項目(異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視)について(0:症状なし,1:弱い症状あり,2:中くらいの症状あり,3:強い症状あり,4:非常に強い症状あり)の5段階のスコアで患者からの聞き取りにより評価した.以上の結果を総合的に判断し,有効,無効,判定不能の3分類で担当医師が効果判定を行った.安全性評価のための調査項目:本剤投与開始後の有害事象(臨床検査値の異常変動を含む)を収集した.3.解析方法有効性評価として,生体染色スコア,BUT,自覚症状5項目スコアについて,投与開始時および投与後の数値の推移を検討した.また,投与開始時重症度別の評価として,開始時の生体染色スコアによって「0.3点:軽症」「4.6点:中等症」「7.9点:重症」の3群に分け,「開始時染色スコア別」にて各評価項目の数値の推移を検討した.なお,Schirmer444あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016テストについては,本剤投与後に実施された症例数が少なかったため十分な評価ができなかった.安全性評価として,本剤投与後に発現した副作用(本剤との因果関係が否定できないと判断された有害事象)について集計し,発現率を算出した.有効性の解析は平均値と標準偏差を算出し,対応のあるt-検定を実施して投与開始時との比較を行った.自覚症状の解析では,投与開始時に症状がある患者のみを解析対象とした.すべての解析で欠測値の補完はしなかった.副作用の集計には「ICH国際医薬用語集日本語版」(MedDRA/J:MedicalDictionaryforRegulatoryActivities/J,version17.1)の基本語を使用した.統計解析はシミックPMS株式会社,エイツーヘルスケア株式会社でSASを用いて実施した.II結果1.解析対象患者全国の159施設より1,073人が登録され,158施設より1,068例の調査票を回収した.そのうち一度も診察がなかった151例と本剤が投与されなかった1例を除外した916例を安全性・有効性解析対象とした.2.患者背景表1に患者背景を示す.年齢の平均値は63±16歳であった.医師判定に基づく投与開始時のドライアイ重症度は軽症41.4%,中等症50.9%と,軽症から中等症が大半を占めた.投与開始時の生体染色スコアは9点満点中3点以下(0点を含む)の低スコアが59.1%であった.一方,投与開始時BUTが5秒以下の異常値を示す患者は,不明を除く744例中708例(95.2%)と大半であった.投与開始時Schirmerテストでは5mm超と5mm以下の割合はほぼ同じであった.ドライアイの原因別では乾燥などの環境因子が44.5%ともっとも多かった.3.投与状況表2に投与状況を示す.添付文書通りの1日4回投与が93.2%であった.12カ月(360日)を超えて投与された症例は337例(36.8%)であった.観察期間の中央値は294日,平均値は243±155日であった.本剤投与中に一度でも併用された薬剤を集計したところ,ヒアルロン酸点眼がもっとも多く約半数の患者(51.2%)で併用されていた.また,中止理由を複数選択可で調査した結果,「来院せず」がもっとも多く240例,「患者または家族の希望」が95例,「有害事象発現」が77例の順であった.4.有効性a.生体染色スコア図1に生体染色スコアの推移を示す.投与開始時に3.1±2.3点であったスコアは4週目に1.8±1.8点と有意に改善し(p<0.001),そのスコアは52週目には1.3±1.4点(p<(114) 表1患者背景(n=916)表2投与状況(n=916)項目分類n(%)性別男性148(16.2%)女性768(83.8%)<209(1.0%)年齢(歳)Mean63±1620.2931(3.4%)30.3952(5.7%)Min3Median66Max9740.4987(9.5%)50.59135(14.7%)60.69223(24.3%)≧70379(41.4%)ドライアイ重症度(医師判定)軽症379(41.4%)中等症466(50.9%)重症71(7.8%)生体染色スコア0120(13.1%)(フルオレセイン882例,ローズベンガル1例,リサミングリーン2例,フルオレセイン+1.3421(46.0%)4.6279(30.5%)7.966(7.2%)リサミングリーン1例)不明30(3.3%)>536(3.9%)BUT(秒)>1,≦5592(64.6%)≦1116(12.7%)不明172(18.8%)>5146(15.9%)Schirmerテスト>2,≦589(9.7%)(mm)≦253(5.8%)不明628(68.6%)1年未満85(9.3%)2年未満43(4.7%)罹病期間(年)3年未満31(3.4%)3年以上135(14.7%)不明622(67.9%)環境因子408(44.5%)合併症112(12.2%)ドライアイの原因眼手術84(9.2%)コンタクトレンズ51(5.6%)薬剤30(3.3%)その他336(36.7%)白内障159(17.4%)緑内障110(12.0%)合併症アレルギー性結膜炎106(11.6%)結膜炎53(5.8%)Sjogren症候群51(5.8%)Stevens-Johnson症候群0(0.0%)コンタクトレンズなし843(92.0%)あり63(6.9%)コンタクトレンズのタイプソフト44*(4.8%)ハード19*(2.1%)ソフト・ハード不明1(0.1%)前治療薬(本剤投与前のドライアイ治療薬)ヒアルロン酸点眼114(12.4%)ジクアホソルナトリウム点眼121(13.2%)ステロイド点眼43(4.7%)人工涙液12(1.3%)*ソフト+ハード1例を含む.項目分類n(%)4回未満58(6.3%)1日投与回数4回854(93.2%)4回超3(0.3%)不明1(0.1%)≦30100(10.9%)観察期間(日)Mean243±155Min2Median294Max61231.6089(9.7%)61.120119(13.0%)121.240111(12.1%)241.360159(17.4%)≧361337(36.8%)不明1(0.1%)ヒアルロン酸点眼469(51.2%)併用薬ステロイド点眼163(17.8%)ジクアホソルナトリウム点眼101(11.0%)人工涙液75(8.2%)来院せず240患者または家族の希望95中止理由(複数選択可)有害事象発現77効果不十分17転院7病態悪化3その他250.001)と効果が継続していた.「開始時染色スコア別」の推移を検討した結果,投与開始時のスコアにかかわらず有意に生体染色スコアの改善が認められた(図2).b.BUT図3にBUTの推移を示す.投与開始時3.0±1.6秒,4週目には4.0±2.1秒と有意に延長し(p<0.001),その後も52週目に4.5±2.2秒と有意な延長は継続していた(p<0.001).図4に「開始時染色スコア別」のBUTの推移を示す.投与開始時の生体染色スコアにかかわらずBUTは有意に延長した.c.自覚症状スコア(5項目)図5に自覚症状5項目のスコアの推移を示す.異物感,乾燥感,羞明,眼痛,霧視それぞれのスコアは,投与開始時2.0±1.0,2.1±1.0,1.8±0.9,1.9±0.9,1.7±0.9と比べて,4週目には1.0±0.9,1.2±0.9,0.9±0.8,0.8±0.9,0.9±0.9とすべての項目で統計学的に有意な自覚症状スコアの改善が認められ,52週目には0.4±0.7,0.6±0.8,0.4±0.6,0.3±0.6,0.5±0.9と改善は継続していた(いずれもp<0.001).図6に「開始時染色スコア別」の自覚症状スコア5項目の合(115)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016445 生体染色スコア生体染色スコア生体染色スコア6543210開始時481216202428323640444852観察時期(week)平均値+SD*p<0.001*************n=88650838939998765432104812317259257262221図1生体染色スコアの推移1620242832観察時期(week)219187182179203*3640444852開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3開始時平均値+SD*p<0.001**************************************開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.96635264325193926212521142031開始時染色スコア:4.6279155139131108888783747864626068開始時染色スコア:0.354131822422518415213115312611610210699104図2開始時染色スコア別生体染色スコアの推移(n=886)計点の推移を示す.投与開始時の生体染色スコアにかかわら(85.7%),無効45例(4.9%),判定不能86例(9.4%)であず自覚症状スコアの合計点は有意に低下した.った.d.効果判定5.安全性最終観察時点の担当医師による効果判定は,有効785例安全性解析対象症例916例のうち副作用は14.6%(134例)446あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(116) BUT(秒)BUT(秒)BUT(秒)876543210開始時481216202428323640444852平均値+SD*p<0.001*************観察時期(week)n=744334237256205142142169134137114108106114図3BUTの推移109876543210481216202428323640444852観察時期(week)**開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3開始時平均値+SD*p<0.001***********開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.95621131915914161112981212開始時染色スコア:4.6235106818377474855505341433839開始時染色スコア:0.3447206141151112857695716862565460図4開始時染色スコア別BUTの推移(n=738)で認められた.表3に2例以上に発現した副作用の一覧を示例中9.2%(84例)であった.おもなものの発現頻度は味覚す.多く認められた副作用は味覚異常9.3%(85例),霧視異常4.6%(42例),霧視1.2%(11例),眼痛0.6%(5例),3.2%(29例),アレルギー性結膜炎0.7%(6例),結膜炎,眼そう痒症0.4%(4例),眼瞼炎0.3%(3例)の順であった.眼瞼炎,眼痛がそれぞれ0.6%(各5例)などであった.重篤な副作用の報告はなかった.III考察本剤の投与中止に至った副作用は安全性解析対象症例916本剤のドライアイに対する有効性は,製造販売前の治験時(117)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016447 異物感乾燥感羞明眼痛霧視平均値+SD*p<0.001自覚症状スコア48121620242832364044開始時4852*************異物感乾燥感羞明眼痛霧視平均値+SD*p<0.001自覚症状スコア48121620242832364044開始時4852*************3210観察時期(week)開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目異物感724413338343272221237228176194165158154176乾燥感717409321333268220227228167187161151152175羞明371214180179149119134123859580797897眼痛4802732282151891401591541061111019799106霧視367208177177143109129118909484828893図5自覚症状スコア(5項目)の推移(異物感:n=724,乾燥感:n=717,羞明:n=371,眼痛:n=480,霧視:n=367)14開始時染色スコア:7~9開始時染色スコア:4~6開始時染色スコア:0~3481216202428323640開始時平均値+SD*p<0.001***************************************自覚症状スコア合計点121086420444852観察時期(week)開始時4週目8週目12週目16週目20週目24週目28週目32週目36週目40週目44週目48週目52週目開始時染色スコア:7.96132254123183825182320141727開始時染色スコア:4.6259143126125101838178697163615967開始時染色スコア:0.346527720219416713512714210310792989398図6開始時染色スコア別自覚症状スコア合計点の推移(n=785)448あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(118) に複数の二重盲検比較試験により検証されている2,3).しかし,治験ではいくつかの患者登録基準を設定していたこと,併用薬が制限されていたことから,必ずしも臨床現場の実態を反映しているとはかぎらない.実際に,第3相試験では対象患者をフルオレセイン染色スコア4点以上(15点満点)としたことから軽症患者が除外されていたと考えられる.本調査では染色スコア3点以下(9点満点)が59.1%と軽症患者が過半数であり,治験時の患者よりも角膜上皮障害としては軽症の患者に使用されていたと考えられる.一方,投与前のBUTを測定された744人中708人(95.2%)がBUT5秒以下の患者であった.このような患者を対象とした本調査において,生体染色スコア,BUTともに4週目には統計学的に有意に改善し,4週目以降も継続していたことから,本剤は長期に継続することでより大きな効果を得られる可能性があると考えられた.また,調査した自覚症状スコアは5項目すべてについて,投与開始時に比べて投与52週目では統計学的に有意な改善が認められた.以上のことから,治験で確認された本剤の有効性が実際の臨床現場においても確認することができたと考えられる.安全性については,もっとも多く報告された副作用は味覚異常であり,発現率は9.3%であった.これらはいずれも「苦味」の事象名にて報告されており,本剤の有効成分の苦味に由来するものと考えられた.また,次に多かった霧視の発現率は3.2%であり,本剤が懸濁製剤であることに由来すると考えられた.承認前の国内52週間長期投与試験で報告された味覚異常および霧視の副作用発現率は13.6%および3.6%であり4),実臨床においてもほぼ同様の発現状況であった.本剤発売後,本剤の投与により涙道閉塞,涙.炎が発現する可能性が指摘されているが,本調査では涙道閉塞の副作用は報告されず,涙.炎の副作用は1例報告された.涙道閉塞,涙.炎の副作用の発現メカニズムはいまだ明確ではない5).発現率は低いものの,本剤を用いる際にはこれらの副作用に注意して使用する必要があるものと考えられる.本剤の製造販売後調査結果より,さまざまな制限のある治験と同様に,実臨床においても,本剤がドライアイ患者の治療に有効な薬剤であることを確認することができた.なお,本研究では併用薬としてジクアホソルナトリウムが11.0%の患者で併用されていた.ジクアホソルナトリウムは本剤と類似する薬効をもつものの,その薬理作用は異なって表3副作用一覧表(2例以上に発現した副作用)副作用名発現率味覚異常9.3%(85/916)霧視3.2%(29/916)アレルギー性結膜炎0.7%(6/916)結膜炎,眼瞼炎,眼痛0.6%(5/916)眼そう痒症0.4%(4/916)悪心0.3%(3/916)結膜出血,眼脂,眼瞼痛0.2%(2/916)MedDRA/Jver17.1のPTで集計おり,両剤の特徴を考慮した使い分け,あるいは併用が有用であるかどうかは今後の研究課題と考えられる.謝辞:本報告にあたり,調査にご協力いただいた先生方に厚くお礼申し上げます.利益相反:本稿は,大塚製薬株式会社により実施された調査結果に基づいて報告された.本報告に関連し,開示すべきCOIは木下茂(委託研究費,技術指導料,講師謝礼)である.文献1)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20122)KinoshitaS,AwamuraS,OshidenKetal:Rebamipide(OPC-12759)inthetreatmentofdryeye:Arandomized,double-masked,multicenter,placebo-controlledphaseIIstudy.Ophthalmology119:2471-2478,20123)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:Arandomized,multicenterphase3studycomparing2%rebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreatmentofdryeye.Ophthalmology120:1158-1165,20134)KinoshitaS,AwamuraS,NakamichiNetal:Amulticenter,open-label,52-weekstudyof2%rebamipide(OPC-12759)ophthalmicsuspensioninpatientswithdryeye.AmJOphthalmol157:576-583,20145)杉本夕奈,福田泰彦,坪田一男ほか:レバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の投与にかかわる涙道閉塞,涙.炎および眼表面・涙道などにおける異物症例のレトロスペクティブ検討.あたらしい眼科32:1741-1747,2015***(119)あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016449

レバミピド懸濁点眼液(ムコスタ®点眼液UD2%)の投与にかかわる涙道閉塞,涙囊炎および眼表面・涙道などにおける異物症例のレトロスペクティブ検討

2015年12月31日 木曜日

レバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)の投与にかかわる涙道閉塞,涙.炎および眼表面・涙道などにおける異物症例のレトロスペクティブ検討杉本夕奈*1福田泰彦*1坪田一男*2大橋裕一*3木下茂*4*1大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部*2慶應義塾大学医学部眼科学教室*3愛媛大学*4京都府立医科大学感覚器未来医療学RetrospectiveReviewofDacryostenosis,DacryocystitisandForeignBodyinEyeorLacrimalDuctunderAdministrationofRebamipideOphthalmicSuspension(MucostaROphthalmicSuspensionUD2%)YunaSugimoto1),YasuhikoFukuta1),KazuoTsubota2),YuichiOhashi3)andShigeruKinoshita4)1)PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,3)EhimeUniversity,4)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine目的:レバミピド懸濁点眼液投与下における涙道閉塞,涙.炎および異物の副作用発症要因を特定するため,使用実態を把握する.方法:本剤投与下において涙道閉塞,涙.炎および異物が認められた症例の背景因子をレトロスペクティブに検討した.また,患者から採取された異物の成分分析を実施した.結果:対象患者の背景因子と副作用発症との間に一定の傾向は認められなかった.異物は角膜表面,涙.内,鼻腔内などで認められた.レバミピドは定性分析で28検体中13検体に,定量分析で測定できた8検体中5検体に認められた.蛋白質が検出されたものは14検体中13検体であり,ホウ素が測定できた8検体はいずれも陰性であった.結論:本検討からこれらの副作用発症要因の特定には至らなかった.本剤の投与に際しては,眼科的観察を十分に行うことが望ましいと考えられた.Purpose:Tounderstandthedrugutilizationofrebamipideophthalmicsuspensionsoastoidentifythecauseofdacryostenosis,dacryocystitisandforeignbodyintheeyeorlacrimalductunderdrugadministration.Methods:Weretrospectivelyreviewedpatientcharacteristicsofcases,alsoanalyzedcompositionsofforeignbodiesobtainedfromthepatients.Results:Noobvioustrendshowedbetweenpatientcharacteristicsandtheseevents.Foreignbodieswerefoundincornealsurface,lacrimalsac,nasalcavityandsoon.Rebamipidewasdetectedin13of28sampleswithqualitativeanalysisandin5of8samplesmeasurablewithquantitativeanalysis.Proteinwasdetectedin13of14samples;boronwasundetectablein8samples,allofwhichweremeasurable.Conclusions:Wecouldnotidentifythecauseoftheseevents.Patientsshouldbecarefullymonitoredbyophthalmologicalexamination.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(12):1741.1747,2015〕Keywords:レバミピド,点眼液,涙道閉塞,涙.炎,異物.rebamipide,ophthalmicsolution,dacryostenosis(lacrimalductobstruction),dacryocystitis,foreignbody.はじめに年1月の上市以降,臨床現場で幅広く用いられている.薬理レバミピド懸濁点眼液(ムコスタR点眼液UD2%)は,ド作用として,角結膜上皮障害の改善作用1),角結膜上皮のムライアイ治療薬として2011年9月に国内承認され,2012チン産生促進作用1,2),角結膜上皮バリア機能の増強作用3,4),〔別刷請求先〕杉本夕奈:〒540-0021大阪府大阪市中央区大手通3-2-27大塚製薬株式会社医薬品事業部ファーマコヴィジランス部Reprintrequests:YunaSugimoto,M.S.,PharmacovigilanceDepartment,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-2-27,Otedori,Chuoku,Osaka-shi,Osaka540-0021,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(109)1741 結膜杯細胞数の増加作用5),角結膜最表層上皮の微絨毛の再形成促進作用6),眼表面抗炎症作用7)などが報告されている.国内臨床試験で認められたレバミピド懸濁点眼液のおもな副作用は苦味,眼刺激感,眼.痒,霧視など8.10)であったが,発売以降に涙道閉塞,涙.炎が報告された.このため大塚製薬は,2015年1月までに「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下,薬機法と記す)に従って医療従事者から報告された有害事象のうち,涙道閉塞,涙.炎,眼内異物などの副作用症例をレトロスペクティブに検討した.その結果,2015年3月に涙道閉塞,涙.炎が重大な副作用として添付文書に追記された.今回,これらの副作用症例の背景因子の検討を行い,さらに,患者から採取された異物について成分分析を実施したので報告する.I対象および方法1.涙道閉塞,涙.炎,異物に関する検討2012年1月の上市から2015年1月(添付文書改訂の必要性検討時)までにレバミピド懸濁点眼液投与に関連する可能性があると医療従事者から大塚製薬(株)に有害事象報告された涙道閉塞,涙.炎および眼表面・涙道などにおける異物の症例集積は41例であった.そのうち,処方医により本剤との因果関係が否定された4例を除く,副作用と判定された37例を対象とし,年齢,性別,投与期間,既往歴などの背景因子について検討した.なお,副作用の定義は,薬機法に従って報告された有害事象報告のうち因果関係が否定されなかったものである.処方医により因果関係が否定された4例の内訳は,急性涙.炎が偶発症と判断された1例,涙.炎が原疾患の悪化によるものと判断された1例,異物(鼻に白い粉が付着するという事象)が有害事象と判断されなかった1例,点眼手技の過誤(眼の縁に点眼液があふれた)と判断された1例であった.各副作用の重篤度は,侵襲的な処置を要した場合および医師が重篤と判断した場合を重篤,それ以外を非重篤とした.2.異物の成分分析上市から2015年5月までに医療従事者から大塚製薬(株)に分析依頼のあった,患者から採取された異物(計28検体)について成分分析を実施した.なお,副作用以外(有害事象,苦情)で成分分析を依頼されたものも含まれる.28検体すべてについて,レバミピド含有の有無を調べるため定性分析を実施した.そのうち,2015年1.5月の14検体については,異物の由来を推定するためレバミピドおよびホウ素の定量分析ならびに蛋白質の定性分析を追加実施した.定性分析には赤外分光(infraredspectroscopy:IR)法による吸収スペクトル測定を行い,レバミピドの定量分析には高速液体クロマトグラフィー(highperformanceliquid1742あたらしい眼科Vol.32,No.12,2015chromatography:HPLC)法,ホウ素の定量分析には誘導結合プラズマ質量分析(inductivelycoupledplasma-massspectrometry:ICP-MS)法を用いた.分析依頼のあった28検体の内訳は,副作用に該当する25検体,副作用に該当しない3検体であった.副作用25検体のうち上記1.で涙道閉塞,涙.炎,異物として症例検討された検体は5検体であり,残り20検体は上記1.の検討時以降に報告された検体,あるいは涙道閉塞,涙.炎,異物以外の副作用症例の検体であった.異物が採取された状況は,通水検査の際に逆流物に混在して出てきた場合,手術により採取された場合,角膜表面から鑷子で採取された場合,涙管チューブに白色物が付着した場合などであった.II結果1.涙道閉塞,涙.炎,異物に関する検討上市から2015年1月までに薬機法に従って医療従事者から報告された,涙道閉塞,涙.炎,異物に関する副作用37例の背景因子を表1に示す.性別は男性7例,女性30例であり,年齢分布は50歳未満4例,50歳代2例,60歳代5例,70歳代13例,80歳以上9例,年齢不詳4例,平均年齢69.6歳(年齢不詳4例を除く)であった.副作用発現までの投与期間は,19例で1日から約1年,18例で不明,平均投与期間71.9日(投与期間不明18例を除く)であった.また,副作用の症例経過を精査したところ,涙道閉塞12例,涙.炎/涙道炎10例,異物24例(うち2事象重複7例,3事象重複2例),その他2例であった.合併症あるいは既往歴として報告のあった涙道疾患は,涙道狭窄2例,涙.炎3例であった.おもな併用点眼薬はヒアルロン酸ナトリウム11例,フルオロメトロン6例であった.ただし,本剤と同時期に併用されていたかどうかは不明であった.2.異物の成分分析異物の色調は白色,黄色,青緑色などであり,形態は固体または粘性の高い液性物であった.レバミピドの定性分析を実施した28検体では,13検体(46%)が陽性であった(表2).レバミピド含量の定量分析では14検体中6検体が検体量不足のため測定できなかったが,測定できた8検体中5検体(63%)でレバミピドが検出された.また,ホウ素含量についても分析したが,14検体のうち検出感度以下であったものが8検体,検体量不足のため測定できなかったものが6検体であり,検出感度以上の陽性所見は1検体にも認められなかった.一方,蛋白質の定性分析では14検体中13検体(93%)が陽性であった.III考按レバミピド懸濁点眼液の上市以降に涙道閉塞,涙.炎およ(110) (111)あたらしい眼科Vol.32,No.12,20151743表1各副作用症例の背景(対象期間:2012年1月~2015年1月)症例性別年齢副作用名重篤度レバミピド投与期間併用点眼薬合併症/既往歴レバミピド測定結果1女20歳代角膜混濁a)非重篤30日ヒアルロン酸ナトリウム点状表層角膜症(両眼)/なし分析依頼なし鼻咽頭炎非重篤4日ヒアルロン酸ナトリウム,ジクアホソルナトリウム,2女40歳代鼻汁変色a)非重篤4日オフロキサシン副鼻腔炎/不明分析依頼なし3女40歳代眼内異物非重篤不明フルオロメトロン記載なし/不明分析依頼なし結膜障害非重篤不明4e)女40歳代眼内異物非重篤不明記載なしなし/なしなし5男50歳代後天性涙道狭窄非重篤不明なし不明/不明分析依頼なし6女50歳代視力障害b)非重篤不明記載なし更年期障害/乳癌手術歴分析依頼なし7f)女60歳代後天性涙道狭窄非重篤17日投与時期不明;ヒアルロン酸ナトリウム0.1%涙道狭窄(右),表在性角膜炎/不明なし8女60歳代涙.炎非重篤21日なし(OTCの併用は不明)不明/不明分析依頼なし眼内異物非重篤不明ジクアホソルナトリウム,白色ワセリン,涙道疾患はとくになし/涙道疾患はとく9女60歳代フラジオマイシン・メチルプレドニゾロン軟膏分析依頼なし眼瞼びらん非重篤不明(OTCの併用は不明)になし霧視非重篤5日デキサメタゾン投与時期不明;10女60歳代眼内異物非重篤5日シアノコバラミン,ヒアルロン酸ナトリウムびらん様上皮障害/Sjogren症候群分析依頼なし投与時期不明;レボフロキサシン0.5%,11g)女60歳代眼内異物非重篤不明フルオロメトロン0.1%記載なし/Sjogren症候群あり(11.7%)網膜静脈分岐閉塞症(右),黄斑浮腫12男70歳代涙.炎非重篤不明フルオロメトロン,レボフロキサシン,カルテオロール(右)/不明分析依頼なし鼻漏非重篤不明投与時期不明;ヒアルロン酸ナトリウム0.1%13h)男70歳代鼻出血非重篤不明高血圧/なしなし体内異物非重篤不明(OTCの併用は不明)後天性涙道狭窄非重篤不明14男70歳代眼内異物非重篤不明記載なし記載なし/不明分析依頼なし15男70歳代後天性涙道狭窄c)非重篤1日なし涙道疾患の合併なし/不明分析依頼なし16女70歳代痂皮a)非重篤15日なし両人工水晶体/なし分析依頼なし眼沈着物a)非重篤不明17女70歳代視力低下非重篤不明投与時期不明;ヒアルロン酸ナトリウム記載なし/不明分析依頼なし涙道の炎症重篤不明18女70歳代膿疱性皮疹重篤不明ヒアルロン酸ナトリウムSjogren症候群/不明分析依頼なし19女70歳代眼内異物非重篤不明なし記載なし/不明分析依頼なし後天性涙道狭窄非重篤9日投与時期不明;オロパタジン,20女70歳代塩化カリウム・塩化ナトリウム花粉症,白内障/アレルギー分析依頼なし霧視非重篤9日(塩化カリウム・塩化ナトリウム継続使用の可能性が高い) 1744あたらしい眼科Vol.32,No.12,2015(112)表1各副作用症例の背景(対象期間:2012年1月~2015年1月)つづき涙.炎重篤不明21女70歳代眼内異物非重篤不明OTC併用は不明記載なし/白内障手術分析依頼なし後天性涙道狭窄非重篤45日22女70歳代眼内異物非重篤45日ジクアホソルナトリウム,フルオロメトロン記載なし/不明分析依頼なし後天性涙道狭窄重篤361日記載なし/涙.炎,23女70歳代涙.炎a)重篤361日タフルプロスト涙管チューブ挿入術分析依頼なし24女70歳代涙.炎重篤204日チモロールマレイン酸記載なし/涙.炎分析依頼なし後天性涙道狭窄非重篤3日投与時期不明;レボフロキサシン0.5%,涙道狭窄(左)/涙道チューブ挿入術,25男80歳代流涙増加非重篤3日フルオロメトロン0.1%,分析依頼なし眼内異物非重篤3日塩化カリウム・塩化ナトリウム(OTCの併用なし)涙.鼻腔吻合術投与時期不明;26男80歳代眼内異物非重篤不明ヒアルロン酸ナトリウム記載なし/不明分析依頼なし流涙増加非重篤21日リウマチ,黄斑静脈(左),眼内レンズ27女80歳代後天性涙道狭窄d)非重篤21日ヒアルロン酸ナトリウム0.1%からの切り替え挿入眼(両眼)/なし分析依頼なし眼内異物非重篤15日ヒアルロン酸ナトリウム,フルオロメトロン28女80歳代角膜炎非重篤15日投与時期不明;ジクアホソルナトリウム糸状角膜炎/なし分析依頼なしリウマチ,Sjogren症候群,結膜炎(両29女80歳代眼内異物非重篤141日レボフロキサシン,オロパタジン眼),白内障,ドライマウス/間質性肺炎分析依頼なし投与時期不明;タフルプロスト,カルテオロール,30女80歳代後天性涙道狭窄a)非重篤187日ドルゾラミド,ヒアルロン酸ナトリウム,オフロキサシン点状表層角膜症(両眼)/不明分析依頼なし涙道の炎症非重篤不明31女80歳代眼内異物非重篤不明記載なし記載なし/不明分析依頼なし眼内異物非重篤42日両眼内レンズ眼/白内障手術,32i)女80歳代結膜異物除去重篤92日なし高血圧なし33女80歳代涙.炎非重篤78日なし記載なし/涙.炎分析依頼なし薬剤残留a)非重篤不明34女不明眼痛非重篤不明記載なし記載なし/不明分析依頼なし35女不明後天性涙道狭窄非重篤不明記載なし記載なし/なし分析依頼なし涙.炎非重篤168日涙道疾患の合併なし/涙道疾患の既往な36女不明後天性涙道狭窄a)非重篤不明なしし分析依頼なし37女不明後天性涙道狭窄非重篤不明記載なし記載なし/不明分析依頼なしa)症例経過より「異物」の可能性があると考えられた.b)白い塊が見えるという事象のため「その他」として分類した.c)涙点や涙道に詰まりが起きているような気がするという事象のため「その他」として分類した.d)症例経過に「涙.炎」と記載されていた.e)表2の25番目と同一症例.f)表2の23番目と同一症例.g)表2の3番目と同一症例.h)表2の24番目と同一症例.i)表2の32番目と同一症例. 表2異物の成分分析(対象期間:2012年1月~2015年5月)測定結果採取部位報告事象レバミピド定性a)レバミピド定量b)1涙道涙道洗浄で白色の逆流物を採取あり0.3%2涙道白色物,涙道閉塞疑いの通水障害なしN.D.3涙道涙道閉塞なしN.D.4涙道涙.炎なしN.A.5涙道涙.炎,眼瞼炎,涙道に白い固形物なし*6涙.涙.炎,涙道閉塞あり43.8%7涙.涙.炎,鼻涙管閉塞,白色析出物を採取あり14.4%8c)涙.涙.から白色塊を採取あり11.7%9涙.涙.炎,鼻涙管閉塞,眼瞼炎,白色析出物を採取あり*10涙.有害事象ではないあり*11涙.涙.炎,析出物を採取なしN.D.12涙.,鼻腔涙.炎,涙.内に粒子が残存,内眼角部痛あり*13涙.部圧迫白色物質,膿の排出なしN.A.14角膜角膜異物感を自覚ありN.A15角膜角膜沈着なしN.A.16角膜上皮欠損部位角膜上皮欠損部位の白色混濁,なし*17眼表面眼表面の白塊なしN.A.18眼表面結膜障害,眼の異物残留なし*19上涙点(右)涙道閉塞なし*20d)涙丘(右)涙丘異常,白色の膜(帯状)の排出なし*21e)眼白い粉状物質の眼部への付着と刺激感あり*22f)両眼白色塊の採取あり*23目尻苦情報告のみなし*24鼻鼻涙管閉塞,鼻腔から白色塊を採取あり0.7%25g)鼻鼻腔からの出血と異物なし*26口涙.結石,流涙,涙.部痛あり*27口苦情報告のみあり*28涙管チューブ白色塊が右涙管チューブに付着なしN.A.*:実施せずN.A.:検体が少量(0.1mg未満)であるため測定不可.N.D.:Notdetected.a)赤外分光(IR)法.b)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法.c)表1の11番目と同一症例.d)表1の4番目と同一症例.e)表1の7番目と同一症例.f)表1の32番目と同一症例.g)表1の13番目と同一症例.び眼表面・涙道などにおける異物の副作用報告を受け,それらの副作用が認められた症例についてレトロスペクティブに検討を行った.涙道閉塞,涙.炎が認められた症例は中高年女性が多く,副作用発現までの投与期間,既往歴,合併症,併用点眼薬などの背景因子と,涙道閉塞,涙.炎,異物の副作用発現との間に一定の傾向は認められず,要因の特定には至らなかった.これらの副作用報告や苦情情報を介して異物28検体が回収され分析に供された(2015年5月まで).その成分分析の結果,レバミピドが含まれていた異物は約半数(46%)であった.追加測定を実施した14検体において,蛋白質は13例(93%)とほぼすべての異物に含まれていた.しかしながら,今回は蛋白質の種類の同定までは至らず,炎症性細胞の有無や菌の有無などの分析についても今後検討が必要であると考えられた.なお,本剤の添加物として含まれるポリビニルアルコールは,ホウ酸イオンと反応してゲル化する性質があるため,ホウ素の分析も実施した.しかしながら,検体が少量のため測定不可,あるいは検出感度以(113)あたらしい眼科Vol.32,No.12,20151745 表3各点眼薬における副作用発現頻度医療用点眼薬の販売名副作用名発現件数または例数/調査例数a)発現頻度(%)クラビットR点眼液0.5%角膜上皮障害などb)12件/7,158例0.17抗菌点眼薬ガチフロR点眼液0.3%点状角膜炎1件/429例0.23ベガモックスR点眼液0.5%角膜炎1件/586例0.2コソプトR配合点眼液角膜上皮障害などc)8例/913例0.88緑内障治療薬キサラタンR点眼液0.005%角膜上皮障害などd)249件/3,424例7.27アイファガンR点眼液0.1%点状角膜炎30例/444例6.76フルメトロンR点眼液0.1%眼圧上昇13件/10,343例0.13ステロイド点眼薬フルメトロンR点眼液0.02%眼圧上昇2件/7,276例0.03リンデロンR点眼液0.1%ステロイド緑内障1例/261例0.4a)各薬剤のインタビューフォーム参照.b)角膜びらん,角膜炎,角膜上皮障害,点状角膜炎.c)角膜びらん,角膜炎,角膜上皮欠損,点状角膜炎.d)角膜びらん,角膜炎,角膜混濁,角膜上皮欠損,角膜上皮障害,点状角膜炎表4各事象発現頻度に関する文献報告報告年著者薬剤名発現例数/調査例数発現頻度(%)白内障術後眼内炎2007OshikaTetala)N.A.52例/100,539例0.052涙管チューブ挿入術後のステロイド点眼による眼圧上昇2014新田安紀芳b)0.1%フルオロメトロン点眼液11例/128例8.6N.A.:Notapplicablea)OshikaT,HatanoH,KuwayamaYetal:IncidenceofendophthalmitisaftercataractsurgeryinJapan.ActaOphthalmolScand85:848-851,2007.b)新田安紀芳:フルオロメトロン点眼による眼圧変動.臨眼68:1463-1467,2014下であった.眼表面・涙道などにおける異物の成因として,本懸濁点眼液の粒子そのものが何らかの要因により凝集したもの,本懸濁点眼液が溶けて粘性の高い液状になったもの,生体由来の白色の膿,本剤と関連しない析出物などが考えられたが,異物の発生機序は未だ不明といわざるを得ない.また,異物が涙道閉塞,涙.炎の原因となり得るのか,あるいは涙道閉塞,涙.炎の結果として異物が発現するのかについても明確にはなり得なかった.本検討の限界としては,他の点眼薬の投与期間が不明であるため本剤と同時期に併用されていたかが不明であること,既往歴,合併症などが不明である症例があることなど,患者背景や投与状況について十分な情報が得られていない点があげられる.今後もこれらの副作用の要因を解明するために,継続的な情報収集およびさらなる検討が必要であると考えられる.なお,レバミピド懸濁点眼液の推定使用患者数は約53.5万人(2012.2014年)11)であった.本剤の推定使用患者数に対する涙道閉塞,涙.炎,異物の副作用報告数(それぞれ12例,10例,24例,2015年1月現在)の割合を求めると,副作用発現頻度はそれぞれ0.002%,0.002%,0.004%となるが,副作用報告数は実際の発生数よりかなり少ないことが考えられ,仮に報告数が実際の十分の一とすると,副作用発現頻度はそれぞれ0.02%,0.02%,0.04%となり,抗菌点眼薬や緑内障治療薬における角膜上皮障害などの副作用発現頻度,ステロイド点眼薬における眼圧上昇関連の副作用発現頻度,白内障手術後眼内炎の発症頻度12)と同程度あるいはそれよりは低いと推定された.しかし,これらの事象はときに重症化するおそれがあるため,日常臨床で十分に留意すべき病態であり,副作用発現の実態をより明確にするために今後も検討が必要であると考えられる.なお,各種点眼薬における副作用発現頻度を表3に,有害事象の発現頻度に関する文献報告を表4に示した.以上のように,現時点においてこれらの副作用の発症要因は不明であるが,重篤な涙道閉塞,涙.炎の発症を防止するために,患者の状態(涙液量の増加など)を十分観察し,涙道閉塞の早期発見に努めることが重要である.涙道閉塞,涙.炎および鼻炎などの既往歴があった場合はとくに注意して観察するとともに,急激な涙液メニスカスの上昇に対する留意が必要である.また,涙液メニスカスの上昇がみられた場合は涙管通水検査の実施が推奨される.1746あたらしい眼科Vol.32,No.12,2015(114) 本稿は大塚製薬株式会社により実施された分析結果に基づいて報告された.開示すべきCOIは坪田一男(委託研究費,講師謝礼),大橋裕一(講師謝礼),木下茂(委託研究費,技術指導料,講師謝礼)である.文献1)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,20042)UrashimaH,TakejiY,OkamotoTetal:Rebamipideincreasesmucin-likesubstancecontentsandperiodicacidSchiffreagent-positivecellsdensityinnormalrabbits.JOculPharmacolTher28:264-270,20123)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:RebamipideincreasesbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionandcytokineexpressioninhumancornealepithelialcells.BrJOphthalmol97:912-916,20134)KimuraK,MoritaY,OritaTetal:ProtectionofhumancornealepithelialcellsfromTNF-a-induceddisruptionofbarrierfunctionbyrebamipide.InvestOphthalmolVisSci54:2752-2760,20135)KaseS,ShinoharaT,KaseM:Effectoftopicalrebamipideonhumanconjunctivalgobletcells.JAMAOphthalmol132:1021-1022,20146)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20127)UetaM,SotozonoC,YokoiNetal:RebamipidesuppressespolyI:C-stimulatedcytokineproductioninhumanconjunctivalepithelialcells.JOculPharmacolTher29:688-693,20138)大塚製薬株式会社:ムコスタR点眼液UD2%製品添付文書(2015年3月改訂)9)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:Arandomized,multicenterphase3studycomparing2%rebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreatmentofdryeye.Ophthalmology120:1158-1165,201310)KinoshitaS,AwamuraS,NakamichiNetal:Amulti-center,open-label,52-weekstudyof2%rebamipide(OPC-12759)ophthalmicsuspensioninpatientswithdryeye.AmJOphthalmol157:576-583,201411)株式会社日本医療データセンター(JMDC)12)OshikaT,HatanoH,KuwayamaYetal:IncidenceofendophthalmitisaftercataractsurgeryinJapan.ActaOphthalmolScand85:848-851,2007***(115)あたらしい眼科Vol.32,No.12,20151747

難治性涙道閉塞症に対する涙管チューブ挿入術後におけるレバミピド点眼液の効果

2015年3月31日 火曜日

444あたらしい眼科Vol.5103,22,No.3(00)444(134)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(3):444.448,2015cはじめにレバミピドは消化性潰瘍用内服剤として20年以上前から使用されており,その薬理作用として粘液分泌増加,粘膜の保護や治癒促進,消炎作用など多数報告されている1).一方,同成分で構成されたレバミピド点眼液は2011年に開発され,角結膜ムチン産生促進作用や角結膜上皮の改善作用を介してドライアイ治療用点眼剤として使用されているが,近年では角結膜のバリア機能の保持や抗炎症作用も注目されている2.5).涙.炎は涙.および鼻涙管の粘膜障害に引き続いて起こる炎症性涙道疾患であるが,レバミピド点眼液の排泄時に涙道粘膜にも薬剤が接触することから,涙道粘膜にも角結膜同様〔別刷請求先〕三村真士:〒569-8686大阪府高槻市大学町2-7大阪医科大学眼科学教室Reprintrequests:MasashiMimura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2-7Daigaku-machi,Takatsuki,Osaka569-8686,JAPAN難治性涙道閉塞症に対する涙管チューブ挿入術後におけるレバミピド点眼液の効果三村真士*1,2市橋卓*2布谷健太郎*2藤田恭史*2今川幸宏*2佐藤文平*2植木麻理*1池田恒彦*1*1大阪医科大学眼科学教室*2大阪回生病院眼科EffectofRebamipideSuspensionafterLacrimalIntubationtoTreatIntractableDacryocystitisMasashiMimura1,2),MasaruIchihashi2),KentaroNunotani2),YasushiFujita2),YukihiroImagawa2),BunpeiSato2),MariUeki1)andTsunehikoIkeda1)1)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaKaiseiHospital目的:ドライアイ治療薬であるレバミピド(ムコスタR)点眼液は,角結膜上皮障害に対する創傷治癒効果や抗炎症効果も報告されている.一方,点眼液は排泄時に涙道粘膜に接触することから,涙道粘膜にも同様の効果が期待できる可能性がある.涙.炎を合併した難治性鼻涙管閉塞症の術後において,レバミピド点眼液により涙道粘膜の炎症所見の改善を得た3症例について報告する.症例:涙.炎を伴った鼻涙管閉塞症に対して涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術を行うも,術後も涙.炎が遷延し涙.粘膜の線維化が進行した3例.術後に合併したドライアイに対してレバミピド点眼を追加したところ,3例とも涙道粘膜の消炎および線維化の改善を認めた.また,その後の経過観察において,レバミピド点眼液使用の有無と涙道粘膜の炎症所見は相関していることが観察された.結論:レバミピド点眼は涙道粘膜に対して創傷治癒効果や抗炎症効果がある可能性が示唆された.Rebamipideophthalmicsuspensionisusedtotreatcasesofdry-eyesyndromebyreducinginflammationandpromotingwoundhealingofthecorneaandconjunctiva.Moreover,rebamipideisthoughttohavesimilarbenefitsforthetreatmentofdamagedmucosaandimpairedlacrimalductdrainage.Inthispresentstudy,wereport3casesofintractabledacryocystitiswithdry-eyesyndromeinvolvementinwhichrebamipidehelpedtorepairthedamagedlacrimalmucosa.Inall3cases,lacrimalstentintubationwasperformedunderdacryoendoscopy,althoughthesuspendeddacryocystitisdamagedtheirlacrimalmucosa,thusresultinginfibrosisofthemucosa.Next,rebamipideophthalmicsuspensionwasinstilledpostoperativelyineachpatienttotreatcomplicateddryeyesyndrome.Simultaneously,thedacryocystitisineachcasegraduallyreducedviahealingofthemucosa.Ourfindingsshowthatrebamipideeffectivelyreducesinflammationandaccelerateshealingofthelacrimalmucosa.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(3):444.448,2015〕Keywords:レバミピド,涙.炎,涙道閉塞,涙道内視鏡,創傷治癒.rebamipide,dacryocystitis,dacryostenosis,dacryoendoscope,woundrepair.(00)444(134)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科32(3):444.448,2015cはじめにレバミピドは消化性潰瘍用内服剤として20年以上前から使用されており,その薬理作用として粘液分泌増加,粘膜の保護や治癒促進,消炎作用など多数報告されている1).一方,同成分で構成されたレバミピド点眼液は2011年に開発され,角結膜ムチン産生促進作用や角結膜上皮の改善作用を介してドライアイ治療用点眼剤として使用されているが,近年では角結膜のバリア機能の保持や抗炎症作用も注目されている2.5).涙.炎は涙.および鼻涙管の粘膜障害に引き続いて起こる炎症性涙道疾患であるが,レバミピド点眼液の排泄時に涙道粘膜にも薬剤が接触することから,涙道粘膜にも角結膜同様〔別刷請求先〕三村真士:〒569-8686大阪府高槻市大学町2-7大阪医科大学眼科学教室Reprintrequests:MasashiMimura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2-7Daigaku-machi,Takatsuki,Osaka569-8686,JAPAN難治性涙道閉塞症に対する涙管チューブ挿入術後におけるレバミピド点眼液の効果三村真士*1,2市橋卓*2布谷健太郎*2藤田恭史*2今川幸宏*2佐藤文平*2植木麻理*1池田恒彦*1*1大阪医科大学眼科学教室*2大阪回生病院眼科EffectofRebamipideSuspensionafterLacrimalIntubationtoTreatIntractableDacryocystitisMasashiMimura1,2),MasaruIchihashi2),KentaroNunotani2),YasushiFujita2),YukihiroImagawa2),BunpeiSato2),MariUeki1)andTsunehikoIkeda1)1)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaKaiseiHospital目的:ドライアイ治療薬であるレバミピド(ムコスタR)点眼液は,角結膜上皮障害に対する創傷治癒効果や抗炎症効果も報告されている.一方,点眼液は排泄時に涙道粘膜に接触することから,涙道粘膜にも同様の効果が期待できる可能性がある.涙.炎を合併した難治性鼻涙管閉塞症の術後において,レバミピド点眼液により涙道粘膜の炎症所見の改善を得た3症例について報告する.症例:涙.炎を伴った鼻涙管閉塞症に対して涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術を行うも,術後も涙.炎が遷延し涙.粘膜の線維化が進行した3例.術後に合併したドライアイに対してレバミピド点眼を追加したところ,3例とも涙道粘膜の消炎および線維化の改善を認めた.また,その後の経過観察において,レバミピド点眼液使用の有無と涙道粘膜の炎症所見は相関していることが観察された.結論:レバミピド点眼は涙道粘膜に対して創傷治癒効果や抗炎症効果がある可能性が示唆された.Rebamipideophthalmicsuspensionisusedtotreatcasesofdry-eyesyndromebyreducinginflammationandpromotingwoundhealingofthecorneaandconjunctiva.Moreover,rebamipideisthoughttohavesimilarbenefitsforthetreatmentofdamagedmucosaandimpairedlacrimalductdrainage.Inthispresentstudy,wereport3casesofintractabledacryocystitiswithdry-eyesyndromeinvolvementinwhichrebamipidehelpedtorepairthedamagedlacrimalmucosa.Inall3cases,lacrimalstentintubationwasperformedunderdacryoendoscopy,althoughthesuspendeddacryocystitisdamagedtheirlacrimalmucosa,thusresultinginfibrosisofthemucosa.Next,rebamipideophthalmicsuspensionwasinstilledpostoperativelyineachpatienttotreatcomplicateddryeyesyndrome.Simultaneously,thedacryocystitisineachcasegraduallyreducedviahealingofthemucosa.Ourfindingsshowthatrebamipideeffectivelyreducesinflammationandaccelerateshealingofthelacrimalmucosa.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(3):444.448,2015〕Keywords:レバミピド,涙.炎,涙道閉塞,涙道内視鏡,創傷治癒.rebamipide,dacryocystitis,dacryostenosis,dacryoendoscope,woundrepair. の薬理作用が期待できる可能性があると考えられる.今回筆者らは,涙.炎を合併した難治性涙道閉塞症に対する涙管チューブ挿入術後において,ドライアイを合併したためレバミピド点眼液を使用したところ,ドライアイの改善のみならず涙道粘膜の治癒にも貢献したと思われた3例を経験したので報告する.I症例症例は涙.炎を伴った難治性鼻涙管閉塞症に対して涙管チューブ挿入術を施行し,併発するドライアイに対して術後にレバミピド点眼液を使用した3例.手術は全例に局所麻酔下に涙道内視鏡(FT-2000E;FiberTechCo.,Ltd.,Tokyo,Japan)下涙管チューブ挿入術を施行した.術後管理は2週間ごとの涙道内視鏡による涙道洗浄および涙道内の観察を行い,術後点眼としてレボフロキサシン(クラビットR)点眼1日4回,ステロイド(リンデロンR)点眼1日4回を処方し,それに加えて,術後ドライアイに対してレバミピド(ムコスタR)点眼1日4回を使用した.涙管チューブは術後8週間で全例抜去し,術後12カ月以上経過観察を行った.以下に3症例を示す.〔症例1〕60歳,男性.4年前に左慢性涙.炎を発症し,tearmeniscusheight(TMH)の上昇を認めるものの,break-uptime(BUT)は5秒と短縮し,角結膜に上皮障害を認めないもののドライアイの自覚症状を認めた.涙道内視鏡検査の結果,鼻涙管開口部閉塞に起因する涙.炎を認めたため,涙管チューブ挿入術(使用チューブ:LacrifastR,KANEKA)を行い,術後にムコスタR点眼を併用した.その結果,BUTは改善,涙.粘膜手術時チューブ抜去時は消炎し,閉塞部は開放された(図1).しかし,抜去後にすべての点眼を中止したところ,抜去1カ月後の再診時には流涙症状の再発と内視鏡下に涙道粘膜の炎症再燃を認めた.そこでムコスタR点眼(1日4回)のみを再開したところ,再開1カ月後には涙道粘膜の炎症は軽快し,自覚症状も改善した.約3カ月間点眼を継続し,涙道粘膜が安定したことを確認して点眼を中止したが,術後12カ月以上にわたって再発は認めていない.〔症例2〕73歳,男性.水泳を趣味としており,週2日,12年間ジムに通っていた.スイミングプールの水に起因すると思われた右慢性涙.炎を5年前に発症した6).TMHの上昇を認め,角結膜上皮障害は認めないものの,BUT短縮(5秒)およびドライアイの自覚症状を認めた.涙管チューブ挿入術(使用チューブ:LacrifastR,KANEKA)時の涙道内視鏡所見は,鼻涙管が全長で閉塞しており,粘膜は高度の炎症に伴い線維化を呈していた(図2).術後経過は良好で,BUTは改善し,チューブ抜去時には鼻涙管は開放,粘膜は消炎し涙道粘膜は再建されていた.しかし,抜去後すべての点眼を終了したところ,流涙症状の再発および涙道粘膜の炎症再燃を認めた.そこで,ムコスタR点眼(1日4回)のみ再開したところ,1カ月後には粘膜は再度軽快した.しかし,術後も涙道粘膜障害の原因と推測されるスイミングプールの水には継続的に曝露されており,ムコスタR点眼を中止すると粘膜の炎症所見が悪化する傾向にあったため,現在もムコスタR点眼を続行している.術後12カ月以降再閉塞には至っていない.〔症例3〕85歳,男性.両眼進行性の原発開放隅角緑内障にて経過観察中.左眼は1カ月後2カ月後図1症例1における涙道内視鏡所見の経過(135)あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015445 手術時チューブ抜去時1カ月後2カ月後図2症例2における涙道内視鏡所見の経過術後4カ月点眼開始後ムコスタ.点眼開始1カ月2カ月3カ月6カ月9カ月12カ月図3症例3における涙道内視鏡所見の経過光覚,右眼はGoldmann視野計による動的量的視野測定でることができず,ヒアルロン酸ナトリウム点眼を追加のう湖崎分類IIIbと進行しており,ビマトプロスト点眼およびドえ,ビマトプロスト点眼は従来どおり継続されていた.そのルゾラミド点眼を処方されていた.経過中,薬剤性角膜上皮結果,6カ月後に薬剤に起因すると思われる鼻涙管閉塞症お障害,眼瞼炎,マイボーム腺機能不全を認めたため,薬剤アよび涙.炎を発症した.レルギーを疑って皮膚テストを行ったところ,プロスタグラ涙道内視鏡所見の経過を図3に示す.涙管チューブ挿入術ンジン系点眼剤に対してアレルギー陽性反応を認めた.しか(使用チューブ:NSTR,KANEKA)後4カ月の時点で涙道はし,不整脈の既往があるためにbブロッカー点眼を使用す開放していたが,ビマトプロスト点眼の影響により涙道粘膜(136) の炎症が持続していた.角膜上皮障害(フルオレセイン染色スコア4点)を伴うドライアイ症状が発現し,眼瞼炎に伴うマイボーム腺機能不全を認めたため,ムコスタR点眼を開始したところ,角結膜上皮障害の改善(フルオレセイン染色スコア1点)と並行して,涙道粘膜も炎症所見および線維化が徐々に改善していった.しかし,ムコスタR点眼を開始後6カ月で涙道粘膜はやや落ち着いたため,ムコスタR点眼を一旦終了したところ,急激に涙.炎は再燃増悪し,総涙小管までもが閉塞した.閉塞した総涙小管を開放しムコスタR点眼を再開したが,眼表面の炎症は鎮静化するものの不可逆性の薬剤性涙道上皮障害が徐々に進行し,点眼再開後12カ月で涙道の全長閉塞に至った.II考按今回の筆者らの経験した3症例において,難治性慢性涙.炎に対して行った涙管チューブ挿入術後に,レバミピド点眼が涙道粘膜の消炎および治癒促進作用を発現していることが示唆された.レバミピド点眼はムチン産生促進を介して角結膜の上皮障害を改善するドライアイ治療剤として開発された.また,最近の研究では角膜上皮のtightjunctionの強化,抗TNF(腫瘍壊死因子)a作用による上皮障害の抑制,酸化ストレスからの障害抑制などもレバミピドの効果として報告されている2.5,7).一方,点眼後の薬剤排泄時に涙道粘膜にも接触することで,涙道粘膜にも角結膜同様の薬理作用を発現する可能性が考えられる.さらに懸濁液である製品の特性上,涙道内に留まりやすいことが予想され,実際今回の症例においても涙道内視鏡下に涙道内に滞留した薬剤の細粒を認めており,この点からもレバミピド点眼の涙道粘膜に対する薬効発現が期待される.そこで角結膜上皮と涙道上皮の相違点について検討すると,双方ともに重層扁平上皮(角膜,涙小管)もしくは立方.円柱上皮(結膜,涙.,鼻涙管)に覆われており,ムチンを分泌する杯細胞を有する(結膜,涙.,鼻涙管)ことが共通点としてあげられる8,9).また,涙.鼻涙管上皮に発現するムチンのmRNAはMUC1,2,4,5AC,5B,6,7,16と広範囲にわたって確認されている10,11).一方結膜では,膜結合型のMUC1,4,16,分泌型のMUC5AC,5Bが確認されており12),共通点が多いことからもレバミピド点眼による結膜への薬理作用が涙.鼻涙管粘膜にも期待される.さらに,胃粘膜におけるレバミピドの薬効は粘液分泌増加やプロスタグランジン生合成促進による粘膜保護や治癒促進,炎症性細胞浸潤抑制やヒドロキシラジカル除去による胃の粘膜消炎作用などが多数報告されている1).胃粘膜と涙.鼻涙管粘膜との共通点は,双方ともに円柱上皮で覆われ,粘液分泌細胞により形成される上皮下腺組織を有することである.また,胃粘膜で生成されるムチンは膜結合型のMUC1,16,(137)分泌型のMUC5AC,6であり,涙.鼻涙管粘膜とそれと共通項があることからも,胃に対するレバミピドの効果が涙.鼻涙管に対して同様に発揮される可能性を示唆している.さらに,涙.鼻涙管は角結膜に比して血管が豊富であり,この点ではレバミピド内服による作用のうち,胃粘膜における粘膜血流促進や好中球遊走抑制作用による創傷治癒促進および抗炎症作用を期待できる.以上の文献的考察より,レバミピドが涙道粘膜の消炎,創傷治癒,ストレスからの障害抑制などを介して,炎症性涙道疾患および閉塞性涙道疾患に対して有効である可能性が高いと考えられた.今回筆者らの経験した症例では,実際に涙.炎による涙道粘膜の障害に対してレバミピド点眼が消炎,粘膜治癒促進作用を発揮したと考えられる結果を得た.涙.炎における涙.鼻涙管粘膜は,貯留した膿性物質と常に接することで継続的に障害される環境にあり,また治療に至るまで数年間放置することもまれではない.これは角結膜に比べて過酷な環境と考えられる.このような高度に障害された涙道粘膜に対して,レバミピドは粘膜の健常化を促進した.症例1では再発性涙.炎に対してレバミピド点眼による消炎作用が著効した.レバミピド点眼により,粘膜の炎症によるフィブリンの析出は減少し,粘膜の線維化は創傷治癒効果で上皮化が促進され,粘膜の色調が改善する様子からは,やはり角結膜や胃粘膜と同様の効果を涙道粘膜に発揮していると予想された.症例2および3のように,涙道閉塞が治癒した後もスイミングプールの水や点眼剤といった粘膜障害の原因を取り除けない場合において,レバミピドが涙道粘膜障害の再燃を抑制していると考えられたことから,涙道粘膜障害に対する予防的投与としても効果を発揮する可能性があると考えられた.残念ながら症例3においては,緑内障点眼治療とのジレンマの結果,レバミピド点眼を続行していたにもかかわらず最終的に涙道の全長閉塞に至った.その理由としては,レバミピド点眼の消炎,粘膜保護作用を上回る,緑内障点眼による薬剤性上皮障害が加わったことのほかに,レバミピド点眼を一時中止したことにより,涙小管の高度狭窄をきたしたため,レバミピド点眼が十分に涙道粘膜に到達しなくなり,進行性に涙道障害が進展した可能性が考えられた.以上より,レバミピド点眼は涙道閉塞症や涙.炎の治療,さらにはリスクファクターの高い正常例や涙道狭窄症において涙道障害の進行予防にも使用できる可能性があると考えられる.今後さらに症例を集めて前向きにムコスタR点眼の涙道閉塞性疾患への効果を検証する必要があると考えられた.文献1)ArakawaT,HiguchiK,FujiwaraYetal:15thanniversaryofrebamipide:lookingaheadtothenewmechanismsandnewapplications.DigDisSci50(Suppl1):S3-S11,あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015447 2)ArakakiR,EguchiH,YamadaAetal:Anti-inflammatoryeffectsofrebamipideeyedropadministrationonocularlesionsinamurinemodelofprimarySjogren’ssyndrome.PloSOne9:e98390,20143)KimuraK,MoritaY,OritaTetal:ProtectionofhumancornealepithelialcellsfromTNF-a-induceddisruptionofbarrierfunctionbyrebamipide.InvestOphthalmolVisSci54:2572-2760,20134)中嶋秀雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20125)竹治康広,田中直美,篠原久司:酸化ストレスによる角膜上皮バリアの障害に対するレバミピドの効果.あたらしい眼科29:1265-1269,20126)近藤衣里,渡辺彰英,上田幸典ほか:涙道閉塞と習慣的プールの利用の関係.あたらしい眼科29:411-414,20127)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:RebamipideincreasesbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionandcytokineexpressioninhumancornealepithelialcells.BrJOphthalmol97:912-916,20138)石橋達朗:いますぐ役立つ眼病理.眼科プラクティス8,文光堂,20069)FontRL,CroxattoJO,RaoNA:TumorsoftheEyeandOcularAdnexa.247,AmericanRegistryofPathologyincollaborationwiththeArmedForcesInstituteofPathology,Washington,D.C.,200610)PaulsenFP,CorfieldAP,HinzMetal:Characterizationofmucinsinhumanlacrimalsacandnasolacrimalduct.InvestOphthalmolVisSci44:1807-1813,200311)JagerK,WuG,SelSetal:MUC16inthelacrimalapparatus.HistochemCellBiol127:433-438,200712)崎元暢:結膜:眼表面におけるムチン研究の動向.眼科54:965-974,2012***(138)

高浸透圧ストレスを負荷した培養ヒト角膜上皮細胞におけるレバミピドの抗炎症作用

2014年11月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科31(11):1687.1691,2014c高浸透圧ストレスを負荷した培養ヒト角膜上皮細胞におけるレバミピドの抗炎症作用中嶋英雄田中直美浦島博樹篠原久司大塚製薬株式会社赤穂研究所Anti-inflammatoryEffectsofRebamipideinHyperosmolar-stressedHumanCornealEpithelialCellsHideoNakashima,NaomiTanaka,HirokiUrashimaandHisashiShinoharaAkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.培養ヒト角膜上皮細胞において高浸透圧ストレスによって誘導される炎症性サイトカインの産生ならびにmitogen-activatedproteinkinase(MAPキナーゼ)経路の活性化に対するレバミピドの効果について検討した.細胞をサブコンフルエントまで培養した後,培地から増殖添加剤を除去して以下の検討に用いた.塩化ナトリウムにて調製した400.500mOsMの高浸透圧培地で24時間細胞を培養し,培養上清中の炎症性サイトカイン量をイムノビーズアッセイで測定した.つぎに,1mMまたは2mMレバミピド含有培地で細胞を1時間前処理した後,各濃度のレバミピド存在下で500mOsM培地にて24時間培養した.培養上清中の炎症性サイトカイン量に加えて,炎症性サイトカイン遺伝子の発現量およびMAPキナーゼタンパクのリン酸化レベルをそれぞれリアルタイムRT-PCRおよびイムノビーズアッセイにて評価した.培養上清中のtumornecrosisfactoralpha,monocytechemotacticprotein-1およびinterleukin-7は浸透圧の上昇に依存して増加した.レバミピドはこれらの炎症性サイトカインの産生をタンパクおよび遺伝子レベルで抑制するとともに,高浸透圧ストレスにより亢進されたc-JunN-terminalkinaseおよびp38MAPKのリン酸化を抑制した.レバミピドは,ヒト角膜上皮細胞においてMAPキナーゼ経路の活性化を抑制することにより,高浸透圧ストレス誘導性の炎症性サイトカイン産生を抑制すると考えられた.Thisstudyexaminedtheeffectofrebamipideoninflammatorycytokineproductioninhyperosmolar-stressedhumancornealepithelialcells,andthemechanismbywhichmitogen-activatedprotein(MAP)kinasepathwaysmediatetheactionofrebamipide.Subconfluentcellswereswitchedtogrowthsupplement-freemediumbeforetreatment.Cellswereculturedfor24hoursinthemedium,theosmolarityofwhichwasincreased(400-500mOsM)byaddingNaCl;inflammatorycytokinesreleasedinthemediumwerethenmeasuredusingimmunobeadassay.Next,cellswereculturedfor24hoursin500mOsMmediumwith1mMor2mMrebamipide,whichwaspre-added1hourbeforebeingreplacedwith500mOsMmedium.Then,inadditiontoassessmentofinflammatorycytokinesinthemedium,inflammatorycytokinegeneexpressionandMAPkinasephosphorylationlevelwereassessedusingreal-timeRT-PCRandimmunobeadassay.Tumornecrosisfactoralpha,monocytechemotacticprotein-1andinterleukin-7proteininthemediumincreasedinanosmolarity-dependentmanner.RebamipidesuppressedtheproductionoftheseinflammatorycytokinesatboththeproteinandmRNAlevels,andsuppressedthephosphorylationlevelsofc-JunN-terminalkinaseandp38MAPK,whichwereenhancedbyhyperosmolarity.Theseresultssuggestthatrebamipidesuppresseshyperosmolarity-inducedinflammatorycytokineproductioninhumancornealepithelialcellsviaMAPkinasepathways.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(11):1687.1691,2014〕Keywords:ヒト角膜上皮細胞,高浸透圧ストレス,炎症性サイトカイン,MAPキナーゼ経路,レバミピド.humancornealepithelialcells,hyperosmolarstress,inflammatorycytokines,MAPkinasepathway,rebamipide.〔別刷請求先〕中嶋英雄:〒678-0207兵庫県赤穂市西浜北町1122-73大塚製薬株式会社赤穂研究所Reprintrequests:HideoNakashima,AkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,1122-73Nishihamakita-cho,Akoshi,Hyogo678-0207,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(121)1687 はじめにドライアイはさまざまな要因に起因する涙液および眼表面上皮における慢性疾患である.その発症メカニズムについては,国内では,涙液と角結膜上皮の異常による涙液安定性の低下がコアメカニズムとして存在し,炎症はこれらが悪循環を起こした結果であると考えられている1)のに対して,海外では,涙液の分泌減少/蒸発亢進による浸透圧の上昇ならびにそれに伴う眼表面の炎症がメカニズムの中心にあり,炎症により上皮細胞ならびに腺組織が障害された結果,涙液層の不安定化が引き起こされるという考え方が主流となっている2).ドライアイ治療用点眼剤であるレバミピド点眼液は,眼表面ムチンの増加作用3,4)により涙液を安定化させることで角結膜上皮障害を改善する5).胃炎・胃潰瘍治療剤でもあるレバミピドは胃粘膜組織において抗炎症作用を示すことが知られてきたが,近年,角膜および結膜上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制することが報告されている6,7).本検討では,高浸透圧ストレスを負荷した培養ヒト角膜上皮細胞を用いてレバミピドの抗炎症作用について検討した.I実験方法1.ヒト角膜上皮細胞の培養初代ヒト角膜上皮細胞(HCEC:LifeTechnologies)は増殖添加剤(HumanCornealGrowthSupplement:LifeTechnologies)および抗菌/抗真菌剤(Gentamicin/AmphotericinB:LifeTechnologies)を加えた基礎培地(Epilife:LifeTechnologies,305mOsM)にて培養した.コラーゲンTypeIコート100mmディッシュ(IWAKI)に細胞を播種し,CO2インキュベーター(37℃,5%CO2)内でサブコンフルエントまで培養した後,0.025%トリプシン/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)で細胞を.離した.コラーゲンTypeIコート24ウェルプレート(IWAKI)に5×104/ウェルで細胞を播種し,サブコンフルエントまで培養した後に増殖添加剤を除去して以下の検討に用いた.2.高浸透圧ストレスの負荷とレバミピドの添加高浸透圧ストレスがヒト角膜上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響に関する検討では,増殖添加剤を除去した基礎培地で24時間培養後に高浸透圧培地(400,450または500mOsM;基礎培地に塩化ナトリウムを加えて調製)に交換し,さらに24時間培養した.レバミピドの効果に関する検討では,増殖添加剤を除去した基礎培地で23時間培養後に1mMまたは2mMレバミピドを添加した基礎培地に交換し,その1時間後に同濃度のレバミピドを添加した500mOsM培地に交換した後,さらに24時間培養した.3.培養上清中の炎症性サイトカインタンパクの定量Bio-Plexアッセイシステム(Bio-Rad)を用いたイムノビ1688あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014ーズアッセイ法により培養上清中の炎症性サイトカインタンパク量を評価した.測定サンプルの調製はアッセイキット(ヒトサイトカイン17-Plexパネル)推奨のプロトコールに従って実施し,Bio-Plex200システムを用いて測定した.4.炎症性サイトカイン遺伝子の発現解析PureLinkRNAMiniKit(LifeTechnologies)でtotalRNAを抽出し,PrimeScriptRTreagentKit(タカラバイオ)でcDNAを合成した.SsoFastProbesSupermix(BioRad)およびTaqmanGeneExpressionAssays(tumornecrosisfactoralpha:TNF-a[Hs01113624_g1],monocytechemotacticprotein-1:MCP-1[Hs00234140_m1]interleukin-7:IL-7[Hs00174202_m1],glyceraldehyde(,)3-phosphatedehydrogenase:GAPDH[Hs02758991_g1]:AppliedBiosystems)を用いてPCR(polymerasechainreaction)反応液を調製し,CFX96リアルタイムPCR解析システム(Bio-Rad)にて[95℃30秒→(95℃5秒→60℃10秒)×39サイクル]の反応条件で各遺伝子の発現量を解析した.GAPDH遺伝子を内部標準として比較Ct法により各遺伝子の相対発現比を算出した.5.MAPキナーゼ経路活性化の評価種々の環境ストレスによって活性化されるmitogen-activatedproteinkinase(MAPキナーゼ)経路について,BioPlexアッセイシステムを用いたイムノビーズアッセイ法によりc-JunN-terminalkinase(JNK)およびp38MAPKのリン酸化レベルを指標に評価した.測定サンプルは,細胞から抽出した総タンパクをリン酸化型またはトータルターゲットのJNKあるいはp38MAPKに特異的な抗体ビーズ,ついでビオチン化検出抗体と反応させた後,CellSignalingReagentKitを用いて調製した.Bio-Plex200システムにて各サンプル中のリン酸化型MAPキナーゼタンパク量,ならびにリン酸化型を含むトータルのターゲットMAPキナーゼタンパク量を測定した.トータルターゲットタンパク量でリン酸化型タンパク量を補正してリン酸化レベルを算出した.6.統計解析結果は平均値±標準誤差で示した.SAS(SASInstituteJapan,ver.9.3)を用いて5%を有意水準として解析した.高浸透圧ストレスが炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響については,直線回帰分析を行ったが単調増加性を確認できなかったため,基礎培地群に対してDunnett検定(両側)を実施した.レバミピドの効果に関する検討においては,基礎培地群と500mOsM培地(レバミピド非添加)群の比較は対応のないt検定を実施した.500mOsM培地の3群間(レバミピド非添加,1mMレバミピド添加および2mMレバミピド添加)の比較は直線回帰分析にて単調減少性を確認した後,レバミピド非添加群に対するWilliams検定(下側)を実施した.なお,単調減少性が確認できなかった場合は非添加群に(122) 対するDunnett検定(両側)を実施した.II結果1.高浸透圧ストレスによるヒト角膜上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生誘導(図1)培養上清中のTNF-a,MCP-1およびIL-7は浸透圧の上昇に依存して増加し,TNF-aおよびIL-7が500mOsM培地群で,MCP-1が450mOsMおよび500mOsM培地群で有意に高値であった(p<0.01).2.炎症性サイトカインタンパクの産生増加に対するレバミピドの抑制効果(図2)500mOsM(レバミピド非添加)培地群のTNF-a,MCP-1およびIL-7はいずれも基礎培地群と比較して有意に高値であった(p<0.01).また,1mMおよび2mMレバミピド添加群では非添加群と比較していずれのサイトカインも有意に低値を示した(TNF-aおよびIL-7:p<0.01,MCP-1:p<0.01).3.炎症性サイトカイン遺伝子の発現増強に対するレバミピドの抑制効果(図3)500mOsM(レバミピド非添加)培地群のTNF-a,MCP-1およびIL-7遺伝子の発現量はいずれも基礎培地群と比較して有意に高値であった(p<0.01).一方,1mMおa$$bよび2mMレバミピド添加群の遺伝子発現量は非添加群と比較していずれのサイトカインも有意に低値を示した(p<0.01).4.MAPキナーゼ経路の活性化に対するレバミピドの抑制作用(図4)500mOsM(レバミピド非添加)培地群ではMAPキナーゼタンパクであるJNKおよびp38MAPKのリン酸化レベルが有意に亢進していた(JNK:p<0.05,p38MAPK:p<0.01).これに対して,1mMおよび2mMレバミピド添加群では非添加群と比較してリン酸化レベルの亢進は抑制される傾向を示し,JNKでは2mMレバミピド添加群にて,また,p38MAPKでは1mMおよび2mMレバミピド添加群にて有意であった(p<0.05).III考按ドライアイはさまざまな要因に起因する涙液および眼表面上皮における慢性疾患であるが,国内と海外を比較した場合,そのコアメカニズムの考え方の違いにより,治療に対するアプローチは大きく異なる.国内では,涙液安定性の低下がドライアイのコアメカニズムであるという考え方のもと,涙液安定性に関与する各因子をターゲットにした複数のドライアイ治療薬が開発され,これらを用いた治療(tearfilmc$$$$18015030$$251501201202090159060106030305000図1高浸透圧ストレスによるヒト角膜上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生誘導pg/mLa:TNF-a,b:MCP-1,c:IL-7.各値は6例の平均値±標準誤差を示す.305mOsM,400mOsM,450mOsM,500mOsM.$$p<0.01;Dunnett検定(両側).a##**b##$$c##**4060501520**3062010310000**図2炎症性サイトカインタンパクの産生増加に対するレバミピドの抑制効果40$$91230pg/mLa:TNF-a,b:MCP-1,c:IL-7.各値は4.6例の平均値±標準誤差を示す.305mOsM,500mOsM(レバミピド非添加),500mOsM+1mMレバミピド,500mOsM+2mMレバミピド.##p<0.01;対応のないt検定.**p<0.01;Williams検定(下側):直線回帰分析にて単調減少性を確認した後に実施した.$$p<0.01;Dunnett検定(両側).(123)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141689 Relativeexpressionratioa##**b##**c##**4104**83**36224112000**図3炎症性サイトカイン遺伝子の発現増強に対するレバミピドの抑制効果a:TNF-a,b:MCP-1,c:IL-7.各値は305mOsM群の平均値を1としたときの相対発現比で,グラフは6例の平均値±標準誤差を示す.305mOsM,500mOsM(レバミピド非添加),500mOsM+1mMレバミピド,500mOsM+2mMレバミピド.##p<0.01;対応のないt検定.**p<0.01;Williams検定(下側):直線回帰分析にて単調減少性を確認した後に実施した.abれ,角膜組織においてリンパ管形成を誘導する作用が報告さ3#*3##*れている12).以上のことから,本モデルは涙液浸透圧の上昇Phosphorylated/Totalを模したinvitro炎症モデルとして有用であると考えられ22*た.つぎに,本モデルにおけるTNF-a,MCP-1およびIL-7の産生ならびにMAPキナーゼ経路の活性化に対する11レバミピドの効果を検討した.レバミピドはTNF-a,MCP-1およびIL-7の産生をタンパクおよび遺伝子レベル図4MAPキナーゼ経路の活性化に対するレバミピドの抑制で抑制したのに加え,JNKおよびp38MAPKタンパクのリ00作用a:JNK,b:p38MAPK.各値は305mOsM群の平均値を1としたときの相対値で,グラフは6例の平均値±標準誤差を示す.305mOsM,500mOsM(レバミピド非添加),500mOsM+1mMレバミピド,500mOsM+2mMレバミピド.#p<0.05,##p<0.01;対応のないt検定.*p<0.05;Williams検定(下側):直線回帰分析にて単調減少性を確認した後に実施した.orientedtherapy)が始まっている1).これに対して海外では,涙液浸透圧の上昇に伴う炎症こそがドライアイの本質であるとする考えから抗炎症を切り口とした治療が行われており,免疫抑制剤であるシクロスポリン点眼による治療効果が報告されている8).レバミピド点眼液は眼表面のムチンをターゲットとして開発されたドライアイ治療薬であるが,最近,角膜および結膜上皮細胞において各種刺激による炎症性サイトカイン誘導に対する抑制効果6,7)やアレルギー性結膜炎患者の炎症症状に対する有効性9)が報告されている.そこで今回,高浸透圧ストレスを負荷した培養ヒト角膜上皮細胞を用いてレバミピドの抗炎症作用について検討した.まず,培養液の浸透圧がヒト角膜上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響について検討したところ,高浸透圧培地群ではTNF-a,MCP-1およびIL-7の産生が亢進した.TNF-aおよびMCP-1はドライアイ患者の涙液中で増加することが報告されており10,11),また,IL-7はT細胞の成熟やホメオスタシスに関与するサイトカインとして知ら1690あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014ン酸化を抑制した.レバミピドは,角膜上皮細胞に対する高浸透圧ストレスによって誘導されるMAPキナーゼ経路の活性化を抑制することにより炎症性サイトカインの産生亢進を抑制したと推察された.現在用いられている涙液浸透圧の測定方法はメニスカス涙液の浸透圧を測定するものである.これまでの報告では,ドライアイ患者における涙液浸透圧の上昇が指摘されている13)一方で,健常人と比較して浸透圧に差はないとする報告14)もあり,涙液浸透圧のドライアイへの関与に対しては賛否両論がある.現時点では角膜表面涙液の浸透圧を直接測定した報告はないものの,高浸透圧の点眼液が眼不快症状および涙液安定性に及ぼす影響を検討したLiuらの報告15)によると,高浸透圧の涙液が眼表面に障害を与える可能性が示唆されている.さらにLiuらは,塩化ナトリウムによる浸透圧の上昇が眼不快症状に影響するのは500mOsM以上であるとしており,この数値は今回の検討でヒト角膜上皮細胞から炎症性サイトカインの誘導が確認された浸透圧と一致する.また,眼表面の炎症性サイトカイン量は自覚症状の重症度と相関するという報告16)もあり,レバミピド点眼液による自覚症状改善効果5)にはレバミピドの有する抗炎症作用が寄与していることが推測された.これらのことから,レバミピド点眼液は,涙液浸透圧の上昇に伴う炎症に起因すると疑われるドライアイに対しても治療の選択肢の一つになりうると考えられた.今回の検討から,レバミピド点眼液は眼表面においてムチ(124) ン産生促進剤としてだけではなく抗炎症作用を有する薬剤としての可能性も示唆されたことから,多因性の眼疾患であるドライアイに対して有用な治療剤であると思われた.文献1)横井則彦,坪田一男:ドライアイのコア・メカニズム─涙液安定性仮説の考え方─.あたらしい眼科29:291-297,20122)Thedefinitionandclassificationofdryeyedisease:reportoftheDefinitionandClassificationSubcommitteeoftheInternationalDryEyeWorkshop(2007).OculSurf5:75-92,20073)RiosJD,ShatosMA,UrashimaHetal:EffectofOPC12759onEGFreceptoractivation,p44/p42MAPKactivity,andsecretioninconjunctivalgobletcells.ExpEyeRes86:629-636,20084)ItohS,ItohK,ShinoharaH:Regulationofhumancornealepithelialmucinsbyrebamipide.CurrEyeRes39:133141,20145)KinoshitaS,OshidenK,AwamuraSetal:Arandomized,multicenterPhase3studycomparing2%Rebamipide(OPC-12759)with0.1%sodiumhyaluronateinthetreatmentofdryeye.Ophthalmology120:1158-1165,20136)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:RebamipideincreasesbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionandcytokineexpressioninhumancornealepithelialcells.BrJOphthalmol97:912-916,20137)UetaM,SotozonoC,YokoiNetal:RebamipidesuppressesPolyI:C-stimulatedcytokineproductioninhumanconjunctivalepithelialcells.JOculPharmacolTher29:688-693,20138)SchultzC:Safetyandefficacyofcyclosporineinthetreatmentofchronicdryeye.OphthalmolEyeDis24:37-42,20149)UetaM,SotozonoC,KogaAetal:UsefulnessofanewtherapyusingrebamipideeyedropsinpatientswithVKC/AKCrefractorytoconventionalanti-allergictreatments.AllergolInt63:75-81,201410)NaKS,MokJW,KimJYetal:Correlationsbetweentearcytokines,chemokines,andsolublereceptorsandclinicalseverityofdryeyedisease.InvestOphthalmolVisSci53:5443-5450,201211)BoehmN,RiechardtAI,WiegandM:Proinflammatorycytokineprofilingoftearsfromdryeyepatientsbymeansofantibodymicroarrays.InvestOphthalmolVisSci52:7725-7730,201112)IolyevaM,AebischerD,ProulxSTetal:Interleukin-7isproducedbyafferentlymphaticvesselsandsupportslymphaticdrainage.Blood122:2271-2281,201313)LempMA,BronAJ,BaudouinCetal:Tearosmolarityinthediagnosisandmanagementofdryeyedisease.AmJOphthalmol151:792-798,201114)MessmerEM1,BulgenM,KampikA:Hyperosmolarityofthetearfilmindryeyesyndrome.DevOphthalmol45:129-138,201015)LiuH:Alinkbetweentearinstabilityandhyperosmolarityindryeye.InvestOphthalmolVisSci50:3671-3679,200916)ZhangJ,YanX,LiH:Analysisofthecorrelationsofmucins,inflammatorymarkers,andclinicaltestsindryeye.Cornea32:928-932,2013***(125)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141691

味覚センサを用いたムコスタ®点眼液UD2%に含有されるレバミピドの苦味評価と飲食物による苦味抑制評価

2013年11月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科30(11):1619.1622,2013c味覚センサを用いたムコスタR点眼液UD2%に含有されるレバミピドの苦味評価と飲食物による苦味抑制評価原口珠実宮崎愛里吉田都内田享弘武庫川女子大学薬学部臨床製剤学研究室TasteSensorEvaluationofBitternessofRebamipideContainedinMucostaROphthalmicSuspensionUD2%andBitternessSuppressionbyRefreshmentsTamamiHaraguchi,AiriMiyazaki,MiyakoYoshidaandTakahiroUchidaDepartmentofClinicalPharmaceutics,FacultyofPharmaceuticalSciences,MukogawaWomen’sUniversityムコスタR点眼液UD2%は,点眼後に主薬のレバミピドの苦味を呈することが知られている.本研究では味覚センサを用いてレバミピドの苦味を効果的に抑制しうる飲食物を探索することを目的とした.高速液体クロマトグラフィーを用いた測定により,ムコスタR点眼液UD2%に溶解しているレバミピドは約300μg/mLであった.レバミピドの濃度依存的に応答する脂質膜味覚センサAE1を用いてレバミピドの苦味を定量的に評価した.レバミピド溶液300μg/mLの膜応答値に及ぼす飲食物の影響を検討したところ,コーヒー,味噌汁,ココアの順にレバミピド溶液の膜応答を抑制した.味覚センサ測定結果とヒト官能試験結果には高い相関があり,レバミピドの苦味抑制に効果的な飲食物を探索する方法として味覚センサの有用性が示唆された.ムコスタR点眼液UD2%点眼後の苦味を抑制する飲食物として,コーヒーが最も有効であることが示唆された.TheinstillationofMucostaRophthalmicsuspensionUD2%totheeyesisknowntocauseabittertastederivingfromitsactiveingredient,rebamipide.Thepurposeofthisstudy,usingatastesensor,wastoscreenrefreshmentsthatcouldhaveapositiveeffectonsuppressingthebitternessofrebamipide.Wedeterminedviahigh-performanceliquidchromatography(HPLC)thattheconcentrationofrebamipidedissolvedinMucostaRophthalmicsuspensionUD2%wasapproximately300μg/mL.Wethenevaluatedthebitternessusingatastesensoroflipid/polymermembraneAE1,whichrespondstorebamipideinadose-dependentmanner.Thetastesensoroutputof300μg/mLrebamipidewasdecreasedbycoffee,cocoaandmisosoup,inthatorder.Therewasgoodcorrelationbetweenresultsoftastesensoroutputandhumansensationtest.Itissuggestedthatthetastesensorisusefulinscreeningrefreshmentsthatsuppressthebitternessofrebamipide.CoffeeisjudgedtobeagoodbeverageforsuppressingthebitternesscausedbyinstillingMucostaRophthalmicsuspensionUD2%totheeyes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(11):1619.1622,2013〕Keywords:ムコスタR点眼液UD2%,レバミピド,苦味,味覚センサ,飲食物.MucostaRophthalmicsuspensionUD2%,rebamipide,bitterness,tastesensor,refreshments.はじめに涙液層,表層上皮細胞層におけるムチン増加作用などが期待される,レバミピドを有効成分とするムコスタR点眼液UD2%1)は,ドライアイ治療の新しい治療コンセプトTearFilmOrientedTherapy(TFOT)2)を踏まえた重要な点眼薬であるといえる.しかし,ムコスタR点眼液UD2%のおもな副作用として苦味があり,臨床試験で670例中105例(15.7%)が苦味を示したことが添付文書に記されている.これは,点眼液の主成分であるレバミピドが鼻涙管を通過して咽頭部で発生する苦味であるが,この苦味に対する有効な抑制方法についての報告は現在ない.そこで本研究では,これまでに当研究室で経口製剤の苦味予測に利用してきた味覚センサ3)を用いて,レバミピドの苦味を効果的に抑制しうる飲食物を探索することを目的とし〔別刷請求先〕内田享弘:〒663-8179兵庫県西宮市甲子園九番町11-68武庫川女子大学薬学部臨床製剤学研究室Reprintrequests:TakahiroUchida,Ph.D.,DepartmentofClinicalPharmaceutics,FacultyofPharmaceuticalSciences,MukogawaWomen’sUniversity,11-68,9-Bancho,Koshien,Nishinomiya-shi,Hyogo663-8179,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(127)1619 た.まず初めに,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてムコスタR点眼液UD2%に溶解しているレバミピドの濃度を測定した.つぎに,レバミピド溶液の苦味に及ぼす飲食物(緑茶,ココア,コーヒー,味噌汁)の影響について,味覚センサを用いて評価した.最後にヒト官能試験を行い,味覚センサ測定から得られた結果との相関性を確認した.I試薬と試験方法1.HPLCを用いたムコスタR点眼液UD2%に溶解しているレバミピドの濃度測定ムコスタR点眼液UD2%(大塚製薬株式会社)1mLを遠心分離(4℃,13×103rpm,15min)した上清を0.2μmフィルターで濾過した試料をHPLCで測定した.検量線作成にはN,Nジメチルホルムアミドを1.2%含むメタノールに溶解したレバミピド(LKTLabs,Inc)を用いた.pH6.2リン酸塩緩衝液(300→1,000)とアセトニトリルを体積比79:21で混合した試料を移動相とした.4.6mm×250mmのカラム(CAPCELLPAKC18UG120:資生堂)でカラム温度40℃,流速1.2mL/min,測定波長254nmに設定して測定した.2.味覚センサを用いたレバミピド溶液300μg.mLの苦味評価と飲食物の影響インテリジェントセンサーテクノロジー社の味認識装置SA402Bを使用した.舌を模倣した脂質膜センサを基準液に浸して膜電位(Vr)を測定後,センサをサンプルに浸して膜電位(Vs)を測定し,膜電位変化(Vs.Vr)をセンサ出力値とした.レバミピドの濃度依存的に応答が認められた脂質膜センサAE1を用い,レバミピド溶液のセンサ出力値に及ぼす各飲食物の影響について評価した.レバミピドの溶媒にはリン酸緩衝生理食塩水(phosphatebuffersaline:PBS)を用いた.レバミピド溶液に混合する飲食物として,市販の緑茶(キリン生茶),ココア(バンホーテンココアクオリティーテイスト),コーヒー(サントリーBOSS),味噌汁(永谷園あさげ)を用いた.600μg/mLのレバミピド溶液と各飲食物10,5,1倍希釈液を体積比1:1の割合で混合した試料(最終濃度:レバミピド300μg/mL,各飲食物5%,10%,50%)について,味覚センサ測定を行った.苦味抑制評価には,飲食物(希釈なし)を体積比1:1で混合した試料(最終濃度:レバミピド300μg/mL,各飲食物50%)とした.(武庫川女子大学倫理委員会承認日:平成24年12月19日,受付番号12-37)II結果HPLCによる測定の結果,ムコスタR点眼液UD2%に溶解しているレバミピドの濃度は300.85±41.93μg/mL(n=12)であった.味覚センサ測定では,レバミピド溶液125,250,500μg/mLは,濃度依存的に脂質膜センサAE1に応答した(図1).味強度は濃度の対数に比例するというウェーバー・フェヒナー(Weber-Fechner)の法則に基づき4),レバミピドの濃度の対数とAE1センサ出力値が相関することを確認した〔ピアソン(Pearson)の相関係数r=.0.9981〕.その他の苦味応答膜AC0,AN0,C00では応答が小さく濃度依存性の確認も困難であったため,本検討ではAE1センサを用いてレバミピドの苦味を評価した.ムコスタR点眼液UD2%に溶解している濃度である300μg/mLのレバミピド溶液のセンサ出力値に及ぼす飲食物の影響を検討したところ,緑茶を混合したレバミピド溶液の補間差分値はレバミピド溶液のセンサ出力値とほぼ同等の値を示したが,味噌汁,ココア,コーヒーをそれぞれ混合したレバミピド溶液の補間差分値はレバミピド溶液のセンサ出力値と比較して有意に低い値を示した(図2).2倍希釈(50%)の各飲食物を混合したレバミピド溶液の補間差分値とレバミピド溶液のセンサ出力値を比較すると,コーヒー,味噌汁,ココア,緑茶の順にレバミピド溶液のセンサ出力値を抑制することが明らかとなった(図3).ヒト官能試験では,300μg/mLのレバミピド溶液の苦味強度はt2.0±0.7であった.各飲食物を混合したレバミピド溶液の苦味強度は,緑茶混合液ではt2.5±0.41,ココア混レバミピド濃度(μg/mL)01002003004005006000-5センサ出力値(mV)食物単独での出力値を基準とした補間差分値を用いた.3.ヒト官能試験によるレバミピド溶液300μg.mLの苦-10-15味評価と飲食物の影響苦味の標準物質であるキニーネ塩酸塩水溶液0.01,0.03,0.1,0.3mMの苦味をそれぞれ苦味強度t0,1,2,3とした.熟練したパネラー4名は,苦味強度t0.3のキニーネ塩酸-20-25塩水溶液を各2mL口に5秒間含み,苦味を記憶した.つぎ-30Mean±SDn=3に,試験サンプルを各2mL口に含み,苦味強度を評価した.図1味覚センサ脂質膜AE1に対するレバミピドのセンサ試験サンプルは,レバミピドの水懸濁液600μg/mLと各飲出力値1620あたらしい眼科Vol.30,No.11,2013(128) A:レバミピド300μg/mLB:レバミピド300μg/mLC:レバミピド300μg/mLD:レバミピド300μg/mLB:レバミピド300μg/mLC:レバミピド300μg/mLD:レバミピド300μg/mL+緑茶+ココア+コーヒー+味噌汁00%5%10%50%00%5%10%50%0%5%10%50%0%5%10%50%00***-10-10-10-10**補間差分値(mV)-20-30-40-50-20-30-40-50**-20-30-40-50***††-20-30-40-50n=3Mean±SD**p<0.01,***p<0.001vs.control(0%),††p<0.001(Tukeytest)図2飲食物(0,5,10,50%)を混合したレバミピド溶液(300μg.mL)の補間差分値飲食物:緑茶(A),ココア(B),コーヒー(C),味噌汁(D).レバミピド300μg/mL苦味強度(t)の差〔(レバミピド+飲食物)-(飲食物のみ)〕3210n=4Mean±SE*p<0.05vs.control(水)(Dunnettest)*水緑茶ココアコーヒー味噌汁レバミピド300μg/mLの溶媒図4ヒト官能試験によるレバミピドの苦味抑制評価0水緑茶ココアコーヒー味噌汁(50%)図3各飲食物(50%)を混合したレバミピド溶液(300μg.mL)の補間差分値n=3Mean±SD*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001vs.control(水),††p<0.01(Tukeytest)******††-5補間差分値(mV)-10-15-20-25-30〔(レバミピド+飲食物)-(飲食物のみ)〕苦味強度(t)の差321Mean±SEr=-0.989(Pearson’scorrelationtest)合液ではt2.0±0,コーヒー混合液ではt1.88±0.25,味噌汁混合液ではt1.25±0.65であった.また,飲食物のみ(2倍希釈)の苦味強度は,緑茶はt0.88±0.63,ココアはt0.5±0.58,コーヒーはt1.13±0.25,味噌汁はt0.13±0.25であった.各飲食物を混合したレバミピド溶液の苦味強度と各飲食物のみの苦味強度の差は,飲食物が緑茶の場合1.63±0.48,ココアの場合1.5±0.58,味噌汁の場合1.25±0.65と低くなり,コーヒーの場合0.75±0.87と水と比較して有意-025-15-5に低値を示した(図4).味覚センサから得られた各飲食物を混合したレバミピド溶液の補間差分値と,官能試験による苦味強度(t)の差〔飲食物を混合したレバミピド溶液の苦味強度(t).飲食物のみ(2倍希釈)の苦味強度(t)〕には高い相関が認められた(**p<0.01,ピアソンの相関係数r=.0.989)(図5).III考察苦味は基本的に忌避されるが,カフェインの苦味は適度な(129)飲食物混合レバミピド溶液の補間差分値(mV)図5味覚センサによる評価とヒト官能試験結果の相関性濃度であればヒトに嗜好されるという性質をもつ5).カフェインを含むコーヒーについて,本検討におけるヒト官能試験の結果,コーヒー自体が苦味を有し,コーヒーと混合したレバミピド溶液の苦味強度とコーヒー単独の苦味強度の差が1未満であったことから,レバミピドの忌避される苦味はコーあたらしい眼科Vol.30,No.11,20131621 ヒーの嗜好される苦味により効果的にマスキングされる可能性が考えられた.口腔内に広がった匂い分子が揮発して鼻腔に達したものは味覚に大きく関与すると言われており6),ココアパウダーの匂い分子がレバミピドの苦味を抑制すること7),コーヒーの揮発性成分が,ヒトでのリラックス効果,マウスでのストレス緩和作用を示したこと8)が報告されている.本検討で,ココアの苦味抑制効果はヒト官能試験においてもほとんどなかった原因として,希釈によりココアの香りが減弱した可能性が考えられる.一方,コーヒーは,本検討での味評価において,レバミピドの苦味抑制に効果的であることが示唆された.この理由としては,コーヒーに含まれる苦味成分に加えてコーヒーの香りも味覚に重要な影響を与える可能性があり,コーヒーには味と香りの両面からの相加的なレバミピドの苦味抑制効果が期待される.ムコスタR点眼液UD2%点眼後には,苦味を抑制するために飲食物を摂取することが推奨されるが,本検討では,レバミピド溶液と混合する飲食物として,緑茶,ココア,コーヒー,味噌汁の4種類を用いた.これらのなかではコーヒー,味噌汁,ココア,緑茶の順にレバミピドの苦味を抑制する結果を得た.特にコーヒーでは,それ自身の嗜好的な苦味がレバミピドの忌避される苦味をマスキングする可能性が考えられた.すなわち,コーヒーとしての苦味を意識し許容するため,実質的には薬として感じる苦味が軽減してしまうことが考えられる.コーヒーを飲むことでムコスタR点眼液UD2%点眼後に発現する苦味を軽減でき,患者のQOL(qualityoflife)を向上させることができると期待される.文献1)UrashimaH,TakejiY,OkamotoTetal:Rebamipideincreasesmucin-likesubstancecontentsandperiodicacidShiffregent-positivecellsdensityinnormalrabbits.JOculPharmacolTher28:264-270,20122)横井則彦,坪田一男:ドライアイのコア・メカニズム─涙液安定性仮説の考え方─.あたらしい眼科29:291-297,20123)内田享弘:味覚センサを用いた医薬品の味評価.日本味と匂学会誌19:133-138,20124)DehaeneS:TheneuralbasisoftheWeber-Fechnerlaw:alogarithmicmentalnumberline.TrendsCognSci7:145-147,20035)北田亮,藤戸洋聡,呉性姫ほか:味細胞タイプ別のカフェイン味刺激伝達経路の解析.日本味と匂学会誌17:237-240,20106)HeilmannS,HummelT:Anewmethodforcomparingorthonasalandretronasalolfaction.BehavNeurosci118:412-419,20047)近藤千聡,福岡悦子,佐々木忠徳ほか:チョコレート風味の口腔内崩壊錠(チョコレット)の開発に関する研究(第3報)─患者ベネフィットの向上を目指したレバミピドチョコレット調製条件の最適化─.薬剤学67:347-355,20078)HayashiY,SogabeS,HattoriY:Behavioralanalysisofthestress-reducingeffectofcoffeevolatilesinmice.JJpnSocNutrFoodSci64:323-327,2011***1622あたらしい眼科Vol.30,No.11,2013(130)

上顎洞癌陽子線治療後の皮膚炎・ドライアイ;レバミピド点眼が著効した1例

2013年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科30(9):1314.1317,2013c上顎洞癌陽子線治療後の皮膚炎・ドライアイ;レバミピド点眼が著効した1例宇野真眼科好明館CaseofRadiationDermatitisandDryEyeSyndromeafterProtonBeamTherapy;EffectivenessofRebamipideEyedropsMakotoUnoKoumeikanEyeClinic背景:近年,陽子線治療は頭頸部領域を含む各種の悪性新生物に対し有効な治療法となっている.ただし,陽子線治療は先進医療であり,全国でも限られた施設でしか行われていない.今後は,遠隔地で陽子線治療を受け,地方で病状経過を追う症例が増えると予想される.今回,地方の個人開業眼科診療所で,陽子線照射後の皮膚炎および重篤なドライアイ症例を経験したので報告する.症例:57歳,男性.左上顎洞の進行扁平上皮癌(StageIVA,T4aN0M0)に対して,陽子線照射(総吸収線量70.4GyE)と化学療法(シスプラチン総量350mg)を他院で受け,治療終了後に眼科好明館を受診した.放射線皮膚炎と結膜炎を診断され,抗菌薬眼軟膏およびステロイド眼軟膏塗布で皮膚炎は軽快した.その後,重篤なドライアイを発症し,通常の治療に抵抗性であったが,2%レバミピド点眼を追加処方したところ,速やかに軽快した.結論:陽子線治療に伴う有害事象として,ドライアイは治療困難なことがあり,照射後の患者については慎重な経過観察が必要である.Background:Althoughprotonbeamtherapy(PBT)isavailableforthetreatmentofmanytypesofmalignancy,onlyalimitednumberofinstitutesinJapancanperformthisprocedure.Asaresult,patientswhoreceivePBTatadistantinstitutemayreceivefollow-upcarefromalocalfamilyphysician.Case:A57-year-oldmalewhounderwentPBT(totaldose:70.4GyE)withconcurrentchemotherapyforadvancedsquamouscellcarcinomaoftheleftmaxillarysinuspresentedtoKoumeikanEyeClinicandwasdiagnosedashavingradiationdermatitisandconjunctivitis.Hisdermatitiswastreatedwithtopicalsteroidandantibioticointment,withnocomplications,butseveredryeyesyndromeoccurredsuccessively.Althoughordinarytreatmentfordryeyesyndromehadlittleeffect,thecornealerosionimprovedrapidlyafteradministrationoftopicalrebamipide2%eyedrops;thesymptomsamelioratedsuccessfully.Conclusion:AsanadverseeventofPBT,severedryeyesyndromecanbechallengingtotreat;irradiatedpatientsneedcloseophthalmologicmonitoringforpotentialsequelae.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(9):1314.1317,2013〕Keywords:陽子線治療,放射線有害事象,放射線皮膚炎,ドライアイ,レバミピド.protonbeamtherapy(PBT),radiationadverseevents,radiationdermatitis,dryeyesyndrome,rebamipide.はじめに陽子線治療は近年実用化された放射線治療の一種であり,現行のX線治療との比較検討が盛んに行われている.ただし,陽子線治療は先進医療であり,全国でも限られた施設でしか行われていない.この治療を受ける患者はまだ比較的少数にとどまっているが,今後は,遠隔地で陽子線治療を受け,地方で病状経過を追う症例が増えることが予想される.今回,個人開業の眼科診療所で陽子線照射後の皮膚炎・ドライアイ症例を経験したので報告する.I症例患者は57歳,男性.左上顎洞扁平上皮癌(StageIVA,〔別刷請求先〕宇野真:〒502-0071岐阜市長良157-1眼科好明館Reprintrequests:MakotoUno,M.D.,KoumeikanEyeClinic,157-1Nagara,Gifu,Gifu502-0071,JAPAN131413141314あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013(114)(00)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY T4aN0M0)に対し,他院で陽子線照射(総吸収線量70.4GyE,33分割照射)と化学療法(浅側頭動脈からの動注療法,シスプラチン総量350mg)を受けた.同院での治療中に放射線皮膚炎を発症し治療を受けていたが,自己判断で治療を中断した.左眼周囲の痛みを訴えて2012年9月(陽子線治療終了後11日)に眼科好明館を受診した.受信時所見:視力は右眼0.2(0.5×.1.0D(cyl.1.0DAx30°),左眼0.2(0.6×.1.75D(cyl.0.5DAx90°),眼圧は右眼14mmHg,左眼24mmHg.左上・下眼瞼から頬部にかけて皮膚の発赤,落屑があり,一部はびらんを伴っていた(図1).他に,左眼結膜充血ならびに眼脂を認めた.両眼とも核白内障があり,眼底に特記する異常はなかった.陽子線照射による有害事象であり,commonterminologycriteriaforadverseevents(CTCAE)version4.0に基づいて放射線皮膚炎Grade2,結膜炎Grade2と診断された.皮膚炎治療として0.3%オフロキサシン眼軟膏ならびに図1照射終了後11日左上・下眼瞼から頬部にかけて,皮膚の発赤,落屑および一部のびらんを認める.0.05%デキサメタゾン眼軟膏を各1日2回患部に塗布し,結膜炎に対しては1.5%レボフロキサシン点眼と0.1%フルオロメトロン点眼を各1日4回,および0.3%オフロキサシン眼軟膏の結膜.内点入1日2回を処方したところ,ほぼ2週間後に皮膚炎・結膜炎は軽快した.やや兎眼気味ではあったが角膜びらんはなく閉瞼も十分可能であったため,照射終了25日に0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼1日4回を処方し,その他の点眼と眼軟膏結膜.内点入を中止したところ,照射終了後42日に軽度の点状角膜びらんが角膜下方に出現した.0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼から防腐剤無添加0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼に変更したが,照射終了後50日に点状びらんが角膜全面に多発し,Descemet膜皺襞と前房図2照射終了後57日(レバミピド点眼後0日)防腐剤無添加0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼,0.1%フルオロメトロン点眼およびオフロキサシン眼軟膏を併用していたが,点状角膜びらんが多発し,大きな角膜上皮欠損も出現している.図3照射終了後64日(レバミピド点眼後7日)角膜びらんはほぼ消失している.角膜前面の水濡れ性は良好である.図4照射終了後165日(レバミピド点眼後108日)軽度の楔状角膜混濁を認める.角膜への血管侵入はない.(115)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131315 微塵を伴う重篤な角膜炎(CTCAEGrade3)を発症した.眼瞼結膜は軽度の充血を示すのみであり,マイボーム腺開口部のpluggingや瞼縁部の充血などのマイボーム腺機能不全を示す所見はなかった.防腐剤無添加0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼に加えて0.1%フルオロメトロン点眼1日4回と0.3%オフロキサシン眼軟膏結膜.内点入1日2回を再開したが,照射終了後57日の時点で多発する角膜点状びらんは改善せず,大きな角膜上皮欠損も出現した(図2).通常の治療に抵抗性であったが,2%レバミピド点眼1日4回を追加処方したところ,その1週間後の照射終了後64日には角膜びらんはほぼ消失し,角膜前面の水濡れ性が良好な状態に回復した(図3).照射終了後165日の時点で,角膜上皮びらんおよび角膜実質への血管侵入はないが,楔状の混濁を軽度に認めた.この混濁は視力には影響なく,フルオレセイン染色パターンから結膜組織の侵入と思われた(図4).この時点で2%レバミピド点眼1日4回,防腐剤無添加0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼1日4回,0.1%フルオロメトロン点眼1日1回および0.3%オフロキサシン眼軟膏結膜.内点入1日1回を継続している.なお,角膜障害治癒後のSchirmerテストは右眼4mm,左眼11mmであり,著しい涙液分泌減少は認めなかった.また,スペキュラーマイクロスコピーでの角膜内皮細胞数計測は右眼2,645cells/mm2,左眼2,652cells/mm2であり,著しい角膜内皮細胞減少は認めなかった.II考按陽子線治療とは,加速器(サイクロトロンまたはシンクロトロン)を用いて水素の原子核である陽子を加速し,病変部位に照射する放射線治療の一種である.加速された陽子は,与えられた運動エネルギーに応じて一定の距離(飛程,range)を飛んだ後に静止する.したがって,陽子への加速を調節することにより,その到達深度の設定が可能となる.さらに,陽子線を含む粒子線は,飛程終端間際の速度が落ちるところで,より密度高くエネルギーを失うという,ブラッグピークとよばれるピークを有している.このため,異なる飛程をもつ陽子ビームを重ね合わせた拡大ブラッグピークを形成することにより,ある一定の広がりをもった病変部への一様な照射が可能であり,なおかつ,病変部よりも奥にある正常組織の吸収線量を大幅に下げることができる.ただし,総線量が多い場合には,体表部での吸収線量がある程度大きなものになることは避けられず,皮膚炎などの発症が問題となることがある.頭頸部領域において,陽子線治療はintensity-modulatedradiationtherapy(IMRT)を含む従来のX線療法と比べて同等以上の成績をあげており,悪性新生物の切除不可能症例への使用や,小児への応用の可能性について注目されてい1316あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013る.陽子線は粒子線ではあるが,炭素イオン線と比べて線エネルギー付与(linearenergytransfer:LET)は比較的小さく,放射線の効果や障害を考えるうえで低LET線であるX線での経験が参考となるとされている.放射線による有害事象については,CTCAEスコアや,radiationtherapyoncologygroup(RTOG)cooperativegroupcommontoxicitycriteriaなどに従って評価される.現在までに,乳癌治療などに伴う放射線皮膚炎の治療法が検討されてきたが,各治療法のエビデンスは十分なものとはいえず1),各々の医療機関において経験的な治療がなされているのが現状である.2から3度の放射線皮膚炎に対しては,火傷治療に準じて保湿と感染予防を行い,必要に応じてステロイド軟膏を併用することが有効であると思われる.頭頸部領域での治療については,0.033%ジメチルイソプロピルアズレン軟膏(アズノール軟膏R)の使用が紹介されている2).放射線治療時の化学療法併用は皮膚炎発症のリスクファクターであり,今回の症例では使用されていないが,分子標的薬についてもEGF(上皮細胞成長因子)受容体抗体であるcetuximabの使用例では,重度の座瘡様皮膚炎が問題となっており3),注意が必要である.放射線照射後のドライアイについて,Barabinoらのレビューでは,涙腺の総吸収線量が50.60Gyに至ると涙腺萎縮が起こるとしており,涙腺の耐容線量は30.40Gy程度であると述べている4).Bhandareらは,涙腺領域への吸収線量が推定34Gyを超えると重篤なドライアイが増加することを報告しており,その報告のなかで,放射線照射後のドライアイが主涙腺単独の障害によるものではなく,副涙腺,結膜杯細胞およびマイボーム腺などの関与も考えられるが,主涙腺以外の組織については吸収線量の推定は不可能であったと述べている5).外照射ではないが小線源治療後の結膜で杯細胞の減少がみられたという報告があり6),また,放射線照射後の口腔乾燥症では分泌型ムチンが減少している7)ことからも,放射線照射後のドライアイ症例においてムチン減少が関与している可能性が考えられる.今回の症例では,治療に抵抗性であった角膜上皮障害に対してレバミピド点眼が奏効した.レバミピドは杯細胞を増加させ,ムチン分泌を亢進させる作用がある他に,角膜上皮での膜結合型ムチンを増加させる.これらの作用が杯細胞の障害とムチン分泌減少を補い,角膜上皮障害が修復されたものと考えられる.当症例の特徴的な所見として,まず,発症初期から炎症所見が強く,前房微塵やDescemet膜皺襞を伴っていたことがあげられる.皮膚や消化管粘膜における放射線障害について,インターロイキン1などの炎症性サイトカインが関与して慢性炎症をひき起こしていることが報告されており8,9),角・結膜内の微小環境においても,被曝後にサイトカインな(116) どの組成変化があり,慢性の前炎症状態となっていることが考えられる.この状態が,角膜上皮障害を契機として角膜実質に及ぶ急性炎症へと転化し,角膜上皮の微絨毛や膜結合型ムチンの障害をひき起こすことにより,さらなる角膜上皮障害増悪の悪循環に陥ったことが想像される.さらに,角膜びらんは比較的短期間で軽快し,角膜への血管侵入がないにもかかわらず,軽度ではあるものの角膜混濁をきたしたことも特徴的である.放射線照射後に角膜上皮幹細胞が障害されたという報告10)があり,角膜上皮幹細胞に対して,放射線による直接の障害および持続する炎症による二次的な障害が起こり,結膜組織が角膜上に侵入したものと考えられる.レバミピドには抗炎症作用があり,局所投与による直腸の放射線粘膜炎治療の報告もある11)ため,今回の症例のように炎症が強いドライアイ症例においては,発症初期から長期にわたる積極的な使用を考慮すべきであると思われる.III結語陽子線治療を含めた放射線治療後の有害事象に対しては注意深い経過観察が必要であり,ドライアイ発症例では治療に難渋することがある.放射線治療のさらなる普及に伴い,一般開業医であっても放射線障害症例を診察する機会が多くなることが予想されるため,放射線による有害事象とその治療について,基本的知識を備えることが必要である.文献1)SalvoN,BarnesE,vanDraanenJetal:Prophylaxisandmanagementofacuteradiation-inducedskinreactions:asystematicreviewoftheliterature.CurrOncol17:94112,20102)福島志衣,古林園子,石井しのぶ:最新レジメンでわかる!がん化学療法実践編頭頸部がんCDDP+RT療法(シスプラチン+放射線療法).ナース専科30:88-91,20103)BernierJ,RussiEG,HomeyBetal:Managementofradiationdermatitisinpatientsreceivingcetuximabandradiotherapyforlocallyadvancedsquamouscellcarcinomaoftheheadandneck:proposalsforarevisedgradingsystemandconsensusmanagementguidelines.AnnOncol22:2191-2200,20114)BarabinoS,RaghavanA,LoefflerJetal:Radiotherapyinducedocularsurfacedisease.Cornea24:909-914,20055)BhandareN,MoiseenkoV,SongWYetal:Severedryeyesyndromeafterradiotherapyforhead-and-necktumors.IntJRadiatOncolBiolPhys82:1501-1508,20126)HeimannH,CouplandSE,GochmanRetal:Alterationsinexpressionofmucin,tenascin-candsyndecan-1intheconjunctivafollowingretinalsurgeryandplaqueradiotherapy.GraefesArchClinExpOphthalmol239:488495,20017)DijkemaT,TerhaardCHJ,RoesinkJMetal:MUC5Blevelsinsubmandibularglandsalivaofpatientstreatedwithradiotherapyforhead-and-neckcancer:Apilotstudy.RadiatOncol7:91,20128)JankoM,OntiverosF,FitzgeraldTJetal:IL-1generatedsubsequenttoradiation-inducedtissueinjurycontributestothepathogenesisofradiodermatitis.RadiatRes178:166-172,20129)OngZY,GibsonRJ,BowenJMetal:Pro-inflammatorycytokinesplayakeyroleinthedevelopmentofradiotherapy-inducedgastrointestinalmucositis.RadiatOncol5:22,201010)FujishimaH,ShimazakiJ,TsubotaK:Temporarycornealstemcelldysfunctionafterradiationtherapy.BrJOphthalmol80:911-914,199611)KimTO,SongGA,LeeSMetal:Rebamipideenematherapyasatreatmentforpatientswithchronicradiationproctitis:initialtreatmentorwhenothermethodsofconservativemanagementhavefailed.IntJColorectalDis23:629-633,2008***(117)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131317