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緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査

2022年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科39(12):1694.1699,2022c緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用調査中牟田爽史*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSurveyontheUseofBrand-NameandGenericEyeDropsforGlaucomaSoshiNakamuta1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況,使用理由を調査した.対象および方法:井上眼科病院に通院中で後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中のC504例を対象とした.お薬手帳や点眼薬実物から使用薬剤を判断した.先発あるいは後発医薬品の使用理由をアンケートで調査した.結果:対象者は男性C222例,女性C282例,年齢はC68.9±10.8歳,使用薬剤数はC2.5±1.3剤だった.先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用353例(70.0%),両方とも使用C17例(3.4%)だった.先発医薬品の使用理由は,安心・安全C65.6%,薬局の推奨C12.6%など,後発医薬品の使用理由は,薬局の推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.結論:先発医薬品のみ使用は26.6%で,薬剤への安心感や安全性から選択していた.後発医薬品のみ使用はC70.0%で,薬局の推奨や経済的観点から選択していた.CPurpose:Toinvestigatetheuseofbrand-nameandgenericeyedropsforglaucoma.PatientsandMethods:CTheCstudyCinvolvedC504CoutpatientsCseenCatCInoueCEyeCHospitalCwhoCusedCcurrentlyCavailableCbrand-nameCandCgenericglaucomamedications.Thetypeofmedicationusedwasinvestigatedviaanalysisofthemedicationinstruc-tionsheetortheactualmedicationbottles.Thereasonsforuseweresurveyedviapatientquestionnaire.Results:CTherewere222malesand282females,(meanage:68.9±10.8years),andthemeannumberofmedicationsusedwas2.5±1.3.Ofthe504patients,134(26.6%)wereusingonlybrand-namemedications,353(70.0%)wereusingonlyCgenericCmedications,Cand17(3.4%)wereCusingCboth.CReasonsCforCusingCbrand-nameCmedicationsCincludedCsafetyandsecurity(65.6%)andpharmacyrecommendation(12.6%),whileasforuseofthegenericmedications,pharmacyrecommendation(59.2%)andlowerprice(25.9%)weretheprimaryreasons.Conclusions:Ofthe504patients,26.6%CusedConlyCbrand-nameCmedicationsCand70.0%CusedConlyCgenericCmedications,CwithCtheCprimaryCreasonsforusebeingsafetyandsecurityintheformerandpharmacyrecommendationorcostinthelatter.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(12):1694.1699,C2022〕Keywords:緑内障点眼薬,先発医薬品,後発医薬品,薬物選択.glaucomaeyedrops,brand-name,generic,choiceofmedication.Cはじめに近年,厚生労働省は保険財政の改善と患者負担の軽減を考えて先発医薬品ではなく後発医薬品の使用を推奨している.後発医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を含有し,効能・効果,用法・用量は原則同一であるが,添加剤(防腐剤を含む)は異なる.後発医薬品は先発医薬品の独占的販売期間(有効性・安全性を検証する再審査期間および特許期間)が終了した後に発売される.厚生労働省の後発医薬品推奨の姿勢は診療報酬にも反映されている.医療機関では薬剤を処方する際に一般名で処方するとC5.7点が加算される(2022年C2月現在).また,調剤薬局では後発医薬品調剤体制加算があり,後発医薬品の使用割合によりC15.28点が加算される.このような施策により後発医薬品の使用割合は年々増加しており,2005年C32.5%,2007年C34.9%,2009年C35.8%,2011年C39.9%,2013年46.9%,2015年C56.2%,2017年C65.8%,2020年C78.3%と〔別刷請求先〕中牟田爽史:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SoshiNakamuta,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC1694(126)報告されている1).2022年C2月現在,緑内障点眼薬の後発医薬品はC16種類存在する.このように後発医薬品は多数使用されるようになったが,患者がどのような考えで後発医薬品あるいは先発医薬品を選択しているかは不明である.また,後発医薬品を使用している患者の特徴も不明である.そこで今回,患者が使用している緑内障点眼薬を調査し,先発医薬品あるいは後発医薬品の使用理由と患者背景を解析した.CI対象および方法2021年C9月.2022年C2月に井上眼科病院に通院中で,後発医薬品の存在する緑内障点眼薬を使用中で以下の方法により使用薬剤を確認できたC504例を対象とした.男性C222例,女性C282例,平均年齢はC68.9C±10.8歳(平均C±標準偏差),24.93歳であった.使用している緑内障点眼薬はC2.5C±1.3剤,1.6剤であった.配合点眼薬はC1剤とした.外来受診時にお薬手帳あるいは点眼薬実物を持参しているかを患者に問い合わせ,いずれかを持参しており,使用薬剤を正確に確認できた症例を対象とした.対象眼に関しては両眼に点眼薬を使用している症例では使用点眼薬数が多い眼を採用し,左右同数の場合は右眼を採用した.各々使用薬剤が先発医薬品か後発医薬品かを確認後に,先発医薬品あるいは後発医薬品を使用している理由を対面式アンケートで調査した(図1).なお,井上眼科病院では後発医薬品の存在する緑内障点眼薬はすべて一般名で処方しており,患者が調剤薬局で先発医薬品あるいは後発医薬品のいずれかを自由に選択できるようにしている.また,緑内障点眼薬はすべて院外処方で対応している.緑内障点眼薬のうち先発医薬品,後発医薬品ともに存在する点眼薬は,イソプロピルウノプロストン点眼薬,ラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬,チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬で,先発医薬品のみ存在する点眼薬はタフルプロスト点眼薬,ドルゾラミド点眼薬,ブナゾシン点眼薬,リパスジル点眼薬,オミデネパグイソプロピル点眼薬,ピロカルピン点眼薬,ジピベフリン点眼薬,タフルプロスト/チモロール配合点眼薬,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬で,後発医薬品のみ存在する点眼薬はレボブノロール点眼薬である(2022年C2月現在).つぎに先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例で性別,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.さらに男女間での先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,平均年齢,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.若年者(65歳未満)と高齢者(65歳以上)で先発あるいは後発医薬品のみ使用症例,性別,使用薬剤数,カテゴリー別使用薬剤を比較した.カテゴリー別使用薬剤はラタノプロスト点眼薬,トラボプロスト点眼薬,ビマトプロスト点眼薬をプロスタグランジン関連薬(以下,PG関連薬),チモロール点眼薬,持続性チモロール点眼薬,カルテオロール点眼薬,持続性カルテオロール点眼薬,ニプラジロール点眼薬,ベタキソロール点眼薬をCb遮断薬(Ca遮断薬を含む),ブリンゾラミドを点眼炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI),イソプロピルウノプロストン点眼薬をイオンチャネル開口薬,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬,トラボプロスト/チモロール配合点眼薬をCPG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬をCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤,ブリモニジン点眼薬をCa2刺激薬と分類した.平均年齢と使用薬剤数の比較には対応のないCt検定を,先発医薬品・後発医薬品の使用割合,性別,カテゴリー別使用薬剤の比較にはCc2検定とCFisherの直接確率検定を使用した.有意水準はp<0.05とした.患者には本研究の主旨を口頭で説明し,アンケート調査の際に文書で同意を得た.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された(承認番号C202202-2).CII結果先発医薬品のみ使用C134例(26.6%),後発医薬品のみ使用C353例(70.0%),両方とも使用はC17例(3.4%)であった.先発医薬品の使用理由は「安心,安全」93例(69.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも効果があると思う」17例(12.7%),「薬局にすすめられた」14例(10.4%),「後発品(ジェネリック医薬品)よりも使いやすいと思う」4例(3.0%)などであった(図2).後発医薬品の使用理由は「薬局にすすめられた」209例(59.2%),「金額が安くなる」92例(26.1%),「その他」43例(12.2%)などだった(図3).その他の症例をさらに解析したところ「役所や保険組合の推奨」25例(7.1%)と「医師の推奨」11例(3.1%)が多かった.先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例を比較すると,性別,使用薬剤数,カテゴリー別薬剤は同等だった(表1).平均年齢は先発医薬品のみ使用症例C71.3C±10.2歳が後発医薬品のみ使用症例C67.9C±10.9歳に比べて有意に高かった(p<0.01).男女で比較すると,先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の割合,平均年齢,使用薬剤数は同等だった(表2).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,イオンチャネル開口薬,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,CAI/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品の後発品よりも使いやすいと思う4例(3.0%)薬局にすすめられた14例(10.4%)後発品よりも効果があると思う17例(12.7%)その他43例(12.2%)先発品よりも使いやすいと思う3例(0.8%)先発品よりも効果があると思う6例(1.7%)金額が安くなる92例(26.1%)図2先発医薬品の使用理由図3後発医薬品の使用理由表1先発医薬品のみ使用症例と後発医薬品のみ使用症例の比較先発医薬品のみ後発医薬品のみp値男性:女性49(C36.6%):C85(C63.4%)164(C46.5%):C189(C53.5%)Cp=0.0525平均年齢C71.3±10.2C67.9±10.9Cp=0.0022*使用点眼薬数C2.4±1.2C2.5±1.3Cp=0.3968使用点眼薬別PG関連薬89(C27.6%)233(C72.4%)Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)27(C32.9%)55(C67.1%)CCAI24(C23.3%)79(C76.7%)イオンチャネル開口薬4(4C4.4%)5(5C5.6%)Cp=0.7509PG関連薬/Cb遮断薬配合剤20(C28.6%)50(C71.4%)CCAI/b遮断薬配合剤30(C27.8%)78(C72.2%)Ca2刺激薬24(C29.6%)57(C70.4%)CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表2性別による比較男性女性p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ49(C23.0%):C164(C77.0%)85(C31.0%):C189(C69.0%)Cp=0.0525平均年齢C68.3±11.5C69.3±10.2Cp=0.3464使用点眼薬数C2.6±1.2C2.4±1.3Cp=0.1296使用点眼薬別(先発品:後発品)PG関連薬32(C20.5%):C124(C79.5%)57(C34.3%):C109(C65.7%)Cp=0.0061*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)10(C27.0%):C27(C73.0%)17(C37.8%):C28(C62.2%)Cp=0.3509CCAI9(1C8.8%):3C9(8C1.3%)15(C27.3%):C40(C72.7%)Cp=0.3559イオンチャネル開口薬2(5C0.0%):2(5C0.0%)2(4C0.0%):3(6C0.0%)p>C0.9999PG関連薬/Cb遮断薬配合剤9(3C0.0%):2C1(7C0.0%)11(C27.5%):C29(C72.5%)p>C0.9999CCAI/b遮断薬配合剤12(C25.5%):C35(C74.5%)18(C29.5%):C43(C70.5%)Cp=0.6716Ca2刺激薬13(C36.1%):C23(C63.9%)11(C24.4%):C34(C75.6%)Cp=0.3288CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05表3若年者と高齢者の比較若年者(.64歳)高齢者(65歳.)p値先発医薬品のみ:後発医薬品のみ30(C20.5%):C116(C79.5%)104(C30.5%):C237(C69.5%)Cp=0.0267*男性:女性69(C47.3%):C77(C52.7%)144(C42.2%):C197(C57.8%)Cp=0.3199使用点眼数C2.4±1.3C2.5±1.2Cp=0.4693使用薬剤別(先発品:後発品)PG関連薬16(C17.2%):C77(C82.8%)73(C31.9%):C156(C68.1%)Cp=0.0087*Cb遮断薬(Ca遮断薬を含む)7(3C1.8%):1C5(6C8.2%)20(C33.3%):C40(C66.7%)p>C0.9999CCAI5(2C1.7%):1C8(7C8.3%)19(C23.8%):C61(C76.3%)p>C0.9999イオンチャネル開口薬1(2C5.0%):3(7C5.0%)3(6C0.0%):2(4C0.0%)Cp=0.5238PG関連薬/Cb遮断薬配合剤6(2C5.0%):1C8(7C5.0%)14(C30.4%):C32(C69.6%)Cp=0.7824CCAI/b遮断薬配合剤5(1C3.9%):3C1(8C6.1%)25(C34.7%):C47(C65.3%)Cp=0.0243*Ca2刺激薬9(2C7.3%):2C4(7C2.7%)15(C31.3%):C33(C68.8%)Cp=0.8064CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,PG:プロスタグランジン.*p<0.05み使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品のみ使用症例が男性(79.5%)のほうが女性(65.7%)に比べて有意に多かった(p<0.05).若年者(146例)と高齢者(341例)で比較すると性別,使用薬剤数は同等だった(表3).後発医薬品のみ使用症例が若年者(79.5%)のほうが高齢者(69.5%)に比べて有意に多かった(p<0.05).カテゴリー別薬剤では,Cb遮断薬,CAI,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼剤,Ca2刺激薬は先発あるいは後発医薬品のみ使用症例は同等だった.PG関連薬は後発医薬品の使用症例が若年者(82.8%)のほうが高齢者(68.1%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者(86.1%)のほうが高齢者(65.3%)に比べて有意に多かった(p<0.05).CIII考按今回の調査で後発医薬品の使用症例はC73.4%(後発医薬品のみ使用C70.0%+先発・後発医薬品両方とも使用C3.4%)であった.厚生労働省が発表したC2020年の後発医薬品使用割合C78.3%よりは少なかったが近い割合であった.今回は具体的な使用薬剤の解析ではなく症例ごとの解析を行った影響も考えられる.先発医薬品と後発医薬品の特徴を以下に述べる2).後発医薬品の存在する先発医薬品は開発から長期を経過しており,医師の使用経験や薬剤の情報(効果・副作用など)が多く,供給も安定している.今回のアンケート調査でも先発医薬品の使用理由は安心,安全がC69.4%と圧倒的に多かった.眼圧下降効果や副作用などに問題のない症例では薬剤を変更する必要はないと考えられる.一方,後発医薬品は先発医薬品に比べて価格が安いことが最大の利点である3,4).今回のアンケート調査でも後発医薬品の使用理由は薬局にすすめられたC59.2%,金額が安くなるC26.1%の順であった.薬局からの推奨は調剤薬局での後発医薬品調剤体制加算の取得のためと考えられる.しかし,後発医薬品は先発医薬品と添加剤が異なり,先発医薬品から後発医薬品への変更による眼圧下降効果減弱や副作用出現が懸念される.発売してからの期間も短く,効果や副作用の情報が少なく,また供給が安定していないことも問題点である.後発医薬品の効果と安全性は,先発医薬品から切り替えた症例で報告されている5.10).ラタノプロスト点眼薬5.9),ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬10)の先発医薬品から後発医薬品への切り替えでは眼圧下降効果の維持と高い安全性が報告されている.症例により眼圧下降効果は異なるが,有効成分は同一のため後発医薬品の眼圧下降効果減弱はあまり考慮しなくてよいと考えられる.仮に後発医薬品を使用して副作用が出現した場合でも先発医薬品に戻せば副作用も軽減・消失するので,後発医薬品の経済的優位性を考慮し,先発医薬品から後発医薬品への切り替えは試みてもよいと思われる.今回の詳細な検討では,平均年齢は先発医薬品のみ使用症例が後発医薬品のみ使用症例に比べて有意に高かった.その理由として年齢が高いほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定しているためあえて後発医薬品へ変更しなかったのではないかと考えられる.男女の比較ではCFP受容体作動薬は後発医薬品の使用割合が男性のほうが女性に比べて有意に多かった.その理由としてCPG関連薬では眼瞼色素沈着や上眼瞼溝深化などの美容的副作用が出現することがあり11,12),とくに女性は後発医薬品へ変更した際に新たにこのような副作用が出現することを避ける傾向があると考えられる.若年者と高齢者の比較では,PG関連薬とCCAI/Cb遮断薬配合点眼剤は後発医薬品の使用症例が若年者のほうが高齢者に比べて有意に多かった.その理由として高齢者のほうが緑内障罹病期間や先発医薬品を使用している期間が長く,病状が安定している点と,若年者のほうが経済的に余裕がない点が考えられる.今回の調査の問題点として,お薬手帳や点眼薬実物を診察時に持参している人を対象としたため,使用薬剤を管理する意識の高い人が対象になっている可能性がある.しかし,先発医薬品あるいは後発医薬品のどちらを使用しているかを正確に把握するのは問診ではむずかしいため,お薬手帳や点眼薬実物で確認する方法とした.また,対象患者の利用している調剤薬局は同一でなく,調剤薬局によって先発医薬品と後発医薬品の調剤の方針が異なる可能性がある.患者の利用した調剤薬局をすべて調査することはできないと考えた.さらに以前は先発医薬品のみ使用していたので,一般名処方で先発医薬品でも後発医薬品でも使用できるようになり,患者から後発医薬品でもよいのかと質問されることが多くなった.その際は「後発医薬品でも問題がない場合がほとんどです」と答えるが,これが医師の推奨としてとらえられた可能性がある.今回緑内障点眼薬の先発医薬品と後発医薬品の使用状況と使用理由を調査した.先発医薬品のみ使用C26.6%,後発医薬品のみ使用C70.0%だった.使用理由は先発医薬品は安心・安全C65.6%,調剤薬局からの推奨C12.6%など,後発医薬品は調剤薬局からの推奨C59.2%,価格が安いC25.9%などだった.今後ますます後発医薬品が使用されると考えられるため,先発医薬品だけではなく後発医薬品の効果・安全性も調査する必要がある.本論文は第C126回日本眼科学会総会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)福田正道:緑内障点眼薬後発品(いわゆるジェネリック)の特性.臨眼68:7-12,C20142)菅原仁,島森美光,吉町昌子ほか:点眼剤の後発医薬品使用促進に関わる薬剤費の比較研究.JpnCJCDrugCInformC14:62-68,C20123)冨田隆志,池田博昭,櫻下弘志ほか:Cb遮断点眼薬の先発医薬品と後発医薬品におけるC1日あたりの薬剤費の比較.臨眼63:717-720,C20094)神山幸輝,阿部貴至,唐澤健介ほか:緑内障治療に用いる点眼剤の先発医薬品と後発医薬品における製剤学的性質および経済性に関する比較研究.レギュラトリーサイエンス学会誌C10:99-108,C20205)木村格,木村亘,横山光伸ほか:正常眼圧緑内障におけるラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀61:1141-1144,C20126)櫻井寿也,田野良太郎,山本裕弥ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%ジェネリック医薬品の使用経験.新薬と臨牀60:1225-1228,C20117)東條直貴,林篤志:ラタノプロスト点眼液C0.005%の先発品からジェネリック品への切替効果.新薬と臨牀C63:C1471-1474,C20148)井上賢治,増本美枝子,若倉雅登ほか:防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬の眼圧下降効果と安全性.あたらしい眼科C28:1635-1639,C20119)大塚光哉,澁谷法子,本多祐樹ほか:ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩点眼液の先発医薬品から後発医薬品への切り替え効果.新薬と臨牀70:143-147,C202110)岩崎直樹,楠部亨,黒澤誠治ほか:ラタノプロスト点眼液C0.005%「わかもと」の眼圧下降効果と安全性.新薬と臨牀50:615-618,C201311)InoueCK,CShiokawaCM,CHigaCRCetal:AdverseCperiocularCreactionsto.vetypesofprostaglandinanalogs.EyeC26:C1465-1472,C201212)InoueCK,CShiokawaCM,CWakakuraCMCetal:DeepeningCofCtheCupperCeyelidCsulcusCcausedCbyC5CtypesCofCprostaglan-dinanalogs.JGlaucomaC22:626-631,C2013***

Trabeculotomy Ab Interno,白内障同時手術の術後1 年の 成績,術前術後の点眼数の変化より

2021年9月30日 木曜日

《第31回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科38(9):1085.1089,2021cTrabeculotomyAbInterno,白内障同時手術の術後1年の成績,術前術後の点眼数の変化より市岡伊久子市岡博市岡眼科CEvaluationofthe1-YearE.cacyofTrabeculotomyAbInternowithCombinedCataractSurgeryBasedontheNumberofGlaucomaMedicationsAdministeredPreandPostSurgeryIkukoIchiokaandHiroshiIchiokaCIchiokaEyeClinicC目的:線維柱帯切開術眼内法(trabeculotomyabinterno,以下,Lotabinterno),白内障同時手術の成績を術前術後の点眼薬数の変化より検討した.対象および方法:Lotabinterno,白内障同時手術を施行したC208人C276眼の術後C1年間の経過を後ろ向きに調査した.結果:眼圧は術前平均C15.3CmmHgから術後C1年時C12.2CmmHgにC20%下降した.術後目標眼圧をC15CmmHg未満に設定し,これを超えた場合に逐次点眼薬を追加したが,全体で点眼薬は術前平均2.2剤からC0.5剤に減少した.術前点眼薬数が多い例ほど術後眼圧が高い傾向を認めた.術後経過観察時眼圧が点眼薬を投与せずC15CmmHg以未満にコントロールされていたC1年生存率は,術前点眼薬数C2剤以下,3剤,4剤以上の群に対しそれぞれC84,60,41%と各群間に有意差を認めた.結論:LotCabinternoにおいて術前点眼薬数が多い例ほど術後点眼薬数が増加しており,点眼薬が比較的少ない早期に手術を施行するべきと思われた.CPurpose:ToCretrospectivelyCevaluateCtheC1CyearCe.cacyCofCtrabeculotomyCabinterno(LotCabinterno)com-binedwithcataractsurgeryforintraocularpressure(IOP)loweringandthereductionoftheglaucomamedicationsused,CandCcompareCtheCnumberCofCthoseCmedicationsCusedCpreCandCpostCsurgery.CSubjectsandMethods:In276eyesof208patientswhounderwentLotabinternowithcataractsurgery,IOPandthenumberofglaucomamedi-cationsCadministeredCpreCsurgery,CimmediatelyCafterCsurgery,CandCatC1-yearCpostoperativeCwereCinvestigated.CResults:At1-yearpostoperative,meanIOPdecreased20%from15.3CmmHgto12.2CmmHgandtheaveragenum-berofglaucomaeyedropsdecreasedfrom2.2to0.5.Basedonthenumbersofglaucoma-medicationeyedropsusepreCsurgery,CIOPCwasChigherCandCtheCrequiredCnumberCofCglaucomaCmedicationsCwasCincreasedCpostCsurgery.CAtC1-yearpostsurgery,thepercentagerateinwhichIOPwascontrolledbelow15CmmHgwithoutglaucoma-medica-tionCeyeCdropsCsigni.cantlyCdi.eredCbetweenCtheCgroupsCofCtheCnumbersCofCpreoperativeCeye-dropCmedicationsCused,Ci.e.,C2CorCless,C3,CandCmoreCthanC4,CandCwas84%,60%,Cand41%,Crespectively.CConclusion:InCpatientsCthatCunderwentCLotCabCinternoCwithCcombinedCcataractCsurgery,CtheCnumberCofCpostoperativeCeyeCdropsCincreasedCaccordingtothenumberofpreoperativeeyedropsadministered,thusindicatingthattheoperationshouldbeper-formedattheearlystageofthediseaseinwhichlessmedicationisused.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(9):1085.1089,C2021〕Keywords:緑内障手術,線維柱帯切開術眼内法,眼圧,緑内障点眼薬,線維柱帯切開術術後成績.glaucomaCsur-gery,trabeculotomyabinterno,IOP,glaucomamedication,successrateoftrabeculotomy.Cはじめに緑内障手術(minimalyCinvasiveCglaucomasurgery:MIGS)線維柱帯切開術眼内法(Trabeculotomyabinterno,以下,の一方法として最近広く施行されてきており,白内障との同CLOTabinterno)は結膜,強膜を切開せずに施行する低侵襲時手術において良好な眼圧下降効果が得られると報告されて〔別刷請求先〕市岡伊久子:〒690-0003松江市朝日町C476-7市岡眼科Reprintrequests:IkukoIchioka,M.D.,IchiokaEyeClinic,476-7Asahi-machi,Matsue,Shimane690-0003,JAPANC0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(103)C1085いる1).当院でも緑内障点眼薬投与中の患者の白内障手術とCLOTabinternoを同時に施行する例が増えている.緑内障ガイドライン2)では開放隅角緑内障は目標眼圧を設定し単剤より眼圧下降薬を投与し,多剤投与にて眼圧コントロール不良,または視神経,視野所見の悪化を認めるときに手術を考慮するとされるが,現在まで術前点眼薬数別での手術成績の検討はあまりなされていない.多剤点眼で長期経過をみた後の手術ではCLOTabinternoは効果が悪い印象がある.今回は当院でのCLOTabinternoを施行した症例において術前点眼薬数別に術後の眼圧下降および点眼薬数の変化を検討した.CI対象および方法対象は当院で2016年2月.2018年12月にLOTCabinterno,白内障同時手術を施行したC276眼(右眼C139眼,左眼C137眼)208人(男性C74人,女性C134人)で平均年齢はC75.9±8.2歳であった.手術はすべて同一術者により施行された.眼内レンズ挿入後に上方切開創よりCSinskey氏フック(直)を挿入し,SwanJacobゴニオプリズムを用い下方約90°の線維柱帯を切開した.術前,術後C1.3,6,12カ月後の眼圧と眼圧下降投薬数,術後合併症,再手術の有無をC1年後まで後ろ向きに調査した.また,点眼薬投与前のベースライン眼圧についても調査した.術後の投薬はいったん眼圧下降薬をすべて中止し,眼圧がC15CmmHgを超えた時点で点眼薬を再投与,追加した.術前術後の眼圧をCFriedman検定を用い評価,術前点眼薬数別にベースライン眼圧,術前,術後1,2,3,6,12カ月後の眼圧に差があるかCF検定を施行,CSche.e’sCFtestを用い多重比較検定を施行した.また,手術成功率は緑内障点眼薬を投与せずに眼圧C15CmmHg未満にコントロールされていた場合を成功,眼圧がC15CmmHg以上の例は点眼薬を再投与しており,術後点眼薬を投与した場合を死亡と定義し,術前点眼薬数C2剤以下,3剤,4.5剤以上のC3群に分け,Kaplan-Meierの生命曲線およびCLogranktestを用いC1年生存率を評価し,さらにCCOX比例ハザード回帰よりハザード比を評価した.なお,調査については島根県医師会倫理審査委員会の承認を得ている.CII結果208人(276眼)中14人(18眼)は1年後来院なく,1年目の経過観察が可能であったのはC259眼であった.眼圧は術前平均C15.3C±3.3CmmHgから術後C1年時C12.2C±2.7CmmHgにC20%下降した.術後眼圧はすべての期間で術前眼圧に比し有意に降下した(p<0.01:Friedman検定).術前点眼薬数C0.5剤別のC6群に分けて比較したところ,6群すべてに術後C1カ月目より有意な眼圧低下を認めた(p<0.01:Fried-man検定).点眼投与前ベースライン眼圧はC0.2剤点眼例はC18.19CmmHg,3剤はC21.4CmmHg,4剤,5剤以上は22.6CmmHg以上で,1剤点眼例とC3剤,4剤,5剤以上点眼例のベースライン眼圧に有意差を認めた(p<0.01:Sche.e’sFtest).術前術後の眼圧変化は術前点眼薬数別に有意差を認めなかったが,術後C1年目眼圧は術前点眼薬数が少ないものほど低い傾向がみられ,点眼薬数別にC11.4.13.5CmmHgに低下した(図1).術後下降眼圧は術前点眼薬を投与していない例はC5眼と少ないが,術後C1年目では平均C7.8CmmHg下降し,点眼薬投与C1剤,2剤投与例C2.8.2.9CmmHgと有意差を認めた(p=0.01:Sche.eC’sCFtest)(図2).術前後の点眼数は術前平均C2.2剤からC0.5剤に減少した.術C1年後の点眼薬数の変化は,術前C5剤以上がC1.7剤,4剤がC1.2剤,3剤が0.8剤,2剤が0.3剤,1剤が0.19剤,0剤が再開なしと,術前点眼薬数が多い例ほど術後点眼薬の再開,追加が必要な傾向を認めた(図3).生命表における生存率は術前点眼薬数C2剤以下,3剤,4,5剤以上でそれぞれC84,60,41%となりCLogrank検定で各群間に有意差を認めた.ハザード比はC2剤以下に比しC3剤使用例はC2.8倍,4,5剤以上使用例はC5.4倍有意に点眼薬を再開していた(図4).合併症については,術前点眼薬数C0.5剤別にC20CmmHg以上の一過性眼圧上昇がC0眼,15眼(13.2%),7眼(15.9%),12眼(17.6%),7眼(24.1%),5眼(31.3%)と術前点眼薬数に応じ一過性眼圧上昇をきたした.術後前房出血の洗浄が必要になった例はC1剤点眼例のC2眼であった.追加手術が必要になった例はC4剤点眼例C1眼(24.1%),5剤点眼例C2眼(12.5%)で点眼薬C3剤以下で追加手術が必要になった例はなかった.CIII考按LOTCabinternoはC2016年CTanitoが眼内から施行するMIGSとして報告,白内障との同時手術成績で眼圧が16.4mmHgからC11.8mmHg(28%),点眼薬がC2.4剤から2.1剤になったと報告しているが1),同時手術として施行しやすく,近年一般的になりつつあると思われる.当院では同時手術の際に眼圧降下のみならず緑内障点眼薬を減らすことを目的に施行している.そのため術後緑内障点眼はすべて中止し,眼圧の経過をみながら適宜追加をしている.今回術前眼圧C15.3CmmHgからC12.2CmmHgへと良好な眼圧降下(20%)を認めただけでなく,点眼薬C2.2剤からC0.5剤へとC1年後の点眼薬数を大幅に減少させることに成功している.術前点眼薬数別に効果を調査したところ,点眼薬数が多いほど術後眼圧が高い傾向があった.術前点眼薬を使用していなかったC5眼で平均C7.8CmmHgと著明に眼圧が下降し,点眼薬をC1剤,2剤使用していた例と有意差を認めた.症例数は少ないが初診時に白内障,緑内障を認めた例では,点眼薬を投与してから手術を施行するより,早期手術を施行するほ25.020.015.0mmHg10.0**********5.0*p<0.01(Friedman検定)0.0点眼前術前術後術後術後術後術後眼圧眼圧1カ月2カ月3カ月6カ月1年0剤(5)19.019.211.610.211.012.611.41剤(114)***18.114.911.811.911.612.112.22剤(44)18.315.011.711.311.211.812.03剤(68)21.415.113.012.312.412.612.14剤(29)*22.716.115.313.813.214.413.4*5剤以上(16)22.617.0*14.315.313.913.913.5*p<0.01(Sche.e’sFtest)図1点眼薬数別の点眼薬開始前,術前,術後眼圧すべての点眼薬数例で術前に比し術後有意な眼圧下降を得た(p<0.01:Friedman検定).点眼薬数別では点眼薬開始前眼圧C1剤とC3,4,5剤間に有意差を認めた(p<0.01:Sche.eC’sCFtest)が術前,術後眼圧の有意差は認めなかった.うがよい結果が得られる可能性がある.術後C1年目の点眼薬数は術前点眼薬数が多い例ほど増加しており,術前点眼薬C1剤ではC0.19剤,2剤ではC0.3剤でC2剤以下のC84%の例で術後点眼なしでC15CmmHg未満に眼圧がコントロールされていた.点眼薬が少ないほど術後眼圧が低めで点眼薬の開始も少なかった.術後眼圧コントロールが困難で追加手術が必要になった例は術前点眼薬がC3剤以下の例ではなかった.術後の一過性眼圧上昇については術前点眼薬1剤使用例でもきたす例があったが,術前点眼薬数が多いものほど一過性眼圧上昇頻度も高かった.以上より,術前点眼薬が少ないほど術後成績がよく,術前点眼薬がC3剤以下の症例がよい適応になると思われた.術前点眼薬が多い症例は点眼前ベースライン眼圧が高い症例と思われる.ベースライン眼圧を調査したところ,症例数に差があるが0.2剤投与群の眼圧は平均C18.1.19.0CmmHgで有意差なく,3剤点眼群は点眼前ベースライン眼圧はC21.4mmHg,4剤以上点眼群はC22.6CmmHg以上で,1剤点眼群と3,4,5剤点眼群との間に有意差を認めた.ベースライン眼圧より手術適応を考えるとC22CmmHg以下の症例がよい適応であり,点眼薬を増やし長期経過をみるよりCLOTCabinternoを早期に施行したほうがよい結果が得られると思われる.また,ベースライン眼圧が高い例では,結果が悪ければ早めに他術式を検討したほうがよいと思われる.現在まで緑内障の原因として眼圧上昇による傍CSchlemm管結合組織での細胞外マトリックス蓄積,線維柱帯細胞の虚脱,Schlemm管の狭小化などが多数報告されている3.5).GrieshaberらはCcanaloplasty時に隅角のCbloodre.uxの程度観察とフルオレセインの流出状態を調査し,bloodCre.uxC点眼薬数0剤(5)1剤(108)2剤(41)3剤(61)4剤(27)5剤(15)7.8±4.82.9±3.02.8±2.73.1±2.73.5±3.93.7±4.01カ月2カ月3カ月6カ月1年術前点眼薬数*p<0.01(Sche.e’sFtest)図2術1年後の平均眼圧下降術前に降眼圧薬点眼を投与せず手術した例C5眼では平均C7.8mmHg眼圧が下降し,1剤,2剤投与例に比し有意差があった(p<0.01:Sche.e’sFtest).C1.0.80.6生存率0246810120剤(5)1剤(114)2剤(44)3剤(68)4剤(29)5剤以上(16)図3術前点眼薬数別術後1年間の点眼薬数術前点眼薬数が多いほど術後点眼薬の再開,追加が必要となっていた.の量が多く,上強膜静脈への流出が多いものほど効果がよかったことを報告,線維柱帯以降の流出路の機能が効果に影響していることを指摘している6).Hannらは開放隅角緑内障ではCSchlemm管と集合管に狭小化を認めることを報告しており7),点眼薬を追加しつつ長期に経過観察すると徐々に流出路障害が進行する可能性がある.最近,初回投与薬剤はプロスタグランジン(prostaglandin:PG)製剤が多数となって0.40.20.術後期間(月)おり,今回の調査でも複数投与例では全例CPG製剤が含まれていたが,PG製剤はぶどう膜強膜路の流出が増加する眼圧下降薬である.Johnsonらは濾過手術後にCSchlemm管狭窄がみられることを報告し,房水が線維柱帯,Schlemm管を迂回し濾過胞に流出することで傍CSchlemm管結合組織,集合管への細胞外マトリックスの異常沈着が起きることを報告している8).点眼薬では組織的に明らかな変化をきたした報告はないが,経験上長期にCPG製剤を使用した例ではCbloodre.uxが少なく,濾過手術同様の変化をきたしている可能性は考えられる.現在開放隅角緑内障についてはまず点眼薬を用いてコントロールし,コントロールが不十分であれば手術を考慮するという方法が一般的であるが,主流出路の手術では流出路機能が低下する前に手術したほうがよいと思われる.以上の結果図4術後点眼薬投与なしに15mmHg以下にコントロールできた1年生存率術前点眼薬数がC2剤以下の例はC3剤,4剤以上の例に比し,有意に点眼薬再開が少なかった.CNumberCatriskに生存症例数(点眼薬投与せずコントロールできた症例数)を示す.よりいたずらに点眼薬を追加しフルメディケーションとなってからCLOTを施行するよりは,2.3剤程度に点眼薬が増加した時点で早期に手術を考慮したほうが予後がよいであろうことが示唆された.なお,今回の症例は当院での後ろ向き調査の結果で点眼薬数別の症例数に違いがあり,また緑内障のステージ,発症後期間にも差がある.点眼薬数別の効果の違いを断定するには症例数を増やし,経過観察を継続し今後の眼圧下降効果や投薬数についてさらに検討する必要がある.NumberatriskTime(月)0246810120~2剤1631601511471431431433剤676656484343434,5剤45452422212121利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TanitoCM,CIkedaCY,CFujiharaE:E.ectivenessCandCsafetyCofCcombinedCcataractCsurgeryCandCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomyinJapaneseeyeswithglaucoma:reportofaninitialcaseseries.JpnJOphthalmolC61:457-464,C20172)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C20183)StamerWD,AcottTS:Currentunderstandingofconven-tionalCout.owCdysfunctionCinCglaucoma.CCurrCOpinCOph-thalmolC23:135-143,C20124)VecinoE,GaldosM,BayonAetal:Elevatedintraocularpressureinducesultrastructuralchangesinthetrabecularmeshwork.JCytolHistolCS3:007,C20155)YanX,LiM,ChenZetal:Schlemm’scanalandtrabecu-larCmeshworkCinCeyesCwithCprimaryCopenCangleCglauco-ma:ACcomparativeCstudyCusingChigh-frequencyCultra-soundbiomicroscopy.PLoSOneC11:e0145824,C20166)GrieshaberMC,Pienaar,OlivierJanetal:Clinicalevalua-tionoftheaqueousout.owsysteminprimaryopen-angleglaucomaforcanaloplasty.InvestOphthalmolVisSciC51:C1498-1504,C20107)HannCCH,CVercnockeCAJ,CBentleyCMDCetal:AnatomicCchangesinSchlemm’scanalandcollectorchannelsinnor-malCandCprimaryCopen-angleCglaucomaCeyesCusingClowCandChighCperfusionCpressures.CInvestCOphthalmolCVisCSciC55:5834-5841,C20148)JohnsonCDH,CMatsumotoY:SchlemmC’sCcanalCbecomesCsmallerCafterCsuccessfulC.ltrationCsurgery.CArchCOphthal-molC118:1251-1256,C2000***

各種プロスタグランジン系緑内障点眼薬が水晶体上皮細胞に及ぼす影響について

2016年10月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科33(10):1518?1523,2016c各種プロスタグランジン系緑内障点眼薬が水晶体上皮細胞に及ぼす影響について茨木信博*1三宅謙作*2*1いばらき眼科クリニック*2眼科三宅病院TheInfluenceofVariousProstaglandinGlaucomaEyedropsonLensEpithelialCellsNobuhiroIbaraki1)andKensakuMiyake2)1)IbarakiEyeClinic,2)MiyakeEyeHospital目的:これまでに,緑内障点眼薬で白内障手術後に黄斑浮腫が発症する原因は,水晶体上皮細胞の炎症性サイトカイン産生促進であることを報告した.今回は,点眼液による水晶体上皮細胞の炎症性サイトカイン産生促進効果と細胞障害性を各種プロスタグランジン(PG)系緑内障市販薬間で比較した.方法:培養水晶体上皮細胞株の細胞形態と培養上清中のIL(インターロイキン)-1a,IL-6,PGE2を計測した.製剤は,キサラタン(X),ラタノプロストPF(L),ルミガン(Lu),タプロス(T),トラバタンズ(Tr)で,10?1,000倍希釈を培地に添加した.結果:Xでは1,000倍希釈でも細胞形態に異常を示したが,L,Luでは300倍希釈,T,Trでは100倍希釈で細胞は正常な形態であった.サイトカインはX,L,Lu,T,Trの順で多く産生された.結論:緑内障点眼製剤による水晶体上皮細胞の細胞障害とサイトカインの産生促進は,塩化ベンザルコニウムの含有濃度や種類により差があること,非含有でも他の添加剤で生じることが明らかとなった.Purpose:Wehavereportedthatmacularedemaaftercataractsurgerywithuseofglaucomaeyedropsiscausedbystimulatorycytokineproductionoflensepithelialcells.Inthisreport,wecomparetheinfluenceofvariousglaucomaeyedropsonlensepithelialcells.Methods:Humanlensepithelialcellswereculturedwithvariousdrugs:Xalatan,LatanoprostPF,Lumigan,TapulosandTrabatans.Eachdrugwasdiluted10to1000timesandaddedtothemedium.CellmorphologywasobservedandcytokinesIL-1-alpha,IL-6andPGE2intheculturesupernatantweremeasured.Results:LumiganandLatanoprostPFat300xdilutionandTapulosandTrabatansat100xshowednocytotoxicity,butXalatanat1000xdilutionshowedcytotoxicity.Intermsofcytokineproduction,Xalatan,Lumigan,LatanoprostPF,TapulosandTrabatansshoweddecreases,respectively.Conclusion:Glaucomaeyedropformulationswereantagonistictocytotoxicityinlensepithelialcells,andpromotedtheproductionofcytokines.Thedegreediffersdependingonthetypeandconcentrationofbenzalkoniumchlorideadded,andofotherpreservativesinthebenzalkoniumchloride-freetypes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(10):1518?1523,2016〕Keywords:白内障術後,黄斑浮腫,緑内障点眼薬,塩化ベンザルコニウム,水晶体上皮細胞.aftercataractsurgery,macularedema,glaucomaeyedrop,benzalkoniumchloride,lensepithelialcells.はじめに?胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)は,種々の眼疾患や眼内手術後に生ずるが,その成因は不明である.白内障手術後に生ずるCMEについても,低眼圧,硝子体索引,炎症などが考えられている1).さらに,白内障手術後に緑内障薬の点眼を行った場合に,CMEが起こることが報告されている.近年,プロスタグランジン製剤の白内障手術後の使用によるCMEが報告されているが2?5),緑内障治療薬によるCMEは以前より数多く報告されている.これまでに筆者らは,この白内障手術後の緑内障点眼薬によるCMEの原因を明らかにするために,ラタノプロスト,チモロール,防腐剤である塩化ベンザルコニウムの入らないチモロール,さらに,緑内障薬の主成分を含まない基剤のみと,さらにその基剤から塩化ベンザルコニウムを除いたものを使用し,白内障手術後早期眼において,CMEの発生が緑内障治療薬の主成分の関与よりも,添加されている防腐剤である塩化ベンザルコニウムが大きく関与していることを報告した6).さらに,ヒト水晶体上皮細胞(humanlensepithelialcell:HLEC)を培養し,緑内障点眼薬の主成分であるラタノプロスト,チモロール,塩化ベンザルコニウムを添加し,各種炎症系サイトカインの産生を検討したところ,緑内障点眼薬の主成分よりも塩化ベンザルコニウムの添加によって,はるかに高濃度のサイトカインを産生することを明らかにした7).今回は,実際に臨床で使用している各種プロスタグランジン系緑内障市販薬によるHLECに対する障害,サイトカインの産生について検討し,塩化ベンザルコニウム,ホウ酸などの防腐効果のある物の添加により,HLECが障害を受け,サイトカインの産生も増加すること,塩化ベンザルコニウム自体の改良や防腐剤の工夫によって障害やサイトカインの産生を抑えることが可能であることを見いだした.さらに,点眼容器の工夫によって防腐剤フリーとされている点眼薬について,塩化ベンザルコニウム以外の添加剤によって,高濃度のサイトカインが産生され,細胞障害も高度に生ずることが明らかとなったので報告する.I方法培養したHLECは,ヒト由来の水晶体上皮佃胞で株化されたもの(SRA01/04)8)を用いた.25mm2の培養フラスコに,70±5個/mm2の細胞密度となるように調整し,37℃,5%炭酸ガス,湿度100%で培養した.培養液は,DulbeccoMinimumEssentialMedium(Gibco,GlandIsland,NY)に5%ウシ胎児血清を添加したもので,抗菌薬や抗真菌薬の入らないものを標準培地として用いた.薬剤は,キサラタン(ファイザー:以下,X),タプロス(参天製薬:以下,T),トラバタンズ(日本アルコン:以下,Tr),ラタノプロストPF(日本点眼薬研究所:以下,L),ルミガン(千寿製薬:以下,Lu)を各企業より提供を受け使用した.それぞれの点眼薬を標準培地で10?1,000倍に希釈したもので細胞培養を行った.培養7日目に位相差顕微鏡で細胞形態を観察するとともに,培地を回収し細胞成分を除去した後に培地中の各種サイトカインを定量した.薬剤の希釈度によって生細胞数が異なるため,各々の培養フラスコ中の細胞数を計測し,105個の細胞に対するサイトカイン量を計算した.標準培地でのみ培養したものを対照とした.各々3個の培養を行い,平均値と標準偏差を求めた.炎症性サイトカインはインターロイキン1a(IL-1a),インターロイキン6(IL-6)とプロスタグランジンE2(PGE2)を測定した.IL-1aはEL1SA(enzyme-linkedimmunosorbentassay)キット(日本抗体研究所,高崎市),IL-6はCLEIA(chemiluminescentenzymeimmunoassay)キット(富士レビオ,東京),PGE2はRIA(radioimmunoassay)キット(NENLifeScienceProducts,Boston)を用いて測定した7).II結果1.細胞形態Xは100倍希釈以上の高濃度で細胞は死滅し,300倍で少数の生細胞を,1,000倍で細胞伸展を認めた(図1).Lu(図2),L(図3)は,30倍以上で細胞は死減,100倍で伸展,300倍未満で正常であった.T(図4),Tr(図5)は,10倍で細胞が死滅,30倍で伸展,100倍で正常であった.2.サイトカイン産生IL-1aの産生量は,対照が60.6±42.0pg/105細胞(平均値±標準偏差)に対し,300倍希釈のXが146.5±31.7pg/105細胞で,100倍希釈のLu,L,T,Trは各々50±26.8,21.1±9.0,11.3±5.3,4.0±0.6pg/105細胞であった(図6).IL-6(図7)は,対照,300倍希釈のX,100倍希釈のLu,L,T,Trが各々378.9±228.5,2,011.5±338.7,1,154.7±296.6,362.3±106.8,222.6±33.9,148.6±15.8pg/105細胞,PGE2(図8)は,各々21.9±13.8,205.3±41.1,NA,71.3±35.3,8.3±0.3,10.3±3.7pg/105細胞であった.III考按これまでに筆者らは,白内障術後の緑内障薬によるCMEは,塩化ベンザルコニウムの関与の可能性が高いこと,その機序として白内障の手術後に残存した水晶体上皮細胞に,緑内障治療薬が作用することにより各種サイトカインが多量に産生されることを確認し,このサイトカインが網膜に作用するためではないかと考えた6,7).防腐剤としての塩化ベンザルコニウムは,静菌や殺菌作用,保存効力が高いことから,点眼薬の約7割で使用されている.塩化ベンザルコニウムを添加することで,薬物の浸透性が亢進するという利点がある一方で,これまでに眼表面障害の問題がとりあげられている.おもに角膜上皮細胞に対する細胞毒性が報告されおり,これは防腐剤の界面活性作用によるもので,細胞膜の透過性が高まり,膜破壊や細胞質の変性によって生じる9).塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が点眼薬に添付される意味は,点眼瓶を用いて繰り返し使用するために,開栓によって瓶内に細菌が混入し,増値することを防ぐためである.したがって,単回使用の点眼には通常防腐効果のある添加剤は添加されていない.また,その防腐効果を確認するために,種々の細菌を用いた保存効力試験が実施され,点眼瓶,点眼薬の汚染が生じないかを検討されている10).今回使用したXとLu,Tにはそれぞれ塩化ベンザルコニウムが0.02%と0.005%,0.001%,TrとLには塩化ベンザルコニウムは含有されていないが,濃度は不明であるが,防腐剤としての亜鉛やホウ酸などの緩衝剤が添加されている.X,Lu,Tの順で,細胞障害が生じ,サイトカインの産生も多かった.これは,塩化ベンザルコニウムの濃度によって障害の程度が決まること7)と同様の結果であった.さらに,Tの塩化ベンザルコニウムは,塩化ベンザルコニウムの炭素鎖長が一定のものであり,他の製剤ではこの炭素鎖長が種々であるのに対し,より細胞毒生が少ないものを使用している.さらに,Tでは保存効力試験と角膜上皮細胞を用いた細胞毒性試験を行い,塩化ベンザルコニウムの至適濃度(0.0005?0.003%)を決定し,以前の0.01%から現在の0.001%に減量されている11).LuのPGE2が検査不能であったが,これはLuが検査試薬と交差反応するものと考えられ,異常な高値を示したが,詳細は不明である.Trは,塩化ベンザルコニウムに代わる防腐剤として,ホウ酸の存在下で亜鉛イオンが細菌などのATP産生を阻害することで細菌などを死滅させる添加物が含まれている.これは,酸性下でもっともその効力が強力に出現することから,製剤の状態では酸性を示している.点眼することで,涙液によって緩衝され中性となることで,細胞毒性が減弱,消失するものと考えられている12).今回の検討においても,Trを培養液に加えることで中性になり,添加物の細胞毒性が軽減したと考えられる.最後に,Lについては,塩化ベンザルコニウムを含まない点眼薬なので好結果を期待していた.しかし,結果は塩化ベンザルコニウムが含まれている製剤と同等の結果であった.Lは,塩化ベンザルコニウムを含まなくても,複数回の点眼で容器内の細菌などの増殖を防御するために,点眼口にフィルターを付け,細菌などの混入を防御している.防腐剤を減らし,あるいは無添加にすることが可能な点眼瓶として,非常に有益なものと思われる.しかし,今回の良好な結果が得られなかったのは,保存効力試験を通すために,塩化ベンザルコニウムは非添加であるが,ホウ酸(濃度不明)が細菌などの増殖が生じないように添加されているためと考えられた.本来,フィルターを用いた点眼瓶に保存効力試験を行う必要はないので,塩化ベンザルコニウム以外の添加剤についても,その添加の目的,濃度などを検討すべきであると考えられた.今回の検討で,緑内障の点眼薬の実薬においても,水晶体上皮細胞の細胞障害や細胞のサイトカイン産生に及ぼす影響は,塩化ベンザルコニウム含有によって濃度依存的に強いことと,塩化ベンザルコニウム非添加でフィルター付き点眼瓶を用いた薬剤でも,塩化ベンザルコニウム添加の薬物と同等の影響があることが明らかとなった.白内障術後の緑内障点眼薬の使用については,塩化ベンザルコニウムの含有濃度に注意して使用すべきと考えられた.さらに,塩化ベンザルコニウム非添加であっても,他の防腐効果を期待した添加物を加えていることがあるので,点眼薬の添加物や保存効力試験の有無などもよく確認する必要があると思われた.文献1)GassJDM:StereoscopicAtlasofMacularDiseases;DiagnosisandTreatment.4thEd,p478-481,CVMosby,St.Louis,MO,19972)RoweJA,HattenhauerMG,HermanDC:Adversesideeffectsassociatedwithlatanoprost.AmJOphthalmol124:683-685,19973)FechtnerRD,KhouriAS,ZimmermanTJetal:Anterioruveitisassociatedwithlatanoprost.AmJOphthalmol126:37-41,19984)MoroiSE,GottfredsdottirMS,SchteingartMTetal:Cystoidmacularedemaassociatedwithlatanoprosttherapyinacaseseriesofpatientswithglaucomaandocularhypertension.Ophthalmology106:1024-1029,19995)MiyakeK,OtaI,MaekuboKetal:Latanoprostacceleratesdisruptionoftheblood-aqueousbarrierandtheincidenceofangiographiccystoidmacularedemainearlypostoperativepseudophakias.ArchOphthalmol117:34-40,19996)MiyakeK,OtaI,IbarakiNetal:Enhanceddisruptionoftheblood-aqueousbarrierandtheincidenceofangiographiccystoidmacularedemainearlypostoperativepseudokaias.ArchOphthalmol119:387-394,20017)GotoY,IbarakiN,MiyakeK:Humanlensepithelialcelldamageandstimulationoftheirsecretionofchemicalmediatorsbybenzalkoniumchlorideratherthanlatanoprostandtimolol.ArchOphthalmol121:835-839,20038)IbarakiN,ChenS-C,LinL-Retal:Humanlensepithelialcellline.ExpEyeRes67:577-585,19989)相良健:オキュラーサーフェスへの影響─防腐剤の功罪.あたらしい眼科25:789-794,200810)保存効力試験法.第十六改正日本薬局方.2044-2046,2011.3.24.厚生労働省11)浅田博之,七條優子,中村雅胤ほか:0.0015%タフルプロスト点眼液のベンザルコニウム塩化物濃度の最適化検討─眼表面安全性と保存効力の視点から─.YAKUGAKUZASSHI130:867-871,201012)LewisRA,KatzGJ,WeissMJetal:Travoprost0.004%withandwithoutbenzarkoniumchloride:acomparisonofsafetyandefficacy.JGlaucoma16:98-103,2007〔別刷請求先〕茨木信博:〒320-0851栃木県宇都宮市鶴田町720-1いばらき眼科クリニックReprintrequests:NobuhiroIbaraki,M.D.,IbarakiEyeClinic,720-1Tsuruta-machi,Utsunomiyacity,Tochigi320-0851,JAPAN0195110-81810/あ16た/(133)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161519図1キサラタン添加時の細胞形態7日目a:100倍希釈.ほとんどの細胞が死滅している.b:300倍希釈.わずかの生細胞を認めるが,細胞は伸展している.c:1,000倍希釈.ほぼ正常の細胞形態(バーは100μm).図2ルミガン添加時の細胞形態7日目a:30倍希釈.ほとんどの細胞が死滅している.b:100倍希釈.細胞伸展を認める.c:300倍希釈.ほぼ正常の細胞形態(バーは100μm).1520あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(134)図3ラタノプロストPF添加時の細胞形態7日目a:30倍希釈.ほとんどの細胞が死滅している.b:100倍希釈.細胞伸展を認める.c:300倍希釈.ほぼ正常の細胞形態(バーは100μm).図4タプロス添加時の細胞形態7日目a:10倍希釈.ほとんどの細胞が死滅している.b:30倍希釈.細胞伸展を認める.c:100倍希釈.ほぼ正常の細胞形態(バーは100μm).(135)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161521図5トラバタンズ添加時の細胞形態7日目a:10倍希釈.ほとんどの細胞が死滅している.b:30倍希釈.細胞伸展を認める.c:100倍希釈.ほぼ正常の細胞形態(バーは100μm).図6IL?1aの産生(pg/105細胞)X:キサラタン,Lu:ルミガン,L:ラタノプロストPF,T:タプロス,Tr:トラバタンズ.図7IL?6の産生(pg/105細胞)X:キサラタン,Lu:ルミガン,L:ラタノプロストPF,T:タプロス,Tr:トラバタンズ.図8PGE2の産生(pg/105細胞)X:キサラタン,Lu:ルミガン,L:ラタノプロストPF,T:タプロス,Tr:トラバタンズ.1522あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(136)(137)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161523

緑内障点眼薬識別法とリスク要因

2012年7月31日 火曜日

《第22回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科29(7):988.992,2012c緑内障点眼薬識別法とリスク要因高橋嘉子*1井上結美子*1柴田久子*1井出聡美*1若倉雅登*1井上賢治*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第2講座DiscriminationMethodandRiskFactorofGlaucomaMedicationYoshikoTakahashi1),YumikoInoue1),HisakoShibata1),SatomiIde1),MasatoWakakura1),KenjiInoue1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine目的:緑内障点眼薬の識別法および識別に関するリスク要因を調査し,点眼剤型の特徴に基づいた適切な服薬指導を考える.対象および方法:緑内障点眼薬を2.4剤使用中で過去6カ月間に他の点眼薬を使用していない緑内障患者90名を対象とした.40種類の点眼薬をサンプル台に設置し,患者自身が使用中の点眼薬を選択し,その正誤率で判定した.さらに識別法を記録集計した.結果:誤認なく選択した患者は75歳以上で有意に少なかった.識別法は「キャップの色」が最も多く(74%),そのなかの正答率は80%であった.製品名を記憶している患者の正答率が有意に高かった.結論:点眼薬の識別法はキャップの色によることが多いが,色調の認識には個人差や思い込みがあり注意が必要である.高齢患者に対してキャップの色や製品名の記憶を促す服薬指導が重要である.Purpose:Toinvestigatethediscriminationmethodandriskfactorofglaucomamedication,andtoimprovemedicationguidance.SubjectsandMethods:Placedonthesampledeskwere40typesofeyedrops;90patientswhowereusing2.4typesofglaucomamedicationselectedtheonestheywereusing.Therateofcorrectselectionandthemethodsofdiscriminationwererecordedandcounted.Results:Patients75yearsofageorolderwhoselectedthecorrecteyedropsweresignificantrylowinnumber.Mostpatients(74%)distinguishedamongthecontainersbythe“colorofthecontainercap.”Ofthosewhoanswered“bythecolorofthecontainercaps,”80%werecorrect.Inthe“distinguishedbyname”group,validitywassignificantlyhighinpatientswhorememberedthenameoftheproduct.Conclusion:Althoughmanypatientsamongthemedicationsbythecolorofcontainerscaps,precautionareneeded.Inmedicationguidanceforelderlypatients,emphasisshouldbeplacedonrememberingnotonlytheappearance,butalsotheproductnameofmedicine.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(7):988.992,2012〕Keywords:緑内障点眼薬,識別法,リスク要因,服薬指導.glaucomaeyedrop,discriminationmethod,riskfactor,medicationguidance.はじめに緑内障点眼薬は1967年塩酸ピロカルピン,1981年チモロールマレイン酸塩,1984年カルテオロール塩酸塩,1994年イソプロピルウノプロストン,1999年ラタノプロスト発売を筆頭に炭酸脱水酵素阻害薬,持続型bブロッカー,aブロッカー,さらに近年では配合剤と開発がめざましい.後発品も年々増加傾向にある.市場に点眼薬が増えると選択薬剤も広がるが,類似容器による誤認も増加すると考えられる.点眼薬の誤認により治療効果が軽減したり,副作用が増大したりする危険がある.これまでに点眼薬に関しては点眼コンプライアンス1.5),点眼容器の識別法6),高齢者が使いやすい点眼容器7)の報告がある.しかし,各々の点眼薬がどの点眼薬と誤認しやすいかなどを具体的に調査した報告はない.われわれ薬剤師は点眼剤形の特徴に基づいた適切な服薬指導を行う必要がある.今回,複数の緑内障点眼薬を使用している患者を対象として患者自身で使用中の点眼薬を選択し,正誤率を出し,そこから識別法および識別に関するリスク要因を検討した.〔別刷請求先〕高橋嘉子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院薬剤課Reprintrequests:YoshikoTakahashi,InouyeEyeHospitalDrugsSection,4-3,Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN988988988あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(112)(00)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY I対象および方法井上眼科病院に2010年12月から2011年6月までの間に来院し,緑内障点眼薬を2.4剤使用中(使用期間に基準は設けない)で,過去6カ月間に他の点眼薬を使用していない緑内障患者90名を対象とした.男性42名,女性48名,平均年齢67.3±10.8歳(32.89歳)(平均±標準偏差),年齢は65歳未満29名,65歳以上75歳未満39名,75歳以上22名,視機能は視力0.81±0.41,病期MD.6.36±11.10dB(平均±標準偏差)であった.点眼薬の総処方剤数は258本であった(表1).患者の診察待ち時間を利用し,同意を得た後に別室(個室)で薬剤師が対面で聞き取り調査を行った.併用処方される可能性のある点眼薬も含めて,色や形が類似した点眼薬40種類を選択し,サンプル台に設置した(図1).患者にサンプル台を見せ,現在使用中の点眼薬を取ってもらい,正誤を判定した.各点眼薬の識別法を患者の申告通り(フリー回答)に記録集計した.それらの結果を「性別」「年齢」「処方剤数」「使用期間」「製品別」「製品名の記憶」で正誤率を比較検討した(Fisher直接法およびc2検定).「製品名の記憶」はサンプル台を提示する前に使用している点眼薬の製品名を正確に言えた患者を「記憶している」とした.表1対象者の性別と年齢構成,処方剤数処方剤数.64歳65.74歳75歳.男性女性男性女性男性女性258785235685444324734図1点眼薬設置台II結果すべての点眼薬を間違いなく選択した患者(全正答患者)は性別では男性25名(59.5%),女性25名(52.1%)で差はなかった(p=0.62:Fisher直接法).年齢別では65歳未満20名(68.9%),65歳以上75歳未満25名(64.1%),75歳以上5名(22.7%)で,75歳以上で有意に全正答患者が少なかった(p<0.001:c2検定)(図2).処方剤数別では2剤使用35名中24名(68%),3剤使用32名中15名(47%),4剤使用23名中11名(48%)で差はなかった(p=0.14:c2検定)(図3).正答数は総処方剤数に対しては258本中197本(76.4%)であった.「使用期間」では半年未満14本中8本(57.1%),半年以上1年未満15本中14本(93.3%),1年以上229本中175本(76.4%)で差はなかった(p=0.07:c2検定).製品別のうち30本以上処方されている点眼薬の正答数は,キサラタ75歳未満(68名):正■:誤75歳以上(22名)22.7%77.3%66.2%33.8%0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%図2年齢別正答率2剤使用:n=353剤使用:n=32全正答68%全正答47%正答:なし9%正答:1剤23%正答:1剤19%正答:2剤31%正答:なし3%4剤使用:n=23正答:なし0%全正答48%正答:1剤17%正答:2剤9%正答:3剤26%図3処方剤数別正答数(113)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012989 100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%:正■:誤(n)8235342417141198665444ル33323図4製品別正答率:正■:誤キャップの形8%製品名7%キャップの色74%瓶の形3%瓶の色3%その他5%図5識別法と正答率記憶していない(123本)0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%68.3%31.7%83.7%16.3%**p<0.01:Fisher直接法製品名を:正**■:誤製品名を記憶している(135本)図6製品名の記憶と正答率そのなかの正答数は153本(80%)であった.「キャップの形」は21本(8%)でそのなかの正答数は15本(71%),「製ンRが62本中45本(72.5%),エイゾプトRが35本中27本(77.1%),デタントールRが34本中29本(85.3%)であった(図4).誤認薬はキサラタンRに対してはマイティアR,ザラカムRが各3本,カリーユニR2本,オドメールR,ベトプティックR,トブラシンR,トラバタンズR,ルミガンRが各1本であった.エイゾプトRに対してはミケランR,コソプトR各3本,リズモンTGR1本であった.デタントールRに対してはヒアレインR2本,アレギサールR,リボスチンR各1本であった.識別法は「キャップの色」が最も多く192本(74%)で,990あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012品名」は18本(7%)でそのなかの正答数は15本(83.3%)「瓶の形」は8本(3%)でそのなかの正答数は7本(87%)(,)「瓶の色」は7本(3%)でそのなかの正答数は4本(57%)(,)「その他」は12本(5%)でそのなかの正答数は9本(75%)(,)であった(図5).「製品名の記憶」では「記憶している」は135本でそのなかの正答数は113本(83.7%)「記憶していない」は123本でそのなかの正答数は84本(68(,).3%)で「記憶している」の正答率が有意に高かった(p<0.01:Fisher直接法)(図6).III考按今回緑内障点眼薬の識別に関するリスク要因を把握するために患者に実際に使用している点眼薬を選択してもらうこと(114) でその正誤を判定し,その結果をさまざまな要因で比較した.年齢では75歳以上が誤認のリスク要因で,高齢者には識別性の高い剤形を有するあるいは点眼薬数を減らす意図から配合剤へ切り替えるような配慮が必要であろう.また,点眼薬の使用期間による誤認の違いはなく,点眼薬が新たに処方されたときだけでなく継続的に服薬指導を行わなければならないと考えられる.識別法では過去の報告6)と同様に「キャップの色」が多くを占めた.色での識別は明瞭で,色を利用した服薬指導がコンプライアンスの向上につながることが予想されるが,同系色の点眼薬が処方された場合はこの限りではない.今回の調査でもエイゾプトR,デタントールRの誤認薬はすべて同系色で,デタントールRの誤認薬はすべて同一会社の製品であった.誤認薬のなかには薬効や作用機序の違いから併用処方される可能性のある点眼薬もある.実際に,同系色のルミガンRとミロルRが併用処方されている患者で誤認を認めた.医師は眼圧下降効果を主眼に点眼薬を処方することが多く,点眼容器のキャップの色調まで配慮することはむずかしく,同様の誤認は起こりうる.同系色の点眼薬が処方されている場合は,それらの点眼薬を並べて提示するなどリスクを強調した服薬指導を行うべきである.同じ形状の容器を使用している製薬会社の製品では特に注意が必要である.また,今回の調査では「赤とオレンジ」「青と緑」「紫とピンク」など,色調の認識に個人差を感じた.点眼指導を行う薬剤師と患者の間にも色調の認識が乖離している可能性が考えられる.一方,キサラタンRの誤認薬にはまったく色調の違うものが複数あった.キサラタンRは付属の緑色の袋に保管している患者が多く,それを容器の色と思い込んでしまっているため6)と考えられる.これらが原因の誤認リスクを考えると,患者への服薬指導は色だけに頼ることは避けるべきである.患者の意見にもあったが,これだけ製品が増えると同色の製品がでてくるのは当然である.色彩光学では色を瞬時に識別できるのは4色からせいぜい6色までといわれている8).そこから考えてもすでに飽和状態にある.色のつぎに考えられる識別は形状となるが,すでに発売されている容器で意匠をこらした点眼瓶もあるが,期待したほどの効果はもたらされていない6).また,容器の使用性やハンドリングは点眼薬の継続的な使用に影響する可能性があり7,9.12),構造上の利点を追求すると識別だけのために容器の形状を多様化することは躊躇せざるをえない.つぎは「製品名」での識別となる.過去の報告6)と同様に「製品名」での識別は今回も7%と少なかったが,製品名を記憶している患者のほうが誤認が少なかった.このことから容器の外観だけでなく製品名も記憶できるような服薬指導が識別力の向上につながると考えられる.しかし「製品名」で識別していると答えながら誤認した患者のなかに,ラベルを見ただけで文字を読解していない患者もあり,彼らは製品名よりも容器形状で識別していると推測される.他の識別法でも申告と実際で相違するものがあった.服薬指導の際に製品名を強調し反復するなど自然に記憶できるようにすることがリスク回避に有効であると考えられる.患者の意見のなかに「製品名が覚えにくい」があった.医療従事者側からみても発音しづらく記憶しにくい製品名もあり,高齢者では特に困難であると予想される.単純で記憶しやすく,発音しやすい製品名とすることが製薬会社に今後求められる.Open-endedquestionによるフリー回答では,個々の意見や要望を引き出すことが期待できると報告されている13).今回の調査も落ち着いた個室でのインタビュー形式であり,「ラベル記載は製品名だけにして文字を大きくしてほしい」「触って識別できるような容器にしてほしい」「すべてのメーカーで薬効と色を統一してほしい」「キャップと点眼瓶の色を同じにしてほしい」など患者から忌憚のない意見を聴取することができた.緑内障患者は容器への要求水準が高く12),聞くほどに意見は掘り下げられる.地球環境に適合した材質の使用,行政指導や薬事法での記載制限など製薬会社側の事情もある8).容器を製造する製薬会社,実際に点眼薬を使用する患者,点眼薬を処方する医療機関の各々が自分たちの立場でしか見えないものもあり,三者で情報を共有し合うことにより「リスク回避」が効率的になると考えられるので,今後の連携が重要である.結論として,75歳以上の患者では点眼薬の誤認が多かった.点眼薬の識別法としてはキャップの色が多かった.製品名を記憶している患者の点眼薬の識別は良好であった.これらを踏まえて言えば,薬剤師として特に高齢の患者では点眼薬の製品名を覚えてもらうこと,そのうえでキャップの色をはじめとした識別法を伝えるような服薬指導が重要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)徳岡覚:緑内障患者への視点─コンプライアンスの実際.FrontierinGlaucoma1:38-41,20002)塚本秀利,三嶋弘:眼科医の手引き─緑内障患者とコンプライアンス.日本の眼科72:337,20013)平山容子:アンケートによる緑内障患者の意識調査.あたらしい眼科17:857-859,20004)森田有紀,堀川俊二,安井正和:緑内障患者のコンプライアンス─点眼薬の適正使用に向けて.医薬ジャーナル35:1813-1818,19995)吉川啓二:服薬指導の際の注意─コンプライアンスを高める患者説明.臨床と薬物治療19:1106-1108,20006)園田真也,鵜木一彦:点眼薬の識別に関する調査.あたらしい眼科19:359-361,2002(115)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012991 7)兵頭涼子,溝上志朗,川﨑史朗ほか:高齢者が使いやすい緑内障点眼容器の検討.あたらしい眼科24:371-376,8)東良之:[医療過誤防止と情報]色情報による識別性の向上.参天製薬の医療用点眼容器ディンプルボトルの場合..医薬品情報学6:227-230,20059)福本珠貴,渡邊津子,井伊優子ほか:[患者さんにまつわる小さな「困った」対処法50]点眼指導で起こりうる小さな「困った」対処法.眼科ケア8:242-248,200610)沖田登美子,加治木京子:看護技術の宝箱New!高齢者の自立点眼をめざした点眼補助具の作り方.看護雑誌69:366-368,200511)兵頭涼子,林康人,鎌尾知行ほか:プロスタグランジン点眼容器の使用性の比較.あたらしい眼科27:1127-1132,201012)高橋真紀子,内藤知子,大月洋ほか:点眼容器形状のハンドリングに対する影響.あたらしい眼科27:1107-1111,201013)FriedmanDS,HahnSR,QuigleyHAetal:Doctor-patientcommunicationinglaucomacare.Ophthalmology116:2277-2285,2009***992あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(116)