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Dynamic Contour Tonometer を用いた緑内障視野障害様式の検討

2010年6月30日 水曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(107)821《原著》あたらしい眼科27(6):821.825,2010cはじめに特徴的な視神経萎縮と視野欠損を生じ,他の疾患や先天異常が否定される開放隅角緑内障は,眼圧の測定値から一般的に20mmHg程度を境界として,正常眼圧緑内障(normaltensionglaucoma:NTG)と原発開放隅角緑内障(primaryopen-angleglaucoma:POAG,狭義の開放隅角緑内障)として,これまで便宜的に区別されてきた1).眼圧の程度と視野障害様式の違いについて,いくつかの検討がなされている.堀ら2)は,NTGは下方Bjerrum領域に,POAGは上方視野に障害が強いことを示した.Caprioliら3),Chausenら4)はPOAGに比べ,NTGはより局所性の障害であると報告をしている.しかし両疾患の差異,すなわち眼圧の程度と視野障害様式の関係についての明らかな結論は得られていない.そもそも眼圧には日内変動や季節変動なども知られており5,6),このように変動のある眼圧を,ある時点で計測した測定値を基準にして緑内障の分類を行うことに正当性がある〔別刷請求先〕山口泰孝:〒526-8580長浜市大戌亥町313市立長浜病院眼科Reprintrequests:YasutakaYamaguchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,NagahamaCityHospital,313Ohinui-cho,Nagahama526-8580,JAPANDynamicContourTonometerを用いた緑内障視野障害様式の検討山口泰孝*1白木幸彦*1梅基光良*1木村忠貴*2植田良樹*1*1市立長浜病院眼科*2北野病院眼科DynamicContourTonometerUseinComparingVisualFieldDefectsinGlaucomaYasutakaYamaguchi1),YukihikoShiraki1),MitsuyoshiUmemoto1),TadakiKimura2)andYoshikiUeda1)1)DepartmentofOphthalmology,NagahamaCityHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KitanoHospital視野障害様式が上方と下方で異なる広義開放隅角緑内障眼について,眼圧,眼球脈波(OPA),中心角膜厚,眼圧下降剤(ラタノプロスト,チモロール)への反応性を比較した.眼圧測定には,Goldmann圧平眼圧計(GAT)とdynamiccontourtonometer(DCT)を用いた.対象は上半視野障害を有する緑内障眼114例142眼,下半視野障害を有する緑内障眼75例93眼と健常眼50例100眼である.視野障害様式によるGAT測定眼圧,DCT測定眼圧,OPAおよび中心角膜厚の有意差は認めなかった.両群ともチモロールはラタノプロストより眼圧下降効果が弱かった.チモロールのDCT測定による収縮期眼圧(DCT測定眼圧+OPA)下降率は,上方視野障害群が下方視野障害群より有意に低値であった.また,上方視野障害群はチモロールによるOPA下降が得られなかった.Toinvestigatethedifferenceofthenatureoftheeyesbetweenthevisualfielddefectsbroughtonbyprimaryopen-angleglaucoma,defectlocalizationwasclassifiedinto2groups:upperdefectpatternandlowerdefectpattern.Weanalyzedintraocularpressure(IOP),ocularpulseamplitude(OPA),centralcornealthickness,andtheeffectofeitherlatanoprostortimolol.IOPwasmeasuredusingtheGoldmannapplanationtonometer(GAT)andthedynamiccontourtonometer(DCT),whichalsogavetheOPAmeasurement.Thesubjectscomprised142eyesof114patientsthathadupperdefectpattern,93eyesof75patientsthatshowedlowerdefectpattern,and100eyesof50patientswithnosignsofglaucomaasnormalcontrol.DifferencebetweenthetwopatternswasnotsignificantforIOP,OPAorcentralcornealthickness.TimololwaslesseffectiveinreducingIOPthanwaslatanoprost,foreitherpattern.Timololwaslesseffectivefortheupperdefectpatterneyes;thesystolicIOPdecrease(DCT-IOP+OPA)waslessprominentthaninthelowerdefectpatterneyes,andOPAreductionwasnotsignificant.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(6):821.825,2010〕Keywords:ダイナミックカンタートノメーター,視野障害,眼圧,眼球脈波.dynamiccontourtonometer,visualfielddefect,intraocularpressure,ocularpulseamplitude.822あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010(108)かは疑問のあるところである.加えて近年,緑内障視神経障害の機序について,眼圧のほかに眼循環の要素も提唱されている7)が,疫学的な結論が得られているとはいえない.いずれにしても,高眼圧は緑内障視神経障害の進行因子の一つであり8,9),眼圧の程度が緑内障による視神経障害の性質に関与するかは興味のあるところである.今回筆者らは,緑内障を視野障害様式の面から上半視野障害群と下半視野障害群に分類し,各症例の眼圧,眼球脈波(ocularpulseamplitude:OPA),中心角膜厚,眼圧下降剤への反応性について,比較検討した.眼圧測定には,Goldmann圧平眼圧計(GAT)とともにdynamiccontourtonometer(DCT)を用いた.DCTはセンサーによる測定装置であり,角膜剛性の影響を受けることなく眼圧を測定することができ,その値は小数点以下第1位まで表示される.筆者らは,緑内障治療においてDCTが眼圧の相対的変動の指標を測定する装置として,GATと同様に用いることができることを報告している10).また,DCTでは収縮期眼圧と拡張期眼圧の差であるOPAを同時に測定される11,12).OPAは脈絡膜循環に関与しているといわれている13)が,GATでは測定不可能である.眼圧降下剤は,眼圧下降機序が異なるとされるラタノプロストとチモロールの2剤の効果について,視野障害様式による差異を検討した.I対象および方法対象は,上半視野障害を有する緑内障眼114例142眼(男性57例,女性57例),平均年齢67.9±1.0(30.92)歳と,下半視野障害を有する緑内障眼75例93眼(男性43例,女性32例),平均年齢67.1±1.3(29.90)歳である.正常対照群として,白内障以外の内眼疾患を有さない健常眼50例100眼(男性22例,女性28例),平均年齢72.8±0.9(33.87)歳を用いた.対象から屈折度(等価球面度数)が.6D未満または眼軸長が26mmを超える強度近視眼は除外した.測定値は個人情報とまったく分離してデータ解析に用いられ,点眼薬の処方や変更については患者の同意のうえで行うなど,すべての手順はヘルシンキ宣言の指針に基づいて行われた.緑内障眼は視神経乳頭所見および視野異常から診断され,Goldmann視野計で上方または下方に限局もしくは明らかにより進行した半視野障害を認め,湖崎分類a.bに相当する初期から中期の視野障害を有するものを対象とした.さらに光干渉断層計OCT3000(Zeiss社)を用いて視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(RNFL)厚を測定し,RNFLthicknessaverageanalysisを用いて解析,上方下方それぞれの平均RNFL厚を求めた.黄斑部網膜厚も同時に測定し,網膜厚の局所的な菲薄化を認め過去の網膜局所循環障害(網膜分枝動脈閉塞など)が疑われる症例は除外した.また,各症例についてHumphrey視野計で得られた結果をHfaFilesVer.5(Beeline社)で解析し,上下視野別に感度閾値と年代別正常値との差であるtotaldeviation(TD)を求め,対応するRNFL厚との解析を行った.GAT(Haag-Streit社)とDCT(ZeimerOphthalmic社,PascalR)を用いて,GAT測定眼圧(GAT値),DCT測定眼圧(DCT値)とOPAを測定した.DCTの測定値はQ=1.5のうち精度が上位の1,2,3を用いた.中心角膜厚は超音波角膜厚測定装置(TOMEY社,AL-1000)を用いて測定した.DCT値を「DCT拡張期眼圧」,DCT値+OPAを「DCT収縮期眼圧」としても扱った.対象症例のうち,上方視野障害群91眼,下方視野障害群58眼について,ラタノプロスト点眼とチモロール点眼の点眼効果を調べた.効果の比較の際にはwashout後2.4週間の点眼期間を設け,その前後にGAT値,DCT値,OPAを測定した.比較検討にはt検定,ノンパラメトリック検定を用い,p<0.05を有意とした.II結果まず上方視野障害群,下方視野障害群について,上方視野,下方視野別のTDを求め図1に示した.Goldmann視野計で半視野障害の判定を行っているため,Humphrey視野計の結果と必ずしも一致しない症例も認めたが,図の分布からはおおむね半視野障害の選別は適切であったと考えられた.つぎに両群の上下視野別の視神経乳頭周囲平均RNFL厚とTDの関係を図2に示した.両群とも視野障害側に相当する視神経周囲RNFL厚が菲薄化しており,Ajtonyら14)の報告同様,RNFL厚とTDには正の相関があることが確認できた.GAT値(健常眼13.9±0.3mmHg,上方視野障害群16.4○:上半視野障害群+:下半視野障害群上半視野TD(dB)下半視野TD(dB)-5-15-25-35-35-25-15-5図1上方視野障害群と下方視野障害群の上下半視野別TD(109)あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010823±0.3mmHg,下方視野障害群17.8±0.6mmHg),DCT値(健常眼18.9±0.3mmHg,上方視野障害群21.7±0.4mmHg,下方視野障害群23.2±0.7mmHg),OPA(健常眼2.4±0.1mmHg,上方視野障害群2.9±0.1mmHg,下方視野障害群2.8±0.1mmHg)はいずれも緑内障眼が健常眼より有意に高値であったが,視野障害様式による眼圧の有意差はなかった(表1).健常眼について,DCT拡張期眼圧とDCT収縮期眼圧の各値と,GAT値との関係を図3に示した.ともにGAT値と強い相関があり,その相関係数は近似していた(DCT拡張期眼圧r=0.61,DCT収縮期眼圧r=0.63).中心角膜厚は上方視野障害群(524.6±3.5μm),下方視野障害群(530.3±5.3μm)ともに健常眼(536.0±3.4μm)より表1対象症例の平均GAT値,DCT値,OPA,中心角膜厚健常眼上方視野障害群下方視野障害群2群間の有意差GAT値(mmHg)13.9±0.316.4±0.3*17.8±0.6*NSDCT値(mmHg)18.9±0.321.7±0.4*23.2±0.7*NSOPA(mmHg)2.4±0.12.9±0.1*2.8±0.1*NS中心角膜厚(μm)536.0±3.4524.6±3.5*530.3±5.3NS*健常眼との有意差あり(p<0.05).050100RNFL厚(μm)a:上方視野障害群○,太線:上方視野+,細線:下方視野○,太線:上方視野+,細線:下方視野TD(dB)150050100RNFL厚(μm)b:下方視野障害群1505-5-15-25-35TD(dB)5-5-15-25-35図2RNFL厚とTD+,細線:DCT収縮期眼圧○,太線:DCT収張期眼圧25155515GAT値(mmHg)DCT拡張期,収縮期眼圧(mmHg)25図3健常眼のGAT値とDCT拡張期眼圧,収縮期眼圧5040302010001020304050点眼後DCT値(mmHg)点眼前DCT値(mmHg)a:上方視野障害群5040302010001020304050点眼後DCT値(mmHg)点眼前DCT値(mmHg)b:下方視野障害群○,太線:ラタノプロスト+,細線:チモロール○,太線:ラタノプロスト+,細線:チモロール図4点眼前後のDCT値824あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010(110)薄い傾向にあり,特に上方視野障害群は健常眼より有意に低値であった.視野障害様式による有意差はなかった(表1).上下視野障害別に緑内障点眼前後のDCT値を図4に示した.上方視野障害群の無点眼下での平均DCT値は21.6±0.4mmHgであり,ラタノプロスト点眼後は18.3±0.4mmHg,チモロール点眼後は20.1±0.4mmHgに有意に下降した(2剤間の有意差あり).下方視野障害群の無点眼下での平均DCT値は23.2±0.8mmHgであり,ラタノプロスト点眼後は19.2±0.5mmHg,チモロール点眼後は20.4±0.7mmHgに有意に下降した(2剤間の有意差あり).上方視野障害群で,ラタノプロストは点眼前DCT値が18mmHg以下,チモロールは22mmHg以下の症例において,点眼前後のDCT値に有意差はなかった.対して下方視野障害群では,ラタノプロストは点眼前DCT値が17mmHg以下,チモロールは18mmHg以下の症例において,点眼前後のDCT値に有意差はなかった.さらにDCT拡張期眼圧とDCT収縮期眼圧について,平均眼圧下降率を検討した.DCT拡張期眼圧は,上方視野障害群でラタノプロスト14.3±1.5%,チモロール5.8±1.7%(2剤間の有意差あり),下方視野障害群でラタノプロスト15.7±1.9%,チモロール11.1±1.6%(2剤間の有意差あり)であった.DCT収縮期眼圧は,上方視野障害群でラタノプロスト14.1±1.4%,チモロール5.6±1.7%(2剤間の有意差あり),下方視野障害群でラタノプロスト15.7±1.8%,チモロール11.1±1.5%(2剤間の有意差あり)であった.特にチモロール点眼によるDCT収縮期眼圧の下降率は,上方視野障害群よりも下方視野障害群で有意に高かった.点眼前後のOPAを図5に示した.無点眼下での平均値は2.8±0.1mmHgであったが,上方視野障害群のラタノプロスト点眼後は2.5±0.1mmHg,チモロール点眼後は2.8±0.1mmHg(2剤間の有意差あり)に,下方視野障害群のラタノプロスト点眼後は2.4±0.1mmHg,チモロール点眼後は2.5±0.1mmHg(2剤間の有意差なし)に変動を認めた.上方視野障害群のチモロール点眼後のみ,点眼前後の有意差を認めなかった.図6に,対象となった症例について,左右眼の視野障害様式を示した.同一症例でも左右眼で視野障害様式が上方視野障害と下方視野障害の異なるものが6%存在した.III考按健常眼の検討でGAT値はDCT拡張期眼圧ともDCT収縮期眼圧とも同程度に強く相関した.すなわち,通常得られるGAT値は,DCTから得られる細分化された値のいずれをもより反映することはないようである.これは,実際の計測手順を考慮すれば仕方のないことであろう.上下の視野障害様式によるGAT値,DCT値,OPAおよび中心角膜厚の有意差は認めなかった.症例の除外診断においては,視野欠損の自覚を得やすいと思われる下方視野に相当する上方の黄斑部網膜が明らかに局所性の循環障害で菲薄化した症例があり,過去においてNTGとされた症例にこのような症例が混在することで解析を混乱させた可能性があ点眼後OPA(mmHg)点眼前OPA(mmHg)64200246a:上方視野障害群点眼後OPA(mmHg)点眼前OPA(mmHg)64200246b:下方視野障害群○,太線:ラタノプロスト+,細線:チモロール○,太線:ラタノプロスト+,細線:チモロール図5点眼前後のOPA39%上-健下-健上:上方視野障害眼健:健常眼下:下方視野障害眼進:視野障害進行眼上-上上-進上-下下-進下-下25%15%6%6%2%7%図6対象緑内障眼の左右視野障害様式の内訳(111)あたらしい眼科Vol.27,No.6,2010825る.いまや緑内障の解析に網膜三次元画像診断は必須といえる.視野障害様式に関わりなく,DCT値下降作用ならびにOPA下降作用はチモロールよりラタノプロストが優位であった.特に上方視野障害群においては,ラタノプロストに比べてチモロールの効果が得られにくく,点眼前DCT値が22mmHg以下の症例(GAT値平均14.8mmHg以下)でよりその効果は認められなかった.下方視野障害群に関しては,下降度の有意差を示す作用点としてのDCT値は,ラタノプロストとチモロールにそれほどの違いはなかった.眼圧下降のみを主眼とするなら,上方視野障害を有する正常眼圧緑内障眼には,問題なくラタノプロストが第一選択といえる.ただし,実際の視野障害進行防止効果については長期的な解析が必要である.このように,視野障害様式によりb遮断薬に対する反応性が異なることが明らかになった.Nicolelaら15)は緑内障および高眼圧症患者にラタノプロストとチモロールを各々投与し,カラードップラーを用いて点眼後の球後血流への影響を比較している.そこでラタノプロストは球後血流に変化を及ぼさなかったが,チモロールは血流速度の低下を認めたと報告している.今後同様の検討を視野障害様式ごとに分類して行うことで,網膜血流と視野障害の関連について新たな考察が可能となるかもしれない.筆者らは以前に,OPAとDCT値の相関は決して高くないこと(健常眼r=0.31,緑内障眼r=0.26)を明らかにした10).すなわちDCT値に伴いOPAも変動するが,必ずしもその程度は同様ではない.眼圧下降によって緑内障の視野障害進行を阻止できることは示されている8,9).OPAは眼圧の一部である一方で,脈絡膜循環を反映するともいわれている13).OPAの低下が視野に関して与える影響については,今後OPAの値自体を分類の指標とし解析する必要がある.同一症例で視野障害様式が左右異なる場合があった.視野障害様式の決定は,眼球自体の要素がより強く関わるのかもしれない.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第2版.日眼会誌110:777-814,20062)堀純子,相原一,鈴木康之ほか:正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障の中.末期における視野障害様式の比較.日眼会誌98:968-973,19943)CaprioliJ,SearsM,MillerJM:Patternsofearlyvisualfieldlossinopenangleglaucoma.AmJOphthalmol103:512-517,19874)ChausenBC,DranceSM,DouglasGRetal:Visualfielddamageinnormal-tensionandhigh-tensionglaucoma.AmJOphthalmol108:636-642,19895)LiuJH,KripkeDF,TwaMDetal:Twenty-four-hourpatternofintraocularpressureintheagingpopulation.InvestOphthalmolVisSci40:2912-2917,19996)BlumenthalM,BlumenthalR,PeritzEetal:Seasonalvariationinintraocularpressure.AmJOphthalmol69:608-610,19707)HarringtonDO:Thepathogenesisoftheglaucomafield:Clinicalevidencethatcirculatoryinsufficiencyintheopticnerveistheprimarycauseofvisualfieldlossinglaucoma.AmJOphthalmol47:477-482,19598)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressures.AmJOphthalmol126:487-497,19989)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy:Theeffectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,199810)山口泰孝,梅基光良,木村忠貴ほか:DynamicContourTonometerによる眼圧測定と緑内障治療.あたらしい眼科26:695-699,200911)KaufmannC,BachmannLM,ThielMA:ComparisonofdynamiccontourtonometrywithGoldmannapplanationtonometry.InvestOphthalmolVisSci45:3118-3121,200412)冨山浩志,石川修作,新垣淑邦ほか:DynamicContourTonometer(DCT)とGoldmann圧平眼圧計,非接触型眼圧計の比較.あたらしい眼科25:1022-1026,200813)TrewDR,SmithSE:Postualstudiesinpulsatileocularbloodflow:II.Chronicopenangleglaucoma.BrJOphthalmol75:71-75,199114)AjtonyC,BallaZ,SomoskeoySetal:Relationshipbetweenvisualfieldsensitivityandretinalnervefiberlayerthicknessasmeasuredbyopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci48:258-263,200715)NicolelaMT,BuckleyAR,WalmanBEetal:Acomparativestudyoftheeffectsoftimololandlatanoprostonbloodflowvelocityoftheretrobulbarvessels.AmJOphthalmol122:784-789,1996***

正常眼圧緑内障患者における塩酸ブナゾシン点眼追加療法の36 カ月間の効果

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page1(129)7050910-1810/08/\100/頁/JCLS18回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科25(5):705709,2008cはじめに緑内障治療の目標は残存視野を維持することである.視野維持に対して眼圧下降のみが高いエビデンスを得ている1).眼圧下降のために第一選択として抗緑内障点眼薬を用いることが多い.まず単剤点眼を行うが,眼圧下降効果が不十分な場合は,点眼薬の変更や作用機序の異なる薬剤の併用が必要となる.これら併用療法における長期的な眼圧下降効果の検討は十分に行われていない.〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN正常眼圧緑内障患者における塩酸ブナゾシン点眼追加療法の36カ月間の効果井上賢治*1塩川美菜子*1若倉雅登*1井上治郎*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座AdditiveEfectofBunazosinHydrochloridefor36MonthsinPatientswithNormal-TensionGlaucomaKenjiInoue1),MinakoShiokawa1),MasatoWakakura1),JiroInouye1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)2ndDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicineb遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬による単剤点眼治療中の正常眼圧緑内障患者26例に2剤目として塩酸ブナゾシン点眼を1日2回追加投与し,36カ月間の経過観察を行った.追加投与前,投与6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧,副作用を調査した.さらに投与前と投与12,24,36カ月後の視野障害度を比較した.塩酸ブナゾシン追加前の使用薬剤はb遮断薬が14例,プロスタグランジン関連薬が12例,眼圧は16.7±1.6mmHgであった.塩酸ブナゾシン投与後の眼圧は36カ月にわたり14.115.0mmHgで有意に下降した(p<0.0001).さらにa1b遮断薬,(狭義)b遮断薬,ラタノプロスト使用例に分けて眼圧を検討したが,(狭義)b遮断薬とラタノプロスト使用例では塩酸ブナゾシン追加投与により眼圧が有意に下降した(p<0.0001)が,a1b遮断薬使用例では眼圧下降率が弱かった.投与前と投与36カ月後までのHumphrey視野のmeandeviation値は同等であった.副作用として軽度の点状表層角膜炎,結膜充血が合計6例7件に出現した.正常眼圧緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を2剤目として併用することは眼圧および視野維持効果の点から36カ月間にわたり有効であった.Westudiedtheclinicalusefulnessofcombinedtherapywiththeadjunctionofbunazosinhydrochloridein26patientswithnormal-tensionglaucomawhohadbeentreatedwithb-blocker(14patients)orprostaglandin-related(12patients)ophthalmicsolution.Thepatientsweretreatedwithbunazosinhydrochlorideasthesecondagent;intraocularpressureexaminationandadverseeectsweremonitoredbeforeandat6,12,18,24,30and36monthsafteradministration.Visualelddefectwasmonitoredandcomparedbeforeandat12,24and36monthsafteradministration.Meanintraocularpressuresignicantlydecreasedto14.115.0mmHgat6,12,18,24,30and36monthsafteradministration(p<0.0001),comparedto16.7±1.6mmHgbeforeadministration.Meanintraocularpressurealsodecreasedsignicantlyafteradministrationinpatientstreatedwithbothb-blockerandlatanoprost(p<0.0001).Visualelddefectsweresimilarbeforeandat12,24and36monthsafteradministration.Adverseeectssuchassupercialpunctatekeratitisandhyperemiawereobservedin6patients(7cases).Bunazosinhydrochlorideisdeemedeectiveforadditionaltreatmentofnormal-tensionglaucomapatientsfor36months.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(5):705709,2008〕Keywords:塩酸ブナゾシン,眼圧,視野障害,正常眼圧緑内障,併用効果.bunazosinhydrochloride,intraocularpressure,visualelddefect,normal-tensionglaucoma,combination.———————————————————————-Page2706あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(130)の場合は右眼を解析眼とした.投与前と投与6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧の比較にはANOVA(analysisofvariance)および多重比較(Bonferroni/Dunnet法)を用いた.a1b遮断薬,(狭義)b遮断薬,ラタノプロストの眼圧下降率の比較にはANOVAおよび多重比較(Bonferroni/Dunnet法)を用いた.投与前と投与12,24,36カ月後のHumphrey視野のMD値の比較にはANOVAおよび多重比較(Bonferroni/Dunnet法)を用いた.有意水準は,p<0.05とした.各検査は趣旨と内容を説明し,患者の同意を得た後に行った.II結果全症例の眼圧は,投与6,12,18,24,30,36カ月後はそれぞれ14.6±1.4mmHg,14.6±1.5mmHg,15.0±1.9mmHg,14.6±1.4mmHg,14.3±1.5mmHg,14.1±1.2mmHgで,投与後は投与前に比べ有意に下降していた(p<0.0001,ANOVAおよびBonferroni/Dunnet法)(図1).塩酸ブナゾシン追加投与前からの眼圧変化量は投与6,12,18,24,30,36カ月後でそれぞれ2.1±1.4mmHg,2.0±1.0mmHg,1.8±1.6mmHg,2.1±1.3mmHg,2.5±1.1mmHg,2.6±1.6mmHgであった.眼圧下降率は投与6,12,18,24,30,36カ月後でそれぞれ12.3±8.0%,12.5±5.5%,10.2±10.3%,12.1±7.3%,14.7±6.2%,14.9±9.1%であった.投与36カ月後の眼圧下降率は,5%未満が2例,510%が3例,1015%が7例,1520%が5例,20%以上が9例であった.塩酸ブナゾシン投与前に使用していた点眼薬別の眼圧は,a1b遮断薬では投与前が16.7±2.2mmHg,投与6,12,18,24,30,36カ月後はそれぞれ14.8±1.0mmHg,15.3±2.0mmHg,16.8±1.1mmHg,15.0±1.3mmHg,14.6±2.2mmHg,15.2±1.0mmHgであった.(狭義)b遮断薬では投与前が17.4±1.1mmHg,投与6,12,18,24,30,36カ月後はそれぞれ14.9±1.0mmHg,14.8±1.0mmHg,15.1塩酸ブナゾシンは選択的交感神経a1受容体遮断作用によりぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進することにより眼圧を下降させる点眼液である2).さらに視神経乳頭周囲血管や脈絡膜,網膜の血流増加作用もあると報告されている3,4).塩酸ブナゾシン点眼の正常人や緑内障患者への単剤使用310)や他の緑内障点眼薬との併用使用1124)の報告では,おおむね良好な眼圧下降効果が示されている.これらの報告の対象はおもに原発開放隅角緑内障や高眼圧症の患者が多く820),正常眼圧緑内障の患者は比較的少ない57,2124).正常眼圧緑内障患者を対象に塩酸ブナゾシン点眼を使用した報告は単剤投与57),2剤目2123)や23剤目24)として追加投与したものである.2剤目として追加投与した報告は投与期間が2週間21)あるいは12週間22)と短期であった.そこで筆者らはb遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬点眼を単剤で使用している正常眼圧緑内障患者を対象に塩酸ブナゾシンを2剤目として12カ月間投与した際の眼圧下降効果,視野維持効果および副作用を報告した23).今回はさらに塩酸ブナゾシンの投与期間を36カ月間に延長して再検討した.I対象および方法平成16年2月から9月までの間に井上眼科病院に通院中の正常眼圧緑内障患者で,(広義)b遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬点眼による単剤治療を1カ月以上行っているにもかかわらず,眼圧下降効果が不十分あるいは視野障害が進行している26例を対象とした.男性6例,女性20例,年齢は4178歳,59.7±9.1歳(平均±標準偏差)であった.塩酸ブナゾシン追加投与前の眼圧は16.7±1.6mmHg(1319mmHg)であった.Humphrey視野中心30-2プログラムのmeandeviation(MD)値は9.1±6.3dB(24.11.3dB)であった.使用中の点眼薬は(広義)b遮断薬が14例(ニプラジロール4例,マレイン酸チモロール4例,ゲル化マレイン酸チモロール3例,塩酸レボブノロール2例,塩酸ベタキソロール1例),プロスタグランジン関連薬が12例(ラタノプロスト10例,イソプロピルウノプロストン2例)であった.内眼手術,レーザー手術の既往例は除外した.使用中の点眼薬はそのまま継続し,2剤目として塩酸ブナゾシン点眼(1日2回朝夜点眼)を追加し,投与前,投与6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧を調査した.各来院時に副作用,投与12,36カ月後に点眼状況を調査した.使用中の点眼薬をa1b遮断薬6例(ニプラジロール+塩酸レボブノロール),(狭義)b遮断薬8例(マレイン酸チモロール+ゲル化マレイン酸チモロール+塩酸ベタキソロール),ラタノプロスト10例に分けて,眼圧と眼圧下降率を検討した.投与12,24,36カ月後にHumphrey視野中心30-2プログラムを行った.両眼投与症例では投与前眼圧が高いほうを,同値図1ブナゾシン点眼追加投与前後の眼圧***p<0.0001:ANOVAおよびBonferroni/Dunnet法.眼圧(mmHg)08101214161820投与前6カ月12カ月18カ月24カ月30カ月36カ月******************n=26n=26n=26n=24n=24n=26n=26投与後———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008707(131)副作用は6例7件で出現し,結膜充血が4件,点状表層角膜炎が3件であったが,いずれも塩酸ブナゾシン点眼治療を中止するほど重篤ではなかった.点眼状況は,12カ月後には全例で毎日きちんと点眼していた.36カ月後には塩酸ブナゾシン点眼は週に一度程度忘れる1例,月に一度程度忘れる5例,毎日きちんと点眼する20例,プロスタグランジン関連薬あるいはb遮断薬は月に一度程度忘れる2例,毎日きちんと点眼する24例であった.III考按塩酸ブナゾシン点眼の単剤使用は(狭義)原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症患者に対して,短期投与では眼圧下降幅および眼圧下降率は,それぞれ4週間投与で3.0mmHgと12.7%9),3.0mmHgと12.9%10),6週間投与で1.5mmHgと6.9%11)と報告されている.長期投与では52週間投与で投与前眼圧23.2±1.6mmHgが52週間にわたり18.219.6mmHgに有意に下降していた8).正常眼圧緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を単剤で投与した際の眼圧下降効果は,12週間投与で眼圧が17.7±1.8mmHgから0.9mmHg下降したが差はなかった4),48週間投与で眼圧が15.8±2.7mmHgから12.4±1.9mmHgに有意に下降した5)との報告があり,一定の見解は得られていない.塩酸ブナゾシン点眼の併用使用に関しては,(狭義)原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症への2剤目としてマレイン酸チモロールあるいはラタノプロストに短期的に追加投与した報告がある1215).マレイン酸チモロールに追加投与した際の眼圧下降幅および眼圧下降率は,4週間投与(投与前眼圧23.7±1.8mmHg)で2.33.1mmHgと9.713.1%15),12週間投与(投与前眼圧22.5±3.5mmHg)で2.62.8mmHgと11.612.4%13)であった.今回の(狭義)b遮断薬の結果(2.33.1mmHgと15.119.6%)は,眼圧下降幅はほぼ同等で,眼圧下降率は投与前眼圧(17.4±1.1mmHg)が低いため良好であった.ラタノプロストに追加投与した際の眼圧下降幅および眼圧下降率は,8週間投与(投与前眼圧18.2±3.4mmHg)で1.11.6mmHgと6.08.8%14),12週間投与(投与前眼圧22.3±3.0mmHg)で1.12.8mmHgと5.312.0%13),12週間投与(投与前眼圧21.4±2.2mmHg)で1.23.3mmHgと4.715.8%12)であった.(広義)原発開放隅角緑内障への2剤目としてラタノプロストに6週間追加投与した際(投与前眼圧17.4mmHg)の眼圧下降幅は0.7mmHg,眼圧下降率は4.0%であった11).一方,(広義)原発開放隅角緑内障への2剤目としてウノプロストンに24週間追加投与した際に,眼圧が15.0±3.6mmHgから13.3±3.4mmHgに有意に下降し,眼圧下降幅および眼圧下降率は1.7mmHgと11.0%であった20).今回のラタノプロストの結果(2.13.0mmHgと15.419.8%)は過去の報告より良好±1.1mmHg,15.1±1.1mmHg,14.7±1.0mmHg,14.3±1.3mmHgであった.ラタノプロストでは投与前が16.5±1.4mmHg,投与6,12,18,24,30,36カ月後はそれぞれ14.4±1.7mmHg,14.3±1.4mmHg,14.4±1.7mmHg,14.3±1.3mmHg,13.8±1.3mmHg,13.5±0.9mmHgであった.(狭義)b遮断薬,ラタノプロストでは投与後すべての観察時で眼圧が投与前に比べ有意に下降した(p<0.0001,ANOVAおよびBonferroni/Dunnet法)(図2).a1b遮断薬では投与6,24,30,36カ月後では眼圧が投与前に比べ有意に下降した(p<0.05,ANOVAおよびBonferroni/Dunnet法).塩酸ブナゾシン投与前に使用していた点眼薬別の眼圧下降率は投与6,12,18,24,30,36カ月後でそれぞれa1b遮断薬が12.3±12.0%,8.8±5.8%,0.1±11.6%,11.3±13.6%,15.6±10.5%,7.7±13.4%,(狭義)b遮断薬が17.1±7.7%,18.0±5.5%,16.3±7.3%,15.1±6.8%,19.6±6.9%,17.9±6.1%,ラタノプロストが15.5±11.8%,15.7±7.8%,15.4±11.3%,15.8±10.1%,19.8±8.3%,17.8±6.4%であった.投与12カ月後にa1b遮断薬と(狭義)b遮断薬間に,投与18カ月後にa1b遮断薬と(狭義)b遮断薬間,a1b遮断薬とラタノプロスト間に有意差を認めた.Humphrey視野のMD値は,投与12,24,36カ月後はそれぞれ9.9±7.1dB,9.2±6.2dB,10.0±7.2dBで,投与前と同等であった(ANOVA).図2ブナゾシン追加投与前に使用していた点眼薬別の眼圧変化**p<0.0001,*p<0.05:ANOVAおよびBonferroni/Dunnet法.0101214161820投与前カ月12カ月18カ月24カ月30カ月36カ月****(6)(6)(5)(6)(6)(5)(6)************************(8)(8)(8)(7)(8)(7)(8)(10)(10)(10)(10)(10)(10)(10)()内は,症例a1b遮断薬眼圧(mmHg)0101214161820投与前6カ月12カ月18カ月24カ月30カ月36カ月(狭義)b遮断薬眼圧(mmHg)0101214161820投与前6カ月12カ月18カ月24カ月30カ月36カ月ラタノプロスト眼圧(mmHg)———————————————————————-Page4708あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(132)12カ月間投与(33例)23)から今回(36カ月間投与)までに9例(25.7%)が脱落し,2例が新規に登録された.脱落例は理由なく来院が途絶えた4例,投与12カ月後に視野障害が進行したためウノプロストンをラタノプロストに変更した1例,投与18カ月後に充血で塩酸ブナゾシンを中止した1例,投与18カ月後に眼痛で塩酸ブナゾシンを中止した1例,投与24カ月後に眼圧が15mmHgから18mmHgに上昇したため塩酸ブナゾシンをラタノプロストに変更した1例であった.12カ月間以上の長期投与を行っている症例においても副作用が出現する可能性があり,副作用に対する注意深い経過観察が必要である.正常眼圧緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼をb遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬に追加投与することにより36カ月間にわたり眼圧の有意な下降がみられ,視野は維持された.しかし36カ月間に5例(16.1%)が副作用出現,視野障害進行,あるいは眼圧上昇で点眼中止を余儀なくされた.文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudy-Group:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpres-sure.AmJOphthalmol126:487-497,19982)OshikaT,AraieM,SugiyamaTetal:Eectofbunazosinhydrochlorideonintraocularpressureandaqueoushumordynamicsinnormotensivehumaneyes.ArchOphthalmol109:1569-1574,19913)福島淳志,白柏基宏,八百枝潔ほか:健常眼における塩酸ブナゾシン点眼の視神経乳頭微小循環への影響.あたらしい眼科20:1173-1175,20034)今野伸介,田川博,大塚賢二:塩酸ブナゾシン点眼の正常人眼視神経乳頭末梢循環に及ぼす影響.あたらしい眼科20:1301-1304,20035)杉山哲也,徳岡覚,守屋伸一ほか:低眼圧緑内障に対する塩酸ブナゾシン点眼の効果─眼脈流量を中心に.臨眼45:327-329,19916)中島正之,徳岡覚,菅澤淳ほか:低眼圧緑内障に対する塩酸ブナゾシン長期点眼の効果─その1:眼圧について─.あたらしい眼科11:1093-1096,19947)徳岡覚,東郁郎,中島正之ほか:低眼圧緑内障に対する塩酸ブナゾシン長期点眼の効果─その2:視野について─.あたらしい眼科11:1097-1101,19948)東郁郎,北澤克明,塚原重雄ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液の長期投与試験.あたらしい眼科11:631-635,19949)東郁郎,北澤克明,塚原重雄ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液の後期第二相臨床試験─多施設二重盲検比較試験─.あたらしい眼科11:423-429,199410)瀬川雄三,西山敬三,栗原和之ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液の第三相臨であった.今回は正常眼圧緑内障症例での眼圧下降効果を検討したが,過去の(狭義)原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症例より良好であった.その理由として,後者では追加点眼期間が424週間と短かったこと,今回は36カ月間の長期投与で,30カ月後や36カ月後に良好な眼圧下降を示したためと考えられる.塩酸ブナゾシン点眼はb遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬点眼に追加投与した際に長期的に眼圧下降が得られる可能性がある.正常眼圧緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を2剤目として短期21,22)および長期23)に投与した報告がある.ラタノプロストを使用中で投与前眼圧16.8±1.7mmHgの症例に対し,塩酸ブナゾシン点眼を2週間追加投与した際に眼圧は有意に下降した21).b遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬を使用中で投与前眼圧16.8±1.7mmHgの症例に対し,塩酸ブナゾシン点眼を12週間投与22)した際に眼圧は有意に下降し,眼圧下降幅は1.92.3mmHg,眼圧下降率は10.813.5%,12カ月間投与23)した際に眼圧は有意に下降し,眼圧下降幅は1.72.2mmHg,眼圧下降率は10.212.8%であった.今回の全症例での眼圧下降幅1.82.6mmHgと眼圧下降率10.214.9%は過去の報告22,23)とほぼ同等であった.一方,正常眼圧緑内障患者に塩酸ブナゾシン点眼を23剤目として52週間投与した際に眼圧は有意に下降し,眼圧下降幅は1.72.5mmHgであった24).塩酸ブナゾシン投与前に使用していた点眼薬別に眼圧下降効果を比較したが,(狭義)b遮断薬とラタノプロストがa1b遮断薬に比べ良好であった.塩酸ブナゾシンが選択的交感神経a1受容体遮断作用を有するため,同じ作用を有するa1b遮断薬では眼圧下降効果が減弱する可能性が考えられる.塩酸ブナゾシン点眼による視野維持効果は,正常眼圧緑内障症患者に塩酸ブナゾシン単剤を48週間投与した報告がある7).Humphrey視野のMD値が投与前7.76±8.31dBが投与48週後に7.09±7.70dBとなり有意に改善した(p=0.035).正常眼圧緑内障症患者でb遮断薬あるいはプロスタグランジン関連薬を使用中に塩酸ブナゾシン点眼を12カ月間投与した報告では,Humphrey視野のMD値は,投与前(10.1±6.2dB)と投与12カ月後(10.8±6.5dB)で変化がなかった23).今回の投与12,24,36カ月後のMD値は投与前に比べ改善はなかったが,悪化もせず,視野が維持できたと考えられる.塩酸ブナゾシン点眼の副作用は,結膜充血,異物感,刺激感,痒感,角膜びらん,点状表層角膜炎,ぼやける,しみる,頭重感などである1124).副作用の出現頻度は,041.7%と報告により差が大きいが,結膜充血が今回と同様に多く報告されている.今回は6例7件に結膜充血や点状表層角膜炎が出現したが,いずれも重篤なものではなかった.しかし———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008709(133)359-362,200418)尾辻剛,安藤彰,福井智恵子ほか:ラタノプロスト,b遮断薬併用例における塩酸ブナゾシン併用時の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科21:955-956,200419)橋本尚子,原岳,久保田俊介ほか:第3併用薬としての塩酸ブナゾシン点眼薬の眼圧下降効果.臨眼59:359-362,200520)佐々木満,風間成泰,嶋千絵子:原発開放隅角緑内障患者におけるイソプロピルウノプロストン点眼液に対する塩酸ブナゾシン点眼液の併用効果.あたらしい眼科24:1091-1094,200721)清水美穂,今野伸介,前田祥恵ほか:ラタノプロスト点眼中の正常眼圧緑内障患者に対する塩酸ブナゾシン点眼液の眼循環と眼圧における併用効果の検討.臨眼59:283-287,200522)塩川美菜子,井上賢治,若倉雅登ほか:正常眼圧緑内障患者における塩酸ブナゾシン点眼追加療法の効果.あたらしい眼科22:991-994,200523)井上賢治,塩川美菜子,若倉雅登ほか:正常眼圧緑内障患者における塩酸ブナゾシン点眼追加療法の長期効果.あたらしい眼科23:669-672,200624)YoshikawaK,KatsushimaH,KimuraTetal:Additionoforswitchtotopicalbunazosinhydrochlorideinelderlypatientswithnormal-tensionglaucoma:aone-yearfol-low-upstudy.JpnJOphthalmol50:443-448,2006床試験─0.1%塩酸ジピベフリン点眼液との比較試験─.眼臨88:1386-1390,199411)MaruyamaK,ShiratoS,HanedaM:Evaluationoftheadditiveeectofbunazosinonlatanoprostinprimaryopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmol49:61-62,200512)仲村佳巳,仲村優子,酒井寛ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症のラタノプロスト点眼液に対する塩酸ブナゾシン点眼液の併用効果の検討.あたらしい眼科20:697-700,200313)KobayashiH,KobayashiK,OkinamiS:Ecacyofbunazosinhydrochloride0.01%asadjunctivetherapyoflatanoprostortimolol.JGlaucoma13:73-80,200414)TsukamotoH,JianK,TakamatsuMetal:Additiveeectofbunazosinonintraocularpressurewhentopicallyaddedtotreatmentwithlatanoprostinpatientswithglaucoma.JpnJOphthalmol47:526-528,200315)東郁郎,北澤克明,塚原重雄ほか:原発開放隅角緑内障および高眼圧症に対する塩酸ブナゾシン点眼液とマレイン酸チモロール点眼液の併用効果.あたらしい眼科19:261-266,200216)勝島晴美,吉川啓司,山林茂樹ほか:ラタノプロストとb遮断薬の併用患者における塩酸ブナゾシンの効果.あたらしい眼科21:675-677,200417)岩切亮,小林博,小林かおりほか:多剤併用時におけるブナゾシンのラタノプロストへの併用効果.臨眼58:***