監修=木下茂●連載231大橋裕一坪田一男231.前眼部OCTを用いたICLサイズの決定五十嵐章史山王病院アイセンターICLはCsulcusCtoCsulcus(STS)に固定する眼内レンズであるが,そのサイズ決定には従来のCwhiteCtoCwhite(WTW)に比べ,前眼部COCTを用いたCangleCtoCangle(ATA)を用いた予測式のほうが術後Cvaultは良好である.●はじめにICL(ImplantableCollamerLens,STAAR社)は長期的に安定した屈折,良好な術後視機能に加え,2007年のCHoleICL(ICLKS-AquaPORT)により術後合併症が大幅に改善され,現在国内でもっとも手術件数が増加している屈折矯正手術である.一方で,ICLサイズの決定に関してはCSTAAR社の推奨するCICLサイズ計算式は症例ごとに術後Cvaultがばらつく傾向があり,より適切なCICLサイズを予測する式の構築が課題であった.そこで筆者らは新たなメルクマールとして最新の前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で得られるCangletoangle(ATA)に注目し,新たなCICLサイズ計算式(KS式)を構築したので解説する.C●メルクマールとしてのATA現在CSTAAR社が推奨するCICLサイズ計算式はCwhiteCtowhite(WTW)/前房深度(anteriorCchamberdepth:ACD)を用いる方法で,過去のCmeta-analysis1)においても報告者により術後Cvaultがばらついている.これはCWTWがレンズ固定位置であるCsulcustosulcus(STS)との相関性が弱いこと,WTW測定値の再現性が不良であることが理由として考えられる.筆者らは以前,一部毛様体が描出可能であった北里大学式前眼部OCTを用いて健常眼のCSTSとCWTW,ATAの相関性を検証した.その結果,STSとCWTWには相関性を認めなかったが,STSとCATAには相関性を認めた.また,最新のCsweptCsourceOCTであるCCASIA2(トーメーコーポレーション)において,WTWとCATAの再現性を検討2)したが,ATAの再現性のほうが良好であった(図1).C●新たなICLサイズ計算式(KS式)新たなCICLサイズ式を構築するにあたり,ICL手術を施行し術後C3カ月経過したC23例C44眼を対象に,術後Cvaultに影響する術前因子を検出するため重回帰解析を行った2).目的変数を術後Cvault,説明変数を年齢,性別,自覚等価球面度数,眼圧,平均角膜屈折力,ACD,眼軸長,角膜厚,ATA,WTW,挿入したCICLサイズのC11項目とした.その結果,挿入したCICLサイズ(p<0.001,Cr=1.41),ATA(p<0.001,Cr=.1.14),C12,50Measurement1-2(μm)1,000750500250WTWATAMeasurement1-2(mm)Measurement1-2(mm)AverageofMeasurement1and2(mm)AverageofMeasurement1and2(mm)図1WTWとATAの再現性(Bland.Altman法)2人の検者で時間を変えCWTWとCATAをC2度計測している.横軸にC2回の検査の平均値を,縦軸にC2回の検査の差を示す.点線はC95%信頼区間の上限値・下限値を示し,幅が狭いほど再現性は良好であるため,左図のCATAのほうが再現性良好である.00.00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.1ICLsize-ATA(mm)図2術後vaultと挿入したICLサイズとATAの差縦軸に術後Cvault,横軸に挿入したCICLサイズとCATAの差を示す.有意な相関(r=0.59,p<0.001)を認め,この近似式をKS式としている.(73)あたらしい眼科Vol.36,No.8,2019C10430910-1810/19/\100/頁/JCOPY図3CASIA2におけるKS式とN.K式最新のソフトウエアにアップデートしたCCASIA2では,前眼部撮像することでCKS式とCN-K式が自動的に表示される.選択するCICLサイズに対する術後予想Cvaultが表示されるため,術者の好みでサイズを選ぶことが可能である.平均角膜屈折力(p=0.004,Cr=0.32),年齢(p=0.02,Cr=.0.26)のC4因子が術後Cvaultに関与することがわかり,とくに強い関係を示した挿入したCICLサイズとATAに注目した.図2にCICLサイズとCATAの差,術後Cvaultの相関性を示す.術後CvaultとCICLサイズとATAの差は有意な相関を認め(SpearmanC’sCrankCcor-relationCcoe.cient,Cr=0.59,p<0.001),この近似式で得られた術後Cvault(μm)=660.9×(ICLサイズC.ATA)+86.6(adjustedR2=0.41)をCKS式とした2).C●臨床におけるKS式の精度KS式は現在CCASIA2に搭載されており,一般的に使用することができる.また,前述のCKS式はマニュアルでCATAを測定した結果から算出した式であるが,より検者の誤差をなくすため,最新式は自動測定のCATAを用いた式に改良してある.KS式の特徴としては,従来のCWTW/ACDを用いたサイズ計算と異なり,選択するICLサイズによって術後の予測Cvaultが表示されるため,術者の好みでレンズサイズを選択できることである(図3).筆者はやや小さめのサイズ(術後Cvaultが小さめ)を好むため,術後予想Cvault500Cμmを少し下回るレンズを選択するが,術後Cvaultは良好である.課題としては選択するCICLサイズがC12.1Cmmでは予想CvaultよりC1044あたらしい眼科Vol.36,No.8,2019術後Cvaultがやや小さめに,13.2Cmm以上のレンズでは予想よりやや大きめになる傾向がみられることで,一定の傾向がすでに判明しているため今後改良予定である.C●おわりにCASIA2には本稿で紹介したCKS式のほかに,中村らが考案したCN-K式3)も搭載されている(図3).N-K式は強膜岬間距離をメルクマールの一つとして採用しており,KS式と式の構成は異なる.どちらがよいかは不明であるが,CASIA2で前眼部撮像することで自動的に二つの式が表示されるため,両方の結果を吟味し,ICLサイズ選択を行うのがよいだろう.文献1)PackerM:Meta-analysisandreview:e.ectiveness,safe-ty,CandCcentralCportCdesignCofCtheCintraocularCcollamerClens.ClinOphthalmol10:1059-1077,C20162)IgarashiA,ShimizuK,KatoSetal:PredictabilityofthevaultCafterCposteriorCchamberCphakicCintraocularClensCimplantationCusingCanteriorCsegmentCopticalCcoherenceCtomography.JCataractRefractSurg.Inpress3)NakamuraT,IsogaiN,KojimaTetal:ImplantableColla-merCLensCsizingCmethodCbasedConCswept-sourceCanteriorCsegmentopticalcoherencetomography.AmJOphthalmolC187:99-107,C2018(74)