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総説:日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」 糖尿病網膜症における脈絡膜厚と糖尿病治療の関与

2019年5月31日 金曜日

あたらしい眼科36(5):647~652,2019c日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」糖尿病網膜症における脈絡膜厚と糖尿病治療の関与CorrelationbetweenChoroidalThicknessandSystemicTreatmentsforDiabetesMellitusinDiabeticRetinopathy加瀬諭*はじめに糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)は,わが国および欧米においても依然成人の失明の主要な原因である1).DRの病態は,網膜血管壁の構造変化と血液網膜関門の破壊による眼循環障害である2,3).他方,糖尿病(diabetesmellitus:DM)における脈絡膜循環障害は,DRの病態に関与する可能性が示唆されている4~6).近年,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)の進歩によって脈絡膜を非侵襲的かつ定量的に評価することが可能となり,DM眼における脈絡膜の解剖学的変化が次々と報告されている.しかしながら,DRにおける脈絡膜厚の解析結果は,施設により脈絡膜厚の減少あるいは増加を示し,依然見解の一致はみられていない7).また,脈絡膜厚は年齢,眼軸長,日内変動8,9),肥満10),血糖血圧治療11),DR治療12,13)によっても変化することが報告されている.いうまでもなくDRはCDM合併症の一病態であり,全身の循環動態の影響を強く受ける.同様に,全身状態が脈絡膜厚にも影響を及ぼし,その変化は多因子に起因する可能性がある.脈絡膜厚の肥厚あるいは菲薄化に関与する組織学的因子として,一つには脈絡膜血管が重要である.脈絡膜血管層は,脈絡毛細管板,中血管層(Sattler’slayer),大血管層(Haller’slayer)のC3層に分けられる.近年,CenhanceddepthCimaging(EDI)-OCT画像を用いて脈絡膜血管の形態学的特徴をもとに,層別に脈絡膜厚を測定する方法が報告され14),DR眼においても脈絡膜層別解析がなされてきた15).しかしながら,筆者らの知る限りではCDMの治療状況と脈絡膜厚の関連,併せてCDR未治療眼の脈絡膜各層において,DM治療によりいずれの層が形態学的影響を受けるのかを明らかにした報告はない.本稿では,筆者らの行ってきたCDM患者における脈絡膜厚解析の成果を報告し,後半にその変化の機序について考察する.CI糖尿病患者における研究成果1.糖尿病と中心窩下脈絡膜厚の関連はじめに筆者らは中心窩下脈絡膜厚に着目した研究を行った.手稲渓仁会病院眼科を受診したCDM患者C86例172眼(男性C55例,女性C31例),および年齢を調整した正常対照C43例C57眼(男性C15例,女性C28例)を対象とした.両群の性差,眼軸長に有意差はなかった.全例でCEDI-OCTにて,解剖学的なCfovealbulgeの位置を参考に中心窩下脈絡膜厚(centralCchoroidalthickness:CCT)を,キャリパーを使用してマニュアルにて計測した.DM患者はCDM治療状況にしたがってC2群に分けた.本研究開始時まで経口血糖降下薬あるいはインスリン治療を継続的に受けていた症例はCDM治療群,それらの治療を受けてない症例,運動療法,食事療法のみの症例はCDM無治療群として分類した.内訳はCDM治療群C61例(平均CHbA1c,7.6±1.3%,平均罹病期間C9.5±8.5年),DM未治療群C25例(DM治療中断C9例:平均HbA1c,11.3±2.9%,平均罹病期間C9.9±5.4年,完全なCDM未治療C16例:平均CHbA1c,9.5±1.9%)であった.HbA1c値はCDM未治療群に比較しCDM治療群において有意に低値を示した(p<0.05).さらに,このC2群を国際重症度分類に基づくCDRの病期に応じてC4群ずつ*SatoruKase:北海道大学大学院医学研究院眼科学教室〔別刷請求先〕加瀬諭:〒060-8638北海道札幌市北区北C14条C5丁目北海道大学大学院医学研究院眼科学教室(77)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019NPDR治療群NPDR未治療群PDR治療群PDR未治療群図1代表例の糖尿病網膜症における中心窩下脈絡膜厚非増殖糖尿病網膜症(NPDR)と増殖糖尿病網膜症(PDR)を各C2例示す.DM治療群では,NPDRは正常に近いCCTを示し(262Cμm),未治療群ではCCCTは菲薄化の傾向を示す(152Cμm).DM未治療群のCPDRのCCCTは(276μm),治療群CPDR(224Cμm)よりもCCCTは肥厚する傾向を示す.に細分類した.すなわち,網膜症なし(nonDR:NDR),軽症/中等症非増殖糖尿病網膜症(mild/moderatenon-proliferativePDR:mNPDR),重症非増殖糖尿病網膜症(severeNPDR:sNPDR),増殖糖尿病網膜症(PDR)のC4群である.DM治療群とCDM無治療群の合計ではNDR57眼,mNPDR64眼,sNPDR19眼,PDR23眼であった.以上の計C8群に分類し,対照群と比較検討した.除外基準は,レーザー網膜光凝固,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬硝子体注射,トリアムシノロンアセトニド局所注射,硝子体切除術などのあらゆる眼部治療歴,等価球面度数において.5D以上の近視,円柱度数においてC3D以上の乱視,26Cmm以上の眼軸長,ほかの眼底疾患を有するものとした.はじめに,全例を対象にCDMの罹患の有無とCCCTの関連を検討した.DM群では平均CCCTがC259Cμm,正常ではC275Cμmで,DM群でやや菲薄化していることが示唆されたが両群に有意差はなかった.次に,DRの病期とCCCTの関連も検討したが,有意差はなかった.次に筆者らは,DR患者をCDM治療の有無およびCDR重症度別に細分類したC8群で,CCTとの関連を検討した.図1に代表症例のCCCTを示す.興味深いことに,DM未治療のCmNPDRでCCCTが有意に減少していた(図1)16).一方,DM治療群では,いずれもCCCTに有意差はなかった.加えてCDM治療状況と中心窩網膜厚との関連も検討した.CCTにおいて有意差のみられたmNPDR群において,DM治療群と未治療群の中心窩網膜厚は各々平均C249Cμm,244Cμmであり,両群に有意差はなかった.2.糖尿病と脈絡膜層厚の関連Kruskal-Wallistest,p<0.01Steel-Dwasstest,p<0.05次に,筆者らは脈絡膜層別の変化に着目した.2013Ca**年C12月~2016年C12月に手稲渓仁会病院眼科で,EDI-500CCT全層厚(mm)OCTを施行可能であったCDM患者C134例C268眼(男性40090例,女性C44例,平均年齢C61.6C±12.2歳)と,年齢お300よび眼軸長をマッチングさせた正常者C72例C91眼(男性29例,女性C43例,平均年齢C60.2C±14.1歳)を対象とし200100た.DM治療群は,NDR,mNPDR,sNPDR,PDRに細分類し,それぞれC50,89,18,19眼,DM未治療もNDR,mNPDR,sNPDR,PDRで,それぞれC24,14,22,32眼であった.脈絡膜断層画像は,以前の報告に詳細に記載されているように14),スペクトラルドメインOCT(CirrusCHDOCT,CarlCZeissMeditec)のCEDI-OCTにより得られた画像で解析した.上述の脈絡膜血0controlNDRmNPDRsNPDRPDRNDRmNPDRsNPDRPDRDM治療群DM未治療群Kruskal-Wallistest,p<0.01Steel-Dwasstest,p<0.05b**400CCT外層厚(mm)管のC3層構造は,網膜と比較してその境界は明確ではない.脈絡膜全層,内層(脈絡毛細管板+中血管層),および外層(大血管層)に関するCCCTデータは,前述のように14),中心窩を通るCEDI-OCT水平スキャンを用い300200100て手動で収集した.結果として,対照群と比較してCDM未治療群のCmNPDR眼において,脈絡膜全層厚は有意に減少していた(p<0.05,図2).脈絡膜内層厚についてはCDM治療群,DM未治療群とも,対照群と比較して有意差はなかった.脈絡膜外層厚について対照群と比較して,DM未治療群のCmNPDR眼では有意に減少し(p<0.05,図2),DM未治療群のCsNPDR眼で有意に増加していた(p<0.05,図2).CII糖尿病における脈絡膜厚変化の病態生理本研究では,対照群に比較し,DM未治療のCmNPDR群で脈絡膜外層厚が有意に減少し,DM未治療のsNPDR群で脈絡膜外層厚が有意に増加することを示した17).筆者らはこれまで,DM未治療のCmNPDRでは脈絡膜全層厚は有意に減少し,PDRでは脈絡膜全層厚は増加する傾向を示した16).このことからCCCTの変化は,脈絡膜外層厚の変化を反映していた可能性がある.しかしながら,DM治療群のCCCTは健常対照群と比較して有意な変化がなかったこと,HbA1c値はCDM未治療群に比較しCDM治療群において有意に低値を示したことから,糖尿病脈絡膜症に関連するCCCTの変化に影響を及ぼす因子には,DRの重症度と血糖コントロールが含まれることが示唆された.DRの重症度とCCCTとの関係は依然として見解が一(79)0controlNDRmNPDRsNPDRPDRNDRmNPDRsNPDRPDRDM治療群DM未治療群図2糖尿病網膜症における脈絡膜層別解析結果脈絡膜全層厚では初期糖尿病網膜症で有意に菲薄化し,進行期網膜症で有意に肥厚していた(Ca).脈絡膜外層厚では対照群と比較して,DM未治療群のCmNPDR眼では有意に減少し(p<0.05),DM未治療群のCsNPDR眼で有意に増加していた(p<0.05)(b).NDR:網膜症なし,mNPDR:軽症/中等症非増殖糖尿病網膜症,sNPDR:重症非増殖糖尿病網膜症,PDR:増殖糖尿病網膜症.致していない.多くの著者らは,DM患者のCCCTがmNPDR,PDRおよび糖尿病黄斑浮腫で有意に菲薄化していることを報告している15,18,19).これらは,レーザードップラ血流計およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影で実証された,DRの重症化に伴う脈絡膜の血流速度低下を支持する結果に矛盾しない6,20).一方,Kimらは,DR眼においてはCCCTが肥厚する可能性があることを報告した21).筆者らの研究では,DMの治療状況によらずデータを収集した際には,DRの重症度とCCTには有意な相関がなかった.しかしながら,DM患者をCDM治療群と未治療群に細分したところ,未治療群にのみCCCTの有意な変化がみられた16).これらの結果は,慢性的な高血糖が脈絡膜循環系の障害を促進すあたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C649る因子となり得ることを示唆している.加えて,DRのCCTは多くの眼局所因子によって影響を受けることも知られている.既報では,汎網膜光凝固12,22),抗CVEGF療法13),硝子体内トリアムシノロンアセトニド23)は,CCTに影響を与えることが報告された.これらの影響を排除するために,本研究ではいかなる眼科的治療歴もないCDM眼のみを評価した.前述のように,DM患者には脈絡膜の変化が存在することは明らかであるが,臨床研究の結果は不整合である.さらに筆者らが知る限り,DR未治療眼の脈絡膜各層のうちいずれの層が形態学的影響を受けるのかについての報告はない.Adhiらは,DR眼における脈絡膜の形態学的特徴と血管層解析を行い,眼科治療歴を有するPDRおよび糖尿病黄斑浮腫眼において脈絡膜内層厚が有意に減少することを報告した15).剖検眼を用いた組織学的研究では,DR患者における脈絡膜血管の基底膜の肥厚4),および脈絡毛細管板の脱落5)が明らかになった.これらの変化はCDR眼における脈絡膜の形態学的変化を反映している可能性がある.しかしながら今回の結果は,DM未治療群において脈絡膜内層厚ではなく,外層厚に有意な変化が示された.Adhiらの報告との相違は,一つには脈絡膜厚測定時におけるCDR治療歴の有無が関与している可能性がある.また,DM患者群の分類方法の相違も脈絡膜層別厚の結果に影響を及ぼしたかもしれない.Adhiらは,患者をC3群(黄斑浮腫のないCNPDR,黄斑浮腫のないCPDR,DME)に分類したのに対し15),筆者らは,DRの重症度分類をNDR,mNPDR,sNPDR,PDRのC4群に分類した.CIII糖尿病網膜症における脈絡膜厚変化の病理学的機序本研究では,DM未治療群においてCDR早期で脈絡膜外層厚が菲薄化することが明らかになった.脈絡膜は豊富なニューロンによる神経支配を有する血管構造を有しており,おもに自律神経系の制御下にある.Zenginらは,ニコチン経口摂取後に有意に脈絡膜厚が減少することを見出し,それはニコチンの血管収縮作用による脈絡膜血流減少の結果であると報告した24).Sariらは,脈絡膜の交感神経支配はおもにCa1-アドレナリン受容体を介し,当該拮抗薬の投与により脈絡膜厚が増加することを報告した25).これらの研究により,自律神経系の関与が脈絡膜厚の変化に関与することが示唆された.したがって,本研究で判明した脈絡膜外層厚の菲薄化は,一つには自律神経系の調節が関与した可能性がある.今後,DRに伴う脈絡膜における自律神経系の調節機構を解明する必要がある.さらに本研究において,DM未治療群ではCDR早期とは対照的にCsNPDRで脈絡膜外層厚が肥厚することも明らかになった.この機序として筆者らは,DRにおけるVEGFの増加が,脈絡膜血管拡張,脈絡膜血流上昇,あるいは血管透過性亢進をもたらすことで,脈絡膜外層厚を増加させたと仮定した.これらの変化が,脈絡膜間質あるいは血管領域のどちらに依存するのかはC2階調化法によって評価できる可能性がある26).Guptaらは,同手法を用いてCDRで脈絡膜がより肥厚し,それがおもに血管領域の変化によるものであることを報告した27).ただし,異なるCDR重症度群では有意差はなく,また当該研究ではCsNPDR群が欠如していたため,本研究結果を裏付ける理由とはならなかった.今後の詳細なC2階調化法によるCDR重症度別の解析が必要である.CIV糖尿病脈絡膜厚研究の限界一つには上述したように,糖尿病網膜症の脈絡膜厚はさまざまな全身的因子,局所因子で変化する.したがって,標的とする候補因子をなるべく少数に絞り,ほかの要因を可能な限り除去する試みが必要である.たとえば,筆者らの研究では,全身の糖尿病治療歴と脈絡膜厚の関連を検討する場合に,treatmentnaive(本研究ではいかなる眼科的治療歴もないCDM眼)の糖尿病網膜症症例を収集し,検討を行った.実際は,大学病院クラスの集団では,すでに何らかの眼科的な治療が介入されている症例が多く,統計誤差を解消するためのCtreatmentnaiveな網膜症について,十分な症例数を収集することは困難かもしれない.次の限界として,糖尿病網膜症の重症度との相関を検討する場合に,各群にほぼ同数の症例数を収集することはきわめて困難である点があげられる.三つ目は,脈絡膜層別解析では近年,網膜下液がある症例では測定誤差が生じる危険があるとの報告がある28).現状では,このような症例を除外すべきであろう.四つ目は,症例によっては実臨床において網脈絡膜の評価としてCEDI-OCTあるいはCswept-sourceCOCT(SS-OCT)による異なる測定法が行われている場合がある.EDI-OCTとCSS-OCTの脈絡膜厚の測定結果の誤差について,さらなる検証が必要である.V今後の糖尿病における脈絡膜厚解析Murakamiらは,SS-OCTを用いて脈絡膜血管病変の徴候とCDRとの関連を評価した.その結果,DM患者のHaller層では脈絡膜血管の狭窄または脈絡膜血管の断端(stumpofchoroidalvessels)を有する眼でCCCTが肥厚していることを報告した29).組織学的解析では,DRの脈絡膜血管では肥厚した基底膜,動脈硬化病変を示しており,脈絡膜動脈ではときには管腔の閉塞を伴っていた5).これらの脈絡膜病変は,脈絡膜血管および脈絡膜間質の病変が主として脈絡膜外層厚へ影響する可能性があることを示している.加えて,今後の課題の一つとして,treatmentnaiveな症例において,糖尿病の全身治療の開始後にCCCT,脈絡膜外層がいかに変化するか,時間軸を基盤に変化を追うことも重要な検討である.併せて,近年糖尿病眼の脈絡膜外層の評価として,OCTのCenface画像を用いた検討も試みられている30).このような解析が,糖尿病脈絡膜症の病態生理の解明に重要な検討となるであろう.おわりにDM患者の脈絡膜外層厚はCDR早期に菲薄し,進行期に肥厚する二峰性の変化を示した.DRにおける脈絡膜外層厚の測定は,無治療のCDM患者における網膜症の重症度の評価に有用である可能性がある.謝辞:本研究に際しては,データの収集・解析において,手稲渓仁会病院眼科・視能訓練士の遠藤弘毅氏に多大なる協力を賜りました.ここに深謝いたします.文献1)KempenCJH,CO’ColmainCBJ,CLeskeCMCCetal:TheCpreva-lenceCofCdiabeticCretinopathyCamongCadultsCinCtheCUnitedCStates.ArchOphthalmolC122:552-563,C20042)Cunha-VazCJ,CFariaCdeCAbreuCJR,CCamposAJ:EarlyCbreakdownCofCtheCblood-retinalCbarrierCinCdiabetes.CBrJOphthalmolC59:649-656,C19753)CiullaCTA,CHarrisCA,CLatkanyCPCetal:OcularCperfusionCabnormalitiesCinCdiabetes.CActaCOphthalmolCScandC80:C468-477,C20024)HidayatCAA,CFineBS:DiabeticCchoroidopathy.CLightCandCelectronmicroscopicobservationsofsevencases.Ophthal-mologyC92:512-522,C19855)CaoCJ,CMcLeodCS,CMergesCCACetal:ChoriocapillarisCdegenerationCandCrelatedCpathologicCchangesCinChumanCdiabeticeyes.ArchOphthalmolC116:589-597,C19986)ShiragamiCC,CShiragaCF,CMatsuoCTCetal:RiskCfactorsCforCdiabeticCchoroidopathyCinCpatientsCwithCdiabeticCretinopa-thy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC240:436-442,C20027)MelanciaCD,CVicenteCA,CCunhaCJPCatal:DiabeticCcho-roidopathy:aCreviewCofCtheCcurrentCliterature.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC254:1453-1461,C20168)MrejenCS,CSpaideRF:OpticalCcoherencetomography:Cimagingofthechoroidandbeyond.SurvOphthalmolC58:C387-429,C20139)SezerCT,CAltinisikCM,CKoytakCIACetal:TheCchoroidCandCopticalCcoherenceCtomography.CTurkCJCOphthalmolC46:C30-37,C201610)YumusakE,OrnekK,DurmazSAetal:Choroidalthick-nessinobesewomen.BMCOphthalmolC16:48,C201611)JoCY,CIkunoCY,CIwamotoCRCetal:ChoroidalCthicknessCchangesCafterCdiabetesCtypeC2CandCbloodCpressureCcontrolCinahospitalizedsituation.RetinaC34:1190-1198,C201412)ZhangCZ,CMengCX,CWuCZCetal:ChangesCinCchoroidalCthicknessCafterCpanretinalCphotocoagulationCforCdiabeticretinopathy:aC12-weekClongitudinalCstudy.CInvestCOph-thalmolVisSciC56:2631-2638,C201513)RayessCN,CRahimyCE,CYingCGSCatal:BaselineCchoroidalCthicknessCasCaCpredictorCforCresponseCtoCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCinCdiabeticCmacularCedema.AmJOphthalmolC159:85-91,C201514)BranchiniCLA,CAdhiCM,CRegatieriCCVCetal:AnalysisCofCchoroidalmorphologicfeaturesandvasculatureinhealthyeyesusingspectral-domainopticalcoherencetomography.OphthalmologyC120:1901-1908,C201315)AdhiCM,CBrewerCE,CWaheedCNKCetal:AnalysisCofCmor-phologicalCfeaturesCandCvascularClayersCofCchoroidCinCdia-beticretinopathyusingspectral-domainopticalcoherencetomography.JAMAOphthalmolC131:1267-1274,C201316)KaseCS,CEndoCH,CYokoiCMCetal:ChoroidalCthicknessCinCdiabeticCretinopathyCinCrelationCtoClong-termCsystemicCtreatmentsCforCdiabetesCmellitus.CEurCJCOphthalmolC26:C158-162,C201617)EndoCH,CKaseCS,CTakahashiCMCetal:AlterationCofClayerCthicknessCinCtheCchoroidCofCdiabeticCpatients.CClinCExpCOphthalmolC46:926-933,C201818)RegatieriCCV,CBranchiniCL,CCarmodyCJCetal:ChoroidalCthicknessCinCpatientsCw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眼内レンズ:初心者のための新しい核分割手技:Hole-assisted-Chop法

2019年5月31日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋390.初心者のための新しい核分割手技:宮本奈緒美秋元正行大阪赤十字病院眼科Hole-assisted-Chop法水晶体超音波乳化吸引術において核分割は重要なステップである.Phaco-chop法はもっとも効率のよい核分割法であるが,経験の浅い術者にとっては習得が困難である.今回,筆者らはCphaco-chop法導入前の初心者でも比較的導入しやすい新たな水晶体核分割法(Hole-assisted-chop法)を考案した.●核分割の歴史と本術式1991年,Gimbelらが開発した十字に溝を掘って核を分割するCdivideandconquer法1)は,溝の深さを確認しながら実施でき習得しやすいため,現在でも幅広い術者に受け入れられている.一方で,溝を掘る手技は超音波時間が比較的長く,超音波効率が悪い.1993年に永原らの発案したCphaco-chop法2)は手術時間が比較的短く,現在でも効率のよい核分割法として知られている3,4).永原らの発案したものは水晶体核を二次元的に分割するhorizontal法として知られているが,のちに硬めの核に有効な奥行きを意識するCvertical法などさまざまな変法が開発・解釈されている.しかし,phaco-chop法を習得するには,深さがとらえにくく,左手で前.切開縁を割いてしまうなど,手術初心者が陥りやすい落し穴がある.Divideandconquer法からCphaco-chop法へ移行するため,第C2,3分割のみ部分的にCphaco-chopするなど,段階的に習得する方法がもっぱら行われている.筆者らはCdivideCandconquer法からCphaco-chop法へ移行するためには,おもに左手フックの動作が異なるため,新しい動作の習得が必要であると考え,今回新たな水晶体核分割法「hole-assisted-chop法」の発案に至った.C●手術方法先にChydrodissectionをしっかり行い,超音波チップで表面の皮質だけでなく赤道部の皮質もある程度除去しておき,水晶体核を.内で滑らかに回転できるようにしておく.やや弱い条件の超音波を用いて水晶体の前.切開縁内側C180°対側に超音波チップでC2個の縦穴を作製する(図1).6時方向に設置した穴から深くCchopperを挿入し,12時方向の穴から超音波チップを挿入して,通常のphaco-chop法に準じて第C1分割を施行する.2個の縦穴を新たな赤道部と見立てることで,前.切開縁を傷つけることなく比較的容易に安全に核分割を行うことができる.最初は後.まで穿孔しないように,やや弱い超音波設定で始めて,慣れてきたら徐々に通常の条件に近づけていく.上記方法にて,phaco-chop法を習得する前の白内障手術初心者の専攻医C3人を対象として本法を学習させた.図1Hole.assisted.Chop法の実際やや弱い条件の超音波(初めは縦振動C15程度,慣れてくればC40程度で実施)を用いて水晶体の前.切開縁付近C180°対側にC2個の縦穴()を作製する.2つの穴を水晶体の新しい赤道部と見立てることで,挟みこみ,分割が容易となる.(87)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C6570910-1810/19/\100/頁/JCOPY表1専攻医Aにおける各方法の有効性の検討第C1分割法(n=7)超音波時間CDE比溝堀り法C56.14C6.63Hole-assisted-chop法C47.71C6.70Phaco-chop法C40.80C5.61CDE:cumulativedissipatedenergy図2縦穴を4方向に作製する場合2個の縦穴()作製に加えて,もうC2個の縦穴()を水晶体の前.切開縁付近に作製する.核硬化の進んだ症例(右図)でも,縦穴を全部でC4方向に作製することで分割を効果的にすることができた.●術後結果専攻医C3人に本法を学習させたのちに,通常のCpha-co-chop法を導入したところ,3人ともCphaco-chop法を導入する際も抵抗なく移行することができた.また,専攻医CAにおいてCphaco-chop法に移行する前に第C1分割を溝掘り法と本法で行った症例群,また本法での学習を経たのちにすべての分割において通常のphaco-chop法に移行した症例群とで(第2,3分割はどの群も通常のCphaco-chop法を行った),それぞれ超音波時間とCcumulativeCdissipatedenergy(CDE)比を後方視的に検討したが,3群間において優位な差は認めなかった(表1).今後,術者や症例数を増やし,hole-assistedchop法の有効性に関してさらなる検討を進めていきたい.C●おわりにHole-assisted-chop法は,phaco-chop法の習得を容易にする可能性があるといえる.また,核硬化がきつく,通常のCphaco-chop法では処理が困難な場合でも,溝を掘るかわりに前.切開縁付近に縦穴をC4方向に作製することで分割を効果的にすることができた(図2).このように本法は専攻医だけでなく,上級医にも応用できる有効な術式であると考える.文献1)GimbelHV:DivideCandCconquerphacomulsi.cation:CdevelopmentCandCvariations.CJCCatarctCRefractCSurgC17:C281-291,C19912)NagaharaK:C“PhacoCChop,”.lmCpresentedCatCtheC3rdCAmerican-InternationalCCongressConCCatarct,CIOLCandCRefractiveSurgery,Seatle,Washington,USA,June19933)DeBryCP,COlsonCRJ,CCrandallAS:CompariosnCofCenergyCrequiredCforCphaco-chopCandCdivideCandCconquerCphacoemulsi.cation.CJCCatarctCRefractCSurgC24:689-692,C19924)WongCT,CHingoraniCM,CLeeV:Phacoemulsi.cationCtimeCandCpowerCrequirementsCinCphacoCchopCandCdivideCandCconquerCnucleofractisCtechniques.CJCCatarctCRefractCSurgC26:1374-1378,C2000

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの酸素透過性

2019年5月31日 金曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一55.コンタクトレンズの酸素透過性佐野研二あすみが丘佐野眼科●コンタクトレンズ用材料の気体透過性コンタクトレンズ(CL)用材料が,ガス透過性,とくに酸素透過性をそのもっとも大事な機能として必要としていることは今さら言うまでもないだろう.かつては,低酸素透過性のCLを長時間装用したり,就寝時にはずすのを忘れたりすると,角膜は容易に浮腫と角膜上皮障害,それに伴う角膜潰瘍,感染症を起こしたものである.つまり,CLの酸素透過性が悪いと角膜への十分な酸素供給が阻害され,その正常な生理機能が保てなくなるのである.さらに,もっと正確に言うならば,大気中の酸素を吸収して二酸化炭素を放出しながら生命を維持する動物のガス交換が必要な部分に何らかのデバイスを装着する場合,生体の正常機能を保つためには,酸素はもとより二酸化炭素や,窒素の透過性も適度に確保されなければならない.しかしながら,実際には,これらの気体透過性能は,ガス透過性高分子材料によってまちまちである.CL用材料の高分子学的デザインによって,それらを適正なバランスにもっていくことも不可能ではないだろうが,臨床的にはそこまで精密な気体選択性も要求されず,もっとも重要な酸素の透過性能の向上をもって,CL用材料の性能を推しはかっているのが現状である.●CLの酸素透過係数(Dk値)CL用材料の酸素透過性能は,いわゆる酸素透過係数で表され,酸素の材料への溶解しやすさの指標である溶解度係数(mlO2/(ml×mmHg)と,材料の中の酸素の移動のしやすさの指標である拡散係数(cm2/sec)の積で表される.いわゆるDk値と呼ばれるものであり,単位は(cm2/sec)・(mlO2/(ml×mmHg))となる.一般にCL用材料内(とくにハードCL用材料内)で,酸素分子は熱運動をしながら移動していくため,非含水性材料においては,酸素分子に比べ熱運動の小さい高分子の側鎖の長さ(間隙の大きさ)を大きくすることや,回転エネルギーの小さなシロキサン結合をもつシリコーン(Si)を導入し,Siの回りで側鎖を自由に回転させることにより,酸素の拡散係数を向上させている(図1).また,表面エネルギーが小さいフッ素を含有させること(85)により,材料の酸素溶解度係数を上げる手法もよく取られている1)(図2).含水性材料(いわゆるソフトCL用材料)においては,材料内の水分,とくに高分子側鎖とは水素結合していない「自由水」に酸素分子が溶解して運ばれると考えられており,これまで材料の高含水化が図られてきた(図3).最近では,非含水性材料(ハードCL)と含水性材料(ソフトCL)のアドバンテージを併せもったシリコーンハイドロゲル材料によるCLが台頭してきている.●CL用材料の酸素透過係数の測定方法平成17年4月1日に出された厚生労働省医薬食品局長通知によると,非含水性CL用材料の酸素透過係数は,レンズまたはレンズと同一の原材料の平板を用いて,電極法またはクーロメトリー法によって測定するとある.また,含水性CL用材料の酸素透過係数は,飽和膨潤させたレンズまたはレンズと同一の原材料の平板を用いて,電極法によって測定するとある.それぞれ,報告値に対しての再現性の許容差は±20%以内でなければならないこととなっている.筆者も東京医科歯科大学医用器材研究所(現・生体材料工学研究所)において電極法による高分子材料の酸素透過係数を測定した経験があるが,サンプルの微妙な厚さの違い,室温などの変化などによって測定値が相当ばらつく.また,被験サンプルを気体が通るとき,その前面と後面には大きな抵抗があるため,サンプルの厚さによって酸素の透過性が変わってくる.正確な測定のためには測定者の熟練と,いくつかの厚さの異なるサンプルを測定し,測定値を補正することが重要となってくる.●CLの酸素透過率酸素透過率とは,酸素透過係数=Dk値をレンズの厚みで割ったもので,Dk/t値ともよばれ,その単位はcm・ml/cm3・sec・mmHgで表される.臨床上,CLの酸素透過性能を比較する場合は酸素透過率を用いることが多い.同じDk値をもった材料からなるCLでも,臨床上は薄いレンズの方が角膜表面により多くの酸素分子を送り込むことができ,より安全と考えられるからであたらしい眼科Vol.36,No.5,20196550910-1810/19/\100/頁/JCOPYSiOOSiDk値×10-11(cm2/sec)(mlO2/ml×mmHg)Si図1シリコーン系材料シリコーン系ポリマーでは,Siのまわりの側鎖の回転エネルギーがきわめて低く,容易に回転する側鎖の間隙を酸素分子が効率よく移動する.7060504030201000102030405060708090100含水率(%)図3含水性ソフトコンタクトレンズにおける含水率と酸素透過係数の関係ハイドロゲル材料の含水率が上がると酸素透過係数も上昇する.ある.しかしながら,多くの酸素透過率の値はレンズ中央部の厚みで計算されたものであり,たとえば強度近視用のレンズなど周辺部が厚くなっている場合などでは実態に合わないといった議論がある.今後,Dk/t値の屈折度数,すなわちレンズデザインを考慮した補正方法に対するディスカッションが必要である.●CL用材料の酸素透過性と水濡れ性酸素透過性を高めるため,シリコーン系材料や含フッF広い間隙FFCFFCFCH図2フッ素系材料フッ素原子はあらゆる元素のなかでもっとも電気陰性度が高く,分極率が小さいため,これを用いた高分子の表面エネルギーはきわめて低く,側鎖間の感激は広くなり,酸素溶解係数が高くなる.素材料の導入が図られる一方,両者の強い撥水性からCL表面の水濡れ性が低下するというジレンマも生じる.高酸素透過性高分子をCLとして使用するためには,レンズ表面に親水性モノマーを重合させたり2),生体適合性が高く親水性のMCPポリマー3,4)をレンズソリューションに含有させたり,材料の一部として重合させたりする試みが行われている.こうしたCLの親水化技術の進歩が,さらに新しい高酸素透過性高分子のCL用材料としての可能性を広げつつある.文献1)佐野研二,所敬,鈴木禎ほか:フッ素系非含水性ソフトコンタクトレンズ用素材の研究.日コレ誌36:196-200,19942)佐野研二,勝山晴美,小林里津子ほか:親水性モノマーを表面にグラフト重合させた新しい酸素透過性ハードコンタクトレンズ.あたらしい眼科16:851-853,19993)門磨義則,中林宣男,増原英一ほか:ホスホリルコリン基を有するポリマーの合成と溶血性.高分子論文集35:423-427,19784)石原一彦:生体構造に啓発されたポリマーバイオマテリアルの創製.生体材料18:33-40,2000PAS117

写真:角膜浮腫を伴う水晶体起因性ぶどう膜炎

2019年5月31日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦420.角膜浮腫を伴う水晶体起因性加藤久美子三重大学大学院医学系研究科ぶどう膜炎神経感覚医学講座眼科学図2図1のシェーマ①残留水晶体②角膜下方を中心とした浮腫図1前眼部所見角膜下方を中心とした角膜浮腫があり,前房内に残留水晶体を認めた.図3図1の症例の細隙灯顕微鏡所見図4初診から4カ月後の角膜内皮顕微鏡検査の結果残留水晶体を認めた.角膜内皮細胞密度はC700/mmC2と著しく低下していた.(83)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C6530910-1810/19/\100/頁/JCOPY水晶体起因性ぶどう膜炎は,水晶体蛋白に対する自己免疫反応により炎症が惹起されることで発症する1).手術または外傷により水晶体.が損傷することにより発症することが多い.細隙灯顕微鏡検査では,前房内炎症のみを呈する軽症なものから,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩後癒着,前房蓄膿,角膜浮腫を呈するものなど多彩な臨床像がみられる2).Huiらによれば,細隙灯顕微鏡検査だけでは必ずしも残留水晶体を視認することはできず,37.5%の患者においては隅角鏡を用いた診察が必要であった3).また,この報告では,白内障手術後に残留水晶体によるぶどう膜炎が発症するまでの平均期間はC38日であったが3),術後C15年が経過して診断された症例報告もある4).わが国の成書では,この疾患における角膜浮腫に関する記述は少ないが,Huiらの報告では,約C7割の患者で角膜浮腫が認められたという3).角膜浮腫を呈した症例の中には,著しく角膜内皮が減少した症例や,角膜移植を必要とした症例が含まれていた3,4).本疾患の初期治療はステロイド局所投与による消炎であるが,残留した核片が大きい場合や,炎症が強い場合には速やかな外科的摘出が必要となる.また,本疾患は白内障術後に発症するものであるため,術後眼内炎が鑑別すべき重大な疾患となる.残存水晶体の除去で炎症が鎮静化すれば本症である可能性が高いが,疑わしい症例では,前房水を採取し,細菌検査や細胞診,PCR(poly-merasechainreaction)法を行うのがよいだろう.症例は,2年C11カ月前に白内障手術を受けた患者である(図1,2).術後,複数回にわたり霧視が出現し,近医でぶどう膜炎と診断され,そのつどベタメタゾン点眼液を使用することで霧視は改善していた.しかしながら,今回はベタメタゾン点眼液を使用しても霧視が改善しなかったため当科紹介となった.初診時視力は(0.4),細隙灯顕微鏡検査では角膜下方を中心に角膜浮腫が認められ,前房内に水晶体の核片を認めた(図3).眼底三次元画像解析では.胞様黄斑浮腫が認められた.これまでに複数回のぶどう膜炎発作を起こしていること,ステロイド局所投与に反応しない角膜浮腫があったことから,ただちに水晶体核片を除去した.除去後,ベタメタゾン点眼とブロムフェナク点眼を併用し,角膜浮腫はC2週間で消失,.胞様黄斑浮腫は約C2カ月で消失し,視力は(1.2)となった.手術からC4カ月後の角膜内皮顕微鏡検査では,角膜内皮密度がC700/mmC2と,僚眼のC1/4にまで減少しており(図4),これは複数回にわたるぶどう膜炎発作や,核片による物理的な刺激により角膜内皮細胞が障害されたためと考えられた.角膜浮腫を伴う水晶体起因性ぶどう膜炎について紹介した.水晶体.損傷を伴わない,水晶体再建術後の残留水晶体によるぶどう膜炎はまれな合併症であり,また残留水晶体の確認は必ずしも容易ではないが,白内障手術後にぶどう膜炎を繰り返す患者をみた場合の鑑別診断として考慮すべきである.角膜浮腫を伴う症例では,水疱性角膜症に至る可能性を考慮し,角膜浮腫が強い,あるいは前眼部の炎症が遷延するような症例では,速やかな残留水晶体除去術が必要である.文献1)雑喉正泰:疾患別治療戦略と処方の実際ぶどう膜疾患水晶体起因性ぶどう膜炎.眼科薬物治療CACtoZ(根木昭編),眼科プラクティスC23,p162-163,文光堂,20082)肱岡邦明:水晶体起因性眼内炎.所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩編),p172-174,医学書院,20133)HuiCJI,CFishlerCJ,CKarpCCLCetal:RetainedCnuclearCfrag-mentsCinCtheCanteriorCchamberCafterCphacoemulsi.cationCwithCanCintactCposteriorCcapsule.COphthalmologyC113:C1949-1953,C20064)KangHM,ParkJW,ChungEJ:Aretainedlensfragmentinducedanterioruveitisandcornealedema15yearsaftercataractsurgery.KoreanJOphthalmolC25:60-62,C2011

総説:日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」 OCT angiographyにて抽出される増殖糖尿病網膜症における新生血管の特徴

2019年5月31日 金曜日

あたらしい眼科36(5):637~646,2019c日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」OCTangiographyにて描出される増殖糖尿病網膜症における新生血管の特徴CharacteristicsofRetinalNeovascularizationinProliferativeDiabeticRetinopathyImagedbyOpticalCoherenceTomographyAngiography石羽澤明弘*はじめに糖尿病網膜症において,網膜硝子体界面の新生血管の出現は増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinop-athy:PDR)の診断の決め手となる重要所見である.検眼鏡的には,新生血管は微細,もしくは比較的太い血管を含む不規則なネットワークを形成し,網膜表面に這うように,または硝子体腔に突出した異常血管組織として観察される1).しかしながら,検眼鏡的観察のみでは網膜内最小血管異常(intraretinalmicrovascularabnor-malities:IRMA)との鑑別に苦慮すること,またレーザー痕などの背景網膜の状況によって新生血管の形態的変化を十分に観察しにくいことは,一般診療においてよく経験する懸念事案である.よって実臨床では,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangiography:FA)が糖尿病網膜症の病期分類に広く用いられ,蛍光漏出の程度から新生血管の有無と活動性の判断がなされている.しかし,FAは侵襲的であり,アナフィラキシーショックなどの重篤な合併症はごくまれではあるものの,全身状態不良なケースが少なくない糖尿病患者では頻回の施行がためらわれるのが実情である.一方,今日の非侵襲的眼科検査の代表である光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,網脈絡膜,硝子体の断層画像を,短時間で簡便に得られるため,とくに糖尿病黄斑浮腫の診療においては必須の検査として広く普及している.このOCTを用いて,新生血管を含む血管線維膜の断層像(Bスキャン)を撮影し,網膜硝子体界面の特徴を報告した論文が散見される2~4).しかし,B-scan画像では血管構造そのものを描出できる訳ではないため,新生血管の構造変化を直接評価することは困難である.近年,血管組織内のOCT信号の位相変化や強度変化をもとに,血流の三次元画像を表示するOCTangiogra-phy(OCTA)と総称される技術が考案され,網脈絡膜の微小血管構造の三次元画像化が可能となってきた.筆者らはOCTAを用いて,糖尿病網膜症における代表的な網膜最小血管病変,すなわち毛細血管瘤,網膜無灌流領域,IRMAそして新生血管を鮮明に描出できることを示し,臨床上有用性であることをいち早く報告した(図1)5).とくに新生血管は蛍光漏出の影響を受けないため,その形態的特徴を明瞭に観察でき,また変化を定量的に示すことができる可能性がある.一方で,蛍光漏出所見が得られないことは,とくに新生血管の活動性の評価という点でOCTAの致命的な欠点であるという指摘もなされてきた.この問題を解決すべく,筆者らはPDRにおける新生血管の形態所見に注目し,FAでの蛍光漏出との関係性について検討した6).I方法本研究は旭川医科大学において倫理委員会の承認のもと,被験者の同意のうえで行われた横断観察研究である.新規または過去に糖尿病網膜症国際重症度分類に基づいてPDRの診断がなされ,信号強度が60以上の高画質なOCTA画像が得られた患者を対象とした.被験者には,視力,眼圧,眼底写真,OCT検査を含む眼科一般検査を施行した.また,bodymassindex(BMI),血圧,HbA1c値,糖尿病罹病期間も記録した.硝子体*AkihiroIshibazawa:旭川医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕石羽澤明弘:〒078-8510北海道旭川市緑が丘東2条1-1-1旭川医科大学眼科学教室(67)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019図1糖尿病網膜症のOCTAa:網膜表層血管網の毛細血管瘤().b:視神経乳頭近傍の網膜無灌流領域(*)と網膜内最小血管異常(▽).c:視神経乳頭上に一塊として形成された新生血管().いずれも毛細血管レベルで鮮明に異常血管が描出されている.(文献5より許可を得て改変転載)手術の既往,中等度以上の白内障や硝子体出血などの中間透光体混濁,抗血管内皮増殖因子(vascularendothe-lialgrowthfactor:VEGF)抗体の投与既往のある眼は除外した.新生血管は発生場所によって分類し,視神経乳頭上またはその辺縁から1乳頭径以内のものをneo-vascularizationatdisc(NVD),それ以外をneovascu-larizationelsewhere(NVE)と定義した.複数の新生血管がある例では,OCTAが撮影可能であった一つの新生血管のみを対象とした.未治療のPDR患者(14名)は全例でFAを行った.すでにPDRと診断されていた19名では,汎網膜光凝固術(panretinalphotocoagula-tion:PRP)が全例で施行されていた.この既治療患者のうち16名にFAを行った.OCTA画像の撮影には,RTVueXRAvanti(Optovue社)を用いた.後極部のNVEの撮影には,AngioReti-namodeで3×3mmの画角を選択し,患者固視点は固定してスキャン位置のみを動かして撮影した.NVDと視神経乳頭近傍のNVEの撮影には,AngioDiscmodeを選択し,3×3mmまたは4.5×4.5mmの画角を用いた.スキャン位置は,眼底観察において明らかな血管線維膜のある部位,またはFAにて蛍光漏出のある部位を含む領域とした.En-faceOCTA画像として新生血管を最大限に抽出し,網膜表層血管の映り込みを最小限にするため,OCTAのセグメンテーション上限は新生血管より上方の硝子体腔に,下限は内境界膜の直下に手動で調整した.新生血管の.owareaの測定には内蔵のソフトウェア(RTVue,version2015.100.0.35)を用いた.12眼においては,PRP治療前とPRP治療後(2カ月後)に同一部位の新生血管を撮影し,.owareaを定量した.統計には連続変数にMann-WhitneyUtestを用い,カテゴリ変数にはc2検定,またはFisherの正確確率検定を用いた.PRP前後の.owareaの定量値の比較には,Wilcoxonの符号順位検定を用いた.II結果本研究では,PDR患者33名(男性22名,女性11名)40眼を解析した.年齢は32~74歳,20眼が未治療PDR,残り20眼はすでにPRPが施行されていた.未治療群と既治療群において,年齢,性別,BMI,血圧,HbA1c値,糖尿病罹病期間に有意差は認められなかった.既治療眼におけるPRPからの期間は,6カ月~20年と幅があった.OCTAにおける新生血管の形態的特徴については,大きく二つの特徴的形態に分類された(図2).すなわち,新生血管の内部または辺縁に微細な異常血管が増殖した領域(exuberantvascularproliferation:EVP)があるタイプ(EVP[+]),または,剪定されたような血管のループ構造のみを認めEVPが存在しないタイプ(EVP[.])であった.未治療20眼では,FAにてNVD/NVEから著明な蛍光漏出を早期相より認め,OCTAでは19眼(95%)でEVP[+]と判定された(図3).一方,既治療20眼では13眼(65%)がEVP[+]であり,未治療群でEVP[+]と判定される例が有意に多かった(p=0.043).既治療群のうちEVP[+]の13眼では,FAにて依然として活動性のある蛍光漏出をきたし,PRPの追加が必EVP[+]EVP[-]図2OCTAで描出される新生血管の二つの特徴的形態a:未治療PDR眼のNVD.視神経乳頭上に異常血管を確認できるが()詳細な形態は不明である.b:aと同一部位のOCTA.NVDの形態が鮮明に描出され,で囲まれた部分に微細な異常血管が密に増殖したEVP領域を認める.c:PRP治療後1年が経過したPDR眼.部位に新生血管を認めるが,レーザー痕により詳細が十分観察できない.d:cと同一部位のOCTA.新生血管は剪定されたループ状のフィラメント構造をしており,EVP領域を認めない.(文献6より許可を得て改変転載)要と判断されたが,残りの7眼(35%)ではNVD/NVE(30/30)が著明な蛍光漏出をきたしたのに対し,EVPは剪定されたループ状の血管構築のみがOCTAで認め[.]のNVD/NVEでは83.3%(5/6)でわずかな蛍光られた.これらのEVP[.]の7眼では,検眼鏡的に血漏出を認めるのみであった.上記の結果より,FA早期管成分に乏しい白色の線維膜が観察され,FA早期相で相での旺盛な蛍光漏出をきたすNVD/NVEにおけるはわずかな蛍光漏出のみであった(図4).OCTAでのEVP検出感度は96.8%(30/31),特異度はFAが施行された36眼において蛍光漏出の観点から100%(5/5)であった.また,既治療眼において,EVP解析すると,NVD/NVEは全例で後期相(5分後以上)[+]眼におけるPRPからの経過年数(平均3.1年)はにて蛍光漏出を認めた.一方,早期相(造影後30秒~1EVP[.]眼(平均11.1年)に比較して有意に短かった分)については,EVP[+]のNVD/NVEでは100%(p=0.026).図3未治療PDR眼のFAとOCTAa~d:FA早期相において,旺盛な蛍光漏出をきたす活動性の高いNVD/NVEを認める().e~h:a~dの四角形破線部に対応した部位のOCTA(3×3mmまたは4.5×4.5mm画角).未治療のNVD/NVEではEVPを認める().i~l:e~hのOCTA画像における新生血管の中央を通るスライスのBスキャン.EVP[+]の12眼(未治療の8眼と,既治療だが活動性のNVD/NVEがある4眼)において,PRP(PRP追加を含む)を施行後(2カ月後)の時点で,再度FAとOCTAを撮影した.PRP後のNVD/NVEはFAでの漏出が減少し,OCTAでは剪定された構造となりEVP領域の減少を認めた(図5).また,NVD/NVEの.owareaは平均0.70mm2から,PRP後は平均0.47mm2へ有意に減少した(p=0.019).11眼においては.owareaは減少したが,1眼においてはPRP後に.owareaが増加していた(図6).症例提示:51歳,女性.PRP後にNVDの.owareaが増加した左眼の経時的変化を提示する(図7,8).初診時のFAでは明らかなNVDを認めなかったが,OCTAでは乳頭耳側辺縁にvascularsproutが確認された.3カ月後,このsproutからNVDが発育しEVP[+]であるため,PDRの診断にてPRPを開始した.その後,NVDは剪定された形状へ変化し,EVP領域の減少も認めたが,PRP終了(2カ月後)の時点でNVDはレーザーの施行されていない黄(文献6より許可を得て改変転載)斑部へ向かって進展していた.その3カ月後(図8),発生当初のNVDは比較的太い主幹血管のみを残して剪定された構造をとっていたが,黄斑近傍に進展した新生血管にはEVP領域の残存を認めた.III考按本研究において,OCTAによって描出されるPDRの新生血管は,EVPの有無により二つの形態に大別されることが明らかになった.EVP[+]の新生血管は未治療PDRのほぼ全例に認められ,FA早期相において旺盛な蛍光漏出をきたすのに対し,EVP[.]のループ状に剪定された新生血管は血管成分に乏しい白色の線維血管膜となった既治療PDRにおいて認められ,蛍光漏出も軽度であった.未熟な(幼若な)新生血管は成熟した(古い)新生血管に比して,FAにおいてより早期に旺盛な蛍光漏出をきたすことが報告されており7),実臨床でもFAの漏出の程度で活動性を判定している.したがって,上記の結果はOCTAにてEVPの有無を判定することにより,新生血管の活動性を推測できる可能性があ図4既治療PDR眼のFAとOCTAa,b:PRPを約C10年前に施行されたCPDR眼.Cc,d:a,bの部分のCOCTA.NVDはフィラメント状であり,EVPを認めない.Ce,f:FA早期相での蛍光漏出はごく軽度.(文献C6より許可を得て改変転載)FA早期OCTAaPRP前bPRP開始後2カ月図5汎網膜光凝固術(PRP)前後のNVDa:PRP開始前.FA早期相で新生血管から旺盛な蛍光漏出を認め,OCTAではCEVPを認める().b:PRP開始後2カ月.FAでは蛍光漏出が減少し,新生血管はフィラメント状に剪定されたループ構造()になっている.ることを示唆している.また,PDR眼における眼内CVEGF濃度は活動性に相関しており,PRPによって低下することは周知の事実である8,9).さらに,抗CVEGF抗体投与による新生血管からの蛍光漏出の減少や,血管径の減少も多数報告されている10,11).本研究におけるCPRP前後の検討でも,PRP後のCEVP減少とCFAでの蛍光漏出の減少は一致しており,EVPの減少は眼内CVEGF濃度の低下を予測できるかもしれない.これまでの組織学的検討から,PDRの新生血管においてCangio-.broスイッチという概念が提唱されている12,13).すなわち,抗CVEGF抗体の投与により線維血管膜において内皮系マーカーであるCCD34が減少し,(文献C6より許可を得て改変転載)一方で平滑筋のアクチンやコラーゲンなどが増加へスイッチすることが報告されている13).OCTAにおけるEVP領域は未熟性の高い発育部位に相当し,VEGF抑制の影響を強く受ける一方で,EVPのない剪定された形状の新生血管は,より線維化した増殖組織に相当すると考えられる.さらに,SpaideはCOCTAで描出される脈絡膜新生血管(choroidalneovascularizaiotn:CNV)の形態的特徴について興味深い提言をしている14).未治療のCCNVはVEGFなどのサイトカインによって増生(本研究のEVPに相当)をしているが,抗CVEGF療法によってpericyteに乏しい未熟な部分が退縮する.一方,peri-cyteが比較的豊富な血管は残存し,そこに血流が集中eb(mm2)FlowAreaofNeovascularization21.81.61.41.210.80.60.40.20図6PRP前後でのNVD/NVEの.owareaを定量a,b:PRP前(Ca)のCNVEのC.owareaはC1.82CmmC2であったが,PRP後(Cb)にはC0.95CmmC2へ減少した.c,d:PRP前(Cc)のCNVDのC.owareaはC1.89CmmC2.PRP後(Cd)にはC0.84CmmC2へ減少した.e:PRP前後を検討したC12眼中,11眼でC.owareaはCPRP後に減少したが,1眼で増加を認めた().(文献C6より許可を得て改変転載)cdAfter図7PRP後に.owareaが増加した1眼のNVDの臨床経過a:51歳,女性.左眼(初診時)の眼底写真.Cb:初診時のCFA早期相.明らかな新生血管は認められない.Cc:初診時,視神経乳頭下方のCOCTA(aの部).Vascularsproutを認めている().d:6週間後CNVDが発育してきた.Ce:初診からC3カ月後,二つのCsproutがつながり,EVP[+]のCNVDとなった.この時点でCPRPを下方から反時計回りに開始した.Cf,g:2~4週間でCNVDは剪定され,EVPが減少してきた().h~j:PRP終了後~2カ月後,NVDは黄斑へ向かって進展していった().(文献C6より許可を得て改変転載)図8図7の症例のPRP終了後3カ月のモンタージュOCTAa:眼底写真.白色の増殖膜が視神経乳頭から黄斑にかけて残存している.Cb:aの矢印部位のCOCTBスキャン.厚い増殖膜を認め(▽),後部硝子体.離を認めない.Cc:同部位におけるC3C×3CmmOCTA画像C3枚から作成したモンタージュ画像.発生当初のCNVDは比較的太い主幹血管となり(),ほかの部位はフィラメント状に剪定されている.一方で,黄斑に向かって進展した領域には,一部CEVPの残存を認めている().するためシェアストレスにより血管径の増大をきたす.抗CVEGF抗体の効果が減弱すると未熟な血管の増生は再発し,抗CVEGF療法によってまた退縮する.上記のサイクルを繰り返すことにより,残存した新生血管は非生理的な吻合をした短絡血管様に変化していくと述べている.本研究におけるCNVD/NVEのCEVPの変化,とくに代表症例におけるCNVDの発芽から進展,退縮をたどる過程は,上記CCNVの過程に酷似しており,OCTAを用いることでCPDRにおける新生血管の詳細な形態変化を経時的に初めてとらえることができたと考えている.おわりにOCTAは撮影画角が狭く,周辺部の新生血管検出に(文献C6より許可を得て改変転載)は不向きであることが当初の問題であった.しかし,急速な機器開発によってその問題は解消されつつある.とくにCswept-sourceOCTを用いたモンタージュ撮影により,高解像度を保持したまま広画角のCOCTA画像を,比較的簡便に得られるようになってきている15)(図9).高画質なCOCTA画像からは,EVPの有無を判断することができるため,FAによる蛍光漏出所見の代用として非侵襲的に活動性を判定できる可能性がある.OCTAは「平成C30年度診療報酬改定」によって保険点数が付与され,ますますの普及が期待される.本研究の成果が,FAの代替手段としてのCOCTAの利用価値を高め,糖尿病網膜症診療をより安全で,より精度の高いものにする一助となれば幸いである.稿を終えるにあたり,学術奨励賞選考委員会委員の先図9未治療PDRの広角パノラマOCTASwept-sourceOCTTriton(Topcon)を用いて,9C×9Cmm(512C×512画素)OCTA画像C3枚からパノラマ画像を作成した.血管アーケード内外の無灌流領域,網膜内細小血管異常(),新生血管()が鮮明に描出されている.また,新生血管はCEVP[+]であると判断できる.(石羽澤明弘:今,OCTangiographyでわかること・わからないこと4.糖尿病網膜症.眼科59:229-236,2017より改変引用)生方,第C23回糖尿病眼学会総会会長の今泉寛子先生に深く感謝申し上げます.また,多くのご指導,ご支援をいただいている旭川医科大学眼科学講座吉田晃敏教授(学長),糖尿病網膜症外来をはじめとする医局員の先生方,数理情報科学講座高橋龍尚先生,美しい画像を提供して下さる視能訓練士の方々に厚くお礼申し上げます.利益相反:石羽澤明弘(カテゴリーCF:ニデック,カールツァイスメディテック,トプコン,カテゴリーCR:トプコン,ニデック,中央産業貿易,参天,ノバルティス,カールツァイス,興和,千寿)文献1)GradingCdiabeticCretinopathyCfromCstereoscopicCcolorCfun-dusCphotographs–anCextensionCofCtheCmodi.edCAirlieCHouseCclassi.cation.CETDRSCreportCnumberC10.CEarlyCTreatmentCDiabeticCRetinopathyCStudyCResearchCGroup.COphthalmologyC98:786-806,C19912)ChoH,AlwassiaAA,RegiatieriCVetal:Retinalneovas-cularizationsecondarytoproliferativediabeticretinopathycharacterizedCbyCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.RetinaC33:542-547,C20133)MuqitMM,StangaPE:Fourier-domainopticalcoherencetomographyCevaluationCofCretinalCandCopticCnerveCheadCneovascularisationinproliferativediabeticretinopathy.BrJOphthalmolC98:65-72,C20144)LeeCCS,CLeeCAY,CSimCDACetal:ReevaluatingCtheCde.nitionCofCintraretinalCmicrovascularCabnormalitiesCandCneovascularizationelsewhereindiabeticretinopathyusingopticalCcoherenceCtomographyCandC.uoresceinCangiogra-phy.AmJOphthalmolC159:101-110,C20155)IshibazawaCA,CNagaokaCT,CTakahashiCACetal:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCinCdiabeticCretinopa-thy:ACprospectiveCpilotCstudy.CAmCJCOphthalmolC160:C35-44,C20156)IshibazawaA,NagaokaT,YokotaHetal:CharacteristicsofCretinalCneovascularizationCinCproliferativeCdiabeticCreti-nopathyimagedbyopticalcoherencetomographyangiog-raphy.InvestOphthalmolVisSciC57:6247-6255,C20167)MillerH,MillerB,ZonisSetal:Diabeticneovasculariza-tion:permeabilityCandCultrastructure.CInvestCOphthalmolCVisSciC25:1338-1342,C19848)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendotheli-alCgrowthCfactorCinCocularC.uidCofCpatientsCwithCdiabeticCretinopathyCandCotherCretinalCdisorders.CNCEnglCJCMedC331:1480-1487,C19949)OgataCN,CNishikawaCM,CNishimuraCTCetal:UnbalancedCvitreousClevelsCofCpigmentCepithelium-derivedCfactorCandCvascularendothelialgrowthfactorindiabeticretinopathy.AmJOphthalmolC134:348-353,C200210)AveryCRL,CPearlmanCJ,CPieramiciCDJCetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)inCtheCtreatmentCofCproliferativeCdiabeticCretinopathy.COphthalmologyC113:1695,Ce1-e15,C200611)SpaideRF,FisherYL:Intravitrealbevacizumab(Avastin)Ctreatmentofproliferativediabeticretinopathycomplicatedbyvitreoushemorrhage.RetinaC26:275-278,C200612)KuiperCEJ,CVanCNieuwenhovenCFA,CdeCSmetCMDCetal:CTheangio-.broticswitchofVEGFandCTGFinprolifera-tivediabeticretinopathy.PloSOneC3:e2675,C200813)El-SabaghCHA,CAbdelgha.arCW,CLabibCAMCetal:Preop-erativeCintravitrealCbevacizumabCuseCasCanCadjuvantCtoCdiabeticvitrectomy:histopathologicC.ndingsCandCclinicalCimplications.OphthalmologyC118:636-641,C201114)SpaideRF:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCsignsCofCvascularCabnormalizationCwithCantiangiogenicCtherapyforchoroidalneovascularization.AmJOphthalmolC160:6-16,C201515)石羽澤明弘:OCTangiographyによる糖尿病網膜症の評価.CDiabetesFrontierC28:291-297,C2017☆☆☆

II.視路病変編 自閉症スペクトラムの視覚特性

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編自閉症スペクトラムの視覚特性VisualImpairmentinAutismSpectrumDisorder松下賢治*はじめに自閉症スペクトラム(autismCspectrumdisorder:ASD)は近年非常に注目されている一連の精神疾患の総称である.その数は増加傾向にあり,米国で放送されている「セサミストリート」という教育番組でもその疾患を取りあげている.新たに登場する自閉症(autism)をもつ子供のキャラクターである「Julia」は,制作段階において十分に時間をかけて創り出されたとされている.セサミストリート制作スタッフは疾患の特性を詳細に調べており,その中にCASDの視覚特性が正確に表現されている.また,Juliaのパペットを操る担い手は自閉症をもつ母親であり,その動きはリアルそのものである.この視覚特性はあまり眼科では取りあげられていないが,その社会的重要性から今後眼科医も無視できない分野になると思われる.CI発達障害とは何か現在用いられている意味での「発達障害」が話題になりはじめて,まだ長い年月は経っていない.以前は発達の遅れが明らかな比較的重度の障害を意味するものとして「発達障害」が使われていたが,現在は注意欠陥多動性障害(attentionCde.citChyperactivitydisorder:ADHD)や高機能自閉症(high-functioningCautismspectrumdisorders:HFASD,アスペルガー症候群)などの一連の障害をまとめる概念として用いられている.それぞれの障害のおもな特性を図1に示す.2013年に米国精神医学会(AmericanCPsychiatricAssociation:APA)が作成する精神疾患の分類と診断の手引(Diag-nosticCandCStatisticalCManualCofCMentalDisorders:DSM)が改訂され,第C5版(DSM-5)が発表された.DSM-5での根本的な変更は,自閉性障害,アスペルガー症候群,特定不能の広汎性発達障害(pervasiveCdevel-opmentalCdisorder-notCotherwisespeci.ed:PDD-NOS),小児期崩壊性障害,Rett障害という亜型分類を撤廃し,autismspectrumdisorders(ASD)という単一の疾患としてまとめたことと,ASDの症状の定義を,①対人,社会的コミュニケーション障害と,②限局性反復性行動にまとめたことである.さらにわれわれ眼科医に関連する点として,診断基準の副次項目に感覚反応の亢進あるいは低下という項目が新たに追加された1,2).CIIASDは多い疾患なのかわが国におけるCASDの有病率は診断基準の違いのため単純な比較は困難だが,1996年はC0.21%3),2005年はC0.27%4),2012年はC4.48%5)と近年増加している.また,DSM改訂前の世界におけるCASDの有病率は1~2.6%と報告されているが6,7),2014年米国疾病コントロールセンターは全米のCASD有病率はC68人にC1人であるというデータを発表しており8),世界中でCASDと診断される人が急増している.*KenjiMatsushita:大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学講座眼科学〔別刷請求先〕松下賢治:〒565-0871吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学講座(眼科学)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(61)C631図1発達障害とは(発達障害の理解と対応,p.3,中山書店,2014より改変)図2自閉症スペクトラムの特徴(SESAMESTREETより転載)表1自閉症スペクトラムの視覚特性=図4Meares.Irlensyndrome(MIS)表2症例—

II.視路病変編 レーベル遺伝性視神経症─治療最前線

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編レーベル遺伝性視神経症─治療最前線APotentialDrug─IdebenoneforLeber’sHereditaryOpticNeuropathy石川裕人*ILeber遺伝性視神経症とはLeber遺伝性視神経症(LeberChereditaryCopticCneu-ropathy:LHON)は,遺伝性視神経症の一つであり,細胞内小器官ミトコンドリア機能不全による視神経障害と考えられている.近年の遺伝子変異マウスを用いた動物実験では,ミトコンドリア遺伝子変異により活性酸素上昇を認め,フリーラジカルが神経細胞傷害に関与していることが示唆された1).疫学的には,わが国において2017年に日本神経眼科学会がアンケートによる調査を行ったところ,2014年の新規発症がC120人程度で,推定患者総数は約C4,000人と推測された.93.1%が男性発症であり,若年発症が多い.ミトコンドリア遺伝子変異はC90%以上の症例でCND1/G3460A,ND4/G11778A,ND6/T14484Cのいずれかであり,実際にC3,460(2.2%),11,778(86.4%),14,484(11.4%)であった2).発症そのものには,遺伝的背景の他に環境因子,とくに喫煙や飲酒の関与が考えられている3).上記調査の結果からわかる通り,典型例は若年男性の両眼性視力障害,ただし片眼発症が先行し僚眼発症には数カ月のタイムラグがある.実臨床においては,視神経炎との鑑別が重要であるが,急性期では,1)視力低下と乖離するほぼ正常な対光反射,2)網膜断層撮影による耳側傍視神経乳頭網膜神経線維層厚の肥厚,3)フルオレセイン蛍光眼底造影検査において蛍光漏出なし,4)ミトコンドリア遺伝子変異の有無のC4点で鑑別できる.筆者がとくに重要と考えている所見は対光反射である.中心暗点を呈した急性期の視神経炎であれば,まず対光反射は障害され相対的瞳孔求心路障害(relativea.erentpupillarydefect:RAPD)陽性となる.しかし,LHONにはそれがない.また,現在ではミトコンドリア遺伝子変異の有無は血液を外注検査に出すだけでC2週間も経たずに結果がわかる.仮に初診時にCLHONと診断できずとも,視神経炎として治療し,治療抵抗性であればそこで初めて,視神経脊髄炎(neuromyelitisCoptica:NMO)やCLHONを念頭において再検査してもいいだろう.診断基準については,厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班ならびに日本神経眼科学会が合同でCLeber遺伝性視神経症の認定基準をC2015年に作成している(図1)4).CIIイデベノンの治験近年の技術的革新のおかげで,LHONの診断に関しては比較的容易になった.しかしながら,いまだに治療法についてはわが国では確立されていない.2011~2013年にかけて,ヨーロッパを中心としたCLHONに対するイデベノンの有効性を検討する多施設ランダム化試験(RescueCofCHeredityCOpticCDiseaseCOutpatientStudy:RHODOS)が行われ,その有効性がある程度認められ,2015年にはイデベノンがヨーロッパにおいて世界初のCLHONに対する認可薬となった.イデベノン(idebenone,化合物名:6-(10-hydroxydecyl)-2,3-*HirotoIshikawa:兵庫医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕石川裕人:〒663-8501兵庫県西宮市武庫川町C1-1兵庫医科大学眼科学講座C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(55)C625図1レーベル遺伝性視神経症の診断基準OHOOOO図2イデベノンの化学式ITTpopulationab0.050.20.150.1全眼における視力良好な眼の視力変化logMARlogMAR0視力改善率-0.05logMARlogMAR0.05-0.10-0.15-0.05812162024W812162024Wcd0.20.2両眼でのベスト視力0.150.10.10.0500-0.1-0.05812162024W812162024W図3RHODOSでの視力変化主要評価項目の達成には失敗したものの,サブ解析ではイデベノンの効果を認めた.(文献C5より改変引用)図4RaxoneR(Santhera社)図5イデベノンが奏効した15歳,男児の視野変化’C-’C

II.視路病変編 抗AQP4 抗体と抗MOG 抗体陽性視神経炎の臨床像の相違点・類似点

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編抗AQP4抗体と抗MOG抗体陽性視神経炎の臨床像の相違点・類似点ClinicalCharacterizationofAnti-Aquaporin4-SeropositiveorMyelin-OligodendrocyteGlycoprotein-SeropositiveOpticNeuritis─PointofDi.erenceandSimilarity─毛塚剛司*はじめに一般的な眼科外来において,視神経炎はかなりまれである.実際,わが国における視神経炎の有病率は人口10万人中C1.6人である1).視神経炎はまれな疾患ではあるが,急激な視力低下を伴ううえに多くの鑑別疾患があり,眼科医を悩ませることが多い.視神経炎が確定した後でも,ステロイド内服治療に抵抗したり再発したりするケースもあり,治療に難渋することが多々ある.最近,眼底所見に加えて血清免疫抗体検査やCMRIデータなどを加味して視神経炎を分類する方法が確立しつつあり,臨床眼科医にとって治療戦略が立てやすくなった.本稿では,第C56回日本神経眼科学会総会のシンポジウムをベースに,抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体陽性視神経炎の特徴および類似点,相違点につき述べる.CI視神経炎に関連する抗体である抗AQP4抗体,抗MOG抗体とは今までに視神経炎の病態と強く関連する抗体はいくつか提唱されている.そのうち,臨床においてとくに注目を集めているのが抗CAQP4(アクアポリンC4)抗体と抗MOG(ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン)抗体である.どちらの抗体も神経グリア細胞由来の分子に対する抗体であり,抗CAQP4抗体はアストロサイト由来,抗CMOG抗体はオリゴデンドロサイト由来である(図1).抗CAQP4抗体は,最初は視神経脊髄炎のマーカーとして注目され,後にステロイド抵抗性の視神経炎において血清中に抗CAQP4抗体が多く含まれることが判明し,眼科医の知るところとなった経緯がある2,3).抗CMOG抗体は,当初はCMOG抗原がげっ歯類の視神経脊髄炎を引き起こす因子として注目され,多発性硬化症の動物モデルに関連して解析されてきた.2010年代にになって臨床的に血清中の抗CMOG抗体を測定できるようになり,眼科および神経内科領域で一気に注目されるようになった4,5).マウスモデルにおける病態解析ではあるが,抗CAQP4抗体では単独で視神経炎および脊髄炎を引き起こすことはできない.炎症や外傷などにより脳血液関門,もしくは網膜血液関門が破綻し,病的抗体が視神経もしくは脊髄に入り,臓器特異的な炎症が発症すると考えられている.しかし,なぜ病的抗体が発生するのかは未だ不明である.CII抗AQP4抗体と抗MOG抗体の測定法抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体の測定法はどちらもELISA(enzyme-linkedCimmunosorbentassay)法とCBA(cell-basedassay)法があるが,精度の点からいって,両抗体ともCCBA法が推奨されている.しかし,保険収載されているのは抗CAQP4抗体ではCELISA法の*TakeshiKezuka:毛塚眼科医院,東京医科大学臨床医学系眼科学分野〔別刷請求先〕毛塚剛司:〒131-0033東京都墨田区向島C1-5-7毛塚眼科医院C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(49)C619表1抗AQP4抗体陽性視神経炎の臨床的特徴図1視神経を構成するグリア細胞アストロサイト(星状膠細胞):AQP4を多く発現.ミエリン-オリゴデンドロサイト(稀突起膠細胞):MOG蛋白を多く含む.ミクログリア:スカベンジャー作用を有する.オリゴデンドロサイト図2抗AQP4抗体陽性視神経炎50歳,女性.初診時CMRI(T1強調ガドリニウム造影)で視神経に沿って造影効果(右眼>左眼)を認める(.).Ca:冠状断.b:水平断.表2抗MOG抗体陽性視神経炎の臨床的特徴図3図2の症例胸脊椎CMRI(T2強調単純)で脊髄に沿って高信号を認めた(.).図4抗MOG抗体陽性視神経炎の眼底像24歳,女性.左眼に視神経乳頭の発赤腫脹を認める.図5図4の症例初診時CMRI(T1強調ガドリニウム造影)で視神経に沿って造影効果(左眼)を認める(.).V抗AQP4抗体陽性視神経炎と抗MOG抗体陽性視神経炎の関係抗CAQP4抗体陽性例と抗CMOG抗体陽性例は,眼科分野において臨床像の違いはあるものの,全身からみればどちらも視神経炎と脊髄炎をきたしやすいという臨床的特徴があり,NMOSDの範疇に入ると思われる14).しかし,これまで述べたように,視神経炎としてはこれらの抗体陽性例でかなり臨床像が異なっている.そして何より視力予後が大きく異なるため,どちらの抗体の陽性例とも同一の疾患(NMOSD)とするには無理があると考えられている15).このため,最近では脱髄疾患には三つのカテゴリーが提唱されてきており,1)多発性硬化症,2)抗CAQP4抗体陽性疾患,3)抗CMOG抗体陽性疾患に分けることが提唱されている15).今まで知られていた脱髄疾患関連の分類では,1)多発性硬化症(古典的なもの,眼脊髄型),2)視神経脊髄炎(Devic病),3)同心円硬化症(Balo病)などがあげられていたが,抗AQP4抗体や抗CMOG抗体の発見により新しく脱髄性疾患の分類が変わるかもしれない.CVI特異的抗体陽性視神経炎と他の眼疾患との鑑別今まで,抗CAQP4抗体陽性視神経炎と抗CMOG抗体陽性視神経炎の臨床像について述べてきたが,この二つの特異抗体陽性視神経炎の鑑別を行うまでに行わなければならない眼疾患の鑑別がある.視神経疾患としては,高齢の場合には虚血性視神経症,若年者ではCLeber遺伝性視神経症などが鑑別にあがる.全年齢で注意すべき視神経疾患の鑑別には梅毒やヘルペスをはじめとした感染症があげられる.とくに梅毒は両眼性の視神経網膜炎の形を取ることがあり,脱髄性の視神経乳頭炎と混同しやすい.また,視神経疾患のみならず,ぶどう膜炎にも注意が必要である.全年齢でサルコイドーシス,原田病で視神経乳頭浮腫型が存在し,脱髄性視神経乳頭炎との鑑別が重要である.比較的若年者ではCBehcet病で両眼性の視神経乳頭浮腫が起こることがあり,しかも前眼部炎症をきたさないことが多い.これらの眼疾患としっかり鑑別し,いわゆる特発性視神経炎の診断がついてから特異抗体陽性か否かを判断したほうがよいと思われる.おわりに最近までに報告されている,抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体陽性視神経炎の臨床像の相違点と類似点を解説した.わが国においては,ようやく全国調査が終わってこの二つの抗体陽性例の眼科的特徴がみえてきたところである.視神経炎における抗CAQP4抗体陽性例と抗CMOG抗体陽性例の大きな違いは,ステロイド治療に対する抵抗性であり,また再発の頻度にある.すなわち,これらの抗体例をよく理解することにより,難治性視神経炎の治療に大きく寄与する可能性が高くなると思われ,今後のさらなる臨床例の積み重ねが重要になることが予想される.文献1)石川均:日本における特発性視神経炎トライアルの結果について.神眼24:12-17,C20072)LennonCVA,CWingerchukCDM,CKryzerCTJCetal:ACserumCautoantibodyCmarkerCofCneuromyelitisoptica:distinctionCfrommultiplesclerosis.LancetC364:2106-2112,C20043)LennonCVA,CKryzerCTJ,CPittockCSJCetal:IgGCmarkerCofCoptic-spinalCmultipleCsclerosisCbindsCtoCtheCaquaporin-4Cwaterchannel.JExpMedC202:473-477,C20054)KezukaCT,CUsuiCY,CYamakawaCNCetal:RelationshipCbetweenCNMO-antibodyCandCanti-MOGCantibodyCinCopticCneuritis.JNeuroophthalmolC32:107-110,C20125)SatoDK,CallegaroD,Lana-PeixotoMAetal:DistinctionbetweenMOGantibody-positiveandAQP4antibody-posi-tiveCNMOCspectrumCdisorders.CNeurologyC82:474-481,C20146)KezukaCT,CFujitaCM,CUmazumeCACetal:ComparisonCofCantibodyCdetectionCassaysCforCserumCanti-aquaporin-4CantibodiesCinCopticCneuritis.CAmericanCAcademyCofCOph-thalmology(AAO)MeetingC2016,CChicago,COctC14-18,C20167)MatsudaR,KezukaT,UmazumeAetal:Clinicalpro.leofanti-myelinoligodendrocyteglycoproteinantibodysero-positivecasesofopticneuritis.Neuroophthalmol39:213-219,C20158)抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン作成委員会:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン.日眼会誌118:446-460,C20149)IshikawaCH,CKezukaCT,CShikishimaCKCetal:Epidemiologi-calCandCclinicalCcharacteristicsCofCopticCneuritisCinCJapan.COphthalmology,inpress.10)JariusCS,CRuprechtCK,CKleiterCICetal;inCcooperationCwithC(53)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C623

II.視路病変編 視路疾患のOCT Up-to-Date

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編視路疾患のOCTUp-to-DateOpticalCoherenceTomographyinVisualPathwayDisorder坂本麻里*中村誠*はじめに網膜に入った光刺激は,視細胞で電気信号に転換され,双極細胞,網膜神経節細胞(retinalganglioncell:RGC)へ伝達される.RGCの軸索は視神経となり,視交叉・視索・外側膝状体・視放線を経て,後頭葉の視覚野へと伝達される(図1).この視覚伝導路(視路)に起きるさまざまな疾患により,神経細胞の軸索が損傷すると,損傷部位から末梢側への順行性変性とともに,細胞体側に向かう逆行性変性が起きる.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の発達により,RGCやその軸索である網膜神経線維(retinalnerve.ber:RNF)を詳細に解析できるようになった.OCTは今や緑内障性視神経症の診断・治療に欠かせない検査となっているが,視路疾患においても,逆行性変性によるRGCやRNFの変化を描出することができ,その有用性が高まっている.視路疾患におけるOCTで観察すべきところは,緑内障性視神経症と同様である.すなわち,乳頭解析では乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryretinalnerve.berlayer:cpRNFL),黄斑部解析では黄斑部網膜神経線維層(mac-ularretinalnerve.berlayer:mRNFL),網膜神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)と内網状層(innerplexiformlayer:IPL)を合わせたGCL/IPLやganglioncellanalysis(GCA),GCL/IPLにさらにmRNFLを合わせた網膜神経節複合体(ganglioncellcomplex:GCC)などである.本稿では,視路疾患を部位別に,1)視神経炎,2)視交叉病変,3)視索病変に分け,それぞれにおけるOCTの所見や有用性について解説する.I視神経炎のOCT視神経炎には,特発性視神経炎,多発性硬化症(mul-tiplesclerosis:MS)による視神経炎,抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視神経炎,抗MOG抗体陽性視神経炎のほかに,サルコイドーシスや甲状腺眼症,感染や外傷による視神経炎などがある.視神経炎の発症直後,視神経乳頭に腫脹がみられる場合には,OCTの乳頭解析でcpRNFL厚の増大がみられる(図2).乳頭腫脹のない視神経炎の場合は,発症直後は乳頭解析や黄斑部解析で菲薄化はまだみられないことがある(図3).外傷性視神経症では受傷2週後でcpRNFLとGCCの菲薄化がみられると報告されているが1),視神経炎においても発症から数週間経過すると逆行性変性によるRGCの萎縮がみられ,cpRNFLやmRNFL,GCL/IPL,GCCの菲薄化を認める.発症から3カ月以上経過すると,これらの菲薄化の進行は止まり,次第に変化がなくなっていく(図3).視神経炎後にRNFLやGCL/IPLが菲薄化していても,視力や視野障害が改善している例と,改善しない例がある(図4).OCTにおける各層の菲薄化と視機能障害の関係については複数の報告がある.視神経炎後6カ月以上経過した眼において,cpRNFL厚が75μm以上保た*MariSakamoto&*MakotoNakamura:神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野〔別刷請求先〕坂本麻里:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(41)611視神経視交叉外側膝状体視放線大脳皮質視覚野図1視路視神経乳頭から視神経となって眼外へ出た網膜神経節細胞の軸索は,視交叉,外側膝状体,視放線を経て大脳皮質視覚野へ至る.鼻側網膜由来の線維は視交叉で交叉し反対側の視索へ,耳側網膜由来の線維は交叉せずに同側の視索となる.Cab図2視神経乳頭腫脹を伴う発症直後の左視神経炎の例a:光干渉断層計の乳頭解析.左眼の乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)の増大を認める.Cb:同眼の眼底写真.左視神経乳頭の発赤腫脹を認める.mRNFLGCLIPLGCCa発症数日後LV=0.2(n.c.)b1カ月後LV=(1.5)6カ月後図3視神経炎の光干渉断層計(OCT)所見の経時変化多発性硬化症による左視神経炎の症例.a:発症数日後.左視力低下と傍中心暗点を認めるが,OCTの黄斑部解析ではまだ網膜内層の菲薄化はみられない.Cb:1カ月後.ステロイドパルス療法をC2クール施行し視力と視野は改善しているが,網膜内層は発症直後より菲薄化している.c:6カ月後.網膜内層の菲薄化の進行はみられない.mRNFL:黄斑部網膜神経線維層,GCL/IPL:網膜神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)+内網状層(innerplexiformClayer:IPL),GCC:GCL/CIPL+mRNFL.a右眼左眼両眼発症の特発性視神経炎発症4カ月後RV=(1.2)LV=(1.5)b右眼左眼両眼発症の抗AQP4抗体陽性視神経炎発症4年後RV=(0.4)LV=(0.9)図4視神経炎後の網膜内層の菲薄化と視力a:両眼同時発症の特発性視神経炎症例.発症C4カ月後,両眼ともに網膜内層の菲薄化を認めるが,視力回復は良好である.Cb:両眼発症の抗CAQP4抗体陽性視神経炎症例.発症C4年後.両眼とも網膜内層は著明に菲薄化し,視力回復は右眼矯正(0.4),左眼矯正(0.9)までにとどまっている.RNFL:網膜神経線維層,GCL+:網膜神経節細胞層(ganglionCcelllayer:GCL)+内網状層(innerplexiformlayer:IPL),GCL++:GCL+.+RNFL.図5微細.胞黄斑浮腫(microcysticmacularedema:MME)a:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎の症例.内顆粒層(innernuclearlayer:INL)にCMMEを認める().高度な視機能障害が残り,視神経乳頭は蒼白,萎縮している.Cb:開放隅角緑内障後期の症例.INLにCMMEを認める().中心視野障害を認め,緑内障性視神経萎縮を認める.図6下垂体腺腫による視交叉部圧迫の例a:左右の視神経乳頭に帯状萎縮を認める.b:乳頭周囲網膜神経線維層厚解析.左右ともに鼻耳側の線維が上下に比べ有意に菲薄化している.Cc:網膜神経節細胞複合体の正常からの偏移マップ.左右ともに交叉線維が由来する鼻側網膜に菲薄化を認める.図7右視索障害の症例a:ガドリニウム造影CT1強調CMRI(軸位断)で右視索に造影効果を認める().b:乳頭周囲網膜神経線維層の正常からの偏移マップ.患側の右眼では上下で,対側の左眼では鼻耳側で菲薄化を認める.Cc:網膜神経節細胞複合体の正常からの偏移マップ.右眼は耳側網膜,左眼は鼻側網膜の菲薄化を認める.

II.視路病変編 視路疾患におけるMRI オーダーのコツ

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編視路疾患におけるMRIオーダーのコツTechniqueforDiagnosticMRImagingofVisualPathwayDisorders橋本雅人*はじめに視路疾患は病変が球後または頭蓋内にあるため,MRI検査が不可欠である.しかしながら,視路は球後からはじまり,中頭蓋窩を経由して側頭後頭葉あるいは頭頂後頭葉を通り最終の視中枢に至る長い経路道であるため,漠然と頭部MRIをオーダーしても病変を見逃してしまう恐れがある.そこで重要なことは,視野欠損のパターン,左右眼の対光反応の差〔相対的瞳孔求心路障害(rel-ativea.erentpupillarydefect:RAPD)〕の有無などの眼科的所見から,責任病巣が球後か,視交叉近傍か,あるいは視交叉より中枢側かを見きわめ,それに応じたMRIオーダーをすることである.I球後視神経病変のオーダーのコツと読影球後視神経病変を疑うときは,表1に示した眼科的所見を認めたときである.MRIをオーダーするポイントとしては,眼窩内の視神経病変を短時間で効率よく描出する手法を指示することである.表2に当科で用いているプロトコールを示す.眼窩部は必ず脂肪抑制法の一つであるshorttauinversionrecovery(STIR)を冠状断で撮影することが重要である.球後視神経を冠状断で見ると,視神経線維の周囲にくも膜下腔が,さらにその外側を硬膜(視神経鞘)が筒状に囲んでおり,この形状は眼球後面から視神経管に至るまで続いている.通常のT1,T2強調画像でこれらの組織構造を描出することは困難であるが,STIRでは静脈や髄液などの遅い水の流れは高信号に描出されるため,神経周囲のくも膜下腔は髄液による高信号を呈する.したがって,STIRによる正常な視神経像は全体として細い白色の輪状となる(図1).また,全体像を把握する意味でT2強調画像または.uidattenuatedinversionrecovery(FLAIR)(用語解説参照)頭部水平断を撮影しておくことが望ましい.単純MRIによって,炎症または腫瘍性病変を認めたときは造影を用いて病変を確認することも重要である.1.急性球後視神経疾患の画像診断視神経炎では脱髄性,浸潤性,自己免疫性といったさまざまな機序があるが,いずれの場合でも視神経に生じた炎症性浮腫が遅い水の流れとして反映されるため,STIRでは高信号を示す(図2a).また,視神経周囲炎では視神経鞘の炎症なので周囲の高信号が増強されて描出される1)(図2b).一方,虚血性視神経症ではこのような信号変化は示さず,正常と同様な信号を示す.これらの信号変化は,脂肪抑制法併用のT2強調画像を用いても,STIRとほぼ同様な画像が得られる.全身の悪性腫瘍からの髄液播種により急激な視力低下を示すものとして髄膜癌腫症(meningealcarcinomato-sis)があげられる.通常両眼性に発症することが多い.単純MRIでは,どのようなシーケンスを用いても正常視神経と変わりはないが,造影では眼窩部の視神経は輪状の造影所見を示す(図2c).さらに頭蓋内髄膜の造影所見が認められれば,この疾患を強く疑う重要な手がか*MasatoHashimoto:中村記念病院眼科〔別刷請求先〕橋本雅人:〒060-8570札幌市中央区南1条西14丁目中村記念病院眼科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(31)601表1球後視神経疾患を疑う眼科的所見表2眼窩部MRIに必要な検査オーダーと撮影時間図1正常な球後視神経のMRI所見STIR冠状断で描出される正常視神経.白色の輪状陰影()はくも膜下腔の髄液を反映している.b図2球後視神経疾患のMRI所見a:左球後視神経炎.STIRにおいて炎症のため軸索全体が高信号を示している().b:視神経周囲炎のSTIR所見.ステロイドパルス療法前(左)では左視神経周囲が高信号を示したが(),治療後では視神経周囲の高信号は目立たなくなり左視神経と同様の信号を示している.c,d:髄膜癌腫症の造影MRI所見.眼窩部造影T1強調画像では両側視神経周囲の輪状造影()を認め(c),頭部では頭蓋内髄膜(d)の造影()を認める.表3眼窩先端部にて視神経障害をきたす原因疾患眼窩外側眼窩内側図3視神経腫瘍のMRI視神経髄膜腫(a):造影水平断ではtram-tracksign()を認める.Neuro.bromatosistype1における視神経膠腫(b):矢状断で外側から内側に向かう連続面では視神経が拡大し,下方に屈曲している.図4STIRにおける視神経萎縮所見通常の冠状断において(Ca),右視神経は左に比べ小さく,全体に高信号を示すが(),視神経に垂直な斜め冠状断では(Cb)視神経の中心は低信号を示し,周囲くも膜下腔の高信号が強調されて描出されている().表4視交叉病変を疑う眼科的所見図5トルコ鞍近傍腫瘍のMRIa:下垂体腺腫.T2強調画像冠状断において充実性の下垂体腫瘤が視交叉を圧排()している所見を認める.Cb:下垂体卒中.下垂体腫瘍内にCT2強調画像で出血を示唆する低信号所見を認める().c:鞍結節髄膜腫.造影CMRIにおいて鞍結節部に造影効果を有する腫瘍を認める.右硬膜に沿ったCduraltailsign()も認める.Cd:蝶形骨縁髄膜腫:比較的均一で硬膜に沿った()びまん性充実性腫瘍が眼窩内に浸潤している.Ce:頭蓋咽頭腫.造影の矢状断ではトルコ鞍上に巨大な被膜を有する腫瘤を認め,内部は.胞部と充実性部で造影効果が異なる.Cf:Rathke.胞.T2強調画像冠状断において.胞が視交叉を上方に圧排()している.図6視交叉部視神経炎のMRISTIR冠状断で視交叉左側()に著明な高信号を認める.図7内頸動脈瘤の画像所見T2強調画像(Ca)ではトルコ鞍上に巨大な低信号の腫瘤陰影を認め,MRA(Cb)で内頸動脈瘤()と診断した.図8EmptysellaのSTIR冠状断トルコ鞍は拡大し下垂体が菲薄化()している.表5同名半盲と病変部位の関係ab図9先天性大脳皮質形成異常(先天性外側膝状体半盲)a:GCA解析.CirrusのCGCAでは,両眼ともに中心窩を境界線とした黄斑部内層網膜の菲薄化がみられた.右眼は非交叉線維,左眼は交叉線維の菲薄化であり,hemianopicatrophyが示唆された.Cb:Humphrey視野検査.両眼ともに垂直子午線で境される左上方および下方の欠損がみられ,四重分画盲と解釈した.Cc:頭部造影CMRI.右側脳室後角が狭小化し,右側脳室周囲の本来あるべき白質領域に灰白質が肥大し膨隆している所見を認めた().造影効果はなく腫瘍性病変は否定的であった.図10両側後頭葉梗塞のMRI所見a:拡散強調画像水平断.b:FLAIR冠状断.両側後頭葉とくに冠状断において右鳥距溝上唇に広がる梗塞病変がみられる().■用語解説■FLAIR:水の信号を抑制したCT2強調画像.脳室が低信号で描出され,脳梗塞のみ高信号で表示されるため病巣が明瞭.とくに脳室や脳溝付近などの病巣が明瞭に描出される.COnodi症候群:後部篩骨洞の気泡化が著明な場合は,蝶形骨洞を下方に追いやり,トルコ鞍まで篩骨蜂巣が侵入(Onodi蜂巣)し,視神経管を圧排することがある.CFlowvoid:血流や脳脊髄液(cerebrospinal.uid:CSF)のように流れている組織が画像上で無信号となる現象.-