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後眼部編:脈絡膜の形態解析

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):41.45,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):41.45,2013後眼部編脈絡膜の形態解析ChoroidalObservationsUsingHigh-PenetrationOCT中井慶*はじめに光干渉断層計(OCT)は,眼科における一つの歴史的変革である.補助診断法と考えられたOCTも,今や診断,治療,研究の主役になりうる.誕生から20年間で,OCTは種々の進化を果たした.OCTの役割は,眼底深部の画像化である.従来の800nm帯光源では,解像度が高い反面,網膜色素上皮層の散乱が強く,眼底深部のシグナルが減弱する欠点がある.光源の長波長化により,色素上皮層での透過性が高まり,眼底深部を観察が可能になる.もう一つの欠点は,固視不良による画像が不鮮明であり,その解決には,測定時間の短縮,高速化が求められる.OCTを押し込み,画像を反転させ,50.100枚の画像を重ねるenhanceddepthimaging(EDI)法は,撮影に時間がかかり,固視不良になる可能性がある.SweptsourceOCT(SS-OCT)は上記の2つの欠点を解決しうる.SS方式は長波長,高速化OCTを作るのにも優れており,次世代を担う技術と期待される.今回,筆者らは,組織侵達性に優れ,脈絡膜,強膜などの深部組織の描出に優れる,高侵達SS-OCT(中心波長1,050nm,走査速度毎秒100,000A-scan)を用いて,さまざまな疾患を観察したので報告する.ISS.OCTによる正常眼画像図1は,正常眼を1,050nmSS-OCTで撮影したものである.脈絡膜深部のシグナルが向上し,強膜までも描図1高侵達SS.OCTによる正常眼撮影画像脈絡膜深部のシグナルが向上し,深部まで描出される.中小血管層からなるSattler’slayer,大血管層からなるHaller’slayerが明瞭に描出される.Haller’slayerの外側は上脈絡膜で,豊富な線維からなる移行帯である.強膜はさらに外側の均一な高散乱組織である.脈絡膜と強膜の境界は,脈絡膜大血管外側の,高散乱帯である.出される.脈絡膜厚は,正常眼でも個人差を認め,屈折値の影響が大きい.平均値は250μm程度だが,正視眼では500μm以上,強度近視眼では100μm以下の場合もある1).脈絡膜より内側のBruch膜と脈絡膜毛細管板はきわめて薄く,SS-OCTにては同定できない.その後方,脈絡膜内部の,中小血管層からなるSattler’slayerと,その後方,大血管層からなるHaller’slayerの2層は明瞭に描出される.解剖学的に両者に明瞭な境界はなく,SS-OCTでも2層の境界を描出することはできない.*KeiNakai:大阪大学大学院医学系研究科眼科学講座〔別刷請求先〕中井慶:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(41)41 Haller’slayerの後方は上脈絡膜で,豊富な線維からなる移行帯である.強膜はその後方の均一な高散乱組織で,その境界は,脈絡膜大血管外側の高散乱帯であるといわれているが,さらに後方という報告もあり2),今後よりいっそうの検討が待たれる.II高侵達SS.OCTによる疾患眼画像解析1.原田病原田病は,前部および後部ぶどう膜のメラノサイトに対する自己免疫機序によって炎症が生じる,汎ぶどう膜炎であり,病理組織学的に,網膜脈絡膜に肉芽腫性変化が生じる(図2).急性期の後極部漿液性網膜.離は,脈絡膜の肉芽腫変化によって生じた続発性の変化であり,疾患の本態は脈絡膜にあると考えられる.原田病のインドシアニングリーン蛍光造影(IA)では,造影早期の脈絡膜充盈遅延,脈絡膜血管不鮮明,中・後期には,散在する斑状低蛍光(filling-patchy-delay),網膜下色素漏出などが特徴的に観察される.造影早期の脈絡膜充盈遅延,脈絡膜血管の不鮮明は,脈絡膜への多数の類上皮細胞リンパ球などの炎症細胞の浸潤による脈絡膜循環障害をあらわす所見として多くの症例にみられ,診断に重要である.しかし,IA所見にて原田病の重症度を評価することは困難であった.原田病のOCT所見については,網膜の変化には多くの研究がなされているが,脈絡膜のOCT所見に関する報告は,脈絡膜皺襞3,4)などが散見される程度である.そこで,筆者らは,急性期と回復期における4例の原田病患者の高侵達SS-OCTを用いて検討し,急性期では,回復期またはコントロール眼に比して脈絡膜厚が,全例800μm以上と有意差をもって肥厚し,脈絡膜内層の脈絡膜血管信号が減少すると報告した5)(図3).ステロイド薬治療開始後,中心窩下脈絡膜厚は治療前の800μm以上から,治験開始後1週では平均562μm,4週では412μm,さらに6カ月では347μm,1年では326μmに減少した(図4).つまり,治療開始後1週間程度で速やかに肥厚は改善,その後1年にわたって,図2原田病の初診時所見両眼で乳頭発赤腫脹および乳頭周囲の漿液性網膜.離を認めた(上段).蛍光眼底造影では,両眼で視神経乳頭の過蛍光および乳頭周囲の造影剤漏出を認めた(下段).42あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(42) 図3両眼の高侵達SS.OCT画像治療開始前の,Day0では両眼とも強膜・脈絡膜境界は不明瞭なため計測不可能(>800μm).Day2では強膜・脈絡膜の境界は明瞭化(矢頭)し,右眼で435μm,左眼で336μmに減少.Day14では左眼で漿液性網膜.離は消失,脈絡膜厚は右眼で293μm,左眼で260μmへと減少.900800Day0>800μmDay2435μmDay14293μm右眼Day0>800μmDay2336μmDay14260μm左眼900800右眼左眼700600患者1右眼700脈絡膜厚(μm)500脈絡膜厚(μm)患者1左眼600400患者2右眼500患者2左眼300患者3右眼200400患者3左眼100300患者4右眼00246810121416患者4左眼200治療開始日数(days)図4原田病患者の脈絡膜厚の経時的変化グラフ両眼とも,ステロイド薬治療により脈絡膜厚の減少を認めた.徐々に菲薄化を認めた(図5).肥厚の原因であるが,脈絡膜への炎症細胞浸潤,滲出による間質浮腫が関与していると考え,前者は病理組織学的所見と合致する.Marukoら6)からも同様の報告がある.また,炎症再燃時には,脈絡膜厚が800μm以上へと再度肥厚が確認された.原田病寛解期において特徴的な夕焼け状眼底においても脈絡膜を検討したところ,網膜は菲薄化を認めなかったが,脈絡膜は,平均厚172μmと正常眼に比して,有意に菲薄を認めた.前眼部炎症,(43)1000経過日数(days)図5ステロイド薬治療後の,原田病患者の脈絡膜厚の半年から1年にわたる経時的変化グラフ4例8眼の脈絡膜は,すべての症例で発症時には検出限界(800μm)を超えて肥厚していたが,治療開始後4週間で平均して412μmと,発症時に比して,有意に減少を認めた(p<0.0001).ならびに漿液性網膜.離が消失し,臨床的に炎症寛解が得られているように観察されても,徐々に菲薄化が進むのは,脈絡膜で炎症がくすぶっており,それに伴い,組織萎縮が進行している可能性が示唆される.これは,原あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013430100200300400 田病においては,他疾患とは異なり,長期間,半年程度かけてステロイド薬を減量する必要性があることを強く支持するものであると考える.上記より,筆者らは,診察時には,炎症細胞や漿液性網膜.離の有無に加えて,高侵達SS-OCTを用いた脈絡膜の肥厚改善程度を解析することは,ステロイド薬増減のタイミングに非常に有用であると考える.また,フルオレセイン蛍光造影(FA)/IAなどの造影検査と比べて非侵襲的に行えるため,今後原田病に対する治療効果の定量的評価の指標として有用であると考える.原田病における脈絡膜肥厚は,IA所見における脈絡膜充盈遅延とよく相関し,診断的価値の高い所見として重視すべきである.また,筆者らは網膜.離非出現期または乳頭浮腫型原田病における診断的価値についても,検討している.原田病は通常,眼底後極部における漿液性網膜.離で発症するが,発症初期や乳頭型では,乳頭浮腫,発赤のみを認め,後極の漿液性網膜.離が観察されない場合は診断に迷うことがある.眼底所見は,乳頭発赤以外は異常所見を認めないが,IA所見の充盈遅延および高侵達SSOCTでの脈絡膜肥厚所見が原田病と診断する手助けになる場合がある.2.中心性漿液性脈絡網膜症中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は,IA所見より脈絡膜血管の透過性亢進が指摘されていた.高侵達SSOCTでは,それに一致して大血管の拡張が観察される.血管拡張に伴い,脈絡膜厚の増大が観察される(図6)7).図6中心性漿液性脈絡網膜症例高侵達SS-OCTでは,後方,特に大血管の拡張が観察された.血管拡張に伴い,脈絡膜厚は各所で増大する様子が観察された.健側僚眼でも脈絡膜の血管透過性亢進が観察されることがあり,SS-OCTにても,正常に比して,脈絡膜厚の増加が観察される.光線力学的療法の治療にて,脈絡膜厚が減少する報告がある8).3.強膜炎急速に脈絡膜皺襞を生じる病態をもつ疾患として,後部強膜炎があげられる(図7).筆者らは,後部強膜炎患者2例において,治療前後の脈絡膜の経時的な変化を高侵達SS-OCTを用いて解析した.治療前の患眼脈絡膜厚は384μmと健眼に比して肥厚していた.ステロイド薬治療開始後13日目で261μm,69日目で218μmと,脈絡膜肥厚の改善を認めた(図8).また,長期的な観察では,炎症眼では,正常脈絡膜厚に比して菲薄化を認図7強膜炎症例前眼部に結膜充血.眼底写真では,耳側に漿液性網膜.離(矢印)を認めた.44あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(44) Day0384μmDay13261μmDay69245μmDay0384μmDay13261μmDay69245μm図8強膜炎患者の脈絡膜厚の経時的変化ステロイド薬治療により,脈絡膜厚の減少を認めた.治療開始前は384μm,13日目では261μm,69日目には漿液性網膜.離は消失し,脈絡膜厚は245μmへと減少が観察された.め,Takiら9)も同様の報告をしている.おわりに以上に述べたように,脈絡膜を病変の主座とするぶどう膜炎では,画像診断にて脈絡膜にさまざまな所見が観察される.今後,さまざまな疾患において高侵達SSOCTを用い,病態解明ならびに治療評価も含めた研究が急速に進むことが予想される.文献1)FujiwaraA,ShiragamiC,ShirakataYetal:Enhanceddepthimagingspectral-domainopticalcoherencetomographyofsubfovealchoroidalthicknessinnormalJapaneseeyes.JpnJOphthalmol56:230-235,20122)YamanariM,LimY,MakitaSetal:Visualizationofphaseretardationofdeepposterioreyebypolarization-sensitiveswept-sourceopticalcoherencetomographywith1-micronprobe.OptExpress17:12385-12396,20093)YamaguchiY,OtaniT,KishiS:TomographicfeaturesofserousretinaldetachmentwithmultilobulardyepoolinginacuteVogt-Koyanagi-Haradadisease.AmJOphthalmol144:260-265,20074)IshiharaK,HangaiM,KitaMetal:AcuteVogt-Koyanagi-Haradadiseaseinenhancedspectral-domainopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:1799-1807,20095)NakaiK,GomiF,IkunoYetal:ChoroidalobservationsinVogt-Koyanagi-Haradadiseaseusinghigh-penetrationopticalcoherencetomography.GraefesArchClinExpOphthalmol250:1085-1095,20126)MarukoI,IidaT,SuganoYetal:SubfovealchoroidalthicknessaftertreatmentofVogt-Koyanagi-Haradadisease.Retina31:510-517,20107)KurodaS,IkunoY,YasunoYetal:Choroidalthicknessincentralserouschorioretinopathy.Retina2012,inpress8)MarukoI,IidaT,SuganoYetal:Subfovealchoroidalthicknessaftertreatmentofcentralserouschorioretinopathy.Ophthalmology117:1792-1799,20109)TakiW,KeinoH,WatanabeTetal:Enhanceddepthimagingopticalcoherencetomographyofthechoroidinrecurrentunilateralposteriorscleritis.GraefesArchClinExpOphthalmol2012,Epubaheadofprint(45)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201345

後眼部編:網膜の形態解析

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):31.39,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):31.39,2013後眼部編網膜の形態解析StructuralAnalysisoftheRetina大谷倫裕*はじめに1997年に日本に導入されたTD-OCT(time-domainopticalcoherencetomography)の深さ方向分解能は20μmで,1枚の断層像を得るためのスキャン時間は1秒もかかった.2006年に実用化されたSD-OCT(spectraldomainOCT)の分解能は5.7μmに向上し,スキャン時間も数百倍速くなっている.さらにOCT画像の加算平均を行うとスペックルノイズが除去されて,より高精細な網膜断層像が得られる.また,スキャンの高速化によって,眼底後極部を数秒で三次元画像化できるため,網膜の厚さ解析が容易になった.最近商品化されたSS-OCT(sweptsourceOCT)は,SD-OCTよりも速く,深さによる感度低下が少ないため硝子体から脈絡膜までを詳細に描出できる.本稿では,SD-OCTとSSOCTを用いた網膜の形態解析について述べる.I正常眼底のOCT1.中心窩を含む正常黄斑の断層像(水平断)(図1)黄斑部では中心窩が最も薄いため,中心窩を含むOCTでは網膜は中心窩に向かって陥凹する.硝子体未.離眼では,黄斑部の前方には硝子体液化腔が存在し(後部硝子体皮質前ポケット)1),ポケットの後壁は薄い硝子体皮質からなる.OCTでは,硝子体ポケットは周囲の硝子体ゲルより低反射となる.内境界膜はOCTでは観察できない.網膜表層にある高反射層は神経線維層であり,黄斑鼻側から視神経乳頭に近づくにつれて厚くなる.黄斑耳側では,神経線維層は縫線となるため神経線維層は見えない.黄斑の垂直断では,上下の神経線維層の厚さはほぼ等しい.網膜断層のほぼ中間にある低反射層が内顆粒層である.網膜外層には4本の高反射ラインがあり,硝子体側から強膜側に向かって順に,外境界膜・視細胞内節外節接合部(IS/OS:junctionbetweenphotoreceptorinnerandoutersegment)・錐体外節端(COST:coneoutersegmenttip)・網膜色素上皮と考えられている.さらに外側には脈絡膜があり,SS-OCTでは脈絡膜と強膜との境界が描出される.2.網膜の解剖と断層像(図2)網膜は光学顕微鏡所見から10層に区分される(硝子体側から,内境界膜・神経線維層・神経節細胞層・内網状層・内顆粒層・外網状層・外顆粒層・外境界膜・杆体錐体層・網膜色素上皮層).網膜に到達した光は,第1ニューロンである視細胞で電気信号に変換されたのち,第2ニューロン(双極細胞),第3ニューロン(神経節細胞)を介して,その情報が中枢に伝達される.第1ニューロンである視細胞は,外節・内節・細胞核・軸索・シナプスからなる.外節は,視物質を含む多数の円板状の膜が積み重なってできている.内節は,エリプソイド(網膜色素上皮側)とミオイド(硝子体側)に分けられる.エリプソイドにはミトコンドリアが分布しており,エネルギーを供給する.ミオイドにはGolgi体や小胞体などが含まれ,外節を構成する円板膜の蛋白合*TomohiroOtani:群馬大学大学院医学系研究科病態循環再生学講座眼科学分野〔別刷請求先〕大谷倫裕:〒371-8511前橋市昭和町3-39-15群馬大学大学院医学系研究科病態循環再生学講座眼科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(31)31 強膜視神経硝子体ポケット脈絡膜クローケ管内顆粒層網膜色素上皮IS/OS神経線維層強膜視神経硝子体ポケット脈絡膜クローケ管内顆粒層網膜色素上皮IS/OS神経線維層図1中心窩を含む網膜水平断長波長(1,050nm)光源を用いたSS-OCTによる網膜断層像である.黄斑前には硝子体ポケットがある.硝子体から強膜まで描出することができる.神経線維層神経節細胞層内網状層内顆粒層外網状層外顆粒層網膜色素上皮層脈絡膜外境界膜IS/OSCOST第1ニューロン(視細胞)第2ニューロン(双極細胞)第3ニューロン(神経節細胞)外節ConesheathMuller細胞図2網膜断層像と解剖図1の赤点線部を拡大し,網膜を構成する細胞のシェーマを当てはめたものである(解説は本文参照).32あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(32) 成が行われる.細胞核は外顆粒層に相当する.細胞核から伸びる軸索とシナプスによって外網状層が形成される.視細胞は杆体と錐体の2種類に分類される.錐体は色の識別や形態認識を行い,黄斑の中心直径500μm内の視細胞は錐体からなり杆体は存在しない.錐体は紡錘型をしていると考えられているが,中心窩では杆体のような形をしており,内節と外節の長さはほぼ等しい.中心窩の錐体外節の先端はほぼ網膜色素上皮に達しており,外節先端の一部が網膜色素上皮の微絨毛に包まれている.中心窩から離れるにつれて錐体は紡錘型となる.周中心窩(中心窩から2mm)の錐体外節の長さは内節の半分程度で外節先端は網膜色素上皮まで達しておらず,網膜色素上皮から伸びた微絨毛がさやのように外節先端部を覆っている(conesheath).杆体は明暗の識別を行う.中心窩から離れるにつれて杆体は急速に増加する.AB杆体の外節先端は微絨毛を介して網膜色素上皮に接している.網膜外層にある4本の高反射ラインのうち最も内側にある外境界膜は本当の膜ではなく,視細胞とMuller細胞の接合部(zonulaadherens)に相当する.IS/OSは外節と内節の境界であると考えられているが,内節のエリプソイドであるとの考えもある2).錐体外節はconesheathに包まれており,その外縁は網膜色素上皮まで達していないので,錐体外節外縁が高反射(COST)になると推測されている.外網状層の外側2/3は視細胞の軸索からなり,斜めに走行する〔ヘンレ(Henle)線維〕.OCTの測定光が組織に対し斜めに入射すると同軸方向に戻る後方散乱光が減少するため,実際よりも低反射に描出される.ヘンレ線維に対し測定光は斜めに入射するため,ヘンレ線維からの反射は減弱する.測定光がヘンレ線維に垂直にな内顆粒層シナプスヘンレ線維層外顆粒層内顆粒層シナプスヘンレ線維層外顆粒層図3ヘンレ線維層(SD.OCT)ヘンレ線維に対し測定光(緑点線矢印)は斜めに入射するため,ヘンレ線維からの強い反射は起こらない(A).測定光がヘンレ線維に垂直になるように測定光の入射角度を変えると,ヘンレ線維層からの反射が増強され,明瞭に描出される(赤矢印)(B).(33)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201333 るように測定光の入射角度を変えると,ヘンレ線維層が明瞭に描出される(図3)3).第2ニューロンである双極細胞の樹状突起は外網状層で視細胞の軸索とシナプスを形成し,双極細胞の軸索は硝子体側に伸びて神経節細胞やアマクリン細胞と内網状層でシナプスを作る.内顆粒層は双極細胞・Muller細胞・水平細胞・アマクリン細胞の核からなりOCTでは低反射となる.第3ニューロンである神経節細胞の核は神経節細胞層にあり,OCTでは内網状層と神経線維層の間にある低反射帯として描出される.神経節細胞の軸索は神経線維層を形成する.緑内障における神経節細胞厚の解析は,神経節細胞複合体(GCC:ganglioncellcomplex=網膜神経線維層+神経節細胞層+内網状層)の厚さを評価するところから始まった.IIOCTによる網膜の形態解析1.網膜断層像では内顆粒層の低反射を基準にする網膜の形態は,内顆粒層を基準にするとわかりやすい.正常黄斑のOCTでは,網膜層構造のほぼ中間に内顆粒層の低反射が存在する.中心窩には内顆粒層は存在しないため,内顆粒層の低反射は中心窩付近で途切れる.OCT断層像で内顆粒層の低反射が途切れないで連続している場合は,OCTのスキャンが中心窩を含んでいないことになる(ただし中心窩低形成は例外).内顆粒層には双極細胞(第2ニューロン)の核があるため,内顆粒層よりも内層には神経節細胞(第3ニューロン)があり,内顆粒層と網膜色素上皮層の間は視細胞(第1ニューロン)からなると大まかに理解することができる.2.網膜厚マップも活用する眼底疾患の多くは網膜厚が増減するので網膜厚マップを見ると病変部位がわかりやすい.また,網膜断層像だけではOCTのスキャンラインに含まれない病変は検出できないので,網膜厚マップもチェックすると見落としが少なくなる.病態に応じて神経線維層厚やGCC厚も調べる.3.主病層が網膜内層にある病態a.緑内障(図4)緑内障の本態は網膜神経節細胞の消失であり,神経節B図4緑内障AA:カラー眼底.視神経乳頭の下耳側から神経線維層欠損(NFLD)が広がっている.B:網膜(全層)厚マップ.黄斑下方がNFLDに一致して菲薄化し,青色で示CDされている.C:網膜神経線維層(RNFL)デビエーションマップ.NFLDがピンク色で表示されている.D:黄斑部における内網状層+神経節細胞層(GCL)のデビエーションマップ.黄斑部下耳側はピンク色で表示され,E内網状層とGCLが薄い.E:垂直方向のSD-OCT.黄斑より下方のRNFL・GCLはほとんど消失している(赤矢印).内顆粒層34あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(34) 細胞層・網膜神経線維層の菲薄化が起こる.網膜厚マップでは網膜神経線維の走行に沿って網膜が菲薄化する.GCC厚の解析も緑内障の早期発見に貢献すると考えられている.b.網膜動脈閉塞症(図5)網膜動脈は網膜内層を栄養しているので,動脈閉塞がA図5網膜動脈分枝閉塞症A:カラー眼底写真.黄斑上側の網膜動脈閉塞によって,網膜が白濁している.視力は1.2であった.B:垂直方向のSS-OCT.中心窩から上方の網膜内層は厚くなり反射も強くなっている(赤矢印).C:網膜厚マップ(1カ月後).動脈閉塞の領域に一致して網膜が薄Cくなり,ブルーからグレーで表示されている.D:垂直方向のSS-OCT(1カ月後).中心窩から上方の網膜内層は萎縮しており,内顆粒層の低反射も消失している(赤矢印).起こると網膜内層(神経線維層.内顆粒層)の障害が生じる.急性期では動脈閉塞領域の網膜内層が肥厚し高反射となる.正常では低反射である内顆粒層も高反射となる.眼底検査で,網膜の混濁がはっきりしなくても,OCTで網膜内層が高反射を示すこともある.陳旧期になると動脈閉塞領域の網膜内層が萎縮して薄くなる.網B内顆粒層D図6糖尿病黄斑浮腫A:カラー眼底写真.中心窩を含む黄斑浮腫があり,黄斑部耳側には硬性白斑がある.視力は0.2であった.B:垂直方向のSD-OCT.中心窩には.胞様変化(黄矢印)と漿液性網膜.離(赤矢印)がある.中心窩の下方には網膜外層(ヘンレ線維層)の膨化(青矢印)がある.C:網膜厚マップ.黄斑浮腫は黄斑部の下耳側に強く(白で表示),局所性浮腫であることがわかる.浮腫内の毛細血管瘤に対しレーザー光凝固を行った.D:網膜厚マップ(レーザー治療から11カ月後).局所性浮腫はほぼ消失し,視力は0.4に改善した.BACD内顆粒層(35)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201335 膜厚マップでは,動脈閉塞の領域と一致して網膜が薄くなる.網膜中心動脈閉塞症では中心窩周囲の網膜内層が薄くなるので中心窩の陥凹がなくなる.糖尿病網膜症でも網膜毛細血管床閉塞によって網膜内層が菲薄化する.4.主病巣が網膜外層にある病態a.黄斑浮腫(図6)黄斑浮腫の網膜断層像は網膜膨化・.胞様変化・漿液性網膜.離の組み合わせによって構成される.網膜膨化はおもに外網状層のヘンレ線維層に起こりやすい..胞様変化は,.胞様の低反射として描出され,おもに内顆粒層と外網状層に存在する.漿液性網膜.離は中心窩下に,.離した神経網膜と網膜色素上皮に囲まれた低反射領域として観察される.網膜厚マップによって浮腫の有無や範囲がわかる.糖尿病黄斑浮腫は,局所性浮腫とびまん性浮腫に分類され,局所性浮腫は毛細血管瘤からの漏出によって起こる.局所性浮腫には毛細血管瘤に対すAB内顆粒層る光凝固が有効であり,網膜厚マップによって局所性浮腫を検出することは重要である.b.網膜色素変性(図7)網膜色素変性は,網膜の視細胞・色素上皮細胞が原発的に広範囲に侵される遺伝性疾患群である.視細胞外節の変性によりIS/OSが消失する.IS/OSの消失部位では,やがて視細胞本体も変性するため,外顆粒層の低反射も消失し網膜外層が薄くなる.網膜厚マップでは,黄斑周囲の網膜外層がドーナツ状に菲薄化することが多い.c.錐体ジストロフィ(図8)錐体機能だけが著しく障害され,進行性の視力低下・色覚異常をきたす.錐体の分布に一致してIS/OSが消失し,外顆粒層も菲薄化または消失する.網膜厚マップでは黄斑の網膜厚が減少する.C図7網膜色素変性A:カラー眼底写真.黄斑部周囲の網膜は灰色で粗造となっている.視力は1.2であった.B:水平方向のSS-OCT.黄斑部周辺の網膜はIS/OS・外顆粒層・外網状層がほぼ消失している(赤矢印).C:網膜厚マップ.網膜外層の消失により黄斑部周囲の網膜はドーナツ状に菲薄化している.36あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(36) CAB内顆粒層図8錐体ジストロフィA:カラー眼底写真.黄斑変性がある.視力は0.1であった.B:水平方向のSD-OCT.黄斑では視細胞外節や外顆粒層が消失している.さらに網膜色素上皮の萎縮により脈絡膜が通常よりも高反射となっている.C:網膜厚マップ.網膜外層の消失により黄斑は菲薄化している.A内顆粒層CBD図9AZOORA:カラー眼底写真.視神経乳頭の周囲に軽度の萎縮病変がある.B:静的視野.耳側に半盲様の暗点がある.C:多局所網膜電図.視野に一致して反応が低下している.D:水平方向のSD-OCT.黄斑から鼻側にかけて(赤矢印の範囲)IS/OSや外顆粒層が消失している.(37)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201337 ABC図10特発性黄斑円孔(stage3)A:カラー眼底写真.中心窩に黄斑円孔がある.視力は0.2であった.B:水平方向のSS-OCT.C:垂直方向のSS-OCT.円孔周囲の外網状層と内顆粒層には.胞様変化がある.黄斑から.離した硝子体ポケットの後壁(硝子体皮質)(赤矢印)とポケットの前壁(黄矢印)が描出されている.ABC内顆粒層図11特発性黄斑前膜A:カラー眼底写真.黄斑に前膜がある.視力は1.2であった.B:水平方向のSS-OCT.C:垂直方向のSS-OCT.肥厚した前膜が網膜表面にある.前膜の収縮によって網膜が膨化し中心窩の陥凹が消失している.中心窩周囲では内顆粒層を含む網膜内層に膨化がある.この症例は後部硝子体.離がないため,硝子体ポケットが明瞭に観察される.黄矢印はポケットの前壁を示す.38あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(38) d.AZOOR(acutezonaloccultouterretinopathy)(図9)AZOORは若い女性に多く,光視症や視野欠損などをきたす.視野障害はMariotte盲点の拡大から始まることが多い.主病巣は網膜外層から網膜色素上皮にあると考えられているが,原因は不明である.OCTでは,病変部位の視細胞外節が消失し,IS/OSが見えなくなる4).進行症例では外顆粒層も消失し,外層網膜は薄くなる.5.網膜硝子体界面病変a.特発性黄斑円孔(図10)硝子体ポケットの後壁である硝子体皮質の中心窩牽引によって生じる.黄斑円孔の初期(stage1)では中心窩の層間分離(.胞様変化)または微小網膜.離が起こる.Stage2以上では円孔周囲の.胞様変化が観察される.b.特発性黄斑前膜(図11)黄斑前膜の収縮によって網膜が肥厚する.OCTでは,網膜内表面に前膜の反射が描出され,網膜膨化によって中心窩の陥凹消失することが多い.内顆粒層を含む網膜内層がおもに膨化する.中心窩に円形の高反射がIS/OSとCOSTの間に見られることがある(cottonballsign)5).文献1)KishiS,ShimizuK:Posteriorprecorticalvitreouspocket.ArchOphthalmol108:979-982,19902)SpaideRF,CurcioCA:Anatomicalcorrelatestothebandsseenintheouterretinabyopticalcoherencetomography:literaturereviewandmodel.Retina31:1609-1619,20113)OtaniT,YamaguchiY,KishiS:ImprovedvisualizationofHenlefiberlayerbychangingthemeasurementbeamangleonopticalcoherencetomography.Retina31:497501,20114)LiD,KishiS:Lossofphotoreceptoroutersegmentinacutezonaloccultouterretinopathy.ArchOphthalmol125:1194-1200,20075)TsunodaK,WatanabeK,AkiyamaKetal:Highlyreflectivefovealregioninopticalcoherencetomographyineyeswithvitreomaculartractionorepiretinalmembrane.Ophthalmology119:581-587,2012(39)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201339

前眼部編:隅角・虹彩の形態解析

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):25.29,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):25.29,2013前眼部編隅角・虹彩の形態解析ApplicationsofOCTImaginginIrisandAngleAssessment酒井寛*はじめに光干渉断層計(OCT)は非接触で施行が可能であり,虹彩・隅角の描出が可能である.前眼部に特化した前眼部OCTを用いる以外に後眼部撮影用のOCTにおいても前眼部を撮影できる機能をもったものがある.現在は前眼部三次元画像解析として先進医療の枠組において保険診療との混合診療が認められており,今後の保険収載が期待されている.隅角・虹彩の形態解析は隅角閉塞の診断,解析データを用いたスクリーニングの可能性の探求,および病態理解のための研究などを目的として行われている.一方,虹彩の後方が写らないことから隅角閉塞機序の診断には限界がある.OCTによる隅角診断の最終目標の一つは隅角閉塞の有無と機序の自動診断であるが,隅角閉塞の有無の自動診断はすでに開発済みで実用化段階にあり,今後のトレンドとなると考えられる.IOCTによる前眼部撮影の種類と特徴現在,眼底用のOCTにおいても前眼部撮影の機能をもつ機種が増えている.これにより,隅角の開放,閉塞が観察可能である.一方,眼底用のOCTを前眼部用に用いる場合,解像度は高いが侵達度が低く,隅角底が描出できない症例が存在するなど,前眼部解析に用いるには難点が存在する(図1).前眼部OCTは後眼部用よりも長い1.3μmの波長の光源を用いるため組織侵達度が高く,隅角・虹彩の描出が可能である.眼底用と同様に描画方式にはタイムドメイン式とFourierドメイン式が図1後眼部用OCT(TOPCON社)による前眼部撮影上:隅角底は撮影されていないが,隅角は狭いが開放していると考えられる.下:虹彩と線維柱帯部の接触が確認できるので,隅角閉塞している.画像に左は撮像部位,隅角の画像の下方には重ね合わせの成功率が表示されている.ある.タイムドメイン式の前眼部OCTとしてはHeidelberg社のSL-OCTとZeiss社のVisanteがある.また,Fourierドメイン式にはスエプトソース式の前眼部OCTとしてTOMEY社のSS-1000(CASIA)がある.スエプトソース前眼部OCTはタイムドメイン式に比べ*HiroshiSakai:琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座〔別刷請求先〕酒井寛:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学大学院医学研究科・医科学専攻眼科学講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(25)25 表1OCTによる前眼部撮影装置の種類と特徴撮像方式機器名特徴Fourierドメイン後眼部用OCT(各種)描出範囲が狭く,隅角底が写らないこともあるタイムドメインSL-OCT(Heidelberg)Visante(CarlZeiss)前眼部撮影に特化.両隅角,虹彩断面が1枚の画像に描出可能スエプトソースCASIA(TOMEY)非常に高速に前眼部撮影が可能であり隅角,虹彩の三次元画像解析が可能て解像度が高く,撮像時間が短く,三次元画像解析も可能である(表1).II前眼部OCTによる隅角の描出能前眼部OCTでは角膜,結膜,強膜,虹彩の全層が描出可能である.水晶体は瞳孔領内のみ描出され,虹彩後方の水晶体は描出されない.毛様体の扁平部は描出されるが,皺襞部は描出されない(図2).スエプトソース前眼部OCTは非常に解像度が高く,高解像度モードを用いることによりSchlemm管や結膜や強膜内を走行する血管,Descemet膜も描出される1)(図3).タイムドメイン前眼部OCTのVisanteも比較的明瞭に隅角構造が図2タイムドメイン式前眼部OCT(Zeiss社)による前眼部撮影上:低解像度モード.画角が広く両方の隅角が描出される.この画像では強膜岬の描出も比較的良好である.下:高解像度モード.画角は狭いが,隅角底の位置の同定が低解像度モードよりも良好である.描出可能であるが,Schlemm管やDescemet膜は描出されない(図2).III前眼部OCTによる隅角定性評価スエプトソース前眼部OCTの高解像度モードでは隅角構造が非常に鮮明に描出されるので周辺虹彩前癒着(PAS)の有無が診断可能な場合がある.PASのない非器質的閉塞では線維柱帯と虹彩は明瞭に分かれて描出されることが多いが,PASのある部分では2つの組織の境界は描出されず癒着していることが推測できる(図3).前眼部OCTによる隅角定性評価は隅角鏡検査を補完するものであり,適切な隅角鏡検査を併用することが必要である.隅角閉塞の診断は前眼部OCTの使用目的の大きな部分を占める.隅角底や強膜岬の同定は必ずしも明瞭ではないが,多くの場合隅角の開放,閉塞は判定可能である.最近,シンガポール国立眼研究センターのSchlemm管血管周辺虹彩前癒着図3スエプトソース前眼部OCT(TOMEY社)による前眼部撮影Schlemm管が同定され,線維柱帯の位置の同定が明瞭である.周辺虹彩前癒着の部位は虹彩と線維柱帯の境界が描出されず器質的な癒着を示していると考えられる.強膜内の血管,Descemet膜も描出可能である.26あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(26) TinAungらは,専門医の隅角閉塞診断をコンピュータに学習させ自動判定するプログラムを開発した(私信,2012).今後,隅角の閉塞判定を自動で行うソフトウェアの普及が見込まれる.IV前眼部OCTによる虹彩の定性・定量評価虹彩の厚さ,虹彩の前方膨隆の程度から瞳孔ブロックの有無を判断する.毛様体皺襞部が描出されないのでプラトー虹彩の診断は困難であるが,瞳孔ブロックの関与が少ない場合にはプラトー虹彩の可能性が高いと考えることができる.虹彩の表面は収縮溝があり凹凸があるので,虹彩が平坦か膨隆しているかの判断は虹彩の裏面で行う.虹彩根部と瞳孔縁を結ぶ直線から虹彩裏面へ下ろした垂線の最大距離で隅角膨隆の程度を定量化することができる(図4).虹彩厚,虹彩断面積(図5),さらにそれを回転させて虹彩容積を計算することも可能である.虹彩厚が隅角閉塞の独立した関連因子であるかどうかについては異論があり,結論は出ていない.水晶体と虹彩の接触は瞳孔ブロックの原因と考えられているが,水晶体表面の延長曲線上で接触長を推定することが可能である2).前立腺肥大治療薬など選択的a1ブロッカーの内服により生じる術中虹彩緊張低下症候群〔フロッピーアイリス症候群(IFIS:intraoperativefloppyirissyndrome)〕の病因として,虹彩の瞳孔散大筋部位の菲薄化が前眼部OCTにより示されている3)(図5).a1ブロッカー服用者では白内障手術前に前眼部OCTを撮影することにより術中虹彩緊張低下症候群を予想できる可能性がある.V前眼部OCTによる隅角定量評価超音波生体顕微鏡(UBM)の隅角評価で用いられたパラメータ4)を同様に測定することが可能である.隅角閉塞はこれらのパラメータなしにも診断可能であるので,定量評価は臨床研究目的に使用されることがほとんどであり,臨床上これらの数値を基準とすることは一般的ではない.主要なパラメータとしては隅角角度,隅角開大度(angleopeningdistance:AOD),隅角部面積,隅角幅などがある(図6).中央前房深度,水晶体膨隆度も測定可能である(図6).これらのパラメータは隅角鏡診断隅角は狭いが開放隅角は閉塞強膜岬,隅角底の位置は不明瞭虹彩裏面が平坦虹彩膨隆度図4瞳孔ブロック(上)とプラトー虹彩のスエプトソース前眼部OCT画像(下)上:瞳孔ブロック.強膜岬の位置は不明瞭だが隅角の開放,閉塞の診断は可能である.虹彩は前方に凸である.虹彩裏面からの距離をもって虹彩の膨隆度を定量化することも可能である.下:プラトー虹彩.虹彩裏面は平坦であるが,隅角は閉塞している.毛様体は描出されていない.PMSS0.75mm0.75mm1/2distancePMSS1/2distanceSMRDMRSMRDMR図5術中虹彩緊張低下症候群〔フロッピーアイリス症候群(IFIS:intraoperativefloppyirissyndrome)〕の前眼部OCT所見(文献3より)上:a1ブロッカー(タムスロシン)内服患者.下:年齢を合わせた対照.DMR:瞳孔散大筋部,SMR:瞳孔括約筋部,SS:強膜岬,PM:瞳孔縁.(27)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201327 虹彩断面積隅角開大距離隅角角度隅角部面積隅角幅中心前房深度水晶体膨隆度図6前眼部OCTによる虹彩,隅角の定量パラメータ上:隅角開大度,隅角角度,隅角部面積,虹彩断面積.下:隅角幅,中心前房深度,水晶体膨隆度.虹彩断面積隅角開大距離隅角角度隅角部面積隅角幅中心前房深度水晶体膨隆度図6前眼部OCTによる虹彩,隅角の定量パラメータ上:隅角開大度,隅角角度,隅角部面積,虹彩断面積.下:隅角幅,中心前房深度,水晶体膨隆度.を正とした隅角閉塞診断と統計的有意に独立して関連していることが最近の臨床研究により示唆されている5.7).隅角の開放,閉塞も同じ画像に描出されているのでこれらのパラメータの測定は隅角閉塞診断のためには不要であるが,隅角閉塞機序の究明,閉塞隅角のスクリーニングや発症予測などの基礎的な研究のために有用である.また,隅角開大度や隅角部面積はレーザー虹彩切開術や水晶体再建術後の隅角の開放の度合いを定量解析するパラメータとしてよく用いられる.たとえば,水晶体膨隆度は水晶体の前面曲率が小さく,水晶体が相対的に前方に位置する眼で大きくなることが想定される.隅角幅とともに,前眼部OCTで独立した閉塞隅角の関連因子であることが新たに示された.隅角部面積も隅角開大度とほぼ同じ意味合いをもつ後発のパラメータである.統計解析において距離という一次元データである隅角開大度よりも二次元データである隅角部面積のほうが有意差を検出しやすい.一方,隅角部面積はデータがイメージしにくいが,隅角開大度であれば,AOD500が200μmであれば,強膜岬から500μmの隅角が200μm開大している,ということを示しているので,数字情報を画像イメージに結びつけやすいという利点がある.現在は強膜岬を手動で同定するだけで解析は半自動で行われるソフトウェア(内蔵型,独立型)28あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013濾過手術の強膜弁濾過胞内の微小.胞結膜およびTenon結膜上皮Tenon.下の濾過胞隅角閉塞(非器質的閉塞)Tenon.図7前眼部OCTによる濾過胞の評価上:強膜弁下,Tenon.下に流出した房水(濾過胞)が低輝度で描出されている.結膜,Tenonは厚いが眼圧コントロールは良好.下:濾過胞壁の結膜に比べてTenon.の輝度が低く,内部には微少な.胞様所見があり,Tenon内に房水が分布している様子が観察される.も複数開発されており,自動測定の実現に向かって進化している.VI前眼部OCTによる濾過胞の評価(図7)前眼部OCTは非接触検査であり,濾過胞を観察する道具としても有用である.結膜,Tenon.,濾過胞内の組織の密度,強膜フラップの状態などが可視化され,眼圧下降との関連が示されている8).長期経過では濾過胞がなくても眼圧下降のみられる症例や薄く大きな濾過胞でも眼圧上昇をきたす症例もあり,画像のみから眼圧の予後を予測することは困難である.また,濾過胞が非常に大きい場合や結膜の瘢痕の状態などにより濾過胞の描出が制限されることも多く,眼瞼に隠れて撮影がむずかしいこともあり,濾過胞全体を描出することは必ずし(28) も容易ではない.一方,濾過手術の術後に眼圧下降,眼圧上昇などが起きた際の原因検索には有用である.濾過胞再建術の効果の判定にも有用である.VII前眼部OCTによるビデオイメージング前眼部OCTは動画撮影も可能であり,虹彩の動きに伴う隅角形状の変化など動的解析を行うことが可能である.瞳孔運動は一般的に散瞳時に虹彩が厚くなり,縮瞳時に虹彩は薄くなる.虹彩が厚くなるとほぼそれに等しいだけ隅角は狭くなることがUBMを用いた研究で示されている9).一方で近年,原発閉塞隅角眼では散瞳による虹彩容積の縮小が開放隅角眼より少ないという報告10)もあり,動的な虹彩の挙動に注目が集まっている.VIIIまとめ:前眼部OCTによる隅角・虹彩評価の役割前眼部OCT画像は隅角が描出されるので隅角閉塞の診断には数値解析は不要である.隅角閉塞に関連した隅角開大度,隅角部面積,隅角間距離などのパラメータを計測する意味合いはおもに隅角閉塞機序の解明や経過観察のための研究目的である.一方,虹彩の膨隆の有無,虹彩厚,PASの有無と範囲,隅角閉塞範囲の評価などは治療選択など臨床上有用である.たとえば,虹彩膨隆は瞳孔ブロックの存在を疑わせる所見でありレーザー虹彩切開術の適応決定などに有用であろう.虹彩が非常に厚く虹彩膨隆が少ない症例ではレーザー虹彩切開術の効果は少なく,施行も困難であることが術前に予想が可能である.非常に前房の浅い症例では圧迫隅角鏡検査を行ってもPASの範囲を同定することは困難である.こうした症例や閉塞隅角以外でも前房出血のある血管新生緑内障眼におけるPASの有無の検索などにも有用である.隅角閉塞範囲の決定も臨床上非常に有用である.通常4方向の隅角の明所,暗所での閉塞の有無を観察する.前眼部OCTは体位,固視灯などの撮影条件などの違いによりUBMよりも隅角は広く撮影される11,12).前眼部OCTで狭隅角の場合には条件によって隅角は閉塞している可能性がある.一方,前眼部OCTにおいて隅角が閉塞している場合には,隅角閉塞の程度は強いと考えられるので手術適応の決定などに有用である.そうした意(29)味からも,前眼部OCTによる隅角閉塞のコンピュータ(さらには人工知能)による自動診断が今後の隅角閉塞診断において主流となるであろう.文献1)酒井寛:UBMと前眼部OCTのみかた.眼科52:617626,20102)ZhengX,SakaiH,GotoTetal:Anteriorsegmentopticalcoherencetomographyanalysisofclinicallyunilateralpseudoexfoliationsyndrome:evidenceofbilateralinvolvementandmorphologicfactorsrelatedtoasymmetry.InvestOphthalmolVisSci52:5679-5684,20113)PrataTS,PalmieroPM,AngelilliAetal:Irismorphologicchangesrelatedtoalpha(1)-adrenergicreceptorantagonistsimplicationsforintraoperativefloppyirissyndrome.Ophthalmology116:877-881,20094)IshikawaH,LiebmannJM,RitchR:Quantitativeassessmentoftheanteriorsegmentusingultrasoundbiomicroscopy.CurrOpinOphthalmol11:133-139,20005)NongpiurME,SakataLM,FriedmanDSetal:NovelassociationofsmalleranteriorchamberwidthwithangleclosureinSingaporeans.Ophthalmology117:1967-1973,20106)NongpiurME,HeM,AmerasingheNetal:Lensvault,thickness,andpositioninChinesesubjectswithangleclosure.Ophthalmology118:474-479,20117)NarayanaswamyA,SakataLM,HeMGetal:Diagnosticperformanceofanteriorchamberanglemeasurementsfordetectingeyeswithnarrowangles:ananteriorsegmentOCTstudy.ArchOphthalmol128:1321-1327,20108)KawanaK,KiuchiT,YasunoYetal:Evaluationoftrabeculectomyblebsusing3-dimensionalcorneaandanteriorsegmentopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:848-855,20099)HenzanIM,TomidokoroA,UejoCetal:Comparisonofultrasoundbiomicroscopicconfigurationsamongprimaryangleclosure,itssuspects,andnonoccludableangles:theKumejimaStudy.AmJOphthalmol151:1065-1073,201110)AptelF,DenisP:Opticalcoherencetomographyquantitativeanalysisofirisvolumechangesafterpharmacologicmydriasis.Ophthalmology117:3-10,201011)RadhakrishnanS,GoldsmithJ,HuangDetal:Comparisonofopticalcoherencetomographyandultrasoundbiomicroscopyfordetectionofnarrowanteriorchamberangles.ArchOphthalmol123:1053-1059,200512)WangD,PekmezciM,BashamRPetal:Comparisonofdifferentmodesinopticalcoherencetomographyandultrasoundbiomicroscopyinanteriorchamberangleassessment.JGlaucoma18:472-478,2009あたらしい眼科Vol.30,No.1,201329

前眼部編:角膜の形態解析

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):15.23,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):15.23,2013前眼部編角膜の形態解析CornealTopographywithOpticalCoherenceTomography上野勇太*福田慎一*大鹿哲郎*はじめに角膜は眼球における最大の屈折要素である.角膜前面の曲率半径の測定については,1619年にScheinerがガラス球を使用して測定したのが最初といわれており,その後ケラトメータやプラチド型角膜形状解析装置が開発されてきた.これらマイヤーリングを使用した測定方法は,さまざまな検査方法が開発されてきた今でも角膜前面の形状解析においてgoldstandardである.しかし,マイヤーリングを使用した方法では,ドライアイのように涙液層が不安定であったり,形状変化が非常に強い症例に適さず,また角膜後面の測定ができないことも欠点である.エキシマレーザーを使用した屈折矯正手術の登場とともに,角膜前面のみならず,角膜後面や角膜厚についても正確に評価する必要性が生じている.この要求に応えるように広く利用されてきたのがスリットスキャン型角膜形状解析装置である.スリット状の可視光で角膜を連続的にスキャンし,得られたスリット像から三角測量法で角膜前面と後面の三次元的な形状解析が可能である.初めて角膜後面の形状解析が可能となった器械であり,正常眼1)だけでなく,屈折矯正手術後2,3)や円錐角膜4)などの角膜形状解析について報告されており,測定原理の違いからマイヤーリングでの測定がむずかしい病的眼でも精密な検査が可能である5).その後,シャインプルーク(Scheimpflug)カメラを使用した角膜形状解析装置が開発された.スリット状の可視光が回転しながら角膜をスキャンする測定方式で,従来のスリットスキャン型と比較して測定精度が高いとする報告もある6).しかし,どちらの方式も可視光を使用しているため角膜混濁に弱いという欠点があり,すべての症例に対して精密な検査が可能であるとはいえない.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:以下,OCT)が黄斑部の形態評価に使用されるようになり,黄斑疾患の診断・治療に革新的な変化をもたらした.近年では,前眼部撮影用に改良され,角膜形状解析にも利用可能となった.赤外光を使用するために角膜混濁に強く,高解像度であることから角膜前面および後面の精密な測定が可能であり,角膜形状解析の他に各種前眼部手術前後の角膜形態評価にも汎用されている.本稿では,前眼部OCTによる角膜形状解析の機種や測定精度に関する過去の報告について概説し,角膜形状解析における現状での立ち位置を確認するとともに,前眼部OCTを利用して角膜前面・後面のフーリエ(Fourier)解析を行った筆者らの研究結果を報告する.また,前眼部OCTを使用した前眼部手術前後の角膜形態評価について,過去の報告や自験例を交えて概説する.I前眼部OCTによる角膜形状解析眼科領域でOCTが導入され,1994年には角膜・前眼部分野に応用された7).当初のOCTはTimedomain方式であり,スキャン速度や解像度は十分ではなかったものの,非接触で角膜・前房・虹彩などの前眼部形態評*YutaUeno,ShinichiFukuda&TetsuroOshika:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕上野勇太:〒305-8575つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(15)15 表1角膜形状解析が可能であるOCTの比較VisanteCASIARTVue測定方式TimedomainFourierdomainFourierdomain(Sweptsource)(Spectraldomain)波長1,310nm1,310nm840nm解像度(深度)18μm10μm5μm解像度(横断面)60μm30μm15μmスキャン速度2,000A-スキャン/秒30,000A-スキャン/秒26,000A-スキャン/秒角膜形状解析モードradialscanradialscanradialscanスキャン範囲10mm10mm6mm測定点128点×16方向512点×16方向1,024点×8方向測定時間0.5秒0.3秒0.3秒価が可能という点で,画期的であった.現在,Timedomain方式で使用可能な前眼部OCTに,Visante(CarlZeiss)がある.その後,Fourierdomain方式が開発され,より高速・高解像度の検査が可能となった.前眼部専用のFourierdomainOCTとして現在使用可能な機種はCASIA(TOMEY)のみであり,眼底撮影用のOCTにアタッチメントを装着することで前眼部も撮影可能な機種が複数存在する.そのなかで,定量的な角膜形状解析が可能である機種として,RTVue-100(Optovue),3DOCT-2000(Topcon),RS-3000(NIDEK)などがあげられる.ここでは,前眼部OCTであるVisanteとCASIA,そして眼底撮影用のなかですでにいくつかの報告で使用されているRTVueについての比較を表1にまとめた.VisanteはTimedomain方式であるため,他の2機種に比べてスキャン速度や解像度が見劣りするのは否めない.CASIAはFourierdomain方式の波長走査型SweptsourceOCTであり,1,310nmという前眼部に最適な高波長でのスキャンを実現している唯一の機種である.前眼部専用であるため豊富なアプリケーションを備え,角膜形状解析においても測定断面が16本と,精密な測定が可能である.RTVueはFourierdomain方式の分光器型SpectraldomainOCTで,従来は眼底撮影用であるため,波長は830nmである.アタッチメントを装着することで前眼部の撮影が可能で,スキャン速度や解像度はCASIAと比べて見劣りはしない.しかし,眼底撮影用であるために角膜形状解析のアプリケーションは少ない.16あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013II前眼部OCTによる角膜形状解析の測定精度Tangらは,RTVueを用いて正常眼の角膜前面屈折力・後面屈折力・角膜厚から算出された角膜屈折力を測定し,そのrepeatabilityを検討したところ,正常眼の角膜屈折力測定におけるrepeatabilityは0.19Dで,過去の報告におけるオートケラトメータのrepeatabilityである0.14D,シャインプルークカメラの0.10.0.14Dと比べても遜色のない結果であると述べた8).また,彼らは以前Timedomain方式の前眼部OCTでも同様の報告を行っており,そのOCTではスキャン速度が2,000Aスキャン/秒と遅く,正常眼の角膜屈折力のrepeatabilityは0.71Dであった9).これらの報告より,前眼部OCTはTimedomain方式からFourierdomain方式に改良され,測定速度が飛躍的に向上し,角膜形状解析において従来装置に引けを取らない測定精度をもつことができたといえる.病的変化の強い症例に対する角膜形状解析については,従来のマイヤーリングを用いた角膜形状解析装置よりもスリットスキャン型角膜形状解析装置のほうがデータの欠損が少ないと報告されている5).これは,マイヤーリングを用いる場合,急激な曲率変化を有する症例ではマイヤーリング像の分離・解析が困難になるためである.前眼部OCTも撮影原理はスリットスキャン型と類似しており,図1に示すようなプラチド型角膜形状解析装置での撮影が困難な症例でも撮影可能である.また,NakagawaらはCASIAとシャインプルークカメラを用(16) 図1円錐角膜症例左:プラチド型角膜形状解析装置,右:CASIA.円錐角膜症例を同一日にプラチド型角膜形状解析装置とCASIAで撮影した.プラチド型では角膜形状変化が強く,マイヤーリングの検出が不良でカラーコードマップが乱れている.CASIAでは前面(左map)・後面(右map)ともきれいに撮影されており,前面で下方の局所的な急峻化が顕著で,同部位は後面でも同様の形状変化をしていることがよくわかる.いて円錐角膜眼の角膜形状解析を行ったところ,CASIAのほうが角膜前面・後面のdigitizationが良好であり,測定精度が高いと報告している10).これは前眼部OCTの撮影が高速・高解像度であることに起因していると考察されている.Samyらは,角膜混濁眼の角膜厚解析において従来のスリットスキャン型角膜形状解析装置とRTVueの比較を行い,スリットスキャン型角膜形状解析装置ではRTVueの角膜厚より有意に低く測定されることを明らかにし,RTVueでは正常眼も角膜混濁眼もほぼ同様のrepeatabilityで測定が可能であることを示した11).スリットスキャン型角膜形状解析装置やシャインプルークカメラでは可視光を使用するため,角膜混濁のある症例では角膜後面まで光が透過せず,角膜後面を正確にスキャンすることはできない.一方で前眼部OCTは赤外光を使用するため角膜混濁眼でも非常に正確な角膜後面のスキャンが可能であり,その測定精度は正常眼と変わらないということが示された.以上より,前眼部OCTの角膜形状解析について,正常眼における角膜屈折力の測定精度は従来の器械とほぼ同等であり,病的眼の形状解析においては従来の器械より幅広い症例に適応があり,高精度の解析が可能であるといえる.III角膜前面・後面のフーリエ解析角膜の不正乱視を定量化する方法の一つとして,フーリエ解析が用いられている.角膜前面においては,プラチド型角膜形状解析装置TMS-2(TOMEY)を用いた過去の報告12)で正常眼のデータから正常範囲が決定されており,広く臨床的に使用されている.一方,角膜後面に関しては正常範囲の決定はなされておらず,どの程度が角膜後面の不正乱視として正常であるかは判断しづらい状況にある.そこで,筆者らはCASIAを使用して正常眼の角膜形状解析を行い,得られたデータから角膜前面・後面のフーリエ解析の正常範囲を決定し,その数値を使用して強度乱視眼や病的眼の角膜前面・後面の形状評価を行ったので以下に示す.1.対象および方法正常群として,眼疾患を有さない150例300眼(男性85例,女性65例)を対象とした.平均年齢は41.0±20.4歳(6.86歳)で,2D以上の角膜乱視・.10D以上の最強度近視・眼科手術歴のある症例・コンタクトレンズ装用症例は除外した.また,K値の乱視度数が2D以上の角膜乱視群として直乱視群25例30眼と倒乱視群20例30眼,円錐角膜群として31例48眼,全層角膜移植後(以下,PKP後)として24例24眼,角膜内皮(17)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201317 移植後(以下,DSAEK後)として12例12眼を比較対象とした.上記の対象において,CASIAの“CornealMap”モードで撮影し,角膜前面(keratometricdata:以下,K値)と角膜後面のそれぞれ中心3mm領域のフーリエ解析を行った.フーリエ解析により角膜屈折力は球面成分・正乱視成分・非対称成分・高次不正乱視成分の4成分に細分化される.正常群300眼の各4成分について平均(mean)と標準偏差(SD)を算出し,その数値を使用して正常範囲をmean±2×SDと定義し,mean±3×SD以内をグレーゾーン,それを超える数値を異常値とした.強度乱視群・円錐角膜群・PKP後・DSAEK後についても同様に,角膜前後面におけるフーリエ解析を行い,正常範囲およびグレーゾーンに収まっている症例の割合を検討した.2.結果正常群300眼の平均値および標準偏差より得られた正常範囲は,角膜前面(K値)において,球面成分が40.66.46.24D,正乱視成分が0.0.90D,非対称成分が0.0.52D,高次不正乱視成分が0.0.20Dであった.一方,角膜後面については球面成分が.6.600..5.701D,正乱視成分が0.0.271D,非対称成分が0.0.104D,高次不正乱視成分が0.0.032Dであった.同様に,グレーゾーンについても表2に記載したとおりであった.各対照群が正常範囲・グレーゾーンに収まった割合を角膜前面と後面で比較すると,強度乱視群はいずれも角膜前面のほうが後面よりも異常値の割合が高く,円錐角膜群・DSAEK後では後面のほうが前面よりも異常値の割合が高く,PKP後では前面と後面で明らかな差は認めなかった(表3).代表症例の前面・後面のフーリエ解析結果を図2.4に提示する.解析結果は成分ごとに数値化されて表示されるが,今回算出した基準値を用いて,正常範囲に収まった数値は緑色で,グレーゾーンに収まった数値は黄色で,異常値は赤色で表示され,どの成分が正常か異常か容易に識別可能である.3.考察角膜前面(K値)のフーリエ解析結果は,以前プラチド型角膜形状解析装置を使用して算出された正常範囲と非常に近くなった.角膜後面に関しては,今までフーリエ解析の正常範囲を決定した報告はなく,筆者らの研究が初めてである.強度乱視群の結果より,角膜後面の乱視は直乱視と倒乱視で大きく傾向が異なることがわかる.近年toricIOL(眼内レンズ)を使用した白内障手術が盛んになってきたため,角膜後面乱視が術後成績に与える影響も検討されるようになってきた13).今後も角膜後面乱視についてさらなる検討がなされることを期待したい.病的眼の解析において,角膜前面と後面で変化の程度を比べると,円錐角膜では後面の変化が強く,PKP後では前面と後面で同等,DSAEK後では後面の変化が表2フーリエ解析で算出される各成分の正常範囲およびグレーゾーン〔上段:角膜前面(keratometricdata)下段:角膜後面〕球面成分正乱視成分非対称成分高次不正乱視成分正常値(mean±2×SD)40.66.46.240.0.900.0.520.0.20グレーゾーン(mean±3×SD)39.26.47.640.1.120.0.660.0.23(単位:D)球面成分正乱視成分非対称成分高次不正乱視成分正常値(mean±2×SD).6.600.-5.7010.0.2710.0.1040.0.032グレーゾーン(mean±3×SD).6.825.-5.4760.0.3280.0.1320.0.038(単位:D)18あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(18) 表3対照群における正常範囲およびグレーゾーンに収まった症例の割合上段:正常範囲に収まった割合下段:グレーゾーンに収まった割合10%以内となった成分は赤色,25%以内となった成分は黄色で色分けした.成分直乱視倒乱視円錐角膜PKP後DSAEK後前面後面前面後面前面後面前面後面前面後面球面9093939015433298317正乱視03701001368131750非対称879383870084250高次不正乱視1009380731520008(単位:%)成分直乱視倒乱視円錐角膜PKP後DSAEK後前面後面前面後面前面後面前面後面前面後面球面100979310023850388333正乱視77740100251313255058非対称939797900088580高次不正乱視100971009725600258(単位:%)図2円錐角膜代表症例の前面(keratometric)フーリエ解析マップ円錐角膜の症例をフーリエ解析し,カラーコードマップに表示した.上段左がK値のaxialpowermapであり,フーリエ解析前の屈折力を表している.フーリエ解析で分解された各4成分がカラーコードマップで表示され,上段中央が球面成分・上段右が正乱視成分・下段左が非対称成分・下段右が高次不正乱視成分である.左下に各成分の数値が算出されており,正常値は緑色・グレーゾーンは黄色・異常値は赤色で表示される.本症例では,3mm領域の球面成分は正常値で,正乱視成分と非対称成分は異常値,高次不正乱視成分はグレーゾーンである.(19)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201319 図3図2と同一症例の後面フーリエ解析マップ図2の症例の角膜後面のフーリエ解析をカラーコードマップに表示した.表示形式は図2と同様である.光は,角膜前面では空気から角膜実質に入る一方で,角膜後面では角膜実質から房水に入るため,媒質の屈折率の関係で角膜前面と後面で屈折力が逆になる.このため,axialpowermapや各4成分で図2と正反対のカラーコードマップを示していることがわかる.左下の数値をみると,角膜後面ではすべての成分が異常値であった.図4図2と同一症例のフーリエ解析―前面・後面・全角膜一括マップ(プロトタイプ画面)図2と3を同じ画面に一括表示する機能が追加される予定であり,そのプロトタイプを表示した.上段が角膜前面(keratometricではない)・中段が角膜後面・下段が角膜全体である.このように一括表示すれば,前面と後面の関係性がわかりやすく,前面の変化がある場所に一致して,後面の変化が逆方向の屈折として作用していることが直感的に理解できる.なお,当プロトタイプでは,前面と後面のカラースケールは3:1の大きさで表示していることに注意されたい.20あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(20) 強いことが明らかとなった.円錐角膜の形状変化は,角膜前面より後面に先行して出るのではないか,と注目されている14).円錐角膜症例では前面より後面のほうが形状変化の強いことが示されたが,前面が正常で後面のみ異常という症例は確認できなかった.また,PKP後およびDSAEK後の結果は各手術手技の特徴を反映した結果となった.以上より,今回算出したフーリエ解析の正常範囲を用いて強度乱視眼・病的眼の解析を行うことで,各疾患の性質をよく捉えることができ,臨床的に十分使用可能であることが示された.球面成分・正乱視成分は眼鏡装用により矯正可能であり,非対称成分・高次不正乱視成分は眼鏡装用では矯正不能な不正乱視である.また,角膜前面の不正乱視はハードコンタクトレンズによる矯正が可能であるが,角膜後面の不正乱視はハードコンタクトレンズでも矯正不能であり,角膜後面フーリエ解析のもつ意味は決して少なくないといえる.今まで,角膜後面形状解析に関しては詳細に検討されていなかった現状があり,今後さらなる検討が行われることが望まれる.IV前眼部手術前後の角膜形態評価前眼部OCTは赤外光を使用するため,組織の混濁にも精度を落とすことなく精密な撮影が可能であることは前述したとおりであるが,この特徴を利用して各種前眼部手術前後の角膜形態評価に応用されている.たとえば,角膜菲薄化のある症例の白内障手術前では,創口やサイドポートの作製部位の決定に役立ち,外傷後やPeters奇形など角膜混濁と虹彩前癒着を伴う症例の白内障手術前では手術計画を立てる際の補助となる.白内障手術後の自己閉鎖創の断面を客観的に観察することも可能で,FukudaらはCASIAを用いて白内障手術角膜切開創を経時的に撮影し,手術翌日には3.4割程度の症例でDescemet膜.離や内方弁のズレが生じたが,ほとんどの症例で2週間後には改善したと報告した15).角膜移植の分野では近年パーツ移植が増加傾向にあり,術後早期にhost-graft間の接着を確認する必要性術後1.5カ月手術翌日術後1週間術後3週間図5深層層状角膜移植術後の症例左上:手術翌日,左下:術後1週間,右上:術後3週間,右下:術後1.5カ月.手術翌日よりDescemet膜の.離(矢印)を認め,前房内にairを注入した.その後は徐々に生着し,1.5カ月後にはほとんど間隙がなくなった.(21)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201321 手術翌日術後1カ月手術翌日術後1カ月術後1週間術後2カ月図6角膜内皮移植術後の症例左上:手術翌日,左下:術後1週間,右上:術後1カ月,右下:術後2カ月.手術翌日より移植片の一部が生着不良(矢印)であったが,軽度であるため経過観察のみとした.徐々に移植片は生着し,2カ月後には完全に間隙がなくなった.がある.図5,6にCASIAの所見から角膜移植の術後管理を行った自験例を提示する.図5は深層層状角膜移植術後にDescemet膜.離を生じ,前房内にair注入を施行した症例である.注入後はDescemet膜.離も徐々に改善し,1.5カ月後にはほぼ改善した.図6は角膜内皮移植術後で,翌日からgraft生着不良部位が認められるも,経過観察のみで治癒した症例である.前眼部OCTで経時的な変化を追ったが,増悪なく経過したため術後1週間で退院とし,外来経過観察中に完全に生着した.このような症例では通常の細隙灯顕微鏡での観察はむずかしく,特に客観的な経時的変化を追うことは困難である.前眼部OCTが強力に効果を発揮した症例であった.おわりに前眼部OCTは角膜混濁眼でも撮影可能であることや,Fourierdomain方式の登場により高速・高解像度での撮影が可能となったことから,角膜形状解析において最先端の器械であるといえる.また,角膜形態評価においても,角膜の状態が悪い場合でも詳細な検査が可能であるため,前眼部手術の術前後評価に汎用されている.今後も外科的技術の進歩により,要求される検査項目も日々変わっていくことが予想されるが,現状で前眼部OCTが角膜疾患・前眼部手術の評価において重要な役割を担っていることは疑う余地もない.前眼部OCTでさらに詳細な解析がなされることで,外科的技術の精度向上や角膜疾患の早期診断につながることが期待される.文献1)OshikaT,TomidokoroA,TsujiH:Regularandirregularrefractivepowersofthefrontandbacksurfacesofthecornea.ExpEyeRes67:443-447,19982)NarooSA,CharmanWN:Changesinposteriorcornealcurvatureafterphotorefractivekeratectomy.JCataractRefractSurg26:872-878,20003)KamiyaK,OshikaT,AmanoSetal:Influenceofexcimer22あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(22) laserphotorefractivekeratectomyontheposteriorcornealsurface.JCataractRefractSurg26:867-871,20004)TomidokoroA,OshikaT,AmanoSetal:Changesinanteriorandposteriorcornealcurvaturesinkeratoconus.Ophthalmology107:1328-1332,20005)吉崎桃子,本田紀彦,天野史郎ほか:角膜形状解析装置のデータ欠損率の比較.あたらしい眼科23:397-399,20066)KawamoritaT,UozatoH,KamiyaKetal:Repeatability,reproducibility,andagreementcharacteristicsofrotatingScheimpflugphotographyandscanning-slitcornealtopographyforcornealpowermeasurement.JCataractRefractSurg35:127-133,20097)IzattJA,HeeMR,SwansonEAetal:Micrometer-scaleresolutionimagingoftheanterioreyeinvivowithopticalcoherencetomography.ArchOphthalmol12:1584-1589,19948)TangM,ChenA,LiYetal:CornealpowermeasurementwithFourier-domainopticalcoherencetomography.JCataractRefractSurg36:2115-2122,20109)TangM,LiY,AvilaMetal:Measuringtotalcornealpowerbeforeandafterlaserinsitukeratomileusiswithhigh-speedopticalcoherencetomography.JCataractRefractSurg32:1843-1850,200610)NakagawaT,MaedaN,HigashiuraRetal:Cornealtopographicanalysisinpatientswithkeratoconususing3-dimensionalanteriorsegmentopticalcoherencetomography.JCataractRefractSurg37:1871-1878,201111)SamyEl,GendyNM,LiYetal:Repeatabilityofpachymetricmappingusingfourierdomainopticalcoherencetomographyincorneaswithopacities.Cornea31:418423,201212)TanabeT,TomidokoroA,SamejimaTetal:CornealregularandirregularastigmatismassessedbyFourieranalysisofvideokeratographydatainnormalandpathologiceyes.Ophthalmology111:752-757,200413)KochDD,AliSF,WeikertMPetal:Contributionofposteriorcornealastigmatismtototalcornealastigmatism.JCataractRefractSurg,2012,inpress14)SchlegelZ,Hoang-XuanT,GatinelD:Comparisonofandcorrelationbetweenanteriorandposteriorcornealelevationmapsinnormaleyesandkeratoconus-suspecteyes.JCataractRefractSurg34:789-795,200815)FukudaS,KawanaK,YasunoYetal:Woundarchitectureofclearcornealincisionwithorwithoutstromalhydrationobservedwith3-dimensionalopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol151:413-419,2011(23)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201323

前眼部編:涙液の形態解析

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):9.14,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):9.14,2013前眼部編涙液の形態解析AnalysisofTearMorphologyUsingAnteriorSegmentOpticalCoherenceTomography鄭暁東*はじめに前眼部OCT(光干渉断層計)テクノロジーの進歩は,光波干渉技術の開発と走査光源の改良によるところが大きい.実用化当初に主流であった光波の干渉を実空間(時間領域)で行うタイムドメインOCT(time-domainOCT:TD-OCT)の技術は,その後,フーリエ空間(周波数また波長領域)で行うフーリエドメインOCT(Fourier-domainOCT:FD-OCT)の技術に移行した.また,走査光源の波長帯域の増大,さらに近年では波長掃引レーザー(sweptsourcelaserOCT:SS-OCT)の開発によって,前眼部OCTの高速化,高解像度化が実現された1,2).SS-OCTの利点として,より高速化されたこと,信号ロスが少ないこと,眼球の動きによる感度低下が少ないことなどがあげられ,これらの特徴を生かした検査アプリケーションも増えつつある.本篇のテーマである涙液の形態解析も代表の一つである.I前眼部OCTを用いた涙液形態解析のメリット通常,涙液層の観察は細隙灯顕微鏡にて行うが,強い光刺激で反射的な涙液分泌が起こりうるため,必ずしも自然な状態での観察とは言い難い場面もある.また,涙液層の評価には涙液メニスカス(tearmeniscus:TM)の観察が重要で,その可視化にはフルオレセイン染色が用いられるが,フルオレセインの使用量によって涙液メニスカスの高さが左右される危険性がある.これに対して前眼部OCTでは,不可視検査光源を使用しているため,被験者が眩しさを感じることはなく,自然状態の涙液層を非接触,非侵襲的な状態で測定可能である.また,前眼部OCTの動画モードを利用すれば,瞬目,眼位変化などによる動態的な涙液変化を検出することもできる.II前眼部OCTによる涙液解析のパラメータTMはドライアイをはじめとする眼表面疾患や流涙症の診断に重要なパラメータで,前眼部OCTの垂直断スキャンよりその断層像が得られる.TMの解析には,メニスカスの高さ(tearmeniscusheight:TMH)と面積(tearmeniscusarea:TMA)に加えて,メニスカスの深さ(tearmeniscusdepth:TMD)も使用される(図1).通常,下眼瞼中央部のTMを計測するが,上方のメニスカス,あるいは下眼瞼の耳側および鼻側のメニスカスを評価することも可能である(図2).また,涙液の体積を計算する方法として,TMAの鼻側,中央,耳側の測定値の平均値×下眼瞼長という計算式が用いられる3).IIIドライアイ症例における涙液メニスカスの変化AS-OCT(anteriorsegment-OCT)の涙液形態解析において,最も興味ある分野の一つといえる.正常人の*XiaodongZheng:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野〔別刷請求先〕鄭暁東:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(9)9 TearmeniscusLowereyelidCorneaTMH:tearmeniscusheightTMD:tearmeniscusdepthTMA:tearmeniscusareaTMDTMH図1前眼部OCTによる涙液メニスカス解析のパラメータTMANT0.434[mm]鼻側0.354[mm]0.394[mm]耳側中央図2下眼瞼部位別涙液メニスカスの所見TMHは,検査機種によって多少差があるが,通常0.2.0.4mmである.正常眼と比較してドライアイ症例のメニスカスは有意に減少しているが,これはスリット所見に一致した結果である.Zhangらは中,重度ドライアイ症例の下眼瞼TMの涙液体積は,正常眼および軽度ドライアイ症例に比較して有意に減少すると報告している4).Czajkowskiらは,スペクトラルドメインOCT10あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(spectraldomain-OCT:SD-OCT)を用いてドライアイ患者111例のメニスカスの形態を調べているが,それによると,TMH,TMA,TMDはドライアイ症例においてすべて有意に減少していた.ドライアイ診断におけるTMH,TMA,TMDの感度はそれぞれ80.56%,86.11%,77.78%で,特異度は89.33%,85.33%,52.7%であり,Schirmer値に最も相関したのはTMAで,(10) TMAとTMHは自覚症状にも有意に相関すると報告している5).QiuらはFD-OCTでのドライアイ診断率は70%6),WangらはTMHのカットオフ値を0.213mmにすればドライアイ診断の感度と特異度はそれぞれ77.8%と71.7%であると報告している7).使用機種の違い,ドライアイ診断基準や分類の違い,人種の違いなどから,各報告間の単純な比較は困難であるが,ドライアイの診断,治療評価に前眼部OCTが有用であることは確かである.IV加齢による涙液メニスカスの変化加齢による涙液メニスカスの変化についての臨床検討も行われている.Qiuらは健常者160例においてTM値は年齢と負の相関性を示すと報告した6).Cuiらも健常者197例において,TM値は涙液と負の相関性を示し,また涙液体積は1%/年の率で減少すると類似の報告をしている8).最近Gumusらはボランティア30例で検討し,下眼瞼TMHが年齢とともに有意に増大するという,これまでの報告とは正反対の結果を示した9).筆者らも加齢によるTMの増大を確認しているが,これは加齢に伴って結膜弛緩症の発症頻度が増えることにより下眼瞼TMの形態が変化する可能性,また結膜弛緩症による機能的導涙不全の結果としてTMが増大する可能性などが考えられる.今後,被験者の結膜弛緩の程度とTMの変化を同時に検討する必要があると思われる.結膜弛緩症例における結膜.形成術前後TMの変化の解析にも前眼部OCTが応用されている(図3).V視機能と涙液メニスカスの関連性の検討前眼部OCTを用ると,メニスカスを測定しながら視機能を評価することも可能である.KohらはwavefrontsensorとTD-OCTを一体化させた機器を用いて,正常眼11例とBUT短縮型ドライアイ7症例において,TMの形態変化と収差(RMSおよびvMTF)の変化を検討したが,瞬目後にTMはRMSともに経時的に増加し,特にBUT短縮型ドライアイ症例においてTM(涙液量)が視機能を維持するのに重要であることを明らかにした10).また,Xuらは,若年者33例において瞬目後10秒間のTMの変化と高次収差を検討しているが,BUT<15秒の症例では,主軸乱視,垂直コマ収差,球面収差は有意に増加して収差の増大はTMAの増加と有意に相関すること,BUT>15秒の症例では収差は変化しないことを示した11).このように,前眼部OCTの登場によって,非侵襲的に,自然瞬目状態で涙液動態と視機能の両者を同時に評価できるようになった.ドライアイ患者を含め点眼治療前後の評価などへの応用にさらに期待したい.術前術後図3結膜弛緩症術前後メニスカスの変化(11)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201311 VI涙液クリアランスなど機能評価法の開発これまで述べてきた涙液形態の評価に,機能評価を加えることができれば,より理想的な涙液検査に近づくことになる.涙液の形態解析においては,涙液分泌量以外に,瞬目,結膜弛緩の程度,眼位変化などが影響を及ぼす.筆者はこれを逆手にとって,一定負荷後のTMの変化を機能評価指標とする前眼部OCT下での涙液クリアランス試験を考案した.具体的には,涙液層に少量の生理食塩水(5μl)を点眼負荷し,点眼直後と30秒後のTMHおよびTMAの減少率から涙液クリアランス率を算出する(図4).これは,機能的涙道閉塞の診断に有用であると同時に,瞬目時のTMの形態観察を同時に行うことで不顕性結膜弛緩症の早期診断にも役立つと考えられる.さらに,ドライアイ症状を訴えるもののスリット検査では特に異常を認めない症例や,コンタクトレンズの装用感に問題のある症例を解決するヒントが得られるかも知れない.TMHVIITearfilmthickness(TFT)の評価前眼部OCTの走査技術の進歩によって組織のセグメンテーション能力が格段に向上し,高精度,高解像度の画像撮影が実現している.レーザー光源を使用した代表的な機種であるHeidelberg社の眼底OCTにASM(anteriorsegmentmodule)を装着すると,解像度は4.7μmにも達し,eyetrackingシステムの導入によって眼球運動によるノイズを最小限にし,加算平均による鮮明な画像を捉えることが可能である.光学切片のごとく,角膜各層の構造を捉えるほか,角膜表面の涙液層(tearfilmthickness:TFT)の測定も内蔵キャリパーにて簡便に行える(図5).測定精度についての検討は必要ではあるが,ドライアイ症例,コンタクトレンズ装用者における形態変化も含め(図6),今後いろいろな眼表面疾患の病態解析に役立つと思われる.TMA負荷直後(0sec)30秒後0.56[mm]0.30[mm]Area=Circumference=0.042[mm2]1.003[mm]Area=Circumference=0.109[mm2]1.998[mm]TMH(A)0sec-TMH(A)30secOCTtearclearancerate=TMH(A)0sec×100%図4前眼部OCTによる涙液クリアランスの評価12あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(12) 23μm47μm12μm454μm9μm角膜HRT/ASM像図5前眼部OCTによる涙液層の厚みの測定23μm47μm12μm454μm9μm角膜HRT/ASM像図5前眼部OCTによる涙液層の厚みの測定上皮層Bowman膜実質層Descemet膜内皮層PreCLTFT涙液層角膜切片(HE染色)HCLSCLPostCLTFT25μm34μm101μm17μm44μm172μm42μm42μm473μm473μmHCL:hardcontactlensSCL:softcontactlensPreCL:レンズ前PostCL:レンズ後TFT:tearfilmthickness図6HCLとSCL使用者の涙液層VIII問題点と将来の展望前眼部OCTテクノロジーの開発,進歩は急ピッチである.TD-OCTからFD-OCTに移行後も光源の干渉技術にスーパールミネッセントダイオードとレーザー光源を利用したものが登場するなど,さまざまな機種が研究応用されている.しかしながら,測定結果の比較検討を試みようとしても,各データが標準化されていない点は大きな問題である12,13).前眼部OCTによる涙液形態解析の究極像は,3Dティ(13)アマップであると筆者は考えている.これには上下涙液メニスカスと瞼裂間涙液層を同時に検出できる三次元の涙液層の解析技術を構築することが必要であるが,もし実現すればフルオレセインを使わずに,非侵襲的にBUT測定が行えるようになるだろう.さらに高解像度の前眼部OCTが登場すれば,涙液下角膜上皮の異常を細胞レベルで検出できるようになるかもしれない.また,涙液の水層とムチン層の性質の違いを利用して,偏光技術によるカラーコード3Dティアマップを作成すれば,涙液のクオリティ異常も同時に検出できる可能性もあたらしい眼科Vol.30,No.1,201313 ある,OCTテクノロジーのさらなる進歩によりドライアイや涙液異常に関連する疾患を的確にそして簡便に診断できる時代がやってくるのではないだろうか.文献1)HuangD,LzattTA,YasunoYetal:Futuredirectionofanteriorsegmentopticalcoherencetomography.In:SteinertRFandHuangDeditors.AnteriorSegmentOpticalCoherenceTomography.p165-172,SLACKInc,Thorofare,NJ,20082)YasunoY,MadjarovaVD,MakitaSetal:Three-dimensionalandhigh-speedswept-sourceopticalcoherencetomographyforinvivoinvestigationofhumananterioreyesegments.OptExpress13:10652-10664,20053)WangJ,SimmonsP,AquavellaJetal:Dynamicdistributionofartificialtearsontheocularsurface.ArchOphthalmol126:619-625,20084)ZhangX,ChenQ,ChenWetal:Teardynamicsandcornealconfocalmicroscopyofsubjectswithmildself-reportedofficedryeye.Ophthalmology118:902-907,20115)CzajkowskiG,KaluznyBJ,LaudenckaAetal:Tearmeniscusmeasurementbyspectralopticalcoherencetomography.OptomVisSci89:336-342,20126)QiuX,GongL,SunXetal:Age-relatedvariationsofhumantearmeniscusanddiagnosisofdryeyewithFourier-domainanteriorsegmentopticalcoherencetomography.Cornea30:543-549,20117)WangCX,LiuYZ,YuanJetal:Applicationofanteriorsegmentopticalcoherencetomographyformeasuringthetearmeniscusheightinthediagnosisfordryeyediseases.ZhonghuaYanKeZaZhi45:616-620,20098)CuiL,ShenM,WangJetal:Age-relatedchangesintearmenisciimagedbyopticalcoherencetomography.OptomVisSci88:1214-1219,20119)GumusK,PflugfelderSC:Increasingprevalenceandseverityofconjunctivochalasiswithagingdetectedbyanteriorsegmentopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol2012Oct1,Epubaheadofprint10)KohS,TungC,AquavellaJetal:Simultaneousmeasurementoftearfilmdynamicsusingwavefrontsensorandopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci51:3441-3448,201011)XuJ,BaoJ,DengJetal:DynamicchangesinocularZernikeaberrationsandtearmeniscimeasuredwithawavefrontsensorandananteriorsegmentOCT.InvestOphthalmolVisSci52:6050-6056,201112)SaviniG,GotoE,CarbonelliMetal:Agreementbetweenstratusandvisanteopticalcoherencetomographysystemsintearmeniscusmeasurements.Cornea28:148-151,200913)WangJ,SimmonsP,AquavellaJetal:Dynamicdistributionofartificialtearsontheocularsurface.ArchOphthalmol126:619-625,200814あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(14)

光干渉断層計:開発の歴史と今後

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):3.7,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):3.7,2013光干渉断層計:開発の歴史と今後OpticalCoherenceTomography:DevelopmentHistoryandFuture前田直之*はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,どの非侵襲的検査より詳細に眼球組織の三次元構造を提供しうる検査装置として近年発達し,臨床において急速に普及している.OCTを用いれば,今まで得ることができなかった眼組織の断面像が高解像度で表示され,非侵襲,非接触,短時間に,羞明すらなく測定が可能で,結果を即座に得ることができる.その結果,網膜疾患や緑内障をはじめ,さまざまな眼疾患の早期診断,経過観察,治療方針決定,治療の効果判定における有用性が示され,今や代替手段のない標準的検査,あるいは必須の検査になっている.本特集では,OCTの前眼部および後眼部疾患におけるOCTの活用法がその病態や病理組織と関連して詳細に示され,またOCTを用いた診断に関しては,すでにすばらしい成書1,2)があるので,本稿では,OCTの原理,眼科医療機器としての開発の歴史,および今後期待される技術革新について,簡単に解説させていただく.I測定原理OCTは光干渉の原理を利用し,超音波断層検査と同様にechotimedelayと後方散乱光を測定することによって断層像や三次元像を取得する装置である.その測定原理によって,図1のように分類することができる.Time-domainOCT(TD-OCT)では,参照光とプローブ光の光路長差を変化させ,連続的に試料の散乱強度分布を反映する干渉信号を得る.そのため,Aモード画像を得るためには,機械的にミラーを移動させる必要がある.これに対してFourier-domainOCT(FD-OCT)では,参照光とプローブ光を分光し,スペクトル領域で干渉信号を計測し,Fourier変換して試料の断層情報を得る.そのため,参照光のミラーを機械的に可動させる必要がなく,TD-OCTより高速に撮影することが可能である.そのうちspectral-domainOCT(SD-OCT)では,広帯域波長の光源を,分光器を用いてスペクトル分解し,スペクトル干渉信号を取得する.これに対して,sweptsourceOCT(SS-OCT)では,光源の波長を時間的に掃引させ,その波長変化を時間的に計測することでスペクトル干渉信号を取得している.OCTの光源としては,侵達性を高めるために近赤外光のように比較的長い波長の光が用いられる.OCTの解像度はマイクロメータ単位であるが,低コヒレンス光の波長幅によって縦方向の解像度が決定される.そこで,現在の一般的な網膜用OCTでは,光源としてsuperluminescentdiode(SLD)が使用されている.830nmの波長で20.30nmの波長幅のSLDであれば,10μm程度の解像度が得られる.II医療機器としてのOCTの歴史光干渉の原理を応用して眼軸長を測定する研究が,*NaoyukiMaeda:大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学寄附講座〔別刷請求先〕前田直之:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学寄附講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(3)3 Fourier-domain(FD)Time-domain(TD)Spectral-domain(SD)Swept-source(SS)ミラーミラーミラーEye可動EyeSpectroscope分光波長掃引光源Eye光源光源CCDCCDCCD参照光測定光図1OCTの測定原理による分類1980年代にFercherらによって行われていた.また,わが国においては,1990年に丹野直弘らによってOCTの研究が行われ特許が取得された.1991年にHuangらがOCTを用いると超音波のBモードのように生体の断層像を取得できることを乳頭近傍の網膜や冠状動脈を例にして,invitroで示し,注目されるようになった3).ついで1993年になって,invivoで網膜の断層像が示された4,5).その頃,MassachusettsInstituteofTechnology(MIT)においてAdvancedOphthalmicDevicesというベンチャー企業が創設された.この会社が1994年にHumphreyInstrumentsによって買収され,医療機器としてのOCTが本格的に開発されるようになった.1995年にはプロトタイプのOCTを用いた臨床研究が緑内障と網膜の分野で開始された6).そして,1996年に第一世代のTD-OCTの市販機(OCT-2000R)が登場した.この装置は,解像度が10μmで,スキャン速度が100axialscans/secであった.2000年になると,第二世代のOCTが発売された.この頃,臨床研究においてOCTが注目されるものの,まだその画像の解像度は低く,網膜の層構造は不明瞭であった.しかし,黄斑浮腫,黄斑円孔,網膜硝子体界面病4あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013変などで威力を発揮し,サージカル網膜を中心に普及していった.2002年に登場した第三世代のOCT3000R(StratusOCT)では,その画像が飛躍的に向上した.この装置は,解像度は8.10μmと以前の装置と大きな差はなかったが,スキャン速度が400axialscans/secとなり,網膜の外層と網膜色素上皮を分離して表示することが可能となった.このことによって,黄斑の網膜厚や視神経乳頭周囲の神経線維厚などが定量的に解析されるようになった.また,その頃になるとOCTを用いた画像診断が,硝子体手術などの手術的治療やステロイド薬,光線力学的療法(PDT),抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬などの薬物療法の発展を支える存在となった.この診断と治療の両輪の発達の結果,臨床現場でOCTは広く受け入れられるようになった.2006年には,株式会社トプコンが口火を切ってSDOCTの市販機を開発した.以後,多数の企業がOCTの領域に参入した.わが国では,その2006年に眼底三次元画像解析が先進医療として承認され,2008年に健康保険の適用検査として認可された.一方,前眼部OCTにおいては,最初にHEIDELBERGENGINEERINGが2006年に,ついでCarlZeiss(4) Meditecが2007年に,TD-OCTを市場に登場させた.これらの波長は1,310nmで,解像度はそれぞれ25,15μmと網膜用OCTほど良くないが,組織侵達性が良好でかつ測定範囲が広範である.そして2008年には,SS-OCTを株式会社トーメーコーポレーションが発売した.わが国では2011年に前眼部三次元画像解析として前眼部OCTが先進医療として承認されるに至っている.III現行のOCTとその特徴現行の主要なOCTを表1に示す.後眼部OCTについては,ほとんどの装置がspectral-domainで,波長としては800nm台のものを使用していて,その解像度は5.7μm程度である.測定部位の特定のための眼底観察は,走査型レーザー検眼鏡(SLO)や赤外眼底撮影によって行われている.一方,前眼部専用のOCTでは1,310nmの波長が使用されている.これは,波長が長くなるほど組織での吸収が減り,侵達性が向上するためであり,網膜より厚い角膜では長波長のほうが有利であるためである.ただし,1,310nmでは水への吸収が増えるために逆に網膜には適さない.スキャン速度に関しては,図2に示すごとく年々高速化される傾向にある.この高速化によって,三次元撮影が可能となった.断層像を高精細にするためには,スペックルノイズが問題であり,スペックルノイズ軽減のためには同一部位を複数回測定し加算平均することが有効である.同一部位を繰り返し測定するためには,高速化に加えてアイトラッキングが重要である.このように断層像が高精細化されると網膜を層別に解析することが可能となる.現行の多くの後眼部OCTでは正常眼データベースを有しており,黄斑解析,緑内障解析としての視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(RNFL)や黄斑の神経節細胞複合体(GCC)の解析を行うことができる.後眼部OCTが使用する800nm台の波長では,網膜色素上皮での吸収が大きい.加えてSD-OCTでは,撮影部位が深いほど信号が減弱する特性がある.そのため,網膜色素上皮下の病変や脈絡膜の画像が不鮮明になる傾向がある.このSD-OCTの弱点を補うためにenhanceddepthimaging(EDI)という方法が用いられ表1現行のOCTとその特徴機種名製造元原理発売年波長(nm)OCT解像度横×縦(μm)最大スキャン長長さ×深さ(mm)スキャン速度(Amode/sec)後眼部OCTCirrusHD-OCTCarlZeissMeditecSD200784015×56×2.027,000RTVue-100/iVue-100OptovueSD2007/200984015×512×2.326,000/25,000スペクトラリスHEIDELBERGENGINEERINGSD200787014×716×1.940,000RS-3000㈱ニデックSD200988020×79×2.153,0003DOCT-2000㈱トプコンSD201084020×612×2.350,000OCT-HS100㈱キヤノンSD201285520×310×2.070,000DRIOCT-1Atlantis㈱トプコンSS20121,05020×812×2.6100,000前眼部OCTVisanteOCTCarlZeissMeditecTD20071,31060×1816×62,000SS-1000CASIA㈱トーメーコーポレーションSS20081,31030×1016×630,000(5)あたらしい眼科Vol.30,No.1,20135 ScanSpeed(A-scan/sec)100,00080,00060,00040,00020,000Swept-sourceOCTSpectral-domainOCTTime-domainOCT(NIDEK)SpectralisOCT(HEIDELBERG)CirrusHD-OCT(ZEISS)SS-1000CASIARTVue-100(TOMEY)(Optovue)3DOCT-1000DRIOCT-1Atlantis(TOPCON)OCT-HS100(Canon)3DOCT-2000RS-3000(TOPCON)OCT2000OCT3000Stratus(TOPCON)(ZEISS)(ZEISS)VisanteOCT(ZEISS)Year19962002200620072008200920102012図2OCTのスキャン速度の進歩ている.これは,SD-OCTで通常のイメージと同時に硝子体側に生じるミラーイメージを利用するもので,ミラーイメージでは脈絡膜側が前方となるため,網膜色素上皮下の病変や脈絡膜の画像が鮮明になる.根本的に組織侵達性を高める方法として,1,050nmの波長とSS-OCTがある.1,050nmの波長であれば,800nm台に比べてもともと侵達性が高いことに加えて,水への吸収が少ない.また,白内障など中間透光体の影響も少ないので網膜の観察に向いている.一方,SS-OCTでは深さによる信号の減衰が少ない,高速化しやすいなどのメリットがある.そのため1,050nmの波長を使用したSS-OCTが登場した.SS-OCTの高速かつ深さによる信号の減衰が少ないという特徴は,前眼部観察にも適しており7),隅角の三次元観察や角膜形状解析が施行できるようになった.IV今後OCTに応用が期待される技術OCTをさらに発展させようとする試みがあり,その幾つかを以下に示す8).1.超高解像度OCTOCTの縦方向の分解能は,その波長と波長幅によって決定される.波長が短いほど分解能が高まるが,可視光だと検査が困難となる.また,水の吸収が低い波長を選択しないと網膜の観察には適していない.よって波長を変更して分解能を向上させることはむずかしい.そのため現在の高解像度(5.7μm)から超高解像度(2.3μm)にするために光源の波長幅を広くすることが試みられている.現行の装置で用いられているSLDに換えて,たとえばチタンサファイアのフェムト秒レーザーを用いれば,その波長幅が広くなり,同じ波長でも超高解像度のOCT画像を取得することができる.ただし,レーザー光源が非常に高価であり,市販機としての開発は困難である.そのためSLDを多重化することによってフェムト秒並みの解像度を獲得するという試みもある.株式会社キヤノンの装置は2つのSLDを用いて分解能3μmを達成している.2.補償光学OCT横方向の分解能を向上させるためには,瞳孔径を大きくする必要があるが,眼球光学系では,瞳孔径が大きくなればなるほど眼球の収差が増大する.そのためどんなに眼底カメラやOCTの性能を向上させても眼球の収差によって網膜像は不鮮明になってしまう.補償光学(adaptiveoptics:AO)は測定眼の収差を波6あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(6) 面センサーで測定し,可変鏡を用いてその収差を打ち消す光学系である.つまり,補償光学を用いれば眼球の収差を測定系の収差でキャンセルすることができる.補償光学眼底カメラを用いれば,ヒト眼の視細胞を可視化することができる.この技術をOCTに利用し,個々の視細胞を表示することが可能になった.このようにAO-OCTで,網膜を細胞レベルで観察できるが,可変鏡が高価なため,日常臨床での使用はむずかしく,主として研究レベルで使用されている.3.偏光OCT複屈折とは,光線が物質を透過したときに,2方向の偏光成分で屈折率が異なるため,2つの光線に分けられることをさす.眼球には,角膜,強膜,網膜視神経線維など複屈折性が強い組織が存在する.そのため,偏光OCT(polarization-sensitiveOCT)を用いれば,眼組織の複屈折性の程度を示すOCT画像を得ることができる.神経線維の変性の初期像や角膜実質の異常などを形態変化より早期に検出できる可能性がある.4.ドップラーOCTドップラー効果とは,音波など波の発生源と観測者の相対的な速度によって,波の周波数が異なって観測される現象である.光においてもドップラー効果は認められることから,OCTでもドップラー効果を応用することが可能である.具体的には,網膜や脈絡膜血管の血流を測定することができる.また,ドップラー信号が検出される部位を画像化することによって,造影剤を用いずに網膜や脈絡膜血管構造を評価できるようになるかもしれない.5.機能イメージングOCT光刺激を網膜に与え,刺激前後をOCTで経時的に測定することによって,光刺激に対する網膜各層の代謝や血流の変化に対応してOCT画像の信号強度の変化が記録できれば,光刺激に対する網膜の生理や代謝機構を可視化する手段として利用できる可能性がある.6.超広角OCTOCTの光源としてFourier-domainmodelockedlaserを使用すると,スキャン速度をメガヘルツにして測定することが可能である.この高速の光源を使用すれば,広範囲の測定を短時間で行えるため,超広角の三次元データが取得可能と考えられる.おわりに広い波長幅の光源や高速Fourier解析の発達,あるいは波長掃引光源の開発などでOCTによるイメージングは格段の進歩を遂げた.高解像度,超高速,三次元形状,容積の解析が可能となり,網膜の層別の解析,脈絡膜の評価,角膜形状解析,隅角解析など用途も拡大している.一方,OCTの進歩により精密な三次元データが取得可能となって,巨大なデータが発生している.これをどのように臨床や研究で効率的に利用するかが今後の課題となってくると思われ,新たな画像処理技術が必要と考えられる.今後もOCTの技術は,眼科臨床だけでなく,基礎研究においても大きなインパクトを与え続けるであろう.文献1)岸章治:OCT診断学,第2版.p1-405,エルゼビア・ジャパン,20102)吉村長久,板谷正紀:OCTアトラス.p1-355,医学書院,20123)HuangD,SwansonEA,LinCPetal:Opticalcoherencetomography.Science254:1178-1181,19914)FercherAF,HitzenbergerCK,DrexlerWetal:Invivoopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol116:113-114,19935)SwansonEA,IzattJA,HeeMRetal:Invivoretinalimagingbyopticalcoherencetomography.OpticsLetters18:1864-1866,19936)HeeMR,IzattJA,SwansonEAetal:Opticalcoherencetomographyofthehumanretina.ArchOphthalmol113:325-332,19957)YasunoY,MadjarovaVD,MakitaSetal:Three-dimensionalandhigh-speedswept-sourceopticalcoherencetomographyforinvivoinvestigationofhumananterioreyesegments.OptExpress13:10652-10664,20058)DrexlerW,FujimotoJG:State-of-the-artretinalopticalcoherencetomography.ProgRetinEyeRes27:45-88,2008(7)あたらしい眼科Vol.30,No.1,20137

序説:より速く,より深く,より鮮明に! -光干渉断層計は進化する-

2013年1月31日 木曜日

特集●光干渉断層計アップデート2013:序説あたらしい眼科30(1):1.2,2013特集●光干渉断層計アップデート2013:序説あたらしい眼科30(1):1.2,2013より速く,より深く,より鮮明に!─光干渉断層計は進化する─Faster,Deeper,Clearer!─AdvancementofOpticalCoherenceTomographyinOphthalmology鄭暁東*大島裕司**大橋裕一*石橋達朗**山形大学の丹野らによって光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の原理が提唱されたのが1990年,MITのFujimotoが初めて画像化に成功したのがその翌年のことであるから,OCTの歴史といってもまだ20年程度に過ぎない.にもかかわらず,簡便かつ非侵襲的な画像検査法として,眼疾患の診断に,治療の評価に,そして病態の解明に,OCTはわれわれの臨床になくてはならない存在となっている.これを反映してか,日本眼科学会,日本臨床眼科学会などのシンポジウムやインストラクションコースでも,OCT関連の演題は常に超満員の人気ぶりである.1996年,Humphrey社から最初の眼底検査用OCTが発売されて以来,21世紀を跨いで長足の進歩を遂げ,眼科診療のコンセプトに革命的な変化をもたらしたのは周知のとおりであり,その一方で,近年において最も成功した医工連携モデルとしても評価されるべきであろう.眼底検査用OCTの発売後から10年を経過した2006年には,前眼部OCTの臨床応用も実現し,現在は前眼部三次元画像解析検査として高度先進医療に組み入れられている.機器としてのOCTの進歩は,情報取得の高速化,質向上へ向けた研究者のモチベーションと臨床医からの熱い期待に支えられていたといっても過言ではない.初期のタイムドメイン(time-domainOCT)方式では,ミラーを前後に動かすことにより経路長を変えていたが,この手法ではデータの取得速度に大きな限界があったため,ミラーを固定し,広帯域光源を用いて情報を取得後に各波長の干渉信号をフーリエ解析するフーリエドメイン(Fourier-domainOCT:FD-OCT)方式が開発され,高速化,高精度化のなかで,より鮮明な3D画像を得ることが可能となった.このフーリエドメイン方式には,広帯域光源による干渉信号を分光器で波長分解するスペクトラルドメイン(spectral-domainOCT:SDOCT)方式と,発振波長を連続的に変化させる(波長掃引とよばれる手法)スウェプトソース(sweptsourceOCT:SS-OCT)方式とがある.より高速の情報取得という点では後者のほうが優れており,長波長光源の実用化とレーザー光源の導入によって,さらなる高侵達性,高分解能の画像取得が実現されようとしている.本特集「光干渉断層計アップデート2013」では,前眼部から後眼部まで,OCTの眼科応用についての最新知見を組織別にレビューすることとし,わが国のオピニオンリーダーの先生方にご執筆をお願いした.まずは,「OCTの発展の歴史と今後」について前田直之先生におまとめいただいた.超高解像度OCT,偏光OCT,ドップラーOCTなど,まだまだ多くの発展性,可能性が秘められているようであ*XiaodongZheng&YuichiOhashi:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野**YujiOshima&TatsuroIshibashi:九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(1)1 る.次いで前眼部OCTでは,編者の1人である鄭が,「涙液の形態解析」について解説した.何よりも自然状態での涙液層を観察できる点が大きな利点といえる.日常臨床への普及が望まれる.「角膜の形態解析」については上野勇太先生,福田慎一先生および大鹿哲郎先生にお願いした.角膜混濁に強い点も踏まえれば,今後は角膜形状解析の主流になるものと思われる.最後に,「隅角,虹彩の形態解析」を酒井寛先生にお願いした.毛様体皺襞部が描出されない欠点はあるものの閉塞隅角のコンピュータ診断への応用が期待される.引き続いての後眼部OCTでは,まず,「網膜の形態解析」について大谷倫裕先生にご担当いただき,解剖学と対比させた読影姿勢の重要性が再確認できた.「脈絡膜の形態解析」については中井慶先生に解説をお願いしたが,まさに高侵達SS-OCTの独壇場といえる.今後の展開に期待したい.最後に,「病的近視における視神経イメージング」を大野京子先生にお願いした.視神経乳頭の深部にまでアプローチできる時代となったことに驚きを隠せないというのが実感である.OCTの登場は眼科医にとってまさに夢のような話である.細隙灯顕微鏡や検眼鏡所見という経験知に頼りがちであった眼科診療に,診断を強化する客観的な画像情報が加わったからである.まさに,CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)の出現に匹敵するインパクトといえるだろう.今後は,手持ちOCTや手術用OCTなどの開発や,さまざまな視機能検査との連動も含め,眼科診療に欠かせないツールとしてますます重要な役割を担っていくことであろう.また一方で,臨床のニーズに応じたOCT画像の解析ソフトの開発,新しいアプリケーションの充実も必要である.OCTは眼科医にとってきわめて身近な存在となった.本企画を通じて,OCTの基本をご理解いただき,その最前線の知見を吸収していただければ幸いである.2あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(2)

正常者における2種類の眼底直視下微小視野計の計測結果の比較

2012年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科29(12):1709.1711,2012c正常者における2種類の眼底直視下微小視野計の計測結果の比較梶田房枝新井みゆき山本修一千葉大学大学院医学研究院眼科学ComparisonofDifferentFundusPerimetryDevicesinNormalIndividualsFusaeKajita,MiyukiAraiandShuichiYamamotoDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,ChibaUniversityGraduateSchoolofMedicine目的:現在市販されている2種類の微小視野計を用いて,正常者における網膜感度の比較を行った.対象および方法:健常者10例10眼を対象に,同一眼でMicroPerimeter1(MP-1)とMacularIntegrityAssessment(MAIA)で測定した.いずれも黄斑部直径10°の網膜感度を背景輝度4asb,視標サイズGoldmannIII,刺激時間200msecで測定し網膜感度の平均値を比較した.結果:平均網膜感度はMP-1が18.9±0.7dB(視標輝度換算6.3±1.1asb),MAIAが29.8±0.8dB(同1.5±0.3asb)であった.MAIAではMP-1と比較し視標輝度に換算して4.8±1.2asb高い網膜感度の測定が可能であった(p=0.0002).結論:MAIAはMP-1に比べ測定時のダイナミックレンジが広く,高い網膜感度の測定が可能であり,黄斑疾患の初期変化の検出が可能と考えられる.Purpose:Tocomparetwodifferentmicroperimetricdevices,currentlyavailableforclinicaluseinJapan,intermsofretinalsensitivitymeasurementsinnormalindividuals.ParticipantsandMethods:Retinalsensitivitywithinthecentral10degreeswasmeasuredin10eyesof10healthyvolunteersusingtheMicroPerimeter1(MP1)andtheMacularIntegrityAssessment(MAIA).GoldmannIIIsizestimuliwerepresentedfor200mseconawhitebackground,withaluminanceof4asb.Results:Meanretinalsensitivitywas18.9±0.7dB(6.3±1.1asb,asstimulusluminance)withMP-1,and29.8±0.8dB(1.5±0.3asb)withMAIA;thedifferencewasstatisticallysignificant(p=0.0002).TheMAIAshowedhigherthresholdvalueswith4.8±1.2asbthandidtheMP-1.Conclusions:TheMAIAprovideshigherthresholdvaluesthantheMP-1,suggestingthattheMAIAmaydetectfunctionaldefectsintheearlystagesofmaculardiseases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(12):1709.1711,2012〕Keywords:眼底直視下微小視野計,網膜感度,正常者,MP-1,MAIA.fundus-relatedmicroperimetry,retinalsensitivity,normalsubjects,MP-1,MAIA.はじめに黄斑疾患において視機能を評価する場合には視力が用いられることが多いが,視力は中心窩もしくは中心窩近傍にある固視点における二点弁別閾であり,黄斑視機能を完全に代言しているとはいえない.このため,しばしば視力による視機能評価と患者の自覚症状とのずれを経験する.眼底直視下微小視野計は,眼底直視下に黄斑周囲の網膜感度をピンポイントで測定し,固視点以外の網膜視機能を評価することができる.自動追尾機能を有するため固視ずれに瞬時に対応でき,眼底写真と重ね合わせた網膜感度をマッピング表示できる特徴から,特に黄斑疾患では臨床研究や日常診療に多用されつつある1.3).糖尿病黄斑浮腫や網膜色素変性において,眼底写真や光干渉断層計などの画像所見と網膜感度を組み合わせることにより病変部位の視機能評価が報告されている3.5).同一部位の測定が可能なフォローアップ機能を活かして,糖尿病黄斑浮腫や加齢黄斑変性,特発性黄斑円孔における治療前後での黄斑部視機能と網膜形態の経時変化の関係も報告されている6.8).また,網膜色素変性患者において黄斑部の網膜感度が視覚関連QOL(qualityoflife)とよく相関することも報告されており,眼底直視下視野計で測定した網膜感度は〔別刷請求先〕梶田房枝:〒260-8670千葉市中央区亥鼻1-8-1千葉大学大学院医学研究院眼科学Reprintrequests:FusaeKajita,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,ChibaUniversityGraduateSchoolofMedicine,1-8-1Inohana,Chuo-ku,Chiba260-8670,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(119)1709 患者の自覚症状を反映している9).現在わが国では2種類の微小視野計が市販されているが,測定条件が大きく異なっており,測定結果の差異も明らかになっていない.そこで,本研究では正常者の網膜感度の比較を2機種の間で行った.I対象および方法軽度の屈折異常以外に眼疾患を有しない健常者10名10眼(女性6名,男性4名,年齢23.57歳)を対象に前向き研究を行った..6.0Dを超える強度近視は除外し,すべての被検者で矯正視力は1.0以上,眼底検査で黄斑に異常がないことを確認した.被検者には本研究の内容と意義について説明し研究参加の同意を得た.同一眼でMicroPerimeter1(MP-1,NIDEK社)とMacularIntegrityAssessment(MAIA,トプコン社)で測定した.いずれも無散瞳で黄斑部直径10°の範囲内の網膜感度を測定し,測定データの信頼性指標に対する判定はすべて100%であった.MicroPerimeter1(MP-1)は赤外光カメラと自動視野計を組み合わせ,眼底病変に対応した部位の網膜感度を測定する眼底直視下微小視野計である.自動的に眼球運動を追尾するトラッキング機能により網膜上の同じ測定点を正確に刺激でき,黄斑部に病変のある固視不良例に対しても再現性の高い検査が可能である.視標輝度は4asbから400asb,刺激幅は相対輝度で20dBであり,4-2-1ストラテジーにより閾値決定される.測定条件は白色背景光下で背景輝度4asb,GoldmannIIIの視標サイズを選択し,視標呈示時間200msec,黄斑部中心10°の範囲を24点測定した(図1).MacularIntegrityAssessment(MAIA)では共焦点走査眼底画像を用いて眼底をモニターしながら網膜感度を測定す図1MicroPerimeter1(MP.1)による黄斑部中心10°の測定結果24点を測定し,0.20dBで表示される.るため,トラッキング機能の精度が向上した.MP-1より視標輝度の幅が広がり,0.25asbから1,000asbまで呈示可能で,相対輝度で0.36dBで表示される.閾値決定は4-2ストラテジーによる.測定条件は白色背景光下で背景輝度はMP-1と同様に4asb,視標サイズはGoldmannIII,刺激時間200msecとし,視標呈示パターンは中心10°の範囲に円周状に37点を測定するパターンを選択した(図2).表1に両者の視野計の比較を示す.黄斑部直径10°以内の測定点がMAIAは37点に対し,MP-1は24点でMP-1の測定点が少ないため,全体を平均した網膜感度(dB)およびそれに相当する輝度(asb)の平均値を比較した.なお,最低感度である0dBは視野計の最高輝度によって異なるため,絶対暗点を意味しているわけではない.MP-1は最低輝度4asbのときの網膜感度を20dB,最高輝度400asbのときの網膜感度を0dBと表示し,MAIAでは最低輝度0.25asbの光で刺激したときの網膜感度を36dB,1,000asbの最高輝図2MacularIntegrityAssessment(MAIA)による黄斑部中心10°の測定結果37点を測定し,0.36dBで表示される.表1MicroPerimeter1(MP.1)とMacularIntegrityAssessment(MAIA)の設定条件,機能の比較MP-1MAIA眼底画像近赤外眼底カメラSLO画角45°円形36°×36°解像度1,280×1,024pix1,024×1,024pix視標サイズGoldmannI.IVGoldmannIIIのみ最小瞳孔径4mm2.5mm背景輝度4asb4asb視標呈示液晶ディスプレー白色LED視標最大輝度400asb1,000asb視標最小輝度4asb0.25asbダイナミックレンジ0.20dB0.36dB1710あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012(120) MAIA(asb)3210456789MP-1(asb)図3MicroPerimeter1(MP.1)とMacularIntegrityAssessment(MAIA)で測定した中心10°の平均網膜感度から換算した輝度の比較両者の間に有意な相関はみられなかった(rs=.0.081,p=0.798).度で刺激したときの網膜感度を0dBとしている.II結果黄斑中心10°以内の平均網膜感度は,MP-1では18.9±0.7dB,MAIAでは29.8±0.8dBであった(図3).これを輝度に換算するとMP-1では6.3±1.1asb,MAIAでは1.5±0.3asbであった.平均検査時間はMP-1では3分12秒,MAIAでは5分42秒であった.MP-1ではMAIAで測定した正常者の平均網膜感度はMP-1より有意に高い結果となり(Man-Whitney,p=0.0002),輝度に換算して平均4.8±1.2asb高い値となった.両者に有意な相関はみられなかった(rs=.0.081,p=0.798).さらに,両者の測定点の分布が異なり,MAIAではMP-1に比べ中心窩に近い測定点が多いことから,中心2°の範囲内,すなわちMAIAの中心13点とMP-1の中心4点の平均網膜感度を比較したが有意な相関はみられなかった(rs=.0.467,p=0.092).III考按MAIAではより弱い光の視標呈示が可能になったことで,MAIAで測定した正常者の平均網膜感度はMP-1に比べて,輝度に換算して4.8asb高いことがわかった.また,黄斑10°以内および2°以内のいずれにおいても両者の平均網膜感度に有意な相関はみられなかった.さらに,MP-1で最高感度20dBに達していた5症例では,MAIAでは最高感度に達しておらず,正常者のような視力良好例ではMP-1では測定上限を超えることが明らかとなった.検査時間の差異はMAIAの測定点がMP-1より多いことが反映されているが,閾値決定方法からはMAIAのほうがMP-1より短時間の検査が可能であると考えられる.Humphrey自動視野計においても網膜感度の定量的評価は可能であるが,黄斑疾患などの限局性病変との対比は必ずしも容易ではなく,特に固視不良例では信頼性および再現性(121)に乏しく,黄斑疾患への応用には問題が少なくない3).しかし,MP-1はHumphrey視野計などに比べ網膜感度のレンジが狭く,絶対暗点の測定は不可能であり,最高および最低感度のなかに測定範囲を超えた感度も含まれていた.後発機種であるMAIAでは,このようなMP-1における問題点の多くに解決が試みられ,刺激強度の幅が上下に拡張されることにより,全体的により低感度から高感度まで測定可能になった.操作性においてはMAIAでは多くの操作が自動化され簡便になった.また,MAIAは加齢黄斑変性患者を含むデータベースとの比較により早期および中期の変化を検出する機能が備わり,加齢黄斑変性の初期病変の検出が期待されている.もちろんMAIAにおいてもHumphrey視野計との測定条件の相違点には注意が必要であるが,MP-1より高い網膜感度の測定が可能になり,黄斑疾患の初期変化の検出に有用であると考えられる.文献1)三田村佳典,山本修一:眼底視野計(MP-1).あたらしい眼科24(臨増):21-27,20072)長澤利彦,香留崇,三田村佳典:眼底視野計MP-1による臨床研究.眼科53:1853-1860,20113)SpringerC,BultmannS,VolckerHEetal:FundusperimetrywiththeMicroperimeter1innormalindividuals.Ophthalmology112:848-854,20054)OkadaK,YamamotoS,MizunoyaSetal:Correlationofretinalsensitivitymeasuredwithfundus-relatedmicroperimetrytovisualacuityandretinalthicknessineyeswithdiabeticmacularedema.Eye20:805-809,20065)MitamuraY,AizawaS,BabaTetal:Correlationbetweenretinalsensitivityandphotoreceptorinner/outersegmentjunctioninpatientswithretinitispigmentosa.BrJOphthalmol93:126-127,20096)AizawaS,MitamuraY,HagiwaraAetal:Changesoffundusautofluorescence,photoreceptorinnerandoutersegmentjunctionline,andvisualfunctioninpatientswithretinitispigmentosa.ClinExperimentOphthalmol38:597-604,20107)OkadaK,Kubota-TaniaiM,KitahashiMetal:Changesinvisualfunctionandthicknessofmaculaafterphotodynamictherapyforage-relatedmaculardegeneration.ClinOphthalmol3:483-488,20098)NakamuraY,MitamuraY,OgataKetal:Functionalandmorphologicalchangesofmaculaaftersubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularoedema.Eye24:784-788,20109)OokaE,MitamuraY,BabaTetal:Fovealmicrostructureonspectral-domainopticalcoherencetomographicimagesandvisualfunctionaftermacularholesurgery.AmJOphthalmol152:283-290,201110)SugawaraT,SatoE,BabaTetal:Relationshipbetweenvision-relatedqualityoflifeandmicroperimetry-determinedmacularsensitivityinpatientswithretinitispigmentosa.JpnJOphthalmol55:643-646,2011あたらしい眼科Vol.29,No.12,20121711

眼窩深部痛で発症し眼窩先端症候群をきたした副鼻腔アスペルギルス症の1例

2012年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科29(12):1705.1708,2012c眼窩深部痛で発症し眼窩先端症候群をきたした副鼻腔アスペルギルス症の1例竇一博中静隆之佐藤新兵岸本修一上順子森樹郎虎の門病院眼科ACaseofParanasalSinusFungalInfectionDevelopingOrbitalApexSyndromeKazuhiroDou,TakayukiNakashizuka,ShinpeiSato,ShuichiKishimoto,JunkoKamiandMikiroMoriDepartmentofOphthalmology,ToranomonHospital緒言:副鼻腔真菌症は浸潤型と非浸潤型に分類される.免疫不全患者に発生しやすい浸潤型では眼窩先端症候群を呈することがあり,生命予後も不良である.今回,頭痛を初発症状として,眼窩先端症候群をきたした副鼻腔真菌症の1例を経験したので報告する.症例:2型糖尿病を有し,血液透析療法中の76歳,男性.頭痛,右眼痛のため脳神経外科,神経内科受診するも原因不明.当科受診時は異常を認めなかったが,1カ月後の再診時には視力低下,中心フリッカー値低下を認めた.Magneticresonanceimaging(MRI)では右視神経周囲に高信号域を認め,造影computedtomography(CT)では右下眼窩裂が開大しその内部は軟部組織濃度であった.耳鼻咽喉科・脳神経外科との協診にてステロイドパルス療法が選択されたが,1週間後に病状は増悪し,右眼光覚消失,全眼球運動障害が出現した.b-d-グルカン値が上昇したため生検を行ったところ,Aspergillusfumigatusが検出され診断に至った.抗真菌薬投与,副鼻腔ドレナージを行うも右下眼窩裂の軟部組織病変から隣接する篩骨洞,蝶形骨洞,上顎洞へ感染拡大したたため,副鼻腔根治術を施行した.その後,眼球運動は回復したが光覚を失ったままであった.退院後18カ月経過しているが,再発は認めていない.結語:高齢者,糖尿病といった易感染性の背景をもつ患者が眼窩先端症候群を呈する場合には他科と協力し,真菌感染症を念頭において診療すべきである.Weexperiencedacaseofparanasalsinusfungalinfectionthatdevelopedorbitalapexsyndrome.Thepatient,a76-year-oldmalewithdiabetesmellituswhowasreceivingperiodichemodialysis,complainedofrightperiorbitalpainandheadache,thecauseofwhichcouldnotbedeterminedbyneurologists.Onemonthlater,thevisualacuityofhisrighteyedecreased(0.3);magneticresonanceimagingshowedenhancementaroundtherightopticnerveandcomputedtomographydisclosedadilatedinferiororbitalfissurefilledwithaninhomogeneousmass.OpticneuritisandTolosa-Huntsyndromewasstronglysuspected;steroidpulsetherapywaschosen.Oneweeklater,hisheadachehadreduced,whereashisrighteyehadlostlightsensationanddevelopedophthalmoplegia.Bloodtestrevealedelevatedb-d-glucan;nasalendoscopicbiopsyidentifiedAspergillusfumigatus.Afterantifungaltherapythepatientunderwentdebridementsurgery,whichreducedophthalmoplegiabutdidnotrestorelightsensation.At18monthsafterthesurgerytheoralantifungalagentisstillbeingadministered,withoutdiseaserelapse.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(12):1705.1708,2012〕Keywords:眼痛,副鼻腔真菌症,眼窩先端症候群,Tolosa-Hunt症候群.periorbitalpain,paranasalsinusfungalinfection,orbitalapexsyndrome,Tolosa-Huntsyndrome.はじめにて,眼窩先端症候群をきたした副鼻腔真菌症の1例を経験し副鼻腔真菌症は浸潤型と非浸潤型に分類される.免疫不全たので報告する.患者に発生しやすい浸潤型では眼窩先端症候群を呈することがあり,生命予後も不良である.今回,頭痛を初発症状とし〔別刷請求先〕竇一博:〒105-8470東京都港区虎ノ門2-2-2虎の門病院眼科Reprintrequests:KazuhiroDou,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ToranomonHospital,2-2-2Toranomon,Minato-ku,Tokyo105-8470,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(115)1705 abab図1MRIT2強調画像a:視神経所見,b:篩骨洞所見.右視神経周囲の高信号(矢印)および右篩骨洞内の高信号(矢頭)を認めた.I症例患者:76歳,男性.全身疾患:20年来の2型糖尿病,高血圧があり,数年前より血液透析療法を行っていた.眼科既往歴:両眼とも水晶体再建術,汎網膜光凝固術を施行され,当科に定期通院していた.現病歴:2010年7月上旬より頭痛,右眼痛のため脳神経外科,神経内科受診するも原因不明であった.疼痛が増悪し,当科受診した.初診時所見:視力は右眼(0.9×sph+1.25D(cyl.2.0DAx100°),左眼(0.9×sph+3.25D(cyl.3.25DAx85°),眼圧は右眼9mmHg,左眼10mmHgであった.角結膜,眼内レンズ,硝子体に異常所見は認められず,眼底には汎網膜光凝固術後のレーザー痕を認めるが,以前と著変がなかったため経過観察となった.臨床経過:症状は改善せず,8月下旬再診時,右眼視力が(0.3)に低下し,中心フリッカー値(CFF)では右眼16Hz,左眼36Hzと左右差を認めた.眼球運動は正常であり,血液検査では特記すべき異常値を認めなかった.Magneticresonanceimaging(MRI)では右視神経周囲に高信号域を認め,右篩骨洞内にも軽度の高信号を認めた(図1).耳鼻咽喉科コンサルトをした結果,篩骨洞の高信号所見は非特異的なものであるとの判断であった.視神経炎を疑い,同日よりプレドニゾロン(プレドニンR)30mg内服を開始し,3日後より入院となった.入院日撮影された造影computedtomography(CT)では,右下眼窩裂が開大し,その内部は軟部組織濃度であった(図2).骨破壊所見は認められなかった.脳神経外科・耳鼻咽喉科と合同カンファレンスを行い,腫瘍性病変や1706あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012図2造影CT右下眼窩裂の開大と軟部組織濃度の病変(矢印)を認めた.Tolosa-Hunt症候群による続発性視神経炎が最も疑わしいとの結論であったが,高齢者かつ透析患者であり開頭術を要するような生検は侵襲性が高いと判断され,診断的治療としてステロイドパルス療法(ソルメドロールR1,000mg)が選択され,入院1週間後より3日間行われた.ステロイドパルス療法開始日に行われた造影MRIでは,右下眼窩裂内にT1・T2強調画像でともに低信号を示す病変を認め,右篩骨洞内にもT1強調画像で低信号,T2強調画像で淡い高信号を示す病変を認めた(図3).ステロイドパルス療法により痛みは改善したが,パルス療法終了後より右眼上転・外転運動障害を認め,その1週間後には右眼瞼下垂,右全外眼筋麻痺,光覚なしとなった.9月下旬の採血にてb-d-グルカン(116) abab図3造影MRIa:T1強調画像,b:T2強調画像.右下眼窩裂内にT1・T2強調画像でともに低信号を示す病変(矢印)を認め,右篩骨洞内にはT1強調画像で低信号,T2強調画像で淡い高信号を示す病変(矢頭)を認めた.図4単純CT右蝶形骨洞内の粘膜肥厚・液体貯留を認めた.値が14.2pg/ml(基準値11以下)に上昇し(9月上旬では8.3pg/ml),CT検査では右蝶形骨洞内の粘膜肥厚・液体貯留を認めた(図4).確定診断のため耳鼻咽喉科にて右内視鏡下鼻副鼻腔手術(篩骨洞,蝶形骨洞開放)を行ったところ,炎症性浮腫状粘膜と貯留液を認めたが明らかな真菌塊は認めなかった.病理検体からは分節とY字分岐を伴う糸状真菌が多量検出され,副鼻腔アスペルギルス感染症(Aspergillusfumigatus)と診断された.術後よりアムホテリシンB(アムビゾームR)投与を開始したが,画像上では篩骨洞内の粘膜浮腫の増悪,上顎洞への液体貯留を認め,真菌感染の進行と考えられた.副鼻腔洗浄ドレナージを連日行い,10月上旬に内視鏡下副鼻腔根治術(蝶形骨洞,上顎洞,篩骨洞の掻爬,洗浄)を施行した.この際も明らかな真菌塊は認められなかった.術後も抗真菌薬治療を継続し,11月上旬に再度生検を行ったが,依然アスペルギルス菌糸が多数認められた.本人および家族がこれ以上の精査,外科的治療を希望しなかったため,抗真菌薬をボリコナゾール(ブイフェンドR),ミカファンギンナトリウム(ファンガードR)などに変更しながら内科的に治療を行った.11月中旬には右眼眼球運動が改善し,軽度の内転・上転・下転運動を認めるようになり,11月下旬には外転運動も認められるようになった.12月中旬には眼球運動は全方向で問題なく認められるようになったが,視力は光覚なしのままであった.CT上も著変がなく,病状は安定していたため,12月下旬退院となった.退院後もイトラコナゾール(イトリゾールR)の内服を継続し,現在も感染症内科外来通院中である.II考察副鼻腔真菌症は非浸潤型と浸潤型に分類され1),非浸潤型は副鼻腔内にとどまり予後良好だが,浸潤型は眼窩や頭蓋内へ進展するため重症化しやすい2).浸潤型は全副鼻腔真菌症例の10%以下であり,頭痛や.部痛,眼痛で始まり,視力障害,眼筋麻痺,眼球突出などが続発することが多い2).また,浸潤型のほとんどは免疫不全患者に発生し,健常者に発生することは非常にまれである3).副鼻腔真菌症の原因菌はアスペルギルスが80%以上を占め,罹患洞は上顎洞,篩骨洞,蝶形骨洞の順に多い2,4).上顎洞真菌症では鼻汁,鼻閉などの鼻症状や.部痛・違和感を伴うことが多いが,蝶形骨(117)あたらしい眼科Vol.29,No.12,20121707 洞真菌症では鼻症状が乏しく,視力障害,頭痛,顔面痛などを訴える2).また,蝶形骨洞を原発巣とする場合,解剖学的に隣接する海綿静脈洞や視神経に浸潤しやすいため浸潤型となりやすく,眼窩先端症候群をひき起こすことがある5,7).眼窩先端症候群とは上眼窩裂を走行する動眼神経,滑車神経,三叉神経,外転神経および視神経の障害を主徴とする症候群で,腫瘍,炎症,外傷など種々の疾患が原因となるが,副鼻腔真菌症もまれに原因となる5.7).鑑別が困難な症例では,ステロイド薬投与後の症状増悪で真菌症に気づくこともあり,過去にはTolosa-Hunt症候群と診断され,ステロイド薬治療後に死亡に至った真菌性副鼻腔炎の症例も報告されている8).副鼻腔真菌症から眼窩先端症候群をきたした場合,頭蓋内浸潤を起こし,真菌の脳血管浸潤により脆弱な真菌性脳動脈瘤が形成され,脳出血や脳梗塞の原因となることがある9,10).頭蓋内浸潤を起こした場合の死亡率は90%を超えるとの報告もある11).そのため,炎症性疾患としてステロイド薬治療を開始する前に,真菌感染を血液検査,画像検査などで除外することは非常に重要であり,画像診断上,疑わしき病変があれば確定診断のため生検術を優先させるべきである.鼻腔などから採取された検体からの菌培養検査では,真菌の検出率は10%程度と低いため,あまり有用ではない4).b-d-グルカン値は陰性例もあるため初期診断に有効でないこともある6)が,陽性例では診断や治療経過・再発の評価に用いられる12).画像診断では,CTでの骨壁・副鼻腔粘膜肥厚,副鼻腔内の軟部陰影・石灰化陰影,骨破壊像が特徴的な所見とされ,特に石灰化陰影は90%以上の症例で認められる2).真菌塊は増殖するとその中央部が壊死に陥り,リン酸カルシウムや硫酸カルシウムが沈着するため,同部はCTで高吸収域となるためと考えられている13,14).また,真菌の産生する蛋白質の影響で,MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で著明な低信号を呈する15).本症例では初期のCTやMRIで真菌症特有の所見がなく,診断が困難であった.初期のMRI(T2強調画像)においては,篩骨洞の高信号所見があったものの,耳鼻科専門医による読影でも判断が困難なものであった.臨床所見からは腫瘍性病変やTolosa-Hunt症候群などによる続発性視神経炎が最も疑われたが,高齢者かつ透析患者であり開頭術を要するような生検は侵襲性が高いと判断され,診断的治療としてステロイドパルス療法が選択された.ステロイド薬投与が真菌感染の活動を助長した可能性は否定できない.右眼失明,全眼球運動障害などの症状が出現し,b-d-グルカン値も上昇したため,耳鼻科にて生検を行ったところ,アスペルギルスが病理学的に検出され,診断に至った.抗真菌薬投与,副鼻腔ドレナージを行うも右下眼窩裂の軟部組織病変から隣接する篩骨洞,蝶形骨洞,上顎洞へ順次感染が拡大した.根治術後は徐々に改善し,幸いにも生命予後不良な頭蓋内浸潤は起1708あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012きなかったが,罹患眼は光覚を失ったままであった.高齢者,糖尿病といった易感染性の背景をもつ患者が眼窩先端症候群を呈する場合には真菌感染も念頭におく必要がある.特に画像診断上真菌感染を否定できない病巣を認める場合には,確定診断のため積極的に生検を行うべきである.炎症性疾患と診断され,ステロイド薬全身投与を開始された後で症状が増悪する場合には,改めて感染症の可能性を強く疑う必要がある.文献1)JamesF,HoraMC:Primaryaspergillosisoftheparanasalsinusesandassociatedarea.Laryngoscope75:768-773,19652)大河喜久,佐伯忠彦,渡辺太志:鼻副鼻腔真菌症74例の臨床的検討.耳喉頭頸83:859-864,20113)GirishF,SureshM,AndresAetal:Fungaldiseasesoftheparanasalsinuses.SeminUltrasoundCTMR20:391401,19994)長谷川稔文,雲井一夫:鼻副鼻腔真菌症54例の臨床的検討.耳鼻臨床98:853-859,20055)田中章浩,吉田誠克,諌山玲名ほか:眼窩先端症候群を呈した非浸潤型副鼻腔アスペルギルス感染症の1例.臨床神経51:219-222,20116)鴨嶋雄大,澤村豊,岩崎善信ほか:眼窩先端症候群にて発症した浸潤型副鼻腔.眼窩アスペルギルス症の1例.脳神経外科35:1013-1018,20077)Sivak-CallcottJA,LivesleyN,NugentRAetal:Localisedinvasivesino-orbitalaspergillosis:characteristicfeatures.BrJOphthalmol88:681-687,20048)MarcusMM,WilliamY,AlberDMetal:AspergillusinfectionoftheorbitalapexmasqueradingasTolosa-Huntsyndrome.ArchOphthalmol125:563-566,20079)RobertWH,AlexJ,WilliamBetal:Mycoticaneurysmandcerebralinfarctionresultingfromfungalsinusitis.AJNRAmJNeuroradiol22:858-863,200110)杉山拓,黒田敏,中山若樹ほか:眼窩先端部症候群で発症した内頸動脈浸潤した副鼻腔真菌症の3症例.脳神経外科39:155-161,201111)ColemanJM,HoggGG,RosenfeldJVetal:Invasivecentralnervoussystemaspergillosis:curewithliposomalamphotericinB,itraconazole,andradicalsurgery─casereportandreviewoftheliterature.Neurosurgery36:858-863,199512)NakanishiW,FujishiroY,NishimuraSetal:Clinicalsignificanceof(1-3)-b-D-glucaninapatientwithinvasivesino-orbitalaspergillosis.AurisNasusLarynx36:224-227,200913)StammbergerH,JakseR,BeaufortFetal:Aspergillosisofparanasalsinuses.AnnOtolRhinolLaryngol93:251256,198414)熊澤博文,中村晶彦:上顎洞真菌症のCT像の検討.耳鼻臨床78:1935-1941,198515)ZinreichSJ,KennedyDW,MalatJetal:Fungalsinusitis:diagnosiswithCTandMRimaging.Radiology169:439-444,1988(118)

インフリキシマブ投与時反応による治療中止後も寛解維持 できたBehçet 病の1例

2012年12月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科29(12):1701.1704,2012cインフリキシマブ投与時反応による治療中止後も寛解維持できたBehcet病の1例小池直子*1尾辻剛*1木本高志*2三間由美子*1西村哲哉*1髙橋寛二*3*1関西医科大学附属滝井病院眼科*2済生会野江病院眼科*3関西医科大学附属枚方病院眼科ACaseofBehcet’sDiseaseAccompaniedbyUveoretinitis,InWhichNoOcularAttacksWereObservedafterDiscontinuationofInfliximabBecauseofInfusionReactionNaokoKoike1),TsuyoshiOtsuji1),TakashiKimoto2),YumikoMitsuma1),TetsuyaNishimura1)andKanjiTakahashi3)1)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalSchoolTakiiHospital,2)3)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalSchoolHirakataHospitalDepartmentofOphthalmology,SaiseikaiNoeHospital,目的:Behcet病に対する新しい治療としてインフリキシマブの全身投与が行われているが,約9.5%に投与時反応が起こるとされている.反復する投与時反応のためインフリキシマブ治療が中止された後,約1年にわたり寛解維持ができている症例を経験した.症例:35歳,男性.右眼矯正視力0.03.前医にてBehcet病との診断でコルヒチン内服を開始したが再燃し当科を受診した.診断確定後5カ月でインフリキシマブ投与を開始し,導入1カ月後には消炎しその後発作はなかった.導入12カ月後,投与時に全身に蕁麻疹が発現しその後も投与時反応を繰り返すためインフリキシマブ投与を中止した.中止後約1年経過しても発作の再燃は認めていない.考察と結論:本症例はインフリキシマブ導入時期が早く,導入前発作回数も2回と少なかった.導入後には発作がなく本症例のように安定した症例ではインフリキシマブが中止可能であることが示唆された.Purpose:TheeffectivenessofinfliximabforBehcet’sdiseasehasbeenshown.Recentreportshavestatedthatinfusionreactionstoinfliximabwereobservedin9.5%ofpatients.Wereportacaseinwhichthediseasehasbeensuccessfullycontrolledbyinfliximabtreatmentforoneyearafterdiscontinuationbecauseofrefractoryinfusionreaction.Case:Thepatient,a35-year-oldmalewithiridocyclitis,receivedinfusionsofinfliximabbecauseofuncontrollableocularattacks.Athiseighthadministration,infusionreactionappearedandthetreatmentwasdiscontinuedbecausetherefractoryinfusionreactioncouldnotbecontrolledwithglucocorticoids.Therehavebeennoocularattackssincethediscontinuationofinfliximabtherapy.Discussion:Inthiscase,onlytwoocularattackshadoccurredbeforetheinitiationofinfliximabtherapy;therewerenoocularattacksafterthetherapy.Thisindicatesthatinfliximabtherapymaybeterminatedinsomewell-controlledcases,asinthiscase.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(12):1701.1704,2012〕Keywords:ベーチェット病,インフリキシマブ,抗TNF-a(腫瘍壊死因子-a)抗体,投与時反応.Behcet’sdisease,infliximab,antiTNF-a(tumornecrosisfactor-a)antibody,infusionreaction.はじめにBehcet病の治療としては,その発作抑制のため以前よりコルヒチン,シクロスポリンが広く用いられてきた.しかし,これらの薬剤では完全に眼発作を抑制することはむずかしく,また投与により重篤な副作用をきたす可能性もあった.近年,Behcet病に対する新しい治療として,抗TNF-a(tumornecrosisfactor-a)抗体であるインフリキシマブの全身投与が行われている.インフリキシマブは,炎症性サイトカインであるTNF-aに対するキメラ型単クローン抗体製剤で,関節リウマチや大腸Crohn病などの自己免疫疾患に対する治療薬として広く使われている.TNF-aはBehcet病による炎症において重要な役割を果たしているとされており,Behcet病による難治性ぶどう膜炎に対して2007年1月に適応が追加承認された.しかし,寛解患者に対する中止時〔別刷請求先〕小池直子:〒570-8607守口市文園町10-15関西医科大学附属滝井病院眼科Reprintrequests:NaokoKoike,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityTakiiHospital,10-15Fumizonocho,Moriguchi,Osaka570-8607,JAPAN0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(111)1701 期にはいまだ明確な指針がないため,発作予防のために治療を継続せざるをえないのが現状である.インフリキシマブの投与時に約10%にアレルギー反応が起こることがあり,これは投与時反応とよばれ,インフリキシマブ投与中または投与終了後2時間以内に認められる副作用である1).市販後調査の中間報告によると,おもな症状は発疹で,重篤なものには発熱,アナフィラキシー反応がある.Behcet病眼病変診療ガイドラインによると,投与時反応が起きてもインフリキシマブ治療を継続する場合には,抗ヒスタミン薬やステロイド薬を併用すれば良いとされている1).今回,反復する投与時反応のためインフリキシマブ治療が中止された後,約1年にわたって寛解維持できている症例を経験したので報告する.I症例患者:35歳,男性.初診日:平成21年1月26日.主訴:右眼視力低下.現病歴:平成19年10月頃より右眼虹彩毛様体炎を繰り返し前医に通院していた.平成20年9月,前医再診日に右眼前房内炎症細胞浸潤,びまん性硝子体混濁,黄斑部近傍の網膜滲出斑を認めた.矯正視力は0.02であった.前医にてステロイド薬内服,トリアムシノロンアセトニドのTenon.下注射を施行し,1カ月で消炎した.結節性紅斑,副睾丸炎,口腔内アフタ,関節炎を認めたため,前医にてBehcet病と診断され,コルヒチン内服を開始し,その後発作はなかった.平成21年1月から右眼視力低下を自覚し,平成21年1月22日前医受診時,右眼前房内炎症の悪化,硝子体混濁の増悪,網膜に出血と滲出斑を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影(fluoresceinangiography:FA)では右眼視神経乳頭の過蛍光,網膜血管からのシダ状の蛍光漏出を認め(図1),矯正視力は0.01に低下していたため関西医科大学附属滝井病院眼科紹介受診となった.既往歴:特記すべきことなし.初診時所見:視力は右眼0.01(0.03×sph.6.5D),左眼0.03(1.2×sph.7.5D(cyl.0.5DAx105°).眼圧は右眼22mmHg,左眼18mmHgであった.右眼に前房内炎症細胞浸潤,硝子体混濁,黄斑浮腫を認めた.全身症状として副睾丸炎,結節性紅斑,口腔内アフタ,関節炎症状を認めた.経過:コルヒチン投与を行ってもBehcet病の発作が抑えられないため,診断確定から5カ月後の平成21年2月24日よりインフリキシマブ投与を開始した.インフリキシマブ投与開始後もコルヒチン内服は継続した.インフリキシマブは0,2,6週目,それ以降は8週ごとに投与した.投与開始1カ月後には右眼矯正視力は0.4に回復し,前房内炎症,硝1702あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012ab図1前医でのFAa:視神経乳頭の過蛍光を認める.b:網膜血管からのシダ状の蛍光漏出を認める.子体混濁,黄斑浮腫は軽減し,その後発作はなくなり寛解状態となった.また,投与前に認めた副睾丸炎,結節性紅斑,口腔内アフタ,関節炎症状は軽快した.インフリキシマブ投与開始から12カ月後の8回目の投与時に,投与開始直後から胸部,背部に皮疹が出現したためインフリキシマブ投与を中断した.9回目の投与時,ステロイド薬と抗ヒスタミン薬の前投与を行った後,点滴速度を遅くしてインフリキシマブを投与したが,再度皮疹が出現した.内科担当医よりインフリキシマブ投与の継続は困難との連絡があり,平成22年4月19日を最後に,インフリキシマブ投与は中止となった.中止後はコルヒチン内服を継続した.投与中止5カ月後に施行したFAでは右眼に網膜血管からの蛍光漏出を認めたものの軽度であり(図2),矯正視力も0.5であった.投与中止12カ月後には,右眼にわずかに硝子体混濁を認めるのみで(図3),矯正視力は0.7と改善していた.投与中止から1年以上経過した現在も矯正視力は0.7を維持しており,炎症の再燃は認めていない.II考按TNF-aは炎症性サイトカインの一つで,Behcet病の病(112) abcabcabc図2投与中止5カ月後の眼底およびFAa:眼底.眼底透見良好で炎症はみられない.b:FA早期.網膜血管からわずかな蛍光漏出がみられる.c:FA後期.視神経乳頭からもわずかな蛍光漏出がみられる.態に深く関与することが示唆されている2.4).抗TNF-a抗体であるインフリキシマブは,2002年にCrohn病に,2003年に関節リウマチに対する治療薬として使用が開始された5.7).そして新たに,Behcet病によるぶどう膜炎に対して行われた臨床治験で,インフリキシマブが眼発作回数を有意(113)図3投与中止12カ月後の眼底およびFAa:眼底.硝子体混濁をわずかに認める.b:FA早期.蛍光漏出はみられない.c:FA後期.蛍光漏出はみられない.に減少させ,視力の改善が得られたと報告され8),Behcet病に対して効能追加されるに至った.インフリキシマブは,既存の治療に抵抗性の難治例に対して用いられるべきとされている.しかし,視力の低下につながるような発作は発症後1.3年目という早期に多く起こっており,インフリキシマブのように眼発作を強力に抑制できるような薬剤を早期から使あたらしい眼科Vol.29,No.12,20121703 用することによって,Behcet病による不可逆的な視力低下を阻止することができる可能性がある9).既存の治療で十分な効果が得られず難治性と判断したならば,インフリキシマブの導入も考慮することが重要である.インフリキシマブに対する市販後調査の中間報告によると,インフリキシマブ開始前の6カ月当たりの発作回数は1.3回が最も多く,57.2%であった.また,Behcet病の平均罹病期間は7.6年であった.インフリキシマブ投与前後の6カ月当たりの平均発作回数の変化については,インフリキシマブ投与前が3.25回であったのに対し,投与後は0.72回と減少していた.今回の症例では,初診時すでにBehcet病と診断されてから4カ月が経過しており,この時点でコルヒチンによる発作抑制は困難であると判断し,初診から1カ月でインフリキシマブ導入に至っている.このように比較的早く導入することができたことも,致命的な視力低下に至らなかった原因の一つであると考えられた.インフリキシマブによる投与時反応発症時には,点滴を中止したうえで,アセトアミノフェンや抗ヒスタミン薬の投与を行い,次回点滴の際にはアセトアミノフェン,抗ヒスタミン薬,ステロイド薬などを前投与し,点滴速度を遅くするなどの対応が必要であるとされている1).インフリキシマブをいつ中止すべきかという問題に対する明確な解答は現時点ではない.種々の理由でインフリキシマブを中止した後にも,眼炎症発作が長期にわたり抑制されているとの報告もあり10),このことはインフリキシマブを中止できる可能性があることを示唆している.今回の筆者らの症例は,インフリキシマブ導入前発作回数も2回と少なく,また導入後も一度も発作が起きることはなかった.今回は反復する投与時反応のため,投与を中止せざるをえない状態となったが,このような安定した症例ではインフリキシマブの中止は可能なのかもしれない.しかし,投与間隔を延ばすと眼発作を起こす例も報告されており11),投与中止は慎重に行う必要がある.また,インフリキシマブは副腎皮質ステロイド薬のように減量しながら中止することにより,インフリキシマブに対する自己抗体の産生を促すという報告もあり12),中止の仕方に関しても今後さらなる検討が必要と考えられる.投与時反応は2.4年間の間隔をおいて再投与した場合に,より重篤な反応が起こりやすいとされており13),投与の再開は慎重に行うべきであると考えられた.中止後の再燃があった場合にインフリキシマブ投与の再開が可能か否か,また別の薬剤に変更するのかについては今後の課題である.III結語本症例では,インフリキシマブ導入時期がBehcet病と診断されてから5カ月と比較的早く,導入前発作回数も2回と少なく,また導入後も一度も発作が起きることはなかった.1704あたらしい眼科Vol.29,No.12,2012このような安定した症例ではインフリキシマブが中止可能であることが示唆された.本稿の要旨は第45回日本眼炎症学会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)大野重昭,蕪城俊克,北市伸義ほか:ベーチェット病眼病変診療ガイドライン.日眼会誌116:394-426,20122)NakamuraS,YamakawaT,SugitaMetal:Theroleoftumornecrosisfactor-aintheinductionofexperimentalautoimmuneuveoretinitisinmice.InvestOphthalmolVisSci35:3884-3889,19943)中村聡:ぶどう膜炎の細胞生物学.日眼会誌101:975986,19974)中村聡,杉田美由紀,田中俊一ほか:ベーチェット病患者における末梢血単球のinvitrotumornecrosisfactor-alpha産生能.日眼会誌96:1282-1285,19925)ElliottMJ,MainiRN,FeldmannMetal:Repeatedtherapywithmonoclonalantibodytotumornecrosisfactora(cA2)inpatientswithrheumatoidarthritis.Lancet344:1125-1127,19946)MainiR,StClairEW,BreedveldFetal:Infliximab(chimericanti-tumornecrosisfactoramonoclonalantibody)versusplaceboinrheumatoidarthritispatientsreceivingconcomitantmethotrexate:arandomizedphaseIIItrial.Lancet354:1932-1939,19997)HanauerSB,FeaganBG,LichtensteinGRetal:MaintenanceinfliximabforCrohn’sdisease:theACCENTⅠrandomizedtrial.Lancet359:1541-1549,20028)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Efficacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofinfliximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheumatol31:1362-1368,20049)KaburakiT,ArakiF,TakamotoMetal:Best-correctedvisualacuityandfrequencyofocularattacksdurintheinitial10yearsinpatientswithBehcet’sdisease.GraefesArchClinExpOphthalmol248:709-714,201010)田中宏幸,杉田直,山田由季子ほか:Behcet病に伴う難治性網膜ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ治療の有効性と安全性.日眼会誌114:87-95,200011)TakamotoM,KaburakiT,NumagaJetal:Long-terminfliximabtreatmentforBehcet’sdisease.JpnJOphthalmol51:239-240,200712)MainiRN,BreedveldFC,KaldenJRetal:Therapeuticefficacyofmultipleintravenousinfusionsofanti-tumornecrosisfactoramonoclonalantibodycombinedwithlow-doseweeklymethotrexateinrheumatoidarthritis.ArthritisRheum41:1552-1563,199813)竹内勤,天野宏一:新しい治療法の考え方:生物製剤の現状と展望.日内会誌89:2146-2153,2000(114)