写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史荻原由梨奈468.EGFR阻害薬による角膜切迫穿孔東京歯科大学市川総合病院眼科図2図1のシェーマ瞳孔領やや下方にCDescemet膜瘤(..)を認める.図1右眼の術前前眼部所見症例はCEGFR陽性腫瘍の術後再発に対してアファチニブを服用していたC76歳,女性.右眼に角膜潰瘍を発症したため,アファチニブを休薬し,抗菌薬治療を開始してC2カ月後.図3術前OCT(CASIA)画像270°方向に角膜の菲薄化を認める.図4術後前眼部所見全層角膜移植術+水晶体.外摘出術+眼内レンズ挿入術術後.(69)あたらしい眼科Vol.40,No.5,2023C6470910-1810/23/\100/頁/JCOPY症例は76歳の女性.2018年と2020年に右眼帯状角膜変性症に対して角膜表層切除(エチレンジアミン四酢酸使用)を受けた.2021年から上皮成長因子受容体(epidermalgrowthfactorreceptor:EGFR)陽性肺癌の術後再発に対してCEGFR阻害薬(アファチニブ)による治療が開始され,皮膚障害の副作用のため減量し,半量のC20Cmg/日を内服していた.2022年C7月,右眼角膜潰瘍と診断され当院を受診した.視力は右眼0.03(n.c.),左眼(1.2),眼圧は右眼C8CmmHg,左眼C13mmHg,右眼は角膜中央よりやや下方に潰瘍があり,非常に薄くなっていたが前房は保たれていた.Schirm-erテストCI法は右眼C13Cmm,左眼C8Cmm,角膜知覚検査は右眼C0.5Ccm以下,左眼C2.0Ccmと著明に低下していた.アファチニブによる角膜潰瘍と診断し,アファチニブの休薬と右眼ベガモックス点眼C1日C4回,タリビッド眼軟膏C1日C1回による治療を開始した.2カ月後,視力は右眼C0.02(n.c.),左眼(1.2),眼圧は右眼C7CmmHg,左眼12CmmHgで,右眼にCDescemet膜瘤と著明な角膜浮腫,Descemet膜皺襞があり(図1~3),治療用コンタクトレンズをC1週間装用したが改善しなかったため,右眼全層角膜移植術+水晶体.外摘出術+眼内レンズ挿入術を施行した(図4).角膜移植術後,肺癌の脳転移が増大傾向であったため,アファチニブを再開した.2023年C1月現在,右眼矯正視力(0.8)まで改善し,アファチニブの副作用もなく,経過良好である.アファチニブによる角膜潰瘍が生じた報告は,文献を渉猟するかぎりCMcKelvieらが報告したC1件のみである.しかし,ゲフィチニブやエルロチニブなど他のCEGFR阻害薬による角膜菲薄化や穿孔はC1件以上報告されている.McKelvieらは非小細胞肺癌の治療にアファチニブを使用したC85歳の女性に両眼性の角膜潰瘍と実質の菲薄化が生じたが,アファチニブの休薬,抗菌薬とステロイドの内服,点眼,治療用コンタクトレンズの装用により上皮欠損は治癒したと報告している1).Ibrahimらは肺腺癌治療のためゲフィチニブ内服中のC60歳の女性が片眼性の角膜穿孔を起こしたため,角膜移植を施行したと報告している2).Johnsonらは肺癌治療のためエルロチニブ内服中のC79歳の女性が遷延性角膜上皮欠損となり,エルロチニブ休薬後C2週間以内に改善したと報告している3).アファチニブによる角膜潰瘍の正確な機序はいまだに不明である.しかし,EGFR信号の変化に関連して角膜上皮の変化が起きていると考えられている.EGFR阻害薬はドライアイや角膜の創傷治癒の遅延と関係している4).EGFR阻害薬を内服中の患者に対しては,眼科医,内科医が慎重に患者の経過観察を行い,角膜潰瘍が生じた際にはCEGFR阻害薬との関連に早急に気づくこと,休薬を検討することが大切である.文献1)McKelvieCJ,CMcLintockCC,CElalfyM:BilateralCulcerativeCkeratitisassociatedwithafatinibtreatmentfornon-small-celllungcarcinoma.CCorneaC38:384-385,C20192)IbrahimCE,CDeanCWH,CPriceCNCetal:PerforatingCcornealCulcerationinapatientwithlungmetastaticadenocarcino-maCtreatedCwithge.tinib:ACcaseCreport.CCaseCRepCOpthalmolMedC2012:379132,C20123)JohnsonKS,LevinF,ChuDS:Persistentcornealepitheli-aldefectassociatedwitherlotinibtreatment.CorneaC28:C706-706,C20094)HoWL,WongH,YauT:Theophthalmologicalcomplica-tionsCofCtargetedCagentsCinCcancertherapy:whatCdoCweCneedCtoCknowCasCophthalmologist?CActaCOphthalmolC91:C601-609,C2013C