———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSの文字を書いているのかなど,格段に得られる情報が増える(図2).涙液油層動態解析は基本的にはビデオ撮影およびそのコマ送り再生を行い,油層の分布を解析する.オキュラサーフェスはダイナミックである.涙のダイナミクスはcompositionalfactor(分泌,三層構造)と,hydrodynamicfactor(瞬目,閉瞼)によりなる1)(図3).涙腺で涙液が分泌され,マイボーム腺から油が分泌されるわけだが,それだけでは眼表面全体にきれいな三層構造は形成されない.瞬目することにより上下のメニスカスに貯留している涙液が眼表面に拡散し,また,油が閉瞼時に圧縮され開瞼時に涙液水層上に伸展するのである.そして涙液の大部分は涙道から排出され,開瞼時には一部分が眼表面から蒸発する.オキュラサーフェスのはじめに涙液が表層から油層,水層,ムチン層の三層構造をとることはよく知られているが,現在のところ,ドライアイの診断はSchirmerテストを中心にした水層の評価が中心となっている.治療に関しても,人工涙液やヒアルロン酸の点眼,涙点プラグや涙点閉鎖など水層をターゲットにしたものがほとんどである.しかしSchirmerテストに異常を示さないドライアイ患者やこのアプローチのみでは治癒しない患者も多く存在し,涙液油層やムチンに対して目が向けられるようになってきた.また,眼科全般において,検査の技術は目覚しい発展を遂げているが,特に動的要素の多いオキュラサーフェス領域においては,ある一瞬一瞬の結果だけでは病態評価が困難であり,二次元から三次元,さらには時間的な要素を加味した,いわゆる四次元検査が発展を続けている.本稿では,近年発展してきた涙液油層の非侵襲的検査DR-1?,およびその動的解析について述べる.I動的解析とは動きのあるものをある一瞬の結果のみ解析しても,その瞬間の情報しか得ることができない.たとえば,文字を書く経過を例にしてみるとわかりやすい.書いている途中のある一瞬を見ただけでは,その先に何を書くのかすらわからない(図1).書く経過を連続して見てみると,どのような書き順で,どのくらいのスピードで,何(25)???*EriHosaka&EikiGoto:鶴見大学歯学部眼科学講座〔別刷請求先〕保坂絵里:〒230-8501横浜市鶴見区鶴見2-1-3鶴見大学歯学部眼科学講座特集●前眼部四次元検査(前眼部キネティックアナリシス)あたらしい眼科24(4):423~429,2007DR-1?による涙液油層動態解析??????????????????????????????????????????????????-?????????保坂絵里*後藤英樹*図1静的解析のイメージ1枚の写真だけ見ても何の文字を書いているかはわからない.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007状態は刻一刻と変化し,瞬目直後と直前では涙液層の厚みや油層の動態,涙液の蒸発量はまったく異なるのである.すなわち,分泌量,層の厚さなどの静的解析のみならず,経時的変化を考慮した動的解析が重要になってくる.DR-1?が登場した当初は涙液油層干渉像の評価方法としては,TearscopeTMのパターン判定,DR-1?のグレード分類,干渉色からの油層の厚みのおおよその定量化などの静的解析がおもなものであった.動的解析の方法としてはDR-1?,TearscopeTMを用いたnon-inva-siveBUT(NI-BUT)測定が行われていた.最近での涙液油層動的解析としては,DR-1?を用いた脂質伸展時(26)表1オキュラサーフェスの解析静的解析動的解析Schirmer試験BUT染色試験NI-BUTメニスカスTSAS角膜トポグラフィーLipidspreadtime(脂質伸展時間)DR-1?のグレード分類油層厚み定量図2動的解析のイメージ連続写真を見ると経時的変化がわかり,情報量が格段と増大する.図3涙のダイナミクス涙液の分泌開瞼時に蒸発涙道を通り鼻腔へ瞬目による涙液の拡散および油の伸展マイボーム腺より油の分泌涙腺,———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???間(lipidspreadtime)の測定がある(表1).これは涙液層破壊時間(BUT),NI-BUT,TearStabilityAnaly-sisSystem(TSAS)(五藤智子先生の項参照)などと同様,大きな意味での涙液の安定性の検査といえる.IIDR-1?の原理涙液油層干渉像カメラDR-1?(興和,名古屋)(図4)は無色で観察しがたい涙液油層の動態を特殊な光学系を通して観察することのできるデバイスである2).角膜に白色光を投影すると,油層の表面と裏面からの2つの反射光に光路差が生じ,干渉現象が起こり,そのときに干渉縞を呈する3)(図5).多波長の白色光源では膜厚の変化に伴って茶色がかった灰色から徐々に明るくなり,虹色の干渉縞を呈する.わかりやすく言うと,シャボン玉(石けんの薄膜が覆っており,太陽光によって干渉現象が生じる)の表面が虹色に見えるのと同じ現象である.DR-1?では白色光源を用いており,涙液表層の薄膜(油層)によって呈される干渉像を観察することができ,無色の薄膜を可視化している.IIIDR-1?の所見DR-1?では,角膜上の油層の分布と開瞼時の油層の経時的変化を観察することができる.油層の厚みが0~約100nmの範囲では灰色の干渉光を呈し,厚みの増加に伴い,黄,茶,青の順に色が変化していく.DR-1?による油層の干渉像は瞬目後1~3秒で安定したパターンを示し,正常では開瞼後10~30秒でドライスポットが出現する.DR-1?は本来,薄膜干渉色情報(油層の厚み情報)を観察する装置である.しかし,涙液分泌が減少していると油が角膜上を均一に伸展,安定せず,油層の厚みが増すことが知られており,涙液分泌減少型ドライアイ(Sj?gren症候群など)の重症度の判定や涙点プラグや涙点閉鎖の治療後の評価にも有用である2,4).IVDR-1?の評価方法DR-1?の結果の評価には,瞬目数秒後の安定した油膜の状態を評価する静的解析(staticanalysis)と油膜の状態を経時的に評価する動的解析(kineticanalysis)がある.1.静的解析正常眼では,油層は瞬目後1~3秒で角膜全体に油が行きわたり,安定したパターンを呈する.Yokoiらは,この安定した時点での干渉像を5つのグレードに分類した2,4)(図6).正常眼では水層が十分に存在するので,油の伸展が良く薄く均一に分布するため,灰色一色の干渉色を示す(グレード1)が,ドライアイでは水層が減少するため,油が均一に伸展せず厚みにばらつきが生じる.そのため,干渉光が多彩になり干渉縞が観察される(27)図4涙液油層干渉像カメラDR-1?図5原理入射光が,油層表面で鏡面反射(g1)および油層水層境界面で鏡面反射(g2)し干渉することにより,干渉光(R)を呈する.?は角膜前涙液油層厚,f1は反射角でありDR-1?光学系ではレンズ設計により0?を実現しており,?は空気,涙液油層,涙液水層の屈折率である.(文献3より使用許諾を得て掲載)Air1.0Lipid1.48Aqueous1.33)R(?g1g2f1=0?———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(グレード3~5).グレード5になると瞬目に伴う油層の伸展もほとんどみられず,角膜表面が露出している.かなりの重症ドライアイの所見である.涙液減少型ドライアイの重症度と相関するため,ドライアイのスクリーニングに有用と考えられている2,4).2.動的解析a.涙液干渉像によるNI-BUT(non-invasiveBUT)涙液の安定性の評価方法としてはフルオレセイン染色を用いたBUT測定があるが,フルオレセインを点眼することによって本来の涙液安定性に影響を与えてしまうことが知られている5).DR-1?やTearscopeTMなどの涙液干渉装置では,フルオレセインを点眼することなく,涙液層の破壊像を観察することができる(図7).正常眼では10~30秒程度とされているが,破壊像が観察されない症例もあることから,涙液三層のうち,どの層の破壊像なのかははっきりとわかっていない.b.脂質伸展時間(lipidspreadtime)の測定瞬目後約0.2秒間隔でDR-1?にて油層干渉像をビデオ撮影し,経時的な油層の動態を解析する.正常では油層の干渉縞が水平方向に伸展していくパターンがみられるが,マイボーム腺機能不全などの油層が減少していると考えられるドライアイ症例では,干渉縞は下から上へ垂直方向に伸展し,なおかつ角膜上方まで伸展しきらずに角膜全体に行きわたる前に伸展が止まってしまうパターンがみられることが多い6)(図8).Gotoらは瞬目してから油の伸展が止まるまでの時間を脂質伸展時間(lipidspreadtime)とし,健常者では0.36±0.22秒,(28)図7DR-1?によるNI-BUT開瞼10秒後に出現したドライスポット(矢印).グレード1グレード2グレード4グレード5グレード3図6DR-1?グレード分類———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???マイボーム腺機能不全患者では3.54±1.86秒,さらに涙液減少性ドライアイ患者では2.2±1.1秒であり,涙点閉鎖後では0.8±0.5秒と脂質伸展時間は有意に短縮したことを報告した6,7)(図9).健常者では1秒以内で眼表面全体に伸展する油がドライアイ患者では油の伸展障害が起こっており,伸展が止まるまでに時間がかかり,(29)図8正常眼(上)およびマイボーム腺機能不全患者(下)の油層の分布正常眼では,油層の分布が水平に伸展しているが,マイボーム腺機能不全患者では垂直に分布している.また,瞬目(O)から油層の伸展が止まる(X)までの時間が(脂質伸展時間)正常眼に比して,マイボーム腺機能不全患者では延長していることがわかる.(文献7より使用許諾を得て掲載)———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007さらに油が角膜全体に伸展しないことがわかる6,7).最近では,横井,山田らにより涙液油層の動態に関してレオロジーモデルを用いた解析が報告されており(横井則彦先生の項参照),そちらも今後の発展が期待される8).このようにDR-1?の動的解析を用いることにより,涙液脂質伸展,およびそれに影響する涙液水分量の(30)図9涙液減少型ドライアイ(上)vs涙点閉鎖術後(下)瞬目(O)から油層の伸展が止まる(X)までの時間(脂質伸展時間が)涙点閉鎖後では短縮していることがわかる.(文献6より使用許諾を得て掲載)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???評価を行うことが可能となってきている.V今後の課題動的解析は四次元(xyz軸+時間軸)の対象を比較検討するもので,その結果の評価が現在のところ非常に困難である.まずは三次元の対象を一次元に表現するインデックスの開発が急務である.たとえば,角膜トポグラフィーにおけるSRI(surfaceregularityindex)や角膜波面収差におけるZernike多項式のような臨床上有用なものが望まれる.DR-1?画像においては油層の厚みは部位によって異なるため,その平均を一つの値で表現し,画像全面での厚み定量を可能にすることが今後の課題と考えている.文献1)SolomonA,TouhamiA,SandovalHetal:Neurotrophickeratopathy,basicconceptsandtherapeuticstrategies.??????????????????????3:165-174,20002)YokoiN,TakehisaY,KinoshitaS:Correlationoftearlipidlayerinterferencepatternswiththediagnosisandseverityofdryeye.???????????????122:818-824,19963)GotoE,DogruM,KojimaTetal:Computer-synthesisofaninterferencecolorchartofhumantearlipidlayer,byacolorimetricapproach.?????????????????????????44:4693-4697,20034)DanjoY,HamanoT:Observationofprecornealtear?lminpatientswithSj?gren?ssyndrome.?????????????????????73:501-505,19955)MengherLS,BronAJ,TongeSRetal:E?ectof?uores-ceininstillationonthepre-cornealtear?lmstability.????????????4:9-12,19856)GotoE,TsengSC:Kineticanalysisoftearinterferenceimagesinaqueoustearde?ciencydryeyebeforeandafterpunctualocclusion.?????????????????????????44:1897-1905,20037)GotoE,TsengSC:Di?erentiationoflipidtearde?ciencydryeyebykineticanalysisoftearinterferenceimages.???????????????121:173-180,20038)横井則彦,山田英明,小室青ほか:レオロジーモデルによる涙液油層伸展速度と涙液貯留量の関連の検討.第30回角膜カンファランス,東京,2006.2.9(31)