———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS癌および直腸癌に対する医薬品としてFDA(食品医薬品局)により認可された.サリドマイドも血管新生阻害作用で癌治療に使用されているが,癌治療に正式に認可されているわけではないので,癌治療薬としてFDAの承認を得た初めての血管新生阻害薬である.したがってbevacizumabは眼科疾患に対して開発されたものではない.その点,加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管に対して開発されたranibizumabとは異なる.当薬剤は,前述のように眼科的疾患の治療を目的に開発された薬剤ではないが,加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管をはじめ,その発生,進展にVEGFが主要な役割を担っていると考えられる眼科的疾患に対する効はじめにBevacizumab(Avastin?,Genentech,Inc)とは,vascularendothelialgrowthfactor(VEGF:血管内皮細胞増殖因子)に対するヒト型のモノクローナル抗体製剤(anti-VEGF)である(図1).ここでいうヒト型のモノクローナル抗体とは,IgG(免疫グロブリンG)モノクローナル抗体の一部をヒト配列に変化させ,生体適合性を向上させた,いわゆるヒト化抗体というものである(図2).抗体の全長を用いており,分子量は約150kDである.VEGFのすべてのアイソフォームをターゲットとし,それらの効果を抑制する.同じく抗VEGF抗体製剤(同様にすべてのアイソフォームをターゲットとする)であるranibizumab(Lucentis?)(別項)は,anti-bodybindingsite(Fab)を中心とした分子量48kD程度の比較的小さなものである(図2).Bevacizumabは米国で開発され,2004年2月に結腸(15)???*HirokazuSakaguchi:大阪大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕坂口裕和:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):281~286,2007抗VEGF抗体:Bevacizumab(Avastin?)????-?????????????:???????????(????????)坂口裕和*図1抗VEGF抗体bevacizumab(Avastin?)図2抗VEGF抗体bevacizumab(Avastin?)とranibizumab(Lucentis?)の比較(RyanSJ,HindonDR,SchatAPetal:Retna,4thed,p1230-Fig.65-15,ElsevierMosby,2006より一部改変)RhuFab2Fab(50,000daltonsea.)lgG(150,000daltons)Ft(50,000daltons)Ranibizumab(Lucentis?)Bevacizumab(Avastin?)PapainCleavage———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007果が期待され,すでに実際に使用されており,近年,それらの治療効果が続々報告され始めている.本稿では,特に加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管への使用について述べたい.IBevacizumabの眼科的適応Bevacizumabは,すでに米国をはじめ各国において加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管を始め,多くの疾患に対する治療に用いられている.しかしながら,米国においてFDAの認可が得られているのは結腸癌および直腸癌に対する全身投与のみである.また米国では認可されているが,日本では,未認可の薬剤である.したがって,bevacizumabの眼科疾患に対する使用はすべて適応外使用であり,使用されている各国における方法も,治験などを施行して決定されたものではなく,最適な投与量,投与間隔,適応疾患などの検討はなされていない.適応外使用で現在当院にて治療対象となっている眼科疾患は,大きく分けて眼内血管新生と網膜浮腫の2つである1~8).眼内血管新生には,加齢黄斑変性,近視性血管新生黄斑症などの脈絡膜新生血管,あるいは,増殖糖尿病網膜症などに併発する網膜新生血管,虹彩新生血管,血管新生緑内障などがある.網膜浮腫としては網膜中心静脈閉塞症,糖尿病網膜症などの疾患に併発するものがある.これらの対象疾患に対してbevacizumabを使用しているが,適応外使用ということで,各施設の倫理委員会またはそれに類する機関において承認を得ること,本人(または代諾者)に対して,当薬剤が適応外使用であること,他の代替治療法の有無,使用方法,合併症などについての十分な説明を行ったうえで,承諾を得ることが前提となる.当院においては,近視性血管新生黄斑症,特発性血管新生黄斑症など,代替治療に認可されている方法がない対象に対しては,インフォームド・コンセントを得たうえで使用しているが,加齢黄斑変性に併発する中心窩脈絡膜新生血管で病変の大きさが5,400?mを超えないものに対しては,主としてすでに日本において認可を受けている光線力学的療法を施行している.したがって当院において加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管で現在bevacizumabを投与しているのは,病変が乳頭に近い,病変が5,400?mを超えるなど,なんらかの理由があり,光線力学的療法が施行できない症例がほとんどである.今後bevacizumab硝子体内投与の安全性,有効性がより確実になった場合,加齢黄斑変性に併発するその大きさが5,400?mを超えないような中心窩脈絡膜新生血管に対しても施行する可能性がある.IIBevacizumabの眼科疾患に対する使用方法Bevacizumabが眼科疾患に対して最初に用いられた投与方法は,全身投与であった1).加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管を有する患者に全身投与され効果があったと報告された.当時,bevacizumabは硝子体内投与をしても,網膜下まで浸透しないと考えられていたが,その後,実際には硝子体内投与でも効果が認められたため,より全身的に影響が少なく,より安全と考えられる硝子体内投与が主として施行されるようになった2~4).当院においても全身投与ではなく,硝子体内投与が施行され,最初の報告にあった1mg/40??を,角膜輪部より3.5~4.0mmの位置から29ゲージあるいは30ゲージ針を用いて注入している.IIIBevacizumab硝子体内投与の効果加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管に対してbevacizumab硝子体内投与の奏効したとする最初の発表が2005年にあり,その後同様の報告が相ついでいる.2006年Averyら3)は加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管に対して当薬剤の硝子体内投与を施行した症例について報告した.4週経過を追えた81眼中30眼(37.0%)に,また8週経過を追えた51眼中25眼(49.0%)に,網膜浮腫,網膜下液,網膜色素上皮?離の完全な消退を認め,平均視力も施行前20/200から8週後20/80に改善したと報告している.彼らの症例の多くは光線力学的療法や,pegaptanibsodium(Macugen?)による治療効果がなかった症例であった.Spaideら4)も加齢黄斑変性に対するbevacizumab硝子体内投与の治療効果について報告した.施行後3カ月で平均網膜厚が340?mから213?mに減少し,141症例のうち,54症例(38.3(16)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???%)で2段階以上の視力改善を認めたとしている.筆者らの施設では前述のように光線力学的療法の適応のある症例には光線力学的療法を,光線力学的療法の適応のない症例,またはなんらかの理由で光線力学的療法を施行しなかった症例のうち,インフォームド・コンセントが得られた症例に対しては,bevacizumab硝子体内投与を施行している.大血管が病変上にあり,レーザー照射できない症例(図3),病変が大きく光線力学的療法が施行できない症例(図4,5),などに対し硝子体内投与を施行し,症例によっては形態学的および機能的に改善を認めている.IVBevacizumabの合併症は?Bevacizumabの全身投与による一般的な副作用として,倦怠感,腹痛,頭痛,血圧上昇,蛋白尿,出血,下痢,心不全,胃腸の穿孔などが報告されている.全身投与により脈絡膜新生血管の退縮を認めたとの報告があるが,全身投与には上記のような副作用の問題がある.硝子体内投与は眼球内局所投与であり,また1回の投与量が全身投与量の約400分の1と極少量であるため,全身投与により生じうる合併症が硝子体内投与で発生する可能性は低いと考えられる.(17)図3大血管が病変上にあり,レーザー照射できない症例A:網膜下出血を伴う脈絡膜新生血管を認め血管膜上を大血管が通過している.B:Aと同症例のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)写真.C:Bevacizumab硝子体内投与後2カ月の眼底写真.D:Cと同日のFA結果.脈絡膜新生血管の縮小を認める.ACBD———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007しかしながら最近の報告では,眼局所はもとより全身に対しても少なからず影響があるとする報告がある.Fungら9)の7,113例における合併症の報告によると,薬剤によると考えられる眼合併症にはぶどう膜炎,白内障進行,急激な視力低下,網膜中心動脈閉塞症,網膜下出血,網膜色素上皮?離など,全身合併症には血圧上昇,深部静脈塞栓,脳梗塞などがあり,死亡例も2例ある.手技そのものによると思われる合併症は角膜障害,水晶体障害,眼内炎,網膜?離などである.加齢黄斑変性は高齢者に発症することから,前述の全身合併症とbevacizumab硝子体内投与との直接の因果関係を確定するのはむずかしいが,可能性はあるため,それら重篤な合併症についての説明は不可欠であると考えられる.V加齢黄斑変性の治療としてのbevacizumabの今後Bevacizumab硝子体内投与の効果について今後検討されるべきことは抗VEGF抗体ranibizumab(Lucentis?)(別項),光線力学的療法との効果の比較,単独投与と他の治療方法との併用による効果の比較など多岐にわたる.他の治療方法で再発する症例に対しての有効性も検討されるべきである(図6).また最適投与間隔,投与数などについても検討されるべきである.Bevacizumabが抗体そのもの(分子量約150kD)であるのに対し,ranibizumabはantibodybindingsite(Fab)部分を中心とした分子量48kD程度の比較的小さなものである.したがって網膜下への浸透性という点から考えるとranibizumabのほうが優れており,網膜下の新生血管に対しては効果的に作用するかもしれな(18)図4病変が大きく光線力学的療法が施行できない症例A:広範囲の病巣を有する加齢黄斑変性の眼底写真.網膜浮腫を広範囲に認める.B:Aと同症例のOCT所見.網膜浮腫を認める.C:初回投与から約1年後の眼底写真.再発に対して2度bevacizumab硝子体内投与を施行している.D:Bevacizumab硝子体内投与後1カ月のOCT所見.網膜浮腫の減退を認める.ACBD———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???(19)い.光線力学的療法とranibizumab硝子体内投与を比較した臨床研究では,ranibizumab硝子体内投与による結果が有意に良好であった10).今後,加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管の治療のうち,抗VEGF抗体の硝子体内投与が注目されることは間違いないが,そのなかでbevacizumabを使用し図5光線力学的療法後,病変が大きくなった症例A:光線力学的療法を施行したが効果がなく,病巣が広範囲に至った症例の眼底写真.B:Aと同症例のOCT像.網膜浮腫を認める.一部?胞様浮腫を形成している.C:Bevacizumab硝子体内投与後1.5カ月の眼底写真.浮腫の減少を認める.D:Cと同日のOCT所見.網膜浮腫が減少している.ACBD図6光線力学的療法後,再発を認めた症例A:光線力学的療法前の眼底写真.網膜下出血を伴った脈絡膜新生血管膜を認める.B:光線力学的療法後,脈絡膜新生血管は線維化していたが,初回光線力学的療法2年半後鼻側に新たな新生血管膜を認めた.C:Bevacizumab硝子体内投与後4カ月の眼底写真.新しい新生血管膜は消退している.ABC———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007(20)続けるべきか否かは今後の結果をみて検討していきたい.また,他の疾患に対する使用についても同様である.脈絡膜新生血管,網膜,虹彩新生血管に対してはある程度の効果があると思われるが,各種網膜浮腫に対しては現在のところ強い持続的な効果はないような印象がある.いまだ私見の域を超えないが,今後さらに症例検討し,加齢黄斑変性に対するのと同様に,使用を続けるべきか否か検討を重ねたい.文献1)MichelsS,RosenfeldPJ,Pulia?toCAetal:Systemicbev-acizumab(Avastin)therapyforneovascularage-relatedmaculardegenerationtwelve-weekresultsofanuncon-trolledopen-labelclinicalstudy.?????????????112:1035-1047,20052)RosenfeldPJ,MoshfeghiAA,Pulia?toCA:Opticalcoher-encetomography?ndingsafteranintravitrealinjectionofbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.??????????????????????????????36:331-335,20053)AveryRL,PieramiciDJ,RabenaMDetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.?????????????113:363-372,20064)SpaideRF,LaudK,FineHFetal:Intravitrealbevaci-zumabtreatmentofchoroidalneovascularizationsecond-arytoage-relatedmaculardegeneration.??????26:383-390,20065)SakaguchiH,IkunoY,GomiFetal:Intravitrealinjectionofbevacizumabforchoroidalneovascularizationcausedbypathologicalmyopia.???????????????91:161-165,20076)OshimaY,SakaguchiH,GomiF:Regressionofirisneo-vascularizationafterintravitrealinjectionofbevacizumabinpatientswithproliferativediabeticretinopathy.???????????????142:155-158,20067)GomiF,NishidaK,OshimaYetal:Intravitrealbevaci-zumabforidiopathicchoroidalneovascularizationafterpreviousinjectionwithposteriorsubtenontriamcinolone.???????????????143:507-509,20078)RosenfeldPJ,FungAE,Pulia?toCA:Opticalcoherencetomography?ndingsafteranintravitrealinjectionofbev-acizumab(Avastin)formacularedemafromcentralretinalveinocclusion.??????????????????????????????36:336-339,20059)FungAE,RosenfeldPJ,ReichelE:TheinternationalBev-acizumabSafetySurvey:usingtheinternettoassessdrugsafetyworldwide.???????????????90:1344-1349,200610)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:ANCHORStudyGroup.Ranibizumabversusvertepor?nforneovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1432-1444,2006