提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一40.屈折検査(自覚検査)●はじめに自覚屈折検査は,遠見視力検査(5Cm)に提示した視力検査視標(おもにCLandolt環)注視時の自覚的応答から屈折値を測定する検査法である.視力検査は眼科検査においてもっとも社会的認知の高い,眼科検査を象徴する検査である.それゆえ,視力検査装置,検査法および評価法について,改めて考える機会が少ない.今回は患者満足度の高いコンタクトレンズ処方をめざして,自覚的屈折検査について改めて紹介する.C●目標と限界自覚屈折検査の目標は球面度数,円柱レンズ度数ともに完全屈折矯正を行うことである.しかしながら,矯正レンズを交換しながら患者の自覚的応答から屈折度を測定する検査法であり,乳幼児や姿勢維持が困難な患者においては,他覚的屈折検査値を含めて総合的に判断する必要がある.矯正精度はC0.25D(矯正レンズの最小単位)であり,乱視軸に関してC5°である.矯正精度に関して,検査中の調節の揺らぎと頭位の変動を勘案すると,矯正精度C0.25D,乱視軸C5°は妥当と考えられ,自覚的屈折検査の精度限界と考えられる.C●検査の流れ自覚的屈折検査は,調節の介入をできる限り抑えることに最大限配慮して行われる.調節の介入を常に考え,原則として最良視力が得られるもっともプラス(凸)レンズ寄りのレンズを自覚的屈折値として評価することはもちろん,レンズ交換中にも凸レンズを交換する際には,次に挿入する凸レンズを重ねてから交換前のレンズを抜き,凸レンズを装用するなど,検査手技の細部にまで調節の介入の除去を徹底する.調節力の強い若年者においては,調節の介入の除去を目的に雲霧法を行う.これは,凸レンズ(加入度数は施設によって異なるが,+2~3Dが一般的である)を付加して焦点を網膜面より前方に移動させ,調整の介入ができない状態にしてから,(55)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY半田知也北里大学医療衛生学部視覚機能療法学①②③④⑤図1乱視矯正(直乱視)における焦点位置のイメージ凸レンズを漸減させてもっとも凸レンズ寄りの屈折値を求める手法である.乱視矯正には,乱視表を用いる雲霧法(予測する乱視量のC1/2相当の凸レンズを加える)とクロスシリンダー法がある.雲霧法は,乱視量が小さい場合(乱視量C1.5D未満を目安)には雲霧下においても乱視表を視認できるため自覚応答を求めやすく,クロスシリンダー法は,乱視量が大きい場合(乱視量C1.5D以上を目安)に患者の自覚応答を求めやすい.いずれの乱視矯正法を行う場合においても,患者の乱視の光学的状態(前焦線,最小錯乱円,後焦線,と網膜位置)をイメージし(図1),乱視量と被検者の応答の状況から判断して乱視矯正法を選択することが必要である.乱視矯正を行った後に,矯正精度の正確性を確認することを目的に球面レンズの微調整を行い,最良視力を得られる凸レンズ寄りのレンズを自覚的屈折値として評価する.調節の介入を防ぐことは調節緊張の予防の観点から重要であるが,いたずらに凸レンズ寄りの矯正(低矯正)を行い過ぎることも,患者の見え方の向上の観点から望ましくない.自覚屈折検査においては適矯正(適切な屈折矯正)を念頭に,調節には揺らぎがあることも十分に考慮して,視力値,屈折値,患者の自覚応答を総合的に判断して決定するべきである.実際のコンタクトレンズ矯正において,自覚屈折検査あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C215両眼開放下(左眼)片眼遮閉下(左眼)図2両眼開放下と片眼遮閉下の瞳孔径変化両眼開放下と比較し,片眼遮閉下では明らかな瞳孔散大が認められる.では乱視矯正されるにもかかわらず,球面矯正のみの処方選択が多い1).これには経済的な問題,処方の問題,装用感の問題などさまざま考えられるが,患者の見え方の質の向上の観点から,乱視矯正(乱視用コンタクトレンズ)の必要性を改めて考える必要がある.C●おわりに自覚的屈折検査(視力検査)は通常,自然瞳孔で測定することが原則とされ,散瞳薬などの点眼後はピンホール装用にて測定される2).通常の視力検査においては,遮閉板で非測定眼を遮閉することで非遮閉眼の視力測定が行われる.しかしながら,日常臨床において,この片眼遮閉が瞳孔径の散大を起こすことを意識することは少ない.この瞳孔散大効果には個人差があるが,約C3割程度の瞳孔散大が認められる3)(図2).自覚的視力・屈折検査結果において瞳孔径の寄与は大きく,瞳孔径の散大による焦点深度の低下,収差の増大により,自覚屈折度数の増大,すなわち調節の介入(過矯正の恐れ)が懸念される.これまでの臨床研究において片眼遮閉下での自覚屈折値は,両眼開放下での自覚屈折値に比べて平均0.25D(最大でC1.0D)の過矯正が報告されている4).自覚的屈折検査において,調節介入の除去に配慮するうえで,瞳孔径の影響は無視できない.両眼開放下自覚屈折検査には,片眼に凸レンズ,もしくはすりガラスを装用する方法,両眼分離下で片眼のみに視力表を提示する方法などがある.日常視は両眼開放下であり,両眼開放下で各眼の自覚屈折矯正を行うことが望ましい.今後,患者の日常視における適矯正を行う観点から,両眼開放下の自覚的屈折検査の重要性について改めて考える必要がある.文献1)MorganPB,WoodsCA,TranoudisIGetal:InternationalcontactClensCprescribingCinC2016.CContactCLensCSpectrumC32:30-35,C20172)所敬:屈折異常とその矯正改訂.第C4版,p43,金原出版,C20043)KawamoritaCT,CUozatoCH:NaturalCpupilCsizeCandCocularCaberrationCunderCbinocularCandCmonocularCcondition.CJComputSciSysBiolC7:15-19,C20144)KobashiH,KamiyaK,HandaTetal:Comparisonofsub-jectiveCrefractionCunderCbinocularCandCmonocularCcondi-tionsinmyopicsubjects.CSciRepC5:2606,C2015CPAS102