●連載◯144監修=安川力五味文124ブロルシズマブの利点コンソルボ上田朋子富山大学大学院医学薬学研究部眼科学講座ブロルシズマブ(ベオビュ)の利点は,投与間隔を延長できることである.滲出型加齢黄斑変性の中でも,網膜色素上皮下に伸展するC1型黄斑新生血管やポリープ状脈絡膜血管症には頻回治療を要する症例がみられるが,ブロルシズマブに切り替えることにより投与間隔を延長できることが少なくない.本稿では,病型ごとのブロルシズマブの利点について概説する.1型黄斑新生血管1型黄斑新生血管(typeC1CmacularCneovasculariza-tion:typeC1MNV)はCchoriocapillarisから発生した新生血管が網膜色素上皮の下に伸展している病型である.ブロルシズマブ(ベオビュ)は分子量が約C26kDと小さく眼組織移行性が高いことと,溶解性が高くモル投与量が大きいことから,網膜色素上皮下の新生血管および脈絡膜に対する効果が他剤に比べて大きい1).筆者の施設では,アフリベルセプト(アイリーア)からブロルシズマブへCtreatandextend(TAE)継続のまま切り替えを行ったCtypeC1MNV症例C19例C19眼において,平均治療間隔はC7.4±1.4週からC11.6±2.6週に延長された(p<0.001)2).導入期を設けずCTAEを継続しながら切り替え効果が得られることは通院・治療の負担軽減に適っており,切り替えを積極的に選択する理由となる.また,新生血管の大きさについて,切り替え前とC1年半後を比較すると,新生血管は有意に縮小がみられた(切り替え前C7.04±3.9Cmm2,1年半後C5.71±4.1Cmm2,p=0.015)2).ブロルシズマブによるCTAE治療は,網膜色素上皮下の新生血管の拡大を抑制する効果があると考えられる(図1).ポリープ状脈絡膜血管症ブロルシズマブは,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoi-dalchoroidalvasculopathy:PCV)のポリープ退縮率が他の抗CVEGF薬に比べて高い.導入期C3回連続投与後のポリープ退縮率はブロルシズマブではC79.93%と報告されており,ラニビズマブ(ルセンティス)はC23.34%,アフリベルセプトはC42.57%,ファリシマブ(バビースモ)(3回連続)はC52.61%である(ファリシマブの導入期はC4週ごとC4回連続投与が基本とされており,ファリシマブのポリープ退縮率については今後新たな報告も待たれる).また,ラニビズマブと光線力学療法図1Type1MNVに対するブロルシズマブ切り替えアフリベルセプトで治療開始しC2年半後,8週間隔であった.TAEを継続してブロルシズマブへ切替後,網膜下液は消退し新生血管は縮小した.治療間隔はC16週まで延長され,縮小した新生血管の拡大はみられない.FA:フルオレセイン蛍光造影,IA:インドシアニングリーン蛍光造影,IVBr:ブロルシズマブ硝子体内注射.(85)あたらしい眼科Vol.41,No.6,20246890910-1810/24/\100/頁/JCOPY図2PCVに対するブロルシズマブ切り替えアフリベルセプトC10週間隔で治療されていた症例.網膜下液が少量みられていたが,ブロルシズマブへ切り替え,10週間隔でC3回投与後,ポリープは退縮した.IVBr:ブロルシズマブ硝子体内注射.(photodynamicCtherapy:PDT)併用のポリープ退縮率はC69%(EVERESTII試験),アフリベルセプトとCPDT併用療法ではC69.77%とされており,PDT併用療法と比較してもブロルシズマブ単独療法のほうがポリープ閉塞率は高いと考えられる.したがって,他剤で反応が不良なCPCV症例では,早期にブロルシズマブへ切り替えることによって治療間隔の延長が期待できる.筆者の施設ではCTAE継続のままアフリベルセプトからブロルシズマブへ切り替えを行ったCPCV症例において,1年半後C26.7%(15眼中C4眼)でポリープ状病巣が退縮し,とくにポリープ数が少なく異常血管網を含めた病巣の小さなCPCVにおいて,投与間隔を長く延ばすことができた2).小さなCPCV症例では,TAE継続のまま切り替えを行った場合でも,投与間隔が延長できると筆者は考えている(図2).一方,ポリープ数の多い病巣の大きなPCVでは,TAEを継続するよりも導入期を設けるほうが治療間隔を延ばせるかもしれない.ブロルシズマブの利点を生かすためにわが国では,ブロルシズマブ投与後眼内炎症のC1年間の累積発生率はC12.2%であった3).安心して切り替えを行うためには,眼内炎症に対する対策が重要である.眼内炎症は約C7割が初回投与後C6カ月以内に発生し,投与後C1カ月以内に生じることが多い4).早期発見・早期治療が不可欠であり,ブロルシズマブ投与後に「無数の黒い点がみえる」といった飛蚊症や,見え方の異常などを自覚した場合には,施行施設に早急に連絡するよう,患者指導を行うことが大切である.無治療では網膜血管閉塞に進展する可能性があるため,0.1%ベタメタゾン点眼C1日C6回およびトリアムシノロンアセトニドテノン.下注射C20Cmg/0.5Cmlで加療する.文献1)BosciaCG,CPozharitskiyCN,CGrassiCMOCetal:ChoroidalCremodelingCfollowingCdi.erentCanti-VEGFCtherapiesCinCneovascularAMD.SciRepC14:1941,C20242)Ueda-ConsolvoCT,CTanigichiCA,CNumataCACetal:Switch-ingtobrolucizumabfroma.iberceptinage-relatedmacu-larCdegenerationCwithCtypeC1CmacularCneovascularizationCandCpolypoidalCchoroidalvasculopathy:anC18-monthCfol-low-upCstudy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC261:C345-352,C20233)InodaCS,CTakahashiCH,CMaruyama-InoueCMCetal:InciC-denceCandCriskCfactorsCofCintraocularCin.ammationCafterCbrolucizumabCtreatmentCinJapan:ACmulticenterCAMDCstudy.RetinaC2023C44:714-722,C20244)MonesCJ,CSrivastavaCSK,CJa.eCGJCetal:RiskCofCin.amma-tion,retinalvasculitis,andretinalocclusion-relatedeventswithbrolucizumab:posthocreviewofHAWKandHAR-RIER.COphthalmologyC128:1050-1059,C2021690あたらしい眼科Vol.41,No.6,2024(86)