———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSあり,狭隅角眼でわずかに隅角鏡を傾けるだけで隅角のかなり深いところまで観察できるようになったりすることがある.このため,判定にはSha?er分類以上に迷うことがあり,やはり客観性に欠ける.また使用する隅角鏡の種類によっても隅角の広さの評価が異なる場合がある.はじめに隅角検査においては,隅角鏡を用いた方法がそのgoldenstandardであることには変わりはなく,その重要性については言うまでもない.実際,さまざまな隅角の正常・異常所見が直接,肉眼で観察でき,また間接検査法は通常の一般眼科検査の細隙灯顕微鏡検査に引き続いて行うことができる.しかし,隅角鏡による隅角検査は手技・診断に熟練する必要があり客観性にやや乏しいなどの欠点があることも事実である.こういった欠点を補うのが最近一般化されている超音波生体顕微鏡(UBM,図1)で,客観性があり利用価値は高い.本稿では,隅角鏡による隅角検査の弱点とその弱点をいかにUBMが補うかを考えてみたい.I隅角鏡による隅角検査で見逃されやすい所見(表1)1.定量的評価隅角鏡を用いた隅角検査による隅角の広狭の判定で最も一般的なSha?er分類は隅角角度と隅角閉塞の可能性を組み合わせたもので,臨床的にきわめて有用である.しかし隅角鏡所見から凹凸のある複雑な周辺虹彩表面と線維柱帯のなす角度を目測で判定するため,検者の主観や技量の差が大きく影響し,測定誤差が生じる可能性は否定できない.もう一つの隅角の広狭分類であり,隅角構造のどの部分まで観察できるかで判定するScheie分類も,簡便ではあるが隅角鏡を一定の角度に保つ必要が(27)????*KunioIto:三重大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕伊藤邦生:〒514-8507津市江戸橋2-174三重大学医学部眼科学教室特集●隅角のすべてあたらしい眼科23(8):1003~1007,2006隅角検査の限界(UBMとの比較検討)??????????????????????????????????????(????????????????????????????????????????)伊藤邦生*表1隅角鏡による隅角検査で見逃されやすい所見1.定量的評価2.角膜混濁・前房出血例での隅角観察3.暗所での隅角観察4.圧迫隅角検査5.狭・閉塞隅角の病態把握図1UBM装置(Humphrey社Model840)———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006このように隅角鏡による隅角検査では困難な定量的評価は,UBMの最も得意とする点の一つである.UBMでは,実際に得られた隅角断面画像(図2)から,隅角部の実際の距離,角度,面積などが解析ソフトなどを使うことで容易に測定できる.AOD500(angleopeningdistance500mm:scleralspurから500mmの位置での線維柱帯から虹彩表面までの距離),TIA(trabecularirisangle:隅角底の先端とAOD500の2点を結ぶ線のなす角度)などの隅角の定量的指標があり(図3),さまざまな隅角部の臨床研究に利用されている.2.角膜混濁・前房出血例での隅角観察検査の性格上,角膜混濁や前房出血などの細隙灯顕微鏡のスリット光の隅角部への入射を妨げる状況が存在する場合は隅角の観察は困難となる(図4).こういった状況下でもUBMは検査の特性から隅角構造の観察・把握が可能である.図4は虹彩角膜内皮症候群の症例で,角膜に混濁・浮腫があり隅角鏡による隅角観察が困難である.UBMで隅角部に周辺虹彩前癒着があるのが観察できる(図5).3.暗所での隅角観察狭隅角眼において,暗所時の自然散瞳下の隅角所見を観察することは予防的レーザー周辺虹彩切開術の適応を(28)Schwalbe線強膜岬強膜角膜虹彩毛様体水晶体図2正常眼の隅角UBM断面像500mmAOD500TIAScleralspur図3AOD500とTIA(trabecularirisangle)図4角膜混濁眼の前眼部写真BlebPAS図5角膜混濁眼のUBM像———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????決定するうえで,本来は非常に重要な情報をもたらし,重要なことである.しかし通常の隅角鏡検査では隅角の観察にスリット光が必要となるためどうしても縮瞳してしまい,暗所時の自然散瞳下での隅角観察は困難である(図6).UBM検査については,TVモニターのわずかな明るさは残るものの,眼球に対しほぼ完全な暗所下で検査を行うことが可能である.図7は明所下と暗所下のUBM隅角断面像である.明所では隅角は開いているが,暗所にすると隅角が閉塞するのがわかる.このUBMの特性を利用して,筆者らの施設では予防的レーザー虹彩切開術の前に必ず暗所時自然散瞳下の隅角所見を全周で確認し,適応・施行の参考にしている.4.圧迫隅角検査隅角閉塞は機能的閉塞(appositionalclosure)と器質的閉塞(adhesiveclosure)に区別され,圧迫隅角検査で判別する.しかし間接型隅角鏡を用いた圧迫隅角検査は通常の隅角検査以上に大きく技量の差が影響し,狭隅角の程度が強いと角膜の変形のために観察が困難になる(図8).これまでUBMにおいては,機能的隅角閉塞と器質的隅角閉塞の鑑別は困難とされてきた.しかし,筆者らは特殊なUBM検査用アイカップを開発し使用することで圧迫隅角検査を可能にし,報告した.図9はrelativepupillaryblock眼であるが,圧迫前には虹彩が前方への弓状彎曲を示し,後房が広く,隅角は閉塞している.筆者らの開発したアイカップを用いた圧迫により虹彩が後方(硝子体側)に彎曲し,隅角が開いている.5.狭・閉塞隅角の病態把握狭・閉塞隅角をきたす原因・病態はさまざまあり,単に瞳孔ブロックだけによるものからそれに加えて虹彩付着部を含めた毛様体の形態や水晶体の位置が関与するなどの複雑な混合メカニズムによることもある.通常,隅角鏡では虹彩表面より後方の虹彩内や毛様体突起などの(29)図6スリット光による縮瞳明所時暗所時図7明所・暗所時の隅角UBM像図8隅角鏡による圧迫隅角検査図9UBMによる圧迫隅角検査———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006観察は不可能で,正確な病態の把握をすることはむずかしい.これに対しUBMはこの隅角鏡では観察できない虹彩内部・裏面,毛様体などの観察が可能で,狭・閉塞隅角の病態把握に大きな役割を果たしている.実際には,以下のIIで述べる病態把握・確定診断ができる.IIUBMで確定できる病態(表2)UBMの隅角検査の大きな利点としては,隅角断面像が客観的に観察できること,隅角形態が観察光による影響を受けないことがあげられる.また断面像が観察できることから,特に狭隅角・閉塞隅角眼の診断に大きな力を発揮する.1.プラトー虹彩(図10)虹彩は平坦で中心前房深度は比較的広いにもかかわら(30)ず隅角部は非常に狭く,毛様体の前方回旋と毛様溝の消失が特徴的な所見である.2.悪性緑内障(図11)極端な浅前房,後房の消失,毛様突起の変位・圧排や毛様体脈絡膜滲出が特徴的である.3.原田病による続発閉塞隅角緑内障(図12)浅前房,毛様体前方回旋,毛様体脈絡膜?離が特徴的である.4.虹彩毛様体?腫・腫瘍(図13,14)図13,14はともに隅角が閉塞している.虹彩毛様体表2UBMで確定できる病態1.プラトー虹彩2.悪性緑内障3.原田病による続発閉塞隅角緑内障4.虹彩毛様体?腫・腫瘍図10プラトー虹彩のUBM像図11悪性緑内障のUBM像図13虹彩毛様体?腫のUBM像図14虹彩腫瘍のUBM像図12原田病による続発閉塞隅角緑内障のUBM像———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????(31)?胞(図13)の内部は低輝度を示し,一方,虹彩腫瘍(図14)では内部が高輝度を示す.III今後の隅角検査としてのanteriorsegmentOCTAnteriorsegmentOCTが最近開発され,VisanteOCT?(Zeiss)として海外で発売になり,話題となっている(図15).光の干渉現象によって画像を描出する従来のOCT(opticalcoherencetomography)の光源波長を変更し,角膜,虹彩,隅角を含めた前眼部を高解像度で観察可能にした装置であるが,わが国ではまだ発売に至っていない.直接角膜に接触する隅角鏡やアイカップを装着しスコピゾルや生理食塩水を貯めて検査するUBMに比べ,VisanteOCT?は非接触での検査であるために角膜結膜の障害や感染などを起こしにくい.さらに,操作や手技も隅角鏡やUBMよりかなり容易で,医師以外での操作も可能である.一般に仰臥位でしか検査できないUBMに比較して,VisanteOCT?は間接型隅角鏡と同様に座位でのみの検査である.ただ装置が高価なことと,虹彩裏面・毛様体などの所見が不明瞭な点が欠点である.おわりにUBMは従来の臨床検査機器にはない特徴を備え,緑内障診療に大きな役割を果たすようになってきた.しかしどの施設にもあるというものではなく,さらにいくらUBMでも現在の精度では隅角鏡を用いた隅角検査では見落とすことのないサルコイド結節や新生血管といった重要な所見や隅角部の色素沈着の程度を捉えることができない.こういったことからも隅角検査での主役はやはり隅角鏡によるものであることに疑いはない.しかし,隅角鏡による隅角検査の欠点をUBMが補える部分も多い.隅角検査では,どちらの方法を用いるかではなく,隅角鏡,UBMそれぞれの利点,欠点を熟知し,両者を併せて観察することによって,確実な緑内障病態の把握,治療が行われ,今後もさまざまな新しい知見がもたらされることが期待される.文献1)北澤克明:隅角アトラス.医学書院,19952)伊藤邦生,宇治幸隆:隅角鏡による隅角検査と超音波生体顕微鏡検査.前眼部疾患と病変の診かた,眼科47(臨時増刊号):1389-1397,20053)伊藤邦生,宇治幸隆:超音波生体顕微鏡や新しい画像解析装置による評価.眼科インストラクションコース7,緑内障細隙灯顕微鏡診断完全マスター,p88-91,メジカルビュー社,20064)PavlinCJ,FosterFS:UltrasoundBiomicroscopyoftheEye.Springer-Verlag,NewYork,19945)MatsunagaK,ItoK,EsakiKetal:Evaluationofeyeswithrelativepapillaryblockbyindentationultrasoundbiomicroscopy.???????????????137:552-554,20046)MatsunagaK,ItoK,EsakiKetal:Evaluationandcom-parisonofindentationultrasoundbiomicroscopygoniosco-pyinrelativepupillaryblock,peripheralanteriorsynechia,andplateauiriscon?guration.??????????13:516-519,2004図15VisanteOCT?(Zeiss)