———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSどう膜炎),4:外陰部潰瘍を主症状とする原因不明疾患である.日本をはじめ,韓国,中国,中近東,地中海沿岸諸国によくみられ,silkroaddiseaseともいわれる1).日本では現在約18,000人の報告がある.発病年齢は,男女とも20~40歳に多く,30歳代前半にピークを示す.特に眼病変は男性で重症化しやすい.病因は不明で,何らかの内因と外因が関与して白血球の異常が生じて病態が形成されると考えられている.なかでも眼症状は重篤で失明に至るケースが多く,本症患者のqualityoflife(QOL)を著しく低下させている.本疾患に対する根本治療法はいまだ確立されていない.Beh?et病の眼病変の特徴は眼内各組織の閉塞性血管炎を主体とした眼組織全体の炎症である.急性前眼部発作時には,しばしば境界線が明瞭な前房蓄膿がみられる.虹彩や毛様体から前房や硝子体中に好中球が遊走し,前房蓄膿や硝子体混濁になる.前房蓄膿の臨床的特徴は「さらさら」していることであり,体位により容易に移動する.前房水スメアをギムザ染色すると,前房蓄膿の構成細胞はほとんどが分葉核をもつ好中球であり(非肉芽腫性虹彩ぶどう膜炎),好中球の何らかの異常がBeh?et病を誘発すると考えられる.症状は一過性であるが,炎症は再燃しやすい.再燃を重ねるに従って,種々の器質的障害が残るようになり,ついには失明またはそれに近い状態まで視機能が低下する.眼病変に対する治療は急性期と緩解期で異なる.急性期には副腎皮質ステロイド薬の頻回点眼や結膜下・後部はじめにアフェレーシス(眼科では聞き慣れない用語だが)とは,人工デバイスを用いて,血液から何らかの成分を除去する治療の総称である.血液透析や血漿交換など老廃物や毒素を除く治療や,自己免疫病で自己抗体を特異的に除去する治療などが含まれる.しかし液性成分のみでなく,特定血球細胞を除去する治療(cytapheresis)も重要なアフェレーシスの分野であり,近年さまざまな疾患で実施されている.Granulocytapheresisは翻訳すると「顆粒球除去療法」となる.顆粒球は文字通り細胞内顆粒をもった細胞の総称であるが,生体内の多くの顆粒球は好中球であるため,臨床的には「好中球除去療法」という意味合いをもつことが多い.Beh?et病に伴うぶどう膜炎発作に,活性化型顆粒球(おもに好中球)が深く関わることが知られる.筆者らは(Beh?et病と同様に顆粒球が発作に関わる)潰瘍性大腸炎患者に対し顆粒球除去治療が行われ,副腎皮質ステロイド薬が効きにくい重症患者でも一定の効果をあげていることに注目した.今回眼症状を伴うBeh?et病患者に対し,顆粒球除去治療を行った.本稿では,そのパイロットスタディの概要・成績を述べるとともに,今後の臨床応用について考察する.IBeh?et病のこれまでの治療Beh?et病は1:口腔内難治性アフタ潰瘍,2:結節性紅斑などの皮膚症状,3:虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎(ぶ(31)????*Koh-HeiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学**KenichiNamba:北海道大学大学院医学研究科眼科学分野〔別刷請求先〕園田康平:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1415~1419,2006顆粒球除去療法???????????????????園田康平*南場研一**———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006Tenon?下注射といった局所投与を行う.急性発作が落ち着いた緩解期には,発作頻度減少を目的とした治療を行う.まずコルヒチンを0.5~1.5mg経口投与する.コルヒチン単独で無効の場合,シクロスポリンを5mg/kg/day併用内服する.これでも無効の場合や副作用で投与できない症例では,低用量プレドニゾロン(5~10mg)の持続内服を行う.これらの薬剤は造血系,腎臓,肝臓,中枢神経系などに障害をきたす副作用もしばしば出現し,注意深く治療していかなければならない.Beh?et病眼発作予防に行われてきた上記の薬物治療は,これまで一定の効果をあげてきたが,残念ながら治療に反応せず失明に至る症例が数多く存在する.また全身副作用のため長期で投与できないケースもある.患者はBeh?et病に伴う臓器障害に加え,薬物副作用による症状にも苦しんでいる.顆粒球除去療法は潰瘍性大腸炎ですでに治療の実績があり,目立った副作用は報告されていない.現状では有効な治療法がなく眼発作のたびに失明の恐怖におびえる患者にとって,本研究で有用性が確かめられればこの上ない選択肢となりうると考えた.II顆粒球除去療法をBeh?et病に応用するまで潰瘍性大腸炎は,大腸に限局して,くり返し慢性の炎症・潰瘍ができる原因不明の疾患である.中等症以上の患者を対象とした,カラム治療(1回/週×5週間施行)と薬物療法との多施設共同無作為割付比較試験の結果,特に重症や難治例でカラム治療の有用度が評価され,保険適用になっている2).潰瘍性大腸炎では腸間の炎症部位に多数の顆粒球が浸潤する3).酢酸セルロース製ビーズカラムが潰瘍性大腸炎で効果を示す機序は,顆粒球・単球を中心とした病的白血球の選択的吸着,細胞の機能変化などによる.上述したようにBeh?et病病態形成にも同様に顆粒球が深く関わる.ゆえにこれを直接除去するカラム治療はBeh?et病の新治療法になると考えた.III実施プロトコールおよび結果北海道大学・九州大学眼科の共同研究として,各大学倫理委員会で同一プロトコールによる治療計画承認後,同時期に本治療を開始した4,5).筆者らが採用した適応基準および除外基準を表1に示す(両大学での総数14名).今回の検討では急性期眼発作ではなく,治療前後6カ月間の眼発作回数で治療成績を評価した.ゆえに眼発作の頻度の高いこと(治療開始前14週に2回以上の眼発作を起こしている)をエントリーの条件とした.またエントリー時急性発作を起こしている患者は,発作緩解を確認した後治療を開始した.急性発作期に顆粒球除去療法を行っても早期消炎効果は期待できると思われる.しかしBeh?et病眼発作は,単一発作自体自然に緩解するため,仮に治療に反応して緩解しても,自然経過との比較が困難である.また同一患者でも,その時々で急性眼発作の程度がまちまちで(前房蓄膿や黄斑部を含む広範囲の網膜滲出斑がみられるような大発作を起こすときもあれば,ごく軽微な前眼部炎症のみの小発作のときもある),回復時間も自ずと異なる.今回のような症例数の限られたパイロットスタディでは,急性期発作での効果判定が困難と考えた.酢酸セルロース製ビーズカラムはこれまで潰瘍性大腸(32)表1適応基準および除外基準<選択基準>1)年齢:20歳以上2)性別:不問3)入院・外来:不問4)片眼あるいは両眼に再発性網膜ぶどう膜炎型を有する完全型または不全型Beh?et病の患者5)ステロイド,コルヒチン,シクロスポリンA単独または組み合わせ治療にもかかわらず,過去14週で2回以上の眼発作を起こしている患者6)治療およびそのプロトコールについて本人および代諾者より文書同意の得られた患者<除外基準>1)顆粒球数2,000/mm3以下の患者2)感染症を合併している患者および合併が疑われる患者3)妊娠中,または妊娠している可能性のある女性4)前眼部のみの眼発作患者<慎重に使用することが望まれる場合>1)肝障害・腎障害のある患者2)アレルギー素因のある患者3)抗凝固剤(ヘパリン,低分子ヘパリン,メシル酸ナファモスタット)に対し過敏症の既往のある患者4)心血管系疾患のある患者5)赤血球減少(300万/mm3以下),極度の脱水(赤血球600万/mm3以上),凝固系の高度亢進(フィブリノーゲン700mg/d?以上)のある患者6)体温38℃以上の患者———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????炎に使われてきた実績からも,安全性の高い医療器具といえる.しかしBeh?et病に対しては初めての試みであり,予想外の副作用が発生する可能性も考えた.そこで個々の患者に対して安全性が確立されるまでの期間(1週間程度)は入院のうえ治療を受けていただいた.実際の治療プロトコールを図1に示す.本治療では,酢酸セルロースビーズカラムとしてアダカラム?(株式会社JIMRO)を使用し,週1回の頻度で連続5回治療を施行した.患者の一方の肘静脈を脱血側,反対側の肘静脈を返血側として血管を確保する.静脈から静脈に専用ポンプを用いて循環させ,途中でカラムを通すことでビーズに顆粒球を吸着させる.循環条件は血液流量:30m?/分,循環時間:1時間,処理血液量:1,800m?,体外流出血液量:約200m?である.機器内での血栓形成予防のため,ヘパリン(2,000単位)またはメシル酸ナファモスタット(フサン?20mg)を体外循環時に持続混入させる.血液流量は30m?/分,治療時間は60分であり,1回の治療で1,800m?の全血を処理することになる(図2).14例全体の平均発作回数は,治療前4.2±1.6回,治療後2.9±1.4回(p=0.028)であった(図3).本治療によって発作は完全に抑制されるわけではなかったが,統計学的有意差をもって発作抑制効果があることが確かめられた.また筆者らは有効な症例とそうでない症例に2分されると感じたため,有効群と無効・不変群に分けて(33)表2有効群と無効群での治療前後の発作回数治療前6カ月の治療後6カ月の発作回数発作回数患者大発作小発作大発作小発作12110有効23002有効30601有効45203有効52111有効64203有効70723有効80402有効92220有効103114無効111350無効120212無効131213無効141203無効大発作の定義:網膜の半分以上に及ぶ病変を伴う後眼部発作,または前房蓄膿を伴う前眼部発作.(文献5より)図1プロトコールの概要遡及期間(14週)観察期間(2週以内)有効性および安全性評価期間(24週)週1回計5回のアダカラム?治療入院1)カラム治療:1回/週,計5回.2)安全性が確立されるまでの期間(1週間程度)は眼科入院.その後は外来通院で行う.3)既存薬は増減せずそのまま併用4)治療前後6カ月間の発作回数で判定図3前症例の治療前後での眼発作回数の比較(文献5より改変)4.2±1.6回治療前6カ月876543210治療後6カ月症例1症例2症例3症例4症例5症例6症例7症例8症例9症例10症例11症例12症例13症例14眼発作回数2.9±1.4回(p=0.028)アダカラム?(酢酸セルロースビーズカラム)肘静脈(脱血側)肘静脈(返血側)抗凝固剤注入口返血脱血図2顆粒球除去療法の概略図———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006臨床的に解析を行った.表2に有効群と無効群での治療前後の発作回数を示す.エントリーした14例中,9例は治療後発作回数が減少し有効群と判定したが,残り5例は発作回数の減少がみられず無効群と判定した.有効群では特に治療前にみられた大発作が消失するケースもあり,発作回数以上に患者の満足度は高かった.一方,無効群においては発作の重症度にも大きな変化はなかった.このように有効群と無効群の分かれる要因を特定するため,2群間の年齢,性別,罹病期間,使用薬剤,病型(完全型・不完全型)などの因子を比較検討した.その結果,罹病期間が5年以上の症例は有効群,5年未満は無効群に分類される症例が多いことが判明した.事実,罹病期間5年以上の症例7例で解析すると,全体で解析した以上にカラム治療の効果が大きいことがわかった(図4).今回の検討では,期間を通して重篤な全身副作用は認めなかった.これまで本治療に伴う副作用には,治療直後の脱力感・倦怠感・めまいなどが報告されている2).これらはすべて一過性であり,顆粒球除去治療自体ではなく,治療中使用する抗凝固剤によるものと考えられている.また本治療は眼症状以外の口腔内アフタ性潰瘍・関節症状・皮膚症状なども軽快する傾向があった.眼症状では無効群と判定した患者のなかにも,眼外症状の経過がいいという理由で,本治療の再施行を希望する患者もいる.本治療の作用機序について,アダカラム?はBeh?et病患者の顆粒球・単球を効率良く吸着除去したことを確かめた(図5).またカラムを通過した顆粒球においては接着分子(CD62L)の発現が低下していた(図5).また,接着分子の発現変化に伴い,インターロイキン(IL)-1bで刺激したヒト臍帯静脈内皮細胞への接着能の低下が認められたが,顆粒球の貪食能には変化がないことが報告されている6).つまり組織にとどまり眼炎症に関与すると考えられる顆粒球のみが選択的にビーズに吸着されるということではないかと考えている.IV今後の展望今回筆者らが行ったパイロットスタディの結果は,顆粒球除去療法が再発性の眼発作に苦しむBeh?et病患者にとってある一定の効果があることを示している7).ただし,眼発作をすべて抑制できるわけではなく,またまったく効果がなかったと思われる症例も存在した.特に現プロトコールでは発症後5年以上経過した症例では効果が高いと考えられた.Beh?et病眼症に対して,顆粒球除去療法が奏効するメカニズムを今後さらに解析していく必要がある.おそらく各種接着因子や炎症性サイトカイン・ケモカインの産生能の高い,活性化型好中球を選択的に除去している結果と考えられる.現在こちらの解析を進めているところである.今後最も大切なことは,Beh?et病に伴うぶどう膜炎(34)**p=0.014;*p=0.009;***p=0.001,out?owvsin?ow白血球数(×103/m?)012345678Columnin?owColumnout?ow(A)Columnin?owColumnout?ow(B)陽性細胞数CD62L?uorescenceintensityCD62L?uorescenceintensity陽性細胞数総白血球*好中球**リンパ球モノサイト***図5治療前後の白血球の性状(文献5より改変)眼発作回数7.24±1.49年(n=14,p=0.0275)3.13±0.3年(n=7,p=0.829)11.4±1.97年(n=7,p=0.0054)PrePostPrePostPrePost全体罹病期間<5年012345罹病期間≧5年平均罹病期間図4罹病期間別の眼発作回数の推移(文献5より改変)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????(35)に対して最適な治療プロトコールを作成することだと考えている.現プロトコールは潰瘍性大腸炎でなされたプロトコールをそのまま使用しており,決してBeh?et病にそのまま当てはまるものではない.くり返しであるがBeh?et病患者はいつも眼の状態が悪いわけではなく,緩解と増悪をくり返しつつ徐々に不可逆性の変化を眼にきたす.ゆえに眼発作予防・頻度減少が大切であり,その観点からも眼発作をある程度予測したうえで,予防的・集中的な治療が望ましい.今度何らかの方法(血液中の各種炎症マーカーなど)で病勢をモニターしつつ,増悪期に入りそうなときに治療を行うことが効果的と考えている.今後多症例での検討を積み重ねるうちに,患者ごとのオーダーメイド的な治療プロトコールができあがっていくと期待される.謝辞:本研究の遂行に当たり,以下の方々に深く感謝申し上げます.北明大洲,小竹聡,大野重昭(以上北海道大学眼科),稲葉頌一(神奈川県赤十字血液センター),宮本敏浩(九州大学病院輸血部),有山章子,松浦敏恵,中村隆彦,藤本武,肱岡邦明,石橋達朗(以上九州大学眼科),川野庸一(浜の町病院眼科),株式会社JIMRO.文献1)SakaneT,TakenoM,SuzukiNetal:Currentconcepts:Beh?et?sdisease.????????????341:1284-1291,19992)KashiwagiN,HirataI,KasukawaR:Aroleforgranulo-cyteandmonocyteapheresisinthetreatmentofrheuma-toidarthritis.?????????????????????2:134-141,19983)AllisoMC:Pathogenesisofin?ammatoryboweldisease.In?ammatoryBowelDisease.p15-22,Mosby,StLouis,19984)SonodaK-H,InabaS,AriyamaAetal:Therapeuticneu-trophilapheresisinpatientswithocularBeh?et?sdisease.???????????????123:267-269,20055)NambaK,SonodaK-H,KitameiHetal:Granulocytapher-esisinpatientswithrefractoryocularBeh?et?sdisease.????????????21:121-128,20066)下山孝,澤田康史,田中隆夫ほか:潰瘍性大腸炎の活動期における顆粒球除去療法─多施設共同無作為割付比較試験─.日本アフェレシス学会雑誌18:117-131,1999