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1%アトロピン点眼による調節麻痺下で測定した オートレフラクトメータとSpot Vision Screener の測定値の比較

2022年11月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科39(11):1549.1553,2022c1%アトロピン点眼による調節麻痺下で測定したオートレフラクトメータとSpotVisionScreenerの測定値の比較矢ヶ﨑悌司*1,2遠矢ありす*1羽賀弥生*1横山吉美*2山本真菜*2矢ヶ﨑礼香*2,3*1眼科やがさき医院*2独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院眼科*3岐阜県総合医療センター眼科ComparisonofCycloplegicRefractionswith1%AtropineSulfatewhenMeasuredbyanAutorefractometerandSpotVisionScreenerTeijiYagasaki1,2)C,ArisuToya1),YayoiHaga1),YoshimiYokoyama2),ManaYamamoto2)andAyakaYagasaki2,3)1)YagasakiEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,JapanCommunityHealthCareOrganizationChukyoHospital,3)DepartmentofOphthalmology,GifuPrefecturalGeneralMedicalCenterC目的:SpotVisionScreener(SVS)とオートレフラクトメータ(AR)の調節麻痺下測定値を比較し,SVSによる調節麻痺下屈折値の信頼性を検討した.対象および方法:1%アトロピン点眼による調節麻痺下屈折検査をCSVSとCAR同日測定が可能であったC52名(平均年齢:4.9歳C±1.5歳)を対象とした.屈折値は,遠視度の強い眼の測定値を採用した.結果:7例ではCSVSの測定範囲を超えていたため測定値が得られなかったが,その他のC45例の両測定値の比較では,球面度数,円柱度数,等価球面度数,乱視軸のすべてで有意差はなく,有意な相関も認められた.しかし,Bland-Altman分析では,球面度数と等価球面度数では比例誤差が認められ,SVSでは遠視度が強くなるほど低く測定される危険性が認められた.結論:SVSによる調節麻痺下屈折測定では,+4D以上の遠視で低く測定される危険性がある.CPurpose:ToCcompareCcycloplegicrefractions(CRs)measuredCbyCaCSpotCVisionScreener(SVS)(WelchAllyn)andCanautorefractometer(AR)C,CandCtoCevaluateCtheCreliabilityCofCtheCSVS.CSubjectsAndMethods:ThisCstudyCinvolvedC52patients(meanage:4.9C±1.5years)inCwhomCCRsCwereCcomparedCwhenCusingCSVSCandCARCafteradministrationof1%atropinesulfate.Refractionvaluesweredeterminedintheeyeswithhigherhyperopia.Results:CRsbySVSwerenotobtainedin7cases.Nosigni.cantdi.erencesinsphericalpower,cylindricalpower,sphericalCequivalent,CandCastigmaticCaxisCwereCobservedCbetweenCtheCARCandCSVSCinCtheCremainingC45Cpatients.CSigni.cantCcorrelationsCbetweenCtheCtwoCmethodsCwereCfoundCinCallCpatients.CHowever,CBland-AltmanCanalysisCrevealedCproportionalCerrorsCinCsphericalCpowerCandCsphericalCequivalent,CwithCrisksCdemonstratedCforCSVSCwhenCmeasuringlowerCRsineyeswithhigherhyperopia.Conclusion:AriskofunderestimatingCRsbySVSispossi-bleincasesofmoderatetohighhyperopia.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(11):1549.1553,C2022〕Keywords:スポットビジョンスクリーナー,オートレフラクトメータ,調節麻痺下屈折値,1%硫酸アトロピン点眼,ブランド-アルトマン分析.SpotVisionScreener,autorefractometer,cycloplegicrefraction,1%atropinesulfateophthalmicsolution,Bland-Altmananalysis.Cはじめに近年小児期の視覚発達の阻害因子となる屈折異常,眼位異常の早期発見の重要性が再確認され,3歳児健診への屈折検査が導入されるようになってきている1,2).屈折検査には,検影法,手持ち式オートレフラクトメータ,両眼開放型オートレフラクトメータ,据え置き式オートレフラクトメータ,フォトレフラクション法などがある.網膜からの反射光を利用したフォトレフラクション法は,遠方の固視目標を注視させ,顎や額の固定が必要ないため,乳幼児の屈折検査には理想的とされ,古くから開発されてき〔別刷請求先〕矢ヶ﨑悌司:〒494-0001愛知県一宮市開明字郷中C62-6眼科やがさき医院Reprintrequests:TeijiYagasaki,M.D.,Ph.D.,YagasakiEyeClinic,62-6Gonaka,Kaimei,Ichinomiya,Aichi494-0001,JAPANC0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(109)C1549た3.6).しかし,初期のフォトレフラクション法を応用した測定機器は大きなものであり固定式の機器であったため,幼児の屈折検査成功率は高いものではなかった.近年,フォトレフラクション法を応用した測定機器の改良は著しく,小型で持ち運びが容易となったうえに両眼の屈折検査の同時測定が可能となり,幼児の屈折検査成功率は著しく向上している7.9).CSpotVisionScreener(WelchAllyn)(以下,SVS)は,このように改善されたフォトレフラクション法を応用した測定機器であり,O.-axisフォトレフラクション法5)とCOn-axisフォトレフラクション法6)の両方の機能が搭載されているため,頭位の変化にも対応しやすく,幼児を対象としても高い屈折検査成功率が報告されている.そのため,SVSは小児眼科スクリーニング機器として認知され,眼科領域ばかりでなく小児科領域でも視覚スクリーニングとして,導入されてきている9).しかし,SVSを診断機器として使用するためには調節麻痺下で行ったほうが正確な検査値を得ることはいうまでもないが,調節麻痺下でのCSVSの測定値に関する検討はほとんどされていない10.12).今回筆者らはC1%アトロピン点眼による調節麻痺下で測定したオートレフラクトメータARK-530A(ニデック)(以下,AR)とCSVSの測定値を比較し,SVSの診断機器としての信頼性について検討を行った.CI対象および方法対象は,2020年C7月.2021年C6月に,眼科やがさき医院においてC1%アトロピン点眼による調節麻痺下屈折検査を行ったC85名の弱視斜視患者のうち,ARとCSVSの同日測定が可能であったC52名(平均年齢:4.9歳C±1.5歳)を対象とした.内訳は屈折異常弱視C19例,調節性内斜視C15例,不同視弱視C12例,屈折異常弱視+調節内斜視C4例,屈折異常弱視+外斜視C2例である.測定値は,屈折異常弱視および調節性内斜視では等価球面度数の強い眼,不同視弱視では弱視眼の測定値を採用した.ARは,内部視標を固視させてモニターで瞳孔中心を確認しながら明室で測定した.SVSは,両眼開放で約C1Cmの距離で機器のモニター上に呈示されるランダムな視覚的パターンと可聴音を固視目標として,半暗室で測定した.比較した測定値は,球面度数(S),円柱度数(C),等価球面度数(SE),乱視軸(A)とし,乱視軸はC.90°から+90°までの連続表記とした.統計学的検討には,Wilcoxon符号付順位検定,Pearsonの相関係数,Bland-Altman分析を用いて有意差検定(有意水準5%)を行った.本研究は,独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院倫理委員会の承認(番号:2021047)のもと,保護者に対して研究の目的と趣旨を十分に説明したうえで研究への参加の同意を得て実施した.II結果SVSでスケールオーバー(+7.50D以上)の屈折結果を示したものはC7例で,このC7例のCARでの測定値はCS:+7.13C±0.71D(以下,平均値C±標準偏差値),C:C.0.65±0.38D,SE:+7.00±0.86Dであり,+6.50.+7.00D以上の高度遠視ではCSVSによる測定はむずかしいと思われた.ARとSVSの測定値が得られたC45例では,S:+3.91±1.53Dと+3.94±1.13D(p=0.783),C:.1.20±0.60DとC.1.12±0.58D(p=0.825),SE:+3.32±1.63Dと+3.43±1.37D(p=0.791),A:.3.34±32.00°とC7.87C±26.63°(p=0.119)であり,有意差はなかった.さらにCARとCSVSの屈折値の間にはS:r=0.9135(p<0.0001),C:r=0.6201(p<0.0001),SE:r=0.9279(p<0.0001),A:r=0.3516(p=0.0179)と有意な相関が認められた(図1).しかし,Bland-Altman分析では,CとAではARとSVSの屈折値差とARとSVSの屈折値平均の間にはCr=0.1576(p=0.3006),r=.0.1461(p=0.3382)と有意な関連は認められなかったが,SとCSEではr=.0.5268(p=0.0002),r=.0.404(p=0.0060)と比例誤差が認められ,SVSの屈折値は遠視度が強くなるほど低く測定される危険性が認められた(図2).乱視軸については,22症例(48.9%)が軸の差がC15°以内であったが,このC22症例のCARによる円柱度数はC.1.50±0.60Dであり,軸の差がC15°を越えたC23症例(51.1%)のC.0.94±0.49Dより有意に大きく(p=0.0069),SVSにおける軽度の乱視度の軸の検出精度は高くなかった.CIII考按小児の弱視斜視治療の第一歩は,正確な屈折検査に基づく屈折管理であり,非調節麻痺である自然瞳孔下でのCARとSVSの測定結果の比較については数多くの報告がある13,14).宮内らは,82例C164眼(10.5C±4.1歳)を対象として,SVSとCARであるCTONOREFIII(ニデック)の自然瞳孔下測定値を比較している13).乱視度数には有意差はないものの,球面度数はCSVSではC.0.92±2.19D,ARではC.1.27±2.42Dと,SVSでの測定のほうが球面度数で有意に遠視寄りに測定されており(p<0.01),SVSは測定の再現性が高く,従来のCARよりも器械近視や調節の影響が少ないため,より日常視に近い屈折の評価が可能と述べており,鈴木らも同様の傾向を報告している14).しかし,これらの対象者はC3歳児健診や小中学生の視覚スクリーニングの受診者であり,軽度遠視しか対象としていない.Pa.らは,小児C200例C400眼(5.2C±2.6歳)を対象に,SVSと同様のフォトレフラクション法機器のCPlusoptixS08(Plusoptix社)による非調節麻痺下屈折値,手持ちCARであるレチノマックス(ライト製作所)によるC0.5%またはC1%シa:球面度数b:円柱度数意な相関を認める.D:diapters.クロペントラート点眼後調節麻痺下屈折値と検影法による調節麻痺下屈折値とを比較した結果を報告している11).レチノマックスと検影法による調節麻痺下等価球面度数および乱視度数は,C.0.08±0.58Dおよび+0.03±0.38Dと有意差はなく,Bland-Altman分析でも系統誤差は認められず,レチノマックスと検影法による調節麻痺下屈折測定の精度は同等である.また,PlusoptixS08による非調節麻痺下乱視度と検影法による調節麻痺下乱視度の差は.0.23±0.53Dと有意差はなく,Bland-Altman分析でも系統誤差は認めらないのに対し,球面等価度の差は.1.13±1.25DとPlusoptixS08による非調節麻痺下球面度数のほうが有意にマイナス寄りに測定されており,とくに+3.4Dを越える遠視ではC95%信頼区間を越える固定誤差が多くなっている.非調節麻痺下の屈折検査では,SVSはCARより遠視の検出に優れているが,非調節麻痺下のCPlusoptixS08では調節麻痺下の検影法より遠視の検出が有意にマイナスに寄る.これらの事実より,SVSを遠視による弱視や内斜視の診断機器と使用するためには,調節麻痺下のCSVSとCARの測定値の比較が不可欠である.菅澤らは,SVSとCARであるTONOREFII(ニデック)の硫酸アトロピンまたは塩酸シクロペントラートによる調節麻痺下の比較をしている12).塩酸シクロペントラートを点眼したC26例C52眼(平均年齢:7.8C±2.4歳)の比較では,球面度数はCSVS:+3.12±1.47DとAR:+2.56±1.66Dで有意差はなく,円柱度数もCSVS:C.1.18±0.96DとCAR:C.0.88±0.95Dで有意差はない.相関係数も球面度数でCr=0.941,円柱度数もCr=0.652と有意な関連が認められている.硫酸アトロピンを点眼したC11例22眼(平均年齢:4.9C±2.0歳)の比較でも球面度数はCSVS:+3.51±1.93DとCAR:+3.25±2.24Dで有意差はなく,円柱度数もCSVS:C.0.74±0.45DとCAR:C.0.68±0.47Dで有3.02.0a:球面度数b:円柱度数Y=-0.2593X+1.052r=-0.5268(p=0.0002)Mean:0.03±0.85D2.01.34DSVS-AR(D)-1.0-1.29D-1.0Y=0.1540X+0.2053r=0.1576(p=0.3006)Mean:0.02±0.67D-3.0-2.00.02.04.06.08.0-4.0-3.0-2.0-1.00.0SVSとARの平均(D)SVSとARの平均(D)-3.0c:等価球面度数d:乱視軸1.01.61DSVS-AR(D)1.00.00.0-1.55D-2.0-2.02.01.0Y=-0.1695X+0.6089r=-0.4036(p=0.0060)Mean:0.03±0.77D801.54D67.9(°)60-20SVS-AR(D)4020-1.00-1.48D-40-2.0-60-60.4(°)-80-3.0-202468-80-60-40-2020406080SVSとARの平均(D)SVSとARの平均(°)図2オートレフラクトメータ(AR)とSpotVisionScreener(SVS)の測定値のBland.Altman分析ARとCSVSの球面度数,円柱度数,等価球面度数,乱視軸をCBland-Altman分析した.円柱度数と乱視軸では統計誤差は認められないが,球面度数と等価球面度数では遠視度が強くなるとCSVSでは低く測定される比例誤差が認められる.D:diapters.意差はない.相関係数も球面度数でCr=0.967,円柱度数もCr=0.522と有意な関連があり,調節麻痺下の屈折検査の精度は,SVSもCAR同等であると報告している.しかし,彼らはCBland-Altman分析による誤差は検討していない.今回,45例を対象としてC1%アトロピン点眼による調節麻痺下で測定したCSVSとCARの屈折値を比較したが,平均値では球面度数,乱視度数,球面等価度数,乱視軸のすべてに有意差は認めなかった.相関係数にしても,球面度数,乱視度数,球面等価度数では非常に強い相関が認められ,1%アトロピン点眼による調節麻痺下ではCSVSとCARの測定精度は同等であると思われた.しかし,Bland-Altman分析では,球面度数,乱視度数,乱視軸では比例誤差が認められず,ARとCSVSの屈折値差とCARとCSVSの屈折値平均の間には有意な関連は認められなかったが,球面度数と等価球面度数の分析では有意な相関が認められ,+4D以上の中等度遠視ではCSVSの屈折値は低く測定される比例誤差が認められた.これらの結果より,軽度.中等度の遠視では,SVSによる調節麻痺下屈折値は,ARによる調節麻痺下屈折値とほぼ同等であり,SVSの調節麻痺下屈折値を基に遠視または遠視性乱視に起因する屈折異常弱視,不同視弱視,調節内斜視の診断および治療用眼鏡処方を行ってもよい.しかし,+4D以上の遠視では調節麻痺下でもCSVSの測定値は低く測定される危険性があるため,弱視・斜視の診断・治療にはできる限り調節麻痺下のCARの測定値を基としたほうが安全である.しかし,乳幼児では額や顎の固定がむずかしく,眼前に測定機器を固定しなくてもよいCSVSのほうが検査可能率は高い.+6.5D以上の高度遠視ではCSVSでの測定可能範囲外となるが,眼鏡装用時のオーバーレフラクションの報告もあり15),筆者らも+6.5D以上の高度遠視でもオーバーレフラクションによる調節麻痺下屈折値を精度について検討を続けていきたい.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)HelvestonCEM,CPachtmanCMA,CCaderaCWCetal:ClinicalCevaluationoftheNidekARautorefractor.JPediatrOph-thalmolStrabismusC21:227-230,C19842)日本眼科医会:3歳児健診における視覚検査マニュアル.屈折検査の導入に向けて..https://www.gankaikai.or.jp/Cschool-health/2021_sansaijimanual.pdf3)KaakinenK:ACsimpleCmethodCforCscreeningCofCchildrenCwithCstrabismus,CanisometropiaCorCametropiaCbyCsimulta-neousCphotographyCofCtheCcornealCandCfundusCre.exes.CActaOphthalmolC57:161-171,C19794)HowlandHC,BradickO,AtkinsonJetal:Opticsofpho-to-refractionCorthogonalCandCisotropicCmethods.CJCOptCSocCAmC73:1701-1708,C19835)魚里博:フォトレフラクション法.眼科C33:1443-1455,C19916)佐藤美保,粟屋忍,鈴木祐子:乳幼児の視力発達と屈折変化の関係.日眼会誌C97:861-867,C19937)ArnoldCRW,CArmitageMD:PerformanceCofCfourCnewCphotoscreenersConCpediatricCpatientsCwithChighCriskCamblyopia.CJCPediatrCOphthalmolCStrabismusC51:46-52,C2014C8)SanchezI,Ortiz-ToqueroS,MartinRetal:Advantages,limitations,CandCdiagnosticCaccuracyCofCphotoscreenersCinCearlyCdetectionCofamblyopia:aCreview.CClinCOphthalmolC10:1365-1373,C20169)林思音,枝松瞳,沼倉周彦ほか:小児屈折スクリーニングにおけるCSpotCVisionScreenerの有用性.眼臨紀C10:C399-404,C201710)ErdurmusM,YagciR,KaradagRetal:AcomparisonofphotorefractionCandCretinoscopyCinCchildren.CJCAAPOSC11:606-611,C200711)Pa.CT,COudesluys-MurphyCAM,CWolterbeekCRCetal:CScreeningforrefractiveerrorsinchildren:ThePlusoptixS08CandCtheCRetinomaxCK-Plus2CperformedCbyCaClayCscreenerCcomparedCtoCcycloplegicCretinoscopy.CJCAAPOSC14:478-483,C201012)菅澤大輔,植原慎大郎,今野泰宏:スポットビジョンスクリーナーとオートレフの調節麻痺薬点眼後屈折値及び乱視軸の比較.日視会誌48:215,C201913)宮内亜理紗,後藤克聡,水川憲一ほか:SpotCVisionScreenerと据置き型オートレフラクトメータの測定精度の比較検討.あたらしい眼科38:102-107,C202114)鈴木美加,比金真菜,佐藤千尋ほか:3歳児健康診査でのCSpotTMCVisionScreenerの使用経験.日視会誌C46:147-153,C201715)福留隆夫,田原文華,中谷俊介ほか:WelchAllyn社製スポットビジョンスクリーナーによるオーバーレフラクションの有用性.日視会誌C47:280,C2018***

SpotVisionScreenerと据置き型オートレフラクトメータの測定精度の比較検討

2021年1月31日 日曜日

SpotVisionScreenerと据置き型オートレフラクトメータの測定精度の比較検討宮内亜理紗*1後藤克聡*2水川憲一*1山地英孝*1馬場哲也*1宇野敏彦*1*1白井病院*2川崎医科大学眼科学1教室CComparisonofRepeatabilityBetweenSpotVisionScreenerandConventionalAuto-RefractometerArisaMiyauchi1),KatsutoshiGoto2),KenichiMizukawa1),HidetakaYamaji1),TetsuyaBaba1)andToshihikoUno1)1)ShiraiEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology1,KawasakiMedicalSchoolC目的:SpotVisionScreener(SVS)と従来の据置き型オートレフラクトメータ(以下,AR)の測定精度を比較検討した.対象および方法:眼科的に器質的疾患のないC82例C164眼,平均年齢C10.5歳(3.18歳)を対象に,SVSとCARで各C3回連続測定後,自覚的屈折検査を施行し,測定精度(ICC)と各パラメータを比較した.結果:ICCは,球面度数がCSVS:0.994,AR:0.995,円柱度数がCSVS:0.885,AR:0.977だった.球面度数(平均値±標準偏差)はCSVS:C.0.92±2.19D,AR:.1.27±2.42D,円柱度数はCSVS:.0.66±0.47D,AR:.0.67±0.52Dで,SVSは球面度数で有意に遠視寄りに測定された(p<0.01).結論:SVSは測定の再現性が高く,従来のCARよりも器械近視や調節の影響が少ないため,より日常視に近い屈折の評価が可能と考えられる.CPurpose:ToCcompareCtheCrepeatabilityCofCaCSpotCVisionScreener(SVS)andCaCconventionalCstationary-typeauto-refractometer(AR).Casesandmethods:Thisstudyinvolved164eyesof82patientswithoutocularorganicdiseasewhounderwentexaminationbySVSandAR,andmeasurementofbest-correctedvisualacuity.Wecom-paredCtheCintra-classCcorrelationcoe.cients(ICC)andCeachCparameter.CResults:ICCs(SVS・AR)were0.994・C0.995CinCsphericalCpowerCand0.885・0.977CinCcylindricalCpower.CSphericalpower(average±standarddeviation)Cwas.0.92±2.19DinSVS,and.1.27±2.42DinAR.Cylindricalpowerwas.0.66±0.47DinSVS,and.0.67±0.52DCinCAR.CSVSCwasCmeasuredCsigni.cantlyCcloserCtoChyperopiaCinCsphericalCpowerCcomparedCtoAR(p<0.01).CConclusion:SVSCshowedChighCrepeatabilityCofCtheCmeasurementCandClessCin.uenceCofCinstrumentCmyopiaCandCaccommodationthanconventionalAR.Therefore,SVScanevaluatetherefractivepowerclosertoanaturallyview-ingcondition.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(1):102.107,C2021〕Keywords:スポットビジョンスクリーナー,測定精度,屈折,器械近視,調節.SpotVisionScreener,repeat-ability,refraction,instrumentmyopia,accommodation.Cはじめに据置き型オートレフラクトメータ(以下,AR)の問題点は,内部視標を覗き込むことにより誘発される器械近視や調節の介入が避けられないこと,頭位が不安定な症例では額当てや顎台から顔がはずれること,固視不良例では測定が困難となることなどがあげられる.しかし近年,それら多くの問題点を解消できるCSpotVisionScreener(SVS,WelchAllynC社)の登場により,迅速かつ両眼同時に屈折検査を行えるようになった.SVSは遠視,近視,乱視,不同視,瞳孔不同,瞳孔間距離,眼位などの測定を行える簡易スクリーニング検査として眼科はもちろん,3歳児健診や小児科領域で屈折検査や眼位検査としての有用性が多く報告されている1.4).また,1Cm±5Ccmの長い測定距離で行えるため調節の介入が少ないことや1),弱視の危険因子の検出にも優れていることが〔別刷請求先〕宮内亜理紗:〒767-0001香川県三豊市高瀬町上高瀬C1339白井病院Reprintrequests:ArisaMiyauchi,ShiraiEyeHospital,1339Takase,Kamitakase,Mitoyocity,Kagawa767-0001,JAPANC102(102)SVS(AU-VS100S-B,WelchAllyn社)TONOREFIII(ニデック)測定原理フォトレフラクション法ラージピューピルゾーン式測定範囲C.7.50.+7.50DC.30.00.+25.00D瞳孔径4.0.C9.0Cmm1.0.C10.0Cmm内部視標視覚的パターンと可聴音絵検査距離C1Cm±5CcmC12Cmm測定時間1秒3.C4秒SVS:SpotVisionScreener.報告されている5.7).その一方で,SVSは単回測定の結果のみで,従来のCARのように代表値を取得できない問題点があり,SVS運用マニュアルではCSVSの測定精度を上げるために,2回以上の測定を推奨している8).しかし,これまで筆者らが調べた限りCSVSの測定精度を詳細に検討した報告はない.そこで今回,SVSと従来の据置き型CARの測定精度を比較検討した.CI対象および方法白井病院(以下,当院)倫理委員会承認のもと,ヘルシンキ宣言に基づき後向き研究を施行した.対象はC2018年C9月.2019年C6月に当院を受診し,眼科的に器質的疾患がなく,本研究に対して同意の得られたC82例C164眼である.症例の内訳は,正常眼C76例C152眼,弱視治癒後症例C3例C6眼,不同視弱視C2例C4眼,屈折異常弱視C1例C2眼である.除外対象は,SVSまたはCARのどちらか一方が施行できなかった症例,測定範囲を超えた症例,斜視のある症例とした.方法はCSVS(AU-VS100S-B)をC3回,AR(TONOREFIII,ニデック)をC3回の順に連続測定後,自覚的屈折検査を施行した.SVSの測定モードはC4Cmm瞳孔径とし,測定条件を統一するためにC1名の検者がすべて視力検査室の明室の自然瞳孔下にて行った.ARの値は複数回測定後に算出される代表値をC3回採用した.SVSとCARにおける機器の仕様を表1に示す.検討項目は,1.球面度数・円柱度数・等価球面値の比較,2.測定精度として検者内級内相関係数(intra-classCcorrelationcoe.cients:ICC)およびCBland-Altman解析,C3.等価球面値における自覚的屈折検査とCSVSおよびCARとの相関とした.また,検討で用いたCARの値は代表値のC3回の平均値とした.統計解析として,SVSとCARにおける各測定値の比較にはCpaired-ttest,SVS・AR・自覚的屈折検査のC3群における等価球面値の比較にはCTukeyの多重比較法,測定精度の検討にはCICCおよびCBland-Altman解析,自覚的屈折値との相関にはCPearsonの順位相関係数を用い,危険率5%未満を有意とした.統計ソフトはCSPSSver.22(IBM社)を用いて行った.II結果1.SVSとARの測定値の比較対象の年齢分布および屈折度数の分布を図1,2に示す.年齢の分布範囲はC3.18歳で,平均値C±標準偏差はC10.5C±4.1歳であった.球面度数の分布範囲はCSVS:+5.25D.C.7.00D,AR:+6.75.C.8.50D,円柱度数の分布範囲はSVS:+0.00.C.3.75D,AR:C.0.25.C.3.25Dであった.球面度数の平均値±標準偏差はCSVS:C.0.92±2.19D,AR:C.1.27±2.42D,円柱度数はCSVS:C.0.66±0.47D,AR:C.0.67±0.52D,等価球面値はCSVS:C.1.26±2.12D,AR:C.1.60±2.40Dで,SVSではCARと比較して球面度数と等価球面値でそれぞれ有意に遠視寄りに測定された(p<0.01)が,円柱度数では有意な差を認めなかった(p=0.862)(表2).ARよりもCSVSのほうが遠視寄りに測定された症例はC122眼(74.4%)であった.そのうち,SVSとCARの両方で遠視が確認できたC48眼のうち,SVSで遠視寄りに測定されたのはC25眼(52.1%)であった.C2.SVSとARの測定精度ICC(SVS・AR)は,球面度数:0.994・0.995,円柱度数:0.885・0.977,等価球面値:0.995・0.995で,SVS・ARともに有意に高い測定精度であった(p<0.01)(表3).しかし,SVSの円柱度数におけるCICCはCARよりも低い値を示した.Bland-Altman解析を図3に示す.2機種で測定した球面度数における測定誤差の平均はC0.35D,95%一致限界は.0.83.+1.53Dであり,屈折度数が遠視になるとCSVSはCARよりも測定値が小さくなる比例誤差がみられた(p<0.01).円柱度数における測定誤差の平均はC0.01D未満,95%一致限界は.0.62.+0.63Dであり,SVSはCARと比較してランダム誤差がみられた(p=0.025).C3.等価球面値における自覚的屈折検査とSVSおよびARの相関自覚的屈折検査が行えたC79例C158眼における相関係数は,SVSと自覚的屈折検査ではC0.978,ARと自覚的屈折検査ではC0.987で,SVSとCARのC2機種ともに自覚的屈折検査と強い相関がみられた(p<0.01)(図4).また,等価球面値の各平均値C±標準偏差は,SVS:C.1.34C±2.08D,自覚的屈折検査:C.1.07±2.40D,AR:C.1.67±2.37Dであり,3群間の比較では,SVSvs自覚的屈折検査ではCp=0.547,SVSvsARではCp=0.420と有意差はなかったが,自覚的屈折検査CvsARではCp=0.056で有意な傾向がみられ,ARのほうが近視寄りになっていた(表4).(人)4035252015161050III考按1.SVSとARの測定値の比較本研究では,SVSの球面度数および等価球面値はCARよりも約C0.35D程度ほど有意に遠視側の値を示したが,円柱度数に有意差はみられなかった.また,SVSはC164眼のうちC122眼(74.4%)でCARよりも遠視寄りに測定された.多々良ら9)は,3歳児健診においてCARとCSVSを比較検討し,球面度数はCAR:+0.44D,SVS:+1.49D,円柱度数はCAR:C.1.27D,SVS:C.1.72Dで,SVSで球面度数はC1.05D遠視側に,円柱度数はC.0.45D大きく測定されたと報告している.鈴木ら2)はC3歳児健診でハンディレフであるCReti-nomaxとCSVSを比較検討した結果,等価球面値はCRetino-maxでC.1.19D,SVSで+0.28D,とCSVSがC1.47D有意に遠視寄りの値を示し,93%の症例でCSVSのほうが遠視側に測定されたことを報告している.また,円柱度数はCRetino-maxでC.0.54D,SVSでC.0.73D,とCSVSがC.0.19D大きく測定される傾向があったと述べている.一方,藤田ら10)の小児を対象にCARとCSVSを比較した検討では,球面度数および円柱度数に有意差はなかったとの報告もある.本研究の球面度数および等価球面値は,SVSが遠視寄りの値を示すという過去の報告とおおむね一致する結果であっCAR(人)34327~1213~18(歳)図1対象の年齢分布球面度数(D)(人)SVS1008280726040206310球面度数(D)(人)AR10086806056402018130円柱度数(D)円柱度数(D)図2球面度数および円柱度数の分布球面度数の平均値±標準偏差はCSVS:C.0.92±2.19D,AR:C.1.27±2.42D,円柱度数はCSVS:C.0.66±0.47D,AR:.0.67±0.52Dであった.SVS:SpotVisionScreener,AR:据置き型オートレフラクトメータ.S(D)C(D)SE(D)p値SVSC.0.92±2.19C.0.66±0.47C.1.26±2.12CARC.1.27±2.42C.0.67±0.52C.1.60±2.40p<0.01,Cp=0.862,Cp<0.01Paired-t-testS:球面度数,C:円柱度数,SE:等価球面値.表3SVSとARにおける各測定値の検者内級内相関係数(ICC)ICCSCCCSEp値SVSC0.994C0.885C0.995p<0.01CARC0.995C0.977C0.995p<0.01S:球面度数,C:円柱度数,SE:等価球面値.球面度数円柱度数3.001.502.001.00AR(D)-2.00-1.00-4.00-3.00-2.00-1.000.00SVSとARの平均(D)図3SVSとARのBland.Altman解析球面度数における測定誤差の平均はC0.35D,95%一致限界はC.0.83D.+1.53Dであり,屈折度数が遠視になるとCSVSはCARよりも小さくなる比例誤差がみられた(p<0.01).円柱度数における測定誤差の平均は0.01D未満,95%一致限界は.0.62.0.63Dであり,SVSはARと比較してランダム誤差がみられた(p=0.025).SVS:SpotCVisionScreener,AR:据置き型オートレフラクトメータ.C8.008.006.006.004.004.00SVS-AR(D)1.00.50.00.00-1.00-.50-7.50-5.00-2.500.002.505.00SVSとARの平均(D)SVS(D)2.002.000.000.00-2.00-2.00-4.00-4.00-6.00-6.00-8.00-8.00-10.00-8.00-6.00-4.000.00-2.002.004.006.00-10.00-10.00-8.00-6.00--2.002.004.000.004.006.008.00自覚的屈折検査自覚的屈折検査図4等価球面値における自覚的屈折検査とSVSおよびARの相関相関係数Crは,SVSと自覚的屈折検査ではC0.978,ARと自覚的屈折検査ではC0.987で,ともに強い相関がみられた(p<0.01).SVS:SpotVisionScreener,AR:据置き型オートレフラクトメータ.SVS自覚CARp値SVSvs自覚CSVSvsAR自覚vsARSE(D)C.1.34±2.08C.1.07±2.40C.1.67±2.37C0.547C0.420C0.056CTukeyの多重比較法SVS:SpotVisionScreener,自覚:自覚的屈折検査,AR:据置き型オートレフラクトメータ.た.林ら11)は,小児を対象として,調節麻痺下と調節下においてCSVSと従来の屈折機器で記録した等価球面値の差を検討した結果,従来の屈折器機で2.26D,SVSで1.05Dと,SVSは従来の測定器機よりも有意に小さかったと報告している.そして,調節の介入が少なかったのは両眼開放下かつ検査距離によるものと述べている.また,多々良ら9)は,SVSが内部視標として非調節視標であるイルミネーション視標を用いていることから,機械的特性による遠視化の可能性を指摘している.SVSは両眼開放下で検査距離がC1Cmであることや非調節視標を用いているため,従来のCARよりも調節の介入が少なく,遠視側に測定されやすいと考えられる.一方,SVSは検者が器機を傾けて操作したり,被検者が顔を傾けたりすると乱視度数が変動しやすいため,円柱度数が大きく検出されやすい11)と考えられており,他にも同様の報告2,9)がみられる.しかし,本研究や藤田ら10)の検討のようにCSVSと従来のCARの円柱度数に有意差がなかった報告もあるため,頭位や眼瞼などを注意深く観察しながら検査を行う,あるいはスタッフや保護者の協力を得て適切な頭位の保持や眼瞼挙上を行うなどの測定条件を整えることにより,SVSでも従来のCARと同様に正確な乱視検出が行えると考えられるが,この点に関しては今後も詳細な検討が必要であるといえる.C2.SVSとARの測定精度筆者らが調べた限り,これまでCSVSの測定精度についてICCを用いて検討した報告はなく,本研究が初めての報告である.本研究によって,SVSは球面度数および円柱度数,等価球面値のいずれのパラメータにおいても高いCICCが得られ,測定精度が非常に高いことが明らかとなった.さらに,SVSの球面度数および等価球面値は従来のCARと同等の高い測定精度であった.しかし,円柱度数のCICCについては,SVSはC0.885と高い測定精度ではあったが,ARの0.977と比較すると低い値を示した.さらに,SVSとCARの測定値において,一定の偏った傾向をもつ系統的誤差の混入の有無を調べるためにCBland-Altman分析を行った結果,球面度数の測定誤差の平均はC0.35Dで,屈折度数が遠視寄りになるとCSVSはCARに比べて測定値が小さくなるという比例誤差がみられた.また,遠視C48眼のうちCSVSのほうが遠視寄りに測定されたのはC25眼(52.1%)に留まっていた.一方,円柱度数の測定誤差の平均はC0.01D未満で,SVSはARと比較してランダム誤差がみられた.SVSの球面度数において比例誤差がみられた明確な理由は不明であるが,今回の検討では遠視眼がC48眼(29.3%)しか含まれておらず,近視眼が大多数であったため症例の偏りが影響していると考えられる.遠視眼では,SVSがCARに比べて遠視度数が過小評価される傾向が考えられるため,今後遠視眼を多数含めた詳細な検討を行い,遠視眼においてSVSがCARよりも遠視度数が低く検出される原因を明らかにする必要がある.また,SVSの円柱度数においてランダム誤差がみられた理由としては,SVSは検査距離の関係上,測定時に検者による眼瞼挙上や頭位保持ができないため,睫毛や上眼瞼,頭位の傾きによって乱視度数が変動しやすいと考えられる.しかし,本研究での円柱度数の測定誤差はC0.01D未満と非常に小さく,実測値においてもCSVSとCARで有意差はなかったため,臨床的に意義のある誤差ではないと考えられる.C3.等価球面値における自覚的屈折検査とSVSおよびARの相関本研究によって自覚的屈折検査は,SVSで相関係数C0.978,ARで相関係数C0.987,ともに非常に強い相関を示すことが明らかとなった.鈴木ら2)は,SVSの値は遠視側に測定され調節の介入が少ないとされている検影法の弱主経線屈折値と同等であったと報告している.Muら12)もCSVSと検影法を比較し,両者の等価球面値は相関がみられたと報告している.また,林は1)SVSでは調節麻痺薬を使用しなくても真の値に近い数値を検出でき,調節麻痺薬を使用するのがむずかしい症例や検診において有用であると述べている.そのため,SVSは調節麻痺薬を使用することなく,技量が必要とされる検影法に近い測定値を得ることができるとともに,被検者を選ばずに施行できるため,3歳児検診や学校検診において自覚的屈折検査が行えない場合の屈折評価の手助けになると考えられる.また,SVSはCARよりも日常視下の他覚的屈折度数の評価に有用であり,5Cm視力表を用いた自覚的屈折検査における屈折矯正の一助にもなると考えられる.C4.本研究の限界本研究における問題点としては,後ろ向き研究デザインであること,対象の各年代のばらつきがあること,遠視眼が全体のC3割弱で屈折度数に偏りがあること,ほぼ正常眼での検討であることがあげられる.今後は,各年代の症例数を均等にするとともに遠視眼を増やし,弱視眼での検討も行う予定である.結論今回の検討により,SVSでは従来のCARに比べて球面度数および等価球面値は遠視側に測定され,球面度数および円柱度数は非常に高い測定精度であることが明らかとなった.そして,SVSは自覚的屈折検査と強く相関するため,従来のCARよりも調節の介入や器械近視の影響が少なく,より日常視に近い屈折度数の評価に有用であると考えられる.文献1)林思音:乳幼児の屈折スクリーニング.あたらしい眼科C36:973-977,C20192)鈴木美加,比金真菜,佐藤千尋ほか:3歳児健康調査でのCSpotCVisionScreenerの使用経験.日視会誌C46:147-153,C20173)萬束恭子,松岡真未,新保由紀子ほか:斜視を伴う小児に対するCSpotC.VisionScreenerの使用経験.日視会誌C46:C167-174,C20174)QianCX,CLiCY,CDingCGCetal:ComparedCperformanceCofCSpotandSW800photoscreenersonChinesechildren.BrJOphthalmolC103:517-522,C20195)DonahueCSP,CArthurCB,CNeelyCDECetal:GuidelinesCforCautomatedCpreschoolCvisionscreening:aC10-year,Cevi-dence-basedupdate.JAAPOSC17:4-8,C20136)SilbertCDI,CMattaNS:PerformanceCofCtheCSpotCvisionCscreenerCforCtheCdetectionCofCamblyopiaCriskCfactorsCinCchildren.JAAPOSC18:169-172,C20147)PeterseimMM,PapaCE,WilsonMEetal:Thee.ective-nessCofCtheCSpotCVisionCScreenerCinCdetectingCamblyopiaCriskfactors.JAAPOSC18:539-542,C20148)日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会マニュアルガイドライン:小児科医向けCSpotVisionScreener運用マニュアルCVer.1.https://www.jasa-web.jp9)多々良俊哉,石井雅子,生方北斗ほか:三歳児健康診査で要精密検査となった児のCSpotVisionScreenerと据え置き型オートレフケラトメータとの屈折値の比較.日視会誌C47:141-146,C201810)藤田和也,掛上謙,三原美晴ほか:小児におけるCSpotCVisionScreenerとCRT-7000の屈折検査結果の比較.眼臨紀11:112-116,C201811)林思音,枝松瞳,沼倉周彦ほか:小児屈折スクリーニングにおけるCSpotCVisionScreenerの有用性.眼臨紀C10:C399-404,C201712)MuCY,CBiCH,CEkureCECetal:PerformanceCofCSpotCphoto-screenerCinCdetectingCamblyopiaCriskCfactorsCinCChineseCpre-schoolandschoolagechildrenattendinganeyeclinic.CPLoSOneC11:e0149561,C2016***

SpotTM Vision Screener による間欠性外斜視の検出精度向上の試み

2018年9月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科35(9):1291.1294,2018cSpotTMVisionScreenerによる間欠性外斜視の検出精度向上の試み掛上謙中川拓也追分俊彦林顕代奥村詠里香林由美子三原美晴富山大学附属病院眼科IncreasingtheDetectionRateofIntermittentExotropiabySpotTMVisionScreenerKenKakeue,TakuyaNakagawa,ToshihikoOiwake,AkiyoHayashi,ErikaOkumura,YumikoHayashiandMiharuMiharaDepartmentofOphthalmology,ToyamaUniversityHospital目的:SpotTMVisionScreener(VS100,Welchallyn,以下,SVS)に赤外線透過フィルター(以下,IRフィルター)を使用し間欠性外斜視の検出精度を上げる.対象:矯正視力1.0以上,近見立体視60秒以下の弱視の既往がない間欠性外斜視20例.平均年齢は9.0±4.1歳.遠見時の斜視角は24.2±10.6(10.45)Δ,近見時の斜視角は29.1±13.6(8.66)Δであった.方法:富士フイルム光学フィルターRIR82を遮眼子として使用し,外斜視検出率は両眼開放時およびIRフィルターで片眼遮閉時に検出された外斜視症例の割合とした.結果:両眼開放時の眼位はすべての症例が斜位で,外斜視検出率は0%であった.IRフィルターによる片眼遮閉時の外斜視検出率は優位眼遮閉が80.0%,非優位眼遮閉は85.0%であり,両眼開放時と比べ有意に高かった(p<0.01).結論:SVSにIRフィルターを併用することで間欠性外斜視の検出率を上げることができた.Purpose:Toincreaseintermittentexotropiadetectionrateusinginfrared.lter(IR.lter)withSpotTMVisionScreener(Welchallyn,SVS).Participants:Subjectswere20individualswithintermittentexotropiawhohadnohistoryofamblyopia,withcorrectedvisualacuityof1.0ormoreandnearstereopisof60secondsorless.Meanagewas9.0±4.1,meanexodeviation24.2±10.6(10.45)distant,29.1±13.6(8.66)near.Methods:FujiFilmOpticalFilterRIR82wasusedforocclusion.ExotropiadetectionratewaspercentageofexotropiadetectedatocclusionbyIR82withbotheyesopen.Results:Eyepositionwasphoriaofallsubjectswithbotheyesopenatwhichexotropiadetectionratewas0%.Exotropiadetectionratewas80.0%withdominanteyeoccluded,85.0%withnondominanteyeoccluded,ratessigni.cantlydi.erentfromthatwithbotheyesopen(p<0.01).Conclusion:WewereabletoincreaseintermittentexotropiadetectionrateusingIR.ltertogetherwithSVS.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(9):1291.1294,2018〕Keywords:スポットビジョンスクリーナー,赤外線透過フィルター,間欠性外斜視.SpotTMVisionScreener,in-frared.lter,intermittentexotropia.はじめにSpotTMVisionScreener(VS100,Welchallyn)(以下,SVS)は,弱視のリスク因子を検出するスクリーニング用機器として開発された.短時間で屈折と斜視の検査ができるため,三歳児健康診査(以下,健診)や小児科でも使用されている.SVSは弱視のリスク因子を高い感度で検出することができるとの報告がある1.3).しかし,間欠性外斜視は正常とされることがある.間欠性外斜視は一般的には両眼視機能が良好といわれているが,恒常性外斜視に移行するものがあり4,5),両眼視機能の発達に影響をきたすことがあるため,見逃すことはできない疾患である.そこで今回,SVSによる間欠性外斜視の検出精度を上げるために,赤外線透過フィルター(以下,IRフィルター)で片眼を遮閉して測定し,外斜視の検出率と斜位の維持能力の関係を調べた.また,IRフィルターによるSVSの屈折検査への影響を調べた.〔別刷請求先〕掛上謙:〒930-0194富山県富山市杉谷2630富山大学附属病院眼科Reprintrequests:KenKakeue,DepartmentofOphthalmology,ToyamaUniversityHospital,2630Sugitani,Toyama930-0194,JAPANI対象矯正視力は両眼ともに1.0以上とし,不同視は除外した.近見立体視はTitmusStereoTest(TST)にて60秒以下で,弱視の既往がない間欠性外斜視20例を対象とした.平均年齢は9.0±4.1歳,屈折異常は自覚的屈折値の等価球面値で,右眼は.0.15±1.43(+1.50..4.50)D,左眼は.0.14±1.40(+3.25..3.38)Dであった.斜視角は交代プリズム遮閉試験で,遠見時は24.2±10.6(10.45)Δ,近見時は29.1±13.6(8.66)Δであった.基礎型18例,輻湊不全型2例,交代性上斜位が合併しているものは2例であった.IRフィルターを装用した状態でのSVSの他覚的屈折検査波長(nm)図1IRフィルターの透過率曲線波長600.1,100nmにおける各IRフィルターの透過率曲線.縦軸は透過率,横軸は波長.図中の丸はIR82を示し,波線は850nmを示す.IR82における850nmの透過率は約65%であることがわかる.注)http://fuji.lm.jp/support/.lmandcamera/download/pack/pdf/._optical.lter_001.pdfより引用し作成した.富士フイルム株式会社より掲載の許可を得た.の精度への影響を,健常者10名20眼を対象に調べた.健常者の平均年齢は21.1±1.92歳,屈折異常は自覚的屈折値の等価球面値で.1.57±2.12(+0.25..6.75)Dであった.II方法片眼遮閉には富士フイルム光学フィルターRIR82を使用した.IRフィルターは,透過限界波長によってIR76,78,80,82,84,86,88,90,92,94,96の号数が市販されている.今回使用したIR82は,おもに820nmより短い波長を吸収し,赤外線は透過するフィルターである(図1)6).SVSの測定には850nmの近赤外線のLEDが使用されており,視標は600nm未満の波長のLEDを使用している.IR82は可視光線を遮断するため,遮閉した眼は完全遮閉に近い状態になるが,SVSは測定することができる(図2).SVSのソフトウェアはバージョン3.0.02.32を使用した.眼位は斜位と外斜視に分け,SVSの結果において正常あるいは両眼が同一方向へ偏位した場合を斜位とし,一眼の角膜反射が鼻側5°,非対称性は固視眼に対し鼻上側,鼻下側のどちらかに8°以上偏位した場合を外斜視とした3,7).外斜視検出率は,対象者のうち両眼開放時およびIRフィルターで片眼遮閉時に検出された外斜視症例の割合とした.斜位の維持能力はYAMA-MOTOレッドフィルタラダー(ナイツ)を使用し測定した.視距離1mで固視眼にレッドフィルタラダーをかざし,No.1から順に暗くし,斜位が維持できなくなった手前の番号を斜位の維持能力とした.優位眼負荷と非優位眼負荷を行い,既報8,9)にならい,斜位の維持能力がNo.14以上の症例を良好群,No.13以下の症例を不良群とした.優位眼は,1mの距離でholeincardtestにより判定した.検定はFischerの正確確率検定を行い,有意水準は5%とした.III結果両眼開放時の眼位は,SVSで外斜視検出率が0%であった.IRフィルターによる片眼遮閉時の外斜視検出率は,優図2IR82とIR82を装用したときのSVSの測定画面IR82は可視光線を遮断するため,蛍光灯はIR82をかざすと見えない(a).検眼枠(左眼)にIR82を装用したときのSVSの測定画面(b)では,フィルター越しにある左眼の瞳孔は認識されている.表1眼位異常検出率表2斜位の維持能力と眼位異常検出率眼位眼位検査条件斜位(%)斜視(%)p*両眼開放20(100.0)0(0.0)優位眼遮閉4(20.0)16(80.0)<0.0001非優位眼遮閉3(15.0)17(85.0)<0.0001*Fischerの正確確率検定斜位(%)斜視(%)*p優位眼負荷良好群(n=1)0(0.0)1(100.0)不良群(n=19)4(21.1)15(78.9)0.79非優位眼負荷良好群(n=0)0(0.0)0(0.0)不良群(n=20)3(15.0)17(85.0)1.00*Fischerの正確確率検定表3SVSで斜位であった4症例の年齢,矯正視力と屈折度数,眼位,TST,斜位の維持能力年齢矯正視力眼位(c.c.)TST(秒)斜位の維持能力(FilterNo.)atfaratnear優位眼非優位眼71158RV=(1.5×+0.50D)LV=(1.5×+0.50D)RV=(1.2×.0.50D)LV=(1.5×.0.75D)RV=(1.2×.0.50D)LV=(1.2×.0.75D)RV=(1.5×+0.25Dc.0.50DAx80°)LV=(1.5×.0.25Dc.2.00DAx10°)34ΔXT30ΔXP(T)18ΔXP(T)12ΔXP(T)42ΔXP’40ΔXP’14ΔXP’14ΔXP’6060404011111012991013c.c.:cumcorrection,XP:exophoria,XT:exotropia,XP(T):exoheterohoria.位眼遮閉が80.0%,非優位眼遮閉が85.0%であり,遮閉眼にかかわらず両眼開放時と比べ有意に高かった(p<0.01)(表1).レッドフィルタラダーのフィルタ番号の平均値は,優位眼負荷が8.2±4.4,非優位眼負荷が7.3±4.0であった.レッドフィルタラダーでの斜位の維持能力は,優位眼負荷では良好群が1例,不良群は19例で,このうちIRフィルターによる片眼遮閉時にSVSで外斜視が検出できたのは,良好群で1/1例(100%),不良群で15/19例(78.9%)であった.レッドフィルタラダーでの斜位の維持能力は,非優位眼負荷では良好群は0例,不良群は20例で,IRフィルターによる片眼遮閉時にSVSで外斜視が検出できたのは良好群0/0例(0%),不良群17/20例(85.0%)であった(表2).不良群のうち,IRフィルター遮閉でSVSが斜位であった4症例の年齢,矯正視力と屈折度数,TST,斜位の維持能力を表すレッドフィルタラダーの結果を表3に示す.レッドフィルタラダーの結果は,4症例とも平均値を超えていた.SVSによる健常者の屈折異常は,IRフィルターでの遮閉時は.1.46±1.41(.0.13..5.13)Dで,非遮閉時は.1.49±1.94(0..6.38)Dであった.IRフィルターでの遮閉時と非遮閉時の屈折異常は,対応のあるt検定では有意な差はなかった(p=0.40)が,屈折誤差が最大で1.75Dの症例が存(D)2.001.501.000.500.00図3IRフィルター遮閉時と非遮閉時のSVSの屈折誤差IRフィルター遮閉時と非遮閉時のSVSの屈折誤差を絶対値で表す.在した.IRフィルターでの遮閉時と非遮閉時の屈折誤差の結果を図3に示す.IV考察両眼開放時の眼位は全例が斜位であったが,IRフィルターで片眼遮閉をすることで,外斜視は80%以上の症例が検出できた.屈折検査は,両眼開放時とIRフィルターで遮閉屈折誤差1001010.10.010.001フィルタ番号(No.)図4レッドフィルタラダーの可視光線透過率曲線縦軸は可視光線透過率を対数で表し,横軸はレッドフィルタラダーのフィルタ番号を表す.注)山本光学株式会社より可視光線透過率の数値の提供を受け作成し,掲載許可を得た.した眼では,1.75Dの誤差が生じる症例があった.SVSの他覚的屈折検査はフォトレフラクション法で,眼底からの反帰光を解析し測定している.IR82の透過率曲線をみると,850nmは透過率が約65%であることがわかる(図1).屈折検査では,IRフィルターを介すことで測定光が減弱し,影響したと思われた.IRフィルターで遮閉した眼は,優位眼と非優位眼の間に外斜視の検出率に差はなかったが,屈折検査に誤差が生じることから,IRフィルターの遮閉は左右各眼に行い,屈折検査は開放眼の屈折度数を採用するほうがよいと考えられる.斜位の維持能力と眼位異常検出率は,斜位の維持能力は良好群が少ないため,不良群のうち斜位であった4症例を検討した.4症例の,斜位の維持能力を表す数値は,平均値より高いため不良群のなかでは比較的良好と思われる.レッドフィルタラダーの可視光線透過率は,No.13は1.28%,No.14は0.152%である(図4).IRフィルターの可視光線透過率は不明で,透過率以外にもSVSのLED視標とレッドフィルタラダーの検査時の光源の違いなどがあるため,レッドフィルタラダーとIRフィルターの比較はできないが,SVSの測定ではIRフィルター遮閉で,斜位の維持能力が,とくに不良な症例を検出できる可能性が示唆された.間欠性外斜視は近見時には融像刺激が強く,斜位にもちこみやすい10).両眼開放時の外斜視検出率が0%であったのは,既報10)に加え,SVSの検査距離は1mの中間距離であるため,斜位にもちこみやすい条件なのかもしれない.健診は,視力検査だけでなく他覚的屈折検査や眼位検査が推奨されており,眼科医や視能訓練士の介入が望まれる.しかし,手間やコストなど運用上の問題があり,実際は看護師可視光線透過率(%)1234567891011121314151617や保健師など眼科専門外の職種が行うことが多い11,12).SVSはフォトレフラクション法で測定するため眼科専門職でなくとも簡便に検査ができる.健診や小児科での活躍が期待されるものの,今回の検討では間欠性外斜視は検出されないことがわかった.SVSは,本来は弱視のスクリーニング機器だが,間欠性外斜視を見逃さずに検出するためには,「眼位検査」という負担が増える.スクリーニング検査は簡便性,安全性,正確性が求められる.SVSにIRフィルターを併用した方法であれば,市販されている安価なフィルターを眼前にかざすだけで間欠性外斜視をスクリーニングすることができる.眼科専門職でなくともこの方法で容易に眼位検査精度は上がると考えられる.SVSにIRフィルターを併用することで間欠性外斜視の検出率を上げることができた.この方法は健診などで間欠性外斜視のスクリーニングに活用できる可能性がある.文献1)SilbertDI,MattaNS:PerformanceoftheSpotvisionscreenerforthedetectionofamblyopiariskfactorsinchildren.JAAPOS18:169-172,20142)GarryGA,DonahueSP:ValidationofSpotscreeningdeviceforamblyopiariskfactors.JAAPOS18:476-480,20143)PeterseimMMW,DavidsonJD,TrivediRetal:DetectionofstrabismusbytheSpotVisionScreener.JAAPOS19:512-514:20154)中川順一,吉川洋:外斜視の構造,恒常性外斜視との関係.臨眼14:473-482,19605)岩重博康:間歇性外斜視の病態と分類.眼科27:433-438,19856)富士フイルム株式会社,FUJIFILMPHOTOHANDBOOK11ページhttp://fuji.lm.jp/support/.lmandcamera/download/pack/pdf/._optical.lter_001.pdf(最終検索日:2017年11月28日)7)DonahueSP,ArthurB,NeelyDEetal:Guidelinesforautomatedpreschoolvisionscreening:a10-year,evi-dence-basedupdate.JAAPOS17:4-8:20138)細畠淳,葵由喜,杉本早紀ほか:外斜視患者の融像力のRedFilterBarによる評価.眼臨98:1206-1209,19979)谷本旬代,松本富美子,大牟禮和代ほか:間歇性外斜視における斜位の維持能力の検討.眼紀52:795-799,200110)大川忠,福士直子:間歇性外斜視の研究第2報両眼視機能について.眼紀28:1271-1279,197711)中村桂子,丹治弘子,恒川幹子ほか:三歳児眼科検診の現状.日本視能訓練士協会によるアンケート調査結果.眼臨101:85-90,200712)日本眼科医会公衆衛生部(福田敏雅):三歳児眼科健康診査調査報告(V)─平成24年度.日本の眼科85:296-300.2014***