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眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の 特徴

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):691.694,2026c眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴坂田苑子*1井上賢治*1鶴岡三惠子*1國松志保*2富田剛司*1,3石田恭子*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院CCharacteristicsofGlaucomaPatientsSeenataLow-VisionClinicinanOphthalmologyHospitalSonokoSakata1)C,KenjiInoue1)C,MiekoTsuruoka1)C,ShihoKunimatsu-Sanuki2)C,GojiTomita1,3)CandKyokoIshida3)1)InouyeEyeHospital,2)CNishikasaiInouyeEyeHospital,3)CTohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:高齢化に伴い緑内障患者は増加し,ロービジョンケアの需要も増えている.今回,ロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を調査した.対象および方法:2024年C4月.C2025年C3月に井上眼科病院ロービジョン外来を受診した緑内障患者C114例を対象とした.年齢,性別,病型,身体障害者手帳等級,ニーズおよび実施したロービジョンケアの内容を診療録より後ろ向きに調査した.結果:平均年齢はC68.0C±13.9歳で高齢者が多かった.病型は広義原発開放隅角緑内障がC75%を占めた.身体障害者手帳を取得している患者のうちC1,2級がC70%以上であった.患者のおもなニーズは読字で,ロービジョンケア内容では拡大読書器の紹介が最多であった.結論:ロービジョン外来を受診した緑内障患者は高齢の重症例が多く,読字のニーズに対して拡大読書器,ICT機器,光学補助具の紹介が多く行われていた.CPurpose:Asthepopulationages,thenumberofglaucomapatientsisexpectedtoincrease,thusleadingtoariseinthedemandforlow-visioncare.Thepurposeofthisstudywastoinvestigatethecharacteristicsofglauco-maCpatientsCseenCatCaCLow-VisionClinic(LVC)inCanCophthalmologyChospital.CSubjectsandMethods:WeCretro-spectivelyCanalyzedCtheCmedicalCrecordsCofC114CglaucomaCpatientsCseenCatCtheCInouyeCEyeCHospitalCLVCCbetweenCApril2024andMarch2025.Patientdemographics,glaucomasubtypes,visualdisabilitygrades,speci.cneeds,anddetailsCofCtheClow-visionCcareCprovidedCwereCreviewed.CResults:TheCmajorityCofCtheCpatientsCseenCwereCelderly(meanage:68.0C±C13.9years).Primaryopen-angleglaucomaaccountedforabout75%oftheglaucomasubtypesobserved.Over70%ofthepatientsheldaphysicaldisabilitycerti.cateclassi.edasGrade1orGrade2.Reading-relatedCneedsCremainedCpredominant,CandCvisualCaidCdeviceCintroductions,CespeciallyCthoseCrelatedCtoCaCvideoCmagni.er,werethemostcommoninterventions.Ontheotherhand,thedemandofapplicationforaphysicaldis-abilitycerti.catehaddecreased.Conclusion:TheglaucomapatientsseenatourLVCwerepredominantlyelderlysubjectswithsevereconditions,andreading-relatedneeds,magnifyingreadingaids,ICTdevices,andopticalaidswerefrequentlyrecommended.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(6):691.694,C2026〕Keywords:ロービジョン外来,緑内障,読字,身体障害者手帳C.low-visionclinic,glaucoma,reading-relatedneeds,physicaldisabilitycerti.cate.はじめに緑内障は長らく日本人の視覚障害の原因の第C1位で1),進行すると視力低下,視野障害により日常生活に著しく支障をきたす疾患である.日本人の高齢化の進展に伴いさまざまな眼疾患によるロービジョン患者が増加しており,ロービジョンケアの重要性はますます高まっている1).近年では視機能低下に対して医療機関でのロービジョンケアが重視され,各地でロービジョン外来が開設されている2).井上眼科病院(以下,当院)ではC2010年C9月にロービジョン外来を開設したが,患者の眼疾患の内訳では緑内障がもっとも多かっ〔別刷請求先〕坂田苑子:〒C101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SonokoSakata,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-SurugadaiChiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(97)C691(人)3530302725222015101050年齢図1年齢分布6級(0例,0.0%)4級(5例,4.4%)3級(2例,1.8%)20~4050607080~90以上(歳代)その他(9例,7.9%)正常眼圧緑内障(8例,7.0%)図2緑内障病型読字82歩行17就労17書字13羞明123遠見不自由介護3手帳2その他4図4患者のニーズた3).広島大学ロービジョン外来の受診者も緑内障患者がもっとも多く4),ロービジョンケアを考える際にはまずは緑内障患者について検討することが重要と考える.過去にも当院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を報告した5)が,緑内障治療の進歩や高齢化に伴い受診者の背景やニーズが変化している可能性がある.そこで本稿では,2024年度のC1年間に当院ロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を後ろ向きに検討したC.CI対象および方法対象はC2024年C4月.C2025年C3月に当院ロービジョン外来を受診した緑内障患者C114例である.年齢,性別,緑内障病型,身体障害者手帳等級,患者のニーズ,およびロービジョン外来での指導内容を診療録から後ろ向きに調査した.期間内に複数回受診した患者については,期間内最初の受診時のデータを用いた.本研究はオプトアウトを実施し,井上眼科病院の倫理審査委員会の承認を取得した(承認番号:C202501-4).CII結果対象は男性C53例,女性C61例で,平均年齢はC68.0C±13.9歳(平均C±標準偏差)で,28.C95歳であった.年代はC20.40歳代C10例(8.7%),50歳代C25例(21.5%),60歳代C22例(19.3%),70歳代C27例(23.7%),80歳代以上C30例(26.3%)で,70歳以上が半数を占めた(図1).緑内障病型は原発開放隅角緑内障C78例(68.4%),続発緑内障C19例(16.7%),正常眼圧緑内障C8例(7.0%)の順であった(図2).視覚障害による身体障害者手帳はC89例(78.1%)が有しており,1級C21例(18.4%),2級C43例(37.7%),3級C2例(1.8%),4級5例(4.4%),5級18例(15.8%),6級0例(0%)であった(図3).身体障害者手帳を有していないC25例(21.9%)のうち,等級に該当するが希望していないのがC19例で,692あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026(98)表1ロービジョンケアの内容内訳件数内訳件数拡大読書器(CTV)紹介,利用C35ルーペ紹介C5就労継続,相談C21介護保険紹介,相談,利用C5視覚リハビリ紹介C11歩行訓練C4点字図書館,デジタル録音図書紹介C10障害年金申請C2ITサポート紹介C7代読,代筆サービスC1音声CPC紹介C6歩行器C1同行援護C6スマートサイト紹介C1身体障害者手帳紹介,申請C6自立訓練C1合計(重複あり)C122CこのうちC2級相当がC10例,4級相当がC1例,5級相当がC8例であった.障害の等級に該当しない症例はC6例であったC.患者のニーズ(重複あり)は読字C82例,歩行C17例,就労17例,書字C13例,羞明C12例と続いた(図4).ロービジョンケアの指導内容(重複あり)は,拡大読書器の紹介C35例,就労に関する相談C21例,視覚リハビリ紹介C11例,点字図書館の紹介C10例,ITサポートの紹介C7例,音声パソコン紹介C6例,同行援護の紹介C6例,身体障害者手帳の申請希望C6例,ルーペ紹介C5例,介護保険紹介C5例,歩行訓練C4例,障害年金申請C2例など多岐にわたった(表1).ITサポートとは,当院の視覚障害を有する職員がパソコンやタブレット端末などの視覚補助機能を紹介し,日常生活支援や社会資源の情報提供を行うものである6)C.CIII考按当院のロービジョン外来を受診する緑内障患者は高齢者が多く,身体障害者手帳C1級やC2級の重度の視覚障害を有する患者が多数であった.また,身体障害者手帳を有していない患者のなかで,身体障害に該当する障害を有しながら身体障害者手帳申請を希望しない患者も存在した.等級が低いほどロービジョンケアの必要性や利用できる福祉サービスが少ないという誤解があり,身体障害者手帳取得のメリットを感じづらく7),申請の遅れが生じている可能性も考えられる.視覚補助具をはじめ,公共料金の割引など利用できるサービスを具体的に提示し,身体障害者手帳申請に対するネガティブな感情を少なくする工夫も必要と思われる.身体障害者手帳の取得により自身を身体障害者と認識することへの心理的抵抗感から,申請を希望しない患者も存在すると考えられる.一方で,身体障害者手帳に障害が該当しない患者も,少なからずロービジョン外来を受診しており,視覚障害が早期の段階からロービジョンケアの介入ができていることも示された.いずれの患者も比較的若年で,就労や趣味において細かい文字の視認が必要な患者であった.傍中心視野障害によって緻密な作業に支障をきたしていたものの,周辺視野は保たれているため,身体障害者手帳の認定基準には該当しなかったC.患者のニーズでは依然として読字が多かった.読字に対するロービジョンケアの内訳は非常に多岐にわたるが,拡大読書器の紹介やデジタルデバイスの紹介が多かった.パソコンやスマートフォン,タブレット端末などのCinformationandcommunicationtechnology(ICT)機器をC1人C1台所有する時代となり8),実際に視覚障害者でもコロナ禍を境にCICT機器の利用が以前と比べ有意に増加している8).今後もCICT機器を活用したデジタル支援がさらに拡充されていくと考えられる.端末のカメラを利用した文字の拡大機能やコントラスト調節機能による視認性向上,また,スマートフォンやスマートスピーカーなどのスマート家電を利用した音声読み上げ機能,文字の音声入力によって情報の入手・発信が可能になっている8).近年ではアプリの進化もめざましく,カメラに映る人物や色を認識し音声で伝える機能や,外出時に信号を認識し目的地までナビゲーションする機能なども開発されている6,9).これらの機能を有効に活用する患者と,ICT機器の導入にハードル,不安を感じ情報社会から取り残されている患者もおり,情報格差が広がりつつあることが課題である7).今回,患者のニーズとして身体障害者手帳の紹介や申請はC6例(4.9%)で,過去の報告5)のC22例(59.5%)から減少した.これは,今回の対象がロービジョン外来を受診したすべての緑内障患者であるのに対して,過去の報告5)では初めてロービジョン外来を受診した緑内障患者を対象とした点が異なる.初回の受診では身体障害者手帳の紹介や緑内障の進行による等級の変更が行われる可能性が高いが,ロービジョン外来に数回受診している患者では生活指導が中心に行われていたことが考えられる.加えて,ロービジョン外来の認知度向上に伴い一般外来でもロービジョンケアを提供する機会が増加しており,ロービジョン外来の受診以前に一般外来でも身体障害者手帳の紹介や申請が行われている可能性も(99)あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026C693考えられる.また,Limらは「緑内障患者はうつ傾向のある患者の割合が多く4),うつ傾向がC30%,不安障害がC64%の割合でみられた」10)と報告している.緑内障患者と網膜色素変性患者の比較では,緑内障患者で心の健康や行動の制限などにおける生活の質(qualityCoflife:QOL)の低下が指摘されており11),日常生活に多くの困難を抱えていることが予測される.一般的にはロービジョンケアを必要と考える患者は,少なからず見えにくいことに不安を感じてから受診する.しかし,不安を強く抱える患者には,ロービジョンケアの存在や福祉センターとの連携,福祉サービスなどを早期に情報提供することも大切である.視覚補助具の選定のみならず,本人の意思を尊重しながら,心理的サポートを含めた包括的なロービジョンケアを行うことが求められる12).今回の調査では,2024年度のC1年間でロービジョン外来を受診した緑内障患者は身体障害者手帳を取得している患者のうちC1,2級を有する重症例が約C70%を占めた.患者のおもなニーズは読字であり,ロービジョンケア内容は拡大読書器の紹介が最多であった.身体障害者手帳に障害等級が該当しない軽度視覚障害のロービジョン外来受診も約C5%みられ,早期からのロービジョン介入ができていることもわかった.緑内障患者では,重度の視覚障害を有する患者だけでなく,視力低下や視野障害が軽度の患者についても早期からロービジョンケアの導入が検討されうる.今後もCICT機器のさらなる活用拡充とともに,心理的側面にも配慮した包括的支援が望まれる.緑内障患者に対し,ロービジョン外来は今後も重要な役割を担っていくと考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatobaCR,CMorimotoCN,CKawasakiCRCetal:ACnationwideCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividualsCinCJapanCforCtheC.scalCyear2019:impactCofCtheCrevisionCofCcriteriaforvisualimpairmentcerti.cation..JpnJOphthal-molC67:346-352,C20232)田淵昭雄,藤原篤之:全国大学医学部附属病院眼科におけるロービジョンクリニックの現状(第C2報).日ロービジョン会誌.14:52-57,C20143)鶴岡三惠子,井上賢治,大音清香ほか:井上眼科病院におけるロービジョン外来の実態.眼臨紀.15:317-321,C20224)佐藤佑二,奈良井章人,木内良明:緑内障のロービジョンケア.臨眼C72:192-194,C20185)井上賢治,鶴岡三惠子,大音清香ほか:眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴.眼臨紀C11:C922-926,C20186)石原純子,中津愛,石井祐子ほか:コロナ禍を境に変化した視覚障害者のCIT機器利用と意識について.日ロービジョン会誌.25:s10-s14,C20257)安蘇谷浩乃,相馬睦,杉谷邦子ほか:眼科における身体障害者手帳申請の現況と過去との比較.日ロービジョン会誌.24:41-44,C20238)三宅琢:ICT機器を用いたデジタルビジョンケア.眼科.64:447-452,C20229)山本翠:視覚補助具とCICT機器の選び方と使い方.薬局.72:2505-2511,C202110)LimNC,FanCH,YongMKetal:Assessmentofdepres-sion,Canxiety,CandCqualityCofClifeCinCSingaporeanCpatientsCwithglaucoma..JGlaucomaC25:605-612,C201611)井上賢治,鶴岡三惠子,石田恭子ほか:ロービジョン外来を受診した緑内障患者と網膜色素変性症患者のCQOLの評価.臨眼.73:361-367,C201912)松岡恵美子,松原英紀:不安感の強い緑内障患者のロービジョンケア.日本ロービジョン学会誌.23:73-77,C2023***694あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026(100)