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潜在的にロービジョンケアのニーズを抱えていた緑内障患者

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):695.699,2026c潜在的にロービジョンケアのニーズを抱えていた緑内障患者田保和也*1,2山﨑舞*1,2横田聡*1,2武田佳代*1,2木場みゆき*1,2山本庄吾*1,2平見恭彦*1,2栗本康夫*1,2,3仲泊聡*1,3,4,5*1神戸市立神戸アイセンター病院*2神戸市立医療センター中央市民病院眼科*3公益社団法人NEXTVISION*4立命館大学・総合科学技術研究機構*5東京慈恵会医科大学眼科学講座CGlaucomaPatientswithUnrecognizedNeedsforLowVisionCareKazuyaTayasu1,2)C,MaiYamazaki1,2)C,SatoshiYokota1,2)C,KayoTakeda1,2)C,MiyukiKoba1,2)C,ShogoYamamoto1,2)C,YasuhikoHirami1,2)C,YasuoKurimoto1,2,3)CandSatoshiNakadomari1,3,4,5)1)KobeCityEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KobeCityMedicalCenterGeneralHospital,3)NEXTVISIONPublicInterestIncorporatedAssociation,4)RitsumeikanUniversityResearchOrganizationforScienceandTechnology,5)DepartmentCofOphthalmology,TheJikeiUniversitySchoolofMedicineC緑内障は慢性進行性疾患であり,視野障害が進行しても患者自身が生活上の困難を自覚しにくい,あるいは自覚しても医療従事者へ訴えない場合が少なくない.本報告では,眼科通院中でありながら適切なロービジョン(LV)ケアの介入がなかった緑内障患者C3例を提示し,視能訓練士が患者の行動や反応から潜在的な支援ニーズを把握し,介入へとつなげた経過を検討した.視力が比較的良好な症例では,視野障害が身体障害者手帳の交付基準に相当していても,その該当性が認識されず結果として支援に結びつかない例が認められた.また,身体障害者手帳取得後でも活用方法に関する理解が不十分のため,適切な視覚支援が加入できていない症例も存在した.これらの症例から,検査所見のみならず検査中や移動時の様子,患者との対話を通じて生活上の困難を把握し,医療機関が適切な支援機関へつなぐ役割を担うことが円滑なCLVケア導入において重要であると考えられた.CGlaucomaisachronic,progressivedisease,andpatientsoftenfailtorecognizeorreportfunctionaldi.cultiesindailylifedespiteadvancingvisual.eldloss.Thisreportdescribes3glaucomapatientswhowereunderregularophthalmicCfollow-upCbutChadCnotCreceivedCappropriateClowCvisionCcare.CCerti.edCorthoptistsCidenti.edClatentCsup-portCneedsCthroughCsystematicCobservationCofCpatientCbehavior,CresponsesCduringCexaminations,CandCstructuredCcommunicationaboutdailyactivities,enablingtimelyintervention.Inpatientswithrelativelypreservedvisualacu-ity,Csigni.cantCvisualC.eldCimpairmentCmeetingCcriteriaCforCaCPhysicalCDisabilityCCerti.cateCwasCsometimesCover-looked,CrestrictingCaccessCtoCvisualCsupport.CEvenCafterCcerti.cation,CsomeCpatientsCreceivedCinsu.cientCassistanceCbecauseCofClimitedCinformationCofCavailableCservices.CTheseC3CcasesCindicateCthatCrelianceConCclinicalCtestCresultsCaloneisinadequate.Carefulassessmentofmobility,examinationbehavior,andpatient-reporteddailychallengesisessential.Furthermore,medicalinstitutionsplayacriticalroleinproactivelylinkingpatientstoappropriatesocialresources.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(6):695.699,C2026〕Keywords:緑内障,ロービジョンケア,視覚障害,身体障害者手帳,視能訓練士.glaucoma,lowvisioncare,vi-sualimpairment,physicaldisabilitycerti.cate,certi.edorthoptist.Cはじめにanalyzer:HFA)における平均偏差(meandeviation:MD)緑内障は日本における中途視覚障害の主因である.山岸らと生活の質(qualityoflife:QOL)が有意に関連することをは緑内障患者においてCHumphrey視野計(HumphreyC.eld報告している1,2).また,田中らは緑内障患者では疾患初期〔別刷請求先〕田保和也:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C2-1-8神戸市立神戸アイセンター病院Reprintrequests:KazuyaTayasu,KobeCityEyeHospital,2-1-8Minatojima-minamimachi,Chuo-ku,Kobe650-0047,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(101)C695図1症例1の視野a:Humphrey視野計(HFA)10-2では,26CdB以上の視認点数は右眼C19点,左眼C6点(C○:実測閾値)で周辺視野のデータがなくとも視野障害C5級相当と考えられた.Cb:本人から身体障害者手帳取得の希望があったため,両眼開放CEstermanテストを実施したところ,見えた点はC114点であり,視野等級はC5級となった.からCQOLの低下がみられ,視野障害の進行とともにその低下が加速することを示した3).しかし,緑内障は慢性進行性疾患であり,視野障害が緩徐に進行するため,患者自身が視機能の低下に順応し,不自由さを自覚しにくい,あるいは自覚しても主治医へ訴えない場合が少なくない4).このため,患者からの訴えの有無にかかわらず,医療従事者が積極的に患者の生活上の困難に着目し,必要に応じて早期にロービジョン(LV)ケアの介入・支援を行うことが重要であると考える.当院では支援が必要な患者を発見する方法として,視能訓練士が以下のC2点を中心に支援ニーズの抽出を行う取り組みを行っている.①視力検査,視野検査の結果から身体障害者手帳交付基準に相当すると判断される場合に,主治医へ情報共有する.②検査中の患者の行動や質問への応答などから支援の必要性が示唆される場合には,LVケアの必要性について確認する.本稿では,患者の行動・反応から視能訓練士がCLVケアの潜在的ニーズを把握し実際に支援介入につながった症例を報告する.I症例170歳代,女性.両眼開放隅角緑内障.右眼視力(1.0C×sph-8.00DCcyl-0.75DCAx145°).左眼視力(0.7C×sph-8.00DCcyl-1.00DCAx180°).右眼眼圧C16mmHg,左眼眼圧C16mmHg.身体障害者手帳:未取得.視野:図1に示す.C1.介入を検討する契機となった所見視力検査時に,矯正視力が良好にもかかわらず回答に時間を要し,視標を探す動作が繰り返し観察された.C2.現状確認視野C10°内に認めた暗点が視標探索の困難さに影響していると推察された.日常生活で感じる困難について質問したところ本人からの訴えはなかったが,視能訓練士が読字や顔の識別など具体例を提示し質問したところ実は多数該当することが判明し,視機能の低下により日常生活に支障をきたしている状況が明らかとなった.支援のニーズが潜在的に存在するものの,患者自身が具体的に自覚・把握しにくい可能性が示唆された.C3.施行したLVケアHFA10-2の結果から身体障害者手帳に該当することを主治医に報告し,後日両眼開放CEstermanテストを実施して視認点数C114点,視野障害C5級相当であることを確認し身体障害者手帳申請の手続きを行った.後日改めてニーズ確認を行い,特に読字困難と,歩行時に下方の段差や傾斜に対して不安を感じていることを確認した.LVケアを進めるにあたり,具体的な視覚支援機器や地域福祉サービスの選択も重要であることから,当院と同一施設内に併設されたビジョンパークに情報提供を依頼した.同施設は,公益社団法人CNEXTVISIONが運営する情報提供拠点であり,福祉施設担当者や支援学校教職員など多様な専門職が関与し,各種補助具の体験や福祉相談が可能となっている.本症例では強度近視のため短文は裸眼での至近読が有効であり,長文は拡大読書器による拡大と音声読み上げ機能の併用が有用であることが確認された.ビジョンパークで読み上げ機能付き拡大読書器を体験することでその有効性を本人が実感し,身体障害者手帳取得後に導入へ至った.また,移動に関する困難に対しては地域の支援施設を紹介し,白杖の購入および歩行訓練の実施が検討された.CII症例280歳代,女性.右眼網膜.離に対する硝子体手術後続発緑内障,左眼開放隅角緑内障.右眼光覚弁.左眼視力(0.1C×sph-5.5DCcyl-2.25DCAx90°).右眼眼圧C16mmHg,左眼眼圧C14mmHg.身体障害者手帳:2級(視力障害C4級・視野障害C2級)所持.視野:図2に示すC.C1.介入を検討する契機となった所見検査室への移動時,家族にしがみつくように歩行していた.C2.現状確認身体障害者手帳は所持しているものの,読字困難,移動困難のニーズに対してCLVケアが未介入の状況であった.図2症例2の視野Goldmann視野計で右眼はCV/4eに対する反応を認めなかった.左眼は中心視野および耳上側に島状に視野が残存していたが,移動に重要とされる下方視野は欠如していた.3.施行したLVケア主治医にニーズへの対応が必要な現状を報告し,LV外来へ紹介した.同外来にてニーズの詳細確認を行い,カタログの字が読めず買い物に支障があること,署名ができないこと,信号の色がわからないこと,店頭で商品が識別できないことが明確となった.視機能の活用方法について評価するなかで,読字の際は文字の拡大が必要であることを確認し,ビジョンパークにて拡大読書器を試したところ,有効であることが判明した.また,スマートフォンを所持していたため音声での入力や読み上げ機能の活用と,信号識別や文字認識などが可能な視覚支援アプリがあることを紹介し,操作のサポートなど具体的な対応はビジョンパークへ依頼した.さらに,移動支援として白杖を使用した安全な歩行についての説明と同行援護サービスの活用を提案し,サービス内容の説明および地域支援施設への登録手続きに関する情報提供を行った.CIII症例350歳代,女性.両眼開放隅角緑内障.右眼視力(0.05C×sph-7.00DCcyl-2.00DCAx30°).左眼視力(0.4C×sph-7.00DCcyl-1.75DCAx140°).右眼眼圧C12mmHg,左眼眼圧C12mmHg.身体障害者手帳:2級(視野障害C2級)所持.視野:図3に示すC.C1.介入を検討する契機となった所見視力検査時に,患者から「身体障害者手帳を取得したがメリットがわからない」との報告を受けた.図3症例3の視野右眼は中心視野を欠き,耳下側に島状の視野残存を認めた.左眼は全体として視野の広がりはあるものの輪状暗点を呈し,中心視野はC3°以内であった.2.現状確認身体障害者手帳は所持しているものの,取得によりどのような福祉支援が受けられるか理解できていないこと,読字困難のニーズを確認した.C3.施行したLVケア身体障害者手帳取得後に受けられる福祉サービスとして補装具や日常生活用具等の視覚補助具の購入支援,税金の減免など経済的なメリットがあることを説明した.また,障害年金受給の可能性があるため年金事務所や社会保険労務士に相談するよう助言した.読字支援については拡大読書器,スマートフォンの視覚支援アプリについて紹介し,ビジョンパークにて実際に体験しながら説明を依頼した.CIV考按本報告のC3症例はいずれも,緑内障の治療目的で眼科通院中であったにもかかわらずCLVケアへの適切な導入に至っていなかった.とくに症例C1では,緑内障が慢性進行性であるという疾患特性から患者本人がCQOLの低下を自覚しにくいこと,自発的な訴えが乏しかったことでニーズの発掘がむずかしかったと考えられることが既報4)と一致していた.また,視覚支援において重要な役割を担う身体障害者手帳に関しては,横田らが身体障害者手帳未取得のリスク因子として「視力非該当」をあげており5),症例C1のように視力が比較的良好である場合には,視野障害が身体障害者手帳の交付基準に相当する程度まで進行していてもその該当性が認識されず,結果として身体障害者手帳取得に関する情報提供が行われないまま視覚支援介入に至らない場合もある.視力が良好に保たれている場合でも,視野障害が中心C10°内に及ぶと読字困難や羞明など日常生活への影響が顕著となることが報告されている6)ことから,視力によらず中心視野障害を認める場合には視覚支援のニーズが高まる.緑内障における視野評価ではC30°以内の視野測定が標準とされており,必要に応じて中心C10°以内の測定を追加することが推奨されている7).なお,中心C10°のみの視野データが得られていない場合であっても,24-2およびC30-2では測定点間隔がC6°であるため,中心部からC2点以内に暗点が存在するかを確認することは可能であり,このような中心暗点が認められる場合には読字困難や羞明などの視覚的な困難の有無について確認するとともに,身体障害者手帳の交付基準に相当するか確認することが重要と考える.さらに,湖崎分類Ⅲ期以降に相当する中期緑内障では,30°を超える周辺視野にも欠損が出現し始める.周辺視野欠損は移動のしづらさ以外に夜盲や羞明が起りやすい8).このため,両眼開放CEstermanテスト,FF120,Goldmann視野計などを用いて周辺視野を含めた評価を適宜行うことが望ましく,周辺視野の評価から身体障害者手帳の交付基準に相当すると判断できる場合も少なくない.また,症例C2やC3のように身体障害者手帳を所持していながら,本来はより早期の介入が必要であったにもかかわらず,十分なCLVケアを受けられていない患者は当院においても散見される.さらに筆者らは当院のCLV外来受診歴のある患者への聞き取り調査で,約半数にあたるC47%の患者がCLV外来受診後に新たな課題が生じていたものの,そのうち主治医に伝えられていたのはC41%にとどまっていたことを,第23回日本CLV学会学術総会で報告した.これらからCLVケアの対象となる視機能障害を有する患者に対しては,身体障害者手帳の取得や専門外来,専門機関への紹介のみにとどまるのではなく,生活上の困難や支援ニーズについても定期的に把握し継続的な支援につなげていくことが重要と考える.LVケアの重要性が認識される一方で,すべての支援を医療機関内で完結させることは現実的でない場合も少なくない.そのため,医療機関には患者の視覚的ニーズを適切に把握したうえで,必要な支援を提供可能な医療・福祉資源へ的確につなぐ役割が求められる.本報告ではいずれの症例も,LVケアへの導入およびニーズの把握は院内で行い,具体的な助言や補助具の体験についてはビジョンパークや地域の支援機関へつなぎ,継続的な介入が可能になるよう連携を行った.福祉機関の利用に心理的抵抗を示す患者も少なくないことから,医療機関において視機能評価とあわせてCLVケアに関する情報提供を行い地域の支援機関と段階的に連携することは,患者の不安を軽減し円滑な支援導入に重要であると考える.治療に対する関心は患者・医療従事者ともに高い一方で,生活上の「見えにくさ」への対応は十分ではなく,視覚支援の必要性を適切に把握できないまま支援介入に至っていない緑内障患者の存在が示唆された.検査所見に加え,患者の行動や対話を通じて潜在的な支援ニーズを把握し,LVケアにつなげることが重要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)山岸和矢,吉川啓司,木村泰朗ほか:日本語版CVFQ-25による高齢者正常眼圧緑内障患者のCqualityoflife評価C.日眼会誌C113:964-971,C20092)山岸和矢,吉川啓司,木村泰朗ほか:高齢者正常眼圧緑内障患者の視野障害とCQOL.臨眼C63:1467-1473,C20093)田中健司,岩瀬愛子,水野恵ほか:緑内障患者のCQOLとソーシャル・サポートの関連.日視能訓練士協誌C48:C35-45,C20194)国松志保:緑内障患者のロービジョンケア.あたらしい眼科C26:1077-1078,C20095)横田聡,金森章泰,藤本雅大ほか:神経眼科・斜視弱視外来における視覚障害者手帳取得状況.神経眼科C34:C61-64,C20176)張替涼子:緑内障のビジョンケア.眼科C66:125-138,C20247)木内良明,井上俊洋,庄司信行ほか:緑内障ガイドライン(第C5版)C.日眼会誌C126:85-177,C20228)陳進志:第C4章ロービジョンケアの視機能と行動.視能学エキスパートロービジョンケア(新井千賀子,田中恵津子,阿曽沼早苗,石井祐子編),p93-97,医学書院C,2024C***

眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の 特徴

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):691.694,2026c眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴坂田苑子*1井上賢治*1鶴岡三惠子*1國松志保*2富田剛司*1,3石田恭子*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院CCharacteristicsofGlaucomaPatientsSeenataLow-VisionClinicinanOphthalmologyHospitalSonokoSakata1)C,KenjiInoue1)C,MiekoTsuruoka1)C,ShihoKunimatsu-Sanuki2)C,GojiTomita1,3)CandKyokoIshida3)1)InouyeEyeHospital,2)CNishikasaiInouyeEyeHospital,3)CTohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:高齢化に伴い緑内障患者は増加し,ロービジョンケアの需要も増えている.今回,ロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を調査した.対象および方法:2024年C4月.C2025年C3月に井上眼科病院ロービジョン外来を受診した緑内障患者C114例を対象とした.年齢,性別,病型,身体障害者手帳等級,ニーズおよび実施したロービジョンケアの内容を診療録より後ろ向きに調査した.結果:平均年齢はC68.0C±13.9歳で高齢者が多かった.病型は広義原発開放隅角緑内障がC75%を占めた.身体障害者手帳を取得している患者のうちC1,2級がC70%以上であった.患者のおもなニーズは読字で,ロービジョンケア内容では拡大読書器の紹介が最多であった.結論:ロービジョン外来を受診した緑内障患者は高齢の重症例が多く,読字のニーズに対して拡大読書器,ICT機器,光学補助具の紹介が多く行われていた.CPurpose:Asthepopulationages,thenumberofglaucomapatientsisexpectedtoincrease,thusleadingtoariseinthedemandforlow-visioncare.Thepurposeofthisstudywastoinvestigatethecharacteristicsofglauco-maCpatientsCseenCatCaCLow-VisionClinic(LVC)inCanCophthalmologyChospital.CSubjectsandMethods:WeCretro-spectivelyCanalyzedCtheCmedicalCrecordsCofC114CglaucomaCpatientsCseenCatCtheCInouyeCEyeCHospitalCLVCCbetweenCApril2024andMarch2025.Patientdemographics,glaucomasubtypes,visualdisabilitygrades,speci.cneeds,anddetailsCofCtheClow-visionCcareCprovidedCwereCreviewed.CResults:TheCmajorityCofCtheCpatientsCseenCwereCelderly(meanage:68.0C±C13.9years).Primaryopen-angleglaucomaaccountedforabout75%oftheglaucomasubtypesobserved.Over70%ofthepatientsheldaphysicaldisabilitycerti.cateclassi.edasGrade1orGrade2.Reading-relatedCneedsCremainedCpredominant,CandCvisualCaidCdeviceCintroductions,CespeciallyCthoseCrelatedCtoCaCvideoCmagni.er,werethemostcommoninterventions.Ontheotherhand,thedemandofapplicationforaphysicaldis-abilitycerti.catehaddecreased.Conclusion:TheglaucomapatientsseenatourLVCwerepredominantlyelderlysubjectswithsevereconditions,andreading-relatedneeds,magnifyingreadingaids,ICTdevices,andopticalaidswerefrequentlyrecommended.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(6):691.694,C2026〕Keywords:ロービジョン外来,緑内障,読字,身体障害者手帳C.low-visionclinic,glaucoma,reading-relatedneeds,physicaldisabilitycerti.cate.はじめに緑内障は長らく日本人の視覚障害の原因の第C1位で1),進行すると視力低下,視野障害により日常生活に著しく支障をきたす疾患である.日本人の高齢化の進展に伴いさまざまな眼疾患によるロービジョン患者が増加しており,ロービジョンケアの重要性はますます高まっている1).近年では視機能低下に対して医療機関でのロービジョンケアが重視され,各地でロービジョン外来が開設されている2).井上眼科病院(以下,当院)ではC2010年C9月にロービジョン外来を開設したが,患者の眼疾患の内訳では緑内障がもっとも多かっ〔別刷請求先〕坂田苑子:〒C101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SonokoSakata,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-SurugadaiChiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/26/\100/頁/JCOPY(97)C691(人)3530302725222015101050年齢図1年齢分布6級(0例,0.0%)4級(5例,4.4%)3級(2例,1.8%)20~4050607080~90以上(歳代)その他(9例,7.9%)正常眼圧緑内障(8例,7.0%)図2緑内障病型読字82歩行17就労17書字13羞明123遠見不自由介護3手帳2その他4図4患者のニーズた3).広島大学ロービジョン外来の受診者も緑内障患者がもっとも多く4),ロービジョンケアを考える際にはまずは緑内障患者について検討することが重要と考える.過去にも当院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を報告した5)が,緑内障治療の進歩や高齢化に伴い受診者の背景やニーズが変化している可能性がある.そこで本稿では,2024年度のC1年間に当院ロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴を後ろ向きに検討したC.CI対象および方法対象はC2024年C4月.C2025年C3月に当院ロービジョン外来を受診した緑内障患者C114例である.年齢,性別,緑内障病型,身体障害者手帳等級,患者のニーズ,およびロービジョン外来での指導内容を診療録から後ろ向きに調査した.期間内に複数回受診した患者については,期間内最初の受診時のデータを用いた.本研究はオプトアウトを実施し,井上眼科病院の倫理審査委員会の承認を取得した(承認番号:C202501-4).CII結果対象は男性C53例,女性C61例で,平均年齢はC68.0C±13.9歳(平均C±標準偏差)で,28.C95歳であった.年代はC20.40歳代C10例(8.7%),50歳代C25例(21.5%),60歳代C22例(19.3%),70歳代C27例(23.7%),80歳代以上C30例(26.3%)で,70歳以上が半数を占めた(図1).緑内障病型は原発開放隅角緑内障C78例(68.4%),続発緑内障C19例(16.7%),正常眼圧緑内障C8例(7.0%)の順であった(図2).視覚障害による身体障害者手帳はC89例(78.1%)が有しており,1級C21例(18.4%),2級C43例(37.7%),3級C2例(1.8%),4級5例(4.4%),5級18例(15.8%),6級0例(0%)であった(図3).身体障害者手帳を有していないC25例(21.9%)のうち,等級に該当するが希望していないのがC19例で,692あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026(98)表1ロービジョンケアの内容内訳件数内訳件数拡大読書器(CTV)紹介,利用C35ルーペ紹介C5就労継続,相談C21介護保険紹介,相談,利用C5視覚リハビリ紹介C11歩行訓練C4点字図書館,デジタル録音図書紹介C10障害年金申請C2ITサポート紹介C7代読,代筆サービスC1音声CPC紹介C6歩行器C1同行援護C6スマートサイト紹介C1身体障害者手帳紹介,申請C6自立訓練C1合計(重複あり)C122CこのうちC2級相当がC10例,4級相当がC1例,5級相当がC8例であった.障害の等級に該当しない症例はC6例であったC.患者のニーズ(重複あり)は読字C82例,歩行C17例,就労17例,書字C13例,羞明C12例と続いた(図4).ロービジョンケアの指導内容(重複あり)は,拡大読書器の紹介C35例,就労に関する相談C21例,視覚リハビリ紹介C11例,点字図書館の紹介C10例,ITサポートの紹介C7例,音声パソコン紹介C6例,同行援護の紹介C6例,身体障害者手帳の申請希望C6例,ルーペ紹介C5例,介護保険紹介C5例,歩行訓練C4例,障害年金申請C2例など多岐にわたった(表1).ITサポートとは,当院の視覚障害を有する職員がパソコンやタブレット端末などの視覚補助機能を紹介し,日常生活支援や社会資源の情報提供を行うものである6)C.CIII考按当院のロービジョン外来を受診する緑内障患者は高齢者が多く,身体障害者手帳C1級やC2級の重度の視覚障害を有する患者が多数であった.また,身体障害者手帳を有していない患者のなかで,身体障害に該当する障害を有しながら身体障害者手帳申請を希望しない患者も存在した.等級が低いほどロービジョンケアの必要性や利用できる福祉サービスが少ないという誤解があり,身体障害者手帳取得のメリットを感じづらく7),申請の遅れが生じている可能性も考えられる.視覚補助具をはじめ,公共料金の割引など利用できるサービスを具体的に提示し,身体障害者手帳申請に対するネガティブな感情を少なくする工夫も必要と思われる.身体障害者手帳の取得により自身を身体障害者と認識することへの心理的抵抗感から,申請を希望しない患者も存在すると考えられる.一方で,身体障害者手帳に障害が該当しない患者も,少なからずロービジョン外来を受診しており,視覚障害が早期の段階からロービジョンケアの介入ができていることも示された.いずれの患者も比較的若年で,就労や趣味において細かい文字の視認が必要な患者であった.傍中心視野障害によって緻密な作業に支障をきたしていたものの,周辺視野は保たれているため,身体障害者手帳の認定基準には該当しなかったC.患者のニーズでは依然として読字が多かった.読字に対するロービジョンケアの内訳は非常に多岐にわたるが,拡大読書器の紹介やデジタルデバイスの紹介が多かった.パソコンやスマートフォン,タブレット端末などのCinformationandcommunicationtechnology(ICT)機器をC1人C1台所有する時代となり8),実際に視覚障害者でもコロナ禍を境にCICT機器の利用が以前と比べ有意に増加している8).今後もCICT機器を活用したデジタル支援がさらに拡充されていくと考えられる.端末のカメラを利用した文字の拡大機能やコントラスト調節機能による視認性向上,また,スマートフォンやスマートスピーカーなどのスマート家電を利用した音声読み上げ機能,文字の音声入力によって情報の入手・発信が可能になっている8).近年ではアプリの進化もめざましく,カメラに映る人物や色を認識し音声で伝える機能や,外出時に信号を認識し目的地までナビゲーションする機能なども開発されている6,9).これらの機能を有効に活用する患者と,ICT機器の導入にハードル,不安を感じ情報社会から取り残されている患者もおり,情報格差が広がりつつあることが課題である7).今回,患者のニーズとして身体障害者手帳の紹介や申請はC6例(4.9%)で,過去の報告5)のC22例(59.5%)から減少した.これは,今回の対象がロービジョン外来を受診したすべての緑内障患者であるのに対して,過去の報告5)では初めてロービジョン外来を受診した緑内障患者を対象とした点が異なる.初回の受診では身体障害者手帳の紹介や緑内障の進行による等級の変更が行われる可能性が高いが,ロービジョン外来に数回受診している患者では生活指導が中心に行われていたことが考えられる.加えて,ロービジョン外来の認知度向上に伴い一般外来でもロービジョンケアを提供する機会が増加しており,ロービジョン外来の受診以前に一般外来でも身体障害者手帳の紹介や申請が行われている可能性も(99)あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026C693考えられる.また,Limらは「緑内障患者はうつ傾向のある患者の割合が多く4),うつ傾向がC30%,不安障害がC64%の割合でみられた」10)と報告している.緑内障患者と網膜色素変性患者の比較では,緑内障患者で心の健康や行動の制限などにおける生活の質(qualityCoflife:QOL)の低下が指摘されており11),日常生活に多くの困難を抱えていることが予測される.一般的にはロービジョンケアを必要と考える患者は,少なからず見えにくいことに不安を感じてから受診する.しかし,不安を強く抱える患者には,ロービジョンケアの存在や福祉センターとの連携,福祉サービスなどを早期に情報提供することも大切である.視覚補助具の選定のみならず,本人の意思を尊重しながら,心理的サポートを含めた包括的なロービジョンケアを行うことが求められる12).今回の調査では,2024年度のC1年間でロービジョン外来を受診した緑内障患者は身体障害者手帳を取得している患者のうちC1,2級を有する重症例が約C70%を占めた.患者のおもなニーズは読字であり,ロービジョンケア内容は拡大読書器の紹介が最多であった.身体障害者手帳に障害等級が該当しない軽度視覚障害のロービジョン外来受診も約C5%みられ,早期からのロービジョン介入ができていることもわかった.緑内障患者では,重度の視覚障害を有する患者だけでなく,視力低下や視野障害が軽度の患者についても早期からロービジョンケアの導入が検討されうる.今後もCICT機器のさらなる活用拡充とともに,心理的側面にも配慮した包括的支援が望まれる.緑内障患者に対し,ロービジョン外来は今後も重要な役割を担っていくと考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatobaCR,CMorimotoCN,CKawasakiCRCetal:ACnationwideCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividualsCinCJapanCforCtheC.scalCyear2019:impactCofCtheCrevisionCofCcriteriaforvisualimpairmentcerti.cation..JpnJOphthal-molC67:346-352,C20232)田淵昭雄,藤原篤之:全国大学医学部附属病院眼科におけるロービジョンクリニックの現状(第C2報).日ロービジョン会誌.14:52-57,C20143)鶴岡三惠子,井上賢治,大音清香ほか:井上眼科病院におけるロービジョン外来の実態.眼臨紀.15:317-321,C20224)佐藤佑二,奈良井章人,木内良明:緑内障のロービジョンケア.臨眼C72:192-194,C20185)井上賢治,鶴岡三惠子,大音清香ほか:眼科専門病院のロービジョン外来を受診した緑内障患者の特徴.眼臨紀C11:C922-926,C20186)石原純子,中津愛,石井祐子ほか:コロナ禍を境に変化した視覚障害者のCIT機器利用と意識について.日ロービジョン会誌.25:s10-s14,C20257)安蘇谷浩乃,相馬睦,杉谷邦子ほか:眼科における身体障害者手帳申請の現況と過去との比較.日ロービジョン会誌.24:41-44,C20238)三宅琢:ICT機器を用いたデジタルビジョンケア.眼科.64:447-452,C20229)山本翠:視覚補助具とCICT機器の選び方と使い方.薬局.72:2505-2511,C202110)LimNC,FanCH,YongMKetal:Assessmentofdepres-sion,Canxiety,CandCqualityCofClifeCinCSingaporeanCpatientsCwithglaucoma..JGlaucomaC25:605-612,C201611)井上賢治,鶴岡三惠子,石田恭子ほか:ロービジョン外来を受診した緑内障患者と網膜色素変性症患者のCQOLの評価.臨眼.73:361-367,C201912)松岡恵美子,松原英紀:不安感の強い緑内障患者のロービジョンケア.日本ロービジョン学会誌.23:73-77,C2023***694あたらしい眼科Vol.43,No.6,2026(100)

緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳実態調査 2024 年版

2026年6月30日 火曜日

《第36回.日本緑内障学会.原著》あたらしい眼科43(6):686.690,2026c緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳実態調査2024年版小笠原涼*1井上賢治*1塩川美菜子*1鶴岡三惠子*1國松志保*2溝田淳*2富田剛司*1,3石田恭子*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院SurveyoftheCurrentStatusofVisualImpairmentCertificationApplicationsforGlaucomaPatientsin2024RyoOgasawara1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),MiekoTsuruoka1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),AtsushiMizota2),GojiTomita1,3)andKyokoIshida3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:視覚障害による身体障害者手帳(以下,手帳)を申請した緑内障患者の身体障害者手帳の実態について検討した.対象および方法:2024年1.12月に井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院で手帳申請を行った緑内障126例を対象とした.緑内障病型,視覚障害等級,視野測定方法を後ろ向きに調査した.2021年の前回調査の結果と比較した.結果:病型は原発開放隅角緑内障76例(60.3%),続発緑内障23例(18.3%)などだった.視覚等級は1級14例(11.1%),2級74例(58.7%),3級1例(0.8%),4級8例(6.3%),5級29例(23.0%)であり,病型,等級は前回調査と差はなかった.視野測定はGoldmann視野計(50例,39.7%)と自動視野計(75例,59.5%)を用いており,自動視野計での手帳申請の割合が前回調査より有意に増加した(p<0.01).結論:手帳申請者の緑内障病型は原発開放隅角緑内障が最多だった.視覚障害等級は1級と2級で約7割を占めた.視野測定は自動視野計が多く,経年変化では増加していた.Purpose:Tosurveyandassessthecurrentstatusofvisualimpairmentcerti.cationapplicationsforglaucomapatientsin2024.Methods:Weretrospectivelyanalyzed126glaucomapatientswhoappliedforaphysicaldisabili-tycerti.cateatInouyeEyeHospitalorNishikasai-InouyeEyeHospitalbetweenJanuaryandDecember2024.Glau-comatype,visualdisabilitygrade,andvisual.eld(VF)measurementmethodswereexaminedandcomparedwiththe.ndingsinthe2021survey.Results:Primaryopen-angleglaucoma(POAG)wasthemostcommonglaucomatype(60.3%),followedbysecondaryglaucoma(18.3%).VisualdisabilitygradeswereGrade1in11.1%,Grade2in58.7%,Grade3in0.8%,Grade4in6.3%,andGrade5in23.0%.VFassessmentwasperformedusingtheGold-mannperimeterin39.7%andautomatedperimetryin59.5%.Nosigni.cantdi.erencewasobservedinglaucomatypeordisabilitygradecomparedwiththe2021.ndings.However,certi.cationbasedonautomatedperimetryhadincreasedsigni.cantly(p<0.01).Conclusion:Inthissurvey,POAGwasthemostcommonglaucomatypeobserved.AutomatedperimetryhadincreasinglybeenusedforVFassessment,and70%oftheapplicationswereclassi.edasvisualdisabilityGrade1or2.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)43(6):686.690,2026〕Keywords:緑内障,視覚障害,身体障害者手帳,視野計,視野障害等級.glaucoma,visualimpairment,physical-lydisabilitycerti.cate,perimeter,visualdisabilitygrade.はじめにを対象とした多治見スタディでは40歳以上の5.0%で,年緑内障は視覚障害による身体障害者手帳(以下,手帳)認齢とともに有病率は上昇していた2).そこで手帳に該当する定者の原因疾患の第一位である1).緑内障の有病率は日本人緑内障患者の実態を知り,対策をとることは今後の失明予防〔別刷請求先〕小笠原涼:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:RyoOgasawara,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN686(92)今回調査(126例)前回調査(153例)原発閉塞隅角緑内障発達緑内障(1例,0.8%)原発閉塞隅角緑内障発達緑内障(2例,1.3%)(4例,3.2%)(5例,3.3%)図1緑内障病型の比較有意差なし(χ2検定).の観点から重要である.緑内障にはさまざまな病型があり,病型により重症度や進行速度に差があり,緑内障による手帳該当者にも違いがある可能性がある.そこで筆者らは井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院において2015年3),2021年4)に手帳申請を行った緑内障患者の実態を調査・報告した.手帳認定基準は2018年4月27日に厚生労働省から「身体障害者福祉法施行規則等の一部を改正する省令」が公布され,視野障害は従来のGoldmann視野計に加えて自動視野計も使用可能となった.筆者らの2021年の調査(以下,前回調査)4)では,視野障害の認定はGoldmann視野計60.1%,自動視野計39.9%で,依然としてGoldmann視野計が多かった.今回,前回調査4)より3年間が経過したので再度同様の調査を行った.さらに前回調査4)の結果と比較し,経年変化もあわせて検討した.I対象および方法2024年1.12月に井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に通院中の緑内障患者で,同時期に手帳申請を行った126例(男性74例,女性52例)を対象として後ろ向きの観察研究を行った.対象の年齢は24.94歳で,平均年齢は70.8±12.8(平均±標準偏差)歳であった.手帳申請時の緑内障病型,視覚障害等級,視力障害等級,視野障害等級,視野検査方法(Goldmann視野計,自動視野計)を身体障害者診断者・意見書の控えおよび診療記録より調査した.緑内障病型別に視覚障害等級を,視野検査方法別に視野障害等級を比較した.さらに前回調査4)と緑内障病型,視覚障害等級,視力障害等級,視野障害等級を比較した.視野検査ではGoldmann視野計あるいは自動視野計のどちらを使用するかは視野障害を評価する医師の判断で選択した.統計学的検討は患者背景の年齢の比較には対応のないt検定,男女比,緑内障病型,視覚障害等級,視力障害等級,視野障害等級の比較にはχ2検定,Fisherの直接法を用いた.有意水準はp<0.05とした.なお,緑内障病型は続発緑内障の原因が多岐にわたっていたため合算し,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,原発閉塞隅角緑内障,続発緑内障,発達緑内障の5群として検討した.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.II結果緑内障病型は原発開放隅角緑内障76例(60.3%),続発緑内障23例(ぶどう膜炎10例,落屑緑内障10例,血管新生緑内障2例,ステロイド緑内障1例)(18.3%),正常眼圧緑内障22例(17.5%),原発閉塞隅角緑内障4例(3.2%),発達緑内障1例(0.8%)であった(図1).視覚障害等級は1級14例(11.1%),2級74例(58.7%),3級1例(0.8%),4級8例(6.3%),5級29例(23.0%),6級0例(0%)であった(図2).視力障害での申請は56例,視野障害での申請は125例で,重複申請は55例あった.視力障害の等級内訳は1級2例(3.6%),2級5例(8.9%),3級7例(12.5%),4級17例(30.4%),5級8例(14.3%),6級17例(12.5%)で,視野障害の等級内訳は2級88例(70.4%),3級1例(0.8%),4級1例(0.8%),5級35例(28.0%)であった(表1)視野障害等級と視野検査方法に差はなかった(p=0.5767).視野検査方法は,Goldmann視野計50例(39.7%),自動視野計75例(59.5%)であった(図3).視野障害等級は今回調査(126例)前回調査(153例)3級(1例,0.8%)表1視野障害等級と視野検査方法等級今回調査前回調査視力障害1級2(1.6%)0(0.0%)2級5(4.0%)88(69.8%)3級7(5.6%)1(0.8%)4級17(13.5%)1(0.8%)5級8(6.3%)35(27.8%)6級17(13.5%)0(0.0%)なし70(55.6%)1(0.8%)1級0(0.0%)0(0.0%)2級88(69.8%)94(61.4%)視野障害3級1(0.8%)3(2.0%)4級1(0.8%)0(0.0%)5級35(27.8%)56(36.6%)6級0(0.0%)0(0.0%)なし1(0.8%)0(0.0%)Goldmann視野計では2級42例(84.0%),5級8例(16.0%),自動視野計では2級46例(61.3%),3級1例(1.3%),4級1例(1.3%),5級27例(36.0%)であった(表2).視野検査の種類による視野等級に差はなかった(p=0.05).前回調査4)の緑内障病型は原発開放隅角緑内障83例(54.2%),続発緑内障34例(ぶどう膜炎14例,落屑緑内障14例,ステロイド緑内障3例,血管新生緑内障2例,角膜移植後1例)(22.2%),正常眼圧緑内障29例(19.0%),原発閉塞隅角緑内障5例(3.3%),発達緑内障2例(1.3%)であった(図1).視覚障害等級は1級19例(12.4%),2級77例(50.3%),3級4例(2.6%),4級12例(7.8%),5級41例(26.83級(4例,2.6%)図2視覚障害等級の比較有意差なし(χ2検定).%),6級0例(0%)であった(図2).今回調査と前回調査4)との比較では,緑内障病型は同等(p=0.82),視覚障害等級も同等(p=0.58)であった.視野検査方法は,前回調査4)でGoldmann視野計92例(60.1%),自動視野計61例(39.9%)で,今回調査では前回調査4)に比べて自動視野計の割合が有意に増加した(p<0.01).III考按手帳認定者の全国規模の疫学調査が2019年4月.2020年3月の患者を対象に行われた1).原因疾患は緑内障(40.7%),網膜色素変性(13.0%),糖尿病網膜症(10.2%),黄斑変性(9.1%)の順だった.2024年度の筆者らの施設の調査5)では原因疾患は緑内障(54.3%),網膜色素変性(14.7%),黄斑変性(9.1%),視神経症(6.9%)の順だった.2021年1.12月に行った調査4)と比較すると緑内障が最多であることには変わりないが,2024年調査5)では緑内障の割合が有意に増加した.獨協医科大学埼玉医療センターの安蘇らの報告でも,2013.2015年の3年間と2020.2022年の3年間を比較したところ,原因疾患として緑内障が増加傾向にあった6).その要因として,緑内障は加齢とともに有病率が上昇する7)ため,社会の高齢化に伴い患者が増加して重症例も増加することが考えられる.また,加齢黄斑変性や糖尿病網膜症では抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬や硝子体手術の進歩により重症例が減少したことも考えられる.そこで,前回調査4)より3年間が経過したため今回手帳を申請した緑内障患者の実態を調査した.さらに前回調査4)の結果と比較した.緑内障病型は今回調査と前回調査4)で順位は原発開放隅角緑内障,続発緑内障,正常眼圧緑内障の順で割合に差はなか該当なし今回調査(126例)前回調査(153例)(1例,0.8%)図3視覚障害等級の比較*p<0.05(χ2検定).った.外来を受診した緑内障患者の実態調査では,緑内障病型は正常眼圧緑内障45.6%,原発開放隅角緑内障33.1%,続発緑内障7.8%などであった8).今回調査の緑内障病型が原発開放隅角緑内障60.3%,続発緑内障18.3%,正常眼圧緑内障17.5%などであり,過去の報告8)と比較すると今回調査では原発開放隅角緑内障と続発緑内障が多い傾向だった.緑内障進行リスクとして高眼圧,とくに眼圧変動や経過中の平均眼圧が高いことがあげられている7).眼圧が高い原発開放隅角緑内障,眼圧変動が大きい続発緑内障が重症化しやすい可能性がある.視覚障害等級は1級と2級を合わせて今回調査では69.8%,前回調査4)では62.7%であった.緑内障の手帳申請者は依然として重症例が多いことが明らかとなった.視野障害等級は前回調査4)と比較して変化がなかった.手帳申請の視野検査方法は2018年の改定から自動視野計が利用可能となったが,自動視野計の使用割合が前回調査4)39.9%よりも今回調査59.5%では有意に増加した(p<0.05).今回調査の全症例での検討5)でもGoldmann視野計が有意に減少し,自動視野計が有意に増加した(p<0.01).自動視野計は緑内障が網膜色素変性,網脈絡膜萎縮,糖尿病網膜症に比べて有意に多く使用されていた5).視野障害判定に自動視野計が使用可能となったことは緑内障患者にとって視野障害認定の面では有益であった可能性がある.視野障害等級は,Goldmann視野計は2,5級のみ,自動視野計は2,3,4,5級の症例が存在し,自動視野計はGoldmann視野計よりも詳細に視野障害の評価ができる可能性がある.一方で,今回調査では前回調査4)に比較して緑内障による手帳申請者の件数は減少していた.近年,緑内障分野の新規配合点眼薬(ブリモニジン/リパスジル配合点眼薬,2022年上市)や,低侵襲緑内障手術(microinvasiveglaucomasur-gery:MIGS)としてiStent,KahookDualBlade,谷戸式表2今回調査と前回調査との視力障害等級,視野障害等級の比較視野障害等級自動視野計Goldmann視野計(GP)2級46423級104級105級278合計75(59.5%)50(39.7%)マイクロフックロトミー,TrabExなどが導入され治療選択肢が拡大している.これらの新規の点眼薬や手術の効果のために重症例に至る症例が減少した可能性がある.今後も治療の進歩や啓発活動の普及により,緑内障患者がより早期に診断される可能性が高まり,その結果として重症例の割合や病型分布に変化が生じる可能性がある.今後も注意深い経過観察が必要である.本論文は第36回日本緑内障学会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)MatobaR,MorimotoN,KawasakiRetal:Anationwidesurveyofnewlycerti.edvisuallyimpairedindividualsinJapanforthe.scalyear2019:impactoftherevisionofcriteriaforvisualimpairmentcerti.cation..JpnJOphthal-mol67:346-352,20232)鈴木康之,山本哲也,新家眞ほか:日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)総括報告.日眼会誌112:1039-1058,20083)比嘉利沙子,井上賢治,永井瑞希ほか:緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳申請の実態調査(2015年度版)..あたらしい眼科.34:1042-1045,20174)正井智子,井上賢治,塩川美菜子ほか:緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳実態調査2021年版.あたらしい眼科.40:958-962,20235)井上賢治,鶴岡三恵子,天野史郎ほか:眼科専門病院における視覚障害による身体障害者手帳の申請(2024年).眼臨紀19:92-97,20266)安蘇谷浩乃,相馬睦,杉谷邦子ほか:眼科における身体障害者手帳申請の現況と過去との比較.日本ロービジョン学会誌.24:41-44,20247)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第5版).日眼会誌126:85-177,20228)小林大航,井上賢治,塩川美菜子:多施設における緑内障実態調査2024年版―薬物治療―.あたらしい眼科42:881-886,2025***

緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳実態調査 2021 年版

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):958.962,2023c緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳実態調査2021年版正井智子*1井上賢治*1塩川美菜子*1鶴岡三惠子*1國松志保*2田中宏樹*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科TheCurrentStatusofApplicantsforVisualImpairmentCerti.cationforGlaucomain2021SatokoMasai1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),MiekoTsuruoka1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),HirokiTanaka2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)Nishikasai-InouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:視覚障害による身体障害者手帳(以下,手帳)取得申請を行った緑内障患者について検討した.対象および方法:2021年1.12月に手帳申請を行った緑内障153例を対象とした.緑内障病型,視覚等級,視野測定方法を調査した.2015年調査と比較した.結果:病型は原発開放隅角緑内障83例(54.2%),続発緑内障34例(22.2%)などだった.視覚等級は1級19例(12.4%),2級77例(50.3%),3級4例(2.6%),4級12例(7.8%),5級41例(26.8%)だった.視野測定はGoldmann型視野計92例(60.1%),自動視野計61例(39.9%)だった.視覚障害5級が2015年調査より有意に増加した.結論:手帳申請者の緑内障病型は原発開放隅角緑内障が最多だった.視覚等級は1級と2級で60%を超えていた.視野測定はGoldmann型視野計が依然として多かった.Purpose:Toreportthestatusofvisualimpairmentcerti.cationinglaucomapatients.Methods:Atotalof153glaucomapatientswhoappliedforvisualimpairmentcerti.cationin2021wereenrolled.Thetypeofglaucoma,thegradeofvisualimpairment,andvisual.eld(VF)measurementswereinvestigated.Theresultswerethencomparedwiththoseinthe2015survey.Results:Ofthe153patients,theglaucomatypeswereprimaryopen-angleglaucoma(POAG)in54.2%,secondaryglaucomain22.2%,andother.ThegradeswereGrade1in12.4%,Grade2in50.3%,Grade3in2.6%,Grade4in7.8%,andGrade5in26.8%.TheVFmeasurementdevicesusedweretheGoldmannperimeterin60.1%andtheautomaticperimeterin39.9%.Grade5signi.cantlyincreasedcomparedwiththatinthe2015survey.Conclusion:Inthissurvey,POAGwasthemostcommonglaucomatypeobserved,thetotalofGrades1and2wasmorethan60%,andGoldmannperimetrywasstillthemostcommonmeasurementmethodused.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(7):958.962,2023〕Keywords:緑内障,視覚障害,身体障害者手帳,視野計.glaucoma,visualimpairment,physicallydisabilitycerti.cate,perimeter.はじめに厚生労働省から「身体障害者福祉法施行規則等の一部を改正する省令」が2018年4月27日に公布された.これを受けて2018年7月に視覚障害による身体障害者手帳(以下,手帳)の視力障害,視野障害の認定基準が改正された.視力障害では「両眼の視力の和」が「視力の良い方の目の視力と他方の目の視力」となった.視野障害ではGoldmann型視野計では「周辺視野角度が左右眼ともI/4視標の視野が10°以内である」が「周辺視野角度の総和が80°以下」となった.また,視能率,損失率という用語を廃止し,視野角度,視認点数を用いた明確な基準が導入された.さらにGoldmann型視野計による認定基準に加え,現在普及している自動視野〔別刷請求先〕正井智子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:SatokoMasai,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN958(110)計でも認定が可能となった.緑内障は視覚障害による手帳認定者の原因疾患の常に上位である.そこで手帳に該当する緑内障患者の実態を知ることは失明予防の観点から重要である.緑内障にはさまざまな病型があり,病型により重症度や手帳該当者に違いを有する可能性もある.そこで筆者らは,井上眼科病院において2005年1),および井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院において2012年2),2015年3)に視覚障害による手帳の申請を行った緑内障患者の実態を調査して報告した.今回筆者らは井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院で2021年に手帳の申請を行った緑内障患者の実態を再び調査した.さらに2015年に行った調査3)の結果と比較し,経年変化を検討した.I対象および方法2021年1.12月に井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に通院中の緑内障患者で,同時期に視覚障害による手帳の申請を行った153例(男性71例,女性82例)を対象とし,後ろ向きに研究を行った.年齢は41.95歳で,平均年齢は73.9±11.3歳(平均±標準偏差)であった.手帳申請時の緑内障病型,視覚障害等級,視力障害等級,視野障害等級,視野検査方法(Goldmann型視野計,自動視野計)を身体障害者診断者・意見書の控えおよび診療記録より調査した.緑内障病型別に視覚障害等級を比較した.視野検査方法別に視野障害等級を比較した.2015年に行った同様の調査3)と緑内障病型,視覚障害等級,視力障害等級,視野障害等級を比較した.統計学的検討にはIBM統計解析ソフトウェアSPSSで|2検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.なお緑内障病型については続発緑内障の原因が多岐にわたっていたため合算し,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,原発閉塞隅角緑内障,続発緑内障,発達緑内障の5群として検討した.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.II結果緑内障病型は原発開放隅角緑内障83例(54.2%),続発緑内障34例(ぶどう膜炎14例,落屑緑内障14例,ステロイド緑内障3例,血管新生緑内障2例,角膜移植後1例)(22.2%),正常眼圧緑内障29例(19.0%),原発閉塞隅角緑内障5例(3.3%),発達緑内障2例(1.3%)であった(図1).視覚障害等級は1級19例(12.4%),2級77例(50.3%),3級4例(2.6%),4級12例(7.8%),5級41例(26.8%),6級0例(0%)であった(図2).病型別の視覚障害等級は,原発開放隅角緑内障では1級11例(13.3%),2級43例(51.8%),3級2例(2.4%),4級5例(6.0%),5級22例(26.5%)であった.続発緑内障では1級4例(11.8%),2級18例(52.9%),4級4例(11.8%),5級8例(23.5%)であった.正常眼圧緑内障では1級3例(10.3%),2級13例(44.8%),3級2例(6.9%),4級2例(6.9%),5級9例(31.0%)であった.原発閉塞隅角緑内障では2級2例(40.0%),4級1例(20.0%),5級2例(40.0%)であった.発達緑内障では1級1例(50.0%),2級1例(50.0%)であった.緑内障の病型別に視覚障害等級に差はなかった(p=0.8729).視力障害で申請したのは72例,視野障害で申請したのは153例であった.その内訳は,視力障害は1級7例(9.7%),2級10例(13.9%),3級5例(6.9%),4級28例(38.9%),5級1例(1.4%),6級21例(29.2%)で,視野障害によるもの2級94例(61.4%),3級3例(2.0%),5級56例(36.6%)であった(表1).重複障害申請を行ったのは72例で,重複申請により上位等級に認定された症例は11例であった.内訳は視野障害2級・視力障害2級が7例,視野障害2級・視力障害3級が3例,視野障害3級・視力障害4級が1例であった(表2).申請に使った視野検査方法は,Goldmann型視野計92例(60.1%),自動視野計61例(39.9%)であった.Goldmann型視野計あるいは自動視野計のどちらを使用するかには明確な基準がなく,視野障害を評価する医師の判断で視野計を選択した.視野障害等級は,Goldmann型視野計は2級69例(75.0%),5級23例(25.0%),自動視野計は2級25例(41.0%),3級3例(4.9%),5級33例(54.1%)であった.視野障害2級の症例はGoldmann型視野計が自動視野計より有意に多く(p<0.0001),視野障害5級の症例は自動視野計のほうがGoldmann型視野計より有意に多かった(p=0.0003).2015年調査3)では,緑内障病型は原発開放隅角緑内障33例(54.1%),続発緑内障16例(ぶどう膜炎6例,落屑緑内障5例,血管新生緑内障4例,虹彩角膜内皮症候群1例)(26.2%),正常眼圧緑内障7例(11.5%),原発閉塞隅角緑内障4例(6.6%),発達緑内障1例(1.6%)であった(図1).視覚障害等級は1級14例(23%),2級29例(47%),3級1例(2%),4級3例(5%),5級8例(13%),6級6例(10%)であった(図2).今回調査と2015年調査6)との比較では,緑内障病型は同等(p=0.5736)(図1),視覚障害等級は5級が2015年調査3)と比べて今回調査で有意に増加し(p=0.0320),6級が2015年調査3)と比べて今回調査で有意に減少した(p=0.0004)(図2).視力障害等級は,今回調査では1級7例(9.7%),2級10例(13.9%),3級5例(6.9%),4級28例(38.9%),5級1例(1.4%),6級21例(29.2%),2015年調査3)では1級9例(20.0%),2級6例(13.3%),3級2例(4.4%),4級3例(6.7%),5級6例(13.3%),6級19例(42.2%)であった(表1).今回調査では2015年調査3)に比べて4級が有意に多く(p<0.0001),5級が有意に少な今回調査(153例)2015年調査(61例)発達緑内障(2例,1.3%)原発閉塞隅角緑内障(5例,3.3%)*p<0.05今回調査(153例)2015年調査(61例)6級*図2視覚障害等級の比較今回調査と2015年調査で今回調査の視野等級では,5級の割合が有意に増加し(p=0.0320),6級の割合が有意に減少した(p=0.0004).表1今回調査と2015年調査との視力障害等級,視野障害等級の比較等級今回調査2015年調査p視力障害1級7(9.7%)9(20.0%)0.16582級10(13.9%)6(13.3%)>0.99993級5(6.9%)2(4.4%)0.70564級28(38.9%)3(6.7%)**<0.00015級1(1.4%)6(13.3%)0.0127*6級21(29.2%)19(42.2%)0.1650視野障害3級3(2.0%)0(0.0%)>0.99994級0(0.0%)0(0.0%)─5級56(36.6%)8(19.5%)0.0406*6級0(0.0%)0(0.0%)─かった(p<0.05).視野障害等級は,今回調査では2級94例(61.4%),3級3例(2.0%),5級56例(36.6%),2015年調査3)では2級33例(80.5%),5級8例(19.5%)であった.今回調査では2015年調査3)に比べて2級が有意に少なく(p<0.05),5級が有意に多かった(p<0.05).III考按視覚障害による手帳認定者の全国規模の疫学調査が2015年4月.2016年3月の患者を対象にして行われた4).原因疾患は緑内障(28.6%),網膜色素変性(14.0%),糖尿病網膜症(12.8%),黄斑変性(8.0%)の順だった.筆者らは,井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に2021年1.12月に通院し,視覚障害による手帳を申請した患者を調査して報告した5).原因疾患は緑内障(46.5%),網膜色素変性(15.8%),網脈絡膜萎縮(9.1%),黄斑変性(8.2%)の順だった.2015.2016年に井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院で行った同様の調査6)と比較すると,今回調査5)では緑内障の割合が有意に増加した.緑内障患者の早期発見,治療薬や手術の開発,ロービジョンケアがますます重要になっている.そこで今回2021年1.12月に視覚障害による手帳を申請した緑内障患者の実態を調査した.さらに2015年に行った同様の調査3)の結果と比較した.2015年から2021年までの間に視覚障害による手帳の視力障害,視野障害の認定基準が改正された.今回はこの改正の影響も検討した.緑内障病型は今回調査と2015年調査3)で順位は同様で割合に差もなかった.引き続き,原発開放隅角緑内障や続発緑内障では,注意深い経過観察が必要である.視力障害は4級の割合が2015年調査3)6.7%より今回調査62.2%で有意に増加し(p<0.0001),5級の割合が2015年調査3)13.3%より今回調査2.2%で有意に減少した(p<0.05).視力障害認定基準の改正により2015年調査3)で5級だった症例が今回調査で4級となった可能性が考えられる.緑内障症例に限定しないが,同様の変更が既報でも多く報告されている7.10).視野検査方法は2018年から視野障害判定に利用可能となった自動視野計が39.9%で使用されていた.今回調査の全症例での検討5)では,自動視野計は緑内障が網膜色素変性,網脈絡膜萎縮に比べて有意に多く使用されていた.視野障害判定に自動視野計が使用可能となったことは,緑内障患者にとって有益であったと考えられる.視野障害等級は,Gold-mann型視野計は2,5級のみ,自動視野計は2,3,5級の症例が存在し,自動視野計のほうが詳細に視野障害を評価できる可能性がある.視野障害は5級の割合が2015年調査3)19.5%より今回調査36.6%で有意に増加し(p<0.05),2級の割合が2015年調査3)80.5%より今回調査61.4%で有意に減少していた(p<0.05).2018年の改正により,自動視野計による判定が可能となり,自動視野計による5級認定が54.1表2重複申請で上位等級となった症例視野等級視力等級視覚等級症例数(例)2級2級1級72級3級1級33級4級2級1%と多かったことが寄与したと考えられる.視覚障害等級は1級と2級を合わせて今回調査では62.7%,2015年調査3)では70%であった.緑内障の手帳申請者は依然として重症例が多いことが判明した.2015年から2021年の間に緑内障治療分野では,点眼薬として新たにラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,オミデネパグイソプロピル点眼薬,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が使用可能となった.また,手術ではmicroinvasiveglaucomasurgery(MIGS)としてiStent,KahookDualBlade,谷戸式abinternoマイクロフックロトミー,TrabExが行われるようになった.これらの新しい点眼薬や手術手技により緑内障患者の手帳申請が減ることを期待したが,今回調査では2015年調査3)に比べて,件数,割合ともに増加していた.この6年間で緑内障患者が増加したと考えるよりも,緑内障に対する啓発活動により緑内障が発見されやすくなったと思われる.また井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院ではロービジョンケアに力を入れており,光学補助具の使用や福祉施設への紹介にあたり積極的に手帳取得をすすめていることも増加の理由と考えられる.2021年に井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院に通院中で,視覚障害による手帳を申請した緑内障症例153例を調査した.病型は原発開放隅角緑内障が54.2%で最多で,視覚障害等級は2級以上が62.7%を占めていた.2015年調査3)と比較すると視覚障害5級が有意に増加したが,これは2018年の視野障害の認定基準の改訂,具体的には自動視野計による視野障害認定が可能となった影響によると考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)久保若菜,中村秋穂,石井祐子ほか:緑内障患者の身体障害者手帳の申請.臨眼61:1007-1011,20072)塩川美菜子,井上賢治,富田剛司:多施設における緑内障実態調査2012年版─薬物治療─.あたらしい眼科30:851-856,20133)比嘉利沙子,井上賢治,永井瑞希ほか:緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳申請の実態調査(2015年度版).あたらしい眼科34:1042-1045,20174)MorizaneY,MorimotoN,FujiwaraAetal:IncidenceandcausesofvisualimpairmentinJapan:the.rstnation-widecompleteenumerationsurveyofnewlycerti.edvisuallyimpairedindividuals.JpnJOphthalmol63:26-33,20195)井上賢治,鶴岡三惠子,天野史郎ほか:眼科専門病院における視覚障害による身体障害者手帳の申請(2021年).眼臨紀(印刷中)6)井上賢治,鶴岡三惠子,岡山良子ほか:眼科病院における視覚障害による身体障害者手帳申請者の現状(2015年)─過去の調査との比較─.眼臨紀10:380-385,20177)江口万祐子,杉谷邦子,相馬睦ほか:認定基準改正後の手帳取得状況とQOLの変化.日本ロービジョン学会誌20:101-104,20208)中川浩明,本田聖奈,間瀬智子ほか:視覚障害認定基準改正前後の等級とFunctionalVisionScore.眼科62:795-800,20209)黄丹,間宮紀子,武田佳代ほか:身体障害者手帳申請件数の新旧基準での比較.日本ロービジョン学会誌21:24-28,202110)相馬睦,杉谷邦子,青木典子ほか:視覚障害認定基準改正による身体障害者手帳等級への影響.日本ロービジョン学会誌21:34-38,2021***

緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳申請の実態調査(2015 年版)

2017年7月31日 月曜日

《第27回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科34(7):1042.1045,2017c緑内障患者の視覚障害による身体障害者手帳申請の実態調査(2015年版)比嘉利沙子*1井上賢治*1永井瑞希*1塩川美菜子*1鶴岡三恵子*1岡山良子*1井上順治*2堀貞夫*2石田恭子*3富田剛司*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科InvestigationofGlaucomaPatientsWhoAppliedforPhysicalDisabilityCerti.cateduringtheYear2015RisakoHiga1),KenjiInoue1),MizukiNagai1),MinakoShiokawa1),MiekoTsuruoka1),RyokoOkayama1),JunjiInoue2),SadaoHori2),KyokoIshida3)andGojiTomita3)1)InouyeEyeHospital,2)Nishikasai-InouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に外来通院中の緑内障患者で,2015年1.12月に視覚障害による身体障害者手帳の申請を行った61例(男性32例,女性29例)を後ろ向きに調査した.年齢は,80歳代が23例(38%)と最多で,70歳代が18例(29%),60歳代が15例(24%)であった.等級は,1級が14例(23%),2級が29例(47%)であり,両者で全体の70%を占めていた.病型では,原発緑内障が44例(開放隅角緑内障33例,正常眼圧緑内障7例,閉塞隅角緑内障4例)(72%),続発緑内障が16例(ぶどう膜炎6例,落屑緑内障5例,血管新生緑内障4例,虹彩角膜内皮症候群1例)(26%),発達緑内障が1例(2%)で,開放隅角緑内障が全体の54%で最多であった.視力障害と視野障害を重複申請した症例は25例であった.2005年および2012年の調査と比較し,緑内障病型,障害等級に変化はなかった.Weretrospectivelyinvestigated61patients(32male,29female)withglaucomatreatedatInouyeEyeHospitalandNishikasaiInouyeEyeHospital,whoappliedforphysicaldisabilitycerti.catesbetweenJanuaryandDecember2015.Patientsintheir80snumbered23cases(38%),intheir70s18cases(9%),andintheir60s15cases(24%).Astograde,.rstgrade(14cases,23%)andsecondgrade(29cases,47%)accountedfor70%ofthetotal.Glauco-matypeincludedprimaryglaucoma(44cases;72%),secondaryglaucoma(16cases,26%)anddevelopmentalglaucoma(1case;2%).Primaryopen-angleglaucomawasthemostfrequentglaucomatype(54%).Atotalof25patientsappliedfordouble-disordercerti.cates.Glaucomatypeandgradewerenotdi.erentbetweenresultsat2005and2012.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(7):1042.1045,2017〕Keywords:緑内障,視覚障害,身体障害者手帳,視野障害,等級.glaucoma,visualimpairement,physicallydis-abilitycerti.cate,visual.elddisturbance,grade.はじめに上眼科病院グループで行っている視覚障害による身体障害者現在,わが国における視覚障害者の原因疾患の第1位は緑手帳申請の実態調査2.5)で,緑内障は上位を占めていた(表内障である1).地域や施設の特徴により,身体障害者手帳申1).しかし,緑内障患者の身体障害者手帳申請の詳細を検討請の原因疾患が異なる可能性は否めないが,2005年から井した報告は少ない6.8).今回,視覚障害による身体障害者手〔別刷請求先〕比嘉利沙子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:RisakoHiga,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda,Tokyo101-0062,JAPAN1042(126)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(126)10420910-1810/17/\100/頁/JCOPY表1井上眼科病院グループにおける視覚障害の身体障害者手帳申請の原因疾患2005年2)2009年3)2012年4)2015年5)1位緑内障23%網膜色素変性症28%緑内障31%緑内障29%2位網膜色素変性症17%緑内障23%網膜色素変性症17%網膜色素変性症18%3位黄斑変性13%黄斑変性12%黄斑変性11%黄斑変性15%(%)602015年:61例5150384034302010312030代40代50代60代70代80代90代図1年齢分布帳取得申請を行った緑内障患者について検討した.I対象および方法井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に外来通院中の緑内障患者で,2015年1.12月に視覚障害による身体障害者手帳の申請を行った61例(男性32例,女性29例)を対象とした.年齢は74.2±10.3歳(平均値±標準偏差),33.90歳であった.実態調査は,身体障害者診断書,意見書の控えおよび診療記録をもとに後ろ向きに行った.検討項目は,1)年齢分布,2)等級の内訳,3)緑内障の病型,4)重複申請の内訳である.視覚障害は,視力障害と視野障害に区分して認定されるが,両障害が等級に該当する場合は重複申請が可能である.1)から3)の項目については,2005年および2012年に行った井上眼科病院グループの実態調査結果7,8)と比較した.ただし,2005年は,井上眼科病院のみを対象としているため,症例数が少なくなっている.統計学的解析には,c2検定を用い,有意水準はp<0.05とした.II結果1.年.齢.分.布年齢は,80歳代が23例(38%)と最多で,70歳代が18例(29%),60歳代が15例(24%)であった.その他の年代では,50歳代が3例(5%),90歳代,30歳代が各1例(2%)であった.2012年の調査では,同様に80歳代が最多で25例(34%),70歳代が22例(30%),60歳代が16例(22%)の順であった.2005年では,70歳代が最多で18例(51(%)1006級52805級4級603級402級1級2002005年2012年2015年図2等級の内訳%),60歳代が9例(26%),80歳代が5例(14%)の順であった(図1).2.等級の内訳1級が14例(23%),2級が29例(47%)で,両等級を合わせると全体の70%を占めていた.2005年,2012年と比較し,統計学的有意差はなかった(c2検定,p=0.882)(図2).3.緑内障の病型緑内障の病型は,原発緑内障が44例(72%),続発緑内障が16例(26%),発達緑内障が1例(2%)であった.原発緑内障では,開放隅角緑内障(POAG)が33例(54%),正常眼圧緑内障(NTG)が7例(11%),閉塞隅角緑内障(PACG)が4例(7%)を占めていた.続発緑内障の原因疾患は,ぶどう膜炎が6例(10%),落屑緑内障が5例(8%),血管新生緑内障が4例(6%),虹彩角膜内皮症候群が1例(2%)であった.2005年,2012年の調査でも,同様に開放隅角緑内障が最多(43,63%)で,統計学的有意差はなかった(c2検定,p=0.763)(図3).4.重複障害申請の内訳申請は,視力障害のみが20例(33%),視野障害のみが16例(26%),重複申請を行った症例が25例(41%)であった.重複申請を行った25例のうち,視野障害が視力障害より上位等級であった症例は18例(72%),視力障害が上位等級であった症例は3例(12%),両者が同等の等級であった症例は4例(16%)であった.重複申請により,4例が上位等級に認定された(図4).(127)あたらしい眼科Vol.34,No.7,20171043【2005年】白内障術後3%n=35血管新生3%外傷3%落屑ぶどう膜炎PACGPOAGNTG(%)【2012年】血管新生3%n=73落屑ぶどう膜炎PACGPOAGNTG(%)【2015年】ICE症候群2%n=61血管新生発達2%落屑ぶどう膜炎POAGPACGNTG(%)図3緑内障の病型III考按視覚障害を米国の基準に従い9),良いほうの目の矯正視力0.02以上0.3未満のロービジョンと0.01以下の失明の両者とすると,2007年現在,日本の視覚障害者数は約164万人,約19万人弱が失明と推定されている1).さらに,視覚障害者の有病率は2007年では1.3%であったが,2030年では2.0%(約200万人)に増加することが予測されている1).緑内障患者に限定した今回の調査では,手帳申請者は70歳代以上が67%,60歳代以上では91%を占めていた.同調査における年齢(平均値±標準偏差)の推移は,2005年は72.1±9.3歳7),2012年は72.4±12.5歳8),2015年は74.2±10.3歳であった.年代別のピークは,2005年では70歳代であったが,2012年と2015年では80歳代であった(図1).症例数の差もあり単純に比較することはできないが,社会の高齢化に伴い,手帳申請も高齢者が増えると予想される.n=61視野障害の等級無54327241311111213648214123456無視力障害の等級図4各症例における視力障害と視野障害の等級数字は症例数を示した.黒の塗りつぶしは,重複申請により上位等級に認定された症例を示した.病型においては,原発緑内障が約3/4に対し,続発緑内障が約1/4を占めていた.過去の調査においても,同様の割合であり,全体としては開放隅角緑内障(POAG)が最多であった.また,TajimiStudyでは,続発緑内障の有病率は0.5%と報告されているが10),身体障害者では続発緑内障の割合が多かった.同じ病型でも症例ごとで重症度は異なるが,続発緑内障では重症例が多いことが示唆された.既報と比較して病型に関しては目立った変化はみられなかった(図2).身体障害者福祉法の障害等級判定には,問題点も指摘されている.視力に関しては,左右の単純加算による妥当性,視野に関しては,半盲と10°以内の求心性狭窄の評価の妥当性などがあげられる.また,手帳交付までの流れは都道府県により多少異なる.東京都においては,東京都心身障害者福祉センターに交付申請進達される診断書は年間約1,200件であり,障害認定課障害者手帳係で手帳交付が決定されるのは600件弱とされている.残りの約半数は,センター指定医の書類判定となるが,そのうち80%が視野に関する問題であり,疾患では,とくに緑内障が問題にあげられている11).視野障害2.4級では,「ゴールドマン視野検査のI/4イソプターが10度以内」と規定がある.1995年に視覚障害認定基準が改訂され,末期の緑内障患者の視野障害は該当しやすくなった.本実態調査では,2級が最多で,3級と4級に該当する症例がなかったのは,判定基準が影響している可能性がある.各疾患の重症度に合わせて等級が判定されるべきであるが,現状では疾患によって重症度と等級が一致していない場合もあり,緑内障の視野障害の評価は依然として困難をきわめる.一方で,今回の調査では,重複申請により上位等級に認定された症例が4例(16%)あった.緑内障という疾患の特徴上,手帳申請においては,視野障害の判定は重要な要素である.本実態調査では,井上眼科病院グループに通院している緑(128)内障患者数が正確に算定できないため,緑内障患者のうち身体障害者手帳を申請した割合が明確にできず,調査の限界があった.失明予防は,われわれ医療従事者の責務であるが,高齢社会により,身体障害者手帳申請者の増加および高齢化が予想される.また,身体障害者手帳の申請により,各福祉サービスや公的援助が受けられるが,実際にロービジョンケアに結びついているか否かの実態調査も今後は必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)山田昌和:視覚障害の疾病負担本邦の視覚障害の現状と将来.日本の眼科80:1005-1009,20092)引田俊一,井上賢治,南雲幹ほか:井上眼科病院における身体障害者手帳の申請.臨眼61:1685-1688,20073)岡田二葉,鶴岡三恵子,井上賢治ほか:眼科病院における視覚障害者手帳申請者の疾患別特徴(2009年).眼臨紀4:1048-1053,20114)井上順治,鶴岡三恵子,堀貞夫ほか:眼科病院における視覚障害による身体障害者手帳の申請者の現況(2012年)─過去の調査との比較.眼臨紀7:515-520,20145)井上賢治,鶴岡三恵子,岡山良子ほか:眼科病院における視覚障害による身体障害者手帳申請者の現況(2015年)─過去の調査との比較.眼臨紀10:380-385,20176)武居敦英,平塚義宗,藤巻拓郎ほか:最近10年間に身体障害者手帳を申請した緑内障患者の背景の検討─順天堂大学と江東病院の症例から─.あたらしい眼科22:965-968,20057)久保若菜,中村秋穂,石井祐子ほか:緑内障患者の身体障害者手帳の申請.臨眼61:1007-1011,20078)瀬戸川章,井上賢治,添田尚一ほか:身体障害者手帳申請を行った緑内障患者の検討(2012年版).あたらしい眼科37:1029-1032,20149)ColenbranderA:Thevisualsystem.Chapter12inGuidestotheEvaluationofPermanentImpairment,6thedition(RodinelliReds),AmericanMedicalAssociationpublications,p281-319,UnitedStatesofAmerica,200810)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreport2:prevalenceofprimaryangleclousureandsec-ondaryglaucomainaJapanesepopulation.Ophthalmology112:1661-1669,200511)久保田伸枝:現状の身体障害者認定基準に基づく視野判定.日本の眼科84:1584-1595,2013***(129)あたらしい眼科Vol.34,No.7,20171045

身体障害者手帳申請を行った緑内障患者の検討(2012年版)

2014年7月31日 木曜日

《第24回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科31(7):1029.1032,2014c身体障害者手帳申請を行った緑内障患者の検討(2012年版)瀬戸川章*1井上賢治*1添田尚一*2堀貞夫*2富田剛司*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科InvestigationofPhysicalDisabilityCertificateDeclaredbyGlaucomaPatients(2012)AkiraSetogawa1),KenjiInoue1),ShoichiSoeda2),SadaoHori2)andGojiTomita3)1)InouyeEyeHospital,2)Nishikasai-InouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:視覚障害による身体障害者手帳申請を行った緑内障患者の検討.対象および方法:2012年1.12月に井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に通院中の緑内障患者39,745例のなかで視覚障害による身体障害者手帳の申請を行った73例(男性36例,女性37例,平均年齢72.4±12.5歳)を対象とした.申請時の緑内障病型,障害等級を調査した.さらに2005年に行った同様の調査と比較した.結果:病型は原発開放隅角緑内障が46例(63.0%)と最多であった.障害等級は1級13例(17.8%),2級40例(54.8%)とを合わせて70%を超えていた.結論:原発開放隅角緑内障で重症例が多かった.2005年の調査と比較して,緑内障病型,障害等級に変化はなかった.Purpose:Toreporttheresultsofglaucomapatients’applicationforvisuallyhandicappedstatuscertification.ObjectsandMethod:Thisretrospectivestudyinvolved73patients(36males,37females,averageage:72.4±12.5years)whoappliedforthephysicallyhandicappedpersons’cardforvisualimpairmentfromJanuarythroughDecember2012,byregularlygoingtoInouyeEyeHospitalandNishikasai-InouyeEyeHospital.Glaucomatypeandgradeattimeofapplicationwereinvestigatedandcomparedwiththesameinvestigationconductedatourinstitutionin2005.Results:Primaryopen-angleglaucomanumbered46cases(63.0%),themostnumeroustype.Theclassesexceeded70%forthecombinedfirstgrade(13cases,17.8%)andsecondgrade(40cases,54.8%).Conclusion:Incomparisonwiththe2005surveyresults,glaucomatypeandgradeatthetimeofapplicationforthephysicallydisabledcertificatedidnotchange.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(7):1029.1032,2014〕Keywords:緑内障,視覚障害,身体障害者手帳.glaucoma,visualimpairment,physicallydisabilitycertificate.はじめに井上眼科病院におけるロービジョン専門外来受診者の実態を以前に報告した1).そのなかで原因疾患の第1位は緑内障(49%),第2位は網膜色素変性症(17%)であった.斉之平ら2)は,鹿児島大学附属病院のロービジョン外来受診者の原因疾患は,第1位は黄斑変性(52%),第2位は緑内障(30%)と報告した.ロービジョン外来を受診する原因疾患として緑内障は高い割合を占めると考える.身体障害者手帳申請者は井上眼科病院での2005年調査3)では,緑内障(23%),網膜色素変性症(17%),黄斑変性(12%)が原因疾患の上位を占めていた.また井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院での2009年調査4)では,第1位は網膜色素変性症(28.0%),第2位は緑内障(22.5%),第3位は網脈絡膜萎縮(11.9%)であった.視覚障害者を対象とした調査では,大澤ら5)は,変性近視,糖尿病網膜症,緑内障が,高橋6)は糖尿病網膜症,網脈絡膜萎縮,緑内障が,谷戸ら7)は糖尿病網膜症,緑内障,加齢黄斑変性症が原因疾患の上位であると報告している.視覚障害の原因疾患としても,やはり緑内障は高い割合を占めると考える.ロービジョン外来受診者や身体障害者手帳取得者の原因疾患として緑内障は上位である.それらの緑内障患者の実態を知ることは失明予防の観点からは重要である.緑内障にはさまざまな病型があり,また病型により重症度や身体障害者手帳該当者に違いを有する可能性もある.そこで井上眼科病院において2005年に視覚障害による身体障害者手帳の申請を行った緑内障患者の実態を報告した8).今回筆者らは,井上〔別刷請求先〕瀬戸川章:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:AkiraSetogawa,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(103)1029 眼科病院と西葛西・井上眼科病院で2012年に身体障害者手帳の申請に至った疾患の第1位である緑内障患者の実態を再び調査した.さらに2005年調査8)と比較した.I対象および方法2012年1.12月までに井上眼科病院および西葛西・井上眼科病院に通院中の緑内障患者39,745例のうち,同時期に視覚障害による身体障害者手帳の申請を行った73例(男性36例,女性37例)を対象とし,後向きに研究を行った.年齢は35.92歳で,平均年齢は72.4±12.5歳(平均±標準偏差)であった.身体障害者手帳申請時の緑内障病型,視力,視野,障害等級を身体障害者診断者・意見書の控えおよび診療記録より調査した.2005年に井上眼科病院で行った同様の調査8)と緑内障病型ならびに視覚障害等級の内訳をIBM統計解析ソフトウェアSPSSでANOVAおよびc2検定を用いて比較した.有意水準はp<0.05とした.なお,緑内障病型については続発緑内障の原因が多岐にわたっていたため合算し,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,原発閉塞隅角緑内障,続発緑内障の4群として検討した.2005年調査8)と今回調査の違いは,対象者が2005年調査8)では井上眼科病院通院中の患者のみだったため35例で,今回の73例より少なかった.また,2007年にも井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院で視覚障害による身体障害者手帳申請者の調査を行った4)が,そのなかの緑内障患者についての詳細な検討は行わなかったため,表1視力障害と視野障害の内訳視力1級2級3級4級5級6級申請なし視野2級042928195級0001022申請なし8225252005年■原発開放隅角緑内障2012年n=35■正常眼圧緑内障n=73■原発閉塞隅角緑内障今回は2005年調査8)と比較した.II結果緑内障病型は原発開放隅角緑内障46例(63.0%),続発緑内障18例(ぶどう膜炎後10例,落屑緑内障6例,血管新生緑内障2例)(24.7%),原発閉塞隅角緑内障5例(6.8%),正常眼圧緑内障4例(5.5%)であった.視覚障害等級は1級13例(17.8%),2級40例(54.8%)3級2例(2.7%),4級7例(9.6%),5級6例(8.2%),6級(,)5例(6.8%)であった.病型別の障害等級は,原発開放隅角緑内障では1級10例(21.7%),2級28例(60.9%),3級1例(2.2%),4級2例(4.3%),5級3例(6.5%),6級2例(9.4%)であった.続発緑内障では1級3例(16.7%),2級8例(44.4%),3級1例(5.6%),4級3例(16.7%),5級1例(5.6%),6級2例(11.1%)であった.原発閉塞隅角緑内障では2級2例(40.0%),4級2例(40.0%),5級1例(20.0%)であった.正常眼圧緑内障では2級2例(50.0%),5級1例(25.0%),6級1例(25.0%)であった.緑内障の病型別に障害等級に差はなかった(p=0.3265).視力障害を申請したのは52例,視野障害を申請したのは49例であった.その内訳は,視力障害は1級8例,2級6例,3級4例,4級15例,5級4例,6級15例で,視野障害は2級44例,5級5例であった.重複障害申請を行ったのは28例であった.その内訳は視野障害2級・視力障害2級が4例,視野障害2級・視力障害3級が2例,視野障害2級・視力障害4級が9例,視野障害2級・視力障害5級が2例,視野障害2級・視力障害6級が8例,視野障害5級・視力障害4級が1例,視野障害5級・視力障害6級が2例であった(表1).2005年調査8)では,緑内障病型は原発開放隅角緑内障15例(42.9%),正常眼圧緑内障7例(20.0%),原発閉塞隅角緑内障4例(11.4%),血管新生緑内障4例(11.4%),落屑緑内障2例(5.7%),ぶどう膜炎による続発緑内障1例(2.93級2012年n=35■4級■5級■6級n=732005年■1級■2級42.92011.425.7635.56.824.7■続発緑内障22.942.9011.414.38.517.854.82.79.68.26.8図1緑内障病型の比較図2視覚障害等級の比較2005年調査と今回調査で緑内障病型に有意差はない.2005年調査と今回調査で視覚障害等級に有意差はない.1030あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(104) %),白内障手術による続発緑内障1例(2.9%),外傷性緑内障1例(2.9)であった.視覚障害等級は1級8例(22.9%),2級15例(42.9%),4級4例(11.4%),5級5例(14.3%),6級3例(8.5%)であった.今回と2005年調査8)との比較では,緑内障病型(p=0.066,図1)と障害等級(p=0.706,図2)ともに同等であった.III考按ロービジョンサービスの対象者は日本眼科医会では約100万人と推定している9).ロービジョン外来あるいは視覚障害の原因疾患として高い割合を占める緑内障患者の身体障害者手帳申請について今回は検討した.2012年1.12月までに井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院に通院し,視覚障害による身体障害者手帳を申請した患者は236例で,原因疾患は緑内障73例,網膜色素変性症41例,黄斑変性症25例,糖尿病網膜症22例の順に多かった.一方,井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院に同時期に通院した患者は130,281例であった.疾患別の内訳は緑内障39,745例,糖尿病網膜症18,796例,黄斑変性症11,458例,網膜色素変性症2,838例などであった.疾患別の視覚障害による身体障害者手帳の申請率は各々緑内障0.18%,網膜色素変性症1.44%,黄斑変性症0.22%,糖尿病網膜症0.12%であった.網膜色素変性症患者の割合が高く,他の疾患はほぼ同等であった.2012年1.12月までに井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院に通院した緑内障患者は39,745例であった.これらの症例の緑内障病型は不明である.一方,2012年3月12.18日までに両院を含めた39施設で行った緑内障実態調査では正常眼圧緑内障47.6%,原発開放隅角緑内障27.4%,続発緑内障10.3%,原発閉塞隅角緑内障7.6%などであった10).今回の結果と比べると,今回のほうが正常眼圧緑内障が少なく,原発開放隅角緑内障と続発緑内障が多く,原発閉塞隅角緑内障はほぼ同等であった.つまり正常眼圧緑内障では身体障害者手帳に該当するほどの重症例は少なく,原発開放隅角緑内障や続発緑内障では重症例が多いと考えられる.しかし,緑内障の病型別に障害等級に差はなく,身体障害者手帳に該当するほどの重症例においては個々の症例で重症度が異なり,一定の傾向はない.今回,視力障害の申請は1.6級まですべての等級に及んだが,視野障害の申請は2級と5級のみであった.これは1995年の身体障害者手帳の視覚障害の基準が改定され,視野障害の基準が緩やかになったが,やはり緑内障の視野障害の特徴が評価しがたいためではないかと思われる.今後,緑内障の視野障害も段階的に評価できるような,視覚障害の基準が制定されることを願う.しかし,視力障害と視野障害の重複障害により障害等級が上がった症例も6例あり,それら(105)の症例では制度の恩恵を受けていると考えられる.視覚障害を自覚してロービジョン外来を受診しても,身体障害者に該当しない患者がいる1).このことは,身体障害者手帳の申請に至っていない緑内障患者のなかにも,視覚障害の問題を抱える多くの患者が存在していることを示唆している.緑内障は末期まで視力が比較的よいのが特徴である.現在の視覚障害等級の基準だけで,患者のQOLをすべて評価することはむずかしく,視覚障害による身体障害者手帳の該当がなくてもロービジョンケアの必要性を考慮すべきである.身体障害者に該当するにもかかわらずさまざまな理由で身体障害者手帳の申請がなされていない患者についても報告されている5,7).藤田らは手帳取得に該当することを知らされていないこと,手帳を有した場合の福祉サービスについて情報が十分に伝達されていないことなどが要因の一つと報告している11).また,低い等級では該当していても申請を行わない症例もあるためと思われる.身体障害者手帳の取得は障害の告知と受容を意味するばかりでなく,ロービジョンサービスを充実させるための一つの手段である.2005年調査8)と今回調査の結果はほぼ同等であった.2005.2012年までの7年間にさまざまな緑内障点眼薬が新たに使用可能になった.しかし,依然として視覚障害による身体障害者手帳申請者の上位を緑内障が占め,緑内障病型や障害等級も変化はなかった.今後は2012年に緑内障チューブシャント手術が認可されたので緑内障による視覚障害者が減少することが期待される.2012年に井上眼科病院と西葛西・井上眼科病院に通院中で,視覚障害による身体障害者手帳を申請した緑内障患者73例について調査した.病型は原発開放隅角緑内障が63.0%で最多で,障害等級は2級以上が72.6%を占めていた.2005年調査8)との変化は特になかった.今後も社会の高齢化に伴い視覚障害者も増加すると考えられる.改めて,円滑なロービジョンケアの提供,妥当な身体障害者手帳申請が日常外来において必要であると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)鶴岡三恵子,井上賢治,若倉雅登ほか:井上眼科病院におけるロービジョン専門外来の実際.臨眼66:645-650,20122)斉之平真弓,大久保明子,坂本泰二:鹿児島大学附属病院ロービジョン外来における原因疾患別のニーズと光学的補助具.眼臨紀5:429-432,20123)引田俊一,井上賢治,南雲幹ほか:井上眼科病院における身体障害者手帳の申請.臨眼61:1685-1688,20074)岡田二葉,鶴岡三恵子,井上賢治ほか:眼科病院におけるあたらしい眼科Vol.31,No.7,20141031 視覚障害による身体障害者手帳申請者の疾患別特徴(2009年).眼臨紀4:1048-1053,20115)大澤秀也,初田高明:外来における視覚障害患者の検討.臨眼51:1186-1188,19976)高橋広:北九州市内19病院眼科における視覚障害者の実態調査.第1報.視覚障害者と日常生活訓練.臨眼52:1055-1058,19987)谷戸正樹,三宅智恵,大平明弘:視覚障害者における身体障害者手帳の取得状況.あたらしい眼科17:1315-1318,8)久保若菜,中村秋穂,石井祐子ほか:緑内障患者の身体障害者手帳の申請.臨眼61:1007-1011,20079)日本眼科医会(編):あきらめないでロービジョン─社会復帰への道.199110)塩川美菜子,井上賢治,富田剛司:多施設における緑内障実態調査2012年版─薬物治療─.あたらしい眼科30:851-856,201311)藤田昭子,斉藤久実子,安藤伸朗ほか:新潟県における病院眼科通院患者の身体障害者手帳(視覚)取得状況.臨眼53:725-728,1999***1032あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(106)