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糖尿病黄斑浮腫に対するRanibizumab単回投与後の経過に関する検討

2017年2月28日 火曜日

《第21回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科34(2):280.282,2017c糖尿病黄斑浮腫に対するRanibizumab単回投与後の経過に関する検討藤井誠士郎本田茂大塚慶子三木明子今井尚徳楠原仙太郎中村誠神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野E.ectofSingleInjectionofRanibizumabinDiabeticMacularEdemaSeishiroFujii,ShigeruHonda,KeikoOtsuka,AkikoMiki,HisanoriImai,SentaroKusuharaandMakotoNakamuraDepartmentofSurgery,DevisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するranibizumab硝子体注射(IVR)単回投与後の経過に関する検討を行った.対象および方法:対象は2014年3月.2015年4月にDMEに対してIVR0.5mgを1回施行し,2カ月以上再投与なしで経過観察した連続症例22例26眼(男性17例,女性5例).光干渉断層計にて計測した平均中心網膜厚(CRT)を,IVR投与前と投与後1,2カ月で比較し,その変化量を評価した.結果:平均CRTはIVR前と比較し,IVR後1カ月,2カ月では有意に減少した(各p=3.4×10.5,2.1×10.3).一方,IVR後1カ月と2カ月間の平均CRTには有意差を認めなかった(p=0.10).また,IVR前と比べて,IVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.結論:DMEに対するIVR単回投与で1カ月後には有意なCRTの改善が得られ,2カ月後においても治療効果は持続した.Purpose:Weevaluatedthee.ectofasingleinjectionofranibizumab(IVR)inpatientswithdiabeticmacularedema(DME).PatientsandMethods:Twenty-seveneyesof22diabeticpatients(17males,5females)withDMEdiagnosedfromMarch2014toApril2016wereenrolledinthestudy.Patientswerefollowedfor2monthsafterasingledoseof0.5mgIVR.Centralretinalthickness(CRT)wasmeasuredbyopticalcoherenttomography.Results:Asigni.cantdecreaseinaverageCRTwasobservedat1and2monthsafterIVRinjection(p=3.4×10.5,2.1×10.3).Nodi.erencewasobservedbetweenthe1and2monthperiods(p=0.10).Thepercentageofeyesshowing>30%decreaseinCRTwas35.7%at1monthand28.6%at2months.Conclusions:Asigni.cantdecreaseinCRTcanbeobtainedwithasingledoseofIVR.Thischangeismaintainedupto2monthspost-treat-ment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(2):280.282,2017〕Keywords:糖尿病黄斑浮腫,ラニビズマブ,血管内皮増殖因子,単回投与,中心網膜厚.diabeticmacularede-ma,ranibizumab,vascularendothelialgrowthfactor,singleinjection,centralretinalthickness.はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)により黄斑部網膜に細胞外液が貯留することで発症し,DRのすべての病期に生じる可能性がある.DMEの発症は,患者のQOV(qualityofvision)を低下させるため1),その治療法の確立は眼科臨床の重要な課題となっている.以前より,本症に対する治療法として,網膜光凝固,ステロイド局所投与,硝子体手術などが行われてきた.近年では,眼内の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)濃度と血管透過性やDMEの重症度にも相関が報告され2),VEGFをターゲットとする抗VEGF薬がわが国でも使用されるようになり,ranibizumab硝子体注射(injectionofranibizumab:IVR)が行われるようになった.今後,抗VEGF療法はDME治療の第一選択になると考えられている.〔別刷請求先〕藤井誠士郎:〒650-0071兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野Reprintrequests:SeishiroFujii,M.D.,DepartmentofSurgery,DevisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,7-5-2Kusunoki-cho,Chuo-ku,Kobe-shi,Hyogo-ken650-0071,JAPAN280(138)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(138)2800910-1810/17/\100/頁/JCOPY表1症例の内訳患眼(右眼)26(15眼)性別(男性)17(77.3%)年齢67.0±11.0術前logMAR視力0.42±0.35術前CRT(μm)427.8±98.9IVR前治療有*17(66.7%)IVR後PRP開始4(15.4%)IVR後硝子体手術1(3.8%)IVR後網膜局所光凝固5(19.2%)*前治療(17例)の内訳汎網膜光凝固術16網膜局所光凝固3ステロイドTenon.下注射1(同一症例での重複含む)一方で,IVRの投与回数,投与間隔に関しては,近年さまざまな臨床試験が行われているものの,確立したプロトコールはなく,さまざまであるのが現状である.筆者らは,今回,DMEに対するIVR単回施行後の経過に関する検討を行った.I目的・方法1.研究デザイン診療録に基づく後ろ向き調査.2.対象2014年3月.2015年4月にDMEに対してIVR(0.5mg)を1回のみ施行し,2カ月以上経過観察した連続症例22例26眼(男性17例,女性5例)を対象とした.そのうち,2カ月の間に硝子体手術を行ったものが1例,汎網膜光凝固術を行ったものが4例あった(表1).3.主要評価項目治療開始後1カ月,2カ月の各時点における,視力(log-MAR),および中心網膜厚(centralretinalthickness:CRT)の変化につき検討した.視力に関する統計処理は,最高矯正小数視力をlogMAR値に換算して行った.光干渉断層計(OCT)(CirrusHDR,CarlZeiss)にてretinalmap(macularcube200×200protocol)を測定し,黄斑部網膜厚マップの中心円(直径1mm)内における網膜厚をCRTとして解析に用いた.平均値の経時的比較には対応のあるt検定を使用し,p<0.05を有意水準とした.II結果全体の平均CRTは,IVR前の438.2μmに対し,IVR後1カ月で323.3μm,2カ月で359.8μmと有意に減少した(各p=3.4×10.5,2.1×10.3)(図1).一方,IVR後1カ月と2カ月間の平均CRTには有意差を認めなかった(p=0.10).Baseline1M2M図1Ranibizumab硝子体内投与後CRTの変化logMAR視力0.60.50.40.30.2全体前治療あり***p<0.05前治療なしBaseline1M2M図2logMAR視力また,IVR前と比べて,IVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は,1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.また,IVR前の治療の有無によって群分けした解析において,無治療群ではIVR後1カ月,2カ月ともに有意なCRT減少がみられたのに対し,有治療群ではIVR後1カ月のみ有意なCRT減少を認めた.視力に関しては,治療前と比べIVR後1カ月で有意に改善していたが(p=2.5×10.2)(図2),2カ月目では有意差を認めなかった.IVR後1カ月と2カ月の間では有意差はなかった.また,IVR前の治療歴があった群では1カ月後の有意な視力改善を認めたが,治療歴がなかった群では視力の有意な改善はみられなかった.III考按VEGFは虚血や高血糖で発現が増加して血管透過性亢進や血管新生に関与しており,DMEの病態において非常に重要な因子である.眼内のVEGF濃度は,血管透過性やDMEの重症度にも相関が報告されている.DMEに対しての治療はステロイド注射,網膜光凝固が一般的であったが,わが国において2014年2月に抗VEGF薬であるranibizumabが承認された.RanibizumabはVEGF-Aを阻害するモノクローナル抗体のFab断片の,さらに親和性を高めたものであ(139)あたらしい眼科Vol.34,No.2,2017281る.DMEに対するranibizumab治療はすでに多数の大規模前向き臨床試験が行われており,3年という比較的長期間の経過も報告されている.おもなものはRESOLVE試験3),READ-2試験4,5),RESTORE試験6),RISE/RIDE試験7,8),REVEAL試験9)で,DMEに対する治療効果が立証されているが,いずれも導入療法として複数回のIVRを条件としている.本研究のDMEに対するIVR単回施行後の経過に関する検討では,IVR投与前の平均CRT438.2μmに対して,IVR後1カ月では323.3μm,IVR後2カ月では359.8μmといずれも有意な減少を認めた.一方でIVR後1カ月と2カ月の平均CRT間には有意差を認めなかった.また,治療前と比べてIVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.視力に関しては,治療前と比べIVR後1カ月でに有意に改善しているが,IVR後2カ月では有意差はなかった.なかにはIVR1回施行により良好なCRT減少,視力改善が得られる症例もあるが,2カ月後にDMEが再発する例,IVRに反応しない例もみられた.現在,抗VEGF治療はDMEに対するおもな治療として使用されるようになっている.一方で,治療効果を維持するためには反復治療が必要という問題がある.今回の検討に関しても,IVR単回施行による反応は症例によってさまざまであり,今後IVR投与方法に関するさらなる検討が必要と考えられた.本研究では対象症例数が比較的少なかったため,解析項目によっては差が有意水準に達しなかった可能性もある.今後,さらに症例数を増やした検討が望まれる.IV結語DMEに対するIVR単回投与は,1カ月後の視力と黄斑浮腫を有意に改善させた.また,IVR後2カ月においても治療効果は持続した.今後,IVR投与方法に関するさらなる検討が必要と考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)WatkinsPJ:Retinopathy.BMJ326:924-926,20032)FunatsuH,YamashitaH,NomaHetal:Increasedlevelofvascularendothelialgrowthfactorandinterleukin-6intheaqueoushumorofdiabeticswithmacularedema.AmJOphthalmol133:70-77,20023)MassinP,BandelloF,GarwegJGetal:Safetyande.ca-cyofranibizumabindiabeticmacularedema(RESOLVEStudy):a12-month,randomized,controlled,double-masked,multicenterphaseIIstudy.DiabetesCare33:2399-2405,20104)NguyenQD,ShahSM,KhwajaAAetal:Two-yearout-comesoftheranibizumabforedemaofthemaculaindia-betes(READ-2)study.Ophthalmology117:2146-2151,20105)DoDV,NguyenQD,KhwajaAAetal:Ranibizumabforedemaofthemaculaindiabetesstudy.3-yeartreatment.JAMAOphthalmol131:139-145,20136)MitchellP,BandelloF,Schmidt-ErfurthUetal;RESTOREstudygroup:TheRESTOREstudy:ranibi-zumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyfordiabeticmacularedema.Ophthalmology118:615-625,20117)NguyenQD,BrownDM,MarcusDMetal;RISEandRIDEReseachGroup:Ranibizumabfordiabeticmacularedema:resultsfrom2phaseIIIrandomizedtrials:RISEandRIDE.Ophthalmology119:789-801,20108)IpMS,DomalpallyA,HopkinsJJetal:Long-terme.ectsofranibizumabondiabeticretinopathyseverityandpro-gression.ArchOphthalmol130:1145-1152,20129)OhjiM,IshibashiT,REVEALstudygroup:E.cacyandsafetyofranibizumab0.5mgasmonotherapyoradjunc-tivetolaserversuslasermonotherapyinAsianpatientswithvisualimpairmentduetodiabeticmacularedema:12-monthresultsoftheREVEALstudy.InvestOphthal-molVisSci53:ARVOE-abstract4664,2012***(140)

アジスロマイシン内服単回投与による成人クラミジア結膜炎の治療

2014年10月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科31(10):1509.1512,2014cアジスロマイシン内服単回投与による成人クラミジア結膜炎の治療中川尚中川裕子徳島診療所TreatmentofAdultChlamydialConjunctivitiswithSingle-DoseOralAzithromycinHisashiNakagawaandYukoNakagawaTokushimaEyeClinic酵素免疫法で診断された成人クラミジア結膜炎3例に対し,アジスロマイシン2g内服単回投与製剤を用いて治療した.いずれの症例も投与1週後には結膜所見の著明な改善を認めた.PCR(polymerasechainreaction)による結膜擦過物のクラミジア検出は,1週後(症例2),3週後(症例2,3)ともに陰性であった.再発の徴候はみられなかった.アジスロマイシン内服単回投与による治療は,成人クラミジア結膜炎患者の治療法として有望な選択肢の一つになりうると考えられた.ThreeadultpatientswithchlamydialconjunctivitisasdiagnosedbypositiveEIAtestweretreatedwith2gsingle-doseoralazithromycin.Conjunctivalinjectionandfolliclesmarkedlysubsidedaweekfollowingoraladministration.Polymerasechainreaction(PCR)forChlamydiatrachomatiswasnegativeinconjuctivalscrapingscollectedat1and3weeksaftertreatment.Thepatientsshowednosignsofconjunctivitisrecurrence.Single-doseadministrationoforalazithromycinisapromisingregimenforthetreatmentofadultchlamydialconjunctivitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(10):1509.1512,2014〕Keywords:クラミジア結膜炎,内服治療,アジスロマイシン,単回投与.chlamydialconjunctivitis,oraladministration,azithromycin,single-doseregimen.はじめに現在,クラミジア結膜炎の治療は感受性のある抗菌点眼薬の局所投与で行われており,オフロキサシン眼軟膏の1日5回8週間投与が標準処方として推奨されている1).しかし,成人の結膜炎患者の場合,日中の眼軟膏点入は霧視を起こすため点眼回数が守れず,結膜炎の治癒が遅れるなどの問題を生じかねない.また,代替処方であるエリスロマイシンやフルオロキノロンの点眼薬を用いたとしても1),1.2時間ごとの頻回点眼,8週間という長期の治療期間のため,途中で通院・治療を中断してしまう例がある.一方,性器クラミジア感染症の治療は,最近ではアジスロマイシンの内服が主流になっている2).その理由は,アジスロマイシンの抗クラミジア活性が高いうえ,半減期が長く長時間有効組織内濃度を維持できるため,単回投与でクラミジア感染を治療できるからである3).最低でも1週間の内服が必要であるクラリスロマイシンやミノサイクリンなどと比較し,単回投与治療では服薬コンプライアンスが大幅に上がると考えられる4,5).さらに2009年にアジスロマイシンの2g単回投与マイクロスフェア製剤が上市され,クラミジアと淋菌感染症の治療薬としてその有用性が報告されている6).アジスロマイシン内服によるクラミジア結膜炎の治療としては,海外でトラコーマの治療法として有用性が報告された7).また最近では,性感染症由来のクラミジア結膜炎,すなわち封入体結膜炎の治療としても有効であるとの報告がみられる8,9).そこで今回,成人のクラミジア結膜炎患者に対し,アジスロマイシン2g単回投与製剤を用いて治療を行い,その効果について検討した.〔別刷請求先〕中川尚:〒189-0024東村山市富士見町1-2-14徳島診療所Reprintrequests:HisashiNakagawa,M.D.,TokushimaEyeClinic,1-2-14Fujimicho,Higashimurayama-shi,Tokyo189-0024,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(87)1509 表1対象症例の臨床所見症例年齢(歳)性別左右病日(日)所見病因診断眼外症状124男性左16濾胞性結膜炎IDEIA(+)咽頭痛点状角膜浸潤252女性左24濾胞性結膜炎IDEIA(+).点状角膜浸潤320女性右9濾胞性結膜炎IDEIA(+)咽頭痛上輪部腫脹IDEIA(+):IDEIATMPCEクラミジアでクラミジア抗原陽性.表2内服治療後の経過症例年齢(歳)性別結膜所見(内服後週数)クラミジア(PCR)124男性改善(1週)NT252女性改善(1週)(.)濾胞残存(3週)(.)治癒(7週)NT320女性改善(1週)NTほぼ治癒(3週)(.)NT:施行せず,(.):陰性.I対象および方法対象は,結膜擦過物のクラミジア抗原検出(IDEIATMPCEクラミジア)で陽性を示した急性濾胞性結膜炎の3症例である.対象症例の臨床所見を表1に示す.いずれの症例も,問診上,性感染症を疑わせる症状,既往歴はなかった.診断確定後,結膜炎の感染経路,合併しうる咽頭炎や子宮頸管炎,尿道炎の説明をした.さらに,治療法として従来の点眼治療による結膜炎の治療のほか,内服による全身のクラミジア感染の治療の必要性や利点について説明し,同意を得たうえで内服治療を行うこととした.治療は,性器クラミジア感染症,クラミジア咽頭炎の治療に準じて,アジスロマイシンのマイクロスフェア製剤(ジスロマックSRR)2g1回投与で行った.点眼治療は併用しなかった.投与後定期的に経過観察を行った.可能な症例では,結膜擦過物を採取してPCR(polymerasechainreaction)による遺伝子検出(アンプリコアSTD-1R)を行い,クラミジアの消長を調べた.II結果内服治療の経過を表2にまとめた.症例1は1週後のみの来院で,クラミジア検査は実施できなかった.3例とも内服1週後の受診時には充血と眼脂の減少がみられ,瞼結膜,円蓋部の濾胞の縮小,減少が認められた(図1).上方周辺部角膜にみられた点状浸潤も消失していた(症例1,2).症例2ではこの時点でクラミジアのPCRは陰性であった.3週後のPCRは症例2,3ともに陰性であり,症例3はわずかな濾胞を残すのみで,ほぼ治癒と考えられる所見であった.症例2も7週後には残存していた濾胞も消失し,治癒と判定した(図2).腹部不快感や下痢など,内服による副作用と考えられる愁訴はなかった.III考按今回,3例の成人クラミジア結膜炎に対してアジスロマイシンのマイクロスフェア製剤2g単回投与で治療を行い,いずれの症例も投与1週後には結膜所見の著明な改善を認めた.オフロキサシンやエリスロマイシンによる点眼治療の場合,充血や眼脂の改善には1.2週間程度かかるが,アジスロマイシン内服のほうが所見の改善がやや速やかである印象をもった.また,筆者の経験では,局所投与の場合1.2週間程度でクラミジア抗原検出が陰性化するが,今回の検討でも1週後でPCRが陰性であり(症例2),内服治療は頻回点眼治療に劣らない効果があると推察された.単回投与でこのような早期のクラミジア陰性化が得られるのは,約10日間にわたり有効組織内濃度が維持される3)というアジスロマイシンの特性に由来するものと考えられる.投与3週後のPCRは検査した2例とも陰性で,炎症所見はほぼ消失し再発の徴候はみられなかった.症例2では他の2例と比べて濾胞の消失までにやや時間がかかっているが,診断が発症から約3週間と遅く,濾胞形成が他の例よりも顕著であったためと思われる.今回の結果から,アジスロマイシン内服単回投与によりクラミジア結膜炎を治癒させうると考えられた.クラミジア結膜炎のアジスロマイシン内服治療には,二つの利点が考えられる.第一に,服薬コンプライアンスの問題が解消されることである.クラミジアは発育サイクルが遅く,抗菌薬の効かない形態(基本小体)があるため,局所投与では長期・頻回投与が必要である10).しかし,現実には2.3週間の点眼で症状が軽減するため,自己判断で治療を中止してしまう患者もあり,8週間の治療を完了できる例は多くない.内服単回投与であれば,このような服薬コンプライ1510あたらしい眼科Vol.31,No.10,2014(88) aacefbd図1内服治療前後の結膜所見の変化a:症例1内服前.下瞼結膜から円蓋部にかけて,充血,充実性濾胞が観察される.b:症例1内服後1週.下瞼結膜の充血の著明な減少と濾胞の縮小が認められる.c:症例2内服前.下瞼結膜の充血と粘液膿性眼脂があり,円蓋部を中心に大型で充実性の濾胞を認める.d:症例2内服後1週.下瞼結膜の充血,眼脂は著明に改善し,濾胞も縮小,減少している.e:症例3内服前.下瞼結膜の充血があり,中等度の濾胞形成がみられる.f:症例3内服後1週.下瞼結膜に軽度の充血が残存しているが,濾胞は減少,縮小している.アンスに起因する問題は考える必要がなく,確実な治療が可能である.第二に,合併症の治療も同時に行える点である.成人のクラミジア結膜炎患者では,約半数に感染源である尿道炎,子宮頸管炎や咽頭感染の合併がみられる11).したがって,結膜炎の治療に際しては,これらの合併症を想定して内服治療を考慮する必要がある.当該診療科での検査の後に内服を行うのが理想であるが,眼科を受診した結膜炎患者に必要性を説明しても,自覚症状がないなどの理由で受診してもらえないことも多い.結果として局所投与で結膜炎だけを治療し,合併症は未治療のままになる場合もある.今回行った内服治療では,結膜炎だけでなく,性器クラミジア感染,咽頭炎などすべてを包括的に治療できるという大きな利点がある.クラミジア感染症診療では,結膜炎は全身感染症の一部分症状と捉え,結膜炎のみを治療対象とせずにクラミジアをその個体から完全に駆逐するという方針で治療を行うことが必要である.アジスロマイシン内服単回投与による結膜炎患者の治療は,そのための有望な選択肢の一つであると考えられた.文献1)中川尚:急性結膜炎.あたらしい眼科28:317-321,20112)三鴨廣繁,高橋聡:性器クラミジア感染症.性感染症診(89)図2症例2の内服治療後7週の結膜所見下瞼結膜の充血はなく,濾胞も消失している.断・治療ガイドライン2011.日本性感染症学会誌22(Suppl):60-64,20113)寺田道徳,大木恵美子,山岸由佳ほか:アジスロマイシン単回投与製剤の女性性感染症治療への臨床応用.JpnJAntibiot63:93-104,20104)三鴨廣繁,玉舎輝彦:クラミジア子宮頸管炎患者における服薬コンプライアンスの検討.日化療誌50:171-173,20025)LauCY,QureshiAK:Azithromycinversusdoxycyclineforgenitalchlamydialinfections,meta-analysisofrandomizedclinicaltrials.SexTransmDis29:497-502,2002あたらしい眼科Vol.31,No.10,20141511 6)山岸由佳,三鴨廣繁,和泉孝治ほか:生殖器の淋病,クラミジア感染症に対するアジスロマイシン2g単回投与製剤の臨床的有用性および細菌学的効果に関する検討.新薬と臨牀61:1751-1755,20127)TabbaraKF,Abu-el-AsrarA,al-OmarOetal:Singledoseazithromycininthetreatmentoftrachoma:arandomized,controlledstudy.Ophthalmology103:842-846,8)KatusicD,PetricekI,MandicZetal:Azithromycinvsdoxycyclineinthetreatmentofinclusionconjunctivitis.AmJOphthalmol135:447-451,20039)Salopek-RabaticJ:Chlamydialconjunctivitisincontactlenswearers:successfultreatmentwithsingledoseazithromycin.CLAOJ27:209-211,200110)中川尚:クラミジアトラコマティス(TRIC).眼微生物事典(大橋裕一ほか編),110-117,メジカルビュー社,199611)木全奈都子,中川尚,荒木博子ほか:成人型封入体結膜炎と上咽頭クラミジア感染.臨眼49:443-445,1995***1512あたらしい眼科Vol.31,No.10,2014(90)