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糖尿病黄斑浮腫の治療経過中に両眼の血管新生緑内障を生じた1例

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1550.1553,2018c糖尿病黄斑浮腫の治療経過中に両眼の血管新生緑内障を生じた1例呉香奈白矢智靖荒木章之加藤聡東京大学医学部附属病院眼科CACaseofBilateralNeovascularGlaucomaduringtheCourseofTreatmentforDiabeticMacularEdemaKanaKure,TomoyasuShiraya,FumiyukiArakiandSatoshiKatoCDepartmentofOphthalmology,UniversityofTokyoHospitalC糖尿病黄斑浮腫の患者(68歳,女性)に対して抗CVEGF(vascularendothelialgrowthfactor)療法を行ったところ,両眼に血管新生緑内障を生じ,治療に苦慮した症例を経験したので報告する.糖尿病網膜症に対し両眼網膜光凝固術を開始し,糖尿病黄斑浮腫の悪化を認めたため,右眼から抗CVEGF療法を開始したところ,先に左眼の血管新生緑内障を発症し,そのC6カ月後に右眼も血管新生緑内障を発症した.その後,網膜光凝固術の追加により鎮静化した.本症例では結果的に透析導入によって糖尿病黄斑浮腫の改善が得られたが,全身状態も踏まえて抗CVEGF療法の適応やタイミングを考慮する必要があると考えられた.また,抗CVEGF治療中も血管新生緑内障の発症について常に念頭に置く必要があると考えられた.CWeencounteredthecaseofa68-year-oldfemalewhodevelopedbilateralneovascularglaucoma(NVG)afterundergoinganti-vascularendothelialgrowthfactor(VEGF)therapyfordiabeticmacularedema(DME),exacerbat-edbyCpanretinalCphotocoagulation(PRP)forCdiabeticCretinopathy.CAfterCanti-VEGFCtherapyCinitiationCinCtheCrightCeye,CtheCleftCeyeCdevelopedNVG;theCrightCeyeCdevelopedCNVGC6monthsClater.CItCsubsidedCafterCadditionalCPRPCwasperformed.WefoundthatC.uorescenceangiographywasusefulinevaluatingthetherapeutice.ectofphotoco-agulation.Also,althoughinthiscaseDMEimprovementwasachievedafterdialysisinitiation,itseemsnecessarytoalsoconsidertheindicationandtimingofanti-VEGFtherapybasedonthegeneralconditionofthepatient.TheriskofNVGmustbekeptinmindwhenplanninganti-VEGFtherapy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(11):1550.1553,C2018〕Keywords:糖尿病黄斑浮腫,血管内皮増殖因子,血管新生緑内障,蛍光眼底造影検査.diabeticmacularedema,vascularendothelialgrowthfactor,neovascularglaucoma,C.uoresceinangiography.Cはじめに抗CVEGF(vascularCendothelialCgrowthfactor)薬の登場によって糖尿病黄斑浮腫の治療は変貌を遂げ,大規模臨床研究では積極的な抗CVEGF薬の投与により,従来のレーザー治療よりも浮腫軽減効果や視力改善について,より良好な成績が示されている1,2).わが国の網膜専門家に対する調査では,70%以上の医師がびまん性糖尿病黄斑浮腫に対する第一選択であると報告されている3).しかし,その一方で臨床研究の結果によるエビデンスと実臨床における治療マネージメントに相違もみられ3),臨床研究のプロトコールに沿った治療を行うことはきわめてむずかしいと考える.今回,筆者らは糖尿病黄斑浮腫の抗CVEGF療法を含めた治療経過中に網膜症が増悪し,汎網膜光凝固術(panretinalphotocoagu-lation:PRP)を行うも不十分であったため,結果として両眼の血管新生緑内障の発症をきたし,治療に苦慮した症例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕呉香奈:〒113-8655東京都文京区本郷C7-3-1東京大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:KanaKure,M.D.,DepartmentofOphthalmology,UniversityofTokyoHospital,7-3-1,Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPANC1550(102)図1初診時の前眼部と眼底写真およびOCT所見(2014年2月)図2初診時の蛍光眼底造影写真(2014年3月)両眼に広範囲の無灌流領域が存在し,右眼鼻上側に網膜新生血管を認める.I症例患者:68歳,女性.主訴:両眼の霧視,歪視.眼科既往歴:特記事項なし.全身既往歴:50歳時にC2型糖尿病を指摘される,63歳頃糖尿病性腎症の疑い.家族歴:特記事項なし.現病歴:1カ月前からの両眼の歪視と霧視で近医眼科を受診した.糖尿病による網膜症が疑われ,当院糖尿病代謝内科へ紹介.まもなく血糖コントロール目的で入院,その後網膜症精査目的でC2014年C2月に当科へ紹介となった.全身検査所見:糖尿病代謝内科初診時の採血結果は,総コレステロールC298Cmg/dl,CBUNC17.8Cmg/dl,CCreC0.64Cmg/dl,WBC7,600Cμl,RBC353万Cμl,PLT30.5万Cμl,HbA1cC11.7%.尿糖C4+,尿蛋白C2+,ケトン体(-).血圧はC160/74mmHg.頸動脈エコーでは両側に狭窄性病変なし.糖尿病治療開始後のCHbA1cの推移は,9.8%(2カ月後),7.1%(4カ月後),6.7%(6カ月後),6.4%(8カ月後)であった.当科初診時所見:視力は,右眼C0.2(0.3×+0.50D),左眼0.3(矯正不能),眼圧は右眼C15CmmHg,左眼C15CmmHgであった.両眼に軽度の白内障が認められ,両眼底に点状,しみ状の網膜出血,硬性白斑および軟性白斑が散在し,さらに光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で漿液性網膜.離を伴う黄斑浮腫を認めた(図1).また,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangiography:FA)では右眼上鼻側に網膜新生血管,さらに両眼に多象限に及ぶ広範囲の無灌流領域が確認された(図2).CII経過両眼のCPRPを開始したが,左眼C3回,右眼C2回の光凝固が終了した時点で両眼の黄斑浮腫が増悪し(図3),2014年6月には両眼視力が(0.15)まで低下した.検眼鏡的所見でも両眼に一部凝固斑が不足している領域を認めていたが,自覚的にも視力低下が著しく,PRPの完成よりも視力回復を優先し,抗CVEGF療法〔2回+PRN(proCrenata:必要時投与)〕で浮腫を軽減させたのちに再度レーザーを追加する方針とした.しかし,内科での精査受診や家庭の事情もあ図3汎網膜光凝固術開始後の両眼OCT所見(2014年5月)両眼にCPRPを行っている途中で,黄斑浮腫の増悪所見を認めた.図4汎網膜光凝固術後の蛍光眼底造影写真(2015年7月)両眼に無灌流領域が残存している.図5透析導入前(2015年9月:写真左)および透析導入後(2016年4月:写真右)の右眼OCT所見人工透析の導入とともに,速やかに黄斑浮腫の改善がみられた.り,結果的にC3カ月後のC2014年C9月に右眼ラニビズマブ(ルセンティスCR)の硝子体注射(IVR:intravitrealCranibi-zumab)を行った.右眼のCIVR施行C2週間後に左眼の眼圧がC39CmmHgと上昇し,隅角所見は開放隅角,ルベオーシスを認め,また虹彩にもルベオーシスが検出され,血管新生緑内障と診断した.当日左眼のCPRPを完成させ,その後もレーザーを追加し,眼圧は正常化した.また,右眼については予定どおり初回からC1カ月後にC2回目のCIVRを行った.網膜光凝固術の評価目的でCFAを予定したが,血圧の上昇(186/90CmmHg)のほか,両下肢の浮腫,尿量減少,全身倦怠感の出現をきたし,かつ内科入退院を繰り返したため,施行を見送った.その際,右眼の血管新生緑内障の発症リスクを考慮し,PRPを完成させた.その後の隅角検査ではルベオーシスは認めず,また両眼の黄斑浮腫は経過とともに改善傾向にあり,PRPの完成によって網膜症も鎮静化していたと判断した.右眼C2回目CIVRからC4カ月後のC2015年C2月再診時に右眼後.下白内障によって(0.2)から(0.09)へ視力が低下し,かつ眼底の透見も不十分となったため手術を検討したが,体調不良のため実際に手術を予定したのは,さらにそのC5カ月後であった.その後,2015年C7月の右眼白内障手術前日に右眼眼圧が26CmmHgと上昇,隅角所見は開放隅角,ルベオーシスは認めなかったが,虹彩にルベオーシスが確認され,血管新生緑内障と診断した.同日に透見可能な範囲でレーザーを追加し,さらに手術の影響による前房出血や網膜症活動性の上昇を危惧し,右眼にC3回目のCIVRも行った.右眼手術は合併症なく終了し,術後矯正視力は(0.2)まで回復した.全身状態の確認のもとCFAを再検したところ,検眼鏡的にはすでに両眼底にCPRPが完成したと考えられていたが,両眼に無灌流領域が残存しており(図4),この領域にレーザーを追加した.その後虹彩ルベオーシスは完全に消失し,以後眼圧は安定した.腎機能は増悪傾向にあり,2016年C3月に透析導入となったが(右眼白内障手術C9カ月後),右眼のわずかに残存していた黄斑浮腫も改善が得られた(図5).左眼は薬物療法を施行せずに黄斑浮腫が改善,経過中に後.下白内障が進行したため手術を施行し,視力は両眼(0.4)が得られている.CIII考按抗CVEGF療法によって網膜症の改善や新生血管が抑制されることが示されており4,5),本症例においても抗CVEGF療法を行った眼は僚眼と比較して一定期間が経過してから血管新生緑内障を発症しており,網膜症の活動性が抑制されていた可能性が考えられる.すなわち抗CVEGF療法は,治療を中断した際に活動性が再燃することが懸念されるため,虚血網膜の有無に対しても十分に評価することが重要である.また,全身状態が悪化した場合,投与を継続できなくなる可能性も考慮し,網膜光凝固術を早めに行い,虚血の進行を防ぐことが重要であると考えた.血管新生緑内障を発症した場合には徹底的したCPRPが必要とされ6),本症例でも検眼鏡的には完成していた.しかし,FAによって無灌流領域の残存が確認され,その有用性を改めて認識した.ただし,本症例のように高血圧を合併している症例に対してCFAを行う際には,十分に血圧をコントロールすることが勧められている7).しかし,糖尿病患者では,その他にも全身疾患を合併していることもあり,本来必要な情報であるCFAを施行できない場合もある.近年,造影剤を必要としないCOCTangiographyが注目されているが,市販機種の画角は最大C10C×10mmからC12C×9Cmm程度であり,眼底周辺部において十分虚血の評価が可能な技術には至っていない.今後はさらなる広画角化や精度の向上が期待される.本症例では最終的に透析導入によって残存していた右眼黄斑浮腫の改善が得られた.糖尿病腎症による腎機能低下により,全身血管の血漿膠質浸透圧が低下する.透析導入することで浸透圧が改善され,結果的に黄斑浮腫が改善するといわれている.透析導入することでを糖尿病黄斑浮腫を治療するうえで,透析導入が予測される症例については,抗CVEGF療法の適応やタイミングを再考慮する必要があり,また抗VEGF治療中も血管新生緑内障の発症について常に念頭に置き,適宜隅角検査を行う必要があると考えられた.文献1)ElmanCMJ,CAielloCLP,CBresslerCNMCetal:RandomizedCtrialevaluatingranibizumabpluspromptordeferredlaserorCtriamcinoloneCplusCpromptClaserCforCdiabeticCmacularCedema.OphthalmologyC117:1064-1077,C20102)KorobelnikJF,DoDV,Schmidt-ErfurthUetal:Intravit-reala.iberceptfordiabeticmacularedema.Ophthalmolo-gyC121:2247-2254,C20143)OguraY,ShiragaF,TerasakiHetal:Clinicalpracticepat-terninmanagementofdiabeticmacularedemainJapan:CsurveyCresultsCofCJapaneseCretinalCspecialists.CJpnCJCOph-thalmolC61:43-50,C20174)BrownCDM,CNguyenCQD,CMarcusCDMCetal:Long-termCoutcomesCofCranibizumabCtherapyCforCdiabeticCmacularedema:theC36-monthCresultsCfromCtwoCphaseCIIItrials:CRISEandRIDE.OphthalmologyC120:2013-2022,C20135)HeierCJS,CKorobelnikCJF,CBrownCDMCetal:IntravitrealA.iberceptforDiabeticMacularEdema:148-WeekResultsfromtheVISTAandVIVIDStudies.OphthalmologyC123:C2376-2385,C20166)安藤文隆:糖尿病網膜症の治療の進歩血管新生緑内障の治療.眼科C39:41-47,C19977)湯澤美都子,小椋祐一郎,高橋寛二ほか:眼底血管造影実施基準(改訂版).日眼会誌C115:67-75,C2011***

糖尿病黄斑浮腫に対するRanibizumab単回投与後の経過に関する検討

2017年2月28日 火曜日

《第21回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科34(2):280.282,2017c糖尿病黄斑浮腫に対するRanibizumab単回投与後の経過に関する検討藤井誠士郎本田茂大塚慶子三木明子今井尚徳楠原仙太郎中村誠神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野E.ectofSingleInjectionofRanibizumabinDiabeticMacularEdemaSeishiroFujii,ShigeruHonda,KeikoOtsuka,AkikoMiki,HisanoriImai,SentaroKusuharaandMakotoNakamuraDepartmentofSurgery,DevisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するranibizumab硝子体注射(IVR)単回投与後の経過に関する検討を行った.対象および方法:対象は2014年3月.2015年4月にDMEに対してIVR0.5mgを1回施行し,2カ月以上再投与なしで経過観察した連続症例22例26眼(男性17例,女性5例).光干渉断層計にて計測した平均中心網膜厚(CRT)を,IVR投与前と投与後1,2カ月で比較し,その変化量を評価した.結果:平均CRTはIVR前と比較し,IVR後1カ月,2カ月では有意に減少した(各p=3.4×10.5,2.1×10.3).一方,IVR後1カ月と2カ月間の平均CRTには有意差を認めなかった(p=0.10).また,IVR前と比べて,IVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.結論:DMEに対するIVR単回投与で1カ月後には有意なCRTの改善が得られ,2カ月後においても治療効果は持続した.Purpose:Weevaluatedthee.ectofasingleinjectionofranibizumab(IVR)inpatientswithdiabeticmacularedema(DME).PatientsandMethods:Twenty-seveneyesof22diabeticpatients(17males,5females)withDMEdiagnosedfromMarch2014toApril2016wereenrolledinthestudy.Patientswerefollowedfor2monthsafterasingledoseof0.5mgIVR.Centralretinalthickness(CRT)wasmeasuredbyopticalcoherenttomography.Results:Asigni.cantdecreaseinaverageCRTwasobservedat1and2monthsafterIVRinjection(p=3.4×10.5,2.1×10.3).Nodi.erencewasobservedbetweenthe1and2monthperiods(p=0.10).Thepercentageofeyesshowing>30%decreaseinCRTwas35.7%at1monthand28.6%at2months.Conclusions:Asigni.cantdecreaseinCRTcanbeobtainedwithasingledoseofIVR.Thischangeismaintainedupto2monthspost-treat-ment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(2):280.282,2017〕Keywords:糖尿病黄斑浮腫,ラニビズマブ,血管内皮増殖因子,単回投与,中心網膜厚.diabeticmacularede-ma,ranibizumab,vascularendothelialgrowthfactor,singleinjection,centralretinalthickness.はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)により黄斑部網膜に細胞外液が貯留することで発症し,DRのすべての病期に生じる可能性がある.DMEの発症は,患者のQOV(qualityofvision)を低下させるため1),その治療法の確立は眼科臨床の重要な課題となっている.以前より,本症に対する治療法として,網膜光凝固,ステロイド局所投与,硝子体手術などが行われてきた.近年では,眼内の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)濃度と血管透過性やDMEの重症度にも相関が報告され2),VEGFをターゲットとする抗VEGF薬がわが国でも使用されるようになり,ranibizumab硝子体注射(injectionofranibizumab:IVR)が行われるようになった.今後,抗VEGF療法はDME治療の第一選択になると考えられている.〔別刷請求先〕藤井誠士郎:〒650-0071兵庫県神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野Reprintrequests:SeishiroFujii,M.D.,DepartmentofSurgery,DevisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,7-5-2Kusunoki-cho,Chuo-ku,Kobe-shi,Hyogo-ken650-0071,JAPAN280(138)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(138)2800910-1810/17/\100/頁/JCOPY表1症例の内訳患眼(右眼)26(15眼)性別(男性)17(77.3%)年齢67.0±11.0術前logMAR視力0.42±0.35術前CRT(μm)427.8±98.9IVR前治療有*17(66.7%)IVR後PRP開始4(15.4%)IVR後硝子体手術1(3.8%)IVR後網膜局所光凝固5(19.2%)*前治療(17例)の内訳汎網膜光凝固術16網膜局所光凝固3ステロイドTenon.下注射1(同一症例での重複含む)一方で,IVRの投与回数,投与間隔に関しては,近年さまざまな臨床試験が行われているものの,確立したプロトコールはなく,さまざまであるのが現状である.筆者らは,今回,DMEに対するIVR単回施行後の経過に関する検討を行った.I目的・方法1.研究デザイン診療録に基づく後ろ向き調査.2.対象2014年3月.2015年4月にDMEに対してIVR(0.5mg)を1回のみ施行し,2カ月以上経過観察した連続症例22例26眼(男性17例,女性5例)を対象とした.そのうち,2カ月の間に硝子体手術を行ったものが1例,汎網膜光凝固術を行ったものが4例あった(表1).3.主要評価項目治療開始後1カ月,2カ月の各時点における,視力(log-MAR),および中心網膜厚(centralretinalthickness:CRT)の変化につき検討した.視力に関する統計処理は,最高矯正小数視力をlogMAR値に換算して行った.光干渉断層計(OCT)(CirrusHDR,CarlZeiss)にてretinalmap(macularcube200×200protocol)を測定し,黄斑部網膜厚マップの中心円(直径1mm)内における網膜厚をCRTとして解析に用いた.平均値の経時的比較には対応のあるt検定を使用し,p<0.05を有意水準とした.II結果全体の平均CRTは,IVR前の438.2μmに対し,IVR後1カ月で323.3μm,2カ月で359.8μmと有意に減少した(各p=3.4×10.5,2.1×10.3)(図1).一方,IVR後1カ月と2カ月間の平均CRTには有意差を認めなかった(p=0.10).Baseline1M2M図1Ranibizumab硝子体内投与後CRTの変化logMAR視力0.60.50.40.30.2全体前治療あり***p<0.05前治療なしBaseline1M2M図2logMAR視力また,IVR前と比べて,IVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は,1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.また,IVR前の治療の有無によって群分けした解析において,無治療群ではIVR後1カ月,2カ月ともに有意なCRT減少がみられたのに対し,有治療群ではIVR後1カ月のみ有意なCRT減少を認めた.視力に関しては,治療前と比べIVR後1カ月で有意に改善していたが(p=2.5×10.2)(図2),2カ月目では有意差を認めなかった.IVR後1カ月と2カ月の間では有意差はなかった.また,IVR前の治療歴があった群では1カ月後の有意な視力改善を認めたが,治療歴がなかった群では視力の有意な改善はみられなかった.III考按VEGFは虚血や高血糖で発現が増加して血管透過性亢進や血管新生に関与しており,DMEの病態において非常に重要な因子である.眼内のVEGF濃度は,血管透過性やDMEの重症度にも相関が報告されている.DMEに対しての治療はステロイド注射,網膜光凝固が一般的であったが,わが国において2014年2月に抗VEGF薬であるranibizumabが承認された.RanibizumabはVEGF-Aを阻害するモノクローナル抗体のFab断片の,さらに親和性を高めたものであ(139)あたらしい眼科Vol.34,No.2,2017281る.DMEに対するranibizumab治療はすでに多数の大規模前向き臨床試験が行われており,3年という比較的長期間の経過も報告されている.おもなものはRESOLVE試験3),READ-2試験4,5),RESTORE試験6),RISE/RIDE試験7,8),REVEAL試験9)で,DMEに対する治療効果が立証されているが,いずれも導入療法として複数回のIVRを条件としている.本研究のDMEに対するIVR単回施行後の経過に関する検討では,IVR投与前の平均CRT438.2μmに対して,IVR後1カ月では323.3μm,IVR後2カ月では359.8μmといずれも有意な減少を認めた.一方でIVR後1カ月と2カ月の平均CRT間には有意差を認めなかった.また,治療前と比べてIVR後CRTが30%以上減少した症例の割合は1カ月で35.7%,2カ月で28.6%であった.視力に関しては,治療前と比べIVR後1カ月でに有意に改善しているが,IVR後2カ月では有意差はなかった.なかにはIVR1回施行により良好なCRT減少,視力改善が得られる症例もあるが,2カ月後にDMEが再発する例,IVRに反応しない例もみられた.現在,抗VEGF治療はDMEに対するおもな治療として使用されるようになっている.一方で,治療効果を維持するためには反復治療が必要という問題がある.今回の検討に関しても,IVR単回施行による反応は症例によってさまざまであり,今後IVR投与方法に関するさらなる検討が必要と考えられた.本研究では対象症例数が比較的少なかったため,解析項目によっては差が有意水準に達しなかった可能性もある.今後,さらに症例数を増やした検討が望まれる.IV結語DMEに対するIVR単回投与は,1カ月後の視力と黄斑浮腫を有意に改善させた.また,IVR後2カ月においても治療効果は持続した.今後,IVR投与方法に関するさらなる検討が必要と考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)WatkinsPJ:Retinopathy.BMJ326:924-926,20032)FunatsuH,YamashitaH,NomaHetal:Increasedlevelofvascularendothelialgrowthfactorandinterleukin-6intheaqueoushumorofdiabeticswithmacularedema.AmJOphthalmol133:70-77,20023)MassinP,BandelloF,GarwegJGetal:Safetyande.ca-cyofranibizumabindiabeticmacularedema(RESOLVEStudy):a12-month,randomized,controlled,double-masked,multicenterphaseIIstudy.DiabetesCare33:2399-2405,20104)NguyenQD,ShahSM,KhwajaAAetal:Two-yearout-comesoftheranibizumabforedemaofthemaculaindia-betes(READ-2)study.Ophthalmology117:2146-2151,20105)DoDV,NguyenQD,KhwajaAAetal:Ranibizumabforedemaofthemaculaindiabetesstudy.3-yeartreatment.JAMAOphthalmol131:139-145,20136)MitchellP,BandelloF,Schmidt-ErfurthUetal;RESTOREstudygroup:TheRESTOREstudy:ranibi-zumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyfordiabeticmacularedema.Ophthalmology118:615-625,20117)NguyenQD,BrownDM,MarcusDMetal;RISEandRIDEReseachGroup:Ranibizumabfordiabeticmacularedema:resultsfrom2phaseIIIrandomizedtrials:RISEandRIDE.Ophthalmology119:789-801,20108)IpMS,DomalpallyA,HopkinsJJetal:Long-terme.ectsofranibizumabondiabeticretinopathyseverityandpro-gression.ArchOphthalmol130:1145-1152,20129)OhjiM,IshibashiT,REVEALstudygroup:E.cacyandsafetyofranibizumab0.5mgasmonotherapyoradjunc-tivetolaserversuslasermonotherapyinAsianpatientswithvisualimpairmentduetodiabeticmacularedema:12-monthresultsoftheREVEALstudy.InvestOphthal-molVisSci53:ARVOE-abstract4664,2012***(140)

糖尿病網膜症術後に硝子体出血が遷延化した症例のVascular Endothelial Growth Factor濃度

2009年2月28日 土曜日

———————————————————————-Page1260あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009(00)260(122)0910-1810/09/\100/頁/JCLS14回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科26(2):260262,2009cはじめに増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に硝子体出血が遷延化する症例がある.活動性の高い症例や若年者などに多い印象を受けるが,その遷延化の原因として術後に新生血管が維持されている可能性も否定できない.新生血管の維持には血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)が必要である1).VEGFはIL(インターロイキン)-1,TNF(腫瘍壊死因子)-aなどの炎症性サイトカインで誘導されることが知られており2,3),手術侵襲や術中の光凝固が炎症を惹起し,活動性の高い症例では術後VEGFが上昇し,新生血管が維持され術後の硝子体出血を遷延化させている可能性がある.しかし,硝子体術後に硝子体液のVEGF濃度を検討した報告は少なくその詳細は不明である.今回,糖尿病網膜症術後に硝子体出血の遷延化がみられた症例の初回手術時と再手術時に硝子体液を採取し,そのVEGF濃度を検討したので報告する.〔別刷請求先〕小林貴樹:〒020-8505盛岡市内丸19-1岩手医科大学医学部眼科学講座Reprintrequests:TakakiKobayashi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,IwateMedicalUniversitySchoolofMedicine,19-1Uchimaru,Morioka020-8505,JAPAN糖尿病網膜症術後に硝子体出血が遷延化した症例のVascularEndothelialGrowthFactor濃度小林貴樹早坂朗石部禎黒坂大次郎岩手医科大学医学部眼科学講座VascularEndothelialGrowthFactorLevelofVitreousHumorinPersistentVitreousHemorrhageafterVitrectomyinProliferativeDiabeticRetinopathyTakakiKobayashi,AkiraHayasaka,TadashiIshibeandDaijiroKurosakaDepartmentofOphthalmology,IwateMedicalUniversitySchoolofMedicine目的:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後にみられる硝子体出血の遷延化に血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)が関与しているかどうかを検討した.方法:増殖糖尿病網膜症に対し硝子体手術を施行し,初回手術後に硝子体出血が遷延化した症例のうち,VEGF濃度の測定が可能であった5例5眼を対象とした.初回手術後,316週に再手術を行い,各手術時に硝子体液を採取し,VEGF濃度をenzyme-linkedimmunosor-bentassay(ELISA)法で測定した.結果:VEGF濃度は初回手術時1,510±1,518.1pg/ml,再手術時62.6±86.5pg/mlであり,再手術時のVEGF濃度は低下していた.結論:今回の症例では硝子体液中のVEGF濃度は術後316週の時点で著しく低下しており,硝子体出血の遷延化にVEGF濃度は影響していない可能性がある.Todeterminewhethervitreoushumorvascularendothelialgrowthfactor(VEGF)levelisrelatedtopersistentvitreoushemorrhageaftervitrectomyforproliferativediabeticretinopathy,weevaluated5eyesof5patientswhounderwentvitrectomyforproliferativediabeticretinopathyandhadpersistentvitreoushemorrhageafterthepri-maryoperation.Thepatientsunderwentreoperationat3-16weeksaftertheprimaryoperation.Weobtainedvit-reoushumorateachoperationandmeasuredVEGFlevelbyusingtheenzyme-linkedimmunosorbentassaymeth-od.VEGFlevelwas1,510±1,518.1pg/mlattheprimaryoperationandhaddecreasedto62.6±86.5pg/mlatreoperation.TheVEGFlevelinthevitreoushumorofthesecasesdecreasedremarkablyat3-16weeksaftertheprimaryoperation.ThereisapossibilitythatVEGFleveldoesnotinuencetheprotractionofpostoperativevitre-oushemorrhage.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(2):260262,2009〕Keywords:糖尿病網膜症,血管内皮増殖因子,術後硝子体出血,硝子体.diabeticretinopathy,vascularendothelialgrowthfactor,postoperativevitreoushemorrhage,vitreous.———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009261(123)I対象および方法1.対象2004年10月2007年3月の間に岩手医科大学眼科で硝子体手術を施行し,術後に硝子体出血が2週間以上遷延化した糖尿病網膜症症例のうち,初回手術時と再手術時の硝子体液のVEGF濃度を測定しえた5例5眼を対象とした.内訳は男性3例3眼,女性2例2眼,年齢2864歳(平均46.4±14.2歳)であった.増殖糖尿病網膜症5例5眼,うち1例1眼で血管新生緑内障を伴っていた.初回手術の216週に再手術を行った.当科では硝子体術後に硝子体手術の遷延化がみられた場合,初回手術の23週後に再手術を行っているが,症例4ではしばらく再手術の希望がなかったために16週後に施行することになった.出血傾向,抗凝固薬の投与が行われている症例はなかった.2.方法VEGF濃度の測定はQuantikineRhumanVEGFimmuno-assayキット(R&DSystems社,MN,USA)を用いて,enzyme-linkedimmunosorbentassay(ELISA)法で行った.すなわち,抗VEGFモノクローナル抗体が固相化されたプレートの各ウェルに検体および標準液を注入し,室温で2時間抗原抗体反応を行った.結合しなかった抗原を十分に洗浄した後,ペルオキシダーゼ標識抗VEGFポリクローナル抗体を加え室温で2時間反応させた.過剰な抗体を十分洗浄して除去した後,酵素反応基質液で発色させ,各ウェルの吸光度を測定した.標準液の測定値から検量線を作成し,各検体のVEGF濃度を算出した.硝子体の採取については,全症例でインフォームド・コンセントを得て行った.方法は,初回手術の場合は硝子体手術を行う際,毛様体扁平部に3ポートを作製した後,眼内灌流を行う前にポリプロピレンチューブを装着した硝子体カッターを眼内に挿入し,硝子体をチューブ内に吸引し,そこから0.20.6ml採取した.再手術の場合は,手術の際にツベルクリンシリンジ付き30ゲージ針を毛様体扁平部に刺入し硝子体液を0.10.2ml採取した.検体は速やかに冷凍し,測定まで80℃で凍結保存した.3.統計解析初回手術時と再手術時の硝子体液中VEGF濃度の統計解析にはMann-Whitney’sUtestを用いた.II結果各検体のVEGF濃度の結果を表1に示した.初回手術時の硝子体中VEGF濃度は64.33,080pg/ml(1,510±1,518.1pg/ml)であった.再手術時に採取された硝子体液のVEGF濃度は15.6134pg/ml(62.6±86.5pg/ml)で,初回手術時に対する再手術時のVEGF濃度の割合は7.825.5%であった.全例で初回手術時よりVEGF濃度は有意に低下していた(p<0.05).III考按糖尿病網膜症の硝子体手術後に硝子体出血が遷延化する症例では,手術時の網膜光凝固による網膜のablationが不十分でVEGF分泌が維持され,新生血管が消退していない可能性があるのみならず,手術侵襲により炎症が惹起され一過性にVEGF発現が増加し増殖性変化が高まっている可能性も否定できない2,3).Itakuraら4)はそれを裏付けるように術後536日の長期にわたり硝子体中にVEGFが高いレベルで遷延化して保たれていることを報告している.筆者らは術後再出血を起こす症例では,再増殖や前部硝子体線維血管増殖(anteriorhyaloidalbrovascularproliferation:AHFVP)に移行する例があり,そのような例では術中の徹底した網膜光凝固により網膜のablationを行っても術後VEGF濃度が上昇していることを報告した(第59回日本臨床眼科学会,2005).また,遷延化が長引けばVEGFが依然上昇しており,増殖性変化が進行するのではないかといった危惧も出てくると思われる.そこで今回,術後硝子体出血が遷延化した症例のVEGF濃度を調査し,初回手術時とどのように違っているかを検討した.しかしながら今回の症例では硝子体液中のVEGF濃度は術後216週の時点で著しく低下しており,そのレベルは初回手術時の4.324.5%になっていることが明らかとなっ表1各症例の概要と硝子体液のvascularendothelialgrowthfactor(VEGF)濃度症例年齢・性疾患再手術までの期間初回手術時のVEGF(pg/ml)再手術時のVEGF(pg/ml)初回手術時のVEGF濃度に対する再手術時のVEGF濃度の割合(%)128歳・男性PDR2週1,87045924.5264歳・女性PDR3週64.315.624.3346歳・女性PDR2週1,4101107.8438歳・男性PDR2週38152.213.7556歳・男性NVG+PDR16週3,0801344.4PDR:増殖糖尿病網膜症,NVG:血管新生緑内障.———————————————————————-Page3262あたらしい眼科Vol.26,No.2,2009(124)た.このことから初回手術により再手術時にはVEGF分泌が大幅に抑制されていたことがわかり,硝子体出血の遷延化にVEGF濃度は大きく影響していないことが考えられる.今回の症例でVEGF濃度が低下したにもかかわらず硝子体出血が遷延化した原因については,消退途中の新生血管からや術中の網膜裂孔から術後も出血が持続した可能性が考えられる.今回検討した症例のなかにも術中裂孔が生じたものが2例存在した.出血傾向のある症例や抗凝固剤を服用している症例はなかったが,何らかの原因で止血しにくい状態にあったものと思われる.また,新生血管の維持にはVEGFの供給が必要である1)が,網膜光凝固によってVEGF供給が減少しても新生血管の消退までにタイムラグがあり,出血が遷延化している可能性もある.VEGF濃度は個々の症例によってバリエーションがあり,正常値を規定するのは困難であると思われる.たとえば,症例2では64.2pg/mlで増殖性変化をきたしていたのに対し,症例5では3,080pg/mlであった.VEGFは糖尿病網膜症を悪化させる主要因であるが,レセプターなどの感受性の問題や抑制因子の問題5,6),他の増殖因子の介入7,8)などでどの値までVEGFレベルを下げればよいのかは症例ごとに変化してくるものと考えられる.今回は糖尿病網膜症の主要因であるとされているVEGFのみを検討したが,その他の因子により新生血管が維持されている可能性は否定できず,今後の検討が必要である.今回対象になった症例はすべて初回手術時に網膜最周辺部まで徹底した光凝固を施行した.Itakuraらは術後長期にわたり硝子体中にVEGFが高いレベルで保たれていると報告しているが,そのなかで網膜光凝固をどの程度どの範囲まで施行したかについては触れられておらず4),光凝固による網膜ablationの程度の違いが今回の結果との違いになったことが考えられる.今回の結果より,硝子体出血が遷延化した症例の再手術を行う場合は,初回手術で最周辺部までの徹底した光凝固を施行したのであれば,明らかに不足している箇所への追加にとどめ,さらなる鎮静化目的の積極的な凝固斑の間隙への追加は必要ないものと考えられる.光凝固の追加でVEGFの分泌を減少させることには症例によっては限界があると思われ,過剰な凝固は視機能の低下を招くおそれも考えられる.また,超音波エコーなどで網膜離や再増殖が確認されない症例では再手術をせず,しばらく経過をみるのも選択肢の一つであると思われる.今回の症例でも,先に測定しえた症例2,3,5で再手術時にVEGF濃度が上昇していないことがわかっていたので,症例1,4では再手術時に明らかに少ない箇所に光凝固をわずかに追加するにとどめた.しかし,再出血や網膜症の再燃はみられず良好な経過をたどっている.今回の症例は術後遷延化した硝子体出血の症例であった.手術で硝子体出血が消退し,しばらく沈静化していたものに再出血を起こした場合は,今回とは異なりVEGFが上昇している可能性もあると考えられる.これについては今後の検討が必要であるが,AHFVPや強膜創血管新生など重篤な変化に移行している場合もあり注意が必要であると思われる.文献1)TolentinoMJ,MillerJW,GragoudasESetal:Vascularendothelialgrowthfactorissucienttoproduceirisneo-vascularizationandneovascularglaucomainanonhumanprimate.ArchOphthalmol114:964-970,19962)KvantaA:Expressionandregulationofvascularendo-thelialgrowthfactorinchoroidalbroblasts.CurrEyeRes14:1015-1020,19953)YoshidaS,OnoM,ShonoTetal:Involvementofinter-leukin-8,vascularendothelialgrowthfactor,andbasicbroblastgrowthfactorintumornecrosisfactoralpha-dependentangiogenesis.MolCellBiol17:4015-4023,19974)ItakuraS,KishiN,KotajimaMetal:Persistentsecretionofvascularendothelialgrowthfactorintothevitreouscavityinproliferativediabeticretinopathyaftervitrecto-my.Ophthalmology111:1880-1884,20045)SprangerJ,OsterhoM,ReimannMetal:Lossoftheantiangiogenicpigmentepithelium-derivedfactorinpatientswithangiogeniceyedisease.Diabetes50:2641-2645,20016)OgataN,NishikawaM,NishimuraTetal:Unbalancedvitreouslevelsofpigmentepithelium-derivedfactorandvascularendothelialgrowthfactorindiabeticretinopathy.AmJOphthalmol134:348-353,20027)FunatsuH,YamashitaH,NakanishiYetal:AngiotensinIIandvascularendothelialgrowthfactorinthevitreousuidofpatientswithproliferativediabeticretinopathy.BrJOphthalmol86:311-315,20028)RuberteJ,AyusoE,NavarroMetal:IncreasedocularlevelsofIGF-1intransgenicmiceleadtodiabetes-likeeyedisease.JClinInvest113:1149-1157,2004***

硝子体手術後に発症した血管新生緑内障に対しBevacizumab(AvastinR)の硝子体内注射を施行した4例

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(111)17190910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(12):17191723,2008c〔別刷請求先〕北善幸:〒153-8515東京都目黒区大橋2-17-6東邦大学医療センター大橋病院第2眼科Reprintrequests:YoshiyukiKita,M.D.,SecondDepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter,2-17-6Ohashi,Meguro-ku,Tokyo153-8515,JAPAN硝子体手術後に発症した血管新生緑内障に対しBevacizumab(AvastinR)の硝子体内注射を施行した4例北善幸高木誠二北律子富田剛司東邦大学医学部眼科学第2講座FourCasesReceivingIntravitrealBevacizumab(AvastinR)forTreatmentofNeovascularGlaucomaafterUndergoingVitrectomyYoshiyukiKita,SeijiTakagi,RitsukoKitaandGojiTomitaSecondDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine硝子体手術を施行後に血管新生緑内障(NVG)となった症例に対しbevacizumabの硝子体内注射(IVB)を施行し,眼圧と隅角新生血管に対する効果を検討した.増殖糖尿病網膜症のため硝子体手術を施行後,NVGとなった4例4眼を対象とし,IVB(1.25mg/0.05ml)を施行した.術前術後の眼圧および隅角所見を比較した.平均年齢61.0±7.8歳.NVGステージは全例開放隅角緑内障期であった.術前の汎網膜光凝固は全例で完成.注射後,隅角新生血管は隅角鏡検査にて減少が3眼,消失が1眼であった.初回注射前の眼圧は,最大耐容眼圧下降治療にて平均27.8±7.4mmHg.初回注射後の眼圧は平均23.8±6.6mmHgであり,全例で眼圧は下降した.1眼は眼圧20mmHg以下となった.他の3眼のうち1眼はその後3回硝子体内注射を施行したが,眼圧コントロールは不良となった.無硝子体眼ではIVBによる眼圧下降効果は十分ではなかったが,隅角新生血管の減少や眼圧下降を認めることから本治療は,線維柱帯切除術などの観血的治療までの間の補助治療として検討に値すると思われる.Wedescribeacaseseriesofneovascularglaucoma(NVG)causedbyproliferativediabeticretinopathy(PDR)aftervitrectomy,whichweretreatedwithintravitrealbevacuzumab(IVB).FourconsecutivepatientswithNVGduetoPDR,arefractory,asymptomaticelevationofintraocularpressure(IOP),andpronouncedanteriorsegmentcongestion,receivedIVB(1.25mg/0.05ml).Allfourhadundergonevitrectomy.Theirmeanagewas61.0±7.8years.PreoperativeandpostoperativegonioscopicndingsandIOPwerecompared.Allpatientswerediagnosedasopen-angleglaucomastageNVG.Allfourpatientshadundergonepanretinalphotocoagulation(PRP)priortoIVB.Inoneeye,IVBresultedinmarkedregressionuptocompletedisappearanceofangleneovascularization(NVA).Inthreeeyes,markedimprovementwasseen.MeanIOPbeforeIVBtreatmentwas27.8±7.4mmHgundermaximaltoleratedtopicalandsystemicmedication.Aftertherstinjection,IOPdecreasedto23.8±6.6mmHg,decreasingsubstantiallyinalleyes.Inoneeye,IOPdecreasedtobelow20mmHg.Inoneeye,IOPelevationrecurredandthreeadditionalIVBwererequired.However,noIOPimprovementwasseen.IVBleadstorapidregressionofNVAeveninpatientswhohaveundergonePRPalongwithvitrectomy.TheecacyofIVBshouldstimulatefur-therresearchontheclinicaluseofthisagentasasubsidiarymeasurefortheintervalperiod,tothepointoftrabe-culectomyorothersurgicalmeasures.IVBshouldbeinvestigatedmorethoroughlyasanadjunctinthemanage-mentofNVG.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(12):17191723,2008〕Keywords:血管新生緑内障,血管内皮増殖因子,bevacizumab.neovascularglaucoma,vascularendothelialgrowthfactor,bevacizumab.———————————————————————-Page21720あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(112)はじめに糖尿病網膜症にみられる血管新生緑内障(NVG)は難治で予後不良であり,NVG患者では,硝子体および前房水中の血管内皮増殖因子(VEGF)濃度が上昇している1).最近,眼科領域において抗VEGF薬であるbevacizumab(AvastinR)の硝子体内注射(IVB)が加齢黄斑変性や増殖糖尿病網膜症(PDR)の新生血管の消退に対して有効であると報告24)され,NVGに対しても,新生血管の抑制のみならず,眼圧コントロール効果に関しても有効とする報告が多い58).一方,PDRに対して硝子体手術が行われるが,その術後にNVGが発症することがある.しかし,現在,硝子体手術後に生じたNVGに対しIVBを施行した詳細な報告はない.硝子体手術後の無硝子体眼は有硝子体眼に比べ硝子体内投与されたtriamcinoloneacetonideの消失時間が速いと報告されている9)が,bevacizumabも同様に速く消失する可能性がある.今回,筆者らは,硝子体手術後に発症したNVGに対しIVBを施行し,その後の眼圧と隅角新生血管に対する効果を検討した.I対象および方法2006年5月から2007年5月までの期間に東邦大学医療センター大橋病院(以下,当院)眼科でPDRのため硝子体手術を施行後,NVGとなりIVBを施行した4例4眼を対象とした(表1).IVBの適応は,硝子体手術後にNVGが発症し,最大耐容の降圧薬の点眼および内服治療においても眼圧が20mmHgを超え,NVGステージ10)が開放隅角緑内障期の症例とした.網膜最周辺部までの光凝固が施行されていない症例やシリコーンオイルが注入されている症例は除いた.内訳は男性3例3眼,女性1例1眼で,年齢(平均±SD)は61.0±7.8歳であった.IVB直前のGoldmann圧平眼圧計による眼圧は,平均27.8±7.4mmHgであった.全例,眼内レンズ挿入眼であり,硝子体手術の既往は平均2.25回であった.シリコーンオイルタンポナーデの既往は1眼.汎網膜光凝固(PRP)は全例で十分に施行されていた.最終硝子体手術から眼圧上昇までの期間は86.5±89.1日であった.IVBは本院倫理委員会の承認を得て文章によるインフォームド・コンセントを取得のうえ,施行した.手術室において術野をポビドンヨードで消毒し,その後,結膜下麻酔を施行した.そして,32ゲージ針を用いてbevacizumab1.25mg(0.05ml)を角膜輪部から3.5mm後方の毛様体扁平部より硝子体内に注射し,眼圧調整の目的で前房穿刺を行った.IVB前後の隅角鏡検査による隅角所見および眼圧を比較した.眼圧測定は注射後1日目と注射後1カ月までは1週間おきに施行し,その後は23週間おきに施行した.注射後,降圧剤の点眼や内服は眼圧に応じて適宜再開した.II症例と経過〔症例1〕62歳,男性.病歴:両眼の視力低下で受診.初診時所見:視力は右眼0.2(矯正不能),左眼0.03(矯正不能).眼圧は右眼15mmHg,左眼15mmHg.前眼部に異常なく眼底は両眼PDRであった.経過:両眼ともにPRPを開始した.その後,左眼硝子体出血が生じたため硝子体手術(シリコーンオイルタンポナーデ)+超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を施行.術中に網膜最周辺部まで光凝固を施行した.6カ月後にシリコーンオイル抜去を目的に左眼硝子体手術を施行した.2回目の硝子体手術から42日後に外来受診した際,左眼の眼圧が25mmHgで,前眼部は虹彩新生血管と隅角新生血管があり周辺虹彩前癒着(PAS)はなくNVGの開放隅角緑内障期であった.そのため,高眼圧に対し,0.5%チモプトールRXE点眼,1%トルソプトR点眼およびキサラタンR点眼を開始したが,眼圧下降せず2回目の硝子体手術から54日後にIVBを施行した.IVB前の眼圧は27mmHgであった.IVBの翌日の眼圧は22mmHg.1週間後は14mmHg.2週間後は0.5%チモプトールRXE点眼,キサラタンR点眼,1%トル表1症例の内訳症例年齢性別硝子体手術の既往シリコーンオイルタンポナーデの既往最終硝子体手術から開放隅角緑内障期までの期間NVGステージIVB直前の眼圧初回IVBから1カ月後の眼圧IVBから1カ月後の隅角新生血管162歳男性2回あり42日開放隅角緑内障期27mmHg18mmHg消失252歳男性2回なし21日開放隅角緑内障期22mmHg20mmHg減少357歳男性1回なし240日開放隅角緑内障期40mmHg35mmHg減少473歳女性4回なし43日開放隅角緑内障期22mmHg21mmHg減少———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081721(113)ソプトR点眼をして眼圧12mmHgとなった.1カ月後の検査では隅角新生血管は消失し,眼圧は18mmHgであった.5カ月後の最終眼圧は16mmHgであり,経過観察中である.〔症例2〕52歳,男性.病歴:両眼のPDRのため紹介受診.初診時所見:視力は右眼0.2(矯正不能),左眼(1.2×0.50D).眼圧は右眼16mmHg,左眼16mmHg.前眼部に異常なく,両眼PDRがあった.経過:両眼PRPが開始された.その後,左眼硝子体出血が出現し,硝子体手術を施行した.術後,硝子体出血が再度出現し初回手術から2カ月後に左眼硝子体手術+超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を施行した.術中,強膜創血管新生があった.網膜最周辺部まで光凝固を施行した.2回目の手術から21日後に受診した際,左眼眼圧が21mmHgであった.左眼前眼部はPASはないが虹彩新生血管,隅角新生血管がありNVG(開放隅角緑内障期)と診断した.高眼圧に対し,0.5%チモプトールRXE点眼と1%トルソプトR点眼が開始となった.その後,30mmHgまで眼圧が上昇し,キサラタンR点眼とダイアモックスR錠(2錠/日)内服を追加した.2回目の手術から190日後にIVBを施行した.IVB前の眼圧は22mmHgであった.IVBの翌日の眼圧は25.5mmHg,1週間後は18mmHg,2週間後は0.5%チモプトールRXE点眼,キサラタンR点眼,1%トルソプトR点眼をして眼圧21mmHgとなった.1カ月後の検査では隅角新生血管は減少し,眼圧は20mmHgであった.IVBから42日後に隅角新生血管が増加したので,1回目のIVBから52日後にIVB(2回目)を施行した.IVB前の眼圧は26mmHg.1週間後の眼圧は26mmHgで隅角新生血管は減少した.しかし,その後,隅角新生血管は再度増加したので63日間あけてIVB(3回目)を施行した.IVB前の眼圧は28mmHg.1週間後の眼圧は20mmHgで隅角新生血管は減少した.3回目のIVBから48日後にIVB(4回目)を施行した.IVB前の眼圧は19mmHgで,1週間後の眼圧は19mmHgであった.その後,眼圧上昇,隅角新生血管の増加,PASも徐々に出現し,初回IVB後8カ月の時点で眼圧は27mmHgであり,そのため左眼線維柱帯切除術を施行した.〔症例3〕57歳,男性.病歴:両眼の視力低下を自覚し当院受診.初診時所見:視力は右眼(0.2×1.50D),左眼(0.3×1.50D).眼圧は右眼16mmHg,左眼10mmHg.前眼部に異常なく,眼底は両眼PDRで,左眼は硝子体出血も伴っていた.経過:左眼硝子体手術+超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を施行した.術中,網膜最周辺部まで光凝固を施行した.手術から76日後に受診した際,左眼眼圧は19mmHgであったが,虹彩および隅角新生血管がみられNVG(前緑内障期)と診断した.そのため網膜光凝固を追加し経過観察した.手術から240日後に受診時,左眼眼圧は33mmHgで,左眼前眼部は虹彩新生血管,隅角新生血管がありPASはなく開放隅角緑内障期であった.高眼圧に対し,2%ミケランR点眼と1%エイゾプトR点眼を開始した.その後,眼圧が40mmHgになったので,手術から250日後にIVBを施行した.IVB前の眼圧は40mmHg,IVBの翌日の眼圧は34mmHg,1週間後は36mmHg.2週間後は2%ミケランR点眼,キサラタンR点眼,1%トルソプトR点眼,ダイアモックスR錠(3錠/日)内服をして眼圧35mmHgであった.1カ月後の診察では隅角新生血管は減少したが,眼圧は35mmHgであった.そのため,線維柱帯切除術を勧めたが同意が得られず,IVB後8カ月の時点で眼圧は35mmHgであった.その後,来院しなくなった.〔症例4〕73歳,女性.病歴:他院でPDRのため右眼硝子体手術を3回施行されたが,術後も硝子体出血をくり返すため当院を紹介受診.既往歴:1年前に白内障のため右眼超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術施行.1,2,3カ月前に右眼硝子体手術施行.初診時所見:視力は右眼光覚弁,左眼0.05(矯正不能).眼圧は両眼19mmHg.右眼前眼部は異常なかった.中間透光体は眼内レンズが挿入されており,硝子体出血があり眼底は透見できなかった.経過:右眼硝子体手術を施行し,最周辺部まで汎網膜光凝固を行った.術中,強膜創血管新生があった.術後,再度の硝子体出血はなく経過良好であったが,術後43日目に外来受診時した際,眼圧は左眼25mmHgで隅角新生血管があり,NVG(開放隅角緑内障期)と診断した.高眼圧に対し,2%ミケランR点眼と1%トルソプトR点眼,ダイアモックスR錠(2錠/日)の内服が開始となった.その後,さらにキサラタンR点眼を追加し眼圧は1830mmHgを推移していたが,術後10カ月より隅角新生血管が増加してきたのでIVBを施行した.IVB前の眼圧は22mmHgであった.IVBの翌日の眼圧は23mmHg,1週間後は22mmHg.2週間後は2%ミケランR点眼,キサラタンR点眼,1%トルソプトR点眼をして眼圧22mmHgとなった.1カ月後の診察では隅角新生血管および虹彩新生血管は減少し,眼圧は21mmHgであった.その後5カ月間経過観察し,ダイアモックスR錠(2錠/日)の内服を追加し眼圧は20mmHgであり,虹彩および隅角新生血管は消失している.III結果IVB後1カ月の時点で,隅角新生血管は減少が3眼,消失が1眼であった.初回IVB後1カ月の眼圧は平均23.8±6.6mmHgとなり,全例でIVB直前と比較し眼圧は下降し———————————————————————-Page41722あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(114)た.1眼は眼圧20mmHg以下となった.眼圧の推移を図1に示す.眼圧が20mmHg以下にならなかった3眼のうち1眼はその後,IVBを2カ月おきに3回施行したが眼圧コントロールは不良となり,線維柱帯切除術を施行した.線維柱帯切除術を施行した症例の最終経過観察期間は線維柱帯切除術までとした.最終経過観察期間6.5±1.7カ月の時点では眼圧24.5±8.3mmHgであった.IVBによる眼局所および全身の合併症はなかった.IV考察一般的にNVGに対する治療は,隅角などの新生血管の活動性を弱め消退させることが第一であり,このため,いずれの時期にも赤道部を越える広範かつ高密度のPRPを実施することが重要である11).最近の報告68)では,NVGに対するIVBは隅角新生血管や虹彩新生血管が減少し,眼圧も低下したとされている.しかし,このような場合においても,追加治療としてPRPなどの網膜虚血を改善させる治療が必要である.また,PASがあると隅角新生血管は消退しても,房水流出路が閉塞しているので眼圧のコントロールはむずかしい場合が多いと予想される.今回の症例はいずれも開放隅角期でありPASはなかったが,PDRに対する硝子体手術後の無硝子体眼であり硝子体手術前や手術中などにすでに鋸状縁まで十分にPRPが施行されていた.このような症例にIVBを施行した結果,眼圧と虹彩ルベオーシスがともに減少しIVBの効果は得られた.しかし,PASがないにもかかわらず眼圧下降効果は既報7)と比較して十分ではなかった.この理由として硝子体手術後の無硝子体眼は有硝子体眼に比べ硝子体内に投与されたtriam-cinoloneacetonideの消失時間が速いと報告9)されているが,これと同様に,本症例も無硝子体眼のため,bevacizumabの半減期が短く,有硝子体眼と比較すると効果が減弱した可能性があげられる.ただし,NVGは難治で予後不良な疾患であるにもかかわらず,先に述べたようにIVBによって眼圧,虹彩ルベオーシスがともに減少し,さらに1眼(25%)は注射後5カ月の時点で眼圧は正常化しており,IVBによる合併症12,13)は発症率が低く,注射にかかる時間も短時間で済むため,硝子体手術後の症例であっても施行する価値があると思われる.さらに,NVGの症例は糖尿病により腎機能低下を伴っていることや全身状態が不良のことがあり,その場合,アセタゾラミドの内服が困難なことがある.そのため,このような症例には降圧薬の点眼で,眼圧コントロールができなければ,アセタゾラミドの内服を追加する前にIVBを行うこともできると考えられた.また,眼圧下降があまりみられなくても,隅角の新生血管の減少または消失によりPASを増加させないことで,残存した房水流出の機能を維持できる可能性があることから,線維柱帯切除術までの間の補助治療としても検討に値すると思われる.以上,結論として硝子体手術後に発症したNVGに対してもIVBは,眼内炎などの発症の危険12)もあり,薬剤毒性など不明な点もあるが,症例を選び慎重に対応すれば,非常に有用な手技になると考えられた.本論文の要旨は第18回日本緑内障学会で発表した.文献1)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendothe-lialgrowthfactorinocularuidofpatientswithdiabeticretinopathyandotherretinaldisorders.NEnglJMed331:1480-1487,19942)RosenfeldPJ,MoshfeghiAA,PuliatoCA:Opticalcoher-encetomographyndingsafteranintravitrealinjectionofbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.OphthalmolSurgLaserImag36:1309-1349,20053)SpaideRF,FisherYL:Intravitrealbevacizumab(avastin)treatmentofproliferativediabeticretinopathycomplicatedbyvitreoushemorrhage.Retina26:275-278,20064)MasonJO,NixonPA,WhiteMF:Intravitrealinjectionofbevacizumab(avastin)asadjunctivetreatmentofprolifer-ativediabeticretinopathy.AmJOphthalmol142:685-688,20065)DavidorfFH,MouserJG,DerickRJ:Rapidimprovementofrubeosisiridisfromasinglebevacizumab(avastin)injection.Retina26:354-356,20066)MasonⅢJO,AlbertJrMA,MaysAetal:Regressionofneovascularirisvesselsbyintravitrealinjectionofbevaci-zumab.Retina26:839-841,20067)IlievME,DomigD,Wolf-SchnurrburschU,WolfS,SarraGM:Intravitrealbevacizumab(Avastin)inthetreatmentofneovascularglaucoma.AmJOphthalmol142:1054-1056,20068)YazdaniS,HendiK,PakravanM:Intravitrealbevaci-zumab(avastin)injectionforneovascularglaucoma.JGlaucoma16:437-439,2007pre1D7D1M2M3M4M5M6M7M8M:Case1:Case2:Case3:Case4454035302520151050眼圧(mmHg)図1眼圧の推移それぞれの症例の眼圧の推移を示す.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081723(115)9)BeerPM,BakriSJ,SinghRJetal:Intraocularconcentra-tionandpharmacokineticsoftriamcinoloneacetonideafterasingleintravitrealinjection.Ophthalmology110:681-686,200310)澤田明,石田恭子,山本哲也:続発緑内障・1眼疾患と関連した緑内障.緑内障(北澤克明編),p247-250,医学書院,200411)佐藤幸裕:血管新生緑内障と汎網膜光凝固.眼科診療プラクティス3,レーザー治療の実際(田野保雄ほか編),p178-181,文光堂,199312)JonasJB,SpandauUH,RenschFetal:Infectiousandnoninfectiousendophthalmitisafterintravitrealbevaci-zumab.JOculPharmacolTher23:240-242,200713)FungAE,RosenfeldPJ,ReichelE:Theinternationalintravitrealbevacizumabsafetysurvey:usingtheinter-nettoassessdrugsafetyworldwide.BrJOphthalmol90:1344-1349,2006***

Bevacizumab の硝子体内注射で硝子体手術時期が延期できた増殖糖尿病網膜症の1例

2008年6月30日 月曜日

———————————————————————-Page1(135)8850910-1810/08/\100/頁/JCLS《原著》あたらしい眼科25(6):885889,2008cはじめに活動性の高い増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopathy:PDR)患者において,硝子体および前房水中の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)濃度が上昇している1,2).近年,適応外使用であるが,眼科領域において抗VEGF薬であるbevacizumab(Avas-tinR)の硝子体内注射の効果が多く報告36)されており,PDRに対しても有用性が報告79)されている.しかし,硝子体手術の時期を延期する目的で,bevacizumabの硝子体注射を行った報告は見当たらない.今回,筆者らは両眼の増殖糖尿病網膜症で,右眼は硝子体手術後にシリコーンオイル下で重篤な再増殖が起こり,追加手術が必要で安定した状態になるには時間がかかると予想され,左眼も活動性が高く,硝子体出血や牽引性網膜離の発生が危惧される症例を経験した.この症例の左眼に対し,高度な視力低下が出現する前にbevacizumabの硝子体内注射を3回施行して,手術時期を延期することができたので報告する.I症例患者:31歳,男性.主訴:右眼視力低下.現病歴:2006年2月に他院で右眼の硝子体出血,牽引性網膜離を伴う増殖糖尿病網膜症のため,硝子体手術およびシリコーンオイル・タンポナーデが施行された.しかし,右〔別刷請求先〕北善幸:〒153-8515東京都目黒区大橋2-17-6東邦大学医療センター大橋病院眼科Reprintrequests:YoshiyukiKita,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityMedicalCenterOhashiHospital,2-17-6Ohashi,Meguro-ku,Tokyo153-8515,JAPANBevacizumabの硝子体内注射で硝子体手術時期が延期できた増殖糖尿病網膜症の1例北善幸佐藤幸裕北律子八木文彦富田剛司東邦大学医学部眼科学第二講座IntravitrealInjectionofBevacizumabtoDelayTimingofVitrectomyforProliferativeDiabeticRetinopathyPatientYoshiyukiKita,YukihiroSato,RitsukoKita,FumihikoYagiandGojiTomitaSecondDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicine高度な視力低下が出現する前にbevacizumabの硝子体内注射を複数回施行して,手術時期を延期できた症例を経験したので報告する.症例は31歳,男性.両眼の増殖糖尿病網膜症で,右眼は硝子体手術後に重篤な再増殖が起こり,追加手術が必要で安定した状態になるには時間がかかると予想された.左眼も活動性が高く,硝子体出血や牽引性網膜離の発生が危惧された.左眼の高度な視力低下が出現する前にbevacizumabの硝子体内注射を3回施行して,手術時期を延期することができた.Wereportontheeectivenessofrepeatedintravitrealinjectionsofbevacizumabinordertosustainvisualacuitywhiledelayingtimelysurgeryinpatientswithproliferativediabeticretinopathy.Thepatient,a31-year-oldmalewithbilateralproliferativediabeticretinopathy,requiredanadditionalvitrectomyowingtodevelopmentofrecurrentsevereproliferationafterinitialvitrectomyinhisrighteye,butaperiodoftimewasneededforstabiliza-tionoftheeye’scondition.Activitywasalsohighinthelefteye,withriskofdevelopingvitreoushemorrhageandtractionalretinaldetachment.Toforestallvisualacuitydeterioration,3intravitrealinjectionsofbevacizumabweregiveninordertoenabledelayofappropriatetimingforvitrectomy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(6):885889,2008〕Keywords:増殖糖尿病網膜症,血管内皮増殖因子,bevacizumab,黄斑偏位.proliferativediabeticretinopathy,vascularendothelialgrowthfactor,bevacizumab,macularheterotopia.———————————————————————-Page2886あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008(136)(0.7×0.75D).眼圧は両眼19mmHg.両眼とも前眼部に異常なく,虹彩隅角新生血管なし.中間透光体は,右眼シリコーンオイル注入眼,左眼に異常なし.眼底は右眼鼻側に再増殖による牽引性網膜離があった.左眼は,乳頭新生血管(neovascularizationofthedisc:NVD),網膜新生血管,黄斑浮腫,網膜前出血があり,汎網膜光凝固(panretinalpho-tocoagulation:PRP)が施行されていた(図1).経過:右眼は再度の硝子体手術が必要であり,安定した状態になるには時間がかかると予想された.左眼はPRPが完成しているにもかかわらず,NVDは活動性があり,硝子体出血や牽引性網膜離が発生して,さらに視力が低下してくると予想された.そのため,右眼が安定した状態になるまでの間,左眼の網膜症の悪化と視力低下を防ぐ目的で,本院倫理委員会の承認を得て文章によるインフォームド・コンセントを取得のうえ,6月2日にbevacizumab1.25mg(0.05ml)の硝子体内注射(intravitrealinjectionofbevacizumab:IVB)を施行した.IVBは,局所麻酔下で,角膜輪部から3.5mm後方に32ゲージ針で行った.注射の前に前房水を採取した.採取した前房水のVEGF濃度はhumanVEGF抗体(R&DSystems)を用いて,enzyme-linkedimmunosor-bentassay(ELISA)法にて測定し,1,680pg/mlであった.注射後,NVDは徐々に減少し,50日後にはほぼ消退した.また,黄斑浮腫も改善し,矯正視力(1.0)になった.そのため,8月7日に右眼の硝子体再手術を施行した.手術は,シリコーンオイルを抜去し,増殖膜を処理したが,医原性裂孔が生じたのでSF6(六フッ化硫黄)ガスタンポナーデを行った.その後,左眼のNVDが再度増悪し(図2),右眼も軽度の硝子体出血が出現した.そのため,9月22日に左眼に対し2回目のIVB1.25mg(0.05ml)を施行し,NVDは再び消退した(図3).さらに,左眼に光凝固の追加(650発)を眼の鼻側にシリコーンオイル下で網膜上の再増殖が出現したため,同年5月23日に東邦大学医療センター大橋病院を紹介され受診した.既往歴:18歳より2型糖尿病.初診時所見:視力は右眼0.02(0.1×+6.00D),左眼0.3abc1初診時眼底写真a,b:右眼はシリコーンオイル注入眼で,鼻側に再増殖による牽引性網膜離がある.c:左眼は乳頭新生血管,網膜新生血管,黄斑浮腫,網膜前出血がある.図22回目のIVB前の左眼眼底写真NVDは一時的にはほぼ消退したが,その後,再度出現した.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008887(137)時点で硝子体手術の適応はないが,網膜症の悪化による視力低下が予想されるPDR患者に対し,IVBを施行して硝子体出血などの発症を遅らせ,硝子体手術の時期を延期できた症行った.右眼の白内障が進行してきたため,2007年1月26日,右眼超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を施行した.術後視力は右眼(0.1)であった.2月には左眼のNVDが再度増悪し,さらに硝子体出血と軽度の黄斑偏位が出現し視力が(0.3)に低下した(図4).本人の希望もあり,3月26日に3回目のIVB1.25mg(0.05ml)を施行した.その後,NVDはほぼ消退し,硝子体出血も改善したが,黄斑偏位のため視力は(0.4)までしか改善せず(図5),6月14日に左眼硝子体手術を施行した.術後,黄斑偏位が改善し視力(1.0)となった(図6).その後,外来で経過を観察しているが,2007年11月の時点で矯正視力は右眼(0.08),左眼(0.9)で安定している.II考按今回,筆者らは,硝子体出血や牽引性網膜離がなく,現図6最終眼底写真a:右眼視力(0.1).b:硝子体手術により黄斑偏位が改善し左眼視力(1.0)となった.ab32回目のIVB後の左眼眼底写真NVDはほぼ消退している.図43回目のIVB前の左眼眼底写真NVDが再度出現し,線維血管膜や硝子体出血,黄斑偏位がある.図53回目のIVB後の左眼眼底写真硝子体出血とNVDは消退し,線維血管膜と黄斑偏位がある.———————————————————————-Page4888あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008(138)本症例は,右眼が重症のPDRで治療に時間がかかると考えられ,右眼が安定化する前に左眼の硝子体手術が必要になれば,患者は両眼の視力低下によって日常生活も困難になると予想された.このため,左眼にIVBを行って手術時期を延期し,患者のqualityofvisionを維持した.このような使用方法は,今後,硝子体手術が必要になる可能性がある症例で全身状態が不良で手術ができない場合に,IVBを用いて硝子体手術の時期を延期し,全身状態を改善する時間的余裕を作れる可能性もある.ただし,PDRの程度によっては牽引性網膜離が悪化する可能性はあるため,今後,どの程度のPDRに対して施行するか検討する必要があると考えられる.今回は,眼内炎などの合併症はみられなかったが,beva-cizumabの硝子体注射は1,000人に1人の確率で眼内炎などの危険が伴うと報告されている13).また,複数回投与による薬剤毒性など不明な点もあるが,症例を選んで慎重に対応すれば,非常に有用な薬になると考えた.文献1)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendothe-lialgrowthfactorinocularuidofpatientswithdiabeticretinopathyandotherretinaldisorders.NEngJMed331:1480-1487,19942)FunatsuH,YamashitaH,NomaHetal:RiskevaluationofoutcomeofvitreoussurgeryforproliferativediabeticretinopathybasedonvitreouslevelofvascularendothelialgrowthfactorandangiotensinII.BrJOphthalmol88:1064-1068,20043)RosenfeldPJ,MoshfeghiAA,PuliatoCA:Opticalcoher-encetomographyndingsafteranintravitrealinjectionofbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.OphthalmolSurgLaserImag36:331-335,20054)DavidorfFH,MouserJG,DerickRJ:Rapidimprovementofrubeosisiridisfromasinglebevacizumab(Avastin)injection.Retina26:354-356,20065)MasonⅢJO,AlbertJrMA,MaysAetal:Regressionofneovascularirisvesselsbyintravitrealinjectionofbevaci-zumab.Retina26:839-841,20066)IlievME,DomigD,Wolf-SchnurrburschUetal:Intravit-realbevacizumab(Avastin)inthetreatmentofneovascu-larglaucoma.AmJOphthalmol142:1054-1056,20067)SpaideRF,FisherYL:Intravitrealbevacizumab(Avas-tin)treatmentofproliferativediabeticretinopathycompli-catedbyvitroushemorrhage.Retina26:275-278,20068)MasonⅢJO,NixonPA,WhiteMF:Intravitrealinjectionofbevacizumab(Avastin)asadjunctivetreatmentofpro-liferativediabeticretinopathy.AmJOphthalmol142:685-688,20069)AveryRL,PearlmanJ,PieramiciDJ:Intravitrealbevaci-zumab(Avastin)inthetreatmentofproliferativediabeticretinopathy.Ophthalmology113:1695-1705,2006例を報告した.PDRの活動性が高いほど,前房水中および硝子体中のVEGF濃度は上昇し,硝子体中のVEGF濃度が高いと硝子体手術後に再増殖しやすいと報告されている1,2,10).まず,本症例のPDRの活動性について検討すると,数カ月前に他院でPRPが完了しているにもかかわらず前房水のVEGF濃度が1,680pg/mlであり,既報1)と比較して非常に高いグループに属すると思われ,網膜症が悪化する可能性が非常に高いと考えた.最近,PDRに対するIVBは新生血管を消退させると報告8,9)されている.また,Spaideらは硝子体出血を伴うPDRに対し,IVBの有効性を報告7)している.この報告では,合計2回のIVBを施行し,硝子体出血が消失し,硝子体手術が回避できている.しかし,重症のPDRに対しIVBを行うと,膜の収縮を増強し牽引性網膜離が5.2%に生じた11)と報告されている.ただ,これらの症例は,硝子体手術が必要なPDR症例であり,本症例では,新生血管は認めるが,検眼鏡的に線維血管膜や牽引性網膜離がない状態で,硝子体手術が必要な状態ではなく,IVBにより牽引性網膜離が発症し,緊急に硝子体手術になる可能性は低いと判断し,IVBを行った.今回,合計3回のIVBを施行した.1回目と2回目のIVBはNVDを消退させる目的で,3回目は,硝子体出血の減少に有効7)とされていたので,硝子体出血を減少させる目的で施行した.IVBによるNVDの消退は一時的なもので,再度増悪したが,IVBの再施行で減少した.1回目のIVB後に減少した新生血管が再度増加したので,2回目のIVB後も減少した新生血管が再度増加する可能性を考え,網膜虚血を改善させるため,網膜光凝固を追加した.しかし,網膜症を沈静化することはできなかった.そのため,もし,初診時に光凝固の追加のみをしていた場合,結果論ではあるが,網膜症の沈静化は得られなかったと考えられる.3回目のIVBの際には,硝子体出血とともに黄斑偏位が生じていた.IVBは硝子体出血には有効であったが,黄斑偏位が残存したので,最終的に硝子体手術を施行した.本症例では患者本人の希望もあり,3回目のIVBを施行した.しかし,この時期には,右眼は白内障手術が終了して安定化しており,左眼には線維血管膜の収縮による黄斑偏位が生じていた.黄斑偏位の持続期間と視力予後が関連するとの報告もあり12),また,線維血管膜も出現してきており,牽引性網膜離が生じる可能性も1回目や2回目のIVB時よりも高い確率と考えられ,本症例では黄斑偏位に対する硝子体手術後,幸いにも視力障害は残らなかったが,3回目のIVBをせずに,硝子体手術に踏み切るべきであったとも考えられる.しかし,最終的に硝子体手術を回避することはできなかったが,初回注射から硝子体手術まで約1年間,手術時期を延期できたと思われ,当初の目的は達成できたと考えた.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.6,2008889thy.BrJOphthalmol92:213-216,200812)SatoY,ShimadaH,AsoSetal:Vitrectomyfordiabeticmacularheterotopia.Ophthalmology101:63-67,199413)JonasJB,SpandauUH,RenschFetal:Infectiousandnoninfectiousendophthalmitisafterintravitrealbevaci-zumab.JOculPharmacolTher23:240-242,200710)FunatsuH,YamashitaH,ShimizuEetal:Relationshipbetweenvascularendothelialgrowthfactorandinterleu-kin-6indiabeticretinopathy.Retina21:469-477,200111)ArevaloJF,MaiaM,FlynnHWJretal:Tractionalreti-naldetachmentfollowingintravitrealbevacizumab(Avas-tin)inpatientswithsevereproliferativediabeticretinopa-(139)***