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治療が奏効したNK/T 細胞性眼内リンパ腫の症例

2023年6月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科40(6):832.837,2023c治療が奏効したNK/T細胞性眼内リンパ腫の症例南出みのり*1,2永田健児*1富永千晶*1北野ひかる*1,3山下耀平*1,4青木崇倫*1伴由利子*1,5外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都市立病院眼科*3バプテスト眼科クリニック*4久美浜病院眼科*5京都中部総合医療センター眼科CTwoCasesofIntraocularNaturalKiller/T-cellLymphomathatWereSuccessfullyTreatedMinoriMinamide1,2),KenjiNagata1),ChiakiTominaga1),HikaruKitano1,3),YoheiYamashita1,4),TakanoriAoki1),YurikoBan1,5)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)CHospital,3)DepartmentofOphthalmology,BaptistEyeInstitute,4)CDepartmentofOphthalmology,KyotoCity5)DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenterCDepartmentofOphthalmology,KumihamaHospital,眼内リンパ腫の多くはCB細胞性であり,NK/T細胞性の報告は少ない.今回,治療が奏効したCNK/T細胞性眼内リンパ腫の患者を経験した.症例C1はC58歳,女性.既往歴に節外性CNK/T細胞性リンパ腫(ENKL)があった.左眼の充血で眼科を受診し,視力は光覚弁,眼圧はC32CmmHgであった.結膜充血と結膜隆起性病変,前房蓄膿,虹彩腫瘤,硝子体混濁,眼窩病変を認めた.結膜生検でCENKLと診断し,局所放射線療法後,眼病変は軽快した.症例C2はC75歳,女性.ぶどう膜炎に伴う続発緑内障としてC1年間加療されたが,眼圧コントロール不良で京都府立医科大学病院に紹介となった.初診のC2カ月後,右眼硝子体混濁が急激に増悪し,硝子体生検でCENKLと診断した.メトトレキサート硝子体注射(IVMTX),局所放射線療法,全身化学療法後,網膜病巣は瘢痕化し眼外病変の出現なく経過した.本症例はB細胞性より程度が激しい眼所見を呈し,IVMTXや局所放射線療法により病変の制御ができた.早期診断や治療法確立には症例の集積が必要である.CBackground:MostintraocularlymphomacasesareB-celllymphoma.WereporttwocasesofintraocularNK/CT-celllymphomathatweresuccessfullytreated.Casereports:Case1involveda58-year-oldwomanwithahis-toryofextranodalNK/T-celllymphoma(ENKL).Hervisualacuitywassenseoflightandherintraocularpressurewas32CmmHg.Conjunctivallesions,hypopyon,irismass,vitreousopacity,andorbitallesionswereobservedinherlefteye.AconjunctivalbiopsyrevealedthepresenceofENKL.Theocularlesionsresolvedafterirradiation.Case2involvedCaC75-year-oldCwomanCreferredCtoCourChospitalCwithCpoorlyCcontrolledCintraocularCpressureCafterCbeingCtreatedforsecondaryglaucoma.Twomonthslater,arapidlyworseningvitreousopacitywasobservedinherrighteye.CSheCwasCdiagnosedCwithCENKLCbyCvitreousCbiopsy.CAfterCintravitrealmethotrexate(MTX)injection,Cirradia-tion,andsystemicchemotherapy,theretinallesionsbecamescarred.Conclusions:TheintraocularNK/T-celllym-phomacasesinthisstudypresentedwithmoreintenseocular.ndingsthanB-celllymphoma,andthelesionswerecontrolledbyintravitrealMTXinjectionandirradiation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(6):832.837,C2023〕Keywords:眼内リンパ腫,節外性CNK/T細胞リンパ腫・鼻型,ENKL,虹彩腫瘤.intraocularlymphoma,extra-nodalNK/T-celllymphoma,nasaltype,ENKL,irismass.Cはじめに悪性リンパ腫もある.約C60.90%の症例で発症数年以内に眼内リンパ腫は,中枢神経系原発悪性リンパ腫に含まれる生命予後に直結する中枢神経系病変を発症し,5年生存率は疾患である.まれに中枢神経系以外の臓器原発の転移性眼内約C60%の予後不良な疾患である1).組織型のほとんどは非〔別刷請求先〕永田健児:〒602-8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:KenjiNagata,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kawara-machiHirokojiagaruKajii-cho,Kamigyo-ku,Kyoto602-8566,JAPANC832(120)Hodgkinリンパ腫かつ,びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫である.CNaturalkiller(NK)/T細胞性眼内リンパ腫のほとんどが節外性CNK/T細胞リンパ腫・鼻型(extranodalCNK/T-celllymphoma:ENKL)という病型のものである.中枢神経系原発悪性リンパ腫のC2.3%を占めるまれな疾患で,CEpstein-Barrvirus(EBV)が関連すると報告されている2,3).予後は非常に悪く,眼病変や中枢神経系病変をきたした例の生存期間中央値はC13.9カ月からC17カ月と報告されている3.5).NK/T細胞性眼内リンパ腫の報告は少なく,眼病変の特徴や治療反応性といった情報の蓄積が必要である.今回,治療が奏効したCNK/T細胞性眼内リンパ腫の症例を経験したので報告する.なお,症例C2はCNK細胞リンパ腫の集学的治療が奏効したきわめてまれな症例として,寛解後C40カ月の時点で再発がないことを過去に報告しており,今回眼所見の特徴と長期経過について報告する6).CI症例[症例1]58歳,女性.既往歴:2019年C12月,左眼の充血を認め,眼科を受診した.原因検索目的に撮像した頭部磁気共鳴画像撮影法(mag-neticCresonanceimaging:MRI)で,篩骨洞病変を認め,生検の結果,ENKLと診断された.2020年C6月から全身化学療法(SMILE療法:steroid,Cmethotrexate,Cifosfamide,L-asparaginase,Cetoposide),自家造血幹細胞移植,同種造血幹細胞移植を施行されたが,2021年C6月に髄液検査で再発を認め,全身化学療法の適応外と判断され,2週間にC1度の髄腔内抗癌剤投与(AraC療法:Cytarabine+DEX:dexamethasone)で加療されていた.現病歴:2021年C9月頃に左眼の結膜充血を内科医に指摘され,前医を受診した.左眼の視力は光覚弁,眼圧はC32mmHgと上昇していた.左眼に前房内炎症,多数の角膜後面沈着物,虹彩後癒着および硝子体混濁を認め,眼内リンパ腫疑いで精査,加療目的に京都府立医科大学病院(以下,当院)へ紹介となった.初診時所見:視力は右眼がC0.8(n.c.),左眼が光覚弁,眼圧は右眼がC10CmmHg,左眼がC24CmmHgであった.左眼の5時.10時方向の結膜にサーモンピンク色の隆起性病変を認めた.角膜には多数の小型の角膜後面沈着物を認め,下方の前房は消失していた.また,左眼の眼底は硝子体混濁により透見不良であった.右眼は前眼部,眼底ともに異常所見を認めなかった.全身検査所見:血液検査では,可溶性Cinterleukin(IL)C-2受容体(sIL-2R)がC1,710CU/mlと上昇を認めた.当院受診のC1カ月前に前医で施行された頭部CMRIでは,以前より指摘のある白質病変以外の新規病変を認めなかった.陽電子放出断層撮影(positronCemissionCtomography-computedtomography:PET-CT)で左眼の眼球後方に軟部影の増生および異常集積を認め(図1a),超音波CBモードでも同部位に病変が確認された(図1b).臨床経過:他院の血液内科に定期的に入院のうえ,治療されていたため,今後の方針を協議し,1週間後の再診とした.再診時には,左眼の虹彩膨隆および前房蓄膿を認め,周辺部の前房は消失していた(図1c).前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)でも虹彩膨隆が確認された(図1d).診断のため,結膜生検を施行した.ヘマトキシリン・エオジン染色では核異型のある小型から中型のリンパ球を認め(図2a),免疫染色では異型を示す中型リンパ球がCD56(図2b)で陽性を示し,inCsituhybridizationにてCEpstein-BarrCencodingregion陽性(図2c)を示した.フローサイトメトリーでもCCD56陽性の細胞を認めた(図2d).以上より,ENKL再発の診断となった.全身状態不良のため,治療は眼病変に対する局所放射線療法(50CGy/25CFr)のみの方針とした.定位放射線療法開始後,12日目頃から結膜病変や虹彩膨隆が著明に改善し(図3),23日目には眼圧もC11CmmHgと下降した.成熟白内障となり手術も計画したが,初診時よりC5カ月後に誤嚥性肺炎のため,眼科への通院が困難となり,最終視力は光覚弁であった.[症例2]75歳,女性.既往歴:高血圧,脳梗塞,甲状腺癌.現病歴:2016年C2月に両眼の角膜後面沈着物および左眼の眼圧上昇を認め,ぶどう膜炎に伴う続発緑内障としてC1年間加療されたが,眼圧コントロール不良のため当院へ紹介となった.初診時所見:視力は右眼0.3(0.5C×sph+1.5D(cyl.1.75DAx90°),左眼C0.3(0.6C×sph+1.0D(cyl.1.50DAx80°),眼圧は右眼がC14CmmHg,左眼C35CmmHgであった.右眼優位にやや小型の角膜後面沈着物を認めた.全身検査所見:可溶性CIL-2受容体はC797CU/mlと軽度上昇を認め,その他には特記すべき所見はなかった.臨床経過(図4):2カ月後の再診時に,右眼の視力がC0.01と低下し,小型で白色の角膜後面沈着物およびびまん性の強い硝子体混濁を認め,眼底は透見不能であった.眼内リンパ腫を疑い,右眼の硝子体生検を施行した.術中にびまん性の強い硝子体混濁(図4a),網膜内および網膜下病巣が確認された.細胞診はCClassIVで,フローサイトメトリーではCNK細胞の増生を認めた.免疫グロブリン重鎖遺伝子再構成は陰性で,IL-10はC30Cpg/ml,IL-6はC2,330Cpg/ml,感染性ぶどう膜炎病原体核酸同時検出キットによるCpolymeraseCchainreaction(PCR)検査ではCEBV陽性(Ct:24.54)であった.以上より,NK/T細胞性眼内リンパ腫と診断した.骨髄検査や髄液検査では異常細胞を認めなかった.頭部CMRIでは中図1治療前の眼所見(症例1)a:PET-CTで左眼の眼球後方に軟部影の増生および異常集積を認めた.Cb:超音波CBモードで左眼の眼球後方に病変を認めた.Cc:左眼に虹彩膨隆および前房蓄膿を認めた.周辺部の前房は消失していた.Cd:前眼部OCTで左眼の虹彩膨隆を認めた.図2結膜生検の結果(症例1)a:切除された結膜の病理組織所見(ヘマトキシリン・エオジン染色).線維性結合組織内に核異形を示す小型から中型のリンパ球の浸潤を認めた.Cb:免疫組織化学染色ではCCD56陽性を示した.Cc:免疫組織化学染色ではCEBER陽性を示した.Cd:フローサイトメトリーでCCD56陽性の細胞を認めた.枢神経系や眼窩の病変はなく,PET-CTで悪性リンパ腫を回施行後,局所放射線療法(50CGy/25CFr)を行った.その後,疑う異常集積はなく,ENKLと判断した.右眼にメトトレキ中枢神経および全身からの再発予防を目的とした化学療法サートの硝子体注射(intravitrealCmethotrexateinjection:(SMILE療法)をC2クール施行した.網膜下病巣は瘢痕化しIVMTX)をC400Cμg/0.1Cml/回,1週間にC1回の投与間隔でC4(図4d),初診よりC6年経過後も,再発なく経過した.図3局所放射線療法開始後の前眼部所見の経過(症例1)a:定位放射線療法開始後C5日目.Cb:定位放射線療法開始後C12日目.結膜病変,虹彩膨隆の改善を認めた.Cc:定位放射線療法開始後C23日目.図4右眼の眼底所見の経過(症例2)a:術中所見.びまん性の強い硝子体混濁を認めた.Cb:硝子体手術C20日後.鼻上側に網膜浸潤を認めた.Cc:IVMTX施行C7日後.網膜浸潤の縮小を認めた.Cd:治療開始C4年半後.網膜病変の瘢痕化を認めた.CII考按め,硝子体生検でCENKLと診断した.IVMTX,局所放射線療法,化学療法を施行し,治療後C6年間寛解を維持した.症例C1は,ENKLの既往があり,髄腔内抗癌剤投与で加療ENKLは,アジアおよび南米に好発する7)進行の早い悪性中に片眼の結膜病変,虹彩膨隆,前房蓄膿,眼窩内病変を認新生物であり,致死率の高い疾患である2,8).ENKLによるめた.結膜生検によりCENKLと診断し,局所放射線療法を眼内リンパ腫は非常にまれであるため,本疾患の報告は少な行った.治療への反応は良好で前眼部の病変は消退し,眼圧く,眼所見の特徴や治療効果については明らかではない.は正常範囲内へ下降したが,視機能の改善には至らなかった.Pubmedを用いた検索によって,NK/T細胞性眼内リンパ症例C2は,片眼にびまん性の強い硝子体混濁と網膜浸潤を認腫の症例報告を表1に示す.一般的に,B細胞性眼内リンパ表1過去に報告されたNK/T細胞性眼内リンパ腫年齢性別初見局所治療全身治療転帰文献番号C36男硝子体混濁,視神経乳頭浮腫,網膜血管周囲浸潤,なし化学療法,寛解C9C脈絡膜浸潤,右内直筋肥厚髄腔内抗癌剤投与38男虹彩膨隆局所放射線療法なし寛解C10C51男漿液性網膜.離,眼瞼下垂なし化学療法不明C11C53男前房炎症,虹彩結節なし化学療法初診からC3カ月後,多臓器不12C全のため死亡C55男前房炎症,角膜後面沈着物,前房蓄膿,網膜浸潤局所放射線療法髄腔内抗癌剤投与治療からC2カ月後,腎不全の13Cため死亡C65男虹彩膨隆,硝子体混濁なしなし.筋への腫瘍浸潤のため全身14C状態が悪化C86男硝子体混濁なしなし外傷性頭蓋内出血のため死亡C15C43女虹彩結節,前房蓄膿なし化学療法初診からC2年後,敗血症のた16Cめ死亡C50女硝子体混濁,網膜浸潤IVMTX,局所放射線療法化学療法寛解C17C50女硝子体混濁,漿液性網膜.離,脈絡膜浸潤なし化学療法,初診からC1カ月後,多臓器不18Cステロイド内服全のため死亡C54女硝子体混濁,網膜・脈絡膜浸潤,漿液性網膜.離なし化学療法治療からC4カ月後,肝不全・19C腎不全のため死亡C55女結膜充血,前房炎症,硝子体混濁,漿液性網膜.離,なし化学療法初診からC1カ月後,多臓器不20C眼窩周囲発.全のため死亡C57女結膜充血,硝子体混濁,虹彩結節,眼瞼下垂,IVTA,局所放射線療法化学療法診断からC3カ月後,敗血症の21C眼球運動制限,瞳孔散大ため死亡C63女角膜後面沈着物,硝子体混濁,血管周囲漏出CIVMTX髄腔内抗癌剤投与寛解C22C66女結膜充血,硝子体混濁,網膜浸潤IVMTX,局所放射線療法化学療法不明C23C73女結膜充血,角膜後面沈着物,右眼窩病変局所放射線療法化学療法,寛解C24髄腔内抗癌剤投与右眼の治療C10カ月後,左眼に角膜後面沈着物,(再発後)CIVMTX(再発後)化学療法寛解硝子体混濁腫では,硝子体混濁を示す症例がもっとも多く,網膜下病巣や,前房内細胞,角膜後面沈着物を認めることはあるが虹彩の病変はまれで,わが国で行われた眼内リンパ腫C217例の多施設調査では虹彩膨隆はC1例もない1).一方,NK/T細胞性眼内リンパ腫では,虹彩結節や虹彩膨隆,前房蓄膿など虹彩に関連した病変が報告されている10,12.14,16,21).また,眼窩の病変9,24)や網膜浸潤13,19,23),脈絡膜浸潤9,18,19)などいずれもB細胞性眼内リンパ腫と比較して組織への侵襲が強い病変が報告されている.本症例でも,過去の報告と同様に眼窩の病変をきたし,高度の硝子体混濁や虹彩病変,前房蓄膿などCB細胞性眼内リンパ腫と比較して程度の激しい眼所見を呈した.ENKLは鼻腔内に病変をきたすことが多く,直接浸潤によって眼窩病変をきたす.虹彩病変や網膜浸潤,脈絡膜浸潤に関しては,網膜血管周囲浸潤や蛍光造影検査での血管周囲漏出など血管の反応性を示す報告もあり9,22),血管を介して眼内に病変が出現する可能性が考えられる.造血器腫瘍診療ガイドラインでは,鼻腔周辺原発で病変が頸部リンパ節を超えて広がっている場合,鼻腔など上気道以外での発生例,初回治療後再発または部分奏効以下のENKLに対しては,SMILE療法を行うことが推奨されている.症例C1はCSMILE療法後に生じた眼内病変であったが,症例C2は原発性眼内リンパ腫であり,ガイドラインに準じてSMILE療法を選択した.B細胞性眼内リンパ腫に対する局所治療としてはCIVMTXが有効とする報告があり25,26),脳腫瘍診療ガイドラインでも推奨されている.NK/T細胞性眼内リンパ腫の治療は報告によってさまざまであるが,多臓器不全などのために死亡に至った症例が多くみられた12,13,18.20).一方で,化学療法と局所放射線療法やCIVMTXを組み合わせて寛解が得られた症例が散見される10,17,22,24).本症例でも,IVMTXや局所放射線療法が有効であった.NK/T細胞性リンパ腫はCEBVが関連するとされている2,3).過去の報告ではCNK/T細胞性眼内リンパ腫においても,前房水や硝子体からCEBVが検出されている12.14,16,18,19,23).今回のC2症例とも結膜生検,硝子体生検によりCEBVの存在が確認されており,眼病変に関してもCEBVが関与すると考えられた.原発性CNK/T細胞性眼内リンパ腫は過去にC4例報告されている15,17,18,23).寛解を維持したという報告17)や多臓器不全で死亡したという報告18)があり,転帰はさまざまである.症例C2は眼内に限局する原発性眼内リンパ腫であり,長期にわたり寛解を維持したが,眼内に限局する場合でも経過中に中枢神経系への浸潤や転移をきたし生命予後にかかわる可能性があるため,注意が必要である.本症例と過去の症例報告から,NK/T細胞性眼内リンパ腫は眼内と眼窩内の両方に病変が出現したり,虹彩膨隆,高度の硝子体混濁など,B細胞性眼内リンパ腫よりも高度の眼病変を示すことが多い.一般的には眼内リンパ腫を疑って硝子体生検を行う場合は,B細胞性リンパ腫に対する検査であるCIL-10や免疫グロブリン重鎖の遺伝子再構成,フローサイトメトリーでの免疫グロブリン軽鎖のCkappa鎖とClambda鎖の発現の偏りなどを検討するが,NK/T細胞リンパ腫ではこれらは陰性となる.したがって,虹彩の所見や網膜・脈絡膜の病変が高度の場合はCNK/T細胞リンパ腫を考慮した結果の解釈と,CD56やCEBVの検討などを用いた検査の追加が必要である.IVMTXや放射線療法で局所の病変の制御はできたが,早期診断や治療法の確立にはさらなる症例の集積が必要である.文献1)KimuraK,UsuiY,GotoH:Clinicalfeaturesanddiagnos-ticCsigni.canceCofCtheCintraocularC.uidCofC217CpatientsCwithCintraocularClymphoma.CJpnCJCOphthalmolC56:383-389,C20122)WoogCJJ,CKimCYD,CYeattsCRPCetal:NaturalCkiller/T-cellClymphomawithocularandadnexalinvolvement.Ophthal-mologyC113:140-147,C20063)YangCY,CLuoCQ,CHeCWCetal:PrimaryCocularCnaturalCkill-er/T-celllymphomas:clinicopathologicfeaturesanddiag-nosis.OphthalmologicaC221:173-179,C20074)LiX,YuH,FuXetal:ClinicalanalysisofpatientswithprimaryCandCsecondaryCextranodalCnaturalCkiller/T-cellClymphomaofcentralnervoussystem.HematolOncolC41:C267-274,C20215)ElyA,EvansJ,SundstromJMetal:OrbitalinvolvementinextranodalnaturalkillerTcelllymphoma:anatypicalcasepresentationandreviewoftheliterature.OrbitC31:C267-269,C20126)Takimoto-ShimomuraT,ShimuraY,NagataKetal:Pri-maryintraocularnaturalkiller-celllymphomasuccessfullytreatedCusingCaCmultidisciplinaryCstrategy.CAnnCHematolC98:2617-2619,C20197)KwongYL:NaturalCkiller-cellmalignancies:diagnosisCandtreatment.LeukemiaC19:2186-2194,C20058)ChanCJK,CSinCVC,CWongCKFCetal:NonnasalClymphomaCexpressingthenaturalkillercellmarkerCD56:aclinico-pathologicCstudyCofC49CcasesCofCanCuncommonCaggress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Vogt-小柳-原田病類似症状で発症したMTX-LPD の1 例

2023年3月31日 金曜日

《第55回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科40(3):389.394,2023cVogt-小柳-原田病類似症状で発症したMTX-LPDの1例大久保麻希坂本万寿夫岩橋千春日下俊次近畿大学医学部眼科学教室CACaseofMTX-LPDwithOcularManifestationsSimilartoVogt-Koyanagi-HaradaDiseaseMakiOkubo,MasuoSakamoto,ChiharuIwahashiandShunjiKusakaCDepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicineC目的:Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)類似の眼病変で発症したメトトレキサート(MTX)関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の症例を報告する.症例:68歳,男性.両眼視力低下と眼瞼腫脹を自覚し眼科受診,初診時視力は右眼(0.15),左眼(0.2),両眼結膜浮腫,前房内炎症,脈絡膜肥厚,右眼漿液性網膜.離を認めた.同時期より間欠性の発熱や頸部リンパ節腫脹などがみられたこと,血清CsIL-2R36,478CU/ml,前房水CIL-10/IL-6>1より,リンパ腫病変を疑い頸部リンパ節生検を施行した.びまん性大細胞型CB細胞性リンパ腫であり,また,3年前に発症した関節リウマチに対してC3カ月前よりCMTXの内服が開始されていたことより,MTX-LPDと診断した.MTX休薬を行うも全身症状が悪化したため,初診C2週間後よりCR-CHOP療法を施行,治療開始C4週間後には両眼とも視力(0.9)となり,眼炎症所見は速やかに改善した.しかし,4カ月後に中枢神経病変を認め,R-MPV療法を施行するも中枢神経病変増悪のため発症C7カ月後に死亡した.経過中,眼所見の再発はみられなかった.結論:MTX-LPDに原田病類似の眼所見を伴う可能性がある.CPurpose:Toreportapatientwithmethotrexate(MTX)-associatedlymphoproliferativedisorders(MTX-LPD)CwhoCpresentedCwithCocularCmanifestationsCsimilarCtoVogt-Koyanagi-Harada(VKH)disease.CCasereport:A68-year-oldmanpresentedwiththeprimarycomplaintofbilateralblurredvisionandswellingoftheeyelids.Anophthalmicexaminationshowedconjunctivaledemaandchoroidalthickeninginbotheyes,aswellasaserousreti-naldetachmentintherighteye,whichmatchedthesymptomsofVKH.Intermittentfeverandcervicallymphade-nopathy,CsymptomsCofCsystemicCinvolvement,CwereCobserved,CandCaCcervicalClymphCnodesCbiopsyCrevealedCdi.useClargeB-celllymphoma.HewasdiagnosedwithMTX-LPDbasedonhishistoryoforalMTXuse.MTXdiscontinu-ationwasine.ective,soR-CHOPtherapywasadministered.Fourweeksaftertreatmentinitiation,theocularmani-festationsimprovedrapidlyandtheconcentrationofinterleukin-10intheanteriorchamberwasnormalized.How-ever,CtheCpatientCdiedC7CmonthsCafterCtreatmentCdueCtoCtheCexacerbationCofCaCcentralCnervousCsystemClesion.CConclusion:MTX-LPDmaybeaccompaniedbyVKH-likeocularmanifestations.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(3):389.394,C2023〕Keywords:MTX-LPD,関節リウマチ,漿液性網膜.離,脈絡膜肥厚,眼内リンパ腫.methotrexate-associatedlymphoproliferativedisorders,rheumatoidarthritis,serousretinaldetachment,choroidalthickening,intraocularClymphoma.Cはじめにメトトレキサート(methotrexate:MTX)は葉酸代謝拮抗作用を有し抗腫瘍薬として悪性リンパ腫や急性白血病などに用いられる薬剤である.一方でCMTXは低用量で免疫抑制薬として自己免疫疾患にしばしば用いられており,とくに関節リウマチ(rheumatoidarthritis:RA)に対し,日本では2000年頃より治療の第一選択薬として使用されている.1991年,Ellemanら1)によりCMTX投与中のリンパ腫発症が報告され,同様な症例の報告数増加に伴いメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associatedClymphop-〔別刷請求先〕大久保麻希:〒589-8511大阪府大阪狭山市大野東C377-2近畿大学医学部眼科学教室Reprintrequests:MakiOkubo,DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicine,377-2Ohno-higashi,Osakasayama,Osaka589-8511,JAPANC図1治療前後の前眼部写真および頭部単純MRI画像(T2W画像)a:初診時右眼前眼部写真.耳側を中心に著明な結膜浮腫を認める.b:治療開始C4週間後の右眼前眼部写真.結膜浮腫は改善している.c:治療前の頭部CMRI.両眼眼球周囲,眼窩に軟部影(.),右眼の漿液性網膜.離を認める(▲).d:治療開始C5カ月後の頭部MRI.眼球周囲,眼窩の軟部影は消失している.roliferativedisorders:MTX-LPD)として疾患概念が確立された.2008年の世界保健機関(WorldCHealthCOrganiza-tion:WHO)によるリンパ系腫瘍の組織分類第C4版では「他の医原性免疫不全症関連増殖性疾患」の一つに分類されている2).MTX-LPDの多くはCRA患者であり,原因は明らかではないものの欧米よりわが国からの報告が多い.病理組織像はびまん性大細胞型CB細胞性リンパ腫(di.useClargeCB-celllymphoma:DLBCL)がC35.60%,Hodgkinリンパ腫がC12.25%とされる3).60%の症例で節外病変を生じ,肺,骨髄,消化管・皮膚の順に多く4),近年は中枢神経系(centralner-voussystem:CNS)病変の報告が散見される5).一方,筆者らの知る限りでは眼科領域におけるCMTX-LPDは眼窩6)および眼内7)に発症した症例がC1例ずつであり,いずれも全身所見を伴わず眼単独病変である.今回,Vogt-小柳-原田病(以下,原田病)類似病変で眼症状を発症し,同時に間欠性の発熱や体重減少などリンパ腫に伴う全身症状も出現したMTX-LPDの症例を経験したので報告する.CI症例68歳,男性.3年前にCRAと診断され,プレドニゾロン2.5Cmg/日とサラゾスルファピリジンC1Cg/日で加療されていたが,RAのコントロール不良のため1年前のC12月よりCMTX8Cmg/週を追加されていた.翌年C3月より両眼の視力低下と眼瞼腫脹を自覚,近医眼科で右眼漿液性網膜.離(serousCretinaldetachment:SRD)と両眼脈絡膜肥厚を認めたため,原田病疑いでC4月に近畿大学病院眼科を紹介受診となった.初診時矯正視力は右眼(0.15),左眼(0.2),眼圧は右眼C9CmmHg,左眼C7CmmHgであった.細隙灯顕微鏡検査で,両眼の結膜浮腫,前房内炎症C1+,角膜後面沈着物を認めた(図1a).眼底検査で右眼のCSRDを認め,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で両眼の脈絡e図2初診時眼底写真および治療前後のOCT所見a,b:初診時広角眼底写真(Ca:右眼,b:左眼).硝子体混濁や網膜下腫瘤性病変は認めない.c,d:初診時黄斑部水平断のCOCT(Cc:右眼,Cd:左眼).両眼の脈絡膜肥厚と右眼の漿液性網膜.離を認める.Ce,f:治療開始C4週間後の黄斑部水平断のCOCT(Ce:右眼,f:左眼).両眼の脈絡膜肥厚と右眼の漿液性網膜.離が改善している.膜肥厚がみられた(図2a~d).網膜下の腫瘤性病変や硝子体混濁はみられなかった.急性期原田病にみられる頭痛,頭髪の違和感,耳鳴り,難聴はみられなかったが,全身症状としてC3月頃より間欠性の発熱,体重減少,4月以降には頸部リンパ節腫脹とそれに伴う食事摂取困難を伴っていた.血液検査で白血球数C5,950/μl,血色素量C12.2g/dl,血小板数137,000/μl,CRP6.941Cmg/dl,乳酸脱水素酵素(LDH)989U/l,可溶性インターロイキン-2受容体(sIL-2R)36,478CU/ml,フェリチンC1,550Cng/dl,EBV-DNA定量C3.18ClogIU/mlであった.全身状態不良のため,蛍光造影検査や眼病巣の生検は困難であったが,前房内のCIL-10,およびCIL-6の測定を行ったところ,IL-10:440Cpg/ml,IL-6:386Cpg/mlであり,眼内リンパ腫を疑う結果であった.血液内科の診察では悪性リンパ腫のCB症状である間欠性の発熱や体重減少がみられたこと,sIL-2RおよびCLDHの異常高値などの所見より悪性リンパ腫が疑われた.頸部および胸腹部CCTで多発する頸部リンパ節腫大(図3a),頭部CMRIでは眼窩周囲に軟部影を認めたがCCNS病変はみられなかった(図1c).頸部リンパ節生検を施行し,大型のリンパ球様の腫瘍細胞のびまん性増殖を認めた.免疫染色で,Bリンパ球表面抗原(CD20)陽性,多数のCKi-67陽性細胞を認めたことから,組織型はびまん性大細胞型(DLBCL)と判断された(図3c,d).MTX投与の既往や病理検査結果からCMTX-LPDと診断された.初診時よりCMTXを休薬していたものの,全身状態図3頸部リンパ節の病理組織検査およびCNS病変a:初診時頸部CCT.リンパ節腫大を複数認める(.).b:治療C7カ月後の頭部CMRI.左前頭部の病変(〇)による脳室圧迫がみられる.c:頸部リンパ節生検.HE染色(×200).大型のリンパ球様腫瘍細胞のびまん性増殖を認める.d:頸部リンパ節生検.CD20染色(×200).CD20陽性細胞を多数認める.の悪化とCsIL-2RがC43,023CU/mlまで上昇したため,初診日よりC2週間後から全身化学療法としてCR-CHOP(リツキシマブ,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)療法を開始した.治療開始C4週間後に視力は右眼(0.9),左眼(0.9)まで改善し,結膜浮腫は消失し(図1b),OCTで両眼の脈絡膜肥厚や右眼のCSRDの改善がみられた(図2e,f).R-CHOP療法をC4クール施行し,治療開始C3カ月後には全身のリンパ節腫脹は縮小,sIL-2Rも579CU/mlまで低下した.しかし,4カ月後のCMRIでCCNS病変が出現しCR-MPV(リツキシマブ,メトトレキサート,オンコビン,プロカルバジン)療法を開始した.5カ月後診察時は両眼(1.0),眼窩軟部影の再燃,SRDおよび脈絡膜肥厚は認めず(図1d),前房水CIL-10:20Cpg/mlと眼病変再燃はみられなかった.しかし,治療開始C6カ月以降にCCNS病変の拡大により脳室圧迫が進行(図3b),CNS病変に対する放射線治療が追加されるも意識障害の出現と全身状態の急激な悪化のため治療開始C7カ月後に死亡した.CII考察本症例はCRAに対するCMTX導入C3カ月後に全身病変とともに原田病類似の眼病変が同時期に出現した患者であった.本症例では初診時の全身状態が不良のため硝子体生検や結膜生検が施行できず細胞診による眼疾患の診断は不可能であったが,前房水CIL-10/IL-6比がC1を超えていたこと,化学療法により早期に眼内病変および結膜病変も改善したこと,前房水中のCIL-10濃度が正常化したことから眼症状もCMTX-LPDに伴うものと考えられた.また,過去のCMTX-LPDに伴う眼病変では全身病変と合併した報告はなく,本症例は,MTX-LPDの全身病変と眼病変を同時期に発症したまれな一例と考えられる.MTX-LPDの発症年齢中央値はC65.70歳,RAの罹病期間中央値はC10年以上,MTXの服用期間中央値はC5.10年とされているが,本症例のようにCMTX内服開始後数カ月で発症することもあり8),MTX服用期間にかかわらずCRAに対しCMTX服用中の患者では常にCMTX-LPDの発症リスクを考え,疑わしい場合には本症例のようにリンパ節生検を行い確定診断することが重要である.本症例の眼病変は脈絡膜肥厚とCSRDを伴っており原田病が鑑別疾患としてあげられる.全身状態として発熱や倦怠感があったものの,原田病に特徴的な頭痛,難聴,皮膚症状はみられず,化学療法中もプレドニゾロンの増量なく眼病変は改善しており,症状や経過から原田病とは一致しないと考えられた.プレドニゾロンの投与歴やCOCT所見からは中心性漿液性網脈絡膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)の可能性も考えられるが,結膜浮腫や前房内炎症の眼随伴所見が一致せず,化学療法で脈絡膜肥厚も含め眼病変が改善していることからCCSCも否定的と考えられた.眼科領域におけるCMTX-LPDの報告は少ないが,本症例は頸部リンパ節の生検の結果,DLBCLであったことから,DLBCLが約C95%を占める眼内リンパ腫(intraocularClym-phoma:IOL)と類似した病態であることが予想される.IOLでみられる所見は硝子体混濁(91%)や網膜下の腫瘤性病変(57%)が多く,虹彩炎(31%),角膜後面沈着物(25%),網膜血管炎(10%)など多彩であるが9),原田病に類似したCSRDや脈絡膜肥厚を伴う症例はCFukutsuらの報告を含む数例のみである10).Soneら7)は硝子体混濁が主体とするMTX-LPDの眼内病変に対して硝子体手術とCMTX休薬で軽快した症例を報告しており,MTX-LPDにおいてもさまざまな眼所見や経過を呈する可能性がある.IOLでみられるSRDや脈絡膜肥厚のメカニズムは明らかではないが,Chanら11)はCIOL眼の脈絡膜生検の結果として網膜と網膜下に悪性リンパ腫細胞,脈絡膜にはCT細胞が存在すること,このT細胞は腫瘍細胞に対する免疫反応を反映し,T細胞の増加が脈絡膜間質の面積の増加に寄与していると考えられることを報告している.一方,リンパ腫細胞の脈絡膜浸潤の可能性も否定されておらず,Fukutsuら10)はCIOLにおいても腫瘍細胞による脈絡膜肥厚と循環障害がCSRD出現に関与していると推測している.以上のことから本症例においても脈絡膜における炎症性細胞もしくはリンパ腫細胞の急激な浸潤による脈絡膜肥厚と脈絡膜循環障害によりCSRDが生じた可能性が考えられる.MTX-LPDの機序は不明な点も多いが,RAなどの自己免疫疾患による慢性炎症やCMTXの投与によるリンパ増殖抑制機能低下がCLPD発症に関与すると考えられている.また,EBVの関与も指摘されており,MTX投与による免疫抑制がCEBVを再活性化することでリンパ増殖をきたすとされ,MTX-LPD患者のC60%がCEBV陽性である12).MTX-LPDを疑った場合は,MTXを休薬することで約C2/3の患者で病変は自然退縮するが,自然退縮が得られなかった症例では化学療法が行われる.徳平ら13)はCDLBCL群では非退縮率が高い傾向にあり,またCMTX-LPD発症時のCCRP,LDH,sIL-2Rが高い群(平均値CCRP5.6Cmg/dl,LDH403.5CIU/l,CsIL-2R3,100CU/ml)では非退縮例が多いと報告している.本症例ではCMTXを休薬するも全身状態悪化とCsIL-2Rのさらなる上昇がみられたため化学療法を行った.化学療法により眼内病変や結膜病変はC1カ月以内に消失し視力の改善も得られたが,4カ月後にCCNS病変が出現し,7カ月後にCCNS病変増悪のため死亡した.EBV陽性であったことからMTX-LPDの発症リスクを有し,また組織型のCDLBCLと初診時のCCRP,LDH,sIL-2Rの値が大幅に非退縮群の平均値を上回っていたことから予後不良群であったと考えられる.IOLではC16%の症例で眼病変の診断時にCCNS病変の既往があり,眼病変の診断時にはCCNS病変を伴わない症例においても,経過中にCCNS病変を発症する症例も多く,眼病変とCCNS病変は前後して発症することが多い9).同様に眼病変を伴うCMTX-LPDではCCNS病変を後に発症する可能性があるため,経過観察中CCNS病変の出現に注意する必要があると考えられる.今回筆者らは,MTX服用中に原田病類似の眼病変および全身のリンパ腫病変を生じたC1例を経験した.MTXを休薬するも改善なく,化学療法で眼病変は改善したものの半年後に発症したCCNS病変により不幸な転帰をたどった.MTX-LPDでは原田病類似の眼病変を合併する可能性があり,MTX服用中のCRA患者で原田病に似た病変を呈する患者では,MTX-LPDを鑑別疾患にあげる必要があると考えられた.利益相反:日下俊次[F]参天製薬千寿製薬文献1)EllmanCMH,CHurwitzCH,CThomasCCCetal:LymphomaCdevelopingCinCaCpatientCwithCrheumatoidCarthritisCtakingClowCdoseCweeklyCmethotrexate.CJCRheumatolC18:1741-1743,C19912)SwerdlowCSH,CCampoCE,CHarrisCNLCetal(eds):WHOCclassi.cationCofCtumoursCofChaematopoieticCandClymphoidCtissues.WHOclassi.cationoftumours,4thedition,volume2,IRAC,2008C3)SwerdlowCSH,CCampoCE,CHarrisCNLCetal(eds):WHOCclassi.cationCofCtumoursCofChaematopoieticCandClymphoidCtissues.WHOclassi.cationoftumours,revised4thedition,Volume2,IRAC,20174)TokuhiraM,SaitoS,OkuyamaAetal:Clinicopathologicinvestigationofmethotrexate-inducedlymphoproliferativedisorders,CwithCaCfocusConCregression.CLeukCLymphomaC59:1143-1152,C20185)UnedaCA,CHirashitaCK,CKandaCTCetal:PrimaryCcentralCnervousCsystemCmethotrexate-associatedClymphoprolifera-tivedisorderinapatientwithrheumatoidarthritis:casereportandReviewofLiterature.NMCCaseRepJC7:121-127,C20206)KobayashiCY,CKimuraCK,CFujitsuCYCetal:Methotrexate-associatedorbitallymphoproliferativedisorderinapatientwithCrheumatoidarthritis:aCcaseCreport.CJpnCJCOphthal-molC60:212-218,C20167)SoneK,UsuiY,FujiiKetal:Primaryintraocularmetho-trexate-relatedClymphoproliferativeCdisorderCinCaCpatientCwithCrheumatoidCarthritisCundergoingClong-termCmetho-trexateCtherapy.COculCImmunolCIn.ammC29:456-459,C2021C8)BurgCMR,CSchneiderSW:EarlyConsetCofCmethotrexate-associatedClymphoproliferativeCdisorderCmimickingCHodg-kin’slymphoma.HautarztC73:71-74,C20229)KimuraCK,CUsuiCY,CGotoCHCetal:ClinicalCfeaturesCandCdiagnosticCsigni.canceCofCtheCintraocularC.uidCofC217CpatientsCwithCintraocularClymphoma.CJpnCJCOphthalmolC56:383-389,C201210)FukutsuCK,CNambaCK,CIwataCDCetal:Pseudo-in.am-matoryCmanifestationsCofCchoroidalClymphomaCresemblingCVogt-Koyanagi-Haradadisease:caseCreportCbasedConCmultimodalimaging.BMCOphthalmolC20:94,C202011)ChanCC:MolecularCpathologyCofCprimaryCintraocularClymphoma.CTransCAmCOphthalmolCSocC101:275-292,C200312)IchikawaCA,CArakawaCF,CKiyasuCJCetal:Methotrexate/CiatrogenicClymphoproliferativeCdisordersCinCrheumatoidarthritis:histology,CEpstein-BarrCvirus,CandCclonalityCareCimportantCpredictorsCofCdiseaseCprogressionCandCregres-sion.EurJHaematolC91:20-28,C201313)徳平道英,木崎昌弘:臨床的視点から理解するメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患.臨床血液C60:932-943,C2019C***

眼内リンパ腫の経過中にAZOOR様網膜病変を認めた1例

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1563.1566,2018c眼内リンパ腫の経過中にAZOOR様網膜病変を認めた1例牧野輝美1,2)小川俊平1,2)中野匡1)酒井勉1,3)*1東京慈恵会医科大学附属病院眼科*2厚木市立病院眼科*3東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科CACaseofIntraocularLymphomawithAcuteZonalOccultOuterRetinopathy-likePhenotypeTerumiMakino1,2)C,ShumpeiOgawa1,2)C,TadashiNakano1)andTsutomuSakai1,3)1)DepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,AtsugiCityHospital,3)DepartmentofOphthalmology,JikeiDaisanHospitalC目的:Barileらは,眼内リンパ腫の初期病変として急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)様網膜病変を報告した.今回筆者らも同様の症例を経験したので報告する.症例:56歳,男性.2011年C6月より硝子体混濁を伴う汎ぶどう膜炎を認め,眼内リンパ腫を疑い硝子体生検を行うも確定診断は得られなかった.2012年C5月,感覚性失語,頭痛が出現し,頭部CMRIにて右側頭葉に腫瘤を認めた.びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫と診断され,化学療法と放射線療法が開始された.2014年C2月から光視症,左眼視力低下がみられた.光干渉断層計では黄斑部視細胞内節Cellipsoidzone(EZ)の不明瞭化,多局所網膜電図では黄斑部の応答密度の低下を認めた.2週後,自覚症状の改善,EZの明瞭化が確認された.2015年C2月,右眼にも同症状を認めたが自然寛解した.結論:眼内リンパ腫関連網膜症の表現型の一つとしてCAZOOR類似の網膜症に留意する必要がある.CPurpose:ToCreportCaCcaseCwithCacuteCzonalCoccultCouterretinopathy(AZOOR)C-likeCphenotypeCsecondaryCtoCintraocularlymphoma.Case:A56-year-oldmalepresentedwithpanuveitiswithvitreousopacityfrom2011June.DiagnosticCvitrectomyCwasCperformedCforCexaminationCofCintraocularClymphoma,CbutCtheCresultsCdidCnotCleadCtoCdiagnosisofintraocularlymphoma.In2012May,hecomplainedofheadacheandhadsensoryaphasia.BrainMRIshowedatumorintherighttemporallobe,leadingtodiagnosisofdi.uselargeB-celllymphoma.In2014Febru-ary,CheCcomplainedCofCacuteCreducedCvisionCwithCphotophobiaCinCtheCleftCeye.CFunduscopicCexaminationCofCtheCleftCeyeshowednoabnormallesion.Spectral-domainopticalcoherencetomographyrevealeddisruptionoftheellipsoidzone(EZ)andCmultifocalCelectroretinogramCdemonstratedCaCdecreaseCofCcentralCamplitude,CsuggestingCAZOOR.CTwoCweeksClater,CthereCwasCrecoveryCofCEZ,CwithCresultantCspontaneousCresolutionCofCmacularCmorphologyCandCfunctioninsixmonths.In2015February,therighteyehadthesameconditionandclinicalcourse.Conclusion:CCliniciansshouldbeawareofAZOOR-likephenotypeinatypicalmanifestationsofintraocularlymphoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(11):1563.1566,C2018〕Keywords:眼内リンパ腫,B細胞リンパ腫,急性帯状潜在性網膜外層症,光干渉断層計,多局所網膜電図.intra-ocularlymphoma,Bcelllymphoma,AZOOR,opticalcoherencetomography,multifocalelectroretinogram.Cはじめに眼内リンパ腫には,眼および中枢神経を原発とするものと,全身の悪性リンパ腫の経過中に眼内に病変を生じるものがある.このうちとくに眼に初発するリンパ腫は,眼内原発リンパ腫(primaryintraocularlymphoma:PIOL)とよばれる.PIOLは,組織学的にその大部分が非CHodgkinびまん性大細胞型CB細胞リンパ腫に分類され,悪性度がきわめて高い1,2).加えてCPIOLは,診断に難渋するいわゆる仮面症候群の代表的疾患である.ぶどう膜炎に類似した所見は,いわゆる炎症反応とは異なり腫瘍細胞播種によるものであるが,ステロイドに反応があるため鑑別は容易ではない.眼内リンパ腫の眼底所見として,硝子体混濁,黄白色の網膜下浸潤病変,漿液性網膜.離,.胞様黄斑浮腫様所見,視神経乳頭浮腫,網膜血管炎様所見,黄斑部卵黄様病巣があげ〔別刷請求先〕牧野輝美:〒105-8461東京都港区西新橋C3-25-8東京慈恵会医科大学附属病院眼科Reprintrequests:TerumiMakino,DepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,3-25-8Nishishimbashi,Minato-ku,Tokyo105-8461,JAPANCられる.これらに加えてCBarileらは,2013年にCPIOLの初期病変として急性帯状潜在性網膜外層症(acutezonaloccultouterretinopathy:AZOOR)類似の網膜症が認められたC1症例を報告した3).今回筆者らは,眼内リンパ腫経過中にCAZOOR類似の網膜症が認められた症例を経験したので報告する.CI症例患者:56歳,男性.初診日:2011年C7月6日.主訴:両視力低下,飛蚊症.既往歴:高血圧.現病歴:2011年C6月末より両眼の視力低下,飛蚊症を自覚し,近医で両眼硝子体混濁を指摘され,同年C7月C6日東京慈恵会医科大学附属病院(以下,当院)紹介受診となった.初診時所見:視力はCVD=0.4(1.5C×-0.75D(cyl-1.25DAx95°),VS=0.3(1.5C×.1.25D(cyl.1.00DAx95°)で,眼圧は両眼C18CmmHgであった.両眼に豚脂様角膜後面沈着物,前房内細胞およびオーロラ様硝子体混濁を認めた.採血,胸部CX線に異常はなかった.硝子体混濁の改善がみられなかったため,眼内リンパ腫を疑い,同年C8月C9日左眼硝子体生検を施行した.硝子体液の精査の結果は,細胞診クラスCIII,IL-10:1,310Cpg/dl,IL-6:286Cpg/dlで,IgH再構成は認めなかった.同年C7月のCPET-CT,胸腹部造影CCT,頭部CMRIでは異常はなかった.確定診断が得られなかったこと,右眼硝子体混濁が改善しないことから,2012年C3月6日,右眼の硝子体生検を施行した.硝子体液の精査の結果は,細胞診クラスCIII,IL-10:1,320Cpg/dl,IL-6:324Cpg/dlで,IgH再構成は認めなかった.この時点で,眼内リンパ腫の確定診断は得られなかったが,眼内リンパ腫疑いとして診断した.術後に自覚症状の改善が認められ,全身精査で有意な所見がなかったことから経過観察となった.2012年C6月から頭痛,感覚性失語が出現するようになり,当院脳神経外科を受診した.頭部CMRIにて右側頭葉に約C32mmの腫瘤が指摘され(図1),6月C18日開頭生検を施行し,病理検査からびまん性大細胞型CB細胞リンパ腫(DLBCL)の診断に至った.この結果から,本症例は眼内リンパ腫(PIOL疑い)と診断し,眼病変が脳に転移した可能性を考慮した.7月C3日よりメトトレキサート(MTX)大量投与を開始するも,副作用として肝障害がみられ,2コース目以降投与量をC80%に減量し,計C4コースを行った.9月C7日より全脳照射(眼球含む)40CGy/20Cfrも開始され,11月には脳病変の寛解が得られた.この間,視覚に関する自覚症状はなかった.2014年C2月C19日に左眼視力低下,光視症を自覚し,当院眼科を再診した.再診時視力はCVD=0.4(1.5C×.0.75D(cylC.1.25DAx95°),VS=0.3(0.7C×.1.25D(cyl.1.00DAx95°)で,眼圧は両眼C18CmmHgであった.検眼鏡的に眼底に有意な所見はなかったが,自発蛍光では左眼黄斑部に軽度過蛍光領域がみられた(図2).光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)において,ellipsoidCzone(EZ),interdigitationCzone(IZ)の不明瞭化(図3上)を認めたが,網膜色素上皮層には不整な所見を認めなかった.多局所網膜電図では黄斑部の応答密度の著明な低下を認めた(図3下).血液検査にて,自己抗体含め,抗網膜抗体は陰性であった.以上よりCAZOOR類似の網膜症と診断し,経過観察の方針となった.その後,2週で自覚症状および視力の改善,EZの明瞭化を認め,6カ月後に視力(1.0)となり,EZはほぼ復活した(図4).多局所網膜電図でも黄斑部応答密度の改善がみられた(図5).その後も再発なく経過.2015年C2月右眼にも同様の症状,所見を認めたが,自然に寛解した.2016年C3月に精巣への転移,7月には脳病変の再発を認め,その後肺炎を合併し,8月C23日に永眠された.CII考察本症例の特徴は,眼内リンパ腫の経過中に光視症を呈し,OCTでCEZの不明瞭化による網膜外層の形態的障害と,mfERGで応答密度の低下による網膜外層の機能的障害を認めたことであり,眼内リンパ腫の背景がなければCAZOORの診断に合致する点である.AZOORはC1992年にCGassらが報告した原因不明の網膜外層障害疾患群である4).若年から中年の健康な女性の片眼あるいは両眼に好発し,光視症,または視野障害を主症状とする.AZOORの診断は,検眼鏡的に網膜に異常所見はみられず,多局所網膜電図とCOCTで視野異常部位での網膜外層の機能・形態障害を証明することで診断される5).mfERGでは視野異常部位に一致した応答密度の低下が,OCTでは同部位に不明瞭なCEZやCIZが認められる6).また,近年では眼底自発蛍光で視野異常部位に一致して過蛍光所見がみられることが報告されている6).しかし,AZOORの病因はいまだに明らかではない.Gassらは外層網膜へのウイルス感染が原因である可能性を示唆した4).その後,原因として自己免疫性機序と炎症7,8),抗網膜抗体9,10)が重要な役割を担うとされた.これらの自己免疫による網膜の障害は,自己免疫性網膜症(autoimmuneretinopathy;AIR)とよばれる.一方,上皮由来の悪性腫瘍により自己免疫反応を生じ,視細胞を傷害するものは癌関連網膜症(cancerCassoicatedCretinopa-thy:CAR)11)とよばれ,上皮由来以外の悪性腫瘍であるリンパ腫や肉腫などによる視細胞の障害は腫瘍関連網膜症(paraneoplasticretinopathy)とよばれる.病因としては神図1頭部MRI頭部CMRIにて右側頭葉腹側に約C33Cmm大の比較的境界明瞭な腫瘤を認める.水平断(左),冠状断(右).図2眼底自発蛍光写真眼底自発蛍光では黄斑部に軽度過蛍光領域(円内)を認めた.図3多局所網膜電図多局所網膜電図では黄斑部の応答振幅の著明な低下を認めた.図5多局所網膜電図多局所網膜電図で黄斑部応答密度の改善がみられた.経組織に発現している蛋白が腫瘍組織に異所性に発現することにより,腫瘍組織に発現した蛋白と網膜の蛋白がともに非自己と認識され,自己抗体が発現し攻撃を受けることによると考えられている.CARの症状は比較的急速に進行する夜盲と視野狭窄である.AZOORで求心性視野狭窄を生じることはまれで,CARもしくはリンパ腫による腫瘍関連網膜症とは鑑別される.また,本症例において抗網膜抗体は陰性であった.本症例はCAZOORの特徴的な眼所見をすべて有しており,その診断自体は困難ではないが,眼内リンパ腫との関連が不明で,経過観察にあたっては慎重を要した.PIOLにCAZOOR類似の網膜症を呈したという報告は,筆者らが検索したところCBarileらの報告12)のみであった.Barileらの報告は,PIOLにみられた緩徐に進行したCAZOOR類似の網膜症であったが,本症例は急性発症で自然寛解が得られたこと,反対眼にも発症したことが相違点としてあげられる.これらの点から,本症例は眼内リンパ腫関連網膜症の新しい表現型の可能性が示唆される.以上,Barileらの症例と本症例の報告から,AZOORあるいはCAZOOR類似の網膜症が疑われた場合には,眼内リンパ腫の可能性があることも考慮されるべきである.眼内リンパ腫がCAZOOR類似の網膜症を引き起こす病態としては二つのことが考えられる.Barile12)らが推察する自己免疫性機序による視細胞障害の可能性とCKeinoら12)が指摘するCRPEへのリンパ球浸潤によるCRPEの機能障害と視細胞障害の可能性である.Keinoら12)はC13例C21眼の眼内リンパ腫の経時的CSD-OCT所見を検討し,経過中にC47.6%にEZの破綻,33.3%に網膜色素上皮(retinalCpigmentCepithe-lium:RPE)もしくはCRPEより内層にChyper-re.ectivenodulesが認められることを,さらにChyper-re.ectiveCnod-ulesはCMTX治療で減少あるいは消失することを報告した.本症例においては,OCT上CRPEには有意な所見を認めなかったこと,MTX大量療法後の寛解期に本病変を発症し無治療で自然寛解したことから,Barileらの自己免疫性機序による視細胞障害の可能性が疑われる.本症例では,無治療で自然寛解したが,経過観察で視機能障害の悪化が懸念される場合には,積極的な治療が必要になるかもしれない.自己免疫の関与が推察されることから,AZOORに準じて副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の全身治療が有効13,14)である可能性が示唆されるが,抗腫瘍効果を期待してCMTXやリツキシマブの硝子体内注射も考慮される必要があると考える12,15).積極的な抗腫瘍治療は,再発,反対眼の発症,他の臓器への転移を防ぐことで生命予後を改善するかもしれない.謝辞:本研究はCJSPS科研費C17K18131の助成を受けたものです.文献1)CJahnkeCK,CKorfelCA,CKommCJCetal:IntraocularClym-phoma2000-2005:resultsCofCaCretrospectiveCmulticentreCtrial.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC244:663-669,C20062)SagooCMS,CMehtaCH,CSwampillaiCAJCetal:PrimaryCintra-ocularlymphoma.SurvOphthalmolC59:503-516,C20143)BarileGR,GargA,HoodDCetal:UnilateralretinopathysecondaryCtoCoccultCprimaryCintraocularClymphoma.CDocCOphthalmolC127:261-269,C20134)GassJD:AcuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.CDondersLecture:TheCNetherlandsCOphthalmologicalCSociety,CMaastricht,CHolland,CJuneC19,C1992.CJCClinCNeuroophthal-molC13:79-97,C19935)MrejenCS,CKhanCS,CGallego-PinazoCRCetal:AcuteCzonalCoccultCouterretinopathy:aCclassi.cationCbasedConCmulti-modalimaging.JAMAOphthalmolC132:1089-1098,C20146)FujiwaraT,ImamuraY,GiovinazzoVJetal:Fundusauto-.uorescenceCandCopticalCcoherenceCtomographicC.ndingsCinacutezonaloccultouterretinopathy.RetinaC30:1206-1216,C20107)JampolLM,WireduA:MEWDS,MFC,PIC,AMN,AIBSE,andAZOOR:OneDiseaseorMany?RetinaC15:373-378,C19958)JampolCLM,CBeckerKG:WhiteCspotCsyndromesCofCtheretina:ahypothesisbasedonthecommongenetichypoth-esisCofCautoimmune/in.ammatoryCdisease.CAmCJCOphthal-molC135:376-379,C20039)TagamiM,MatsumiyaW,ImaiHetal:Autologousanti-bodiestoouterretinainacutezonaloccultouterretinopa-thy.JpnJOphthalmolC58:462-472,C201410)QianCX,WangA,DeMillDLetal:Prevalenceofantiret-inalantibodiesinacutezonaloccultouterretinopathy:Acomprehensivereviewof25cases.AmJOphthalmolC176:C210-218,C201711)SawyerRA,SelhorstJB,ZimmermanLEetal:BlindnesscausedCbyCphotoreceptorCdegenerationCasCaCremoteCe.ectCofcancer.AmJOphthalmolC81:606-613,C197612)KeinoH,OkadaAA,WatanabeTetal:Spectral-domainopticalcoherencetomographypatternsinintraocularlym-phoma.OculImmunolIn.ammC24:268-273,C201613)ChenCSN,CYangCCH,CYangCM:SystemicCcorticosteroidsCtherapyCinCtheCmanagementCofCacuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.JOphthalmol793026,C201514)SaitoCS,CSaitoCW,CSaitoCMCetal:AcuteCzonalCoccultCouterCretinopathyCinJapaneseCpatients:clinicalCfeatures,CvisualCfunction,CandCfactorsCa.ectingCvisualCfunction.CPLoSCOneC10:e0125133,C201515)SouCR,COhguroCN,CMaedaCTCetal:TreatmentCofCprimaryCintraocularClymphomaCwithCintravitrealCmethotrexate.CJpnCJOphthalmolC52:167-174,C2008***