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第一世代Ahmed ClearPath (ACP) の使用経験と6カ月の短期治療成績

2025年7月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科42(7):924.927,2025c第一世代AhmedClearPath(ACP)の使用経験と6カ月の短期治療成績千原悦夫千原智之千照会・千原眼科CAnalysisofAhmedClearPathTreatmentOutcomesOveraShort-TermPeriodof6MonthsEtsuoChiharaandTomoyukiChiharaCSensho-kaiEyeInstituteC3例C3眼の難治性緑内障眼に対して第一世代CAhmedClearPath(ACP)による治療を行った.術前C35.2±7.6CmmHg(4.7±1.5剤)であったものがC6カ月後にはC14.0±3.6CmmHgに下がり,2眼は点眼フリーとなった.視力は術前と比べて悪化したものはなかった.術後短期合併症として浅前房があったが自然治癒し,そのほかには特記するべき異常を認めなかった.3例におけるC6カ月という短期の経過観察ではあるが,経過は良好であり,第一世代CACPは十分臨床使用に耐えるものと考えられた.CHerein,wereportthesurgicaloutcomesof3eyesof3refractoryglaucomacasesthatweretreatedusingtheAhmedCClearPathR(ACP)(NewCWorldMedical)drainageCdevice.CPreoperativeCmeanCintraocularpressure(IOP)CwasC35.2±7.6CmmHg(meanCnumberCofCmedicationsCbeingused:4.7±1.5).CAtC6-monthsCpostoperative,CtheCmeanCIOPCdecreasedCtoC14.0±3.6CmmHg,CandC2CeyesCnoClongerCrequiredCeye-dropCinstillation.CMoreover,CthereCwasCnoCworseningofvisioncomparedtothepreoperativelevels.Atransientanteriorchambershallowingwasobservedasashort-termpostoperativecomplication,butitresolvedspontaneouslyandnoothersigni.cantabnormalitieswerenoted.Althoughthefollow-upperiodinthese3caseswasshort(i.e.,6months),our.ndingsrevealedthattheout-comeswerefavorableandthatACPimplantationisbothsafeande.ectiveforthetreatmentofrefractoryglauco-ma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(7):924.927,C2025〕Keywords:緑内障ロングチューブシャント,難治性緑内障,AhmedClearPath(ACP),術後眼圧,手術合併症.Cglaucomadrainagedevice,refractiveglaucoma,AhmedClearPath,post-surgicalintraocularpressure,surgicalcom-plications.Cはじめに第一世代CAhmedClearPath(ACP)はC2024年C3月に医療材料としてわが国の認可を得た新しい緑内障ロングチューブシャントである.従来,わが国のロングチューブシャントはBaerveldt緑内障インプラント(BaerveldtCglaucomaimplant:BGI)とCAhmed緑内障バルブ(AhmedCglaucomavalve:AGV)しかなかったが,3種類目のロングチューブが導入されたことになる.筆者らはこのチューブを試用する機会があったので,その6カ月の結果を報告する.I第一世代ACPの概要第一世代CACPは調圧弁のないロングチューブで,眼圧下降機序はCBGIと似ているが,プレートとCsutureholeの形状が改良され,ステントが前置されるという改善が施されている.プレートの材料はバリウムを含むシリコン素材で乳白色をしており,表面は研磨されて平滑である.FenestrationholeがC4個あり,BGIのC4個と同じである.プレートの形状はCBGIが楕円形であるのに対して第一世〔別刷請求先〕千原悦夫:〒611-0043京都府宇治市伊勢田町南山C50-1千照会・千原眼科Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC924(140)図1第一世代ACPの術中所見第一世代CACPの出荷時には,あらかじめチューブ内にC4-0ポリプロレン糸が挿入されており,後から入れなくてはならないCBaerveldtCGlaucomaImplant(BGI)よりも改善されている.また,プレートは矩形に近くなっており,操作性が改善されている.代CACPは矩形に近く,外直筋の下に挿入するにあたって入れやすくなるように工夫されている(図1).プレート面積はCP250がC250CmmC2,CP350がC350CmmC2であり,BGIにおけるC250CmmC2/350Cmm2と同じである.従来の報告では,BGIとほぼ同等の眼圧下降効果が得られている1.4).プレートを強膜に固定するためのCsutureholeの位置と形状は特徴的で,この部分はプレート本体から岬状に突出しており可動性がある.従来のCBGIやCAGVでは二つのCsutureholeの距離が一定であり,プレートを強膜上に固定する場合は歪みを生じないように配慮が必要であるが,第一世代ACPの場合は多少のずれであればデバイスの方が順応してくれるので術中操作がやりやすくなった(図2).チューブの外径はC0.635Cmmと内径はC0.305Cmmとなっており,従来のCAGVと変わらない.このチューブ内には,出荷時からC4-0ポリプロピレン糸が挿入されている.BGIの場合は手術時にC3-0のナイロン糸あるいはプロリン糸を挿入する必要があったが,第一世代CACPではその手間が省けるようになっている.チューブの挿入部位は前房・毛様溝・硝子体腔のいずれも可能であるが,ステントが入った状態なので剛性が高く挿入操作はやりやすい(図3).CII術後低眼圧と高眼圧の抑制ステントは入れてあるが,そのままでは術後低眼圧が起こるので,術中にチューブを結紮してCSherwoodslitを入れておく必要がある.ただ,これでも術後高眼圧を起こす可能性があるので,その調節のためにチューブを結紮するときにチューブの外側にC7-0もしくはC6-0のナイロン糸をC2本おいて一緒に縛り,高眼圧が起こったときに順次抜くようにすると眼圧の調節ができる(図4).チューブを前房に挿入するときは輪部からC2Cmm,毛様溝ではC2.5Cmm,硝子体腔に挿入するときはC3.5Cmm後方で強図2第一世代ACPのsuturehole第一世代CACPのCsutureholeはプレート本体から岬状に突出した突起の中にあり,可動性がある.そのため,強膜に固定する場合に二つのCholeが多少ずれても順応してくれるので扱いやすい.図3第一世代ACPのデザインプレート形状は矩形に近く,BaerveldtglaucomaCimplant(BGI)とは異なるが,プレートの面積がC250CmmC2のCCP250(Ca)とC350Cmm2のCCP350(Cb)があり,BGIと同じになっている.(NewWorldMedicalのホームページより転載)膜を穿孔する.通常はC23CGの針を用いるが,針の方向には注意が必要である.前房に挿入する場合は角膜からの距離が保たれるように虹彩面に平行に挿入し,毛様溝では水晶体.や虹彩に当たらないように十分粘弾性物質で空間を作ってから挿入する.何度もさしなおすと出血することがあるので注意が必要である.硝子体腔挿入では眼球中心に向かって挿入するが,kinkingが起こっていないことを確認する必要があ図4術後の低眼圧と高眼圧の抑制第一世代CACPは調圧弁がないタイプのインプラントで,低眼圧制御のために出荷時からC4-0ポリプロピレン糸(.)が挿入してあるが,それでも術直後の低眼圧が起こりうる.それを防ぐためには,チューブを結紮する必要があるが,結紮により短期的な術後高眼圧が起こるので,Sherwoodslitを作成するが,それでも高眼圧が起こる.その対策として,チューブの結紮を行う場合にはチューブの外側にC6-0もしくはC7-0のナイロン糸(.)を置いて一緒に縛り(.:7-0ポリソルブ糸),術後高眼圧が起こった場合に一本ずつ抜くという操作を加えると,術後高眼圧を乗り切ることができることが多い(左側のC4-0絹糸は上直筋にかけた牽引糸).る.チューブの被覆は保存強膜を使用することが多いが,最近では強膜トンネルをする術者も増えてきている.GoretexやEverPatchなど人工材料を使う被覆も検討されているが5),現時点では保存強膜を使うことが無難と考えられる.CIII対象と方法対象は点眼・内服での眼圧コントロールが不良であり,結膜瘢痕や虹彩血管新生のために緑内障インプラント手術の適応となった難治緑内障C3例C3眼である,これらの患者に対して,手術に関するインフォームドコンセントを得たうえで手術治療を行った.研究デザインは当院CIRB(主任天野)の承諾を得ており,世界医師会ヘルシンキ宣言に則って行われている.CIV手術手技外上方結膜輪部切開後にCTenon.下麻酔を行い,外直筋を露出して牽引糸を置く.Tenon.下組織を郭清し,プレートを直筋の下に挿入する.つぎに,輪部からC7Cmmの場所でプレート固定のためのCanchorsuture糸(筆者はC5-0テフデック(ポリエステル)だがC8-0ナイロン糸を使う術者も多い)を置き,これをCsutureholeに通糸してプレートを固定する.前房と硝子体腔にチューブを挿入する場合は眼内にC2表1眼圧,視力,点眼数の経過眼圧術前1カ月後3カ月後6カ月後C35.2±7.6C19.7±12.7C15.3±1.5C14.0±3.6点眼数術前6カ月後C4.7±1.5C0.7±1.2矯正視力術前6カ月後C(小数視力)0.68±0.75C0.74±0.74Cmm(+強膜内C2Cmm)入るようにトリミングするが,毛様溝に入れる場合はC3Cmm(+3Cmm)になるようにトリミングする.毛様溝にチューブを留置するためには前房穿刺のあと,粘弾性物質で毛様溝空間を拡大し,適当な経線部分で輪部からC2.5Cmm離れてC23CG針で強膜・ぶどう膜を穿孔し,ここにチュ.ブを挿入する.チューブをC9-0ナイロン糸で強膜に固定し,チューブのそばにC7-0もしくはC6-0ナイロン糸(ripcord)をC2本おいてチューブとCripcordをまとめてC7-0吸収性の糸でもろともに結紮する(図4).結紮の角膜寄りでC3カ所程度のCSherwoodslitを作成する.保存強膜を適当な大きさに切り,チューブの上に置いてC9-0ナイロンC4糸で固定する.結膜創をC8-0ポリソルブ吸収糸で閉じる.結膜創からはみ出ているC4-0プロリンステントはトリミングして異物感の原因にならないように配慮する.術後処置としてデキサメサゾン(デカドロン)の結膜注射をし,抗菌薬とステロイド軟膏を塗布して眼帯する.CV手術成績2024年C4月からC6月の間にC3例の第一世代CACP手術を行った.平均年齢はC55±15.1歳,観察期間はC174±21日,眼内手術既往数はC1.7±0.6回,小数視力はC0.68±0.75(0.03-1.5),屈折は無水晶体眼C1眼,偽水晶体眼C1眼,.4.5の近視C1眼であった.病名は小眼球に伴う続発緑内障C1眼,偽水晶体眼に伴う続発緑内障C1眼,糖尿病に伴う血管新生緑内障1眼である.内皮数はC2090±400/mm2,ステント抜去は術後C31.7±11.7日,ripcord抜去はC17±14.7日であった.眼圧,視力,点眼数の経過を表1に示す.3眼中C2眼は点眼フリーとなり,術後C6カ月の小数視力はC0.74±0.74と改善気味であった.合併症としてはC1例で浅前房があったが自然治癒し,そのほかの重大な異常はない.CVI考按ロングチューブは濾過手術の一種であるが,濾過胞はトラベクレクトミーにおけるそれよりも後方にできるので濾過胞漏出や感染のリスクが低く,また,術後の眼圧下降がプレートの大きさによって影響されると考えられているため,術後の眼圧を想定された範囲に収めることが可能であるという特徴がある.低眼圧黄斑症が起こりにくいこともロングチューブの特徴であり,トラベクレクトミーと比べると安全性が有意に高いとされており,このことが世界的にトラベクレクトミーからロングチューブへと術式のシフトが起こっている理由である6,7).ロングチューブには調圧弁のついたもの(現在はCAGVのみであるが,過去にはCWhiteCPumpShuntやClongCKrupinCDenverCvalveCimplantなどがあった)と調圧弁のないもの(BGI,Molteno3implant,PaulGlaucomaimplantなど)があり,一般論として弁のないものは眼圧下降効果が強いが,低眼圧黄斑症などの合併症が多いということがいわれてきた.弁のないロングチューブの最大の欠点は術後の低眼圧による合併症と考えられるが,これに対応する改良点としてチューブを細くしたり,術中チューブ内にステントを留置して流量を調節したりするようなデバイスが出てきており,それが今回紹介した第一世代CACPと,まだわが国では未発売のCPaulGlaucomaimplantである.術後低眼圧が起こるのはチューブ設置後C1.2カ月であるので,その間をステント・ripcordとチューブの結紮で乗り切り,最終的にステントを抜去すれば,術後の眼圧は弁なしのほうが低くなり成功率が高いことは報告されているとおりなので,より大きな眼圧下降が求められる眼にとってはメリットがある8).今回はC3例のみの経験であるが,6カ月の臨床経過は良好であり,今後適応を選んで実臨床に応用していくことが望ましい.CVII結論新しい弁のないロングチューブである第一世代CACPの使用経験について報告した.従来の弁なしのロングチューブと比べるといくつかの点で改善されており,今後有用な治療デバイスになると考えられた.利益相反:JFCセールスプラン,JFCセールスプランFII文献1)DorairajCS,CChecoCLA,CWagnerCIVCetal:24-MonthCOut-comesCofCAhmedCClearPathRCGlaucomaCDrainageCDeviceCforCRefractoryCGlaucoma.CClinCOphthalmolC16:2255-2262,C20222)ElhusseinyAM,VanderVeenDK:EarlyExperienceWithAhmedCClearCPathCGlaucomaCDrainageCDeviceCinCChild-hoodGlaucoma.JGlaucomaC30:575-578,C20213)ShalabyCWS,CReddyCR,CWummerCBCetal:AhmedCClear-PathCvs.CBaerveldtCGlaucomaImplant:ACRetrospectiveCNoninferiorityCComparativeCStudy.COphthalmolCGlaucomaC7:251-259,C20244)BoopathirajCN,CWagnerCIV,CLentzCPCCetal:36-MonthCOutcomesCofCAhmedCClearPathRCGlaucomaCDrainageCDeviceCinCSevereCPrimaryCOpenCAngleCGlaucoma.CClinCOphthalmolC18:1735-1742,C20245)安岡恵子,多田憲太郎,安岡一夫:人工硬膜使用のCAhmed緑内障チューブシャント手術.眼科手術C37:541-545,C20246)VinodK,GeddeSJ,FeuerWJetal:PracticepreferencesforCglaucomasurgery:aCsurveyCofCtheCamericanCglauco-masociety.JGlaucomaC26:687-693,C20177)ChiharaE:TrendsCinCtheCnationalCophthalmologicalChealthcarefocusingoncataract,retina,andglaucomaover15yearsinJapan.ClinOphthalmolC17:3131-3148,C20238)ChristakisCPG,CZhangCD,CBudenzCDLCetal:Five-yearCpooledCdataCanalysisCofCtheCAhmedCBaerveldtCcomparisonCstudyandtheAhmedversusBaerveldtstudy.AmJOph-thalmolC176:118-126,C2017***

緑内障眼における白内障手術の眼圧経過への影響

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1(127)10310910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(7):10311034,2008cはじめに小切開で行う超音波水晶体乳化吸引術と折りたたみ式眼内レンズ(PEA+IOL)の普及で白内障手術の安全性は飛躍的に高まった.このことを背景として,開放隅角緑内障に対しても白内障手術が積極的に行われるようになっている.緑内障手術既往のない症例では白内障術後に眼圧は下降し,緑内障点眼薬数も減少すると報告されることが多い14).一方で線維柱帯切除術の既往のある症例ではさまざまな報告がなされており,眼圧コントロール不良になることがある5,6),長期的にみても眼圧に悪影響を及ぼさない7,8)など意見が一致しない.そこで今回,開放隅角緑内障眼にPEA+IOLを行ったときの眼圧および併用緑内障点眼薬数の変動を調べ,線維柱帯切除術既往が及ぼす影響について検討した.I対象および方法2004年11月から2007年6月に広島大学病院眼科にて白内障手術を施行した原発開放隅角緑内障患者34例34眼(男性22例,女性12例)を対象とし,別に白内障以外に眼疾患〔別刷請求先〕原田陽介:〒734-8551広島市南区霞1-2-3広島大学大学院医歯薬総合研究科視覚病態学Reprintrequests:YosukeHarada,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalScience,HiroshimaUniversity,1-2-3Kasumi,Minami-ku,Hiroshima734-8551,JAPAN緑内障眼における白内障手術の眼圧経過への影響原田陽介*1望月英毅*2高松倫也*2木内良明*2*1県立広島病院眼科*2広島大学大学院医歯薬総合研究科視覚病態学EectonIntraocularPressureafterPhacoemulsicationinGlaucomatousEyesYosukeHarada1),HidekiMochizuki2),MichiyaTakamatsu2)andYoshiakiKiuchi2)1)DepartmentofOphthalmology,HiroshimaPrefecturalHospital,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,HiroshimaUniversity緑内障眼に対する白内障術後早期の眼圧について手術既往のない開放隅角緑内障22眼と線維柱帯切除術を受けている12眼で手術前および術後2カ月の時点での眼圧,点眼薬数について検討した.眼圧は手術既往のない群では術前14.37±3.01mmHgから術後13.22±3.45mmHgへ,線維柱帯切除術既往群では12.61±2.86mmHgから11.41±2.64mmHgへ低下した.緑内障点眼数は手術既往のないものでは1.66±1.01剤から1.00±0.94剤へ,線維柱帯切除術既往群は1.08±1.51剤から0.33±0.15剤へとともに術前に比べて減少した.しかし,線維柱帯切除術を受けている症例では1例が術後眼圧コントロール不良に,1例が濾過胞の機能不全となり,線維柱帯切除術や濾過胞再建術を施行されている.緑内障眼に白内障手術を行った場合,手術既往のない緑内障眼では術後眼圧は下降する傾向を認めたが,濾過胞を有する症例には細心の注意が必要である.Cataractsurgerywasperformedon34eyeswithopen-angleglaucoma,comprising22eyeswithnohistoryofsurgery(phaco-onlygroup)and12eyesthathadundergonelteringsurgery(trabeculectomygroup).Preopera-tiveintraocularpressure(IOP)was14.37±3.01mmHginthephaco-onlygroupand12.61±2.86mmHginthetra-beculectomygroup,whichdecreasedto13.22±3.45mmHgand11.41±2.64mmHgintwomonthsaftersurgery,respectively.Meannumberoftopicalmedicationsalsodecreased,from1.66±1.01to1.00±0.94inthephaco-onlygroupandfrom1.08±1.51to0.33±0.15inthetrabeculectomygroup.However,2outof12eyesinthetrabeculec-tomygroupunderwentadditionallteringsurgeryaftercataractsurgeryduetolossofIOPcontrolorreducedblebfunction.Theseresultsindicatethatineyeswithoutpreviouslteringsurgery,cataractsurgeryisbenecialforIOPcontrol,butthatinsomeeyeswithpreviouslteringsurgeryitmayjeopardizetheeect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(7):10311034,2008〕Keywords:白内障手術,開放隅角緑内障,術後眼圧,線維柱帯切除術,一過性眼圧上昇.cataractsurgery,open-angleglaucoma,postoperativeintraocularpressure(IOP),trabeculectomy,transientIOPelevation.———————————————————————-Page21032あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(128)±2.90mmHg(p=0.014)といずれの群においても術前眼圧と比較して有意に低下していた(表1).一過性眼圧上昇の有無を検討したところ,対照群では32眼中1眼のみであったのに対し,緑内障眼では手術既往のないものは22眼中7眼,線維柱帯切除術既往のあるものは12眼中5眼とともに対照群と比較して有意に一過性眼圧上昇をきたしやすいことが明らかになった(手術既往なし:p=0.004,線維柱帯切除術既往:p=0.001)(図1).緑内障眼においては一過性眼圧上昇の有無で年齢,術前眼圧,術前併用点眼薬数,術前MD値について検討したが,手術既往の有無にかかわらずこれらの因子との間には明らかな相関関係は指摘できなかった.2.併用緑内障点眼薬数の変化手術既往のない群では術前は平均1.66±1.01剤であった併用点眼薬数は術後2カ月の時点で1.00±0.94剤と有意に減少していた(p=0.014).一方,線維柱帯切除術既往のある症例では術前1.08±1.51剤が術後2カ月で0.33±0.15剤と減少傾向があるものの有意差はなかった(p=0.109)(表2).3.緑内障再手術が必要になった症例線維柱帯切除術の既往がある12眼のうち2眼は濾過手術が追加された.緑内障再手術に至る経緯としては,1眼では術前眼圧16mmHgから術後1日より30mmHgを超える眼圧上昇が続き,濾過胞の機能不全もきたしたため白内障手術後4日目に線維柱帯切除術を施行した.もう1眼は術後の急激な眼圧上昇はなかったが,術後1カ月より濾過胞機能不全となり,その後も改善が認められなかったため,白内障術後のない32例32眼の成績と比較した.緑内障患者において両眼白内障手術を施行された症例については,視野障害の進行した眼側を対象とした.症例の内訳は,手術既往のないものが22眼,線維柱帯切除術の既往があり,濾過胞のあるものが12眼である.対象には正常眼圧緑内障4眼(手術既往なし3眼,線維柱帯切除既往あり1眼)も含まれている.手術既往のない症例では強角膜切開で,濾過胞を有する症例では耳側角膜切開で白内障手術を行い折りたたみレンズを内に挿入した.全例とも白内障手術は問題なく行われ,術中に後破損,硝子体脱出などの合併症を生じた症例は対象から除外した.線維柱帯切除術は全例鼻上側または耳上側で施行している.各症例の手術前後の眼圧および緑内障点眼薬数の変化について検討した.術前眼圧は手術前の別の日に測定した2回の眼圧の平均とし,術後は術翌日から退院時までと術後1カ月,2カ月の眼圧を調べた.また,術後退院までに眼圧が30mmHg以上になったとき,術前と比べて5mmHg以上の眼圧が上昇したときを術後一過性眼圧上昇と定義し,緑内障群と対照群でその頻度を比較した.緑内障群では一過性眼圧上昇をきたした症例に共通の特徴があるか調べるために年齢,術前眼圧,術前点眼薬数,術前MD(平均偏差)値について検討した.結果は平均±標準偏差で表記し,術前後の眼圧変化はpaired-t検定,点眼数の変化はWilcoxonsigned-rankedtestを用い,p<0.05を有意差ありとした.緑内障群と対照群における術後一過性眼圧上昇をきたす頻度の比較はMann-WhitneyUtestを用い,Bonferroniの補正を行って,p<0.025を有意差ありとした.II結果1.眼圧の経過白内障手術前眼圧は緑内障手術の既往のない緑内障眼22眼では14.37±3.01mmHgであり,線維柱帯切除術を受けている12眼では12.61±2.86mmHgであった.白内障以外に眼疾患のない対照群の術前平均眼圧は14.23±3.17mmHgであった.白内障手術後2カ月の時点の眼圧は緑内障手術既往のないものは13.22±3.45mmHg(p=0.040),線維柱帯切除術の既往症例は11.41±2.64mmHg(p=0.031),対照群では12.47表1術前後の眼圧変化n術前眼圧(Mean±SDmmHg)術後眼圧(2カ月)(Mean±SDmmHg)対照群3214.23±3.1712.51±2.90(p=0.002)手術既往なし2214.37±3.0113.22±3.45(p=0.040)TLE既往1212.61±2.8611.41±2.64(p=0.031)手術既往なし:手術既往のない緑内障眼,TLE既往:線維柱帯切除術既往のある緑内障眼.(Pairedt-test)表2術前後の緑内障点眼薬数の変化術前,剤数(Mean±SD)術後(2カ月),剤数(Mean±SD)手術既往なし1.66±1.011.00±0.94(p=0.014)TLE既往1.08±1.510.33±0.15(p=0.109)Wilcoxonsingle-ranktest.図1術後早期における一過性眼圧上昇TLE既往(眼)Mann-WhitneyUtest手術既往なし対照群———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.7,20081033(129)の眼圧上昇は術後1カ月の時点で全例改善しているのに対し,手術既往のある1症例は術後早期の眼圧上昇が持続したため緑内障再手術に至っている.白内障術後の眼圧上昇のピークは術後46時間後に起こるとの報告もあり13),術後当日に眼圧測定し早期の対応ができるようにするなど注意が必要である.以上より,緑内障眼に対して白内障手術を行った症例を検討した結果,手術既往のない群では術後早期の一過性眼圧上昇はきたしやすいものの,術後2カ月の時点では点眼数が減少した状態で術前に比べ眼圧下降が得られた.一方,線維柱帯切除術既往例では手術既往のない群と同様に眼圧下降効果は認めるも,症例数は少ないが2/12の確率で術後に眼圧コントロール不良,濾過胞機能不全による緑内障再手術が必要となっている.したがって,患者へリスクの説明を十分行い,手術中には水晶体残渣や粘弾性物質を取り除くべく前房灌流を十分行い,術後は眼圧変動,濾過胞の状態に注意することが必要と考える.文献1)MonicaLM,ZimmermanTJ,McMahanLB:Implantationofposteriorchamberlensesinglaucomapatients.AnnOphthalmol109:9-10,19852)PohjalainenT,VestiE,UnsitaloRetal:Phacoemulsica-tionandintraocularlensimplantationineyeswithopen-angleglaucoma.ActaOphthalmolScand79:313-316,20013)尾島知成,田辺昌代,板谷正紀ほか:白内障単独手術を施行した原発性開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,偽落屑緑内障の術後経過.臨眼59:1993-1997,20054)松村美代,溝口尚則,黒田真一郎ほか:原発性開放隅角緑内障における超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術の眼圧経過への影響.日眼会誌100:885-889,19965)CassonR,RahmanR,SalmonJF:Phacoemulsicationwithintraocularlensimplantationaftertrabeculectomy.JGlaucoma11:429-433,20026)EhrnroothP,LehtoI,PuskaPetal:Phacoemulsicationintrabecutomizedeyes.ActaOphthalmolScand83:561-565,20057)ParkHJ,KwonYH,WeitzmanMetal:Temporalcornealphacoemulsicationinpatientswithlteredglaucoma.4カ月で濾過胞再建術を行った(表3).III考按今回筆者らは開放隅角緑内障眼に白内障手術を行った後の眼圧および緑内障点眼薬数の変化について検討した.その結果,線維柱帯切除術の既往のない群では,白内障術後2カ月の時点では術前と比べて眼圧は下降し,必要とされる緑内障点眼薬数も減少して,過去の報告14)と矛盾しないものであった.眼圧が下降する機序としては,①手術による房水産生量の低下,②血液房水関門の変化,③手術操作による線維柱帯からの房水排泄効率の上昇,④白内障手術により前房が深くなるためなどの仮説がある912)が詳細は不明である.線維柱帯切除術既往のある群では,眼圧は手術既往のないものと同様に下降していた.しかし点眼数については,減少効果はあるものの有意差はなかった.これは症例数が限られていたことも要因となっているであろう.手術既往群では12眼中2眼で緑内障再手術が必要となっていることは注目に値する.手術既往のある症例に対する白内障手術の眼圧への影響は1年以上経過を追っている文献でも,眼圧上昇傾向を示すもの5)もあれば逆に眼圧に悪影響を及ぼさないとの報告7,8)もあり意見は分かれている.白内障手術後1年間経過観察したParkらの報告によると,白内障術後3カ月以降は術前眼圧とほぼ同等になっているが,白内障術後1カ月までは眼圧は変動し術前に比べ高眼圧の傾向にある7).われわれもひき続き長期的に眼圧の変動を観察し過去の報告との比較検討が必要である.しかし,白内障手術により血液房水関門が破綻し,炎症メディエーターが前房中に放出されることで,強膜弁の瘢痕形成と周辺結膜の癒着が起こり,濾過胞の機能不全に陥る可能性は十分考えられる.したがって,手術既往のある症例に対する白内障手術は術後早期に緑内障再手術の危険性を伴うことを念頭に置く必要がある.術後の一過性眼圧上昇は対照群に比べ,手術既往の有無にかかわらず,緑内障眼で高頻度に起こった.術後の一過性眼圧上昇をきたす機序としては,①血液房水関門の破綻,②線維柱帯の浮腫や屈曲による流出障害,③水晶体残渣による流出抵抗の増大,④房水蛋白の増加,⑤粘弾性物質の残留などが考えられている13).また,手術既往のない緑内障群ではこ表3術後眼圧上昇をきたした2例過去の緑内障手術の回数術前眼圧(mmHg)一過性眼圧上昇経過症例1(77歳,男性)2線維柱帯切除術1濾過胞再建116+眼圧上昇のため術後4日目に線維柱帯切除術施行症例2(80歳,女性)1線維柱帯切除術114.7眼圧上昇,濾過胞限局化のため術後4カ月で濾過胞再建施行———————————————————————-Page41034あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008ArchOphthalmol115:1375-1380,19978)MietzH,AndersenA,WelsandtGetal:Eectofcata-ractsurgeryonintraocularpressureineyeswithprevi-oustrabeculectomy.GraefesArchClinExpOphthalmol239:763-769,20019)BiggerJF,BeckerB:Cataractsandprimaryopen-angleglaucoma:theeectofuncomplicatedcataractextractiononglaucomacontrol.TransAmAcadOphthalmolOtolar-yngol75:260-272,197110)HandaJ,HenryJC,KrupinTetal:Evtracapsularcata-ractextractionwithposteriorchamberlensimplantationinpatientswithglaucoma.ArchOphthalmol105:765-769,198711)MeyreMA,SavittML,KopitasE:Theeectofphaco-emulsicationonaqueousoutowfacility.Ophthalology104:1221-1227,199712)SteuhlKP,MarahrensP,FrohnCetal:Intraocularpres-sureandanteriorchamberdepthbeforeandafterextra-capsurecataractextractionwithposteriorchamberlensimplantation.OphthalmicSurg23:233-237,199213)大西健夫,小池昇,浅野徹ほか:白内障術後24時間における瞳孔径・眼圧・角膜乱視の経時的変化.あたらしい眼科10:835-839,1993(130)***