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チューブ結紮を併用したAhmed緑内障バルブ挿入術の検討

2026年7月31日 金曜日

チューブ結紮を併用したAhmed緑内障バルブ挿入術の検討黒田浩平*1松田彰*1廣田旭亮*1佐伯忠賜朗*1今村和歌子*1佐々木秀憲*4朝岡聖子*2小森翼*2浅田洋輔*3岩本怜*3山上聡*1*1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野*2順天堂大学医学部附属静岡病院眼科*3順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科*4佐久市立国保浅間総合病院眼科COutcomesofAhmedGlaucomaValveImplantationCombinedwithTubeLigationKoheiKuroda1)C,AkiraMatsuda1)C,AkiraHirota1)C,TadashiroSaeki1)C,WakakoImamura1)C,HidenoriSasaki4)CAsaoka2)C,TsubasaKomori2)C,YosukeAsada3)C,SatoshiIwamoto3)CandSatoruYamagami1)C,Satoko1)CDepartmentofVisualScience,SchoolofMedicine,NihonUniversity,2)CDepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversityShizuokaHospital,3)CDepartmentofOphthalmology,JuntendoUniversityHospital,4)CDepartmentofOphthalmology,AsamaGeneralHospitalC目的:術後低眼圧による合併症のリスクが高いことから,チューブ結紮併用CAhmed緑内障バルブ(AGV)挿入術を施行した症例の術後成績を後ろ向きに解析した.対象と方法:対象はC2018年C12月.C2025年C2月に日大板橋病院,順天堂医院ならびに関連病院でチューブ結紮併用CAGV挿入術を施行されたC63例C63眼.同時期に施行したチューブ結紮を併用しないCAGV挿入群C313例C313眼とCleastCabsoluteCshrinkageCandCselectionoperator(LASSO)回帰解析で比較し,低眼圧・低眼圧合併症のリスク因子について検討した.病型は落屑緑内障C29眼,原発開放隅角緑内障C11眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼,続発緑内障C21眼,小児緑内障C1眼であった.結果:8眼で術後低眼圧に伴う合併症を生じ,CaqueousCmisdirection2眼に対してCirido-zonulohyaloidectomy(IZH)を,2眼でチューブ再結紮,1眼でステント挿入を施行した.また,1眼はチューブ開放後に上脈絡膜出血を生じ,強膜開窓術を施行した.非結紮CAGV挿入眼とのLASSO回帰解析による比較検討では,チューブ結紮をしないことが術後低眼圧を引き起こすリスク因子として有意差が認められ,術後低眼圧に伴う合併症の発生については術後低眼圧・術前高眼圧がリスク因子として有意差を認めた.結論:チューブ結紮併用は術後低眼圧の防止に有効であるが術後低眼圧合併症の防止には有効ではなく,結紮眼においても回避しがたい合併症が出現することがあるため,さらなる術式の改善が必要と考えられた.CPurpose:ToCexamineCtheCclinicalCoutcomesCofCAhmedCglaucomavalve(AGV)implantationCcombinedCwithCtubeligation.PatientsandMethods:Inthisretrospectivestudy,weexaminedtheclinicaloutcomesof63eyesof63patientswhounderwentAGVimplantationcombinedwithtubeligationcomparedwith313eyesof313patientswhoCunderwentCAGVCimplantationCaloneCatCNihonCUniversityCItabashiCHospital,CJuntendoCUniversityCHospital,CandCa.liatedhospitalsfromDecember2018toFebruary2025.Theinitial63eyeswereconsideredtobeatahighriskofhypotony-relatedcomplicationsduetofactorssuchasshortaxiallength,intraocularlenssubluxation,blebscar-ring,Ciridocyclitis,CorCaphakia.LASSO(leastCabsoluteCshrinkageCandCselectionoperator)logisticCregressionCanalysisCwasperformedtoidentifyriskfactorsforpostoperativehypotonyandhypotony-relatedcomplications.Thediseas-esinthe63eyeswereexfoliationglaucoma(29eyes)C,primaryopen-angleglaucoma(11eyes)C,primaryangle-clo-sureglaucoma(1eye)C,Csecondaryglaucoma(21eyes)C,CandCanCadultCwithCchildhoodglaucoma(1eye)C.CResults:CPostoperativehypotony-relatedcomplicationsoccurredin8eyes.Twoeyeswithaqueousmisdirectionunderwentirido-zonulo-hyaloidectomy,C2CeyesCrequiredCtubeCre-ligation,C1CeyeCrequiredCtubeCocclusionCwithCanCintraluminalCstent,CandC1CeyeCunderwentCscleralCdrainageCdueCtoCaCsuprachoroidalChemorrhageCdevelopingCafterCtubeCopening.CLASSOClogisticCregressionCanalysisCcomparingCtheCligatedCandCnon-ligatedCAGVCgroupsCrevealedCthatCabsenceCofCtubeligationwasthesigni.cantriskfactorforpostoperativehypotony.Moreover,postoperativehypotonyandpre-operativeChighCintraocularCpressureCwereCidenti.edCasCsigni.cantCriskCfactorsCforChypotony-relatedCcomplications.CConclusions:Althoughtubeligationwasusefulinpreventingpostoperativehypotony,itdidnotappeartoprevent〔別刷請求先〕黒田浩平:〒C173-8610東京都板橋区大谷口上町C30-1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野Reprintrequests:KoheiKuroda,M.D.,DepartmentofVisualScience,SchoolofMedicine,NihonUniversity,30-1,oyaguchikamicho,Itabashi-ku,Tokyo,173-8610,JAPANChypotony-relatedCcomplications.CSinceCsomeCcomplicationsCremainCunavoidable,CfurtherCre.nementCofCtheCsurgicalCtechniquemaybewarranted.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C43(7):799.804,2026〕Keywords:チューブ結紮,Ahmed緑内障バルブ,術後低眼圧,悪性緑内障.tubeligation,Ahmedglaucomavalve,postoperativehypotony,aqueousmisdirection,irido-zonulohyaloidectomy(IZH)C.Cはじめに緑内障ドレナージデバイスとしてC1990年に眼圧調節弁(バルブ)のないCBaerveldt緑内障インプラント(BaerveldtglaucomaCimplant:BGI),1993年にバルブをもつCAhmed緑内障バルブ(Ahmedglaucomavalve:AGV)が報告され,日本でもCBGIはC2011年,AGVはC2014年に使用可能となった.その結果,代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術〔トラベクレクトミー(trabeculectomy:TLE)〕が不成功に終わった患者,手術既往により結膜の瘢痕化が高度な患者,TLEの奏効が期待できない患者,あるいはCTLEにおいて重篤な合併症が予測される患者,他の濾過手術が技術的に施行困難な患者など,難治性緑内障を中心に緑内障チューブシャント手術が選択される機会が増加してきている1).AGVのバルブ閉塞圧の下限値はC6CmmHgとされているが,チューブ周囲からの房水流出や炎症に伴う房水産生の低下といった要因も加わることで,AGV術後低眼圧による浅前房,前房出血,脈絡膜.離,aqueousmisdirectionなどの合併症を経験することがある.既報では緑内障インプラント挿入術において落屑緑内障(exfoliativeglaucoma:XFG),短眼軸,虹彩炎の既往がある眼では術後低眼圧を起こしやすいことが報告されており2.4),AGV術後低眼圧の予防策として吸収糸を用いたチューブ結紮が有効とされている5).今回筆者らは,短眼軸,虹彩炎の既往・瘢痕化濾過胞の存在などの術後低眼圧による合併症の発症リスクを有する眼に対して,術後低眼圧予防のために手術時に吸収糸でチューブ結紮を併用した症例の術後経過を後ろ向きに検討した.CI対象および方法対象はC2018年C12月.C2025年C2月に日大板橋病院,順天堂医院,順天堂静岡病院,浅間総合病院で術後低眼圧による合併症のリスクが高いと判断され,チューブ結紮併用CAGV手術を施行し,術後C1カ月以上経過観察できたC63例C63眼である.両眼にチューブ結紮併用CAGV挿入手術を施行した症例でははじめに施行した眼を採用し,過去にロングチューブ手術を施行した既往がある眼は対象から除外した.術翌日以降の連続するC2回以上の診察において眼圧がC6CmmHg以下であった場合を低眼圧,さらに浅前房や脈絡膜.離を呈した場合を低眼圧に伴う合併症と定義し,術前と術後(術後翌日,1週,1カ月,3カ月,6カ月,12カ月,24カ月,36カ月,60カ月)の眼圧,術後低眼圧・低眼圧に伴う合併症の有無,追加手術の有無について診療録より後ろ向きに検討し,また,同時期に施行したチューブ結紮を併用しないAGV手術C313例C313眼と比較した.統計解析では,データ分析のためにCJMPStudentEdition(ver.19.0.1)を使用した.手術手技については,角膜輪部からC9Cmmの位置でプレートをC8-0ナイロン糸で強膜に固定し,前房内挿入では角膜輪部からC1.5Cmm,毛様溝挿入ではC2.5Cmm,硝子体腔挿入では3.5Cmmの位置でチューブを挿入した.チューブをC8-0バイクリル糸で結紮後,保存強膜でチューブを覆うようにC10-0ナイロン糸で強膜に固定.トリアムシノロンアセトニド後部Tenon.下注射し,結膜をC8-0バイクリル糸で縫合し終了とした.なお,本研究は日本大学板橋病院(RK-240709-2),順天堂医院(E22-0429),順天堂大学静岡病院(E22-0429-S01),浅間総合病院(24-08)の研究倫理委員会の承認を得て施行した.CII結果症例(結紮あり群)は,男性C38例C38眼,女性C25例C25眼,平均年齢はC73.4C±11.4歳であった.病型は原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleCglaucoma:POAG)11眼,原発閉塞隅角緑内障(primaryCangle-closureglaucoma:PACG)1眼,落屑緑内障(XFG)29眼,続発緑内障(secondaryglaucoma:SG)21眼,小児緑内障(childhoodglaucoma)1眼であった.術前眼圧はC27.2C±5.8mmHgで,23mm未満の短眼軸眼はC63眼中C12眼,濾過手術の既往はC63眼中,TLE後C21眼,expressミニチューブ後C1眼であった.全症例が白内障手術後であり,そのうち眼内レンズ振盪を認めた症例がC4眼,無水晶体眼がC2眼,眼内レンズ縫着後症例がC1眼あった.同時期に施行したチューブ結紮を併用しないAGV挿入群(結紮なし群)はC313例C313眼で,男性C183眼女性C130眼,平均年齢はC70.9C±12.1歳,病型はCPOAG81眼,PACG8眼,XFG108眼,SG82眼,childhoodCglaucoma2眼,血管新生緑内障(neo-vascularglaucoma:NVG)32眼であった.術前眼圧はC28.6C±7.6CmmHgで,23mm未満の短眼軸の症例はC313眼中C36眼,緑内障手術既往がある症例はC313例中,TLE後C101眼,expressミニチューブ後C7眼だった.全症例が白内障手術後であり,そのうち眼内レンズ震盪を認めた症例がC5眼,眼内レンズ縫着後症例がC4眼,無結紮あり(n=C63)結紮なし(n=C313)年齢(meanC±SD)C73.4±11.4歳C70.9±12.1歳性別(男性:女性)38人:2C5人183人:C130人術前CIOP(meanC±SD)C27.2±5.8CmmHgC28.6±7.6CmmHg病型CPOAGC11C81CPACGC1C8CXFGC29C108CSGC21C82CchildhoodglaucomaC1C2CNVGC0C32眼軸長C24.9±2.3CmmC24.9±2.2Cmm濾過手術既往歴TLE後C21C101expressミニチューブ後C1C7角膜移植後C0C6硝子体術後C4C31中間透光体の状態CIOLdonesisC4C5IOL縫着後C1C4無水晶体眼C2C4チューブ挿入部位前房内C26C75毛様溝C28C180硝子体腔C9C58IOP:眼圧(intraocularpressure),POAG:原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma),PACG:原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclo-sureglaucoma),XFG:落屑緑内障(exfoliativeglaucoma),SG:続発緑内障(secondaryglaucoma),NVG:血管新生緑内障(neovascularglaucoma),TLE:線維柱帯切除術(trabeculectomy),IOL:眼内レンズ(intraocularlens)水晶体眼がC4眼あった(表1).表2術後低眼圧に伴う合併症結紮あり群では術後,8眼で術後低眼圧に伴う合併症を生じ,うちC3眼でCaqueousmisdirectionを,2眼で浅前房と脈絡膜.離を,2眼で脈絡膜.離を発症した.それぞれCaque-ousmisdirection3眼に対してはCirido-zonuloChyaloidectomy(IZH)を施行し,浅前房と脈絡膜.離をきたした症例のうち1眼でチューブ再結紮,1眼で前房側からのC3-0プロリンステント挿入術を施行した.脈絡膜.離C2眼についてはアトロピン点眼による保存的加療で自然消退した.またC1眼で術後6週間後のチューブ開放後に上脈絡膜出血を生じ,強膜開窓術を施行した.また,1眼で術後早期高眼圧を生じ翌日観血的にチューブ開放術を施行した(表2).チューブ結紮なし群ではC313眼中C64眼(20.4%)で6mmHg以下の術後低眼圧を生じたのに対し,チューブ結紮結紮あり結紮なしCaqueousmisdirectionC3C4浅前房C2C7脈絡膜.離C4C32術後早期高眼圧C1C0上脈絡膜下出血C1C0裂孔原性網膜.離C0C1C群で術後低眼圧を生じたのはC63眼中C2眼(3.2%)であり,チューブ結紮なし群と比較して,結紮あり群で術後低眼圧の発症率は低下した(表3).一方で,術後低眼圧に伴う合併症を生じたのは結紮なし群でC37眼,結紮あり群でC8眼であり,結紮あり結紮なしp値Odds比,9C5%CCI術後低眼圧C2C64C0.00040.13,C0.03.C0.54術後低眼圧合併症C8C37C0.831.09,C0.48.C2.46C.sher’sexacttest.表4術後低眼圧を引き起こすリスク因子低眼圧あり低眼圧なしp値Odds比,9C5%CCI結紮(有/無)C2/64C61/249C0.00350.048,C0.0063.C0.37年齢(meanC±SD)C74.4±11.0歳C70.7±12.1歳C0.053性別(男性:女性)41人:2C5人180人:C130人C0.39術前CIOP(meanC±SD)C28.3±7.5CmmHgC28.4±7.3CmmHgC0.73眼軸長C24.3±1.9CmmC25.0±2.3CmmC0.89POAGC13C79CPACGC2C7CXFGC32C105C病型CSGC12C90C0.80CchildhoodglaucomaC1C2CNVGC6C27中間透光体の状態C4C14C0.63濾過手術既往歴C19C116C0.94チューブ挿入部位前房内C24C77C0.18毛様溝C29C179硝子体腔C13C54JMPを用いたCLASSO回帰解析.術後低眼圧に伴う合併症の発症率には結紮の有無による有意差を認めなかった(表3).また,術後低眼圧を引き起こすリスク因子についてCleastCabsoluteCshrinkageCandCselectionoperator(LASSO)回帰解析により比較検討したところ,チューブ結紮をしないことに術後低眼圧発症のリスク因子として有意差を認め,他年齢,眼軸長,病型などでは有意差を認めない結果であった(表4).低眼圧に伴う合併症の発生について,LASSO回帰解析により術後低眼圧,術前眼圧で有意差を認めたものの,結紮の有無による有意差は認めなかった(表5).CIII考按今回,術後低眼圧による合併症のリスクが高いと判断した63例C63眼に対して,チューブ結紮併用CAGV手術を施行した.リスクが高いと判断した理由として,濾過手術既往眼ではチューブ経由以外の房水流出,続発緑内障眼では術後炎症に伴う房水産生の低下,落屑緑内障眼では術後炎症やCZinn小帯の脆弱性,短眼軸眼ではCaqueousmisdirectionを発症しやすいといった要因があげられる.本検討ではチューブ結紮により術後低眼圧をC63眼中C2眼に生じ,術後低眼圧による合併症をC8眼に生じた.合併症を生じた症例の病型は落屑緑内障C6眼,続発緑内障C1眼,原発開放隅角緑内障C1眼だった.チューブ結紮により術後低眼圧の発症率は低下したが,術後低眼圧に伴う合併症の発症率には有意差を認めず,既報と一致する結果だった5).術後低眼圧合併症のリスク因子として術前高眼圧で有意差が得られたが,術前高眼圧の症例ではチューブ挿入により急激な眼圧下降がもたらされることで網膜血管の内圧が眼内圧よりも相対的に高くなった結果,脈絡膜血管拡張や脈絡膜の血管透過性上昇を引き起こし,脈絡膜.離などの術後低眼圧合併症をきたす可能性が考えられ合併症あり合併症なしp値Odds比,9C5%CCI結紮(有/無)C8/37C55/276C0.74年齢(meanC±SD)C77.1±8.8歳C70.6±12.1歳C0.22性別(男性:女性)25人:2C0人196人:C135人C0.57術前CIOP(meanC±SD)C29.3±8.8CmmHgC28.2±7.4CmmHgC0.041.06,C1.00.C1.12眼軸長24.0±1.8CmmC25.0±2.2CmmC0.07POAGC11C81CPACGC3C6CXFGC25C112C病型CSGC5C97C0.50CchildhoodglaucomaC0C3CNVGC1C32中間透光体の状態C3C15C0.84濾過手術既往歴C12C123C0.57チューブ挿入部位前房内C18C83C0.10毛様溝C25C183硝子体腔C2C65JMPを用いたCLASSO回帰解析C.た.なお,術後低眼圧症例に限定して解析を施行したところ,患者背景は結紮あり群と結紮なし群で有意な差を認めなかった.また,LASSO回帰解析の結果からは,術後低眼圧と術前高眼圧が術後低眼圧合併症を引き起こすリスク因子であることが示された.Aqueousmisdirectionのリスク因子としては,術前浅前房,術前の高眼圧,慢性閉塞隅角緑内障,Zinn小帯脆弱による水晶体前方移動などが報告されている6,7).今回,チューブ結紮により早期の房水流出が抑制され低眼圧の予防には一定の効果があったと考えられるものの,本症例の術前眼圧がC27.2C±5.8CmmHgと高値であったことが低眼圧合併症を防止できなかった一因としてあげられる.チューブ開放後の眼圧下降で上脈絡膜出血を生じた症例がC1例あることからも,吸収糸によるチューブ結紮という方法では低眼圧合併症の発症防止には限界があると考えられた.弁なしのインプラントの場合はチューブ内腔にステント(たとえばCBGIの場合にはC3-0ナイロン糸)を挿入してさらにチューブを結紮するといった方法が報告されているが,弁構造をもつCAGVの場合は弁より前房側にしかステントの留置はできないことから,術後眼圧上昇のためステント抜去が必要になった場合,手術室での抜去が必須である.ハイリスクの症例においてはあらかじめ患者に手術室でのステント抜去の可能性を説明のうえ,吸収糸によるチューブ結紮とチューブ内腔へのステント留置を併用した手術も考慮に値すると考えられた.一方で,術前の予想に反してチューブ結紮併用CAGV挿入術後に著明な眼圧上昇を呈した症例もC1例経験した.この症例はCTLE術後で,濾過胞部位からチューブを挿入したことから,チューブ経由の濾過に加えて既存の濾過胞部位からの濾過を予想してチューブ結紮を併用したが,実際には術後高眼圧になってしまった症例であり,術翌日に創を再度開いてチューブを開放した.頻度としては低いものの,術後高眼圧を呈した場合には再手術が必要になる可能性をあらかじめ説明しておく必要があると考えられる.また,今回は後ろ向き研究であったことから,症例の選択バイアスの可能性や,症例数が少なかったことが本研究の限界としてあげられるため,今後は術式の改良を含めてさらなる検討が必要である.CIV結論チューブ結紮併用は術後低眼圧の防止に有効であるが,結紮眼においても回避しがたい合併症が出現することがあり,さらなる術式の改善が必要と考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし1)東千晶,浅田洋輔,鈴木貴英ほか:無水晶体眼のアトピー緑内障に対してC4-0プローリンC.ステント併用アーメド緑内障バルブ挿入術を施行したC2例.あたらしい眼科C76:957-963,C20222)ShinCDY,CJungCKI,CParkCHYLCetal:RiskCfactorsCforCcho-roidalCdetachmentCafterCAhmedCvalveCimplantationCinCglaucomapatients.AmJOphthalmol211:105-113,C20203)ValimakiJ:IntraoperativeCcustomizedCreductionCinCBaer-veldtimplantplatesizeinelderlypatientswithglaucomaandshorteyes.ClinOphthalmolC17:2287-2293,C20234)RamdasCWD,CPalsCJ,CRothovaCACetal:E.cacyCofCglauco-madrainagedevicesinuveiticglaucomaandameta-anal-5)KeeC:PreventionCofCearlyCpostoperativeChypotonyCbyCpartialCligationCofCsiliconeCtubeCinCAhmedCglaucomaCvalveCimplantation.JGlaucomaC10:466-469,C20016)KaplowitzK,YungE,FlynnRetal:CurrentconceptsintheCtreatmentCofCvitreousCblock,CalsoCknownCasCaqueousCmisdirection.SurvOphthalmolC60:229-241,C20157)LinCH,CLiCJ,CZhengCXCetal:IncidenceCandCcharacteristicsCofCaqueousCmisdirectionCafterCglaucomaCsurgeryCinCChi-neseCpatientsCwithCprimaryCangle-closureCglaucoma.CEyeVis(Lond)C10:28,C2023***

難治性緑内障に対するAhmed緑内障バルブを用いたチューブシャント手術成績

2025年7月31日 木曜日

《第35回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科42(7):898.903,2025c難治性緑内障に対するAhmed緑内障バルブを用いたチューブシャント手術成績韓昇熙木嶋理紀菊地香澄田川義晃董震宇新海晃弘石田晋北海道大学大学院医学研究院眼科学教室CSurgicalOutcomesandComplicationsofAhmedGlaucomaValveImplantationinPatientswithRefractoryGlaucomaShokiKan,RikiKijima,KasumiKikuchi,YoshiakiTagawa,DongZhenyu,AkihiroShinkaiandSusumuIshidaCDepartmentofOphthalmology,FacultyofMedicineandGraduateSchoolofMedicine,HokkaidoUniversityC目的:難治性緑内障に対するCAhmed緑内障バルブを用いたチューブシャント手術成績を検討する.対象および方法:北海道大学病院においてC2017年C12月.2023年C9月にCAhmed緑内障バルブを用いたチューブシャント手術を施行し,術後C6カ月以上の経過観察が可能だった連続症例C73例C82眼を,診療録をもとに後ろ向きに検討した.surgicalsuccessを術後C6カ月以降,眼圧がC5CmmHg以上C21CmmHg以下で推移し,観察期間中に眼内炎や光覚消失等の重篤な合併症を生じず,かつ追加の緑内障手術を施行しなかった症例と定義し,チューブ先端の挿入部位別の生存率を検討した.結果:男性C56眼,女性C26眼,手術時平均年齢はC59.5±17.8歳,平均経過観察期間はC25.5±19.5カ月だった.チューブ挿入部位は前房C10眼,毛様溝C57眼,硝子体腔C15眼だった.眼圧は術前C27.8±11.0CmmHg,術後C24カ月C13.4±4.3CmmHgと有意に低下した(p<0.01).術後C24カ月の累積生存率は全体でC86.3%,挿入部位別では前房C52.5%,毛様溝C92.4%,硝子体腔C86.7%だった.結論:難治性緑内障において,Ahmed緑内障バルブを用いたチューブシャント手術は有意に眼圧を下降させた.CPurpose:ToCinvestigateCtheCoutcomesCofCAhmedCGlaucomaValve(AGV,CNewCWorldMedical)implantationCforrefractoryglaucoma.SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved82eyesof73glaucomapatientswhounder-wentAGVimplantationfromDecember2017toSeptember2023andwerefollowedforatleast6-monthspostop-erative.CInclusioncriteria:patientsCwithCnoCseriouscomplications(endophthalmitisCorClossCofvision)andCnoCneedCforadditionalglaucomasurgeryduringthefollow-upperiod.Results:Meanpatientageatsurgerywas59.5±17.8Cyears,andthemeanfollow-upperiodwas25.5±19.5months.TheAGVinsertionsiteswereanteriorchamber(n=10eyes),Cciliarysulcus(n=57eyes),CandCvitreouscavity(n=15eyes).CMeanCintraocularpressure(IOP)preCsur-geryCwasC27.8±11.0CmmHg,CyetC13.4±4.3CmmHgCatC24-monthsCpostoperative,Csigni.cantlylower(p<0.01).CAtC24Cmonths,thecumulativesurvivalratewas86.3%overall,andbyinsertionsitewas52.5%intheanteriorchamber,92.4%CinCtheCciliaryCsulcus,Cand86.7%CinCtheCvitreousCcavity.CConclusion:InCpatientsCwithCrefractoryCglaucoma,CAGVimplantationsigni.cantlyreducedIOP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(7):898.903,C2025〕Keywords:Ahmed緑内障バルブ,眼圧下降効果,合併症,毛様溝.Ahmedglaucomavalve,IOPreductione.ect,complications,ciliarysulcus.Cはじめに高度な患者,線維柱帯切除術の成功が見込めない患者,ほかロングチューブシャント手術は緑内障に対して施行されるの濾過手術が技術的に施行困難な患者が適応とされてい濾過手術の一つであり,代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除る1).術が不成功に終わった患者,手術既往により結膜の瘢痕化が当施設でも上記に従い,いわゆる難治性の緑内障に対して〔別刷請求先〕韓昇熙:〒060-8648札幌市北区北C15条西C7丁目北海道大学大学院医学研究院眼科学教室Reprintrequests:ShokiKan,DepartmentofOphthalmologyFacultyofMedicineandGraduateSchoolofMedicineHokkaidoUniversity,North15West7,Kitaku,Sapporo-city060-8638,JAPANC898(114)ロングチューブシャント手術を実施している.また,当施設の患者では視野障害が後期であったり,角膜内皮細胞数が少なかったり,房水産生低下が予想されたりする例が多い.そのため,術直後の低眼圧による合併症を避けるための圧調整弁を有するCAhmed緑内障バルブ(AhmedCglaucomavalve:AGV)を使用する機会が多い.しかし,チューブの閉塞や露出,内皮障害,濾過胞瘢痕化による眼圧上昇など,術後に留意する点数が多くあり2),また報告ごとに頻度が異なる3.12)のは患者背景が異なるためと考えられる.そのため,当施設でのCAGVを用いたロングチューブシャント手術の術後成績および合併症について調査した.CI対象および方法2017年C12月.2023年C9月に北海道大学病院でCAGVを用いたチューブシャント手術を施行し,術後C6カ月以上の経過観察が可能だったC73例C82眼を対象とし,診療録をもとに後ろ向きに検討した.術後C6カ月以降に眼圧がC5CmmHg以上C21CmmHg以下で推移し,追加の緑内障手術を必要とせず,かつ術後合併症による眼内炎や光覚消失を生じなかった患者を,術後の緑内障点眼使用数にかかわらずCsurgicalsuc-cess症例と定義した.手術前後の眼圧の推移,緑内障点眼剤数の推移,術後合併症,累積生存率について検討した.緑内障点眼剤数は緑内障配合点眼薬についてはC2剤とし,炭酸脱水酵素阻害薬内服は回数を点眼とは別に計算した.術後合併症のうち一過性高眼圧については,術後C6カ月以内で緑内障点眼の有無を問わず眼圧C22CmmHg以上となり,その後眼圧が低下して追加の緑内障手術が不要だったものと定義した.チューブ先端は,無硝子体眼および硝子体手術を同時に実施する必要のある患者では硝子体腔へ,水晶体を温存する必要のある患者では前房へ,それ以外の患者では毛様溝へ挿入し,必要に応じて白内障手術を併施した.手術はCTenon.下麻酔による局所麻酔または,全身麻酔にて施行した.AGVは全例CFP7を使用し,結膜を切開後,上直筋と外直筋または下直筋と外直筋の間に留置した.チューブは原則自己強膜弁で被覆したが,線維柱帯切除術後などで強膜の菲薄がある場合は保存強膜を用いた.2022年C3月.2023年C9月の連続症例には術中にトリアムシノロンアセトニドC40Cmg後部CTenon.下注射(posteriorCsub-Tenoninjection:STTA)を原則施行したが,明らかなステロイドレスポンダーの患者には投与を避けた.また,終了時にデキサメタゾンの結膜下注射を施行した.術後点眼として抗菌薬点眼とベタメタゾン点眼を使用し,白内障手術を併施したものについては非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatoryCdrugs:NSAIDs)点眼も併用した.また,術後の緑内障点眼追加については各担当医の判断で行われた.統計解析は眼圧や点眼剤数についてはCWilcoxonの符号付き順位検定を,累積生存率についてはClog-rank検定を,その他の検定にはC|2検定や対応のないCt検定を適宜使用し,p<0.05をもって有意差ありと判定した.本研究はヘルシンキ宣言に則り行われ,北海道大学病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号CNo.016-0056).診療録を用いた後ろ向き研究のため,インフォームド・コンセプトはオプトアウトによって取得された.CII結果男性C56眼,女性C26眼,手術時平均年齢はC59.5C±17.8歳,平均経過観察期間はC25.5C±19.5カ月だった.緑内障病型は,広義の原発開放隅角緑内障がC35眼(42.7%),血管新生緑内障がC14眼(17.1%),ぶどう膜炎続発緑内障・落屑緑内障がともにC7眼(8.5%)ずつ,アトピー性緑内障・小児緑内障がともにC5眼(6.1%)ずつ,外傷緑内障がC3眼(3.7%),その他のものがC3眼(3.7%)であった.過去の内眼手術の平均回数はC2.5C±1.0(0-5)回で,うち緑内障手術については平均C1.8±1.1(0-5)回であった.眼圧の変化・緑内障点眼剤数の変化を図1に示す.術前平均眼圧はC27.8C±11.0CmmHg,術後平均眼圧はC6カ月C15.8C±6.7mmHg,12カ月C14.4C±5.1CmmHg,24カ月C13.4C±4.3CmmHg,36カ月C13.2C±3.4CmmHg,48カ月C14.9C±4.0CmmHg,60カ月C16.7±5.8CmmHgと下降し,観察期間中どの観察時点でも有意な低下を認めた.緑内障点眼剤数については,術前平均C3.8±0.9であり,術後C36カ月までのすべての時点で術前と比較し有意に低下したが,42カ月以降は有意差がなかった.炭酸脱水酵素阻害薬の内服については,術前はC1日あたり平均C1.3C±1.1錠だったが,術後は内服を必要とした患者はいなかった.全体の累積生存率は,術後C6カ月でC93.9%,12カ月で90.5%,24カ月でC86.3%,36カ月でC81%,60カ月でC57.8%だった(図2a).チューブの挿入部位は,毛様溝へ挿入した患者がC57眼(69.5%)ともっとも多く,ついで硝子体腔がC15眼(18.3%),前房がC10眼(12.2%)であった.チューブ先端の挿入部位別の累積生存率は図2bのとおり有意差がみられ(log-rank検定,p=0.01),術後6,12,24,36,48,60カ月は挿入部位別でそれぞれ前房C70.0%,52.5%,52.5%,52.5%,52.5%,52.5%,毛様溝C100%,98.0%,92.4%,85.3%,85.3%,68.2%,硝子体腔C86.7%,86.7%,86.7%,86.7%,86.7%,0%であった.術後合併症の種類・割合は表1のとおりとなり,一過性の高眼圧がC40眼(48.8%)ともっとも多くみられた.また,重篤な合併症として駆逐性出血,水疱性角膜症が各C1眼ずつ生mmHg剤数***p<0.001,**p<0.01,*p<0.05(mean±SD)505303202*404101*************************00術前136121824303642485460カ月n=82n=60n=42n=38n=29n=21n=14n=12n=10n=9Wilcoxonの符号付き順位検定.図1術後眼圧・緑内障点眼剤数の変化左軸が眼圧,右軸が点眼剤数,下方に症例数(n).どの観察時点でも眼圧は術前と比較し有意な低下をした.緑内障点眼剤数は,術後C36カ月までは術前と比較して有意に低下したが,42カ月以降は有意差がなかった.Cab100%100%80%80%生存率生存率20%20%0%0%60%60%40%40%01224生存期間(月)生存期間(月)log-rank検定,p=0.01図2累積生存率a:全症例,Cb:チューブ挿入部位別.術後C24カ月で全体C86.3%,挿入部位別で前房C52.5%,毛様溝C92.4%,硝子体腔C86.7%で部位別では有意差がみられた.じ,駆逐性出血を起こした眼が光覚消失し,水疱性角膜症を生じた眼は,後に全層角膜移植を行い視力は改善した.術中にCSTTAを施行したものがC21眼,施行しなかったものがC61眼であった.その患者の内訳を表2に示す.施行時期の選定の違いにより,経過観察期間は有意にCSTTA施行眼が短かった.手術時年齢もCSTTA施行眼が有意に若年であった.チューブ先端の挿入部位も有意差があり,STTA施行眼は施行しなかった眼よりも硝子体腔に挿入した割合が高かったが,挿入位置として一番多いのは毛様溝だった(それぞれC52%,75%).一過性高眼圧がみられたのはそれぞれ12眼(57.1%),28眼(45.9%)であり,STTA施行の有無と一過性高眼圧に有意な関連性はみられなかった(C|2検定,Cp=0.37).一過性高眼圧の発症時期はCSTTAを施行した眼でC2.4C±1.5カ月,STTAを施行しなかった眼でC1.6C±1.0カ月とCSTTA施行した眼でやや遅い傾向はあるものの,有意差はみられなかった(対応のないCt検定,p=0.056).またそのときの最高眼圧についてもそれぞれ平均C31.4C±13.0mmHg,31.2C±5.5CmmHgと有意差はなかった(対応のないt検定,p=0.94).累積生存率についても図3に示すとおり有意差はみられなかった(log-rank検定,p=0.90).表1術後合併症の発生症例数術後合併症発生症例数一過性の高眼圧(2C2CmmHg以上)チューブ先端の位置不良(挿入しなおした症例)インプラントの露出(追加の結膜縫合,または強膜パッチを実施した症例)40眼(C48.8%)4眼(4C.9%)3眼(3C.7%)複視の自覚2眼(2C.4%)駆逐性出血1眼(1C.2%)水疱性角膜症1眼(1C.2%)光覚消失1眼(1C.2%)表2STTA施行あり/なしの症例の内訳STTA施行あり20例21眼STTA施行なし54例61眼p値経過観察期間C10.9±6.4カ月C24.1±13.2カ月<C0.001***手術時年齢C52.8±21.8歳C61.7±15.8歳C0.05*性別男15眼(71%)41眼(67%)C0.72女6眼(29%)20眼(33%)チューブ先端位置前房2眼(10%)8眼(13%)C0.02*毛様溝11眼(52%)46眼(75%)硝子体腔8眼(38%)7眼(12%)術前平均眼圧(mmHg)C31.9±11.1CmmHgC27.6±10.0CmmHgC0.07過去の内眼手術回数(うち緑内障手術回数)C2.3±1.3回(C1.7C±1.2回)C2.6±1.0回(C1.9C±1.0回)C0.23C0.57術前緑内障点眼剤数C4.0±0.8回C3.7±0.9回C0.09術前炭酸脱水酵素阻害薬内服数C1.5±1.1錠/日C1.3±1.1錠/日C0.67III考按今回の患者の術前の緑内障手術の既往は平均C1.8C±1.1回であり,多くの患者は代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術を施行したが,良好な眼圧下降が得られなかったことが推測できる.複数回の代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術が不奏効であった患者が多かったにもかかわらず,今回累積生存率はC2年でC86.3%であり,AGVを用いたチューブシャント手術は難治性の緑内障に対してよい適応であると考える.わが国での既報では,豊田ら3)が血管新生緑内障に対する手術成績を報告しており,過去の緑内障手術回数が平均C3回程度とかなり難治性の患者が対象だったが,術後C2年の累積生存率はC71.4.83.3%と,今回の検討同様に良好な結果であった.海外からの報告は緑内障手術既往があるものが半数を超える報告7)もあるが,半数未満からC2割程度のものが多く4.6,8.11),なかにはC9割が緑内障初回手術のもの6)もあり,対象患者が大きく異なることが推測される.また,今回チューブの挿入部位別に検討したところ,毛様溝へのチューブ挿入症例の生存率が良好な結果となった.既報では前房と毛様溝4,5),あるいは前房と硝子体腔6)へのチューブ挿入例を比較し,術後眼圧や累積生存率には有意差がないことが報告されている.今回の検討では,挿入部位により患者の年齢や緑内障の病型などの疾患背景の偏りが大きく,単純な比較はむずかしいと考える.前房へのチューブ挿入は,毛様溝と比較すると術後の角膜内皮細胞の減少率が大きいことが知られており5),また,硝子体腔への挿入は硝子体の郭清が必要である.毛様溝へのチューブ挿入は,手技の煩雑さや前房出血・誤挿入のリスクはある4,5)ものの,今回は追加の硝子体手術が必要なほど出血が遷延した患者はなかった.このことからも,硝子体手術未実施の患者に対しては,毛様溝へのチューブ挿入はよい適応であると考えられる.AGVを用いたチューブシャント手術の合併症として頻度が高く,治療上問題となるものが一過性の高眼圧である.こ100%80%60%40%STTAありSTTAなし20%0%01224364860生存期間(月)log-rank検定,p=0.90図3STTA施行の有無と累積生存率STTA施行あり群となし群で累積生存率に有意差はみられなかった.生存率れはプレート周囲組織が炎症細胞やサイトカインに曝露することで,術後数週.数カ月に発症する眼圧上昇といわれており2),頻度はC23.4.73.2%C7.11)と報告によるばらつきが大きい.今回はC48.8%であり,既報と同程度と考えられた.一過性高眼圧を抑制する手段として術中のトリアムシノロンアセトニドの後部CTenon.下注射の報告7,8)があったため,2022年C3月.2023年C9月までのステロイドレスポンダーの既往がある症例を除く連続症例にトリアムシノロンアセトニドの後部CTenon.下注射を施行したが,施行した群と施行しなかった群で,一過性高眼圧期発症の頻度や最高眼圧,累積生存率には有意差はみられなかった.既報7,8)では一過性高眼圧の頻度をC2.3割に抑え,発症までの時期を遅らせたり7),最高眼圧を低下させたり8)することが報告されているが,累積生存率やC6カ月以降の眼圧や点眼数には有意差がないとされている.今回の患者で一過性高眼圧の頻度が低下しなかった原因の一つは,施行した群としなかった群で年齢に有意差があり,施行群のほうが若年だったため,術後発症のステロイドレスポンダーが混在した可能性が考えられた.また,手術時の年齢が若年であることがリスク因子であるとの報告10)もあり,今後年齢をそろえての比較が必要と考えられた.今回術後の緑内障点眼追加については,各担当医の判断に委ねられており,統一基準がなかったが,術後早期の緑内障点眼追加による房水産生抑制が一過性高眼圧抑制に効果的という報告11)もあり,点眼の基準を揃えての検討も必要である.その他の合併症として,術後眼内炎がなく,駆逐性出血による光覚消失がC1例だけだった.難治性の患者が多かったが,重篤な合併症が少なかった.この点からも難治性の症例に適した術式であると考えられた.また,複視の自覚についてはC2例だけであるが,中心視野が障害されている患者も多いため,実際に眼球運動障害が出現していた患者はもっと多いことが推測される.Robbinsら12)はC4%程度に斜視が出現することを報告しており,斜視が出現した患者は若年で,視力が良好であったと報告している.今後の適応拡大によって,より若年で視機能良好である眼が対象になった場合,術前のインフォームドコンセントが重要となる.CIV結論難治性緑内障に対するCAGVを用いたロングチューブシャント手術は有効である.また,硝子体手術が未実施の患者に対しては,毛様溝へのチューブ挿入がよい適応である.術後合併症として,一過性高眼圧や複視には注意が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C2022C2)浪口孝治:チューブシャント手術の術後管理.眼科手術C37:35-38,C20243)豊田泰大,徳田直人,塚本彩香ほか:血管新生緑内障に対する緑内障チューブシャント術(プレートのあるもの)の中期成績.あたらしい眼科39:1539-1543,C20224)BayerA,OnolM:ClinicaloutcomesofAhmedglaucomavalveCinCanteriorCchamberCversusCciliaryCsulcus.CEye(Lond)31:608-614,C20175)KimCJY,CLeeCJS,CLeeCTCetal:CornealCendothelialCcellCchangesandsurgicalresultsafterAhmedglaucomavalveimplantation:ciliarysulcusversusanteriorchambertubeplacement.SciRepC11,C12986,C20216)QinCVL,CKaleemCM,CContiCFFCetal:Long-termCclinicalCoutcomesCofCparsCplanaCversusCanteriorCchamberCplace-mentCofCglaucomaCimplantCtubes.CJCGlaucomaC27:440-444,C20187)TuralbaAV,PasqualeLR:HypertensivephaseandearlycomplicationsCafterCAhmedCglaucomaCvalveCimplantationCwithintraoperativesubtenontriamcinoloneacetonide.ClinCOphthalmolC11:1311-1316,C20148)YazdaniS,DoozandehA,PakravanMetal:AdjunctiveTriamcinoloneCAcetonideCforCAhmedCGlaucomaCValveImplantation:ARandomizedClinicalTrial.EurJOpthal-molC27:411-416,C20179)Nouri-MahdaviK,CaprioliJ:Evaluationofthehyperten-siveCphaseCafterCinsertionCofCtheCAhmedCglaucomaCvalve.CAmJOphthalmolC136:1001-1008,C200310)OzalpCO,C.lguyCS,CAtalayCECetal:RiskCfactorsCforC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