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ヘルペス性角膜炎

2018年12月31日 月曜日

ヘルペス性角膜炎HerpeticKeratitis井上智之*はじめにヒトヘルペスウイルスよる角膜炎をヘルペス性角膜炎とよび,病変の部位によって,角膜上皮病変,角膜実質病変,角膜内皮病変と異なるさまざまな病態の角膜炎を引き起こすことが知られている1).本稿では,単純ヘルペスウイルス(herpesCsimplexvirus:HSV)および水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zostervirus:VZV)による角膜炎の多様な臨床病型を示し,その診断および治療について述べる.CI単純ヘルペス角膜炎HSVによる角膜炎は角膜ヘルペスあるいは単純ヘルペス角膜炎とよばれる.HSVはCaヘルペス属のCDNAウイルスで,1型(HSV-1)とC2型(HSV-2)があり,角膜病変の関与はC1型が多い.2型は性器ヘルペスの関与が多いが,角膜炎を起こすこともある.単純ヘルペス角膜炎は,おもな病変の部位によって,上皮型,実質型,内皮型の病型が存在する.C1.上皮型ほとんどの人が幼児期にCHSV-1に初感染し,眼症状なく三叉神経節に潜伏感染し,成人期にストレス,発熱,紫外線暴露などがきっかけとなり,潜伏感染ウイルスが再活性化して,三叉神経節から角膜上皮に到達し,HSVが増殖して上皮型単純ヘルペス角膜炎が起こる.片眼性の異物感と充血を主訴とし,臨床病型は角膜上皮欠損の程度によって,樹枝状角膜炎と地図状角膜炎がある.樹枝状角膜炎では,細隙灯顕微鏡所見にて特徴的な樹の枝のような角膜びらんである樹枝状病変を示す(図1).フルオレセイン染色に高輝度で染まり,枝の先端部が瘤状のターミナルバルブを示す.樹枝状病変は線状びらん病変で,さらに面状に拡大すると地図状角膜炎を示す(図2).単純性の機械的角膜びらんの辺縁は直線的であるのに対して,角膜びらんの辺縁が不規則な凹凸を示す樹枝状辺縁を呈する.また,角膜上皮の進展が阻害され,二次的に遷延性角膜上皮欠損を示すこともある(図3).このような典型的病型ばかりでなく,多彩な非典型病変が存在しうるので注意が必要である.樹枝状病変の前駆段階としては,点状の星芒状病変(図4)が認められるが,これはCHSV病変だけでなく,Tygeson点状表層角膜炎や後述の帯状ヘルペスなどでも起こりうる.診断は,角膜ヘルペスが再発性病態であることから,繰り返す角膜炎の既往が参考になる.また,本症眼は角膜知覚の低下を示すので,Cochet-Bonnet角膜知覚計にて計測する.40Cmm未満が知覚低下疑いとされているが,両眼の知覚が低下している場合があるので,病眼と反対眼の値に左右差が存在することを加えて評価する.また,実験室検査としては,病変の角膜上皮擦過物からのHSV分離が確定診断となる.しかし,ウイルス分離は煩雑で実際に施行している施設は限られる.角膜上皮擦過物に対してイムノクロマト法キット(ヘルペスアイ,わかもと製薬)を使用して,角膜上皮細胞中のCHSV抗*TomoyukiInoue:多根記念眼科病院〔別刷請求先〕井上智之:〒550-0024大阪市西区境川C1-1-39多根記念眼科病院C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(43)C1619図1樹枝状角膜炎図2地図状角膜炎樹の枝分かれのような角膜上皮びらんを認める.樹枝状辺縁を伴う面状上皮びらんを認める.図3遷延性角膜上皮欠損図4角膜クラックHSV角膜炎後に角膜上皮進展障害に陥った病変を認める.創傷治癒の過程で生じる線状上皮病変を認める.図5円板状角膜炎図6壊死性角膜炎角膜中央部に角膜浮腫による混濁病変を認める.角膜内血管侵入および脂肪沈着を伴う角膜実質瘢痕病変を認める.図7角膜内皮炎による角膜浮腫図8水痘帯状疱疹ウイルス皮膚病変角膜内皮細胞の機能不全によるCDescemet膜皺壁を伴う角膜浮三叉神経第一枝領域に一致した特徴的な皮膚病変を認める.腫と角膜後面沈着物を認める.

アカントアメーバ角膜炎

2018年12月31日 月曜日

アカントアメーバ角膜炎AcanthamoebaKeratitis石橋康久*はじめにアカントアメーバ角膜炎(Acanthamoebakeratitis)は,原生動物であるアカントアメーバが角膜の障害された部位より侵入増殖して起こる感染症である.コンタクトレンズ(contactlens:CL)やオルソケラトロジーレンズ装用による角膜障害や外傷により損傷された部位より角膜に侵入して増殖する.およそ90%がCL装用によるもので,残りの約10%は外傷が原因である1,2).CLのなかではソフトCLがおよそ90%で,残りの10%がハードCLとされる.また,最近ではオルソケラトロジーレンズ装用による症例が散見される.CLでもっとも問題となるのが2週間交換の使い捨てレンズであり,CL保存ケースの汚染が問題である.もっとも大きな要因は,多目的溶剤(multi-purposesolvent:MPS)であり,これは保存液と消毒液を兼ねたものであるが,アメーバに対する消毒効果は非常に低く,ほとんどが洗い流すことによる効果のみであるが,この事実が使用者に伝わっておらず,漬けておくだけで使う装用者が多いため問題となっていた.このためわが国でも,アカントアメーバ角膜炎が大流行し多数の患者がみられた1,2).装用者に対する一時的な情報伝達により下火になっているが,根本的な対策は取られていないため,再燃する可能性があり注意が必要である.Iアカントアメーバ角膜炎の診断診断は,発症の特徴と臨床経過および臨床所見などより疑いをもち,病巣部のアメーバの寄生増殖を証明することで行われる.1.発症の特徴と臨床経過本症を発症するには,角膜の上皮が損傷されると同時にアメーバが存在する必要があり,そのため外傷やCL装用などによる障害が先行する.当初はもっとも多い細菌性の角膜炎として治療されるが,それには反応せずステロイドの点眼なども処方される.2~3カ所の眼科を受診し,難治の角膜炎として紹介などで受診することが多い.2.臨床所見臨床所見は初期,移行期,完成期と分けるのがよい(石橋の分類)3).a.初期本症の初期には,CL装用や外傷による角膜障害があり,そのためもっとも頻度の高い細菌性の角膜炎として治療される.しかし,この治療には反応しない.炎症が強いため,ほとんどの症例でステロイドが投与される.しばらくすると,流行性角結膜炎後にみられるような斑状,線状,点状などの上皮下混濁やヘルペス角膜炎の際の樹枝状角膜炎を思わせる所見が出現する.また,本症の特徴の一つとされる角膜実質中層に角膜輪部から中央に向かう角膜神経に沿った炎症細胞の浸潤がみられることがある〔放射状角膜神経炎(radialkeratoneuritis),*YasuhisaIshibashi:筑波病院眼科〔別刷請求先〕石橋康久:〒305-0043茨城県つくば市大角豆1716筑波病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(37)1613図1アカントアメーバ角膜炎の初期輪部から中央に向かう角膜神経に沿った炎症細胞の浸潤がみられる〔放射状角膜神経炎(radialkeratoneuritis),→〕.病変の程度の割には強い結膜毛様充血や高度の輪部浮腫がみられる.図3アカントアメーバ角膜炎の完成期本症の完成期の像である.角膜中央に楕円形の円盤状の強い混濁がみられる.輪部には強い浮腫があり,毛様充血も強い.ときに前房蓄膿がみられる.図2アカントアメーバ角膜炎の移行期角膜輪部と平行にリング状の浸潤がみられる.リングは角膜と相似形となる.これがみられる時期は非常に短いが,本症にもっとも特徴的とされる.初期よりも強い毛様充血や輪部浮腫などが出現する.図4パーカーインクKOH法により青く染まったアカントア図5パパニコロウ染色で外壁が青く,内側がピンクに染まっメーバたアカントアメーバアメーバのみが青くみえるので鑑別は容易である.アメーバの角膜上皮細胞の核と同じサイズだが,染色により鑑別は容易で大きさは直径がC10~15Cμmである.ある.アメーバの直径は約C10Cμmである.図6グラム染色で染色されたアカントアメーバグラム陽性であるため,全体が青く染まる.アメーバの直径は約C10Cμmである.図7培養4日後のアカントアメーバの顕微鏡写真無栄養寒天培地に納豆菌を塗布した培地で培養して,早ければC4~5日後にはトロホゾイトが観察される.進行方向にアカントポディアとよばれる突起状のものを出しながらゆっくりと動く.縦径がC25~30Cμmである.図8培養2週間後のアカントアメーバの顕微鏡写真2週間ほどで餌となる細菌がなくなると,アメーバはC2重壁をしたシストに変化する.これは環境が悪化したときに生き延びるための方法であり,薬剤に対する抵抗も非常に強く,本症の治療がむずかしいのも生存条件が悪くなると,この状態に変化するためである.直径は約C10~15Cμmである.図9レーザー共焦点顕微鏡により観察された角膜内のアカントアメーバ白い円形の直径約C10Cμmのものが多数みられた.直接検鏡および,培養でアカントアメーバが証明された症例である(バーはC50Cμm).(文献C4より引用)表1アカントアメーバ角膜炎に対する三者併用療法処置治療効果1.角膜掻爬大病巣部の角膜を擦って,上皮や実質内のアメーバを除去するのが目的である.初期には,アメーバが上皮内に寄生増殖しているので,この治療がもっとも効果が大きい.アメーバが寄生する病的な上皮は,擦ると容易に.離するので,そのような上皮は輪部を残してすべて除去する.移行期,完成期では,アメーバは実質に寄生するので,実質表層を切除するように掻爬する.実質が治癒してくると,その上に健常な上皮が張るようになり,容易には.離できなくなる.2.点眼抗真菌薬中1%ボリコナゾール(ブイフェンドCR),C0.1%ミカファンギン(ファンガードCR),C0.1%ミコナゾール(フロリードCFCR),0C.1%アムビゾームCR,5%ピマリシンCRなど上記よりC1~C2種類を選ぶ.消毒薬より選択したC1種と合わせ,合計C2~C3種類を点眼する.C2種類であれば,各々にC1番,C2番と番号を付け,それをC30~C60分ごとに交互に,C1,C2,C1,C2と起床時から就寝時まで点眼する.C3種では,C1,C2,C3と同様に順番に点眼する.就寝時にはC1%ピマリシン眼軟膏を点入する.消毒薬0.02%クロルヘキシジン,C0.02%ポリヘキサメチレンビグアナイド(CPHMB),C0.05%CPAヨード点眼よりC1種類を選んで,抗真菌薬の点眼と合わせて点眼する.手に入るのであればC1%ピマリシン眼軟膏の代わりにブロレンCR眼軟膏を点入するのも可.3.抗真菌薬全身投与小ミカファンギン点滴(ファンガードCR,C1日C150~3C00mg),ボリコナゾール内服または点滴(ブイフェンドCR,1日C200~4C00mg),イトラコナゾール内服または点滴(イトリゾールCR,1日C200~4C00mg)投与前に血液検査する.投与開始後はC1~C2週ごとに副作用のチェックを行い,異常があれば中止する.点眼で投与するものと違う種類を選択する.-

真菌性角膜炎

2018年12月31日 月曜日

真菌性角膜炎FungalKeratitis鈴木崇*大橋裕一**はじめに真菌性角膜炎は,頻度こそ決して高くはないが,多様な臨床所見を呈するため,診断のむずかしい角膜感染症の一つである.ときには治療に抵抗を示して角膜穿孔や眼内炎に至ることもあるほか,たとえ治癒したとしても,強い実質瘢痕を残すため,高度の視力低下を引き起こすことが多い.真菌性角膜炎には大きく分けて,酵母菌によるものと糸状菌によるものがあり,誘因をはじめ,臨床所見や治療経過も両者間で異なる1).本稿では,真菌性角膜炎の臨床所見,診断,治療について,酵母菌と糸状菌に分けて解説する.CI誘因・臨床所見1.酵母菌真菌性角膜炎から分離される酵母菌は,そのほとんどが皮膚や口腔など生体内に存在するCCandida属である.Candida属による真菌性角膜炎の誘因として,角膜移植後などで角膜上皮欠損があり,かつステロイド点眼の使用によって局所的に免疫力が低下している場合やコンタクトレンズ装用に伴って発症する場合が多い.角膜炎を引き起こすCCandida属としては,C.Calbi-cansやCC.parapsilosisがあげられる.Candida属による真菌性角膜炎の臨床所見としては,カラーボタン様の境界明瞭な類円形病巣を形成し,病巣中心に角膜浮腫を認める2)(図1).しかしながら,眼表面疾患に合併した場合など,臨床所見が修飾され,病巣が明確でない場合もある.病状が進行すれば,前房蓄膿が出現し,さらに角膜穿孔を引き起こす場合もある(図2).また,Candi-da属による真菌性角膜炎の病巣を触ると柔らかい場合が多い.ごくまれに,酵母菌であるCCryptococcus属や二形性の酵母菌(生体内では菌糸形,培地上では酵母形)であるCMalassezia属も角膜炎を引き起こすが,その臨床像は症例数も限られており,明らかになっていない3)(図3).C2.糸状菌糸状菌による真菌性角膜炎は草木・土壌が関連する外傷で発症することが多いが,角膜移植後,翼状片手術後,コンタクトレンズ装用など,眼表面の障害を誘因として発症する場合もある.おもな原因糸状菌としてはFusarium属,Aspergillus属,Penicillium属,Alter-naria属,Paecilomyces属があげられるが,Fusarium属がもっとも多く検出される3).臨床所見は原因糸状菌によって異なるが,すべての糸状菌による真菌性角膜炎の共通かつ特徴的な所見として,病巣周辺部に羽毛状の細胞浸潤を伴う灰白色の角膜潰瘍(hyphateulcer)があげられる1)(図4).他方,感染病巣の深さと進展度は,原因糸状菌によって異なる4).たとえば,Fusarium属,Aspergillus属,Paecilomyces属による真菌性角膜炎においては,角膜全層に淡い角膜細胞浸潤があり,前房内に菌糸が達すると,角膜内皮面にCendothelialplaqueと*TakashiSuzuki:東邦大学医療センター大森病院眼科**YuichiOhashi:愛媛大学〔別刷請求先〕鈴木崇:〒143-8541東京都大田区大森西C6-11-1東邦大学医療センター大森病院眼科C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(31)C1607図1Candida属による角膜炎の1例図2Candida属による角膜炎の1例類円系角膜細胞浸潤と病巣周辺の浮腫を認める.不正な角膜細胞浸潤と前房蓄膿を認める.図3Malassezia属による角膜炎の1例図4コンタクトレンズ装用者に認められたFusarium属に生体では菌糸状に増殖するため,淡い角膜細胞浸潤を示す.よる角膜炎の1例淡い角膜細胞浸潤を認める.図5植物外傷によるFusarium属による角膜炎の1例図6白内障手術時の創口部に発症したAspergillus属による淡い角膜細胞浸潤とCendothelialplaqueを認める.角膜炎の1例淡い角膜細胞浸潤とCendothelialplaqueを認める.図8図5の症例の前眼部OCT写真Endothelialplaqueと角膜内皮の境界(.)が不明瞭である.図7Alternaria属による角膜炎の1例角膜表層に限局する淡い角膜細胞浸潤を認める.図10真菌性角膜炎(図7の症例)の角膜擦過物の塗抹標本(ファンギフローラ染色,1,000倍)図9真菌性角膜炎の角膜擦過物の塗抹標本(グラム染色,分節を有する菌糸(Alternaria属)を認める.C1,000倍)仮性菌糸を有する酵母菌(Candida属)を認める.-

細菌性角膜炎

2018年12月31日 月曜日

細菌性角膜炎BacterialKeratitis北澤耕司*外園千恵**はじめに感染性角膜炎は抗菌薬の開発に伴い,以前と比べて予後が改善してきた.その一方で,多彩な所見を呈することから,角膜所見だけでなく,発症背景および経過に基づいて起炎菌を推測することが重要である.感染性角膜炎は臨床所見の適期な判断と幅広い知識をもった臨床力が試されるため,眼科医としては腕の見せ所となる.基本的な治療方針としては,初期治療ではCempiricalther-apyをしていき,塗抹検鏡と分離培養を行い,起炎菌を同定したあとはCde.nitivetherapyに変えていく.日本眼感染症学会による『感染性角膜炎診療ガイドライン』第2版1)によると,急激な発症で,充血・眼脂・眼痛・視力低下などの強い自覚症状,および外傷の既往,コンタクトレンズ装用の有無といった背景因子,さらに角膜の浸潤・膿瘍・潰瘍といった化膿性病変を認めた場合は感染性角膜炎を疑う.そのとき角膜病巣所見のパターンでグラム陽性球菌かグラム陰性桿菌かを推定して治療を開始し,直接塗抹検鏡および分離培養を行う.初期治療としては抗菌点眼薬頻回投与を行い,重症例では抗菌薬全身投与を併用することが推奨されている.しかし,治療に反応しない場合はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantCStaphylococcusaureus:MRSA)を含む耐性菌の可能性および真菌感染などの可能性も考え,治療を修正していくことが望ましい(図1).最終目標は治癒であるが,速やかに治療することで,角膜の透明性を維持し,および瘢痕治癒による角膜変形を最小限にとどめることは,視力予後の改善に重要である.本稿では,pathogenicbacteriaとして,緑膿菌,CcommensalbacteriaとしてCMRSA,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(methicillin-resistantcoaguC-lasenegativeStaphylococci:MRCNS),非定型抗酸菌,キノロン耐性コリネバクテリウムに絞って臨床診断および治療のポイントについて解説する.CI緑膿菌性角膜炎緑膿菌(Pseudomonasaeruginosa)はグラム陰性桿菌で,健常者には通常,病原性を示さない弱毒細菌の一つで日和見感染菌である.流し台などの「水回り」からしばしば分離される常在菌であるため,院内感染を生じやすいことが知られている.眼科領域においてはコンタクトレンズ関連による角膜炎の代表的な起因菌である.細菌性角膜炎の原因となる緑膿菌は,米国ではC6~39%,南インドではC8~21%を占めていると報告されている.緑膿菌は各種の抗菌薬に耐性を示す傾向が強く,耐性菌についても問題となっていたが,アミノグリコシド系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬の開発により,近年は減少傾向である.緑膿菌の病原因子は細胞の蛋白合成を阻害するエキソトキシンCAやエキソエンザイムCSなどの外毒素,エラスターゼやアルカリプロテアーゼなどの蛋白分解酵素,内毒素(リポ多糖)などがある.このためいったん感染すると,これらの酵素によりコラーゲンやプロテオグリ*KojiKitazawa:京都府立医科大学附属北部医療センター眼科**ChieSotozono:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕北澤耕司:〒629-2261京都府与謝郡与謝野町男山C481京都府立医科大学附属北部医療センター眼科C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(23)C1599図1感染性角膜炎の診断・治療のフローチャート(感染性角膜炎診療ガイドライン第C2版を一部改変)図2緑膿菌性角膜炎図3緑膿菌性角膜炎19歳,女性.カラーコンタクト使用.多発性の角膜浸潤とす34歳,男性.2ウィークコンタクトレンズを使用中.感染巣りガラス状の角膜混濁を認める.右側臥位であったため,前房周囲にすりガラス状の角膜混濁を伴う角膜膿瘍を認めた.蓄膿が耳側に移動している.図4屈折矯正術後のキノロン耐性メチシリン感受性ブド図5角膜移植後のメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌角膜炎ウ球菌角膜炎52歳,女性.エピレーシック術後C2日に発症.実質層間ドナー角膜周辺部C3時方向に円形,境界明瞭な感染巣をに感染巣があるために抗菌薬が届きにくく難治である.認め,前房蓄膿を認める.縫合糸の緩みが契機となり発症した.図6非定型抗酸菌性角膜炎64歳,男性.屈折矯正手術後に発症.実質内に境界不明瞭な花弁状の浸潤病巣が出現した.図7帯状角膜変性に対する治療的レーザー表層角膜切除術後の角膜感染症64歳,女性.帯状角膜変性に対する治療的レーザー表層角膜図8コリネバクテリウム性角膜炎の塗抹検鏡切除術後,フルオロキノロン点眼薬使用中に角膜感染症を発角膜病巣擦過物の塗抹検鏡で,好中球に貪食される多数のグラ症した症例.(文献C11より許可を得て転載)ム陽性桿菌を認めた.(文献C11より許可を得て転載)-

細菌性結膜炎

2018年12月31日 月曜日

細菌性結膜炎BacterialCornealInfection佐々木香る*はじめに結膜炎とは,細菌が結膜上皮細胞に感染し,炎症を生じた状態である.細菌性結膜炎は,乳幼児・学童と高齢者に多くみられる.その起因菌として,インフルエンザ菌,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌,淋菌のC4種を知っておきたい.このうち,乳幼児・学童では,インフルエンザ菌(図1)と肺炎球菌(図2)が圧倒的に多い.冬期にいわゆる鼻風邪に伴い発症する.眼脂とともに,ほんのり充血するため,「ピンクアイ」と称される.また,高齢者では黄色ブドウ球菌が多く,この菌はしばしば結膜.と鼻腔に常在している.近年,細菌の薬剤耐性が問題となっているが,小児科領域ではインフルエンザ菌,肺炎球菌はペニシリン耐性が問題となっている.また,ブドウ球菌ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusCepidermidis:MRSE)やメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphC-ylococcusaureus:MRSA)の割合が増加している.また,本来常在菌であり非病原性とされてきたコリネバクテリウムがキノロン耐性となり,結膜炎の起因菌として報告が増えていることにも注意すべきである.CI特徴的な臨床像と検査項目細菌性結膜炎の臨床像としては,なによりも粘液膿性眼脂(図3)が特徴的である.もちろん,結膜充血や浮腫を伴う.この膿性眼脂は黄色で粘性の眼脂であり,主として好中球からなる.塗抹検鏡(用語解説参照)では,この好中球が細菌を貪食している像をみることができる.乳幼児・学童に多い,インフルエンザ菌と肺炎球菌は小児の上気道に常在する菌であり,これらによる結膜炎は,冬期にいわゆる鼻風邪に伴い発症する.眼脂とともに,ほんのり充血するため,「ピンクアイ」と称される.一方,高齢者にみられるブドウ球菌性結膜炎(図4)は眼瞼炎も伴うことが多く,睫毛の脱落やカラレット,眼瞼縁の発赤,不整,びらんなどを認める.二次的にマイボーム腺の梗塞を認めることも多い.眼脂には,膿性眼脂のほかに,漿液性眼脂(図5)がある.漿液性眼脂とは,水っぽく透明,涙のような分泌物であり,涙腺や副涙腺からの反応性分泌亢進によるもので,アレルギー性結膜炎やウイルス性結膜炎でみられる.結膜炎の診断には,この眼脂の性状が大変大きな手がかりとなるので,まずは必ず肉眼で眼脂の性状を観察することをお勧めする.とくに乳幼児の場合,泣かせてしまうと観察が困難となる.診察場所を工夫するなどして,泣いていない状況での観察をすることで,より多くの情報を得ることができる.点眼薬は全身投与薬に比して,濃度が高いため,たとえ耐性菌であっても奏効することも多いが,今後キノロンの乱用が継続されると,高度耐性菌(用語解説参照)が増加する可能性が懸念される.現在のところ,結膜炎の起因菌別の薬剤選択の推奨は表1のとおりである.ただし,ブドウ球菌性結膜炎で,すでに長期間点眼が投与*KaoruSasaki:JCHO星ヶ丘医療センター眼科〔別刷請求先〕佐々木香る:〒573-8511大阪府枚方市星丘C4-8-1JCHO星ヶ丘医療センター眼科C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(15)C1591aa図1鼻風邪とともに生じたインフルエンザによる結膜炎図2肺炎球菌による結膜炎球結膜,瞼結膜がピンク色を呈し,眼脂を認める(Ca).結膜.結膜は淡いピンク色を呈し,眼脂を認める(Ca).結膜.擦擦過物の塗抹検鏡(Cb).インフルエンザ桿菌が検出された.過物の塗抹検鏡(Cb).好中球とともに,莢膜に包まれた双球菌である肺炎球菌を認める.図3細菌性結膜炎にみられた粘液膿性眼脂好中球を主体とする黄色で粘性のある眼脂.図5アデノウイルス結膜炎にみられた漿液性眼脂図4ブドウ球菌性眼瞼結膜炎結膜充血,眼脂とともに,眼瞼にはカラレットを認める(Ca).涙腺・副涙腺からの反応性分泌が主体となるさらさらした眼脂.結膜.擦過物の塗抹検鏡(Cb).上皮細胞とともに,ブドウ球菌を認める.表1結膜炎の起因菌別の薬剤選択起炎菌耐性報告選択薬剤乳幼児・学童インフルエンザ菌C肺炎球菌bラクタム系耐性(ペニシリン系)(セフェム系)アミノグリコシド耐性キノロン系耐性キノロン系点眼>セフメノキシム点眼セフメノキシム点眼>キノロン系点眼高齢者黄色ブドウ球菌コリネバクテリウムメチシリン耐性Cbラクタム系耐性(ペニシリン系)(セフェム系)キノロン系耐性マクロライド系耐性アミノグリコシド系耐性キノロン系耐性キノロン系点眼=セフメノキシム点眼*MRSAの場合はクロラムフェニコール点眼オフサロンCR点眼>バンコマイシン眼軟膏セフメノキシム点眼性年齢(年齢幅は拡大傾向)淋菌キノロン系耐性(セフメノキシム点眼)+セフトリアキソン静注単回A>Bは,いずれも有効であるが,まずCBよりCAの投与が好ましいことを示す.図6キノロン系点眼常用者に認めたコリネバクテリウムによる結膜炎膿性眼脂とともに,眼脂,充血を認める(Ca).結膜.の塗抹検鏡(Cb).コリネバクテリウムに特徴的な松葉状のグラム陽性桿菌を認める.図8レンサ球菌による結膜炎生後数週間の乳児に,眼脂,充血を認めた(Ca).眼脂の塗抹検鏡(Cb).好中球に貪食されたレンサ球菌を認める.図94カ月の幼児に認めた結膜炎結膜充血は認めないが,片眼性の眼脂を認める.生下時より鼻涙管閉塞を指摘されている(Ca).結膜.の塗抹検鏡(Cb).結膜上皮とともに,レンサ球菌を認める.図10高齢者に生じた涙小管炎鼻側結膜充血と,涙点の膨隆と排膿を特徴とする(Ca).摘出した菌石の塗抹検鏡(Cb).放線菌を認める.培養にてアクチノマイセスと判明した.図11抗菌薬点眼,緑内障点眼を常用していた患者に生じた偽眼類天疱瘡結膜充血,眼脂に加えて,瞼球癒着を認める.図12アレルギー性結膜炎にみられた眼瞼皮膚の苔癬化図13単純ヘルペスによる眼瞼結膜炎皮膚の雛襞を認める.眼瞼に臍窩を伴う水疱を認める.表2細菌性結膜炎と鑑別の必要な膿性眼脂を示す疾患疾患まずすべきこと次にすべきこと充血改善後にすべきこと鼻涙管閉塞・抗菌薬点眼,3日間(結膜充血がなければ不要)・涙.マッサージ・人工涙液で眼表面洗浄涙小管炎・涙点切開により菌石摘出・抗菌薬点眼,3日間・通水洗浄・人工涙液で眼表面洗浄眼類天疱瘡・結膜.常在菌の確認・局所投与:プレドニゾロン眼軟膏:抗菌薬眼軟膏:人工涙液頻回・全身投与:ステロイド:シクロスポリン・人工涙液頻回・プレドニゾロン点眼(症状に応じて漸減)■用語解説■塗抹検鏡:塗抹検鏡は,結膜.を睫毛鑷子などで擦過し,採取した検体を直接スライドグラス上に塗抹・染色して標本を作製し,顕微鏡で菌の有無を調べる検査.塗抹検査は迅速に結果がわかる点で便利で,起因菌の検出,菌量の把握や治療経過の評価などに有用である.しかし,検出にはある程度の菌量が必要で,生菌と死菌の区別ができないこと,また薬剤感受性検査には供用できないなどが欠点である.耐性菌:抗菌薬に対する抵抗性が著しく高くなった細菌.耐性菌の出現にはいくつかの機構がある.1)抗菌薬が標的とする細菌の酵素あるいは蛋白質に突然変異が起きる,2)細菌が抗菌薬を不活性化する能力を獲得(Cb-ラクタマーゼ産生など),3)抗菌薬を能動的に排出する機構,4)膜蛋白の変異・減少により抗菌薬の透過性が低下する機構などがある.薬剤耐性を支配する遺伝子はプラスミド(細胞質にある環状のデオキシリボ核酸DNA)上にある場合が多く,接合により細菌から細菌に伝達されやすい.

クラミジア結膜炎

2018年12月31日 月曜日

クラミジア結膜炎ManagementofChlamydialConjunctivitis中川尚*I疾患概念と歴史トラコーマの病原体として古くから知られてきたCChlamydiatrachomatis(以下,クラミジア)は細菌に分類される偏性細胞内寄生体で,1907年,Prowazekらにより上皮細胞の細胞質内に「封入体」の形で発見された.クラミジア感染症は,眼のサイクルで起こるトラコーマのほか泌尿生殖器間のサイクルがあり,ここから伝播して起こる軽症の結膜炎はトラコーマと区別して封入体結膜炎とよばれた.トラコーマは衛生環境の改善と有効な抗菌薬の登場により激減したが,1980年代から性器クラミジア感染症の増加に伴って封入体結膜炎がリバイバルした.両者の臨床像の差はCChlamydiaCtrachoma-tisの血清型の違い(A,B,Cの血清型がトラコーマを起こす)によるとされていたが,その後,トラコーマの臨床像は血清型の差ではなく,感染反復による免疫反応が本態であることが明らかとなっている.近年は「封入体結膜炎」の名称はほとんど用いられず,ほかの結膜炎と同様に「原因微生物+結膜炎」の形で「クラミジア結膜炎」の用語が用いられることがほとんどである.CII臨床所見クラミジア結膜炎は,青壮年にみられる成人クラミジア結膜炎(成人型封入体結膜炎)と新生児クラミジア結膜炎(新生児封入体結膜炎)とに分けられる.1.成人成人のクラミジア結膜炎は,尿道炎,子宮頸管炎などの性器クラミジア感染症から手指などを介して伝播して起こる.潜伏期は約C1週間~10日で,充血,眼脂,眼瞼腫脹などの症状で発症し,耳前リンパ節腫脹を伴った急性濾胞性結膜炎を示す.もっとも特徴的な所見は結膜円蓋部から瞼結膜にかけてみられる濾胞で,発病からC3~4週間で徐々に大きく充実性となり,融合して堤防状を呈するようになる(図1).眼脂は粘液膿性である.上輪部浸潤(図2)や軽度の表層性血管侵入(マイクロパンヌス)を合併することも多い.経過中,上方角膜にアデノウイルスによる点状上皮下浸潤に類似した点状混濁を認めることもある(図2).罹病期間が長くなると,上瞼結膜には乳頭増殖が目立つようになる.発病からC1~2週間は前述したような特徴的な濾胞はまだ形成されていないため,ウイルス性の濾胞性結膜炎との鑑別がむずかしい(図3).眼脂が粘液膿性であること,濾胞が大型であること,上輪部浸潤を合併すること,などが鑑別点となる(表1).結膜炎患者の半数が,感染源と考えられる泌尿生殖器のクラミジア感染を合併する.そのほか咽頭感染の合併も多く,無症状の軽症のものから腫瘍を思わせる増殖性炎症まで幅広い臨床像を示す1,2).治療に際してはこれらの全身合併症の存在を考慮する必要がある.*HisashiNakagawa:徳島診療所〔別刷請求先〕中川尚:〒189-0024東京都東村山市富士見町C1-2-14徳島診療所C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(9)C1585図1クラミジア結膜炎(成人)瞼結膜から円蓋部にみられる濾胞が特徴的である.Ca:濾胞.発症C3週間の症例.Cb:濾胞.発症C10週間の症例.濾胞は大型,充実性で,融合傾向を示す.典型的な濾胞になるまで2~3週間以上を要する.図2輪部・角膜所見(成人)a:クラミジア結膜炎では上輪部に浸潤を伴うことが多い.Cb:また点状の角膜浸潤,混濁がみられることも多い.アデノウイルスと異なり,上方角膜に限局して認められるのが特徴である.図3クラミジア結膜炎(成人,発症10日の症例)発病初期は濾胞形成が軽度で,アデノウイルス結膜炎との鑑別がむずかしい.表1クラミジア結膜炎とアデノウイルス性結膜炎の鑑別点クラミジアアデノウイルス濾胞大型,充実性経過とともに増大・融合中等度の濾胞充血,浮腫などの炎症所見が強い上輪部浸潤,表層性血管侵入C─角膜上方周辺部に点状浸潤全面に点状浸潤塗抹所見好中球優位封入体,Leber細胞,形質細胞リンパ球優位(70%以上)図4クラミジア結膜炎(新生児)a:瞼結膜のビロード状の充血・浮腫.膿性眼脂を伴って,瞼結膜の充血,浮腫,混濁が起こり,ビロード状を呈する.Cb:偽膜性結膜炎.偽膜形成を伴うことも多い.表2代表的なクラミジア同定法同定法検査法・キット特徴封入体の同定ギムザ染色古典的,低感度抗原検出法CIDEIAPCE感度,特異度とも良核酸増幅法アプティマCCombo2プローブテックコバスC4800システム高感度,高特異性図5塗抹所見(結膜擦過物,ギムザ染色)結膜上皮細胞の細胞質に封入体(Prowazek小体)()が観察される.Leber細胞(貪食中のマクロファージ,)もクラミジア感染の特徴的所見の一つである.表3クラミジア結膜炎の治療*クラミジア結膜炎の治療薬として保険適用あり.他の薬剤は適用なし.図6アジスロマイシン内服2g,1回投与による治療例(成人)a:内服前.Cb:内服後C1カ月.内服後約C1週間で充血,眼脂は減少し,PCRでクラミジアは陰性となった.約C1カ月で円蓋部の軽度の濾胞を残してほぼ治癒している.

アデノウイルス角結膜炎-新型と最近の臨床像-

2018年12月31日 月曜日

アデノウイルス角結膜炎─新型と最近の臨床像─AdenoviralKeratoconjunctivitis─NovelTypeandRecentClinicalFeatures─内尾英一*はじめにアデノウイルス(adenovirus)はウイルス性結膜炎の主たる病因であり,臨床的にアデノウイルス結膜炎は流行性角結膜炎(epidemickeratoconjunctivitis:EKC)と咽頭結膜熱(pharyngoconjunctivalfever:PCF)とがある.近年,アデノウイルス結膜炎の原因として,新型のアデノウイルスが注目を集めている.本稿ではアデノウイルス結膜炎の最近の傾向と,その中心にある「新型」について解説する.Iアデノウイルス角結膜炎の現状国立感染症研究所感染症疫学センターのホームページには,EKCから分離されたウイルスの年ごとの割合が報告されている.(https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/230-iasr/iasr-data/199-virus-graph2.html)2014~2018年の5年間の各年の型別検出頻度を図1に示す.2014年には3型と37型が多かったが,2015年には54型が約40%ともっとも多くなり,この状況は2016年以降も続き,54型と次に多い3型でほぼ半分を占めるという状況だった.しかも,2017年からその他のアデノウイルス型(otheradeno)とその他が増加している.これらの傾向のなかで,54型と,頻度はそれほど多くはないが53型と56型がどの年にも一定程度検出されている.これらが新型とされている52型以降の型である.また,その他のアデノウイルス型の中にも後述するようなこれら以外の新型のアデノウイルスが含まれている.今や新型アデノウイルスによるEKCはとくに珍しい現象ではなくなっているのである.II新型アデノウイルスはどういうものなのか新型のウイルスといえば,インフルエンザがしばしば話題にあげられる.インフルエンザウイルスにはA,BおよびCの三つの型があり,ヒトに大きな流行を起こすのはA型とB型である.A型インフルエンザは抗原性の異なる亜型(subtype)がヒトの間に出現することによって大流行を引き起こすことがあり,このような変異様式は不連続変異とよばれるが,新型ではない.A型インフルエンザの亜型は鳥類に数多くみられるが,トリインフルエンザウイルスがなんらかの理由によってヒトからヒトへの感染性を獲得し,爆発的な世界規模の大流行を生じるのがインフルエンザパンデミックであり,新型インフルエンザとよばれる現象である.ウイルス学的にはH7N9亜型といわれるものである.しかし,アデノウイルスの新型というのはインフルエンザウイルスとはまったく異なっている.そもそもDNAウイルスであるアデノウイルスは,RNAウイルスであるインフルエンザウイルスに比べると変異ははるかに生じにくい.急性出血性結膜炎のエンテロウイルスの変異速度の高さと比較しても同様である.アデノウイルスの分類法として,かつては血清型(serotype)が用いられていた.1~51型までは血清型で*EiichiUchio:福岡大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕内尾英一:〒814-0180福岡市城南区七隈7-45-1福岡大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(3)15792018年2017年2015年2014年図1流行性角結膜炎から分離された型の年別分布(感染症疫学センターホームページより)2016年■Otheradeno■CoxsackievirusA24■その他■Adenovirus54Adenovirus3Adenovirus64(19a)Adenovirus37Adenovirus56Adenovirus53Adenovirus4図2アデノウイルスの構造表1ヒトアデノウイルスの分類12,C18,C31,C61C3,7,11,14,C16,C21,C34,C35,C50,C55,C66,C76,C77,C78,C79C1,2,5,6,57,89C8,9,10,13,15,17,19,20,22-30,C32,C33,C36,C37,C38,C39,C42-49,C51,C53,54,56,C58,C59,C60,C62,C63,C64,C65,C67,C68,C69,C70,C71,C72,C73,C74,C75,C80,C81,C82,C83,C84,C85,C86,C87,C88,C90C440,C41C52CACBCCCDCECFCGC主要な角結膜炎起炎型を太字で示す.下線の型は角結膜炎の症例が報告されているものを示す.図3アデノウイルス7型の遺伝子型制限酵素で切断したパターンによって,複数の遺伝子型が区別される.表2角結膜炎を生じるD種アデノウイルス型とウイルス学的形質型ペントンベースヘキソンファイバー報告年新型発見由来国C891015223753545664858型9型10型15型22型37型37型54型56型22型37型8型9型10型15型22型37型22型54型15型19型19型8型C9型C10型C15型C22型C37型C8型8型9型37型8型2005年2000年2008年1993年2015年ドイツC日本CフランスC米国C日本太字が新型を示す.図4アデノウイルス結膜炎の角膜びらん図5アデノウイルス結膜炎に合併した角膜上皮病変36歳,男性.アデノウイルスC54型による.LASIK後眼で経過49歳,女性.アデノウイルスC54型による.発症後C3カ月を経中に角膜全びらんとなった.過しても上皮病変が遷延していた.■用語解説■バイオインフォマティクス:生命科学と情報科学の融合分野の一つであり,DNAやCRNA,蛋白質の構造などの生命がもっている「情報」を,情報科学や統計学などの分野のアルゴリズムを用いて分析することで生命について解き明かしていく学問である.生物情報科学やシステム生物学ともいわれる.人工知能(arti.cialintelligence:AI)との親和性も高く,脚光を浴びている.バイオインフォマティクスの手法として多用されるものの一つが相同性検索であり,アデノウイルスの型別に応用されている.簡単な説明ではあるが,結膜拭い液から抽出し,PCR法で得られたゲノムの塩基配列をCNCBI(NationalCCenterCforCBiotechnologyInformation)のCGenBankなどに登録してあるすべてのアデノウイルスの型の塩基配列データベースと照合し,もっとも相同性が高いものによって型が決定される.既存の型のどれとも相同性が低ければ新型となるわけである.実際に研究室に標準株などがなくても,データベースだけでウイルス学的研究ができるので,バイオインフォマティクスの研究者はコンピューター科学からの参入がほとんどである.臨床を必ずしも知らなくても,アデノウイルスの遺伝子の局在はすべてすでにわかっているので,多くの研究発表が行われている.しかし,臨床分離株の蓄積に基づかない米国を中心とするコンピューター解析に偏った研究が必ずしも広く許容されているわけではない.

序説:日常臨床で遭遇する眼感染症とその対処法

2018年12月31日 月曜日

日常臨床で遭遇する眼感染症とその対処法OcularInfectionsEncounteredinDailyClinicalPracticeandHowtoDealwithThem木下茂*現在の医療は,悪性腫瘍や循環器系疾患,代謝系疾患など,ある意味の加齢に基づくきわめてローグレードの慢性炎症,酸化ストレスなどが関与する疾患群が治療主体となっている.眼科領域でも,加齢に伴う白内障,緑内障,加齢黄斑変性,ドライアイなどはこの範疇の疾患群ともいえる.しかし,近代医療の始まりの時,医療の究極の目的が何であったかを考えてみると,ペストや天然痘などの感染症との闘い,そして戦争や災害などによる外傷への対処ということであったように思われる.実際,CRobertKoch,LouisPasteurや北里柴三郎をはじめとする先達の感染症との闘いは壮絶なものであり,これらの研究から確立されていった感染症学がCPaulEhrlichなどに受け継がれ,近代免疫学の黎明期に結び付いていった1).すなわち,病原体は,その急速な増殖などにより生体を破壊するいわゆる感染症や,あるいは病原体に対する生体応答などからなる感染アレルギーなどを生じうるとする考え方である.感染症としては,とくに新興感染症と再興感染症という二つの大きなグループが重要であると考えられている.新興感染症とは,にわかにその発症が注目されるようになった感染症である.たとえば,重症亜急性呼吸器症候群(SARS),鳥インフルエンザ,エボラ出血熱などである.一方,再興感染症とは,今までにも存在していた感染症で公衆衛生上ほとんど問題となっていなかったが,最近になって再び注目されるようになってきた,あるいは将来問題となる可能性がある感染症のことである.たとえば,結核,黄色ブドウ球菌感染症,マラリアなどがあげられる.眼科領域での新興感染症としては,アカントアメーバ角膜感染症,サイトメガロウイルス角膜内皮炎,エボラ出血熱2)などが報告されてきたし,再興感染症としては結核,梅毒などがぶどう膜炎との絡みで注目されている.さて,この特集では,日常的に遭遇する可能性のある感染症とその病態について,エキスパートによるわかりやすい解説を集めてみた.アデノウイルス角結膜炎は日頃から悩まされる疾患の一つであるが,内尾英一先生に新型のアデノウイルスを含めたウイルス型とそれらの臨床所見などを含めて要約していただいた.ウイルス型により臨床病型も多様に変化する可能性があり,臨床経過をみるうえでも大切な情報である.クラミジア結膜炎については中川尚先生にお願いした.この疾患も眼科医の理解が深まり適切な治療が施されるようになってきたが,その的確な診断と治療となると深い知識が必要となってくる.ここでは,新生児のみならず成人の封入体*ShigeruKinoshita:京都府立医科大学感覚器未来医療学C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(1)C1577

網膜剝離を伴ったサイトメガロウイルス網膜炎の6症例の検討

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1567.1570,2018c網膜.離を伴ったサイトメガロウイルス網膜炎の6症例の検討三股政英石川桂二郎長谷川英一武田篤信園田康平九州大学大学院医学研究院眼科学分野CClinicalFeaturesofSixCasesofCytomegalovirusRetinitisComplicatedwithRetinalDetachmentMasahideMimata,KeijirouIshikawa,EichiHasegawa,AtsunobuTakedaandKoheiSonodaCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversityC目的:網膜.離(RD)を伴ったサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の症例の臨床像を検討する.対象および方法:対象は過去C4年間に九州大学医学部付属病院眼科にてCCMV網膜炎と診断したC10症例C13眼のうち,経過中にCRDを認めたC6症例C6眼で,診療録をもとに後ろ向きに検討した.結果:症例は男性C5例C5眼,女性C1例C1眼,平均年齢60.5歳.初診時の平均視力はC0.15で,CMV網膜炎の診断からCRD発症までの平均期間はC4.3カ月であった.RDに対して,強膜内陥術をC1例に,硝子体手術をC5例に行った.最終的にC4例がシリコーンオイルを留置された.最終観察時の平均視力はC0.04であった.結論:CMV網膜炎に伴うCRDは視力予後が不良であり,重篤な視機能障害の原因となる.CMV網膜炎はCRDの発症に留意して治療を行うことが重要である.CPurpose:ToCdescribeCtheCclinicalCfeaturesCinCcasesCofcytomegalovirus(CMV)retinitisCcomplicatedCwithCreti-naldetachment(RD)C.MaterialsandMethods:ThisCstudyCinvolvedCtheCretrospectiveCreviewCofCtheCmedicalCrecordsof6eyesof6CMVretinitispatientscomplicatedwithRDwhovisitedtheDepartmentofOphthalmology,UniversityofKyushuHospitalfrom2013toC2016.CResults:Averagebest-correctedvisualacuityatC.rstvisitwas0.15.CItCtookCanCaverageC4.3monthsCfromCdiagnosisCofCCMVCretinitisCtoConsetCofCRD.COneCcaseCunderwentCscleralbuckling;theothercasesunderwentparsplanavitrectomy,including4casesthatunderwentsiliconeoiltampon-ade.CAverageCbest-correctedCvisualCacuityCatClastCvisitCwasC0.04.CConclusion:CMVCretinitisCcomplicatedCwithCRDCcancauseseverevisualdysfunction.Duringfollow-upofCMVretinitis,theoccurrenceofRDshouldbecarefullymonitored.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(11):1567.1570,C2018〕Keywords:サイトメガロウイルス網膜炎,網膜.離,網膜硝子体手術,網膜前膜,免疫回復ぶどう膜炎.cyto-megalovirusretinitis,retinaldetachment,vitreoretinalsurgery,epiretinalmembrane,immunerecoveryuveitis.Cはじめにサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)網膜炎は,眼科領域では代表的な日和見感染症の一つであり,ぶどう膜炎初診患者のC0.6.0.8%程度を占める1).1990年代後半にCHAART(highlyCactiveCantiretroviraltherapy)が導入されたことにより,AIDS(acquiredCimmunode.ciencyCsyn-drome)に伴うCCMV網膜炎に関しては,発症頻度が導入前のC4分のC1からC5分のC1程度に減少した.しかし一方で,臓器移植後の患者数は年々増加しており,とくに血液腫瘍性疾患に対する造血幹細胞移植後のCCMV網膜炎は増加傾向にあり,近年それらの症例の重要性が増している2).CMV網膜炎の主要な合併症の一つに網膜.離(retinaldetachment:RD)がある.網膜炎が鎮静化した後に生じることが多く3),RDに対して手術を行っても,網膜萎縮のために視力予後不良であると報告されており4),その臨床像の特徴を理解することは重要である.RDを合併したCCMV網〔別刷請求先〕三股政英:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野Reprintrequests:MasahideMimata,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversity,3-1-1Maidashi,Higashi-ku,Fukuoka812-8582,JAPANC表1患者背景と臨床像症例年齢(歳)性別網膜.離僚眼網膜炎基礎疾患診断からCRD発症までの期間(月)滲出斑の大きさ手術方法C1C39男性左無CAIDSC13<25%CsegmentalbucklingCPPV+SF6C2C64男性右無赤芽球癆C6>50%CPPV+SF6CPPV+SO充.+輪状締結CPPV+SO充.C3C50男性左有選択的CIgM欠損症C3<25%CPPV+SO抜去CPPV+SO充.C4C68男性右無肺結核C4>50%CPPV+SO充.C5C74女性左無ANCA関連血管炎C0<25%CPPV+SO充.CPPV+SO抜去C6C67男性右有悪性リンパ腫C0>50%CPPV+SO充.症例黄斑.離術前視力最終観察時視力血中CMV抗原前房水CPCR硝子体CPCRガンシクロビル硝子体内注射抗ウイルス薬全身投与転帰CERMC1無C0.5C0.2陽性無ガンシクロビル生存不明C有2有0.6C0.1陽性陽性1回無生存有C有C有3無1.5C0.1陽性陽性4回ホスカルネット生存不明C有C4無C0.04Cm.m.陰性陽性無無生存有C5有有C0.01C0.2なし陰性無無生存有C6有C0.09CSL-陽性陽性無無死亡不明AIDS:後天性免疫不全症候群,IgM:免疫グロブリンCM,ANCA:抗好中球細胞質抗体,PCR:ポリメラーゼ連鎖反応,PPV:経毛様体扁平部硝子体切除術,SF6:SF6gas注入,SO:シリコーンオイル,SL:光覚弁,m.m.:手動弁膜炎症例の臨床経過について,海外では多数例での報告があるが,わが国での報告は少ない.今回筆者らは,RDを伴ったCCMV網膜炎のC6症例について臨床像を後ろ向きに検討したので報告する.CI対象および方法対象はC2013年C1月.2016年C12月に,九州大学医学部附属病院眼科(以下,当院)にてCCMV網膜炎と診断したC10症例C13眼のうち,経過中にCRDを認めたC6症例C6眼とした.同症例について,基礎疾患,CMV網膜炎に対する治療,網膜炎の診断からCRD発症までの期間,網膜炎の範囲,施行術式,再.離の有無,最終復位率,視力予後などの臨床的特徴を診療録に基づいて後ろ向きに検討した.CMV網膜炎の診断は,網膜出血,浮腫を伴う黄白色滲出斑,網膜血管炎などのCCMV網膜炎に特徴的な眼底所見に加えて,免疫不全をきたす基礎疾患の存在,CMV抗原血症の有無,PCR(polymeraseCchainreaction)法による前房水,硝子体液中のCCMV-DNAの検出の有無などから総合的に行った.初診時にCRDを生じていた場合,網膜炎の診断からCRD発症までの期間をC0カ月とした.網膜炎の範囲は,診療録の眼底写真やスケッチから,全網膜に対する滲出斑の占有面積の割合をC0.25%,25.50%,50%以上のC3段階に分類した.視力の計算は既報5)に基づき,指数弁はClogMAR(loga-rithmCofCminimalCangleCofresolution)換算C1.85(少数視力0.014),手動弁はClogMAR換算C2.30(少数視力C0.005),光覚ありはClogMAR換算C2.80(少数視力C0.0016),光覚なしはlogMAR換算C2.90(少数視力C0.0012)として行った.CII結果6例の臨床像を表1に示す.症例は,男性C5例C5眼,女性C1例C1眼,平均年齢C60.5C±12.0歳:39.74歳であった.6例の基礎疾患はそれぞれ,後天性免疫不全症候群C1例,白血病C1例,選択的CIgM欠損症C1例,肺結核C1例,ANCA関連血管炎C1例,悪性リンパ腫C1例であった.6例のうち,2例は僚眼にもCCMV網膜炎を認めた.僚眼の網膜炎は抗ウイルス療法により鎮静化し,RDを発症しなかった.網膜炎の範囲は,0.25%の症例がC3例,50%以上の症例がC3例であった.3例で萎縮瘢痕化した滲出斑と正常網膜の境界に網膜前膜(epiretinalmembrane:ERM)を認めた(図1).そのうちC2例と,ERMの存在は不明であったC1例で滲出斑と正常網膜の境界に原因裂孔を認めた.CMV網膜炎の診断からCRD発症までの平均期間はC4.3C±4.4カ月であった.2例は初診時にすでにCCMV網膜炎に伴ってCRDを発症していた.RD発症前のCCMV網膜炎に対する抗ウイルス療法は,1例でホスカルネットの全身投与およびガンシクロビルの硝子体注射を行われた.1例でホスカルネットの全身投与のみ,1例でガンシクロビルの硝子体注射のみを行われた.その他のC3例は手術前の抗ウイルス療法を行われなかった.RDの範囲が周辺部に限局していたC1例のみ強膜内陥術を行い,同症例は術後再.離を認めず経過した.その他C5例に硝子体手術を行った.1例はCSFC6ガス注入を行い,術後C1カ月で再.離を認めた.再度CSFC6ガス注入を行ったが,術後C1週間で再.離を認めたため,シリコーンオイル注入を行った.その他C4例は初回手術でシリコーンオイル注入を行い,そのうちC2例はそれぞれC9カ月後,10カ月後にシリコーンオイルを抜去した.前者は抜去後C2カ月で再.離を認め,再度シリコーンオイル注入を行った.後者はシリコーンオイルの再注入を行わなかった.初診時の平均少数視力はC0.15(logMAR換算C0.80C±0.82),最終観察時の平均視力はC0.04(logMAR換算C1.43C±0.93)であった.CIII考察今回の検討では,CMV網膜炎の全C13眼のうちC6眼(46%)にCRDを発症した.過去の報告では,CMV網膜炎におけるRDの発症率はおおむねC12.18%と報告されており6),本検討では既報と比べて発症率が高い結果となった.HAART導入後,AIDS患者でのCCMV網膜炎におけるCRD発症率は約C1割程度減少したとする報告がある7).一方で,臓器移植後のCCMV網膜炎におけるCRD発症率は約半数と報告されており8),今回の検討では,全C10例のうちCAIDS患者がC1例のみであったため,RD発症率が既報と比べて高くなった可能性がある.また,RDを契機に紹介されたCCMV網膜炎の1例を含め,初診時にすでにCRDを認めた症例がC2例含まれることも,RDの発症率が高かった原因と考えられる.網膜炎の鎮静化後に,萎縮した壊死部網膜と健常網膜の境界の網膜硝子体界面に高率にCERMを認めると報告されている9).同報告では,非活動期のCCMV網膜炎の約C9割の症例で壊死部網膜と健常網膜の境界にCERMが認められた.本検討においても,3例で同部位にCERMを認めた.残りのC3例は,壊死部網膜と健常網膜の境界部を光干渉断層計で撮影していなかった.ERMを認めたC2例と,その他のC1例で壊死部網膜と健常網膜の境界付近に原因裂孔を認めた.このこと症例2症例4図1壊死部網膜と健常網膜の境界に認めたERMのOCT所見周術期のCswept-sourceOCT所見.菲薄化した壊死部網膜と健常網膜の境界にCERM(.)を認める.からも,CMV網膜炎において壊死部網膜と健常網膜の境界でCERMが形成され,その収縮により網膜裂孔が生じ,RDの原因となっている可能性が示唆された.近年,血液腫瘍や臓器移植後に対する抗がん剤や免疫抑制薬による治療後に,免疫能が回復してくる時期に生じる免疫回復ぶどう膜炎(immuneCrecoveryuveitis:IRU)を合併したCCMV網膜炎の重要性が増している.IRUを伴うCCMV網膜炎では,ERM形成のリスクが増加することが報告されており10),RDの発症率が高くなっている一要因と考えられる.CMV網膜炎の病変の大きさがC10%大きくなるとCRD発症率が約C2倍に増加し3),全網膜のC50%以上の症例ではCRD治療後の復位率が有意に低いと報告されている4).本検討においても,シリコーンオイルの留置なしで網膜の復位を得ている症例は,いずれも網膜炎の大きさC25%未満の症例であり,その他の症例はすべてシリコーンオイルを留置する結果となった.すなわち,進行したCCMV網膜炎に伴うCRDは難治であるため,CMV網膜炎の早期診断と治療開始により網膜炎の進展を制御することで,RDの発症ならびに治療予後を改善する可能性がある.CIV結語CMV網膜炎に伴うCRDは視力予後が不良であり,重篤な視機能障害の原因となる.CMV網膜炎は,その進行度がRD発症,ならびに視力予後とかかわっている可能性があるため,視力予後改善のためには早期診断,治療開始が重要である.文献1)芹澤元子,國重智之,伊藤由起子ほか:日本医科大学付属病院眼科におけるC8年間の内眼炎患者の統計的観察.日眼会誌C119:347-353,C20152)高本光子:サイトメガロウイルスぶどう膜炎.臨眼C66:C111-117,C20123)YenM,ChenJ,AusayakhunSetal:RetinaldetachmentassociatedCwithCAIDS-relatedCcytomegalovirusretinitis:CriskCfactorsCinCaCresource-limitedCsetting.CAmCJCOphthal-molC159:185-192,C20154)WongCJX,CWongCEP,CTeohCSCCetal:OutcomesCofCcyto-megalovirusCretinitis-relatedCretinalCdetachmentCsurgeryCinCacquiredCimmunode.ciencyCsyndromeCpatientsCinCanCAsianpopulation.BMCOphthalmolC14:150,C20145)Schulze-BonselCK,CFeltgenCN,CBurauCHCetal:VisualCacu-ities“handCmotion”and“countingC.ngers”canCbeCquanti-.edCwithCtheCFreiburgCvisualCacuityCtest.CInvestCOphthal-molVisSciC47:1236-1240,C20166)柳田淳子,蕪城俊克,田中理恵ほか:近年のサイトメガロウイルス網膜炎の臨床像の検討.あたらしい眼科C32:699-703,C20157)JabsDA:AIDSCandCophthalmology,C2008.CArchCOphthal-molC126:1143-1146,C20088)WagleCAM,CBiswasCJ,CGopalCLCetal:ClinicalCpro.leCandCimmunologicalCstatusCofCcytomegalovirusCretinitisCafterCtransplantation.TransplInfectDisC10:3-18,C20089)BrarCM,CKozakCI,CFreemanCWRCetal:VitreoretinalCinter-faceabnormalitiesinhealedcytomegalovirusretinitis.Ret-inaC30:1262-1266,C201010)KaravellasCMP,CSongCM,CMacdonaldCJCCetal:Long-termCposteriorCandCanteriorCsegmentCcomplicationsCofCimmuneCrecoveryuveitisassociatedwithcytomegalovirusretinitis.AmJOphthalmolC130:57-64,C2000***

眼内リンパ腫の経過中にAZOOR様網膜病変を認めた1例

2018年11月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科35(11):1563.1566,2018c眼内リンパ腫の経過中にAZOOR様網膜病変を認めた1例牧野輝美1,2)小川俊平1,2)中野匡1)酒井勉1,3)*1東京慈恵会医科大学附属病院眼科*2厚木市立病院眼科*3東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科CACaseofIntraocularLymphomawithAcuteZonalOccultOuterRetinopathy-likePhenotypeTerumiMakino1,2)C,ShumpeiOgawa1,2)C,TadashiNakano1)andTsutomuSakai1,3)1)DepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,AtsugiCityHospital,3)DepartmentofOphthalmology,JikeiDaisanHospitalC目的:Barileらは,眼内リンパ腫の初期病変として急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)様網膜病変を報告した.今回筆者らも同様の症例を経験したので報告する.症例:56歳,男性.2011年C6月より硝子体混濁を伴う汎ぶどう膜炎を認め,眼内リンパ腫を疑い硝子体生検を行うも確定診断は得られなかった.2012年C5月,感覚性失語,頭痛が出現し,頭部CMRIにて右側頭葉に腫瘤を認めた.びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫と診断され,化学療法と放射線療法が開始された.2014年C2月から光視症,左眼視力低下がみられた.光干渉断層計では黄斑部視細胞内節Cellipsoidzone(EZ)の不明瞭化,多局所網膜電図では黄斑部の応答密度の低下を認めた.2週後,自覚症状の改善,EZの明瞭化が確認された.2015年C2月,右眼にも同症状を認めたが自然寛解した.結論:眼内リンパ腫関連網膜症の表現型の一つとしてCAZOOR類似の網膜症に留意する必要がある.CPurpose:ToCreportCaCcaseCwithCacuteCzonalCoccultCouterretinopathy(AZOOR)C-likeCphenotypeCsecondaryCtoCintraocularlymphoma.Case:A56-year-oldmalepresentedwithpanuveitiswithvitreousopacityfrom2011June.DiagnosticCvitrectomyCwasCperformedCforCexaminationCofCintraocularClymphoma,CbutCtheCresultsCdidCnotCleadCtoCdiagnosisofintraocularlymphoma.In2012May,hecomplainedofheadacheandhadsensoryaphasia.BrainMRIshowedatumorintherighttemporallobe,leadingtodiagnosisofdi.uselargeB-celllymphoma.In2014Febru-ary,CheCcomplainedCofCacuteCreducedCvisionCwithCphotophobiaCinCtheCleftCeye.CFunduscopicCexaminationCofCtheCleftCeyeshowednoabnormallesion.Spectral-domainopticalcoherencetomographyrevealeddisruptionoftheellipsoidzone(EZ)andCmultifocalCelectroretinogramCdemonstratedCaCdecreaseCofCcentralCamplitude,CsuggestingCAZOOR.CTwoCweeksClater,CthereCwasCrecoveryCofCEZ,CwithCresultantCspontaneousCresolutionCofCmacularCmorphologyCandCfunctioninsixmonths.In2015February,therighteyehadthesameconditionandclinicalcourse.Conclusion:CCliniciansshouldbeawareofAZOOR-likephenotypeinatypicalmanifestationsofintraocularlymphoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(11):1563.1566,C2018〕Keywords:眼内リンパ腫,B細胞リンパ腫,急性帯状潜在性網膜外層症,光干渉断層計,多局所網膜電図.intra-ocularlymphoma,Bcelllymphoma,AZOOR,opticalcoherencetomography,multifocalelectroretinogram.Cはじめに眼内リンパ腫には,眼および中枢神経を原発とするものと,全身の悪性リンパ腫の経過中に眼内に病変を生じるものがある.このうちとくに眼に初発するリンパ腫は,眼内原発リンパ腫(primaryintraocularlymphoma:PIOL)とよばれる.PIOLは,組織学的にその大部分が非CHodgkinびまん性大細胞型CB細胞リンパ腫に分類され,悪性度がきわめて高い1,2).加えてCPIOLは,診断に難渋するいわゆる仮面症候群の代表的疾患である.ぶどう膜炎に類似した所見は,いわゆる炎症反応とは異なり腫瘍細胞播種によるものであるが,ステロイドに反応があるため鑑別は容易ではない.眼内リンパ腫の眼底所見として,硝子体混濁,黄白色の網膜下浸潤病変,漿液性網膜.離,.胞様黄斑浮腫様所見,視神経乳頭浮腫,網膜血管炎様所見,黄斑部卵黄様病巣があげ〔別刷請求先〕牧野輝美:〒105-8461東京都港区西新橋C3-25-8東京慈恵会医科大学附属病院眼科Reprintrequests:TerumiMakino,DepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,3-25-8Nishishimbashi,Minato-ku,Tokyo105-8461,JAPANCられる.これらに加えてCBarileらは,2013年にCPIOLの初期病変として急性帯状潜在性網膜外層症(acutezonaloccultouterretinopathy:AZOOR)類似の網膜症が認められたC1症例を報告した3).今回筆者らは,眼内リンパ腫経過中にCAZOOR類似の網膜症が認められた症例を経験したので報告する.CI症例患者:56歳,男性.初診日:2011年C7月6日.主訴:両視力低下,飛蚊症.既往歴:高血圧.現病歴:2011年C6月末より両眼の視力低下,飛蚊症を自覚し,近医で両眼硝子体混濁を指摘され,同年C7月C6日東京慈恵会医科大学附属病院(以下,当院)紹介受診となった.初診時所見:視力はCVD=0.4(1.5C×-0.75D(cyl-1.25DAx95°),VS=0.3(1.5C×.1.25D(cyl.1.00DAx95°)で,眼圧は両眼C18CmmHgであった.両眼に豚脂様角膜後面沈着物,前房内細胞およびオーロラ様硝子体混濁を認めた.採血,胸部CX線に異常はなかった.硝子体混濁の改善がみられなかったため,眼内リンパ腫を疑い,同年C8月C9日左眼硝子体生検を施行した.硝子体液の精査の結果は,細胞診クラスCIII,IL-10:1,310Cpg/dl,IL-6:286Cpg/dlで,IgH再構成は認めなかった.同年C7月のCPET-CT,胸腹部造影CCT,頭部CMRIでは異常はなかった.確定診断が得られなかったこと,右眼硝子体混濁が改善しないことから,2012年C3月6日,右眼の硝子体生検を施行した.硝子体液の精査の結果は,細胞診クラスCIII,IL-10:1,320Cpg/dl,IL-6:324Cpg/dlで,IgH再構成は認めなかった.この時点で,眼内リンパ腫の確定診断は得られなかったが,眼内リンパ腫疑いとして診断した.術後に自覚症状の改善が認められ,全身精査で有意な所見がなかったことから経過観察となった.2012年C6月から頭痛,感覚性失語が出現するようになり,当院脳神経外科を受診した.頭部CMRIにて右側頭葉に約C32mmの腫瘤が指摘され(図1),6月C18日開頭生検を施行し,病理検査からびまん性大細胞型CB細胞リンパ腫(DLBCL)の診断に至った.この結果から,本症例は眼内リンパ腫(PIOL疑い)と診断し,眼病変が脳に転移した可能性を考慮した.7月C3日よりメトトレキサート(MTX)大量投与を開始するも,副作用として肝障害がみられ,2コース目以降投与量をC80%に減量し,計C4コースを行った.9月C7日より全脳照射(眼球含む)40CGy/20Cfrも開始され,11月には脳病変の寛解が得られた.この間,視覚に関する自覚症状はなかった.2014年C2月C19日に左眼視力低下,光視症を自覚し,当院眼科を再診した.再診時視力はCVD=0.4(1.5C×.0.75D(cylC.1.25DAx95°),VS=0.3(0.7C×.1.25D(cyl.1.00DAx95°)で,眼圧は両眼C18CmmHgであった.検眼鏡的に眼底に有意な所見はなかったが,自発蛍光では左眼黄斑部に軽度過蛍光領域がみられた(図2).光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)において,ellipsoidCzone(EZ),interdigitationCzone(IZ)の不明瞭化(図3上)を認めたが,網膜色素上皮層には不整な所見を認めなかった.多局所網膜電図では黄斑部の応答密度の著明な低下を認めた(図3下).血液検査にて,自己抗体含め,抗網膜抗体は陰性であった.以上よりCAZOOR類似の網膜症と診断し,経過観察の方針となった.その後,2週で自覚症状および視力の改善,EZの明瞭化を認め,6カ月後に視力(1.0)となり,EZはほぼ復活した(図4).多局所網膜電図でも黄斑部応答密度の改善がみられた(図5).その後も再発なく経過.2015年C2月右眼にも同様の症状,所見を認めたが,自然に寛解した.2016年C3月に精巣への転移,7月には脳病変の再発を認め,その後肺炎を合併し,8月C23日に永眠された.CII考察本症例の特徴は,眼内リンパ腫の経過中に光視症を呈し,OCTでCEZの不明瞭化による網膜外層の形態的障害と,mfERGで応答密度の低下による網膜外層の機能的障害を認めたことであり,眼内リンパ腫の背景がなければCAZOORの診断に合致する点である.AZOORはC1992年にCGassらが報告した原因不明の網膜外層障害疾患群である4).若年から中年の健康な女性の片眼あるいは両眼に好発し,光視症,または視野障害を主症状とする.AZOORの診断は,検眼鏡的に網膜に異常所見はみられず,多局所網膜電図とCOCTで視野異常部位での網膜外層の機能・形態障害を証明することで診断される5).mfERGでは視野異常部位に一致した応答密度の低下が,OCTでは同部位に不明瞭なCEZやCIZが認められる6).また,近年では眼底自発蛍光で視野異常部位に一致して過蛍光所見がみられることが報告されている6).しかし,AZOORの病因はいまだに明らかではない.Gassらは外層網膜へのウイルス感染が原因である可能性を示唆した4).その後,原因として自己免疫性機序と炎症7,8),抗網膜抗体9,10)が重要な役割を担うとされた.これらの自己免疫による網膜の障害は,自己免疫性網膜症(autoimmuneretinopathy;AIR)とよばれる.一方,上皮由来の悪性腫瘍により自己免疫反応を生じ,視細胞を傷害するものは癌関連網膜症(cancerCassoicatedCretinopa-thy:CAR)11)とよばれ,上皮由来以外の悪性腫瘍であるリンパ腫や肉腫などによる視細胞の障害は腫瘍関連網膜症(paraneoplasticretinopathy)とよばれる.病因としては神図1頭部MRI頭部CMRIにて右側頭葉腹側に約C33Cmm大の比較的境界明瞭な腫瘤を認める.水平断(左),冠状断(右).図2眼底自発蛍光写真眼底自発蛍光では黄斑部に軽度過蛍光領域(円内)を認めた.図3多局所網膜電図多局所網膜電図では黄斑部の応答振幅の著明な低下を認めた.図5多局所網膜電図多局所網膜電図で黄斑部応答密度の改善がみられた.経組織に発現している蛋白が腫瘍組織に異所性に発現することにより,腫瘍組織に発現した蛋白と網膜の蛋白がともに非自己と認識され,自己抗体が発現し攻撃を受けることによると考えられている.CARの症状は比較的急速に進行する夜盲と視野狭窄である.AZOORで求心性視野狭窄を生じることはまれで,CARもしくはリンパ腫による腫瘍関連網膜症とは鑑別される.また,本症例において抗網膜抗体は陰性であった.本症例はCAZOORの特徴的な眼所見をすべて有しており,その診断自体は困難ではないが,眼内リンパ腫との関連が不明で,経過観察にあたっては慎重を要した.PIOLにCAZOOR類似の網膜症を呈したという報告は,筆者らが検索したところCBarileらの報告12)のみであった.Barileらの報告は,PIOLにみられた緩徐に進行したCAZOOR類似の網膜症であったが,本症例は急性発症で自然寛解が得られたこと,反対眼にも発症したことが相違点としてあげられる.これらの点から,本症例は眼内リンパ腫関連網膜症の新しい表現型の可能性が示唆される.以上,Barileらの症例と本症例の報告から,AZOORあるいはCAZOOR類似の網膜症が疑われた場合には,眼内リンパ腫の可能性があることも考慮されるべきである.眼内リンパ腫がCAZOOR類似の網膜症を引き起こす病態としては二つのことが考えられる.Barile12)らが推察する自己免疫性機序による視細胞障害の可能性とCKeinoら12)が指摘するCRPEへのリンパ球浸潤によるCRPEの機能障害と視細胞障害の可能性である.Keinoら12)はC13例C21眼の眼内リンパ腫の経時的CSD-OCT所見を検討し,経過中にC47.6%にEZの破綻,33.3%に網膜色素上皮(retinalCpigmentCepithe-lium:RPE)もしくはCRPEより内層にChyper-re.ectivenodulesが認められることを,さらにChyper-re.ectiveCnod-ulesはCMTX治療で減少あるいは消失することを報告した.本症例においては,OCT上CRPEには有意な所見を認めなかったこと,MTX大量療法後の寛解期に本病変を発症し無治療で自然寛解したことから,Barileらの自己免疫性機序による視細胞障害の可能性が疑われる.本症例では,無治療で自然寛解したが,経過観察で視機能障害の悪化が懸念される場合には,積極的な治療が必要になるかもしれない.自己免疫の関与が推察されることから,AZOORに準じて副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の全身治療が有効13,14)である可能性が示唆されるが,抗腫瘍効果を期待してCMTXやリツキシマブの硝子体内注射も考慮される必要があると考える12,15).積極的な抗腫瘍治療は,再発,反対眼の発症,他の臓器への転移を防ぐことで生命予後を改善するかもしれない.謝辞:本研究はCJSPS科研費C17K18131の助成を受けたものです.文献1)CJahnkeCK,CKorfelCA,CKommCJCetal:IntraocularClym-phoma2000-2005:resultsCofCaCretrospectiveCmulticentreCtrial.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC244:663-669,C20062)SagooCMS,CMehtaCH,CSwampillaiCAJCetal:PrimaryCintra-ocularlymphoma.SurvOphthalmolC59:503-516,C20143)BarileGR,GargA,HoodDCetal:UnilateralretinopathysecondaryCtoCoccultCprimaryCintraocularClymphoma.CDocCOphthalmolC127:261-269,C20134)GassJD:AcuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.CDondersLecture:TheCNetherlandsCOphthalmologicalCSociety,CMaastricht,CHolland,CJuneC19,C1992.CJCClinCNeuroophthal-molC13:79-97,C19935)MrejenCS,CKhanCS,CGallego-PinazoCRCetal:AcuteCzonalCoccultCouterretinopathy:aCclassi.cationCbasedConCmulti-modalimaging.JAMAOphthalmolC132:1089-1098,C20146)FujiwaraT,ImamuraY,GiovinazzoVJetal:Fundusauto-.uorescenceCandCopticalCcoherenceCtomographicC.ndingsCinacutezonaloccultouterretinopathy.RetinaC30:1206-1216,C20107)JampolLM,WireduA:MEWDS,MFC,PIC,AMN,AIBSE,andAZOOR:OneDiseaseorMany?RetinaC15:373-378,C19958)JampolCLM,CBeckerKG:WhiteCspotCsyndromesCofCtheretina:ahypothesisbasedonthecommongenetichypoth-esisCofCautoimmune/in.ammatoryCdisease.CAmCJCOphthal-molC135:376-379,C20039)TagamiM,MatsumiyaW,ImaiHetal:Autologousanti-bodiestoouterretinainacutezonaloccultouterretinopa-thy.JpnJOphthalmolC58:462-472,C201410)QianCX,WangA,DeMillDLetal:Prevalenceofantiret-inalantibodiesinacutezonaloccultouterretinopathy:Acomprehensivereviewof25cases.AmJOphthalmolC176:C210-218,C201711)SawyerRA,SelhorstJB,ZimmermanLEetal:BlindnesscausedCbyCphotoreceptorCdegenerationCasCaCremoteCe.ectCofcancer.AmJOphthalmolC81:606-613,C197612)KeinoH,OkadaAA,WatanabeTetal:Spectral-domainopticalcoherencetomographypatternsinintraocularlym-phoma.OculImmunolIn.ammC24:268-273,C201613)ChenCSN,CYangCCH,CYangCM:SystemicCcorticosteroidsCtherapyCinCtheCmanagementCofCacuteCzonalCoccultCouterCretinopathy.JOphthalmol793026,C201514)SaitoCS,CSaitoCW,CSaitoCMCetal:AcuteCzonalCoccultCouterCretinopathyCinJapaneseCpatients:clinicalCfeatures,CvisualCfunction,CandCfactorsCa.ectingCvisualCfunction.CPLoSCOneC10:e0125133,C201515)SouCR,COhguroCN,CMaedaCTCetal:TreatmentCofCprimaryCintraocularClymphomaCwithCintravitrealCmethotrexate.CJpnCJOphthalmolC52:167-174,C2008***