眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人海老原伸行48.春季カタルの病態順天堂大学医学部附属浦安病院眼科0.1%タクロリムス点眼液の登場により,単剤でも重症春季カタルの治療が可能になった.しかし,同点眼液と高力価ステロイド点眼液を併用しても治療に抵抗する症例も存在する.難治症例患者の巨大乳頭組織の遺伝子発現解析や動物実験により,難治症例では十分なCT細胞の活性化抑制ができていないことや,自然型アレルギー反応の関与が明らかになった.●はじめに春季カタル(vernalkeratoconjunctivitis:VKC)患者の巨大乳頭組織(giantpapillae:GP)中に浸潤している免疫系細胞の動態からみえてくる春季カタルの病態を解説する(図1).C●好酸球(eosinophils)GPには著明な好酸球浸潤を認める.電子顕微鏡で観察すると,結膜上皮細胞間に迷入した好酸球,脱顆粒した好酸球(ghosteosinophils)(図2),好酸球細胞内顆粒のみの遊走などがみられる.好酸球細胞内顆粒に含まれるCmajorCbasicprotein(MBP)やCeosinophilCcationicprotein(ECP)などの強塩基性細胞障害性蛋白が角結膜上皮障害を起こす.C●肥満細胞(mastcells)GPには,粘膜型肥満細胞と結合織型肥満細胞の両方が著明に増加している.多くの肥満細胞は脱顆粒過程または脱顆粒後にある.脱顆粒の様式には,IgEを介する急性型脱顆粒とサブスタンスCPやCstemcellfactorを介する緩徐型脱顆粒がある.GPではこの二つの脱顆粒形式が共存している1).脱顆粒により放出されるヒスタミン,トリプターゼ,キマーゼ,TNF-aと,脱顆粒後産生される各種サイトカイン,ロイコトリエン,プロスタグランジンが春季カタルの病態形成に関与する.C●樹状細胞(dendriticcells:DC)GPにはCDCが多数浸潤している.そのCDCの多くに高親和性CIgE受容体(FcCeRI)の発現を認める2)(図3).CFceRI受容体陽性CDCは,IgEを介し抗原を効率的にCT細胞に提示し,T細胞の活性化を誘導する.C●好塩基球・好中球GP組織内には少数の好塩基球を認めるが,その働きは不明である.一方,好中球は重症症例や慢性化症例で認め,感染の関与が考えられる.C●T細胞GPには多くのCT細胞の浸潤を認める.T細胞の増殖・分化・サイトカイン産生を抑制するカルシニューリン阻害薬であるシクロスポリンやタクロリムスの点眼液が春季カタルに著効するので,春季カタル病態形成にもっとも中心的な役割を演じている細胞と思われる.0.1%タクロリムス点眼液と高力価ステロイド点眼液に抵抗する難治症例のCGPにおける遺伝子発現を次世代シークエンサーにて解析すると,T細胞の活性化抑制が不十分であ図1春季カタル,上眼瞼結膜の巨大乳頭図2巨大乳頭組織内のghost好酸球(脱顆粒している)(75)あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019C3770910-1810/19/\100/頁/JCOPY図4巨大乳頭組織におけるテネイシンCの発現(赤い染色)×400図3巨大乳頭組織内のFceRI陽性樹状細胞ることがわかる3).以上からも,T細胞がCVKCの病態形成・治療標的としてもっとも重要であることがわかる.C●Innatelymphoidcells2(ILC2)ILC2は自然リンパ球の一つで,上皮細胞の産生するIL-33,TSLP,IL-25などに反応し,大量のCIL-13,IL-5を産生し,T細胞を介さない自然型アレルギー反応を始動させる.GPには多くのCILC2が存在している.また,GPの上皮層にはCIL-33,TSLPの発現が強く認められる.自然型アレルギー反応は獲得型アレルギー反応と異なり,免疫抑制薬やステロイドに抵抗性であり,難治性春季カタルの病態として重要である.C●異所性誘導性結膜リンパ装置VKC患者の涙液中には多量のCIgEが含まれている3).一方,血液中のCIgEは正常値であることが多い.この涙液中と血液中のCIgE値の乖離は,GPに異所性に誘導された結膜リンパ装置(inducibleCectopicCconjunctiva-associatedlymphoidtissue:IECALT)でCIgEが産生され,涙液中に放出されているためである.実際にCGPにはCIgEを産生しているCB細胞や形質細胞が多数浸潤している4).その産生メカニズムは不明だが,濾胞性ヘルパーCT細胞,病原性記憶CTh2細胞などの関与が想定されている.C●細胞外基質VKCの病態形成にもっとも重要な細胞外基質は,ペリオスチン(periostin)とテネイシン(tenascin)(図4)である.ペリオスチンとテネイシンは強く結合し,強固な線維性組織を形成する.ペリオスチンはCVKCやアトピー性角結膜炎患者の涙液中に高濃度で認められ,涙液中バイオマーカーにもなる5).また,マウスアレルギー性結膜炎モデルにてペリオスチンをノックアウトすると,局所の好酸球浸潤が抑制される.ペリオスチンはアレルC378あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019ギー性炎症の結果だけではなく増悪に働いている6).C●おわりに病態から考えると,免疫抑制薬点眼液に抵抗する難治症例には,より強いCT細胞の活性化抑制やサイトカインやCIgEを標的とした抗体療法が考えられる.IL-4受容体Ca鎖に対するヒト型抗体でCIL-4とCIL-13の働きを抑制するデュピルマブや,IgEに対するヒト型抗体であるオマリズマブなどが効果的であったことが報告されている.(保険適用はない).将来,点眼投与可能な小型化抗体の開発が期待される.一方,デュピルマブには上強膜炎様の充血を惹起する報告もあり注意が必要である.また,自然型アレルギー反応や異所性に誘導された結膜リンパ装置を標的にした薬剤の開発も期待される.文献1)EbiharaCN,COkumuraCK,CNakayasuCKCetal:HighClevelCofCFceRI-bindableIgEinthetear.uidandincreaseIgE-sat-uratedcellsinthegiantpapillaeofvernalkeratoconjuncti-vitispatients.JpnJOphthalmol46:357-363,C20022)海老原伸行,渡部保男,村上晶:春季カタル巨大乳頭組織における肥満細胞特異顆粒の超微構造.日眼会雑C112:C581-589,C20083)MatsudaCA,CAsadaCY,CSuitaCNCetal:TranscriptomeCpro.lingofrefractoryatopickeratoconjunctivitisbyRNAsequencing.CJCAllergyCClinCImmunol2018CNovC22.pii:S0091-6749(18)31639-74)MatsudaA,EbiharaN,YokoiNetal:Lymphoidneogen-esisCinCtheCgiantCpapillaeCofCpatientsCwithCchronicCallergicCconjunctivitis.JAllergyClinImmunC126:1310,C20105)FujishimaCH,COkadaCN,CMatsumotoCKCetal:TheCuseful-nessCofCmeasuringCtearCperiostinCforCtheCdiagnosisCandCmanagementCofCocularCallergicCdiseases.CJCAllergyCClinCImmunolC138:459-467,C20166)AsadaCY,COkanoCM,CIshidaCWCetal:PeriostinCdeletionCsuppressesClate-phaseCresponseCinCmouseCexperimentalCallergicconjunctivitis.AllergolIntC2018CNov9.Cpii:S1323-8930(18)30144-8(76)