連載⑰私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也連載⑰私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也17.片眼治療の薬物チョイス本庄恵東京都健康長寿医療センター第一選択薬のプロスタグランジン(prostaglandin:PG)薬は確実な眼圧下降が魅力だが,眼局所副作用がアドヒアランス低下をまねきかねない側面もある.とくに片眼治療の症例では,眼局所副作用を強く自覚することが多いため,副作用の許容と眼圧下降の必要性についてよく説明し,アドヒアランスを確認することが大切である.症例165歳,男性.53歳初診時視力は右眼(1.2×.4.0D),左眼(1.2×.4.0D),眼圧は両眼とも16mmHg,中心角膜厚は右眼(508μm),左眼(487μm),両眼とも近視乳頭でコーヌスを認め,左眼は傾斜乳頭で視神経乳頭陥凹拡大およびリムの菲薄化が著明,網膜神経線維層欠損(nervefiberlayerdefect:NFLD)を認めた(図1).初回Humphrey静的視野検査30-2ではあきらかな緑内障性変化は顕在していなかったが,経過中Goldmann視野検査で周辺の視野障害を認め,ラタノプロスト点眼を左眼のみ開始した(図2).5年目にラタノプロストからトラボプロストに点眼変更,b遮断薬を追加,眼圧10mmHg程度で7年間経過している.12年目のOCTでは,左眼NFLDおよびGCC黄斑解析で菲薄化を認め,静的視野検査はMD値悪化はさほどないが,NFLDに一致する部位の感度低下の顕在化を認めている(図1,2).最近になり,左上眼瞼溝増強+眼瞼下垂が気になるとの訴えが出てきた(図3).症例279歳,女性.左眼眼圧30mmHgと高いため紹介受診.視力は右眼(1.0),左眼(0.3),静的視野検査では左眼(.16.49dB)は上方に感度低下が顕著であったが,下方の中心視野は保たれていた.右眼(.10.29dB)は視神経低形成を合併しており,前医では治療を受けていなかった.10年近くPG薬を左眼のみ点眼しており,左上眼瞼溝増強+眼瞼色素沈着が著明であった.左眼は水晶体再建術+濾過手術を施行,眼圧は8mmHg,視力(1.0)で経過している.術後3カ月の時点で自覚的に左上眼瞼溝深化(deepeningoftheuppereyelidsulcus:DUES)および色素沈着が改善してきた(61)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY右眼左眼ABA:初診時の視神経乳頭では近視変化によるコーヌスを認め,左眼に視神経乳頭陥凹および神経線維層欠損を認める.B:12年目に撮像のOCTでは,左眼NFLDおよびGCC黄斑解析で菲薄化を認めた.ことが一番うれしいとのことであった(図3).右眼の視野障害が進行性であり眼圧変動もあることから,緑内障治療適応がある旨を説明したところ,PG薬点眼は避けたいとの申し出があった.眼圧下降治療と副作用エビデンスを有する緑内障治療は眼圧下降治療のみであり,第一選択薬のPG薬は確実な眼圧下降が魅力だが,充血や色素沈着,睫毛の伸展,DUESや眼瞼下垂といった眼局所副作用が問題となっている.緑内障では片眼のみ治療を必要とする症例も少なくないが,こういった症例では左右差がきわだつため,患者が眼局所副作用を図1症例1の視神経乳頭およびOCT本欄の記載内容は,執筆者の個人的見解であり,関連する企業とは一切関係ありません(編集部).あたらしい眼科Vol.31,No.10,20141483AB左眼左眼AB左眼左眼図2症例1の視野検査A:静的視野検査では,初診時は両眼とも有意な感度低下を認めなかった(右眼+1.42dB,左眼+0.87dB).B:12年目の静的視野検査では,左眼のMD値の変化はさほどないが,NFLDに一致する部位の感度低下の顕在化を認めている(左眼.0.62dB).自覚することが多く,アドヒアランスの低下をまねきかねない.PG薬の眼局所副作用は,ラタノプロスト,タフルプロストと比較してビマトプロスト,トラボプロストで強いことが報告されており1),一方で眼圧下降効果への反応にも個人差があることから,長期にわたる緑内障治療の良好な継続のために,PG薬の処方においては眼圧下降効果と同時に,眼局所副作用にも留意することは重要と考えられる.症例の検討症例1では初診時には顕在化していなかった左眼NFLDに対応する感度低下が,12年の経過で確実な緑内障性変化を呈した.進行はある程度抑制できていると判断できるため,早期からの緑内障治療開始は正しい選択であったと考えられる.しかし,眼瞼下垂は悪化すればQOVを損なうものでもあり,進行症例ではなかったことから,これらの眼局所副作用を生じてでも強力に治療すべき症例であったかどうかはやや疑問も残る.同様の他症例では,視野障害の自覚症状もないのに副作用が出る点眼を継続したくないとのことで,PG薬と同等の眼圧下降効果が報告されているb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤に切り替え,良好なアドヒアランスを得ることができた.症例によっては1回点眼が2回点眼になっても,眼局所副作用を避けるほうが良好なアドヒアランスを望める場合もある.症例2は左眼圧上昇が著明であり,濾過手術による眼圧下降を得たことから,PG薬の使用を中止できた症例である.視野障害進行例だが,患者本人にとっては視野障害の悪化も苦痛だが,コスメティックな問題はさらに1484あたらしい眼科Vol.31,No.10,2014AB図3症例1,症例2の顔写真A:症例1.睫毛の高さが左右で異なり,左眼瞼下垂,DUESを認める.B上:症例2.左眼の眼瞼色素沈着,睫毛伸長,DUESを認める.B下:症例2.PD薬中止後3カ月.DUESが浅くなっている.苦痛となっていたようである.進行症例では医者側も治療に苦慮し,複数点眼を処方,眼局所副作用には無頓着になりがちであるが,可能な範囲で眼圧下降・視野維持と同時に患者のQOL面にも配慮したいと気がつかされた症例であった.まとめ緑内障治療で眼圧下降を最優先に考えるのは進行側よりの観点からは当然であるが,結果として生じる眼局所副作用については,医師側が考える以上に患者側にとっては気になるという報告もされている2).実際,DUESなどの眼局所副作用は,性別年代を問わず,アドヒアランスが低下し,治療を中止してしまう場合も少なくない.とくに片眼治療の症例では眼局所副作用を強く自覚することが多い.緑内障病期や眼圧の状況で優先順位は異なるが,眼局所副作用の許容と眼圧下降の必要性についてよく吟味・説明し,病識・アドヒアランスを確認することが非常に重要である.文献1)SakataR,ShiratoS,MiyataKetal:Incidenceofdeepeningoftheuppereyelidsulcusontreatmentwithatafluprostophthalmicsolution.JpnJOphthalmol58:212217,20142)InoueK,ShiokawaM,HigaRetal:Adverseperiocularreactionstofivetypesofprostaglandinanalogs.Eye26:1465-1472,2012(62)