タブレット型PCの眼科領域での応用タブレット型PCの眼科領域での応用シリーズ三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第23章さまざまな障害児童におけるタブレット型PCの活用②■はじめに第23章で取り上げる端末は,東京大学先端科学技術研究センターでさまざまな障害をもつ児童とのコミュニケーションに活用しているタブレット型PC“iPadAir”と“iPhone5s”(いずれも米国AppleInc)のiOSバージョン7.0.6です.この章では学習障害や発達障害をもつ児童へのタブレット型PCの導入の過程で経験した眼科医としての気づきを,彼らの生の声とともに紹介させていただきます.■眼科医としての学習障害・発達障害児とのかかわり前章で述べたように,学校での視力検査で視力の低下を認め,医療機関における視力検査や視機能検査で異常を認めない児童の中には,さまざまな障害により読み書きに困難を抱える学習障害児や発達障害児が存在します.空間認識障害や聴覚過敏などの症状により,授業への参加に困難を抱える児童が最初に訪れる医療機関が眼科であることは,われわれ眼科医にとって非常に大きな意味をもっています.東京大学先端科学研究センターに通う児童たちとのかかわりの中で,私は眼科医として行っているデジタルロービジョンケアに通じる事例を経験することがあります.ある児童の言葉には次のようなものがありました.「背景の色が白色だと,まぶしくて文字に集中できなくて,読むことができない.」読み書き障害をもつ児童の一部には,背景色により文字の見やすさに差が出る児童が存在します.彼らは,さまざまなカラーフィルターを読書対象に使用すること(71)で,印刷物の視認環境がいくらか改善するといいます(図1).これらの差はあくまで児童の自覚的所見による評価に過ぎませんが,学童期の子どもにとって,快適な視認環境で学習できることはとても重要です.このような訴えのある児童らには,タブレットの背面カメラを利用して,映像にさまざまな色覚的効果を与えることが可能なアプリケーションソフトウェアを活用したり,電子書籍の背景色の設定を各自に合わせて変更することで,印刷物やデジタル文字情報に対する視認環境を改善できる場合があります.文字サイズやフォント,背景色を変更して視認環境を最適化する作業は,デジタル機器を用いたデジタルロービジョンケアにおける患者に合わせた視認環境設定の基本ですが,同様の配慮が,読み書きに障害をもつ児童の一部にも活用できる可能性があります.読んでいる行を誤認しやすい児童では,周囲の文字や装飾が対象の文字列と同じレベルの情報として認識されてしまうため,読字がとても困難になっているケースがあります.そこで,スリットの入ったボードを利用することで,対象の文字列のみに集中することが可能となり,読書に集中できる児童もいます(図2).このスリットボードはロービジョン者が利用するタイポスコープというエイドと形状や機能が共通し,一部同じ目的で利用されているといえます.■学習障害児童へのデジタルロービジョンケア『障害者の権利に関する条約』は「第二十四条教育」で教育についての障害者の権利を認め,この権利を差別なしに,かつ,機会の均等を基礎として実現するため,障害者を包容する教育制度(inclusiveeducationsystem)などを確保することとし,その権利の実現にあたり確保するものの一つとして,「個人に必要とされる合理的配あたらしい眼科Vol.31,No.4,20145490910-1810/14/\100/頁/JCOPY図1カラーフィルターを利用すると印刷物の見えやすさが変化する慮が提供されること」を明記しています.われわれ眼科医が読み書き障害をもつ児童に最初に出会う可能性がある以上,われわれは読み書き障害という疾患の存在に対して配慮する必要性があります.また,これらの障害をもつ児童に対するケアとして,これまでのリハビリテーションやトレーニングに加えて,エイドやデジタルデバイスを併用したロービジョンケアは合理的配慮の視点からも,とても重要な意味をもっています.例えばノイズキャンセル機能のついたヘッドフォンを用いることで聴覚過敏の症状を有する児童の学習環境整備をするなど,彼らの生活や学習環境を最適化するための配慮が今後は重要になると考えられます.しかし,就学環境において,デジタルデバイスを利用するための環境整備は十分とはいえず,読み書き障害をもつ児童の困難さに対する理解や,デジタル機器の活用の意義に対する教育機関の認識も,現状では高いとはいえません.眼科医と学校関係者との連携や啓発が,読み書き障害をもつ児童への合理的配慮を提供するうえで,今後必須の課図2スリットボードを使用すると読字環境が改善する題となっていくと考えられます.東京大学先端科学技術研究センターでは,これらの児童に対するデジタル機器によるケアを中心とした試みが始まっています(診断や評価を中心とした読み書き障害の研究活動『ココロ』〔http://at2ed.jp/clinic/〕,実際の端末の利用や指導を目的とした教室『ハイブリッド・キッズ・アカデミー』〔http://www.eduas.co.jp/buriki/〕).これらの活動の紹介は,読み書き障害をもつ児童やその家族に対して,リハビリテーションや訓練と同様に重要です.一人でも多くの眼科スタッフがこれらの障害の存在を理解することが,障害児童が生き生きと学べる環境配慮への第一歩だと私は信じています.本文の内容や各種セミナーの詳細に関する質問などはStudioGiftHandsのホームページ「問い合わせのページ」よりいつでも受けつけていますので,お気軽に連絡ください.StudioGiftHands:http://www.gifthands.jp/☆☆☆550あたらしい眼科Vol.31,No.4,2014(72)