監修=坂本泰二◆シリーズ第161回◆眼科医のための先端医療山下英俊病的近視のあたらしい画像診断法森山無価(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野)はじめに病的近視は,先進諸国における失明原因の上位を占める疾患であり,さらに欧米に比してアジアでは頻度が高くなっています.近年,病的近視の頻度は増加傾向にあり,今後ますます強度近視の増加および低年齢化が進むと推察されます1,2).病的近視眼の本態は眼球形状変化です.眼球は正視の状態であればほぼ球状の形態をしていますが,近視の進行とともに眼軸長の延長や後部ぶどう腫の形成が生じます.これらの形状変化によって強膜および網脈絡膜が障害されて,種々の近視性病変の重要な要因となります.これまでは眼球形状変化を診断するのに,検眼鏡的な所見,あるいは超音波を用いた方法しかありませんでした.しかしながら近年,MRIの進歩によって眼球形状をより俯瞰的に捉えることが可能となり,病的近視の眼球形状変化についての理解が深まってきました.3DMRIによる病的近視の眼球形状解析これまで,眼球形状を全体的に把握するためには眼球を摘出するしか方法がありませんでしたが,近年のMRI技術の進歩により,3DMRIを用いて生体内で眼球そのものを3次元的に観察することが可能となりました.3DMRIはT2強調画像をvolumerenderingすることによって3次元化した画像で,眼球を任意の方向から観察できます3).この方法によって正視眼を観察すると,眼球はほぼ球形の形状をしているのに対して,病的近視眼では眼球後部の一部が著しく突出し,後部ぶどう腫が形成されているのが容易に観察できます(図1).3DMRIによる病的近視の眼球形状分類眼球を下方から観察した像によって,病的近視眼の眼球形状は大きく4つに分類されます.まず,鼻側と耳側(83)図1眼球の3DMRIを鼻側から観察した像図左:正視眼.眼球はほぼ球状を呈している.図右:病的近視眼.眼球下方に後方に突出している後部ぶどう腫が認められる.abcd図2下方から観察した3DMRIによる病的近視眼の眼球形状分類a:突出が鼻側に偏位している鼻側偏位型.b:突出が耳側に偏位している耳側偏位型.c:中央部が紡錘状に突出している紡錘型.d:眼球後部が全体的に突出している樽型.(文献3より改変して引用)に関して対称形か非対称形かで2つに分類されます.さらに,非対称形のものは眼球後部の突出が鼻側に偏っているものは鼻側偏位型,耳側に偏っているものは耳側偏位型と分類されます.また,対称形のものは眼球後部の突出が紡錘状になっているものは紡錘型,樽状に突出しているものは樽型と分類されます(図2).形状の頻度は,鼻側偏位型と樽型がそれぞれ3割程度を占めています3).眼球形状異常の定量的解析眼球形状と近視性合併症との関連を調べるためには,眼球形状を定量的に解析し表現する必要があります.そあたらしい眼科Vol.31,No.5,20147090910-1810/14/\100/頁/JCOPY図3耳側偏位型における視神経付着部位(3DMRI)視神経付着部位の耳側に急峻な眼球形状変化が認められる(矢印).(文献3より改変して引用)こで,自動的に眼球形状を解析するソフトウェアを作成しました.これは,水平面および矢状面での眼球の対称性,そして眼球後部の尖鋭度(とがり具合)の3つのパラメータを数値化するものです.このソフトウェアを用いて,眼球形状と病的近視の代表的な合併症である近視性脈絡膜新生血管,近視性牽引黄斑症,近視性視神経症の関連を調べたところ,水平面での非対称性は近視性視神経症との関連があり,耳側に突出が偏位しているもので有意に頻度が高く,また,近視性牽引黄斑症は眼球後部が尖っている形状のものほど頻度が高いという結果でした4).3DMRIを構築する際に,信号域を変化させることによって視神経の描出が可能となります.耳側に突出が偏位している耳側偏位型では,視神経付着部位の近傍に急峻な眼球形状変化があり(図3),このような眼球変形が視神経線維走行に障害を与えていると考えられます.このように,特定の眼球形状と強度近視合併病変との関連が示唆され,眼球が球状から逸脱することが強度近視合併症発生に関わっているのではないかと考えられます.おわりに病的近視の本態は眼球の形状異常で,本来球状を呈している眼球が近視の進行とともに形状変化し,球状から逸脱することによって,さまざまな合併症発生や病変の進行につながっていきます.以前は検眼鏡的な診断のみでしたが,近年の画像診断法の進歩により,現在では眼球形状を定量的に診断することも可能となってきています.今後は診断法の発達だけでなく,眼球形状変化を予防する治療も必要となってくると思われます.謝辞:本原稿をご高閲いただいた東京医科歯科大学眼科准教授の大野京子先生に深く感謝いたします.文献1)IwaseA,AraieM,TomidokoroAetal:PrevalenceandcausesoflowvisionandblindnessinaJapaneseadultpopulation:theTajimiStudy.Ophthalmology113:13541362,20062)YamadaM,HiratsukaY,RobertsCBetal:PrevalenceofvisualimpairmentintheadultJapanesepopulationbycauseandseverityandfutureprojections.OpthalmicEpidemiol17:50-57,20103)MoriyamaM,Ohno-MatsuiK,HayashiKetal:Topographicanalysesofshapeofeyeswithpathologicmyopiabyhigh-resolutionthree-dimensionalmagneticresonanceimaging.Ophthalmology118:1626-1637,20114)MoriyamaM,Ohno-MatsuiK,ModegiTetal:Quantitativeanalysesofhigh-resolution3DMRimagesofhighlymyopiceyestodeterminetheirshapes.InvestOphthalmolVisSci53:4510-4518,2012■「病的近視のあたらしい画像診断法」を読んで■今回の森山先生の総説には本当に多くのオリジナル高くなりません.分子病態を深く研究するためにはこな情報が満載です.病的近視の本態を,眼球の形状異れが本当に大切です.病態が解明されることで,疾患常から臨床的にきちんとした研究で積み上げてきた仕の予後判定,治療法の開発へとつながっていきます.事は,本当に迫力を感じます.その臨床的な意義としその大きなステップを森山先生の総説は示していまては,病的近視を「本来球状を呈している眼球が近視す.大野先生と森山先生の研究グループの素晴らしいの進行とともに形状変化し,球状から逸脱することに成果と考えます.そして,これは一朝一夕に出せる成よって,さまざまな合併症発生や病変の進行につなが果ではありません.大野先生と森山先生の研究グルーる」と定義することで病的近視をきちんと診断し,とプの成果は,東京医科歯科大学眼科の長い歴史で,大らえることができるようになります.疾患の病態を考塚教授,所教授,望月教授と長い歴史で築き上げた体えるとき,その診断が曖昧ではその後の研究の精度が系的,継続的な近視臨床研究の積み重ねがあってこそ710あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(84)の成果です.患者の眼をきちんと観察し,臨床的な問データベース構築によって新しい疾患概念を提唱し,題点を明らかにし,その問題点を最新の画像解析手法原因まで解明され,日本の眼科学の誇るべき仕事となの進歩と絡めた結果が世界的な仕事になりました.臨っています.大野先生と森山先生の研究グループの病床医学の醍醐味がここにあります.われわれ臨床医学的近視の研究についても,ぜひ,三宅先生のお仕事のに携わるもののめざすべき臨床研究は,長期にわたっように広がりのある豊かな成果を出し,とりわけ日本てきちんと患者の診察をしたレベルの高いデータベー人やアジア人に多いと考えられる病的近視の診療を高スに基づいています.この総説を拝読して,名古屋大いレベルへと推進し,それが日本発信の成果となるこ学眼科の三宅養三先生のお仕事を思い出しました.三とを一眼科医としてこころから祈っております.宅先生のお仕事もきちんと患者をみて,高いレベルの山形大学眼科山下英俊☆☆☆(85)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014711