連載現場発,病院と患者のためのシステム連載現場発,病院と患者のためのシステム情報システムが企業の効果的な経営に寄与する医療機関向けERP(EnterpriseResourcePlanning:統合情報には,当該企業の業務全体を俯瞰し,今までの仕システム)事の仕方にこだわらずに無理無駄を廃し,作業*(機能,情報)の連続性に配慮した業務プロセス杉浦和史になっている必要があります.これを具体化したのがERP(EnterpriseResourcePlanning)はじめに効率的な企業・組織活動を支援するためには,全業務をカバーする機能,情報が有機的に連携した情報システムを整備しなければなりません.構想は大分前からありという概念と,それをソフトウェアで実現したアプリケーションシステムです.今回は医療機関にも必要になるこのERP構築に必要な事柄を簡単に解説します.ました.二昔前は,統合情報システム(IntegratedInformationSystem),一昔前は,戦略情報システム(SIS/StrategicInformationSystem)と呼ばれ,7,8年前からはERP(EnterpriseResourcePlanning)といわれています.英字3文字の呼称は変わっても,構想の基本は変わっておらず,ブームや言葉の言い換えに惑わされてはいけません.筆者は昔ながらの統合情報システムと呼んでいます.いささか古めかしい響きがありますが,本質をとらえた言い方です..ERPとはGoogleで調べると,いろいろな解説が出てきますが,“企業全体を,経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し,経営の効率化を図るための手法・概念,およびこれを実現するITシステムやソフトウェア”(出典:http://e-words.jp/w/ERP.html)という説明が単純明快です.当院が開発中の院内業務総合電子化計画Hayabusaはこれを目指しています.当初から点眼,処置など,人間ならでは作業を除き,全業務をシステム化の対象とし,有形無形な資源(医師,看護師,ベッド,検査機器,的確な診察,手技など)を効率的に活かす機能をもっています.病院ERPと称する製品群を提供しているベンダもありますが,必要になったもの,ニーズがありそうなものをその都度開発してシリーズ化したものがほとんどです.このようにして作られたシステムは,結果的に屋上屋を重ねることになり,機能,情報の連携において難があります.業務種類ごとに,それを得意とするベンダが提供する(75)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYシステムを寄せ集めてもERPにはならないことは,いうまでもありません.それどころか,さまざまな弊害があることは,連載で述べたとおりです.しかしながら,往々にしてそれをやってしまう実態があり,注意すべきところです.ERPを企画するときは,一時の思いつきやブームに迎合したり,ポイントをはずした方針で,見切り発車することは禁物です.これらに気がついた関係者がいたとしても,それを言いだしにくい雰囲気があると,問題点を抱えたままのシステムができあがってしまいます.こうなると,一時的な効果をはるかに超える損失となることを知っておいて損はありません.小田原評定ではいけませんが,はずしてはいけない要点を抑えるための時間,議論を惜しんではならず,鶴の一声や時間切れで突っ走ってはいけません.“走りながら考える”という,現実的に思える耳障りの良い言葉があります.一見良さそうで受け入れやすいこの考え方は,目先の現実に流され,モグラ叩きのその日暮らしになってしまう危険をはらんでいることを忘れてはいけません.ERPは対象とする業務の規模が大きく,改めて業務全般を見直すと理にかなわない部分が発見されることが多々あります.これらをひとつずつ解決するには,時間も予算も必要です.発見された問題点を,その場しのぎの策で解決したり,整備方針がブレると,思いつき企画*KazushiSugiura:宮田眼科病院CIO/技術士(情報工学部門)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131723→実行→不具合発生→思いつきの対策→不具合発生→思いつきへの対策,という負の連鎖になってしまいます.また,気を付けなければならないことは,権威を背景にした上意下達です.議論ではなく結論がでてしまい,議論がセレモニーになってしまうケースです.“手順を踏んだ”というだけで,中身がありません.ERPは,焦らず,腰を据えて取組むことが重要です..新技術は必要かシステムを企画,設計する際,最初に行うべきは,BPR(パラダイムシフトして業務を見直す)済みの業務プロセスにすることです.つぎに,権限の最適再配分を行い,それを踏まえた指揮命令系統を整備します.ここには,既得権とか,見直されずに昔から続いていた仕事の仕方を,そのまま継承する発想はありません.技術はこの作業の後の実現方法の段階で議論すべきです.とかく,耳障りよく,何となく格好良いトレンドになっている技術の話を先にしがちですが,技術は構想を実現するための手段であり,主役ではないことを理解しておくべきでしょう.早期の技術的な変化,陳腐化に気を付けながらですが,いたずらに新技術,新構想を採用することは不要です.枯れた確実な技術を忘れてはいけません.ただし,ドッグイヤーどころかマウスイヤーといわれる今,ハードルの高かった技術や,コスト的に採用を見送っていた製品が,利用可能になっている場合が少なからずあります.アンテナを高くして情報を収集するとともに,システムを構築するうえで,その技術,製品が必要か否かを検討し,採否を決める評価能力が求められます.筆者がIT業界紙と組んで過去3年にわたり,一部上場企業を含む約150社のCIO(情報システム最高責任者),情報システム責任者に取材した結果では,情報システム整備に最先端の技術が必要だった例は,わずか3社でした.ブームに踊らされることなく,落ち着いて技術,製品選択をしている賢明な判断がみてとれます..権限の最適再配分,指揮命令系統の見直しこれらはとくに重要です.これによって業務プロセス(業務を構成する作業群とその作業順)も違ってきてしまうことは,システムを企画,設計した者は,皆さん経験しているはずです.整理整頓し,無理無駄を省く過程で障害になるのは,既得権,権限,権威をもっている層の有形無形な主張です.資格に基づくもの,経験に基づくものなどいろいろありますが,一度リセットして考える必要があります.情報システム化の歴史の長い製造業,流通業でも,当初は抵抗があり,難航しました.しかし,同業他社との熾烈な競争にさらされ,既存の延長線での改善では間に合わず,パラダイムシフトを余儀なくされ,改革の必要性に迫られ,今日に至っています.医療機関での権限の再配分や,それを踏まえた指揮命令系統の整備は,対象が人間であり,QOL(qualityoflife),QOV(qualityofvision)に直接関係する業種であることから,単純に他業種と比較するのはむずかしい面があります.しかし,経営を支援する全業務対象の統合情報システム整備には,聖域なき改革が必要であることを理解しなければなりません.聖域とされているなかに,無理無駄がたくさん隠れている場合があるからです..プロジェクトリーダ一般的に規模の大きなERPを開発するプロジェクトを取り仕切るリーダの資質は,成功要因の一つです.リーダシップに名を借りた独断専横なリーダ,逆に安易に決断し,安易に変更する朝令暮改的リーダはいけません.決断できない優柔不断なリーダでは,ERPどころか単発のシステムも作れません.知識・経験が不足し,人望もないリーダの指揮下では優れたシステムの企画,開発,運用,効果の享受は望むべくもありません.プロジェクトリーダにふさわしい人材をみつけることは,ERP開発,導入を成功させる大きなポイントといえるでしょう.☆☆☆1724あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(76)